説明

天井クレーン

【課題】天井クレーンを用いた作業の安全性や作業性を向上させること。
【解決手段】本発明では、天井(2)に配設された一対の走行レール(3,3)に走行トロリー(4)をそれぞれ配設し、走行トロリー(4,4)の間にガーダー(5)を配設した天井クレーン(1)において、レールスパンの広狭に応じてクレーンスパンを追従させるための調整装置(6)を介して各走行トロリー(4)にガーダー(5)を吊設することにした。また、前記調整装置(6)は、走行トロリー(4)にリンク(24)を第1の回転軸(25)を介してガーダー(5)のスパン方向に向けて回転自在に連結するとともに、リンク(24)にガーダー(5)を第2の回転軸(27)を介してガーダー(5)のスパン方向に向けて回転自在に連結することにした。さらに、前記調整装置(6)は、走行レール(3)の内側に当接するサイドローラ(29)をガーダー(5)に配設することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に配設された一対の走行レールに走行トロリーをそれぞれ配設し、走行トロリーの間にガーダーを配設した天井クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場や船舶などの構造物の内部に重量物を吊下げたり搬送するために天井クレーンが利用されている。
【0003】
この天井クレーンとしては、天井に一対の走行レールを平行に取付け、各走行レールに走行トロリーを走行自在に設け、一対の走行トロリーの間にホイストを設けたガーダーを水平に取付けた構成のものが知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−186330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、天井クレーンを取付けた構造物においては、天井が長期の使用等により撓み変形してしまうことがあった。
【0006】
そのため、上記従来の天井クレーンにあっては、天井に取付けた走行レールのレールスパン(一対の走行レールの間隔)が広狭してしまい、走行レールに沿ってガーダーを円滑に移動させることが困難となるおそれがあった。
【0007】
特に、船舶に設けた天井クレーンにあっては、空船時と満載時とで船幅が変わり、レールスパンの広狭が生じることが多く、ガーダーの走行に支障をきたすおそれが多かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、天井に配設された一対の走行レールに走行トロリーをそれぞれ配設し、走行トロリーの間にガーダーを配設した天井クレーンにおいて、レールスパンの広狭に応じてクレーンスパンを追従させるための調整装置を介して各走行トロリーにガーダーを吊設することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記調整装置は、走行トロリーにリンクを第1の回転軸を介してガーダーのスパン方向に向けて回転自在に連結するとともに、リンクにガーダーを第2の回転軸を介してガーダーのスパン方向に向けて回転自在に連結することにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記調整装置は、走行レールの内側に当接するサイドローラをガーダーに配設することにした。
【発明の効果】
【0011】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明では、天井に配設された一対の走行レールに走行トロリーをそれぞれ配設し、走行トロリーの間にガーダーを配設した天井クレーンにおいて、レールスパンの広狭に応じてクレーンスパンを追従させるための調整装置を介して各走行トロリーにガーダーを吊設しているために、天井クレーンを取付けた走行レールのレールスパン(一対の走行レールの間隔)が広狭しても調整装置でレールスパンの広狭を吸収してクレーンスパン(一対の走行トロリーの間隔)を調整することができるので、走行レールに沿ってガーダーを円滑に走行させることができる。
【0013】
特に、調整装置として、走行トロリーにリンクを第1の回転軸を介してガーダーのスパン方向に向けて回転自在に連結するとともに、リンクにガーダーを第2の回転軸を介してガーダーのスパン方向に向けて回転自在に連結した構造とすることで、調整時の自由度が増大し、確実に走行トロリーの間隔を調整することができ、走行レールに沿ってガーダーを円滑に走行させることができる。
【0014】
また、調整装置として、走行レールの内側に当接するサイドローラをガーダーに配設した構造とすることで、ガーダーの横揺れを防止することができ、走行レールに沿ってガーダーを円滑に走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る天井クレーンを示す正面図。
【図2】同拡大側面図。
【図3】同拡大正面図。
【図4】同動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る天井クレーンの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1〜図3に示すように、天井クレーン1は、工場や船舶などの構造物の天井2に左右一対のI型状の走行レール3,3を所定の間隔(レールスパン)をあけて取付け、各走行レール3に2個の自走可能な走行トロリー4,4を前後に間隔をあけて走行自在に取付け、各走行トロリー4にガーダー5を調整装置6を介して吊設している。図中、7はガーダー5に設けたホイストである。
【0018】
この天井クレーン1を構成する走行レール3、走行トロリー4、ガーダー5、調整装置6の具体的な構造について以下に説明する。
【0019】
まず、走行レール3の構造について説明すると、走行レール3は、天井2に取付けられた底部8に腹部9を鉛直下向きに形成し、腹部9の下端に頭部10を形成し、頭部10の左右上面に支持面11,11を形成するとともに、頭部10の下面中央にラック12を形成している。
【0020】
次に、走行トロリー4の構造について説明すると、走行トロリー4は、走行レール3を挟んで左右一対の矩形板状の本体13,13の内側に走行レール3の支持面11に沿って転動するローラ14を前後に間隔をあけて回転自在に軸支して、ローラ14で本体13,13を走行レール3に吊下げている。
【0021】
