説明

天井化粧板

【課題】天井化粧板の表面から直接ビス留め施工をしてもビス頭の十文字のドライバ溝が目立たず、従って意匠選択の幅が広くデザインの発展性が高くて施工性のよい天井化粧板を提案することにある。
【課題手段】明度が低く、微細な多角形状のフレーク状物(1)が天井化粧板本体(2)の明度の高い表面(3)にランダムに現れるように設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天井下地板にビス止め固定する天井化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、天井下地板にロックウール吸音板等の天井化粧板を張設して一体な天井面を構成する場合の施工方法としては、固定金具が見えないようにするために接着剤とステープルを併用した方法や、本実と隠しステープルを併用した方法がある。更には天井化粧板相互の継ぎ目を目立たなくするように、突合せ端面の形状を工夫した化粧板もある。(例えば特許文献1)
【0003】
これらは天井化粧板の意匠性を考慮して施工方法や形状に工夫をしたものである。しかしながら、店舗などでリフォームが見込まれる実際の現場などでは、後々の張替えの容易さを考えて、天井化粧板の表面側からビス止めを行う施工方法をとることも多く、その場合には円形で中央に十文字のドライバ溝が設けられているビス頭が、天井化粧板の表面に所定の間隔でそのまま現れるため目立ってしまい、天井化粧板の意匠性を損ねてしまっていた。
【0004】
そこで、ビス頭を目立ちにくくするために予め天井化粧板の表面の色に近い塗装を施したビスを使用したり、表面をトラバーチン柄に代表されるピン穴模様や幾何学模様の凹みを施した天井化粧板を用いることで対応しているものの、その場合には天井化粧板として使用できるデザインが限られてしまって発展性に乏しく、また凹み模様を考慮しながら施工するので手間がかかるという問題があった。また、塗装を施したビスであっても電動工具等を用いて施工した場合には、ビス頭の十文字のドライバ溝がビス止め時に電動ドライバの挿入端に擦られて変色したり剥がれたりして、かえって目立ち易くなることもあるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−129694
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる従来例の問題に鑑みてなされたもので、天井化粧板の表面から直接ビス止め施工をしてもビス頭の十文字のドライバ溝が目立たず、従って意匠選択の幅が広くデザインの発展性が高くて施工性のよい天井化粧板を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、「明度が低く、微細な多角形状のフレーク状物(1)が天井化粧板本体(2)の明度の高い表面(3)にランダムに現れるように設けられていることを特徴とする天井化粧板(A)」である。
【0008】
この発明では、明度が低くて濃色且つ微細な多角形状のフレーク状物(1)が明度の高い天井化粧板本体(2)の表面(3)にランダムに付着されることでビス頭(4)の十文字のドライバ溝(5)の角(5a)とその周囲及び天井化粧板本体(2)の表面全体にランダムに散らばっているフレーク状物(1)の角(1a)の「角同士」或いはドライバ溝(5)の辺(5b)とフレーク状物(1)の辺(1b)の「辺同士」でシンクロしたような感じを与え、視覚的に看者の錯視効果(錯覚)を積極的に導き、その結果、相対的にカモフラージュされてビス頭(4)が目立たなくなるという効果をもたらす。従って、天井化粧板(A)の表面(3)に形成された模様を気にせずに施工できるという利点がある。更に、ビス頭(4)の十文字のドライバ溝(5)が相対的にカモフラージュされてビス頭(4)が目立たなくなることから、シンプルなデザインも可能となり天井化粧板(A)の意匠に発展性を持たせることが出来る。ここで、「多角形」とは、涙型のような少なくとも1の「角」或いは半円状のように2つの「角」や「辺」を持つものから正方形、長方形、台形、菱形その他「角」や「辺」を持つような形状のものを含む。換言すれば、「円形」を含まないということである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の天井化粧板(A)において「明度が低く、濃色で微細な多角形状のフレーク状物(1)が添加された、明度の高い塗料で天井化粧板本体(2)の表面(3)が塗装されている」ことを特徴とするもので、該塗料を塗布するだけで請求項1の天井化粧板(A)が得られるのであるから、より効率的且つ生産性がよい。