説明

天然ガス流を冷却し、冷却流を各種フラクションに分離する方法及びシステム

【課題】従来よりもエネルギー効率的で、小型で安価な、天然ガス流の冷却分離方法及びシステムを提供する。
【解決手段】天然ガス流(C)を冷却し、冷却ガス流をメタン、エタン、プロパン、ブタン及び凝縮物のような各種フラクションに分離する方法であって、該方法は、ガス流1、2を冷却し、冷却ガス流を入口分離槽4中で分離し、精留塔7中でメタン豊富な流体フラクション(CH)をメタン希薄な流体フラクション(C2+)から分離し、入口分離槽4からのメタン富化流体フラクションの少なくとも一部を、好ましくは膨張の等エントロピー効率が80%以上の超音速又は遷音速サイクロンのような、サイクロン式膨張兼分離装置8に供給し、サイクロン式膨張兼分離装置8からのメタン欠乏流体フラクションを更なる分離のため、精留塔7に供給する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス流を冷却し、冷却ガス流をメタン、エタン、プロパン、ブタン及び凝縮物のような各種フラクションに分離する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油及びガス工業では天然ガスが製造、処理され末端ユーザーに輸送されている。ガス処理には天然ガス流の少なくとも一部の液化が含まれてよい。天然ガス流を液化すると、液化天然ガス又はLNG(主としてメタン又は(C又はCH)、エタン(C)、液化石油(petrol)ガス又はLPG(主としてプロパン及びブタン又はC及びC)及び凝集物(主としてC+フラクション)を含む或る範囲のいわゆる天然ガス液体(NGL)が得られる。
【0003】
ガスを製造し、パイプライン(grid)経由で地域の顧客に輸送する場合、ガスの熱量は規格に制限される。豊富なガス流に対しては、残留製品として販売されるC+液体を回収するため、中心流処理を必要とする。地域のガス生産量が地域のガス消費量に勝れば、高価なガス伝送パイプラインは正当化できない。したがって、ガスは、ばら荷として船積み可能なLNGに液化してよい。C液体を製造する際、C+液体も同時に製造され、副産物として販売される。
【0004】
慣用のNGL回収プラントは、ガス流中の軽質分(ends)を凝縮するように極低温冷却法に基づいている。この冷却法は、機械的冷凍(MR)、Joule Thompson(JT)膨張及びターボ膨張器(TE)、又は組合わせ(例えばMR−JT)を含む。これらのNGL回収方法では、比圧縮能力(即ち、MW/メートルトンNGL/hr)について数十年に亘って最適化されてきた。最適化には、1)異なるプロセス流間の活発な熱交換、2)精留塔での異なる供給トレー及び3)希薄油の精留(即ち、塔還流)を行うことが多い。
【0005】
比圧縮能力に最も敏感なのは、精留塔の実際の操作圧力である。操作圧力が高いほど、比圧縮能力が低下する上、分留成分間の相対揮発度も低下し(例えば脱メタン器ではC−C+、脱エタン器ではC−−C+等)、多くのトレー、したがって塔の大型化及び/又は塔頂流の純度低下を生じる。
【0006】
Ortloff Corporationのヨーロッパ特許第0182643号及び米国特許第4,061,481号、同第4,140,504号、同第4,157,904号、同第4,171,964号及び同第4,278,457号は、天然ガス流を冷却し、メタン、エタン、プロパン、ブタン及び凝縮物のような各種フラクションに分離する天然ガス流の処理方法を開示している。
【0007】
公知の冷却分離法の欠点は、高エネルギーを消費する大型で高価な冷却兼冷凍装置を含むことである。これら公知の方法は、等エンタルピー冷却法(即ち、Joule Thompson、機械的冷凍)又はほぼ等エントロピー冷却法(即ち、ターボ膨張器、サイクロン式膨張兼分離装置)のいずれかに基づいている。ほぼ等エントロピー冷却法は、ターボ膨張器を使用した場合は、通常、最も高価であるが、エネルギー効率は高い。一方、サイクロン式膨張兼分離装置は高いエネルギー効率を維持しながら更にコスト効率的であるが、ターボ膨張器よりも作業効率は低い。コスト効率的なサイクロン式膨張兼分離装置を等エンタルピー冷却サイクル(例えば外部冷凍サイクル)と組合わせ使用すると、得られるエネルギー効率を最大限に回復できる。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第0182643号