また、走行トロリー4は、本体13,13の間に駆動軸15を回転自在に軸支し、駆動軸15の中央部に走行レール3のラック12と噛合するピニオン16を取付けるとともに、外側の本体13に駆動モータ17と変速機18とを取付け、駆動軸15と駆動モータ17とを変速機18を介して連動連結している。
【0022】
これにより、走行トロリー4は、駆動モータ17を駆動することで、ピニオン16がラック12にそって回転移動し、走行レール3に沿って自走できるようになっている。
【0023】
次に、ガーダー5の構造について説明すると、ガーダー5は、走行トロリー4に調整装置6を介して接続する左右水平に伸延させた接続部19と、ホイスト7を移動可能に取付けた左右水平に伸延させた本体部20と、本体部20の左右端部において左右の接続部19と連設する上下垂直に伸延させた底上部21とで形成することによって、全体として内側部分の底面を上方に隆起させた形状としている。
【0024】
このように、ガーダー5は、内側部分の底面を上方に隆起させた形状とすることで、内側部分での作業領域の高さを高くし、また、左右に伸延させた接続部19を形成することで、本体部20と走行トロリー4との間に間隙を形成して、調整装置6による調整可能な範囲を広くしている。
【0025】
次に、調整装置6の構造について説明すると、調整装置6は、走行トロリー4の本体13,13の下端中央部に支持軸22を水平に取付け、支持軸22にブラケット23の基端部(上端部)を前後回転自在に取付け、ブラケット23の先端部(下端部)に板状のリンク24の基端部(上端部)を第1の回転軸25を介してガーダー5のスパン方向(伸延方向)に向けて左右回転自在に取付け、さらには、ガーダー5の接続部19の外側に形成したブラケット26にリンク24の先端部(下端部)を第2の回転軸27を介してガーダー5のスパン方向(伸延方向)に向けて左右回転自在に取付けている。
【0026】
また、調整装置6は、ガーダー5の本体部20の外側に支持体28の基端部を取付け、支持体28の先端部にサイドローラ29を水平回転自在に軸支し、サイドローラ29の外周面を走行レール3の頭部10の内側側面に当接させている。
【0027】
そして、調整装置6は、図3に示すように、レールスパンに広狭が生じていない場合には、天井2から鉛直下向きに垂下した走行レール3の頭部10の内側にサイドローラ29が当接するとともに、ブラケット23及びリンク24も鉛直下向きに垂下した状態となり、ガーダー5を水平に保持する。
【0028】
一方、調整装置6は、図4に示すように、レールスパンに広狭が生じた場合には、その撓み変形に応じて走行レール3が傾斜して左右の走行トロリー4,4の間隔(クレーンスパン)が変わってしまうが、傾斜した走行レール3の頭部10の内側にサイドローラ29が当接するとともに、レールスパンの広狭及びガーダー5の重力の作用でブラケット23及びリンク24が第1及び第2の回転軸25,27によって回転してそれぞれ傾斜した状態となり、左右の走行トロリー4,4の間隔を調整しつつガーダー5を水平に保持する。
【0029】
このようにして、調整装置6は、レールスパンの広狭に応じてクレーンスパンが追従するようにリンク24の角度を変化させることによって走行トロリー4,4の間隔を調整することができる。
【0030】
以上に説明したように、上記天井クレーン1では、従来と同様に、天井2に一対の走行レール3,3を配設するとともに、各走行レール3に走行トロリー4を走行自在に配設し、走行トロリー4,4の間にガーダー5を配設した構成となっている。
【0031】
しかも、上記天井クレーン1では、レールスパンの広狭に応じてクレーンスパンを追従させるための調整装置6を介して各走行トロリー4にガーダー5を吊設した構成となっている。
【0032】
そのため、上記構成の天井クレーン1では、走行レール3,3の間のレールスパンが広狭しても調整装置6でレールスパンの広狭を吸収して走行トロリー4,4の間隔(クレーンスパン)を調整することができるので、走行レール3に沿ってガーダー5を円滑に移動させることができ、天井クレーン1を用いた作業の安全性や作業性を向上させることができる。
【0033】
また、上記天井クレーン1では、調整装置6として、走行トロリー4にリンク24を第1の回転軸25を介してガーダー5のスパン方向に向けて回転自在に連結するとともに、リンク24にガーダー5を第2の回転軸27を介してガーダー5のスパン方向に向けて回転自在に連結した構造としている。
【0034】
そのため、上記構造の天井クレーン1では、調整装置6による調整時の自由度が増大し、確実に走行トロリー4,4の間隔を調整することができ、走行レール3に沿ってガーダー5を円滑に移動させることができる。
【0035】
また、上記天井クレーン1では、調整装置6として、走行レール3の内側に当接するサイドローラ29をガーダー5に配設した構造とすることで、調整装置6を設けたことで生じるガーダー5の横揺れを防止(規制)することができ、これによっても、走行レール3に沿ってガーダー5を円滑に移動させることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 天井クレーン 2 天井
3 走行レール 4 走行トロリー
5 ガーダー 6 調整装置
7 ホイスト 8 底部
9 腹部 10 頭部
11 支持面 12 ラック
13 本体 14 ローラ
15 駆動軸 16 ピニオン
17 駆動モータ 18 変速機
19 接続部 20 本体部
21 底上部 22 支持軸
23 ブラケット 24 リンク
25 第1の回転軸 26 ブラケット
27 第2の回転軸 28 支持体
29 サイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に配設された一対の走行レールに走行トロリーをそれぞれ配設し、走行トロリーの間にガーダーを配設した天井クレーンにおいて、
レールスパンの広狭に応じてクレーンスパンを追従させるための調整装置を介して各走行トロリーにガーダーを吊設したことを特徴とする天井クレーン。
【請求項2】
前記調整装置は、走行トロリーにリンクを第1の回転軸を介してガーダーのスパン方向に向けて回転自在に連結するとともに、リンクにガーダーを第2の回転軸を介してガーダーのスパン方向に向けて回転自在に連結したことを特徴とする請求項1に記載の天井クレーン。
【請求項3】
前記調整装置は、走行レールの内側に当接するサイドローラをガーダーに配設したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の天井クレーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate