説明

天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置

【課題】 本発明の課題は、従来よりも高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができる天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置を提供することにある。
【解決手段】 天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置1,6,9は、空気配送路構成部材21,24,25,45,91,95および光触媒機能を有するアパタイト30を備える。空気配送路構成部材は、屋内に空気を配送するための空気配送路を構成する。光触媒機能を有するアパタイトは、空気配送路構成部材の少なくとも一部に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を調和するための天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置の室内機の空気吸い込み部、エアフィルタ、熱交換器、スクロール、ファン、および空気吹き出し口などの表面に光半導体触媒層を設け、室内機内部で臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−196399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、従来よりも高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができる天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、空気配送路構成部材および光触媒機能を有するアパタイトを備える。空気配送路構成部材は、屋内に空気を配送するための空気配送路を構成する。なお、ここにいう「空気配送路構成部材」とは、例えば、風向板、ベルマウス、および加湿ホースなどである。光触媒機能を有するアパタイトは、空気配送路構成部材の少なくとも一部に設けられる。なお、ここにいう「光触媒機能を有するアパタイト」とは、例えば、カルシウムヒドロキシアパタイトの一部のカルシウムイオンがイオン交換などの手法によってチタンイオンに置換されたアパタイトなどである。
【0005】
通常、二酸化チタンなどに代表される光半導体触媒は、菌やウィルスなどを積極的に捕集する能力に劣る。これに対して、この光触媒機能を有するアパタイトは、菌やウィルスなどを強力に吸着することによって、それらの増殖を阻止ないし抑制し得る。そして、このアパタイトに紫外線などの所定の波長領域の光が照射されれば、その菌やウィルスなどが分解除去される。
【0006】
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、光触媒機能を有するアパタイトが、空気配送路構成部材の少なくとも一部に設けられる。このため、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、従来の光半導体触媒を担持した空気調和装置よりも高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができる。
第2発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、第1発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置であって、空気配送路構成部材は、風向板である。風向板は、屋内への空気の流れ方向を調節する。
【0007】
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、空気配送路構成部材が、風向板である。このため、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、風向板を清潔に保つことができる。
第3発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、第1発明または第2発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置であって、加湿ユニットをさらに備える。加湿ユニットは、空気を加湿する。そして、空気配送路は、加湿空気配送路である。加湿空気配送路は、加湿ユニットにより加湿された空気の供給を受けるための配送路である。
【0008】
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、空気配送路構成部材が、加湿空気配送路を構成する。つまり、ここにいう「空気配送路構成部材」とは、加湿ホースや加湿ダクトなどである。このため、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、加湿ホースや加湿ダクトなどを清潔に保つことができる。
第4発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、第1発明から第3発明のいずれかに係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置であって、空気配送路構成部材は、樹脂から成型されている。そして、光触媒機能を有するアパタイトは、樹脂に配合されている。
【0009】
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、空気配送路構成部材が光触媒機能を有するアパタイトを配合した樹脂から成型されている。このため、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、空気配送路構成部材の製造方法をほとんど変更にすることなく清浄機能を有する空気配送路構成部材を製造することができる。また、二酸化チタンなどの光半導体触媒は活性時に樹脂を浸食するため樹脂に配合される場合には特殊なバインダを必要としたが、光触媒機能を有するアパタイトは、菌やウィルスなどに対して二酸化チタンよりも高い分解能力を示すにもかかわらず、活性時に樹脂をほとんど浸食しない。このため、光触媒機能を有するアパタイトは、特殊なバインダを必要としない。したがって、より低コストで清浄機能を有する空気配送路構成部材を製造することができる。
【0010】
第5発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、第4発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置であって、樹脂は、光触媒機能を有するアパタイトが設けられる部分が粗面加工されている。
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、樹脂が、光触媒機能を有するアパタイトが設けられる部分が粗面加工されている。このため、樹脂の表面により多くの光触媒機能を有するアパタイトを設けることができる。したがって、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、さらに高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができる。
【0011】
第6発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、空気配送路配置部材および光触媒機能を有するアパタイトを備える。空気配送路配置部材は、空気配送路に配置される。なお、空気配送路は、屋内に空気を配送するための通路である。また、ここにいう「空気配送路配置部材」とは、例えば、ファン、ドレンパン、および加湿ユニットの構成部品などである。そして、光触媒機能を有するアパタイトは、空気配送路配置部材の少なくとも一部に設けられる。
【0012】
通常、二酸化チタンなどに代表される光半導体触媒は、菌やウィルスなどを積極的に捕集する能力に劣る。これに対して、この光触媒機能を有するアパタイトは、菌やウィルスなどを強力に吸着することによって、それらの増殖を阻止ないし抑制し得る。そして、このアパタイトに紫外線などの所定の波長領域の光が照射されれば、その菌やウィルスなどが分解除去される。
【0013】
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、光触媒機能を有するアパタイトが、空気配送路配置部材の少なくとも一部に設けられる。このため、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、従来の光半導体触媒を担持した空気調和装置よりも高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができる。
第7発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、第6発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置であって、空気配送路配置部材は、空気を屋内に供給するための羽根車である。
【0014】
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、空気配送路配置部材が、羽根車である。このため、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、羽根車を清潔に保つことができる。
第8発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、第6発明または第7発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置であって、空気配送路配置部材は、空気と熱交換するための熱交換器である。
【0015】
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、空気配送路配置部材が、熱交換器である。このため、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、熱交換器を清潔に保つことができる。
第9発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、第6発明または第7発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置であって、冷却部をさらに備える。冷却部は、空気を冷却するための部材である。そして、空気配送路配置部材は、冷却部により結露した水を受けるドレンパンである。
【0016】
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、空気配送路配置部材が、ドレンパンである。このため、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、ドレンパンを清潔に保つことができる。
第10発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、第6発明から第9発明のいずれかに係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置であって、空気配送路配置部材は、空気を加湿する加湿ユニットである。
【0017】
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、空気配送路配置部材が、加湿ユニットである。このため、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、加湿ユニットを清潔に保つことができる。
第11発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、第6発明から第10発明のいずれかに係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置であって、空気配送路構成部材は、樹脂から成型されている。そして、光触媒機能を有するアパタイトは、樹脂に配合されている。
【0018】
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、光触媒機能を有するアパタイトが、樹脂に配合されている。このため、樹脂の製造方法をほとんど変更にすることなく清浄機能を有する樹脂部を製造することができる。また、二酸化チタンなどの光半導体触媒は活性時に樹脂を浸食するため樹脂に配合される場合には特殊なバインダを必要としたが、光触媒機能を有するアパタイトは、菌やウィルスなどに対して二酸化チタンよりも高い分解能力を示すにもかかわらず、活性時に樹脂をほとんど浸食しない。このため、特殊なバインダを必要としない。したがって、より低コストで清浄機能を有する樹脂を製造することができる。
【0019】
第12発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、第11発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置であって、樹脂は、光触媒機能を有するアパタイトが設けられる部分が粗面加工されている。
この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、樹脂が、光触媒機能を有するアパタイトが設けられる部分が粗面加工されている。このため、樹脂の表面により多くの光触媒機能を有するアパタイトを設けることができる。したがって、この天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、さらに高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができる。
【発明の効果】
【0020】
第1発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、従来の光半導体触媒を担持した空気調和装置よりも高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができる。
第2発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、風向板を清潔に保つことができる。
【0021】
第3発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、加湿ホースや加湿ダクトなどを清潔に保つことができる。
第4発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、空気配送路構成部材の製造方法をほとんど変更にすることなく清浄機能を有する空気配送路構成部材を製造することができる。また、二酸化チタンなどの光半導体触媒は活性時に樹脂を浸食するため樹脂に配合される場合には特殊なバインダを必要としたが、光触媒機能を有するアパタイトは、菌やウィルスなどに対して二酸化チタンよりも高い分解能力を示すにもかかわらず、活性時に樹脂をほとんど浸食しない。このため、光触媒機能を有するアパタイトは、特殊なバインダを必要としない。したがって、より低コストで清浄機能を有する空気配送路構成部材を製造することができる。
【0022】
第5発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、さらに高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができる。
第6発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、従来の光半導体触媒を担持した空気調和装置よりも高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができる。
【0023】
第7発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、羽根車を清潔に保つことができる。
第8発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、熱交換器を清潔に保つことができる。
第9発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、ドレンパンを清潔に保つことができる。
【0024】
第10発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、加湿ユニットを清潔に保つことができる。
第11発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、樹脂の製造方法をほとんど変更にすることなく清浄機能を有する樹脂部を製造することができる。また、二酸化チタンなどの光半導体触媒は活性時に樹脂を浸食するため樹脂に配合される場合には特殊なバインダを必要としたが、光触媒機能を有するアパタイトは、菌やウィルスなどに対して二酸化チタンよりも高い分解能力を示すにもかかわらず、活性時に樹脂をほとんど浸食しない。このため、特殊なバインダを必要としない。したがって、より低コストで清浄機能を有する樹脂を製造することができる。
【0025】
第12発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置では、さらに高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[室内機の構成]
本発明の一実施形態にかかる空気調和装置の室内機1の外観斜視図(天井は省略)を図1に示す。室内機1は、天井埋設型の室内機であって、図2に示されるように、設置時に天井に埋設される本体2、および設置時に室内側に露出する化粧パネル4から構成される。この室内機1には、図1に示されるように、室内の乾燥した空気を加湿ユニット7に配送するための乾燥空気配送パイプ81、および加湿ユニット7において加湿された空気を室内機1へ返送するための加湿空気配送パイプ82を介して加湿ユニット7が接続されており、室内機1は室内の加湿が可能になっている。
【0027】
[室内機の構成要素]
(1)本体
本体2は、図3および図4に示されるように、本体ケーシング21、遠心送風機22、熱交換器23、ドレンパン24、ベルマウス25、乾燥空気配送パイプ接続ポート27、加湿空気配送パイプ接続ポート28、紫色LED26、および紫外線ランプ29を備える。
【0028】
本体ケーシング21は、図3に示されるように、下面が開口した箱体であり、天板211と、天板211の周縁部から下方に延びる側板212とを有している。この本体ケーシング21には、その内部に室内機1の構成部品が収容される。
遠心送風機22は、本実施形態において、ターボファンであり、本体ケーシング21の天板211の中央に設けられたファンモータ221と、ファンモータ221に連結されて回転駆動される羽根車222とを有している。遠心送風機22は、羽根車222の内部に室内空気を吸入し、羽根車222の外周側に吹き出すことができる。
【0029】
熱交換器23は、本実施形態において、遠心送風機22の外周を囲むように曲げられて形成されたクロスフィンチューブ型の熱交換器パネルであり(図4参照)、屋外等に設置された室外ユニット(図示せず)に冷媒配管を介して接続されている。熱交換器23は、冷房運転時には内部を流れる冷媒の蒸発器として、暖房運転時には内部を流れる冷媒の凝縮器として機能できるようになっている。これにより、熱交換器23は、ベルマウス25を通じて本体ケーシング21内に吸入され遠心送風機22の羽根車222の外周側に吹き出された室内空気を、冷房運転時には冷却し、暖房運転時には加熱することができる。
【0030】
ドレンパン24は、熱交換器23の下側に配置されており、熱交換器23において室内空気を冷却する際に室内空気中の水分が凝縮されて生じるドレン水を受け止める。
乾燥空気配送パイプ接続ポート27は、乾燥空気配送パイプ81を接続するためのポートである。一方、加湿空気配送パイプ接続ポート28は、加湿空気配送パイプ82を接続するためのポートである。
【0031】
紫色LED26は、本体ケーシング21の側板212および熱交換器23と遠心送風機22との間に設けられており、おおよそ360nmから400nmの紫外線を発することができる。
紫外線ランプ29は、ベルマウス25の内部に設けられており、おおよそ360nmから400nmの紫外線を発することができる。
【0032】
(2)化粧パネル
化粧パネル4は、図2および図3に示されるように、略四角形状の板状体であり、主として、その略中央に室内空気を本体ケーシング21内に吸入するための吸入口41と、本体ケーシング21内から室内空間に向かって空調空気を吹き出す複数個(本実施形態では、4個)の吹出口42とを有している。吹出口42には、風向を調節するためのルーバ45が設けられている。吸入口41には、吸入グリル43と、吸入口41から吸入された室内空気中の比較的大きな塵埃を除去するためのプレフィルタ44とが設けられている。
【0033】
[室内機の動作]
ファンモータ221により遠心送風機22を回転させると、室内の空気が図3の矢印A0に示されるように室内機1の吸込口41に吸い込まれる。吸い込まれた空気は、本体2のベルマウス25を通じて遠心送風機22に到達した後、遠心送風機22の外周側に吹き出される(図3の矢印A1参照)。遠心送風機22の外周側に吹き出された空気は、遠心送風機22の外周側に配置された熱交換器23によって熱交換された後、吹出口42から室内に吹き出される(図3の矢印A2参照)。なお、この際、熱交換後の空気の一部は、乾燥空気配送パイプ81を通じて加湿ユニット7に供給される。また、熱交換後に吹出口42に向かう空気は、加湿ユニット7により加湿され加湿空気配送パイプ82を通じて供給される空気とともに吹出口42から吹き出される。
【0034】
[室内機のセルフクリーニング機能]
この天井埋設型の室内機1を構成する部材である本体ケーシング21の内壁(図3参照)、ベルマウス25の内壁、遠心送風機21の羽根車222、吸入グリル43、ドレンパン24、ルーパ45には、チタンアパタイト30がコーティングされている。チタンアパタイト30は、カルシウムヒドロキシアパタイトの一部のカルシウムイオンがイオン交換などの手法によってチタンイオンに置換されたアパタイトであって、アパタイト特有の特性である有機物質吸着能だけでなく光触媒機能をも有する特殊な物質である。つまり、この室内機1では、チタンアパタイト30が、臭気成分や有害ガス、菌、ウィルスなどを特異的に吸着するとともに、紫外線ランプ29および紫色LED26から照射される紫外線によって、光励起されることにより強力な酸化力を発揮し、臭気成分や有害ガス、菌、ウィルスなどを分解、死滅、あるいは不活化して無害化することができる。
【0035】
[加湿ユニットの構成要素]
加湿ユニット7は、図5に示されるように、主に、ケーシング71、透湿膜ユニット72、遠心送風機73、電動弁74、減圧弁75、排水ポンプ76、紫外線ランプ715、内部給水管77、内部排水管78、外部給水管接続ポート79、外部排水管接続ポート80、乾燥空気配送パイプ接続ポート83、および加湿空気配送パイプ接続ポート84を備える。
【0036】
ケーシング71は、図1に示されるように、主に、第1機械室711、第2機械室712、乾燥空気室713、および加湿空気室714に仕切られている。第1機械室711には、電動弁74および減圧弁75が収容される。第2機械室712には、排水ポンプ76が収容される。乾燥空気室713と加湿空気室714とは透湿膜ユニット72によって仕切られており、乾燥空気室713には室内機1から乾燥空気が配送される。その一方、加湿空気室714には透湿膜ユニット72により加湿された空気が供給され、その加湿空気は加湿空気室714内に配置されている遠心送風機73によって室内機1へと戻される。
【0037】
透湿膜ユニット72は、図6に示されるように、ジャケット721、一対の管板722、および筒状透湿膜725(図6に示さずに図7に示す)から構成される。ジャケット721は、略矩形上の枠部材であり、その一側には内部給水管接続ポート723が設けられている。内部給水管接続ポート723は、枠の内外を連通するように筒状部材によって形成されている。また、内部給水管接続ポート723に対向する位置に同様の構成で内部排水管接続ポート724が設けられている。管板722は、ジャケット721の開口部に合致する形状の平板状の部材である。そして、一対の管板722は、互いに合致する複数の貫通孔726を有している。筒状透湿膜725は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどの素材から形成されている。筒状透湿膜725は、図7に示されるように、無数の微細な孔725aを有しており、水を透過させることなく水蒸気のみを通過させる性質を有する。また、この筒状透湿膜725は、その両端がそれぞれ管板722の互いに合致する貫通孔726に固定される。
【0038】
透湿膜ユニット72の組立は、一方の管板722をジャケット721に固定し、その管板722の複数の貫通孔726に筒状透湿膜725を固定し、その後に他方の管板722を筒状透湿膜725およびジャケット721に合致するように固定する。このようにして組み立てられた透湿膜ユニット72は、図7に示すように、ジャケット721と複数の筒状透湿膜725との間に貯水空間(ハッチング部分)728を形成する。貯水空間728は、内部給水管77を通じて外部の給水源と連通しており、給水源から給水される水を貯水可能であって、貯水された水を内部排出管78へ排出可能である。また、一対の管板722の貫通孔726および筒状透湿膜725は、乾燥空気が通過する風洞部729を形成する。
【0039】
電動弁74は、図示しない制御部からの信号に基づいて給水流路面積を増減するための装置である。
減圧弁75は、内部給水管77を流れる水の圧力を減圧することによって水を蒸発しやすくするための装置である。
紫外線ランプ715は、乾燥空気室713および加湿空気室714に配置されており、おおよそ360nmから400nmの紫外線を発することができる。
【0040】
内部給水管77は、透湿膜ユニット72に水を供するための配管であって、透湿膜ユニット72の内部給水管接続ポート723に配管接続される。
内部排水管78は、透湿膜ユニット72から排出される水をケーシング71の外部へ排出するための配管であって、透湿膜ユニット72の内部排水管接続ポート724に配管接続される。
【0041】
排水ポンプ76は、内部排水管78に流れる排水をケーシング71の外部へと排出する。
外部給水管接続ポート79は、例えば水道管などの外部給水源を内部給水管77に配管接続するためのポートである。
外部排水管接続ポート80は、内部排水管78を外部の排水管に配管接続するためのポートである。
【0042】
乾燥空気配送パイプ接続ポート83は、乾燥空気配送パイプ81を乾燥空気室713に配管接続するためのポートである。
加湿空気配送パイプ接続ポート84は、透湿膜ユニット72により加湿された空気を室内機1へ戻すための加湿空気配送パイプ82を加湿空気室714に配管接続するためのポートである。
【0043】
[加湿ユニットの動作]
遠心送風機73を回転させると、室内機1の乾燥した空気が、図5の矢印A4に示されるように、乾燥空気配送パイプ81を通じて透湿膜ユニット72に供給される。透湿膜ユニット72に供給された乾燥空気は、透湿膜ユニット72の風洞部729を通って加湿空気室714に移動する。この際、乾燥空気は、筒状透湿膜725から供給される水蒸気を含んで、加湿空気となる。そして、この加湿空気は、遠心送風機73により加湿空気配送パイプ82を通じて再び室内機1に戻される。なお、この加湿ユニット7は、主に室内機1が暖房運転をしているときに稼働される。
【0044】
[加湿ユニットのセルフクリーニング機能]
この加湿ユニット7を構成する部材であるケーシング71の内壁、遠心送風機73の羽根車(図示せず)には、チタンアパタイト30がコーティングされている。この加湿ユニット7では、チタンアパタイト30が、臭気成分や有害ガス、菌、ウィルスなどを特異的に吸着するとともに、紫外線ランプ29から照射される紫外線によって、光励起されることにより強力な酸化力を発揮し、臭気成分や有害ガス、菌、ウィルスなどを分解、死滅、あるいは不活化して無害化することができる。
【0045】
[空気配送パイプのセルフクリーニング機能]
空気配送パイプ81,82は、透明な樹脂により形成されており、その内壁面にはチタンアパタイト30がコーティングされている。そして、その近傍には図示しない紫外線ランプが設けられている。したがって、この空気配送パイプ81,82では、チタンアパタイト30が、臭気成分や有害ガス、菌、ウィルスなどを特異的に吸着するとともに、紫外線ランプ29から照射される紫外線によって、光励起されることにより強力な酸化力を発揮し、臭気成分や有害ガス、菌、ウィルスなどを分解、死滅、あるいは不活化して無害化することができる。特に、加湿空気配送パイプ82には、水分に富んだ空気が流れるので活発な光触媒反応が期待される。
【0046】
[チタンアパタイトの菌およびウィルスに対する性能]
チタンアパタイトのウィルス、菌、および毒素の不活化率を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
なお、これらの不活化率は、財団法人 日本食品分析センターにおいて、以下に示す方法で測定されている。
1.インフルエンザウィルスの不活化率
(1)試験概要
チタンアパタイトが塗布されているフィルタ(約30mm×30mm)にインフルエンザウィルス浮遊液を滴下し、室温にて暗条件(遮光)および明条件[ブラックライト照射下(フィルタとブラックライトとの距離 約20cm)]で保存し、24時間後のウィルス感染価を測定した。
【0049】
(2)不活化率の計算
不活化率=100×(1−10B/10A
A:接種直後のウィルス感染価
B:光照射下24時間後のフィルタのウィルス感染価
(3)試験方法
A.試験ウィルス:インフルエンザウィルスA型(H1N1)
B.使用細胞:MDCK(NBL−2)細胞 ATCC CCL−34株[大日本製薬株式会社]
C.使用培地
a)細胞増殖培地
Eagle MEM(0.06mg/mlカナマイシン含有)に新生コウシ血清を10%加えたものを使用した。
【0050】
b)細胞維持培地
以下の組成の培地を使用した。
Eagle MEM 1,000mL
10% NaHCO3 24〜44mL
L−グルタミン(30g/L) 9.8mL
100×MEM用ビタミン液 30mL
10% アルブミン 20mL
トリプシン(5mg/mL) 2mL
D.ウィルス浮遊液の調製
a)細胞の培養
細胞増殖培地を用い、MDCK細胞を組織培養用フラスコ内に単層培養した。
【0051】
b)ウィルスの接種
単層培養後にフラスコ内から細胞増殖培地を除き、試験ウィルスを接種した。次に、細胞維持培地を加えて37℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度:5%)内で2〜5日間培養した。
c)ウィルス浮遊液の調製
培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、80%以上の細胞に形態変化(細胞変成効果)が起こっていることを確認した。次に培養液を遠心分離(3,000r/min、10分間)し、得られた上澄み液をウィルス浮遊液とした。
【0052】
E.試料の調製
フィルタ(約30mm×30mm)を湿熱滅菌(121℃、15分間)後1時間風乾し、プラスチックシャーレに入れ、ブラックライト(ブラックライトブルー、FL20S BL−B 20 W、2本平行)を12時間以上照射したものを試料とした。
F.試験操作
試料にウィルス浮遊液0.2mLを滴下した。室温にて遮光およびブラックライト照射下(フィルタとブラックライトとの距離 約20cm)で保存した。また、ポリエチレンフィルムを対照試料として、同様に試験した。
【0053】
G.ウィルスの洗い出し
保存24時間後、試験片中のウィルス浮遊液を細胞維持培地2mLで洗い出した。
H.ウィルス感染価の測定
細胞増殖培地を用い、MDCK細胞を組織培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き細胞維持培地を0.1mLずつ加えた。次に、洗い出し液およびその希釈液0.1mLを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度:5%)内で4〜7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変成効果)の有無を観察し、Reed−Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出して洗い出し液1mL当たりのウィルス感染価に換算した。
【0054】
2.大腸菌(O−157)、黄色ブドウ球菌およびクロカワカビの不活化率
(1)試験概要
抗菌製品技術協議会 試験法「抗菌加工製品の抗菌力評価試験法III(2001年度版)光照射フィルム密着法」[以下「光照射フィルム密着法(抗技協2001年度版)」という。]を参考にして、フィルタの抗菌力試験を行った。
【0055】
なお、試験は以下の通りに実施した。
試料に大腸菌、黄色ブドウ球菌およびクロカワカビの菌液を滴下し、その上に低密度ポリエチレンフィルムをかぶせ、密着させた。これらを室温(20〜25℃)、暗条件(遮光)および明条件[ブラックライト照射下(フィルタとブラックライトとの距離 約20cm)]で保存し、24時間後の生菌数を測定した。
【0056】
(2)試験方法
A.試験菌株
細菌:
Escherichia coli IFO 3972(大腸菌)
Staphylococcus aureus subsp. aureus IFO 12732(黄色ブドウ球菌)
カビ:
Cladosporium cladosporioides IFO 6348(クロカワカビ)
B.試験培地
NA培地:普通寒天培地[栄研化学株式会社]
1/500NB培地:肉エキス0.2%を添加した普通ブイヨン[栄研化学株式会社]をリン酸緩衝液で500倍に希釈し、pHを7.0±0.2に調製したもの
SCDLP培地:SCDLP培地[日本製薬株式会社]
SA培地:標準寒天培地[栄研器材株式会社]
PDA培地:ポテトデキストロース寒天培地[栄研器材株式会社]
C.菌液の調製
細菌:
NA培地で35℃、16〜24時間前培養した試験菌株をNA培地に再度接種して35℃、16〜20時間培養した菌体を1/500NB培地に均一に分散させ、1mL当たりの菌数が2.5×105〜1.0×106となるように調製した。
【0057】
カビ:
PDA培地で25℃、7〜10日間培養した後、胞子(分生子)を0.005%スルホこはく酸ジオクチルナトリウム溶液に浮遊させ、ガーゼでろ過後、1mL当たりの胞子数が2.5×105〜1.0×106となるように調製した。
D.試料の調製
フィルタ(約50mm×50mm)を湿熱滅菌(121℃、15分間)後1時間風乾し、プラスチックシャーレに入れ、ブラックライト(ブラックライトブルー、FL20S BL−B 20 W、2本平行)を12時間以上照射したものを試料とした。
【0058】
E.試験操作
試料に菌液0.4mLを滴下し、その上に低密度ポリエチレンフィルム(40mm×40mm)をかぶせ、密着させた。これらを室温(20〜25℃)、遮光およびブラックライト照射下(フィルタとブラックライトとの距離 約20cm)で保存した。また、ポリエチレンフィルムを対照試料として、同様に試験した。
【0059】
F.生菌数の測定
保存24時間後にSCDLP培地で試料から生残菌を洗い出し、この洗い出し液の生菌数を、細菌はSA培地(35℃、2日間培養)、カビはPDA培地(25℃、7日間培養)を用いた混釈平板培養法により測定し、試料1個当たりに換算した。また、接種直後の測定は対照試料で行った。
【0060】
3.エンテロトキシンの不活化率
(1)試験概要
試料にブドウ球菌エンテロトキシンA(以下、「SET−A」と略す。)を接種し、室温(20〜25℃)、暗条件(遮光)および明条件(紫外線強度約1mW/cm2の光照射下)で保存し、24時間後のSET−A濃度を測定し、分解率を算出した。
【0061】
(2)試験方法
A.標準原液の調製
SET―A標準品[TOXIN TECHNOLOGY]を0.5%ウシ血清アルブミン含有1%塩化ナトリウム溶液で溶解し、5μm/mLの標準原液を調製した。
B.検量線用標準溶液
標準原液をVIDAX Staph enterotoxin(SET)[bioMerieux]付属の緩衝液で希釈し、0.2、0.5および1ng/mLの標準溶液を調製した。
【0062】
C.試料の調製
フィルタを50mm×50mmの大きさに切断し、約1cmの距離からブラックライトを24時間照射したものを試料とした。
D.試験操作
試料をプラスチックシャーレに入れ、SET―A標準原液0.4mLを接種した。これらを室温(20〜25℃)、遮光および紫外線強度約1mW/cm2の光照射下(ブラックライト、FL20S BL−B 20 W、2本平行)で保存した。
【0063】
保存24時間後にVIDAX Staph enterotoxin(SET)[bioMerieux]付属の緩衝液10mLで試料からSET−Aを洗い出し試料溶液とした。
なお、試料を入れないプラスチックシャーレにSET−A標準原液0.4mLを接種して直ちにVIDAX Staph enterotoxin(SET)[bioMerieux]付属の緩衝液10mLを加えたものを対照とした。
【0064】
E.検量線の作成
検量線用標準溶液について、VIDAX Staph enterotoxin(SET)[bioMerieux]を用いたELISA法で測定し、標準溶液の濃度と蛍光強度から検量線を作成した。
F.SET―A濃度の測定および分解率の算出
試料溶液について、VIDAX Staph enterotoxin(SET)[bioMerieux]を用いたELISA法で蛍光強度を測定し、E.で作成した検量線からSET−A濃度を求め、次式により分解率を算出した。