【特許文献2】米国特許第4,061,481号
【特許文献3】米国特許第4,140,504号
【特許文献4】米国特許第4,157,904号
【特許文献5】米国特許第4,171,964号
【特許文献6】米国特許第4,278,457号
【特許文献7】国際特許出願WO 03029739
【特許文献8】ヨーロッパ特許第1017465号
【特許文献9】米国特許第6524368号
【特許文献10】米国特許第6776825号
【特許文献11】国際特許出願WO2004083691
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の目的は、公知の方法よりもエネルギー効率的で、小型で安価な、天然ガス流の冷却分離方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、天然ガス流を冷却し、冷却ガス流をメタン、エタン、プロパン、ブタン及び凝縮物のような各種フラクションに分離する方法が提供される。この方法は、
天然ガス流を少なくとも1つの熱交換器アッセンブリーで冷却する工程、
冷却天然ガス流を入口分離槽中でメタン富化流体フラクションとメタン欠乏流体フラクションとに分離する工程、
入口分離槽からのメタン欠乏流体フラクションを精留塔に供給して、メタン希薄な流体フラクションからメタン豊富な流体フラクションを分離する工程、
入口分離槽からのメタン富化流体フラクションの少なくとも一部をサイクロン式膨張兼分離装置に供給して、該流体フラクションを膨張させ、これにより更に冷却すると共に、メタン豊富なほぼガス状の流体フラクションとメタン欠乏のほぼ液状の流体フラクションとに分離する工程、及び
サイクロン式膨張兼分離装置からのメタン欠乏液状流体フラクションを更に分離するため精留塔に供給する工程、
を含む前記天然ガス流の冷却分離方法において、前記サイクロン式膨張兼分離装置が、
a)メタン富化流体フラクションに対し渦巻き運動を行わせるための渦巻き付与性羽根のアッセンブリーであって、該羽根は、メタン富化流体フラクションを加速し膨張させ、これにより、渦巻く流体流がメタン豊富な流体フラクションとメタン欠乏流体フラクションとに遠心力で分離されるように、更に冷却するノズルの上流に配列した該アッセンブリー、又は
b)流体出口チャンネルを流れる流体流に渦巻き運動を行わせ、これにより液滴を流体出口の外周に向かって渦巻かせ、合体させる渦巻き付与手段を備えた出口部を有するスロットルバルブ、
を有するというものである。
【発明の効果】
【0010】
天然ガス流は、第一熱交換器及び冷凍機を有する熱交換器アッセンブリー中で次のようにして冷却することが好ましい。即ち、サイクロン式膨張兼分離装置の入口に供給されたメタン富化流体フラクションの温度が−20〜−60℃であり、該サイクロン式膨張兼分離装置により排出されたメタン豊富な冷却フラクションが前記熱交換器アッセンブリーの第一熱交換器に通されて天然ガス流を冷却する。
【0011】
また熱交換機アッセンブリーが、天然ガス流を冷凍機に供給する前に第一熱交換器により排出された冷却天然ガス流を更に冷却する第二熱交換器を更に有し、精留塔の塔底部からの冷流体を、第二熱交換器内で天然ガス流を冷却するための第二熱交換器に供給することが好ましい。
【0012】
更に、Twister B.V.社製の商標“Twister”で販売されているサイクロン式膨張兼分離装置を使用することが好ましい。このようなサイクロン式膨張兼分離装置の各種実施態様は、国際特許出願WO 03029739、ヨーロッパ特許第1017465号、米国特許第6524368号及び同第6776825号に開示されている。サイクロン式膨張兼分離装置内の冷却は、ノズル内で供給原料(feed)流を遷音速又は超音速に加速することにより達成できる。遷音速又は超音速では、圧力は供給原料圧力の、通常、ファクター1/3に降下し、一方、温度は供給原料温度に対し、通常、ファクター3/4まで降下する。所定の供給原料組成物では単位圧力降下当たりの温度降下の比率は、膨張の等エントロピー効率(少なくとも80%)によって決定される。この等エントロピー効率は、サイクロン式膨張兼冷却装置内で生じる摩擦及び熱の損失を表す。
【0013】
本発明方法及びシステムのこれら及び他の実施態様、特徴及び利点を添付図面に開示すると共に、添付の特許請求の範囲、要約書、及び添付図面を参照した本発明方法及びシステムの好ましい実施態様を以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面の簡単な説明
図1は、本発明による天然ガス流の冷却、分別方法及びシステムの工程図である。
図2Aは、流体渦巻き用手段を備えたJTスロットルバルブにより供給されたサイクロン式膨張兼分離装置の縦断面図である。
【0015】
図2Bは、図1Aのスロットルバルブにおける出口チャンネルの拡大横断面図である。
図2Cは、図2A及び図2Bのスロットルバルブの出口チャンネルでの流体流の渦巻き運動を示す。
図2Dは、図2A及び図2Bのスロットルバルブの出口チャンネル外周での液滴の濃度を示す。
【0016】
好ましい実施態様の詳細な説明
図1は、本発明による天然ガス流の冷却、分別方法及びシステムの工程図である。
天然ガス流Cは、供給原料圧縮機20により約60バールから100バールより高い圧力に圧縮され、天然ガス流が第一気体−気体熱交換器1に入る際の圧力が約100バールに保持されるように、まず、圧縮天然ガス流は空気冷却器21中で冷却される。次いで天然ガス流は、第二熱交換器2及び引き続き冷凍機3で冷却される。熱交換器2によって排出された冷却天然ガス流は、入口分離器4中でメタン富化フラクション5とメタン欠乏フラクション6とに分離される。
【0017】
メタン欠乏フラクション6は、精留塔7に供給されるのに対し、メタン富化フラクション5はサイクロン式膨張兼分離装置8に供給される。
【0018】
サイクロン式膨張兼分離装置8は、渦巻き付与性羽根9、この渦巻き流体混合物をノズル内で遷音速又は超音速に加速するノズル10、分離器8からメタン豊富な流体フラクションCHを排出するための流体用中央主出口11、及び富化された凝縮物とメタン希薄な第二流体フラクションとを導管13に排出するための外側第二流体出口を備える。第二流体フラクションは、導管13経由で精留塔7に供給される。
【0019】
第一熱交換器1は、気体−気体熱交換器で、ここで天然ガス流CHは、サイクロン式膨張兼分離装置8の中央主出口11から排出された希薄第一ガス流CHで冷却される。第一熱交換器1により排出された予備冷却供給原料流は、更に第二熱交換器2で冷却される。第二熱交換器2は気体−液体熱交換器であってよく、矢印14、15で示すように、気体−液体熱交換器は、これに精留塔7の1つ以上の塔底トレーの液体を供給することにより冷却される。次いで予備冷却供給原料流は、冷却機(機械的冷凍機又は吸収冷却機のいずれか)で駆動される冷凍機3で過冷却される。
【0020】
この3段階予備冷却過程中に形成された液体は、入口分離器4中で、なおガス状のメタン富化フラクションから分離されるが、供給原料に存在する全ての重質分(即ち、C+)含有するので、精留塔7の下部トレーの1つに供給する。
【0021】
入口分離器の頂部から出るガスは、重質炭化水素(例えばC−が殆ど)については希薄で殆ど含まない。深部NGL抽出(例えばC〜C)は、サイクロン式膨張兼分離装置8中で行われる。ここでガスはほぼ等エントロピー的に膨張する。サイクロン式膨張兼分離装置8内の温度は、殆ど全てのC+成分が液化、分離する極低温条件まで更に降下する。このサイクロン式膨張兼分離装置8によって、CガスはC+液体と平行して滑動する。特定モル量のCフラクションはC+液体に溶解する。このC+の豊富な流れは、精留塔7に供給され、ここで軽質分と重質分との鋭い留分カット、例えばC−C+(脱メタン器)、C−−C+(脱エタン器)等が達成される。
【0022】
