天井用目地装置

【課題】目地部の幅寸法が半分になったり、１．５倍となっても目地部に隙間が生じることなく覆うとともに、天井パネルの上面に大きな寸法がなくても設置することができ、かつ小さな複数個の天井パネルを用いることができる天井用目地装置を提供する。
【解決手段】目地部２側の左右の天井躯体３ａの少なくとも一方の天井躯体３ａに固定された持ち出しブラケット４と、この持ち出しブラケット４の先端部と他方の天井躯体３ａとの間に、パンタグラフ形状の伸縮リンク機構８と、この伸縮リンク機構８に枢支された天井パネルを支持する天井パネル支持杆９と、この天井パネル支持杆９に重なり合うように取付けられた複数個の天井可動パネル１０と、左右の天井躯体３ａに固定された該天井可動パネル１０とほぼ同じ幅寸法の固定天井パネル１１，１２と、天井パネル支持杆９を、左右方向に移動できるように保持する保持手段１３とで天井用目地装置１を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は目地部を介して設けられた左右の建物の天井目地部を覆う天井用目地装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、この種の天井用目地装置は左右の天井躯体に後端部が取付けられ、先端部を目地部が狭くなるとせり上がる左右の天井パネルを用いて構成したものや、一方の天井躯体に後端部が取付けられ、他方の天井躯体近傍に位置する天井パネルの先端部を、地震で目地部が狭くなると上方へ持ち上げることができるワイヤーを用いた吊り上げ機構を使用するものがある。
【０００３】
このため、目地部の幅寸法が半分あるいは１．５倍の幅寸法となるような地震による揺れ動きが発生した場合、天井目地部に隙間が生じるという欠点があったり、吊り上げ機構によって、天井パネルの位置より目地部の幅寸法以上の高さ部位に吊り上げ機構を設けなければならず、このような寸法的に余裕のある所でしか使用できないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特許第３８１７１６８号
【特許文献２】特許第３６１１５３６号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、目地部の幅寸法が半分になったり、１．５倍となっても目地部に隙間が生じることなく覆うことができるとともに、天井パネルの上面に大きな寸法がなくても設置することができ、かつ小さな複数個の天井パネルを用いることができる天井用目地装置を提供することを目的としている。
【０００６】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
【０００７】
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するために、本発明は目地部を介して配置された左右の建物の、目地部側の左右の天井躯体の少なくとも一方の天井躯体に先端部が該目地部の中央部方向に突出するように所定間隔を介して固定された２個以上の持ち出しブラケットと、この２個以上の持ち出しブラケットの先端部あるいは、該２個以上の持ち出しブラケットの先端部と対応する他方の天井躯体との間に、複数個の中央枢支部の高さが変化することなく伸縮する複数個の四角形状のリンクを有するパンタグラフ形状の２個以上の伸縮リンク機構と、この２個以上の伸縮リンク機構の複数個の中央枢支部に枢支された天井パネルを支持する天井パネル支持杆と、この天井パネル支持杆に伸縮可能に重なり合うように取付けられた、前記伸縮リンク機構の四角形状のリンクが最大に伸長した寸法よりわずかに大きい幅寸法に設定された重なり合う複数個の天井可動パネルと、この複数個の天井可動パネルの先端部および後端部と重なり合うように、前記左右の天井躯体に固定された該天井可動パネルとほぼ同じ幅寸法の固定天井パネルと、前記天井パネル支持杆を、それぞれ垂直状態を保った状態で左右方向に移動できるように保持する保持手段とで天井用目地装置を構成している。
【発明の効果】
【０００９】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
（１）請求項１により、目地部を覆う複数個の天井可動パネルを２個以上の伸縮リンク機構、天井パネル支持杆および左右方向に移動できるように保持する保持手段を用いて、左右方向に移動できるように支持することができる。
したがって、地震で目地部が狭くなったり、広くなるように左右の建物が揺れ動いても、目地部を複数個の天井可動パネルで覆い、隙間が生じるのを確実に防止することができる。
（２）前記（１）によって、２個以上の伸縮リンク機構、天井パネル支持杆および左右方向に移動できるように複数個の天井可動パネルを保持する保持手段を用いているので、天井可動パネルの上面に大きな寸法がなくても、容易に設置することができる。
（３）前記（１）によって、複数個の中央枢支部の高さが変化することなく伸縮する複数個の四角形状のリンクを有するパンタグラフ形状の２個以上の伸縮リンク機構を用いるので、複数個の天井可動パネルを均等に左右方向にスライド移動させることができる。
したがって、左右方向のスライド移動が均等にできるので、見苦しくなったりするのを確実に防止することができる。
（４）前記（１）によって、複数個の天井可動パネルを重なり合うように設けているので、目地部が狭くなったり、広くなるように左右の建物が地震で揺れ動いても、目地部を隙間なく複数個の天井可動パネルで覆うことができるとともに、目地部の幅寸法が半分以下になっても損傷することなく、その揺れ動きを吸収することができる。
（５）請求項２も前記（１）〜（４）と同様な効果が得られるとともに、目地部の幅寸法が半分以下になっても、確実にその揺れ動きを吸収することができる。
（６）請求項３も前記（１）〜（４）と同様な効果が得られるとともに、保持手段の構成が簡単で、取付けが容易で、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】本発明を実施するための第１の形態の平面図。
【図２】図１の２−２線に沿う断面図。
【図３】図１の３−３線に沿う断面図。
【図４】本発明を実施するための第１の形態の底面図。
【図５】本発明を実施するための第１の形態の持ち出しブラケットの説明図。
【図６】本発明を実施するための第１の形態の伸縮リンク機構の説明図。
【図７】本発明を実施するための第１の形態の天井パネル支持杆の説明図。
【図８】本発明を実施するための第１の形態の天井可動パネルの説明図。
【図９】本発明を実施するための第１の形態の保持手段の説明図。
【図１０】本発明を実施するための第１の形態の目地部が狭くなった動作説明図。
【図１１】本発明を実施するための第１の形態の目地部が広くなった動作説明図。
【図１２】本発明を実施するための第１の形態の異なる前後方向の動作説明図。
【図１３】本発明を実施するための第２の形態の平面図。
【図１４】図１３の１４−１４線に沿う断面図。
【図１５】図１３の１５−１５線に沿う断面図。
【図１６】本発明を実施するための第３の形態の平面図。
【図１７】図１６の１７−１７線に沿う断面図。
【図１８】図１６の１８−１８線に沿う断面図。
【図１９】本発明を実施するための第４の形態の平面図。
【図２０】図１９の２０−２０線に沿う断面図。
【図２１】図１９の２１−２１線に沿う断面図。
【図２２】本発明を実施するための第４の形態の目地部が狭くなった動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【００１２】
図１ないし図１２に示す本発明を実施するための第１の形態において、１は目地部２を介して設置された左右の建物３、３の天井目地部を覆う本発明の天井用目地装置で、この天井用目地装置１は前記左右の建物３、３の目地部側の左右の天井躯体３ａ、３ａの、一方の天井躯体３ａに先端部が該目地部の中央部方向に目地部の幅寸法Ｌの４分の１の寸法で突出するように、所定間隔で固定された２個以上の持ち出しブラケット４、４と、この２個以上の持ち出しブラケット４、４の先端部と、これらの持ち出しブラケット４、４の先端部と対応する他方の天井躯体３ａにヒンジ部材５、５を介して複数個の中央枢支部６、６の高さが変化することなく伸縮する複数個、本発明の実施の形態では３個の四角形状のリンク７、７、７を有するパンタグラフ形状の２個以上の伸縮リンク機構８、８と、この２個以上の伸縮リンク機構８、８の複数個の中央枢支部６、６、６、６に枢支された天井パネルを支持する天井パネル支持杆９、９、９、９と、この天井パネル支持杆９、９、９、９の下端部に伸縮可能に重なり合うように取付けられた、前記伸縮リンク機構８、８の四角形状のリンク７、７、７が最大に伸長した寸法よりわずかに大きい幅寸法に設定された重なり合う複数個の天井可動パネル１０、１０と、この複数個の天井可動パネル１０、１０の先端部および後端部と重なり合うように、前記左右の天井躯体３ａ、３ａに固定された、該天井可動パネル１０、１０とほぼ同じ幅寸法の固定天井パネル１１、１２と、前記天井パネル支持杆９、９、９、９を、それぞれ垂直状態を保った状態で左右方向に移動できるように保持する保持手段１３、１３、１３、１３とで構成されている。
