説明

天然免疫グロブリン結合試薬とその作製及び使用方法

抗体を含む単離天然免疫グロブリン結合試薬と、前記天然免疫グロブリン結合試薬を含む製品、組成物及びキットを提供する。標識試薬と試料又は試薬を含む支持体も提供する。試薬のスクリーニング、作製及び使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願はUSSN60/509,850(発明の名称“NATIVE IMMUNOGLOBULIN BINDING REAGENTS AND METHODS FOR MAKING AND USING SAME”発明者Seed及びLi,出願日2003年10月8日)の非仮特許出願である。本願はUSSN60/509,850の優先権を主張し、その開示内容全体を参考資料として全目的で本明細書に組込む。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は一般に変性免疫グロブリンよりも天然免疫グロブリンと優先的に結合する結合試薬に関する。本発明は一般にこれらの結合試薬の作製方法と、各種研究、診断及び治療背景におけるその使用方法にも関する。これらの方法と結合試薬は限定されないが、抗体に対する抗体に関するものを含めた広範な免疫相互作用の分析(例えばイムノブロットした蛋白質の分析)を実質的に改善及び強化する。本発明は新規抗体とその作製及び使用方法にも関し、限定されないが、天然免疫グロブリンと優先的に結合するモノクローナル抗体とポリクローナル抗体が挙げられる。本発明はこのようなモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマと、前記抗体をコードする核酸分子を発現する組換え宿主細胞にも関する。本発明はこれらの抗体と結合試薬を利用する研究、治療及び診断方法及び組成物、並びに前記組成物を含むキットにも関する。
【背景技術】
【0003】
モノクローナル抗体生産の最初の実証の1つは1975年にKohlerとMilsteinにより行われた[256 NATURE 495−497(1975)]。以来、各種ハイブリッド細胞(「ハイブリドーマ」と言う)の作製と各種科学研究におけるこれらのハイブリドーマにより産生された抗体の使用に多大な労力が払われている。例えば、ハイブリドーマからモノクローナル抗体を生産する試みの成果、問題及び各種実例のいくつかを例証した米国特許第4,515,893号(発明の名称“Hybrid Cell Line for Producing Complement−Fixing Monoclonal Antibody to Human T Cells”)参照。モノクローナル抗体の生産は使用する抗原の種類と所望ハイブリドーマの単離に使用する選択方法に影響される。
【0004】
免疫系は蛋白質混合物中の多量の免疫優性エピトープに対して応答を発生する傾向があるため、これらの従来のモノクローナル抗体生産技術の多くは免疫優性エピトープに対するモノクローナル抗体を作製している。免疫原性が殆どないか又は弱い蛋白質に特異的な抗体を生産しようとすると、問題が生じることが多い。更に、他の蛋白質との間に有意な配列類似性をもつ蛋白質に特異的な抗体の単離も困難である。サブトラクティブ免疫は少量であるか、免疫原性が低いか、及び/又は他の蛋白質と配列又は構造が類似する抗原に特異的な抗体を作製するために利用されている定着技術である[Zijlstraら,“Targeting the Proteome/Epitome,Implementation of Subtractive Immunization”,303(3)BIOCHEM.BIOPHYS.RES.COMMUN.,733−744(2003);Lian−June Yang and Wen−Liang Wang,“Preparation of Monoclonal Antibody Against Apoptosis−Associated Antigens of Hepatoma Cells by Subtractive Immunization”,8(5)WORLD J.GASTROENTEROL,808−814(2002)]。
【0005】
細胞溶解液等の粗蛋白質混合物からの標的蛋白質の精製と同定は一般に免疫沈降法の後にイムノブロット法を実施することにより行われる。免疫沈降法は該当蛋白質を捕獲及び沈降させるために樹脂等の不溶性支持体に固定した特異抗体を利用するものである。未結合蛋白質を遠心により除去し、該当蛋白質を溶出用緩衝液により固体支持体から回収すると共に樹脂に結合した抗体を変性させて遊離させる。
【0006】
細胞生物学研究で一般に使用されている古典的な免疫沈降法は免疫沈降した蛋白質バンドをSDS−PAGE分析により分離する。しかし、SDS−PAGEにより分析される蛋白質は樹脂から遊離した変性抗体に由来する重鎖と軽鎖も含んでいる。従って、特にSDS−PAGE分離後にイムノブロット法(例えばウェスタンブロット)を実施する場合には、ブロット抗体を検出するために使用される標識二次抗体は免疫沈降抗体の変性重鎖及び軽鎖とも反応するので精製蛋白質の分析が困難になる。該当蛋白質の分子量が抗体重鎖又は軽鎖に近いために蛋白質がそれらの存在によりマスクされる場合にはデータ解釈が更に困難になる。
【0007】
プロテオミクス研究は蛋白質発現パターン、蛋白質−蛋白質相互作用、翻訳後修飾及び蛋白質機能等の多数の研究のために古典的免疫沈降法/イムノブロット法に主に依存している。イムノブロットに及ぼす変性重鎖及び軽鎖の存在の影響を除去又は最小限にすることを目的とした現在利用可能な技術と製品は不十分であり、用途が限られており、これらの問題の良好な解答にはなっていない。Rockford,ILに所在のPierce Chemical製品「Seize X」は抗原結合部位がプロテインA又はG支持体側を向かないように抗体を正しく配向してビーズ上のプロテインA又はGと一次抗体を架橋させるために架橋剤DSSを使用している。この固定化技術により研究者らは一次抗体を再使用することができ、その最終試料中の重鎖と軽鎖による汚染を低減することができる。しかし、Seize Xキットには、(i)免疫沈降の強化のためにこれを使用するには更に1時間を要するという時間の問題と、(ii)操作に付加段階を要するという複雑さの問題等の欠点がある。
【特許文献1】米国特許第4,515,893号
【非特許文献1】Zijlstraら,“Targeting the Proteome/Epitome,Implementation of Subtractive Immunization”,303(3)BIOCHEM.BIOPHYS.RES.COMMUN.,733−744(2003)
【非特許文献2】Lian−June Yang and Wen−Liang Wang,“Preparation of Monoclonal Antibody Against Apoptosis−Associated Antigens of Hepatoma Cells by Subtractive Immunization”,8(5)WORLD J.GASTROENTEROL,808−814(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明以前に、この目的で天然免疫グロブリンを優先的に認識する試薬は入手できなかった。本発明はこのような試薬と、以下の記載を精読することにより理解される他の特徴を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は1態様において新規結合試薬と、天然免疫グロブリンを優先的に検出するためのその利用方法を提供する。これらの結合試薬とその作製及び使用方法は限定されないが、イムノブロットした蛋白質の検出法のように天然抗体分子の検出を伴う任意方法等の広範な研究、診断及び治療法で実質的に結果を強化する。本発明の結合試薬とその利用方法は抗体に対する抗体を使用する任意場合に広範な研究技術及び診断法でも有用である。
【0010】
これらの結合試薬を本明細書では天然免疫グロブリン特異的結合試薬(NIgSBR)と言う。NIgSBRは任意型の分子又は化合物とすることができ、限定されないが、有機及び無機小分子、蛋白質、ペプチド、抗体、核酸、多糖、又は天然免疫グロブリンと特異的に結合する他の任意分子が挙げられる。例えば、NIgSBRはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体部分、抗体フラグメント、抗体変異体、組換え蛋白質、ポリマースカフォールド、組換え化合物、ポリペプチド、哺乳動物システムで作製されたポリマー、非哺乳動物システムで作製されたポリマー、ファージディスプレイにより大腸菌で作製されたポリマー等とすることができる。
【0011】
これらのNIgSBRは例えば1種以上の化合物をスクリーニングし、天然免疫グロブリンと特異的に結合する化合物を同定することにより生産することができる。例えば、NIgSBRは抗体ライブラリー、蛋白質スカフォールドライブラリー、ペプチドディスプレイライブラリー、特異的進化ライブラリー、蛋白質アレイライブラリー等のライブラリーから同定することができる。NIgSBRを含む組成物はNIgSBRと、組成物の用途に応じて希釈剤、アジュバント、キャリヤー等の他の材料を含有することができる。NIgSBRは例えば化学発光剤、放射性同位体、酵素、蛍光剤、発色剤等で標識することができる。同様に、NIgSBRを含む製品(例えば研究又は診断用キット)は更にパッケージング材料と支持体に固定化した組成物を含む容器を含むことができる。
【0012】
本発明は天然免疫グロブリンの検出及び/又は定量を可能にする結合特異性をもつNIgSBRを提供するNIgSBRの同定及び単離方法を含む。本発明のNIgSBRでは液相又は固相検出法を使用することができる。例えば、好ましい各種検出フォーマットにおいて、NIgSBR又はNIgSBRにより検出される試料は固体支持体(例えばビーズ、プレート、シート、ストリップ、ウェル、チューブ等)に固定することができる。あるいは、液相検出フォーマットを使用することができ、その後に例えば結合成分の電気泳動を実施することができる。
【0013】
上記のように、本発明は好適側面では新規抗体を含むNIgSBRと、天然免疫グロブリンを優先的に検出するための方法で使用するその作製方法を提供する。例えば、本発明は免疫グロブリン抗原に対する抗体をスクリーニングし、天然免疫グロブリンと特異的に結合する抗体を同定することにより、抗天然免疫グロブリン特異抗体(この場合に該当NIgSBRは「抗NigSAb」である)等の少なくとも1種の天然免疫グロブリン特異的結合試薬を生産する方法を提供する。抗体は本明細書に記載する任意形態をとることができ、NIgSBR一般について記載する任意検出フォーマットで使用することができる。これらの抗体は限定されないが、イムノブロットした蛋白質の検出法のように天然抗体分子の検出を伴う任意方法等の広範な研究、診断及び治療法で実質的に結果を強化する。本発明の方法と抗体は例えば抗体に対する抗体を使用する任意場合に広範な研究技術と診断法にも有用である。本発明の方法と抗体は天然免疫グロブリンと特異的に結合できるというユニークな特徴により、限定されないが、免疫沈降法やウェスタンブロット法を含む免疫法で使用する場合に実質的に結果を改善する。
【0014】
従って、例えばその天然状態と変性状態の免疫グロブリンを区別する能力をもつ単離抗NIgSAbを含む均質抗体製剤が提供される。本発明の抗体は例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体部分、抗体フラグメント、抗体変異体、抗NIgSAb、抗NIgSAb部分、抗NIgSAbフラグメント、又は抗NIgSAb変異体とすることができる。抗体はヒト、霊長類、齧歯類、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ウマ、ロバ、ヒツジ、又はヤギ等の哺乳動物で産生させてもよいし、及び/又はキメラヒト化抗体でもよいし、及び/又はCDRグラフト抗NigSAbでもよい。
【0015】
例えば、抗体は変性免疫グロブリンの投与後に天然免疫グロブリンを免疫するサブトラクティブ免疫により哺乳動物で産生させることができる。得られたポリクローナル抗体を例えば不溶性支持体(例えばビーズ、プレート、ウェル、チューブ、膜又はシート)に固定した変性免疫グロブリンでサブトラクトすることができる。
【0016】
抗NigSAbと適切な希釈剤、アジュバント、又はキャリヤーを含有する組成物も提供する。本明細書に記載し、実施可能になった切断産物と他のその特定部分及び変異体、抗NIgSAb組成物、コーディング又は相補的核酸、ベクター、宿主細胞、抗NigSAb産生用細胞株、組成物、製剤、装置、製品(例えばキット)、トランスジェニック動物、トランスジェニック細胞、トランスジェニック植物、並びにその作製及び使用方法と、当分野で公知のものとのそれらの組み合わせも提供する。
【0017】
例えば、本発明はパッケージング材料と少なくとも1種のNIgSBR(例えば単離抗NIgSAb)を含む容器を含む例えば研究又は診断用製品を提供する。NIgSBR(例えば抗NigSAb)は製品を使用し易くするために一般に検出可能に標識されている。入手可能な任意標識を使用することができ、例えば化学発光剤、放射性同位体、酵素、蛍光剤、発色剤等が挙げられる。1例では、標識は検出可能な生成物を生成する酵素を含む。例えば、酵素はHRP酵素とすることができる。キット形態の製品は更に例えば抗NigSAb又は他のNIgSBR、対照試薬、希釈剤等の使用説明書を含むことができる。
【0018】
本発明の少なくとも1種の抗体は少なくとも1種の天然免疫グロブリン蛋白質、サブユニット、コンホメーション、フラグメント、部分又はその任意組み合わせに特異的な少なくとも1個の特定エピトープと結合し、このようなエピトープとしては限定されないが、任意クラス又はアイソタイプの免疫グロブリン分子に由来する天然重鎖又は軽鎖に存在する任意エピトープが挙げられる。少なくとも1個のエピトープは前記蛋白質の少なくとも一部を含む少なくとも1個の抗体結合領域を含むことができ、前記エピトープは線状でも立体構造でもよく、少なくともその一部の1〜5個又は5個以上のアミノ酸から構成することができ、限定されないが、前記免疫グロブリン蛋白質の天然形又はその任意部分に存在する少なくとも1個の線状又は立体構造のドメインが挙げられる。線状エピトープはアミノ酸の連続配列を含み、コンホメーションエピトープは連続でなくてもよいが、抗原の一次、二次、三次又は四次構造から形成されるアミノ酸を含む。本発明の少なくとも1種の抗体は非変性免疫グロブリンと結合することが好ましい。
【0019】
本発明の別の態様における少なくとも1種の抗NIgSAbは場合により少なくとも1個の相補性決定領域(CDR)(例えば重鎖又は軽鎖可変領域のCDR1、CDR2又はCDR3)及び/又は少なくとも1個の定常又は可変フレームワーク領域又はその任意部分の少なくとも1個の特定部分を含むことができる。抗NIgSAbアミノ酸配列は更に場合により本明細書に記載するか又は当分野で公知のように少なくとも1個の特定置換、挿入又は欠失を含むことができる。
【0020】
本発明は本明細書に記載するような少なくとも1種の単離モノクローナル抗NIgSAbを提供し、前記抗体は限定されないが、天然免疫グロブリン分子と優先的に結合する能力等の少なくとも1種の活性をもつ。従って、抗NIgSAbはモノクローナル抗体であるかポリクローナル抗体であるかに関係なく、公知方法に従って対応する活性をスクリーニングすることができる。
【0021】
本発明の別の態様では、(i)前記抗体を産生するハイブリドーマと;(ii)ポリクローナル抗体と;(iii)天然免疫グロブリンと優先的に結合する他の結合試薬の作製方法を提供する。
【0022】
関連態様では、本発明はハイブリドーマ又は組換え宿主細胞で少なくとも1種の抗NIgSAbを発現させるための少なくとも1種の方法として、抗NIgSAbが検出可能及び/又は回収可能な量で発現されるような条件下で本明細書に記載するようなハイブリドーマ又は組換え宿主細胞を培養する段階を含む方法も提供する。抗NIgSAbを発現する組換え宿主細胞は抗NIgSAbをコードする核酸分子を含む。
【0023】
別の態様では、本発明は(a)本明細書に記載するような1種以上の単離抗NIgSAbをコードする核酸、組換え宿主細胞、抗NIgSAb、NIgSBR、及び/又はハイブリドーマと;(b)適切なキャリヤー又は希釈剤を含有する少なくとも1種の組成物も提供する。キャリヤー又は希釈剤は場合により公知キャリヤー又は希釈剤に準じて試薬グレードでも医薬的に許容可能でもよく、乾燥又は凍結乾燥形態でもよい。組成物は場合により更に少なくとも1種の付加化合物、蛋白質又は組成物を含有することができる。本発明の1態様では、これらの組成物の1種以上を含むキットも含む。
【0024】
本発明のNIgSBRと方法を使用すると、例えば標準免疫沈降法から持ち込まれる可能性のある汚染性変性抗体により最終イムノブロット段階が妨害されない。本発明のNIgSBR及び抗NIgSAbはイムノブロット上の該当蛋白質の検出を実質的に強化し、データ解釈及び提示を実質的に改善する。本発明のNIgSBR,抗NIgSAb、並びにその作製及び使用方法は限定されないが、天然免疫グロブリン分子と変性免疫グロブリン分子が介在し得る方法等の広範な研究、治療及び診断法に適している。
【0025】
本発明の方法は一般に使用されているイムノブロットプロトコールに付加段階を加えず、細胞生物学及びプロテオミクス研究実験室で一般に使用されている方法に変更を必要としない。免疫沈降段階から持ち込まれる一次抗体の変性重鎖及び軽鎖がイムノブロット上に存在している可能性があるが、これらは本発明の又はNIgSBR抗NIgSAbにより全く又は殆ど検出されない。本発明のNIgSBR、抗NIgSAb、及び方法は変性抗体の検出を省くことによりイムノブロットした蛋白質の分析を実質的に簡略にし、強化する。
【0026】
本発明は1関連側面において、少なくとも1種の特定配列、ドメイン、部分又はその変異体を含む特定NIgSBR(例えば抗NIgSAb)をコードするポリヌクレオチドを含むか、これに相補的であるか、又はこれとハイブリダイズする単離核酸分子も提供する。本発明は更に前記抗NIgSAb核酸分子を含む組換えベクター、前記核酸及び/又は組換えベクターを含む宿主細胞、並びに前記抗体核酸、ベクター及び/又は宿主細胞の作製及び/又は使用方法も提供する。
【0027】
上記及びその他の広範な本発明の態様は本明細書の開示から当業者に容易に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は抗NIgSAb等の単離NIgSBRと、その作製方法、前記試薬を含有する組成物及びキット、並びに抗NIgSAbをコードする核酸分子を提供する。本発明は更に限定されないが、研究、治療及び診断方法及び装置等の本発明のNIgSBR及び抗NIgSAbの使用方法も含む。本発明のNIgSBR及び抗NIgSAbは天然免疫グロブリンと特異的に結合する。
【0029】
「特異的に結合する」とは抗体等の結合試薬が天然免疫グロブリン蛋白質の特定ポリペプチド(例えばエピトープ)と高いアビディティ及び/又は高い親和性で結合することを意味する。この特定ポリペプチド上のエピトープと抗体の結合は他の任意エピトープ、特に該当特定ポリペプチドと会合している分子中又は該当特定ポリペプチドと同一試料中に存在し得るエピトープと同一抗体の結合よりも強力であることが好ましく、例えば抗体は免疫グロブリンの変性形態又はフラグメントよりも天然免疫グロブリンと強力に結合するため、結合条件を調節することにより、抗体は天然免疫グロブリンとより高い優先度で結合し、免疫グロブリンの変性形態又はフラグメントとの優先度は低い。該当天然免疫グロブリンポリペプチドと特異的に結合する抗体は検出可能なレベルではあるが低レベル(例えば該当天然免疫グロブリンポリペプチドに対する結合の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、1%以下、又は0.1%以下)で変性免疫グロブリン等の他のポリペプチドと結合することが可能である。このような結合差、あるいはバックグラウンド結合は例えば適当な対照の使用による該当天然免疫グロブリンポリペプチドとの特異的抗体結合から容易に区別することができる。しかし、当業者に容易に理解される通り、天然免疫グロブリンと変性免疫グロブリンに対する結合に検出可能な差があるならば、該当天然免疫グロブリンと優先的に結合することが明らかである。一般に、約10モル/リットル以上、又は約10、又は約10モル/リットル以上の結合親和性で天然免疫グロブリンと優先的に結合する本発明の抗NIgSAbは天然免疫グロブリンと特異的に結合する。
【0030】
抗NigSAb等の「単離」生体成分は副生する生体成分から部分的又は完全に精製される成分である。例えば、抗NigSAbは抗NigSAbの生産に使用される細胞材料から部分的に精製することができる。単離なる用語は均質までの完全な精製を必要とせず、該当成分は一般に該当アッセイで有用であるために十分な程度まで精製される。本発明の抗NigSAbは抗NigSAb又はそのコーディング材料(例えば組換え核酸、遺伝子、ポリヌクレオチド等)が人的介入により生産又は改変されていることを意味する「組換え」とみなすこともできる。一般に、組換え分子の部分の配置は天然配置ではなく、組換えポリヌクレオチド又はポリペプチドの一次配列は何らかの方法で操作されている。組換え材料を生成する改変はその天然環境又は状態内で材料に実施してもよいし、あるいは外部に取り出してもよい。例えば、天然核酸はその起源である細胞内で実施される人的介入により改変されるか又は改変されたDNAから転写される場合に組換え核酸となる。遺伝子配列オープンリーディングフレームはそのヌクレオチド配列がその天然背景から取り出されて任意型の人工核酸ベクターにクローニングされた場合に組換えである。組換え分子、特に組換え核酸を生産するためのプロトコールと試薬は当分野でよく知られており、日常的に行われている。「組換え」なる用語は組換え材料をもつ生物(例えば組換え核酸を含む細胞、植物又は動物)を意味する場合もある。所定態様では、組換え生物はトランスジェニック生物である。
【0031】
本発明のNIgSBR及び抗NIgSAbは場合により検出可能に標識されたNIgSBR又は検出可能に標識された抗NIgSAbを提供するように検出可能に標識することができる。「検出可能に標識」、「検出可能に標識されたNIgSBR」又は「検出可能に標識された抗NIgSAb」とは検出可能な標識を付着した任意物質(抗体もしくは抗体フラグメント又は天然免疫グロブリンに対する結合特異性を維持する他の任意化合物)を意味する。検出可能な標識は一般に化学結合により付着されるが、標識がポリペプチドである場合には、遺伝子組換え技術により付着することもできる。検出可能に標識された蛋白質の生産方法は当分野で周知である。検出可能な標識は当分野で公知の各種標識から選択することができるが、一般には放射性同位体、フルオロフォア、常磁性標識、酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)、又は検出可能なシグナル(例えば放射能、蛍光、発色)を発生するかもしくは標識をその基質に暴露した後に検出可能なシグナルを発生する他の部分もしくは化合物である。各種の検出可能な標識/基質対(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ/ジアミノベンジジン、アビジン/ストレプトアビジン、ルシフェラーゼ/ルシフェリン)、抗体等の化合物の標識方法、及び標識抗体の使用方法が当分野で周知である(例えば、Harlow and Lane,eds.(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1988)参照)。
【0032】
本発明のNIgSBRは任意型の物質とすることができ、蛋白質、抗体、ペプチド、核酸、炭水化物、多糖、及びその部分もしくはフラグメント、又は天然免疫グロブリンと特異的に結合する他の任意有機もしくは無機分子が挙げられる。
【0033】
本発明の抗体は限定されないが、本発明の抗体に含むことができる重鎖もしくは軽鎖もしくはそのリガンド結合部分の少なくとも1個の相補性決定領域(CDR)、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域、又はその任意部分等の免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む分子を含む任意蛋白質又はペプチドを含む。本発明の抗体は限定されないが、ヒト、マウス、ウサギ、ラット、齧歯類、ヤギ、霊長類、又はその任意組み合わせ等の任意動物を含むか又はそれに由来することができる。
【0034】
結合試薬又は抗体/抗原結合力
抗原と抗体(又は任意結合試薬)を結合する力は任意の2種の無関係の蛋白質(例えばヒト血清アルブミンやヒトトランスフェリン等の他の巨大分子)間に生じる非特異的相互作用と本質的に変わらない。これらの分子間力は一般に(1)静電力;(2)水素結合力;(3)疎水力;及び(4)ファンデルワールス力の主に4種類に分類される。静電力は2本の蛋白質側鎖上の逆電荷のイオン基間の吸引による。吸引力(F)は電荷間の距離(d)の二乗に反比例する。水素結合力は−−OH、−−NH及び−−COOH等の親水基間の可逆的水素架橋の形成により提供される。これらの力は主にこれらの基をもつ2分子の緊密配置に依存する。疎水力は水中の油滴が結合して大きな1個の液滴を形成すると同様に作用する。従って、バリン、ロイシン及びフェニルアラニン上の側鎖等の非極性疎水基は水性環境で会合する傾向がある。最後に、ファンデルワールス力は外部電子雲間の相互作用に依存する分子間に生じる力である。
【0035】
各種力の各々に関するその他の情報はI.M.Roitti編(6th Edition)“Essential Immunology”Blackwell Scientific Publications,1988から得られる。本発明に関して、NIgSBR又は抗NIgSAbはこれらの力の一部又は全部を示す。これらの力を大量に蓄積することにより、天然免疫グロブリン蛋白質に対して高度の親和性は結合力をもつNIgSBR又は抗NIgSAbを得ることができる。当業者は本明細書に記載する方法と当分野で一般に入手可能な方法を併用することにより天然免疫グロブリンに対する特異結合について広範な化合物又は抗体を容易にスクリーニングすることができる。
【0036】
結合試薬又は抗体/抗原結合強度の測定