精留塔7から純粋な塔頂生成物を得るために、希薄液体還流を作って、塔底に残す必要のある最軽質成分(例えば脱メタン器ではC)を吸収する。このような還流を作るには、サイクロン式膨張兼分離装置8の供給原料から側流16を取りながら、引続きこの側流16を気体−気体予備冷却器17中、精留塔7の塔頂ガス流18(即ち、塔頂生成物CH)で冷却する共に、予備冷却した側流16を、塔の圧力まで等エンタルピー的に膨張させる。このような等エンタルピー的膨張中、殆ど全ての炭化水素は、液化し、精留塔7の頂部トレーに還流として供給される。1)サイクロン式膨張兼分離装置8の流体用主出口11(通常、80%の主流)及び2)精留塔7の頂部出口導管18(通常、20%の副流)から生成したCガス流は、別々にエクスポート(export)圧縮機19、20中で約60バールのエクスポート圧力に圧縮される。エクスポート圧力は、第一熱交換器1の入口の天然ガス流CHの供給原料圧力とほぼ同じである。したがって、エクスポート圧縮機19、20は、いずれもサイクロン式膨張兼分離装置8内で生じる摩擦及び熱の損失を補償する。サイクロン式膨張兼分離装置8での膨張が深く、したがって、エクスポート圧縮機の能力がこれに比例して高ければ、摩擦及び熱損失は大きくなる。冷凍機3の機械的能力は、高温の凝縮器温度(T凝縮器)と低温の蒸発器温度(T蒸発器)との差に主として比例する。Tを室温とすれば、T凝縮器>T>T蒸発器となる。これから一般に冷凍機3の単位機械的能力当たりカルノー効率又は理論的最大冷却能力の式が導かれる。
C.O.Pカルノー=Q冷却/W冷凍=T蒸発器/(T凝縮器−T蒸発器
蒸発器= −30℃でT凝縮器=40℃のプロパン冷凍機サイクルでは、カルノーC.O.Pは3.5に等しい。真の冷却器では、損失により、このC.O.Pは、C.O.P実際≒2.5のように縮小する。したがって、各MW圧縮機能力については、2.5MW冷却能力が得られる。
【0023】
10kg/sの供給原料流及び2.5kJ/kg.Kの比重には、1度の冷却に25kW/Kの冷却能力を必要とする。したがって、−20℃ → −30℃の冷却には250kWの冷却能力を必要とする。蒸発器温度−30℃の場合は、冷凍機の機械的能力100kWと一致する。サイクロン式膨張兼分離装置で余分な膨張により前記追加の冷却10℃が達成できれば、ディフォルト(default)0.3→0.25(即ち、更に深い膨張)に減らすために、膨張比(P/P供給原料)が必要である。その結果、サイクロン式膨張兼分離装置8に対して更に大きな圧力損失、したがって約200kWの追加のエクスポート圧縮機能力が生じる。
【0024】
冷凍機3の蒸発器温度をNGL還流温度、即ちT蒸発器= −70℃に匹敵する極低温範囲で選択すれば、冷却器のC.0.P.実際は、約1.3に降下する。その結果、−60℃ → −70℃への冷却には、冷凍機の機械的能力192kWと一致するが、なお250kW冷却能力を必要とする。この追加の冷却がサイクロン式膨張兼分離装置8で得られれば、余分に必要とする圧縮機能力が200kWから170kWに低下するものの、圧縮比は、なお0.3→0.25に下がる。これは、いずれの圧縮機の能力も低吸引温度で低く、したがって追加の能力も低いということで主として説明される。
【0025】
以上のことから結論すると、温度軌道−20℃ → −30℃の場合は、サイクロン式膨張兼分離装置8での深い膨張から得るよりも、冷凍機3から追加の冷却から得る方が一層効率的である。その反対に、温度軌道−60℃ → −70℃の場合、冷凍機3の冷却器のC0Pは、低温になるのに従って、次第に低下するので、更に冷凍機能力を必要とする。その結果、サイクロン式膨張兼分離装置3、8の組合わせでは、1)供給原料圧縮機20と2)冷凍機3の冷却器の圧縮機間の機械的能力を明確に分割することにより、単位機械的能力当たりの冷却能力に対する最適量が知見できる。
【0026】
サイクロン式膨張兼分離装置8内の冷却は、ノズル10内で供給原料流を遷音速又は超音速に加速することにより達成できる。遷音速又は超音速条件では、圧力は供給原料圧力の、通常、ファクター1/3に降下し、一方、温度は供給原料温度に対し、通常、ファクター3/4まで降下する。所定の供給原料組成物では単位P−降下当たりのT−降下の比率は、膨張の等エントロピー効率(≧80%)によって決定される。この等エントロピー効率は、サイクロン式膨張兼冷却装置内で生じる摩擦及び熱の損失を表す。
【0027】
サイクロン式膨張兼分離装置8内の膨張状態では、C+成分の大部分は微細な液滴分散物に液化され、外側第二流体出口12経由で分離される。膨張比(P/P供給原料)は、少なくとも特定のC回収物がノズル10内で液体に凝縮されるように選ばれる。流体流が加速され、これにより膨張、冷却されるノズル10を越えると、サイクロン式膨張兼分離装置8内の流れは、液体富化C+流(約20質量%)と液体希薄C流(約80質量%)とに分割される。
【0028】
主流は、流体用中央出口11内の拡散器中で減速され、圧力及び温度が上昇する。拡散器中のP−上昇及び付随したT−上昇は、膨張の等エントロピー(又は有効)効率及び再圧縮の等エントロピー効率の両方で決定される。膨張の等エントロピー効率は拡散器入口での残存運動エネルギーを決定し、一方、再圧縮の等エントロピー効率は拡散器態様内の損失によって決定される。サイクロン式膨張兼分離装置についての再圧縮の等エントロピー効率は約85%である。したがって、C主流の得られる出口圧力は供給原料圧力よりも低いけれども、精留塔の操作圧力に等しいC+湿潤流の出口圧力よりも高い。
【0029】
再圧縮の結果、C主流の温度は、精留塔頂部の温度よりも高い。したがって、供給原料を予備冷却するこのC主流の潜在的能力は制限される。後者は、遷音速又は超音速のサイクロン式膨張兼分離装置の固有の制限である。サイクロン式膨張兼分離装置の固有の効率は、精留塔に供給する濃厚な過冷却C+流湿潤流を生成することである。精留塔に供給する流量の低下及び比較的低温の両方によって塔内での分離処理が可能になる。サイクロン式膨張兼分離装置を含むLPG計画ではC+回収量の最適化は、サイクロン式膨張兼分離装置において深い膨張(即ち、P/P供給原料比の低下)を作る際、及び/又はC+湿潤流と並流するスリップガス流の減少の際に見られる。両処置(measures)により、エクスポート圧力に圧縮するのに必要な圧力損失が増大する。
【0030】
熱力学的シミュレーションから、C+収量/MW圧縮機能力の最適性は、サイクロン式膨張兼分離装置での圧力損失を補償するエクスポート圧縮機の能力に対する冷凍圧縮機の特定の能力について評価することが好ましい。前記組合わせサイクルは、制限された予備冷却の欠陥を補償する。冷凍サイクルの蒸発器は、供給原料流を過冷却するように、サイクロン式膨張兼分離装置8の入口に接続してよい。
【0031】
図2A〜2Dは、Joule Thomson(JT)又は他のスロットルバルブを示す。このようなスロットルバルブは、図1に示すサイクロン式膨張兼分離装置の代替品として使用できる流体渦巻き手段を備える。
図2A〜2Dに示すJTスロットルバルブは、Joule Thomson又は他のスロットルバルブの流路に平行する膨張中に形成された液滴の合体処理を増進するバルブ形状寸法(geometry)を有する。これら大きい液滴は、慣用のJoule Thomson又は他のスロットルバルブの場合よりも良好に分離可能である。これにより、トレー塔では、上部トレーへの液体同伴が減少し、したがって、トレー効率が向上する。
【0032】
図2Aに示すバルブは、バルブハウジング21内にピストン型バルブ本体22及び関連する穿孔スリーブ23が滑動可能に配置され、バルブシャフト25での歯車24の回転により、歯付きピストンロッド26がピストン型バルブ本体を、矢印28で示すように、流体出口チャンネル27中に押し上げ下げする。バルブは流体入口チャンネル29を備え、チャンネル29は環状下流部29Aを有する。下流部29Aは、ピストン22及び/又は穿孔スリーブ23を囲むことができる。流体入口チャンネル29から流体出口チャンネル27内に流動させる流体の束は、ピストン型バルブ本体22及び関連穿孔スリーブ23の軸位置により制御される。穿孔スリーブ23は、傾斜した非放射状穿孔30を有し、これらの穿孔は、矢印34で示すように、流体を流体出口チャンネル37内で渦巻き運動に流動させる。ピストン型バルブ本体22には弾丸形渦巻き案内体35が固定され、流体出口チャンネル27中で流体流の渦巻き運動34を増進し制御するために、穿孔スリーブ3内部及び出口チャンネル27内部に、中心軸31と同軸的に配置される。
【0033】
流体出口チャンネル27は、管状の流れ分割器39を有し、分割器39は、メタン富化フラクションを、図1に示す第一熱交換器1に戻し輸送するための流体用主出口導管11を、メタン欠乏フラクションを導管13経由で図1に示す精留塔7に輸送するための流体用環状副出口40から分離する。
【0034】
図2Bに詳細に示すように、傾斜又は非放射状穿孔30は円筒形で、各穿孔30の縦軸32が中心軸31を距離Dで交差するように、流体出口チャンネル27の中心軸31に対して選択された部分的に接線向きに穿孔されている。ここで距離Dは、スリーブ23の内側半径Rに対し0.2〜1倍、好ましくは0.5〜0.99倍である。
【0035】
図2Bでは穿孔スリーブ23の呼び材料厚をt、円筒形穿孔30の幅をdで示す。本発明バルブの代わりの実施態様では穿孔30は、正方形、長方形又は星形のような非円筒形で、この場合、穿孔30の幅dは、穿孔30の断面積を穿孔30の周囲で割った値の4倍と定義した平均幅である。d/t比は、好ましくは0.1〜2、更に好ましくは0.5〜1である。
【0036】
傾斜穿孔30は、矢印34で示すように、流体出口チャンネル27を流れる流体流に渦巻き流を作る。このような渦巻き運動は、バルブトリムの特殊な形状寸法及び/又は渦巻き案内体35によっても行える。本発明のバルブでは、この有用なフリー圧力は、流体流中に渦巻き流を作るための等エンタルピー膨張に使用される。次にこの運動エネルギーは、主として、バルブ下流に伸びるパイプの長さと平行する渦巻きの減衰によって消散する。
【0037】
図2C及び図2Dは、バルブの出口チャンネル中に渦巻き流を作る利点が2倍になることを示す。
1.正規の速度パターン→界面剪断の低下→液滴破壊の減少→大滴
2.流体出口チャンネル27流れ領域の外側円周部27Aでの液滴濃度→
大きい数の密度→合体向上→大滴38
いずれのJoule−Thomson又は他のチョーク及び/又はスロットル型バルブも本発明方法のサイクロン式膨張兼分離装置において渦巻き流を作るのに使用できるが、Mokveld Valves B.V.より供給され、国際特許出願WO2004083691に開示されるようなチョーク型スロットルバルブを用いるのが好ましい。
【0038】
NGL回収システムに利用される各冷却兼分離法は、エネルギー効率について特有の最適性を有することが理解されよう。ほぼ等エントロピー的冷却法は等エンタルピー法よりもエネルギー効率的であり、またこの等エントロピー的冷却法によるサイクロン式膨張装置はターボ膨張機よりもコスト効率的であるが、作業効率が低いことも注目される。本発明によれば、等エンタルピー的冷却サイクル(例えば機械的冷凍機)と、ほぼ等エントロピー的冷却法、好ましくはサイクロン式膨張兼分離装置とを組合わせると、エネルギー効率について相乗効果、即ち、生成NGLの単位容量当たり全能力を生じることが意外にも発見された。異なるサイクロン式膨張兼分離装置では異なる等エントロピー効率が得られることは理解されよう。
【0039】
本発明によるサイクロン式膨張兼分離装置の好ましいノズルアッセンブリーは、ノズルの上流に渦巻き付与性羽根のアッセンブリーを配置して構成され、≧80%の等エントロピー効率を生じるのに対し、向流渦流(例えばRange Hilsch渦管)を用いた、接線方向入口部を有する他のサイクロン式膨張兼分離装置では膨張の等エントロピー効率が<60%とかなり低い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による天然ガス流の冷却、分別方法及びシステムの工程図である。
【図2】図2Aは、流体渦巻き用手段を備えたJTスロットルバルブにより供給されたサイクロン式膨張兼分離装置の縦断面図である。図2Bは、図1Aのスロットルバルブにおける出口チャンネルの拡大横断面図である。図2Cは、図2A及び図2Bのスロットルバルブの出口チャンネルでの流体流の渦巻き運動を示す。図2Dは、図2A及び図2Bのスロットルバルブの出口チャンネル外周での液滴の濃度を示す。
【符号の説明】
【0041】
1 第一気体−気体熱交換器
2 気体−液体第二熱交換器
3 冷凍機
4 入口分離器又は入口分離槽