【0065】
分解率(%)=(対照の測定値−試料溶液の測定値)/対照の測定値×100
[室内機の特徴]
本実施の形態に係る天井埋設型の室内機1では、ケーシング21の内壁、ベルマウス25の内壁、遠心送風機21の羽根車222、吸入グリル43、ドレンパン24、およびルーパ45に、チタンアパタイト30がコーティングされている。また、加湿ユニット7においても、ケーシング71の内壁および遠心送風機73の羽根車にチタンアパタイトがコーティングされている。さらに、加湿空気配送パイプ82の内壁にもチタンアパタイトがコーティングされている。チタンアパタイトは、図8に示されるように、アセトアルデヒドに対して、従来のアナターゼ型の二酸化チタンよりも優れた分解処理性能を発揮する。なお、図8のグラフにおいて、縦軸は二酸化炭素濃度であり、横軸は時間である。つまり、アセトアルデヒドの分解により生じる二酸化炭素の濃度を測定することにより間接的に分解処理性能を測定していることになる。なお、この測定は、チタンアパタイトの表面積と二酸化チタンの表面積とを一致させて行われている。また、図8のグラフから明らかなように、チタンアパタイトの方が二酸化チタンよりも高い分解処理性能を示す。また、チタンアパタイトは3時間が経過しても一定の反応速度でアセトアルデヒドを分解し続けるのに対し、二酸化チタンは3時間を経過するとその分解能力がほぼ飽和し、両者の分解処理性能の差が著しくなる。このため、この天井埋設型の室内機1は、従来の吸着能力に劣る二酸化チタンが用いられている室内機よりも優れたセルフクリーニング性を発揮することができる。
【0066】
[変形例]
(A)
先の実施の形態に係る天井埋設型の室内機1はいわゆるマルチフロー式の天井埋設型の室内機であったが、本発明は、図10に示されるようなラウンドフロー式の天井埋設型の室内機6にも適用可能である。
【0067】
(B)
先の実施の形態に係る室内機1はいわゆる天井埋設型の室内機であったが、本発明は、図11に示されるような天井吊下型の室内機9にも応用可能である。
図12には、天井吊下型の室内機9の側面断面図を示す。
ここで、天井吊下型の室内機9について簡単に説明すると、この室内機9は薄型箱状の本体ケーシング91を有しており、その内部には4つのファン92、熱交換器93、ファン駆動用のモータ921、および紫外線ランプ98が設けられている。
【0068】
本体ケーシング91は、全体として左右に長い薄型箱形状であり、後方部側から前方部側にかけて厚みが薄くなるように前部下面側がアール面に形成されている。そして、本体ケーシング91の前面には熱交換された空気を室内に吹き出すための吹出口94が設けられている。
吹出口94には、上下に揺動する第1フラップ95と、左右に揺動する複数の第2フラップ(図示せず)とが設けられている。
【0069】
ファン92は、それぞれ多翼形のシロッコファンであり、熱交換器93や吹出口94と平行に並べて配置されている。各ファン92は、ファン仕切板96に固定されており、それぞれモータ921に連結されて駆動される。ファン92は、化粧パネル10の吸込口102から空気を本体ケーシング91の内部に導入し、熱交換された空気を吹き出し口94から吹き出すために設けられたものである。
【0070】
熱交換器93は、内部を冷媒が循環する構造となっており、上部が吹出口94側に傾斜するように配置されている。このように、熱交換器93を傾斜して配置することにより、熱交換面積を広く確保しながら、縦(上下)方向の寸法(厚み)を抑えている。熱交換器93は、内部を冷媒が通流する冷媒配管(図示せず)と、冷媒通流方向に並べて配置され冷媒配管が貫通する多数のフィン(図示せず)とを有している。冷媒配管は、ヘアピン状に折り曲げられた銅パイプにより構成されている。冷媒配管は、図示しない外部配管を介して室外機に接続されている。
【0071】
紫外線ランプ98は、熱交換器93を挟むようにして配置されており、おおよそ360nmから400nmの紫外線を発することができる。
このように構成された天井吊下型の室内機9では、ファン92が回転すると吸込口102から空気が吸い込まれて吹出口94から室内に吹き出される。この空気通路の途中で空気と冷媒との間で熱交換が行われる。
【0072】
なお、この天井吊下型の室内機9においても、本体ケーシング91の内壁、ファン92の羽根車、熱交換器93、および図示しないドレンパンなどにチタンアパタイトがコーティングされている。したがって、この天井吊下型の室内機9においても、チタンアパタイトが、臭気成分や有害ガス、菌、ウィルスなどを特異的に吸着するとともに、紫外線ランプ98から照射される紫外線によって、光励起されることにより強力な酸化力を発揮し、臭気成分や有害ガス、菌、ウィルスなどを分解、死滅、あるいは不活化して無害化することができる。
【0073】
(C)
先の実施の形態に係る室内機1では、室内機1および加湿ユニット7の要素部品など、および空気配送パイプ81,82にチタンアパタイト30がコーティングされたが、これらが樹脂により成型されている場合には、樹脂にチタンアパタイトを配合しておいて上記のような部材を成型してもかまわない。かかる場合、樹脂表面には、チタンアパタイトが露出する必要があるが、そのような加工は通常チタンアパタイトの配合量によって容易に実現することができる。
【0074】
図9に示されるように、アナターゼ型の二酸化チタンが菌やウィルスだけでなく自身を担持する基材(ウレタン樹脂)をも浸食するのに対し、チタンアパタイトは、基材をほとんど浸食しない。このため、チタンアパタイトは、従来のアナターゼ型の二酸化チタンを有機物に担持する際に使用されていた高価な特殊バインダを使用する必要がない。したがって、このチタンアパタイトを利用すれば、菌やウィルスなどに対して、優れた分解処理能力を提供することができるだけでなく、基材の寿命を長くすることができる。
【0075】
また、樹脂表面が粗面加工されていてもよい。このようにすれば、より多くのチタンアパタイトを上記のような部材の表面に設けることができる。
(D)