NIgSBR又は抗NIgSAbと天然免疫グロブリンの結合親和性は測定することができ、上記全力の測定の蓄積である。このような測定を実施するための標準方法は当業者に周知であり、天然免疫グロブリンに対する本発明の任意化合物又は抗体の親和性を測定するために直接適用することができる。
【0037】
抗体/抗原結合親和性を測定する標準方法の1つは抗原に浸透性であり且つ抗体に非浸透性の材料から構成される容器である透析チューブの使用である。この方法は本発明の非抗体NIgSBR等の抗体以外の他の結合試薬にも有用である。抗体と完全又は部分的に結合した抗原を水等の溶媒中で透析チューブに入れる。次に、抗体又は抗原を入れずに溶媒(例えば水)のみを入れた大型容器にチューブを移す。抗原のみがチューブの透析膜を通って拡散することができるので、透析チューブ内の抗原の濃度と外部の大型容器内の抗原の濃度は平衡し始める。透析チューブを大型容器に入れて平衡に達するまで経過させた後に、透析チューブ内と周囲容器内の抗原の濃度を測定した後、濃度差を決定することができる。こうして、透析チューブ内で抗体に結合したままの抗原量と抗体から解離して周囲容器内に拡散する量を計算することができる。周囲容器内に拡散する抗原を除去するように周囲容器内の溶媒(例えば水)を絶えず交換することにより、透析チューブ内で抗体を抗原から完全に解離させることができる。周囲溶媒が交換されないならば、システムは平衡に達し、反応の平衡定数(K)、即ち抗体と抗原の会合と解離を計算することができる。平衡定数(K)は透析チューブ内の抗原に結合した抗体の濃度を遊離抗体結合部位濃度で割り、遊離抗原濃度を掛けた値として計算される。平衡定数又は「K」値は一般に1モル当たりのリットル値として測定される。K値は抗原と抗体の複合体と比較した遊離状態の抗原と抗体の遊離エネルギーの差の尺度である。
【0038】
結合試薬又は抗体アビディティ
上記のように、「親和性」なる用語は抗体等の結合試薬と単一抗原決定基の結合を意味する。しかし、多くの場合には抗体と多価抗原の相互作用が問題となる。「アビディティ」なる用語はこの結合を表すために使用される。アビディティに寄与する因子は複雑であり、抗原上の2個以上の決定基と決定基自体の不均質性に対するポリクローナル試料中の抗体の不均質性が挙げられる。大半の抗原は多価であるため、2個の抗原分子と抗体の結合は個々の抗体相互作用の算術的合計よりも大きくなり、場合によっては何倍にもなる。従って、抗血清と多価抗原の間のアビディティ測定値は抗体と単一抗原決定基の間のアビディティよりも多少大きいと理解することができる。
【0039】
本明細書で使用する「エピトープ」なる用語は抗原結合領域の1個以上で結合試薬又は抗体により認識されて結合することが可能な任意分子の部分を意味する。エピトープは任意分子又はその基とすることができ、限定されないが、アミノ酸と糖側鎖が挙げられ、特定三次元構造又はコンホメーションをもつことができる。エピトープは当分野で一般に使用されている用語としての一次、二次、三次又は四次構造を含む蛋白質分子の任意部分を含むことができる。
【0040】
本明細書で使用する「抗NIgSAb」、「抗NIgSAb部分」、又は「抗NIgSAbフラグメント」及び/又は「抗NIgSAb変異体」等は限定されないが、重鎖もしくは軽鎖もしくはそのリガンド結合部分の少なくとも1個の相補性決定領域(CDR)、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域、又はその任意部分等の免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む分子を含む任意蛋白質又はペプチドを含む。非限定的な例として、本発明の適切な抗NIgSAb、特定部分又は変異体は少なくとも1種の天然免疫グロブリン分子、又はその特定部分、変異体もしくはドメインと結合することができる。抗NIgSAb又は「抗体」なる用語は更に抗体、抗体消化フラグメント、特定抗体部分及びその変異体(抗体ミメティクス、あるいは抗体又は1本鎖抗体とそのフラグメント等の特定フラグメントもしくはその部分の構造及び/又は機能に似た抗体部分を含む)を含む。機能的フラグメントとしては、非変性免疫グロブリン分子と結合する抗原結合フラグメントが挙げられる。例えば、天然免疫グロブリン分子又はその部分と結合することができる抗体フラグメントが本発明に含まれ、限定されないが、(例えばパパイン消化による)Fab、(例えばペプシン消化と部分還元による)Fab’及び(例えばペプシン消化による)F(ab’)、(例えばプラスミン消化による)facb、(例えばペプシン又はプラスミン消化による)pFc’、(例えばペプシン消化、部分還元及び再凝集による)Fd、(例えば分子生物学技術による)Fv又はscFvフラグメントが挙げられる。その開示内容全体を本明細書に組込むPaul(ed.)FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY,FOURTH EDITION,Lippincott−Raven,NY,NY(1999)も参照。
【0041】
このようなフラグメントは当分野で公知のように及び/又は本明細書に記載するように酵素切断、合成又は組換え技術により生産することができる。1種以上の終止コドンを天然終止部位の上流に導入した抗体遺伝子を使用して各種短縮形の抗体を生産することもできる。例えば、重鎖のCHドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列を含むようにF(ab’)重鎖部分をコードする組み合わせ遺伝子を設計することができる。抗体の各部分を従来技術により化学的に結合することもできるし、遺伝子工学技術を使用して連続蛋白質として作製することもできる。
【0042】
少なくとも2種の異なる抗原に結合特異性をもつモノクローナル抗体である2価、異種特異的、ヘテロコンジュゲート又は同様の抗体を使用することもできる。本発明の場合には、結合特異性の一方は少なくとも1種の天然免疫グロブリン分子又はその部分に対する特異性であり、他方は他の任意抗原に対する特異性である。2価抗体の作製方法は当分野で公知である。従来、2価抗体の組換え生産は2本の重鎖が異なる特異性をもつ2個の免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づくものであった(Milstein and Cuello,305 NATURE,537(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダム組み合わせにより、これらのハイブリドーマ(カドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、そのうちの1個だけが正しい2価構造をもつ。類似方法は例えば各々参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むWO93/08829、米国特許第6,210,668号、6,193,967号、6,132,992号、6,106,833号、6,060,285号、6,037,453号、6,010,902号、5,989,530号、5,959,084号、5,959,083号、5,932,448号、5,833,985号、5,821,333号、5,807,706号、5,643,759号、5,601,819号、5,582,996号、5,496,549号、4,676,980号;WO91/00360、WO92/00373、EP03089、Trauneckerら,10 EMBO J.,3655(1991)、Sureshら,121 METHODS IN ENZYMOLOGY,210(1986)に開示されている。
【0043】
本発明の抗体
本発明の少なくとも1種の抗NIgSAbは当分野で周知のように、場合により細胞株、混合細胞株、不死化細胞又は不死化細胞のクローン集団により産生させることができる。例えば各々参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むAusubelら(Ed.),Current Protocols in Molecular Biology,(John Wiley & Sons,Inc.,New York,New York(1987−2001));Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,(Cold Spring Harbor,NY(1989))及びSambrookら,Molecular Cloning−A Laboratory Manual(3rd Ed.),Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,2000(「Sambrook」と総称する);Harlow and Lane,Antibodies.A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor,NY(1989));Colliganら(Eds.),Current Protocols in Immunology,(John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994−2001));Colliganら,Current Protocols in Protein Science,(John Wiley & Sons,NY,NY,(1997−2001))参照。
【0044】
抗NIgSAb又はそのフラグメント、部分及び変異体は単離免疫グロブリン蛋白質又はその部分(合成ペプチド等の合成分子を含む)等の適当な免疫原性抗原に対して産生させることができ、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。他の特定又は一般哺乳動物抗体も同様に産生させることができる。免疫原性抗原の作製とポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体生産は当業者に公知の適切な任意技術を使用して実施することができる。
【0045】
モノクローナル抗体を作製するための1アプローチでは、限定されないが、Sp2/0、Sp2/0−AG14、P3/NS1/Ag4−1、P3X63Ag8.653、MCP−11、S−194等の適切な不死細胞株(例えば骨髄腫細胞株)、又はヘテロミエローマ、その融合産物、又はそれらに由来する任意細胞もしくは融合細胞、又は当分野で公知の適切な他の任意細胞株等を融合することによりハイブリドーマを作製する。例えばwww.atcc.org,www.lifetech.com等を参照でき、抗体産生細胞としては限定されないが、単離又はクローン化脾臓、末梢血、リンパ、扁桃、又は他の免疫もしくはB細胞含有細胞が挙げられ、あるいは内在又は異種核酸として重鎖又は軽鎖定常又は可変又はフレームワーク又はCDR配列を発現する他の任意細胞が挙げられ、例えば組換え又は内在のウイルス、細菌、藻類、原核、両生類、昆虫、爬虫類、魚類、哺乳類、齧歯類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ヒツジ、霊長類、真核、ゲノムDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNA又はRNA、葉緑体DNA又はRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、1本鎖、2本鎖又は3本鎖形態、ハイブリダイズ形態等又はその任意組み合わせが挙げられる。例えば参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むAusubel,前出、及びColligan,Immunology,前出,第2章参照。
【0046】
抗体産生細胞は該当抗原を免疫した適切な任意動物の末梢血又は好ましくは脾臓又はリンパ節から得ることもできる。抗体、その特定フラグメント、部分、又は変異体をコードする異種又は内在核酸を発現するのに適した他の任意宿主細胞も使用することができる。融合細胞(ハイブリドーマ)又は組換え細胞は選択培養条件又は他の適切な公知方法を使用して単離し、限界希釈法又は細胞ソーティング、又は他の公知方法によりクローニングすることができる。所望の特異性をもつ抗体を産生する細胞は当業者に公知の適切なアッセイ(例えばELISA)により選択することができる。
【0047】
必要な特異性の抗体を生産又は単離する他の適切な方法も使用することができ、限定されないが、ペプチド又は蛋白質ライブラリー(例えば限定されないが、例えばCambridge antibody Technologies,Cambridgeshire,UK;MorphoSys,Martinsreid/Planegg,DE;Biovation,Aberdeen,Scotland,UK;BioInvent,Lund,Sweden;Dyax Corp.,Enzon,Affymax/Biosite;Xoma,Berkeley,CA;Ixsysから入手可能なバクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNA等のディスプレイライブラリー;例えば各々参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むEP368,684;PCT/GB91/01134;PCT/GB92/01755;PCT/GB92/002240;PCT/GB92/00883;PCT/GB93/00605;US08/350,260(5/12/94);PCT/GB94/01422;PCT/GB94/02662;PCT/GB97/01835;(CAT/MRC);WO90/14443;WO90/14424;WO90/14430;PCT/US94/1234;WO92/18619;WO96/07754(Scripps);EP614989(MorphoSys);WO95/16027(BioInvent);WO88/06630;WO90/3809(Dyax);US4,704,692(Enzon);PCT/US91/02989(Affymax);WO89/06283;EP371998;EP550400;(Xoma);EP229046;PCT/US91/07149(Ixsys)参照;あるいは確率論的に作製されたペプチド又は蛋白質についてはUS5,723,323;5,763,192;5,814,476;5,817,483;5,824,514;5,976,862;WO86/05803;EP590689(Ixsys,現在ではApplied Molecular Evolution(AME)として知られる)参照)から組換え抗体を選択する方法や、当分野で公知のように及び/又は本明細書に記載するようにヒト抗体のレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物の免疫に依存する方法(例えば各々参考資料並びに関連特許及び出願としてその開示内容全体を本明細書に組込むSCID mice,Nguyenら,41 MICROBIOL.IMMUNOL.,901−907(1997);Sandhuら,16 CRIT.REV.BIOTECHNOL.,95−118(1996);Erenら,93 IMMUNOL.,154−161(1998)参照)が挙げられる。このような技術としては限定されないが、リボソームディスプレイ(Hanesら,94 PROC.NATL.ACAD.Sci.USA,4937−4942(May,1997);Hanesら,95 PROC.NATL.ACAD.Sci.USA,14130−14135(Nov.,1998));シングルセル抗体生産技術(例えば選択リンパ球抗体法(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号;Wenら,17 J.IMMUNOL.,887−892(1987);Babcookら,93 PROC.NATL.ACAD.Sci.USA,7843−7848(1996));ゲル微小液滴フローサイトメトリー(Powellら,8 BIOTECHNOL.,333−337(1990);One Cell Systems,Cambridge,MA;Grayら,182 J.Imam.METH.,155−163(1995);Kennyら,13 BIO/TECHNOL.,787−790(1995));B細胞選択(Steenbakkersら,19 MOLEC.BIOL.REPORTS,125−134(1994);Jonakら,Progress Biotech,Vol.5.In Vitro Immunization in Hybridoma Technologv,(Borrebaeck(Ed.),Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,Netherlands(1988))が挙げられる。
【0048】
抗NIgSAbは場合により本明細書に記載するように及び/又は当分野で公知のようにヒト抗体のレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、非ヒト霊長類等)の免疫により作製することもできる。ヒト抗NIgSAbを産生する細胞を前記動物から単離し、本明細書に記載する方法等の適切な方法を使用して不死化することができる。
【0049】
ヒト抗原及び他の外来抗原と結合するヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニックマウスは公知方法により生産することができる(例えば限定されないが、各々参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む米国特許第5,770,428号、5,569,825号、5,545,806号、5,625,126号、5,625,825号、5,633,425号、5,661,016及び5,789,650号(以上Lonbergら);Jakobovitsら,WO98/50433;Jakobovitsら,WO98/24893;Lonbergら,WO98/24884;Lonbergら,WO97/13852;Lonbergら,WO94/25585;Kucherlapateら,WO96/34096;Kucherlapateら,EP0463151 B1;Kucherlapateら,EP0710719 A1;Suraniら,米国特許第5,545,807号;Bruggemannら,WO90/04036;Bruggemannら,EP0438474 B1;Lonbergら,EP0814259 A2;Lonbergら,GB 2272440 A;Lonbergら,368 NATURE,856−859(1994);Taylorら,6(4)INT.IMMUNOL.,579−591(1994);Greenら,7 NATURE GENETICS,13−21(1994);Mendezら,15 NATURE GENETICS,146−156(1997);Taylorら,20(23)NUCLEIC ACIDS RESEARCH,6287−6295(1992);Tuaillonら,90(8)PROC.NATL.ACAD.Sci.USA,3720−3724(1993);Lonbergら,13(1)INT.REV.IMMUNOL.,65−93(1995)及びFishwaldら,14(7)NAT BIOTECHNOL 845−851(1996)参照)。一般に、これらのマウスは機能的に再配置されているか又は機能的に再配置することができる少なくとも1個のヒト免疫グロブリン遺伝子座に由来するDNAを含む少なくとも1個のトランスジーンを含む。このようなマウスにおける内在免疫グロブリン遺伝子座は動物が内在遺伝子によりコードされる抗体を産生できないように破壊又は欠失することができる。
【0050】
天然免疫グロブリンに対する1価抗体は天然免疫グロブリンに対して反応性の抗体を含む哺乳動物抗血清から精製するか、又はKohler and Milstein,256 NATURE 495−497(1975)の技術を使用して非変性免疫グロブリンに対して反応性のモノクローナル抗体として作製される。本明細書で使用する1価抗体とは非変性免疫グロブリンに均質な結合特性をもつ単一抗体種又は複数抗体種として定義され、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。本明細書で使用する均質結合とは上記のように、抗体種が特定抗原又はエピトープ(例えば非変性免疫グロブリンに関連するもの)と結合できることを意味する。天然免疫グロブリン特異的抗体はマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ウマ及び/又は同等物等の動物に免疫アジュバントの存在下又は不在下で適当な濃度の天然免疫グロブリンを免疫することにより生産することができ、ウサギが好ましい動物である。
【0051】
ポリクローナル抗体作製
最初の免疫の前に免疫前血清を採取する。各動物に例えば許容可能な免疫アジュバントと共に天然免疫グロブリン約0.1mg〜約1000mgを投与する。このような許容可能なアジュバントとしては限定されないが、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン沈殿、Corynebacterium parvumとtRNAを含む油中水エマルションが挙げられる。初期免疫は天然免疫グロブリンを好ましくはフロイント完全アジュバントに加え、皮下(SC)、腹腔内(IP)又は両者の複数部位に投与する。各動物から一定間隔、好ましくは1週間おきに採血し、抗体力価を測定する。初期免疫後に動物にブースター注射してもよいし、しなくてもよい。ブースター注射する動物は一般に、等量の抗原をフロイント不完全アジュバントに加えて同一経路で投与する。ブースター注射は最大力価が得られるまで約3週間隔で実施する。各ブースター免疫から約7日後又は単一免疫後約1週間おきに動物から採血し、血清を採取し、アリコートを約−20℃で保存する。この方法を使用して本発明のポリクローナル本発明の抗NIgSAbを生産することができる。
【0052】
シクロホスファミド投与の使用によるサブトラクティブ免疫
サブトラクティブ免疫は標準免疫に代わる強力な方法であり、真にユニークな抗体を生産することができる。サブトラクティブ免疫は標準免疫により得られないモノクローナル抗体の生産に広く実施され、成功を収めている。サブトラクティブ免疫は所望抗原に対するモノクローナル抗体の作製を実質的に強化することができる独特な免疫寛容アプローチを利用する。このアプローチは該当抗原に構造的又は機能的に関連する可能性のある免疫優性又は他の非所望抗原(寛容原)に対して宿主動物を寛容にすることに基づく。宿主動物の寛容は当分野で公知の数種の方法の1つ(High Zone、Neonatal、又は薬剤誘導寛容)により実施することができる。寛容動物に次に所望抗原(免疫原)を接種し、その後の免疫応答により作製された抗体を所望抗原反応性についてスクリーニングする。
【0053】
外来抗原分子に応答して増殖するように刺激されたB細胞を選択的に死滅させることにより、細胞毒性薬剤シクロホスファミドを使用して正常免疫応答の偏りを操作することができる。シクロホスファミド投与後にこれらの分子に暴露すると免疫応答を生じなくなる。サブトラクティブ免疫技術の1例として、マウスを寛容原に暴露した後にシクロホスファミドを注射する。薬剤を排泄させた後にマウスを免疫原に暴露する。理論的に、免疫系は寛容原に存在しない免疫原中の分子のみに免疫学的に応答する。サブトラクティブ免疫技術を使用して本発明の抗NIgSAbを生産することができる。
【0054】
本発明の抗NIgSAbは当分野で公知の技術を使用して簡便に同定することができ、限定されないが、ペプチドディスプレイライブラリーが挙げられる。更に、ペプチドディスプレイライブラリーを使用して本発明のNIgSBRを同定することもできる。この方法は(本発明では天然免疫グロブリン又は1個以上のそのエピトープであり得る)標的分子により認識されるか又はこれと結合する個々のメンバーについて大きなペプチド集団をスクリーニングする。結合試薬を見いだすためのペプチドディスプレイライブラリーのスクリーニングは当分野で周知である。提示されるランダムペプチド配列は3〜5000以上のアミノ酸長、多くの場合には5〜100アミノ酸長、たいていは約8〜25アミノ酸長とすることができる。ペプチドライブラリーを作製するための直接化学合成法に加え、数種の組換えDNA法が記載されている。1例はバクテリオファージ又は細胞の表面にランダムペプチド配列を提示する方法である。各バクテリオファージ又は細胞は特定提示ペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含む。抗体又は他の標的分子を支持体に固定化し、ペプチドライブラリーをその表面にもつバクテリオファージ又は細胞と共にインキュベートする。例えば参考資料として本明細書に組込むLuら,BIO/TECHNOLOGY,13:366−372(1995)に記載されているようなパニングにより数回選択後に、バクテリオファージコロニーを配列決定し、抗体により認識される共通ペプチド配列を決定する。この方法は抗体又は他の標的分子の抗原認識配列を同定することができる。このような方法はPCT特許公開WO91/18980、WO91/19818、及びWO93/08278に記載されている。
【0055】
特定標的分子(例えば天然免疫グロブリン又は1個以上のそのエピトープ)に特異的な結合試薬(本発明のNIgSBR及び抗NIgSAb等)を同定するための当分野で周知の別法はその表面にペプチド又は蛋白質分子を発現するウイルス、バクテリオファージ又は宿主細胞の利用である。この方法では、蛋白質、ペプチド、抗体、抗体部分、抗体変異体、抗体フラグメント、複合抗体、融合蛋白質又はハイブリッド蛋白質をコードするDNAがウイルス、バクテリオファージ、宿主細胞又は他の複製コンピテントシステム内に含まれる。これらの分子はウイルス、バクテリオファージ、リボソーム、宿主細胞又は他の複製コンピテントシステムで発現され、1個以上の固定化標的分子と結合することにより選択される。数回選択後、標的結合分子をコードするDNAが単離される。PCT特許公開WO91/17271参照。ランダム及び特定ペプチドのライブラリーを作製するための他のシステムはin vitro化学合成法と組換え法の両方の側面をもつ。リボソームディスプレイライブラリーも当分野で公知であり、市販されている(Cambridge Antibody Technology,BioInvent,Affitech,Biosite)。PCT特許公開WO92/05258、WO92/14843、及びWO96/19256参照。米国特許第5,658,754号及び5,643,768号も参照。
【0056】
これらの方法を実施するためのペプチドディスプレイライブラリー、抗体フラグメントディスプレイライブラリー、ハイブリッド蛋白質ディスプレイライブラリー、融合蛋白質ディスプレイライブラリー、ベクター、及びスクリーニングキットは当分野で公知であり、及び/又はInvitrogen(Carlsbad,California)、Cambridge Antibody Technologies(Cambridgeshire,UK)、Phylos,Inc.(Lexington,MA)、Dyax Corporation(Cambridge,MA)、Morphosys(Martinsried/Munich,Germany)、及びMaxygen(Redwood City,CA)等の業者から市販されている。例えば米国特許第4,704,692号、4,874,702号、4,939,666号、4,946,778号、5,260,203号、5,455,030号、5,518,889号、5,534,621号、5,656,730号、5,763,733号、5,767,260号、5,856,456号(譲受人Enzon);5,223,409号、5,403,484号、5,571,698号及び5,837,500号(譲受人Dyax);5,427,908号及び5,580,717号(譲受人Affymax);5,885,793号(譲受人Cambridge Antibody Technologies);5,750,373号(譲受人Genentech);5,618,920号、5,595,898号、5,576,195号、5,698,435号、5,693,493号及び5,698,417号(譲受人Xoma);Colligan,前出;Ausubel,前出;又はSambrook,前出を参照することができ、上記特許及び刊行物は参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む。
【0057】
本発明のNIgSBRは各種化合物ライブラリーから同定することもできる。このような化合物は広範な種類のものとすることができ、限定されないが、ペプチド、蛋白質、抗体、核酸、DNAアプタマー、炭水化物、多糖、融合蛋白質、ハイブリッド分子(例えばペプチド−核酸ハイブリッド)又は他の任意有機もしくは無機分子もしくは分子組み合わせが挙げられる。標的分子と結合する任意メンバーについてこれらの化合物のライブラリーをスクリーニングする。広範な適用可能なスクリーニング方法が当業者に周知である。各種ライブラリーから本発明のNIgSBRを同定するための標的分子としては限定されないが、天然免疫グロブリンとその任意エピトープが挙げられる。本発明のNIgSBRの同定に使用するのに適した各種ライブラリーとしては限定されないが、非免疫グロブリンペプチドをフレームワーク又はスカフォールドとして使用し、標的分子の結合領域として機能する可変アミノ酸配列のセグメントを構築する蛋白質スカフォールドライブラリーが挙げられる。当業者に容易に理解される通り、広範な蛋白質スカフォールドライブラリーがNIgSBRを同定するための本発明の方法で使用するのに適している。これらの各種ライブラリーと、標的分子と結合するメンバーを同定するためのそれらのスクリーニング方法は当分野で周知である(例えばフィブロネクチンをベースとする「Trinectin」として知られる蛋白質スカフォールド、及びPhylos,Inc.,Lexington,MAの「Profusion」として知られるディスプレイ技術;アフィボディABのS.aureusプロテインAをベースとするアフィボディ;並びにPieris Proteolab AGのリポカリンをベースとするAnticalens)。高い特異性と親和性で蛋白質と結合するDNAアプタマー等の非蛋白質捕獲分子もライブラリーとアレイで使用される(SomaLogic)。当分野で「SELEX」として知られる方法はこれらの核酸アプタマーの同定方法の1つである。これらの分子は本発明のNIgSBRを単離するためにこれらの利用可能な技術を使用して当業者により同定される。
【0058】
特異的蛋白質進化ライブラリーとスクリーニング法も本発明のNIgSBRを同定するために使用することができる。これらの技術は一般に遺伝子レベルでランダムに突然変異を誘導した後に蛋白質レベルで所望特性を選択する。特異的蛋白質進化ライブラリーとその作製及びスクリーニング方法は当分野で周知である。
【0059】
蛋白質アレイも本発明のNIgSBRを同定するために利用することができる。蛋白質アレイはガラス、プラスチック、膜、ビーズ又は他の任意表面等の表面に固定化した蛋白質を使用する固相結合アッセイシステムである。これらのアレイは選択結合特性をもつディスプレイライブラリーから個々のメンバーを単離するために使用される。NIgSBR及び抗NIgSAbをファージディスプレイ又はリボソームディスプレイライブラリーから選択するために本発明の方法で蛋白質アレイを使用することができる。蛋白質アレイとその作製及び使用方法は当業者に周知である。
【0060】
多数の米国特許及び公開米国特許出願が各種ライブラリーと、その作製方法及び標的と結合する分子を見いだすためのそのスクリーニング方法を開示している。これらのライブラリー及び方法の例は各々参考資料として本明細書に組込む以下の米国特許及び公開米国特許出願に開示されている。例えば米国特許第6,605,449号、6,537,776号及び米国出願第2002/0146762号、及び2002/0142394号(譲受人Diversa Corporation);米国特許第5,811,238号(譲受人Affymax);米国特許第6,489,103号(譲受人Medical Research Council);米国出願第2003/0186223号(譲受人Dyax Corporation);米国特許第6,376,190号、6,331,398号、6,114,120号、6,110,900号、5,843,653号、5,707,796号、6,159,690号、5,696,249号、5,670,637号、5,475,096号、5,270,163号、米国出願第2003/0157487号、2003/0044818号、及び2002/0102599号(譲受人SELEX Techniques);米国特許第6,613,514号、6,602,986号、6,586,182号、6,579,678号、6,576,467号、6,573,098号、6,518,065号、6,506,603号、6,506,602号、6,455,253号、6,444,468号、6,436,675号、6,420,175号、6,413,774号、6,395,547号、6,372,497号、6,355,484号、6,344,356号、6,335,160,5号、323,030号、6,319,713号、6,303,344号、6,287,861号、6,297,053号、6,291,242号、6,277,638号、6,180,406号、6,165,793号、6,117,679号、米国出願第2003/0186356号、及び2003/0077613号(譲受人Maxygen);米国特許第6,602,685号、6,537,749号、6,436,665号、6,429,300号、6,416,950号、6,312,927号及び米国出願第2002/0182687号(譲受人Phylos);米国特許第6,579,676号、5,411,861号、及び5,955,264号(譲受人General Hospital Corporation);米国出願第2002/0051998号及び2001/0051855号(譲受人California Institute of Technology);米国出願第2002/0164635号(譲受人Rensselaer Polytechnic Institute);米国出願第2003/0162218号、2003/0152943号、2003/0148353号、2003/0134351号、2003/0113738号、2003/0077613号、2002/0102734号、2002/0045175号、2003/0180718号及び2003/0167128号参照。これらの各特許及び出願は参考資料として本明細書に組込む。
【0061】
少なくとも1種の抗NIgSAbをコードする核酸を使用して本発明の抗NIgSAbを作製し、その乳汁中に前記抗体を産生するヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ等のトランスジェニック動物又は哺乳動物を提供することもできる。このような動物は公知方法を使用して提供することができる。例えば限定されないが、各々参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む米国特許第5,827,690号、5,849,992号、4,873,316号、5,849,992号、5,994,616号、5,565,362号、5,304,489号等参照。
【0062】