5 メタン富化フラクション
6 メタン欠乏フラクション
7 精留塔
8 サイクロン式膨張兼分離装置又は分離器
9 渦巻き付与性羽根
10 ノズル
11 流体用中央主出口
13 導管
16 側流
17 気体−気体予備冷却器
18 頂部出口導管
19 エクスポート圧縮機
20 エクスポート圧縮機又は供給原料圧縮機
21 空気冷却器又はバルブハウジング
22 ピストン型バルブ本体又はピストン
23 穿孔スリーブ
24 歯車
25 バルブシャフト
26 歯付きピストンロッド
27 流体出口チャンネル
27A 外側円周部
29 流体入口チャンネル
29A 環状下流部
30 非放射状(又は傾斜)穿孔
31 中心軸
32 穿孔の縦軸
34 渦巻き運動
35 弾丸形渦巻き案内体
37 流体出口チャンネル
38 大滴
39 管状の流れ分割
40 流体用環状副出口
天然ガス流
CH メタン豊富な(又は富化)流体フラクション
2+メタン希薄な(又は欠乏)流体フラクション
D 穿孔30の縦軸32が中心軸31と交差する距離
t 穿孔スリーブ23の呼び材料厚
d 円筒形穿孔30の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガス流を少なくとも1つの熱交換器アッセンブリーで冷却する工程、
冷却天然ガス流を入口分離槽中でメタン富化流体フラクションとメタン欠乏流体フラクションとに分離する工程、
入口分離槽からのメタン欠乏流体フラクションを精留塔に供給して、メタン希薄な流体フラクションからメタン豊富な流体フラクションを分離する工程、
入口分離槽からのメタン富化流体フラクションの少なくとも一部をサイクロン式膨張兼分離装置に供給して、該流体フラクションを膨張させ、これにより更に冷却すると共に、メタン豊富なほぼガス状の流体フラクションとメタン欠乏のほぼ液状の流体フラクションとに分離する工程、及び
サイクロン式膨張兼分離装置からのメタン欠乏液状流体フラクションを更に分離するため精留塔に供給する工程、
を含む、天然ガス流を冷却し、冷却ガス流をメタン、エタン、プロパン、ブタン及び凝縮物のような各種フラクションに分離する方法であって、前記サイクロン式膨張兼分離装置が、
a)メタン富化流体フラクションに対し渦巻き運動を行わせるための渦巻き付与性羽根のアッセンブリーであって、該羽根は、メタン富化流体フラクションを加速し膨張させ、これにより、渦巻く流体流がメタン豊富な流体フラクションとメタン欠乏流体フラクションとに遠心力で分離されるように、更に冷却するノズルの上流に配列した該アッセンブリー;又は
b)流体出口チャンネルを流れる流体流に渦巻き運動を行わせ、これにより液滴を流体出口の外周に向かって渦巻かせ、合体させる渦巻き付与手段を備えた出口部を有するスロットルバルブ;
を備える該方法。
【請求項2】
サイクロン式膨張兼分離装置の入口に供給されたメタン富化流体フラクションの温度が−20〜−60℃であり、該サイクロン式膨張兼分離装置により排出されたメタン豊富な冷却フラクションが、第一熱交換器及び冷凍機を有する熱交換器アッセンブリーの第一熱交換器に通されて天然ガス流を冷却することにより、天然ガス流が該熱交換器アッセンブリー中で冷却される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱交換機アッセンブリーが、天然ガス流を冷凍機に供給する前に第一熱交換器により排出された冷却天然ガス流を更に冷却する第二熱交換器を更に有し、精留塔の塔底部からの冷流体が、第二熱交換器内で天然ガス流を冷却するための第二熱交換器に供給される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
天然ガス流を冷却するための少なくとも1つの熱交換器アッセンブリー、
メタン富化流体フラクション排出用上部出口及びメタン欠乏流体フラクション排出用下部出口を備えた、冷却天然ガス流を分離するための入口分離槽、
入口分離槽の下部出口に接続され、入口分離槽の下部出口から排出されるメタン欠乏フラクションの少なくとも若干量を、メタン豊富なほぼガス状の流体フラクションとメタン希薄なほぼ液状の流体フラクションとに更に分離する精留塔、