先の実施の形態に係る室内機1では、チタンアパタイトの光触媒機能を活性化するために光源として紫外線ランプを採用したが、これに代えてプラズマ発生器(例えば、グロー放電器、バリア放電器、およびストリーマ放電器など)などを採用してもかまわない。プラズマが発生すると、同時に紫外線が生じる、したがって、その紫外線によりチタンアパタイトの光触媒機能を活性化することができる。また、プラズマが発生すると、高速電子、イオン、オゾン、ヒドロキシラジカルなどのラジカル種や、その他の励起分子(励起酸素分子、励起窒素分子、励起水分子)などの活性種が生成するため、さらに効率よく臭気成分や有害ガス、菌、ウィルスなどを分解、無害化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置は、従来の光半導体触媒を担持した空気調和装置よりも高効率に臭気の元となる菌やウィルスなどを分解除去することができるという特徴を有し、例えば衛生管理の厳しい病院などへの設置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る天井埋設型の室内機の概略の外観斜視図。
【図2】本発明に係る天井埋設型の室内機の詳細な外観斜視図。
【図3】本発明に係る天井埋設型の室内機の側面断面図。
【図4】本体内部を示す下面図。
【図5】本発明に係る加湿ユニットの構造を示す図。
【図6】透湿膜ユニットの構造を示す図。
【図7】透湿膜ユニットの水平断面図。
【図8】二酸化チタンとチタンアパタイトとの光触媒活性の比較図。
【図9】二酸化チタンとチタンアパタイトとの樹脂浸食性の比較図。
【図10】変形例(A)に係るラウンドフロー式の天井埋設型の室内機の外観斜視図。
【図11】変形例(B)に係る天井吊下型の室内機の外観斜視図。
【図12】変形例(B)に係る天井吊下型の室内機の側面断面図。
【符号の説明】
【0078】
1 室内機(天井埋設型の空気調和装置)
6 室内機(天井埋設型の空気調和装置)
7 加湿ユニット
9 室内機(天井吊下型の空気調和装置)
21 本体ケーシング(空気配送路構成部材)
22 遠心送風機(空気配送路配置部材)
23 熱交換器(熱交換器、冷却部)
24 ドレンパン
25 ベルマウス(空気配送路構成部材)
30 チタンアパタイト(光触媒機能を有するアパタイト)
45 ルーバ(風向板)
82 加湿空気配送パイプ(加湿空気配送路)
91 本体ケーシング(空気配送路構成部材)
92 ファン(空気配送路配置部材)
93 熱交換器(熱交換器、冷却部)
95 フラップ(風向板)
222 羽根車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に空気を配送するための空気配送路を構成する空気配送路構成部材(21,24,25,45,91,95)と、
前記空気配送路構成部材の少なくとも一部に設けられる光触媒機能を有するアパタイト(30)と、
を備える、天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置(1,6,9)。
【請求項2】
前記空気配送路構成部材は、前記屋内への前記空気の流れ方向を調節する風向板(45,95)である、
請求項1に記載の天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置。
【請求項3】
前記空気を加湿する加湿ユニット(7)をさらに備え、
前記空気配送路は、前記加湿ユニットにより加湿された前記空気の供給を受けるための加湿空気配送路(82)である、
請求項1または2に記載の天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置。
【請求項4】
前記空気配送路構成部材は、樹脂から成型されており、
前記光触媒機能を有するアパタイトは、前記樹脂に配合されている、
請求項1から3のいずれかに記載の天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置。
【請求項5】
前記樹脂は、前記光触媒機能を有するアパタイトが設けられる部分が粗面加工されている、
請求項4に記載の天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置。
【請求項6】
屋内に空気を配送するための空気配送路に配置される空気配送路配置部材(22,23,92,93)と、
前記空気配送路配置部材の少なくとも一部に設けられる光触媒機能を有するアパタイト(30)と、
を備える、天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置(1,6,9)。
【請求項7】
前記空気配送路配置部材は、前記空気を前記屋内に供給するための羽根車(222)である、
請求項6に記載の天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置。
【請求項8】
前記空気配送路配置部材は、前記空気と熱交換するための熱交換器(23,93)である、
請求項6または7に記載の天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置。
【請求項9】
前記空気を冷却するための冷却部(23,93)をさらに備え、
前記空気配送路配置部材は、前記冷却部により結露した水を受けるドレンパン(24)である、
請求項6または7に記載の天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置。
【請求項10】
前記空気配送路配置部材は、前記空気を加湿する加湿ユニット(7)である、
請求項6から9のいずれかに記載の天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置。
【請求項11】
前記空気配送路構成部材は、樹脂から成型されており、
前記光触媒機能を有するアパタイトは、前記樹脂に配合されている、
請求項6から10のいずれかに記載の天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置。
【請求項12】
前記樹脂は、前記光触媒機能を有するアパタイトが設けられる部分が粗面加工されている、
請求項11に記載の天井埋設型または天井吊下型の空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−29665(P2006−29665A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208177(P2004−208177)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】