塗布層を(2a)で示す。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の天井化粧板(A)において、「フレーク状物(1)の平面形状が矩形状である」ことを特徴とするもので、フレーク状物(1)の平面形状が正方形、長方形その他の矩形状の場合、フレーク状物(1)の「角」は直角或いは角張っているのであるから、直角であるビス頭(4)の十文字のドライバ溝(5)の角(5a)とよりシンクロによる錯視効果(錯覚)を助長する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の天井化粧板(A)において、「天井化粧板本体(2)の表面(3)には逆円錐形状の凹部(6)がランダムに設けられている」ことを特徴とするもので、逆円錐形状の凹部(6)はビス(10)の先端を打ち込んでから抜いた跡に似ており、これらが多数、少なくともビス頭(4)の周囲に散らばって設けられているために丸いビス頭(4)がより目立たなくなるという効果を奏し、前記フレーク状物(1)による錯視効果(錯覚)と相俟って表面(3)にビス頭(4)が現れていても看者に違和感を待たせなくするという効果を奏する。なお、凹部(6)の開口直径(S)はビス頭(4)の直径(R)に近いことがより好ましい。なお、凹部(6)の形状は実質的に逆円錐形状を呈しておれば足り、正確な逆円錐形状でなくとも良いことは言うまでもない。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の天井化粧板(A)において、「天井化粧板本体(2)の表面(3)には開口形状が多角形な微細穴(8)がランダムに設けられている」ことを特徴とするもので、この多角形な微細穴(8)はフレーク状物(1)と異なり、奥行きがあるので看者に深みを看取させ、以ってより視覚的錯覚効果が得られる。同時に後からでも穴を開けられるので生産性がよいし、吸音効果も向上するなどの付随的効果も奏する。なお、開口形状は長方形や正方形の矩形がより好ましく、多角形状のフレーク状物(1)の平面形状に近いことがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上から分かるように、本発明は天井化粧板本体(2)の表面の微細な多角形状のフレーク状物(1)、更には逆円錐形状の凹部(6)や開口形状が多角形な微細穴(8)により、ビス止め施工のビス頭(4)の十文字のドライバ溝(5)に対するカモフラージュ効果を得ることが出来、これによって意匠選択の幅が広くデザインの発展性が高くて施工性のよい天井化粧板(A)を提供することが出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例の平面図
【図2】図1の断面図
【図3】本発明の第2実施例の平面図
【図4】本発明のビス頭とフレーク状物及び凹部の平面図
【図5】図3の断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図示実施例示従って説明する。本発明における天井化粧板本体(2)はロックウール板やプラスターボード、インシュレーションボードなどで形成された長方形の板で形成されている。そして、本実施例1、2ではその表面(3)に明度の高い白色系の淡色(一般的には白から明るい灰色、或いは明るいクリーム色などである。)の塗装が施されて天井化粧板(A)が形成されている。天井化粧板本体(2)の表面(3)には必ずしも柄を施す必要はないが、トラバーチン柄等のピン穴模様や幾何模様、或いはこれらに加えて後述する逆円錐形状の凹部(6)や多角形の開口形状を有する微細穴(8)をランダムに多数個設けても良く、カモフラージュ効果を高めるためには少なくともビス頭(4)の周囲に設けることが好ましい。
【0016】
塗装は、通常、天井化粧板本体(2)の表面(3)に下塗り、中塗り、上塗りがなされ、上塗りにフレーク状物(1)が施されており、フレーク状物(1)を設ける方法としては、上塗り塗料にフレーク状物(1)を混入してこれを塗装する方法や、上塗り塗料の塗装直後にフレーク状物(1)を散布して上塗り塗料の表面に付着させる方法などが考えられる。上塗り塗装層を(2a)で示す。
【0017】