【００１３】
前記保持手段１３、１３、１３、１３は前記伸縮リンク機構８、８の複数個の中央枢支部６、６、６、６に枢支された天井パネル支持杆９、９、９、９を、常時垂直状態を保つように該伸縮リンク機構８、８の四角形状のリンク７、７、７の上部に後端部が枢支ピン１４、１４、１４で枢支され、先端部が重なるように枢支ピン１５で枢支されたリンク１６、１６、１６、１６と、これらのリンク１６、１６、１６、１６の先端部の枢支ピン１５、１５、１５、１５に取付けられた天井パネル支持杆９、９、９、９を上下移動可能に支持する支持筒１７、１７、１７、１７とで構成されている。
【００１４】
上記構成の天井用目地装置１は、通常時には左右の建物３、３間の天井目地部２は固定天井パネル１１、１２および天井可動パネル１０、１０が目地部の幅寸法Ｌの約５分の１ずつ重なり合った状態で、天井目地部２に隙間が生じることなく覆っている。
【００１５】
地震で天井目地部２が狭くなるように左右の建物３、３が揺れ動いた場合、図１０に示すように伸縮リンク機構８、８が収縮するため、該伸縮リンク機構８、８の中央枢支部６、６、６、６の間隔で狭くなる。すなわち、該中央枢支部６、６、６、６に枢支されている天井パネル支持杆９、９、９、９の間隔が狭くなり、該天井パネル支持杆９、９、９、９に取付けられている天井可動パネル１０、１０および固定天井パネル１１、１２との重なり寸法が大きくなって、その揺れ動きを約目地部の幅寸法の４分の１の狭さになるまで吸収することができる。
【００１６】
また、地震で天井目地部２が広くなるように左右の建物３、３が揺れ動いた場合、図１１に示すように伸縮リンク機構８、８が伸長するため、該伸縮リンク機構８、８の中央枢支部６、６、６、６の間隔は広くなる。すなわち、該中央枢支部６、６、６、６に枢支されている天井パネル支持杆９、９、９、９の間隔が広くなり、該天井パネル支持杆９、９、９、９に取付けられている天井可動パネル１０、１０および固定天井パネル１１、１２との重なり寸法が小さくなって、天井目地部２に隙間が生じることなく、その揺れ動きを吸収することができる。
【００１７】
なお、伸縮リンク機構８、８の伸縮時には保持手段１３、１３、１３、１３のリンク１６、１６、１６、１６の下端部も、該伸縮リンク機構８、８の四角形状のリンク７、７、７の伸縮に応じて伸縮するため、伸縮リンク機構８、８の中央枢支部６、６、６、６に枢支された天井パネル支持杆９、９、９、９を支持筒１７、１７、１７、１７で上下移動可能に支持するため、天井パネル支持杆９、９、９、９を垂直状態で左右方向に移動させることができる。
【００１８】
地震によって左右の建物３、３が異なる前後方向に揺れ動いた場合、図１２に示すように伸縮リンク機構８、８の両端部のヒンジ部材５、５で前後方向に回動して、その揺れ動きを吸収する。
【００１９】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図１３ないし図２２に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第１の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【００２０】
図１３ないし図１５に示す本発明を実施するための第２の形態において、前記本発明を実施するための第１の形態と主に異なる点は、４個の四角形状のリンク７、７、７、７を有するパンタグラフ形状の２個以上の伸縮リング機構８Ａ、８Ａ、この２個以上の伸縮リンク機構８Ａ、８Ａの中央枢支部６、６、６、６、６、６に枢支された天井パネル支持杆９、９、９、９、９、９、この天井パネル支持杆９、９、９、９、９、９に取付けられた天井可動パネル１０、１０、１０および前記天井パネル支持杆９、９、９、９、９、９を垂直状態で左右方向に移動できるように保持する保持手段１３、１３、１３、１３、１３、１３を用いた点で、このような機構や部品を用いて構成した天井用目地装置１Ａにしても、前記本発明を実施するための第１の形態と同様な作用効果が得られるとともに、比較的目地部の幅が広い部分にでも設置することができる。
【００２１】
図１６ないし図１８に示す本発明を実施するための第３の形態において、前記本発明を実施するための第２の形態と主に異なる点は、伸縮リンク機構８Ａ、８Ａの四角形状のリンク７、７、７、７の下部にリンク１６、１６、１６と支持筒１７、１７、１７とからなる保持手段１３、１３、１３を用いた点で、このような保持手段１３、１３、１３を用いて構成した天井用目地装置１Ｂにしても、前記本発明を実施するための第２の形態と同様な作用効果が得られるとともに、天井パネル支持杆９、９、９、９、９、９の枢支部の上下部の保持手段１３、１３、１３、１３、１３、１３で保持するため、強固に保持することができる。