入口分離槽の上部出口に接続され、メタン富化流体フラクションを膨張させ、これにより更に冷却すると共に、メタン豊富な流体フラクションとメタン欠乏流体フラクションとに分離するサイクロン式膨張兼分離装置、及び
サイクロン式膨張兼分離装置からのメタン欠乏流体フラクションを更に分離するため精留塔に供給するための供給導管、
を含む、天然ガス流を冷却し、冷却ガス流をメタン、エタン、プロパン、ブタン及び凝縮物のような各種フラクションに分離するシステムであって、前記サイクロン式膨張兼分離装置が、
a)メタン富化流体フラクションに対し渦巻き運動を行わせるための渦巻き付与性羽根のアッセンブリーであって、該羽根は、メタン富化流体フラクションを加速し膨張させ、これにより、渦巻く流体流がメタン豊富な流体フラクションとメタン欠乏流体フラクションとに遠心力で分離されるように、更に冷却するノズルの上流に配列した該アッセンブリー;又は
b)流体出口チャンネルを流れる流体流に渦巻き運動を行わせ、これにより液滴を流体出口の外周に向かって渦巻かせ、合体させる渦巻き付与手段を備えた出口部を有するスロットルバルブ;
を備える該システム。
【請求項5】
サイクロン式膨張兼分離装置が、ハウジング、バルブ本体を有するスロットルバルブであり、バルブ本体は、バルブ本体が流体入口チャンネルからバルブの流体出口チャンネルに入る流体流を制御するようにハウジング内に移動可能に配置され、更に穿孔スリーブを有し、使用時、バルブ本体が流体を流体入口チャンネルから流体出口チャンネルに流れるのを許容すれば、流体は穿孔スリーブ経由で流体入口チャンネルから流体出口チャンネルに流れ、スリーブの少なくとも若干の穿孔はスリーブの縦軸に対し少なくとも部分的に接線方向に配向し、これにより多相流体流は流体出口チャンネル内で渦巻きとなると共に、液滴は流体出口チャンネルの外周に向かって渦巻きとなって大きな液滴に合体する請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
スロットルバルブの出口チャンネルに気液分離アッセンブリーが接続され、ここでバルブによって排出された流体の液体相及びガス状相が少なくとも部分的に分離される請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
サイクロン式膨張兼分離装置が、ノズル上流の魚雷形中心本体から少なくとも部分的に放射方向に突き出た、ノズルの内径よりも大きい外径を有する渦巻き付与性羽根のアッセンブリーを備える請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
第一熱交換器の上流に配置された、供給原料圧縮機及び空気冷却器を更に備える請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
サイクロン式膨張兼分離装置の入口内温度を−20〜−60℃に維持するように構成した温度制御手段を備える請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
サイクロン式膨張装置がノズルを備え、該サイクロン式膨張装置のノズルにおける膨張の等エントロビー効率が少なくとも80%である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
魚雷形本体、渦巻き付与性羽根アッセンブリー及びノズルが、ノズルにおける膨張の等エントロビー効率が少なくとも80%となるよう構成される請求項7に記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−531964(P2008−531964A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556616(P2007−556616)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060260
【国際公開番号】WO2006/089948
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507220914)
【Fターム(参考)】