本実施例1及び2で、フレーク状物(1)は例えばポリエステルフィルム等の樹脂フィルムを細かくカットしたものや微細なマイカなどの薄片等が挙げられるが、上塗り塗装上に多角形に塗装や転写、スタンプなどで表現された物も含む。その寸法は、0.3〜0.7mmの幅或いは長さのものであり、その形状は多角形である。
【0018】
ビス頭(4)の十文字のドライバ溝(5)の直角な角(5a)とのシンクロによる錯視効果(錯覚)を助長するためには、フレーク状物(1)は正方形や長方形、台形などの矩形状のものが望ましい。フレーク状物(1)の色は明度の高い白色系の淡色に塗装された天井化粧板(A)の表面(3)の色に対してある程度目立つようにするための明度が低く、黒から濃い灰色や濃い青或いは茶、紫、緑などの濃色のものが使用される。微細なマイカのようなものでは黒雲母のような濃色のものが使用される。フレーク状物(1)の具体的寸法は、ビス頭(4)のドライバ溝(5)の幅が0.7〜0.8 mmなので、より近似させるために長辺の長さが0.6mm以上あると好ましい。四角形の場合、幅0.3〜0.7mm×長さ0. 6〜0.7mmのものである。
【0019】
フレーク状物(1)を上塗り塗料に混入する場合、フレーク状物(1)の添加量は、上塗り塗料の1.0〜1.4重量%であり、塗布量は60〜100g/m2が望ましい。本実施例ではフレーク状物(1)は樹脂フィルムの微細裁断物で、その片面(或いは両面)は黒色の顔料をコーティングし、片面コーティングの場合には他の片面は何もしていない地色のものであって、何もしていない地色の面が樹脂フィルムそのものの面として光っている。勿論、片面(又は両面)を金属光沢めっきとしてもよい。
【0020】
フレーク状物(1)の最も短い辺の長さが0.3mmよりも小さく、上塗り塗料への添加量も少なく、上塗り塗料の塗布量も少ないと、あまりカモフラージュ効果が得られない。そして、逆に、フレーク状物(1)の最も短い辺の長さが0.7mmよりも大きく、添加量も多すぎると、或いは塗布量も多すぎるとフレーク状物(1)がかえって目立ってしまって不自然となるか、意匠として別柄になってしまう。この点はフレーク状物(1)を散布する場合も同じである。
【0021】
尚、下塗り塗料や中塗り塗料にフレーク状物(1)を添加しても上に塗られた塗料によって隠蔽されてしまうので、上塗り塗料に用いる。上塗り塗料の一例を下記表1に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
本実施例2で示すように、逆円錐形状の凹部(6)が天井化粧板本体(2)の表面(3)に設けられる場合、その開口幅(S)はビス頭(4)の幅(R)と同程度の大きさが好ましく、特に、直径2〜3mm程度の逆円錐形状の凹部(6)を天井化粧板本体(2)の表面(3)にランダムに施した柄であれば、ビス頭(4)の擬似的形状となってビス頭(4)が凹部(6)に紛れ、ビス(10)が表面から打ち込まれて露出していても違和感がなくなってより効果的である。勿論、ビス(10)全体或いは少なくともビス頭(4)の露出面を天井化粧板(A)の表面塗装色に似た色に塗装やめっきを施していてもよい事は言うまでもない。
【0024】
本実施例1及び2で示す、微細穴(8)も天井化粧板本体(2)の表面(3)に設けられる場合、前記多角形なフレーク状物(1)との視覚的に擬似的効果を奏することが目的であるため、その開口形状は多角形、より効果的には長方形や正方形の矩形がより好ましい。そして多角形状のフレーク状物(1)の平面形状に近いことがより好ましい。
【0025】
既述したように塗料を上塗りする場合、或いは上塗りした塗料の上にフレーク状物(1)を散布すると、フレーク状物(1)はランダムな状態で天井化粧板本体(2)の表面(3)に現れる。濃色で微細な多角形のフレーク状物(1)がランダムに表面(3)に現れているという意味は、白色あるいは淡色系の天井化粧板(A)の表面(3)に少なくとも一部(ビス頭(4)の近傍周辺)に多角形(矩形状、半円形状を問わず)でエッジ部分を有する形状(従って、円形は除かれる。)がランダムに表面色を損ねることなく表現されていることを言い、その分布量は数個/cm2が好ましく、この場合は1〜3個/cm2が好ましい。
【0026】
以上から、天井化粧板(A)には、表面(3)が無地或いはトラバーチン模様や吸音用のピン穴模様が単独で施されたものや、トラバーチン模様に吸音用のピン穴模様が組み合わされたものに、フレーク状物(1)が表面全体或いはビス止めが予定されている箇所に部分的に散布されたもの、フレーク状物(1)と逆円錐状の凹部(6)が表面全体に或いはビス止めが予定されている箇所に部分的に散布されたもの、フレーク状物(1)と開口形状が多角形な微細穴(8)が表面全体或いはビス止めが予定されている箇所に部分的に散布されたもの、前記3者が表面全体或いはビス止めが予定されている箇所に部分的に散布されたものなどがあり、図1〜5はその一部を示したものに過ぎない。