【００２２】
図１９ないし図２２に示す本発明を実施するための第４の形態において、前記本発明を実施するための第１の形態と主に異なる点は、左右の天井躯体３ａ、３ａに持ち出しブラケット４、４、４、４を固定し、この左右の持ち出しブラケット４、４、４、４の先端部にヒンジ部材５、５、５、５を介して５個の四角形状のリンク７、７、７、７、７を有するパンタグラフ形状の２個以上の伸縮リンク機構８Ｂ、８Ｂを用いるとともに、この２個以上の伸縮リンク機構８Ｂ、８Ｂの中央枢支部６、６、６、６、６、６、６、６に枢支された天井パネル支持杆９、９、９、９、９、９、９、９にそれぞれ天井可動パネル１０、１０、１０、１０の中央部に先端部が位置し、かつ隣りの固定天井パネル１１、天井可動パネル１０等が内部に入り込む取付け金具１８、１８Ａ、１８Ｂ、１８Ｃを介して天井可動パネル１０、１０、１０、１０を取付けた点で、このように構成された天井用目地装置１Ｃにしても、前記本発明を実施するための第１の形態と同様な作用効果が得られる。
【００２３】
なお、取付け金具１８、１８Ａ、１８Ｂ、１８Ｃは天井目地部２が狭くなった場合に、隣りに位置する固定天井パネル１１や天井可動パネル１０に取付けられた取付け金具１８も入り込むように、順次天井可動パネル１０、１０、１０に取付けられる取付け金具１８Ａ、１８Ｂ、１８Ｃの高さ寸法が大きくなるように設定されたものが使用されている。
【００２４】
なお、前記本発明を実施する各形態では２個の伸縮リンク機構を用いるものについて説明したが、本発明はこれに限らず、天井目地部２が前後方向に長い場合は２個以上の３個、４個、５個等を配置してもよい。
【００２５】
また、保持手段１３として、２個の伸縮リンク機構８、８の上部に配置した、該２個の伸縮リンク機構８、８と同じ構成の伸縮リンク機構を用いたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【００２６】
本発明は目地部を介して設けられた左右の建物間の天井目地部を覆う天井用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【００２７】
１、１Ａ、１Ｂ、１Ｃ：天井用目地装置、
２：目地部、３：建物、
３ａ：天井躯体、４：持ち出しブラケット、
５：ヒンジ部材、６：中央枢支部、
７：四角形状のリンク、
８、８Ａ、８Ｂ：伸縮リンク機構、
９：天井パネル支持杆、１０：天井可動パネル、
１１、１２：固定天井パネル、１３：保持手段、
１４：枢支ピン、１５：枢支ピン、
１６：リンク、１７：支持筒、
１８、１８Ａ、１８Ｂ、１８Ｃ：取付け金具。

【特許請求の範囲】
【請求項１】
目地部を介して配置された左右の建物の、目地部側の左右の天井躯体の少なくとも一方の天井躯体に先端部が該目地部の中央部方向に突出するように所定間隔を介して固定された２個以上の持ち出しブラケットと、この２個以上の持ち出しブラケットの先端部あるいは、該２個以上の持ち出しブラケットの先端部と対応する他方の天井躯体との間に、複数個の中央枢支部の高さが変化することなく伸縮する複数個の四角形状のリンクを有するパンタグラフ形状の２個以上の伸縮リンク機構と、この２個以上の伸縮リンク機構の複数個の中央枢支部に枢支された天井パネルを支持する天井パネル支持杆と、この天井パネル支持杆に伸縮可能に重なり合うように取付けられた、前記伸縮リンク機構の四角形状のリンクが最大に伸長した寸法よりわずかに大きい幅寸法に設定された重なり合う複数個の天井可動パネルと、この複数個の天井可動パネルの先端部および後端部と重なり合うように、前記左右の天井躯体に固定された該天井可動パネルとほぼ同じ幅寸法の固定天井パネルと、前記天井パネル支持杆を、それぞれ垂直状態を保った状態で左右方向に移動できるように保持する保持手段とからなることを特徴とする天井用目地装置。
【請求項２】
２個以上の持ち出しブラケットは目地部の幅寸法の４分の１あるいは７分の１の寸法であることを特徴とする請求項１記載の天井用目地装置。
【請求項３】
保持手段は伸縮リンク機構の複数個の中央枢支部に枢支された天井パネル支持杆を、常時垂直状態を保つように該伸縮リンク機構の四角形状のリンクの上部、下部のいずれか一方あるいは両方に後部が枢支され、かつ先端部が重なるように枢支されたリンクと、これらのリンクの先端部の枢支部に取付けられた天井パネル支持杆を上下移動可能に支持する支持筒とで構成されていることを特徴とする請求項１記載の天井用目地装置。

【図１】