【0027】
この天井化粧板(A)を天井下地面にビス止めして行くと、天井化粧板(A)のコーナー部分や辺に沿ってビス頭(4)が等間隔で現れる。ビス頭(4)の十文字のドライバ溝(5)は周囲の明るい地色に比べてトーンが落ちているから、フレーク状物(1)の表面(3)の色は黒や濃色系の紺や鼠色等がその色目と錯視させるような効果を生じるので好ましい。
【0028】
なお、フレーク状物(1)の裏面(片面)は光沢を発するものであれば尚良く、例えばアルミ蒸着等を施して金属的な光沢を発するようにさせることも可能である。
【0029】
光沢を発するものであればちりばめられたフレーク状物(1)の内、裏向きで露出したものが所々で見る角度により反射して金属的に輝くことで視線が引き付けられて、相対的に十文字状のドライバ溝(5)が目立たなくなるからである。
【実施例1】
【0030】
吸音用のピン穴のみで柄なしのロックウール天井化粧板本体(2)に、下塗りとして酢ビエマルジヨン水性塗料を塗布量180g/m2、中塗りとして酢ビエマルジョン水性塗料を塗布量200g/m2、上塗りとして濃色で微細な、長さが0.3〜0.7mmの黒色ポリエステルフレーク状物(1)が1.2重量%添加された白色塗料を塗布量80g/m2で塗った。上塗り塗料の構成は、天井下地面にタッピングビス(10)で表面側から止め付けた。比較として、別途フレーク状物(1)を添加していない天井化粧板(A)をタッピングピス(10)で同様に隣接させて止め付けた処、フレーク状物(1)の添加の天井化粧板(A)は、ビス頭(4)の十文字のドライバ溝(5)が目立たなかった。
【実施例2】
【0031】
トラバーチン柄のロックウール天井化粧板本体(2)に、実施例1と同様に塗料を塗布した。実施例1と同様に、タッピングビス(10)で表面側から止めつけたところ、フレーク状物(1)の添加のない塗料塗布の天井化粧板(A)と比較してフレーク状物(1)のある方がビス頭(4)の十文字のドライバ溝(5)が目立たなかった。
【実施例3】
【0032】
直径が2〜3mmの逆円錐状の凹部を全体にランダムに設けたロックウール天井化粧板本体(2)に、実施例1と同様に塗料を塗布した。実施例1と同様に、タッピングビスで(10)表面(3)から止めつけたところ、フレーク状物(1)の添加のない塗料塗布の天井化粧板(A)と比較してビス頭(4)の十文字が目立たなかった。
【符号の説明】
【0033】
(A) 天井化粧板
(1) フレーク状物
(1a) フレーク状物の角
(2) 天井化粧板本体
(3) 表面
(4) ビス頭
(5) ドライバ溝
(5a) ドライバ溝の角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明度が低く、微細な多角形状のフレーク状物が天井化粧板本体の明度の高い表面にランダムに現れるように設けられていることを特徴とする天井化粧板。
【請求項2】
明度が低く、濃色で微細な多角形状のフレーク状物が添加された、明度の高い塗料で天井化粧板本体の表面が塗装されていることを特徴とする請求項1に記載の天井化粧板。
【請求項3】
フレーク状物の平面形状が矩形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の天井化粧板。
【請求項4】
天井化粧板本体の表面には逆円錐形状の凹部がランダムに設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の天井化粧板。
【請求項5】
天井化粧板本体の表面には開口形状が多角形な微細穴がランダムに設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の天井化粧板。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−149443(P2012−149443A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8946(P2011−8946)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】