更に少なくとも1種の抗NIgSAbをコードする核酸を使用して本発明の抗NIgSAbを作製し、植物部分又はその培養細胞中にこのような抗体、特定部分又は変異体を産生するトランスジェニック植物及び培養植物細胞(例えば限定されないが、タバコ、ジャガイモ及びトウモロコシ)を提供することもできる。非限定的な例として、組換え蛋白質を発現するトランスジェニックタバコ葉を使用して例えば誘導プロモーターを使用して多量の組換え蛋白質を提供するのに成功している。例えばCramerら,240 CURR.TOP.MICROBOL.IMMUNOL.,95−118(1999)及びその引用文献参照。また、トランスジェニックトウモロコシを使用して哺乳動物蛋白質を商業生産レベルで発現させ、他の組換えシステムで生産されたレベル又は天然源から精製されたレベルと等価の生物活性が得られている。例えばHoodら,464 ADV.EXP.MED.BIOL.,127−147(1999)及びその引用文献参照。1本鎖抗体(scFv)等の抗体フラグメントを含むトランスジェニック植物種子(例えばタバコ種子及びジャガイモ塊茎)からも多量の抗体が産生されている。例えばConradら,38 PLANT MOL.Biol.,101−109(1998)及びその引用文献参照。従って、本発明の抗体は公知方法に従ってトランスジェニック植物を使用して生産することもできる。例えばFischerら,30 BIOTECHNOL.APPL.BIOCHEM.,99−108(Oct.,1999);Maら,13 TRENDS BIOTECHNOL.,522−527(1995);Maら,109 PLANT PHYSIOL.,341−346(1995);Whitelamら,22 BIOCHEM.SOC.TRANS.,940− 944(1994);Payneら,PLANT CELL AND TISSUE CULTURE IN LIQUID SYSTEMS John Wiley & Sons,Inc.New York,NY(1992);Gamborg and Phillips(eds)PLANT CELL,TISSUE AND ORGAN CULTURE;FUNDAMENTAL METHODS Springer Lab Manual,Springer−Verlag(Berlin Heidelberg New York)(1995);PLANT MOLECULAR BIOLOGY Croy(ed.)BIOS Scientific Publishers,Inc.(1993);Clark,Ed.PLANT MOLECULAR BIOLOGY:A Laboratory Manual Springer−Verlag,Berlin(1997)及びその引用文献も参照。上記各文献は参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む。
【0063】
本発明の抗体は広い範囲の親和性(K)で天然免疫グロブリン蛋白質と結合することができる。1好適態様では、少なくとも1種の本発明の抗NIgSAbは場合により少なくともウェスタンブロットで使用するのに十分高い親和性で天然免疫グロブリン蛋白質と結合することができる。
【0064】
抗原に対する抗体の親和性又はアビディティは適切な任意方法を使用して実験により測定することができる。(例えば、Berzofskyら,“Antibody−Antigen Interactions,”In Fundamental Immunology,Fourth Edition(W.E.Paul(Ed.),Lippincott−Raven:New York,New York,1999);Janis Kuby,Immunology,(W.H.Freeman and Company:New York,New York,1992);及び本明細書に記載する方法参照)。特定抗体−抗原相互作用の親和性測定値は測定条件(例えば塩濃度、pH)により変化する可能性がある。従って、親和性及び他の抗原結合パラメーター(例えばK,K,K)の測定は抗体と抗原の標準化溶液と、本明細書に記載する緩衝液等の標準化緩衝液を使用して実施することが好ましい。
【0065】
核酸分子
本明細書に記載する情報を使用し、本明細書に記載する方法を使用するか又は当分野で公知のように少なくとも1種の抗NIgSAbをコードする本発明の核酸分子を得ることができる。
【0066】
本発明の抗NIgSAbをコードする核酸分子を得るためには、抗体のアミノ酸配列が必要であると思われる。このためには、抗体蛋白質を精製し、自動配列決定装置により部分アミノ酸配列を決定すればよい。完全アミノ酸配列を決定する必要はなく、部分抗NIgSAb DNAフラグメントのPCR増幅用プライマーを作製するために蛋白質に由来する6〜8アミノ酸の2領域の線状配列を決定する。
【0067】
適切なアミノ酸配列が同定されたら、その配列をコードすることが可能なDNA配列を合成する。遺伝コードは縮重しているので、特定アミノ酸をコードするために2個以上のコドンを使用することができ、従って、縮重DNAオリゴヌクレオチドセットの任意のものによりアミノ酸配列をコードすることができる。所与抗NIgSAb配列に一致するのはセットのただ1つのメンバーであるが、プローブ核酸オリゴヌクレオチドが遺伝コードの縮重によりミスマッチをもつとしても、複数のメンバーが一般に抗NIgSAbをコードする核酸とハイブリダイズすることができる。ミスマッチ縮重DNAオリゴヌクレオチドは一般に抗NIgSAbをコードする核酸とまだ十分にハイブリダイズすることができるので、抗体をコードする核酸を同定及び単離することができる。これらの方法により単離されたDNAは無脊椎動物及び脊椎動物に由来する種々の細胞型からのDNAライブラリーをスクリーニングし、相同遺伝子を単離するために使用することができる。
【0068】
限定されないが、溶液相、固相、混合相、又はin situハイブリダイゼーションアッセイ等のハイブリダイゼーションフォーマットが該当クローンの検出に有用である。核酸ハイブリダイゼーションの詳しい手引きはTijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes Elsevier,New York、及びSambrook,Berger and Ausubel(前出)に記載されている。核酸を標識するための標識ストラテジー及び対応する検出ストラテジーは例えばHaugland(1996)Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals Sixth Edition by Molecular Probes,Inc.(Eugene OR);又はHaugland(2001)Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals Eigth Edition by Molecular Probes,Inc.(Eugene OR)(CD ROM版)に記載されている。
【0069】
本発明の核酸分子はmRNA、hnRNA、tRNA又は他の任意形態等のRNA形態でもよいし、限定されないが、例えばクローニングにより得られるか、合成されるか、又はその任意組み合わせにより得られるcDNA及びゲノムDNA等のDNAの形態でもよい。DNAは2本鎖でも1本鎖でもよいし、その任意組み合わせでもよい。DNA又はRNAの少なくとも1本の鎖の任意部分はコーディング鎖(センス鎖とも言う)でもよいし、非コーディング鎖(アンチセンス鎖とも言う)でもよい。
【0070】
本発明の単離核酸分子は場合により1個以上のイントロンと共にオープンリーディングフレーム(ORF)を含む核酸分子を含むことができ、例えば限定されないが、少なくとも1個のCDRの少なくとも1個の特定部分(例えば少なくとも1個の重鎖又は軽鎖のCDR1、CDR2及び/又はCDR3);抗NIgSAb又は可変領域のコーディング配列を含む核酸分子;及び上記のものとは実質的に異なるヌクレオチド配列を含むが、遺伝コードの縮重により本明細書に記載するように及び/又は当分野で公知のように少なくとも1種の抗NIgSAbを依然としてコードする核酸分子が挙げられる。当然のことながら、遺伝コードは当分野で周知である。従って、本発明の特定抗NIgSAbをコードするこのような縮重核酸変異体を作製することは当業者に日常的である。例えばAusubelら,前出を参照でき、このような核酸変異体も本発明に含まれる。
【0071】
本明細書に記載するように、抗NIgSAbをコードする核酸を含む本発明の核酸分子としては限定されないが、抗体フラグメント、部分又は変異体自体のアミノ酸配列をコードするもの;完全抗体又はその一部のコーディング配列;抗体、フラグメント、部分又は変異体のコーディング配列と付加配列(例えば上記付加コーディング配列(例えば少なくとも1個のイントロン)を伴う又は伴わず、付加非コーディング配列(限定されないが、転写や、スプライシング及びポリアデニル化シグナル(例えばmRNAのリボソーム結合及び安定性)等のmRNAプロセシングに関与する転写非翻訳配列等の非コーディング5’及び3’配列)を伴う少なくとも1個のシグナルリーダー又は融合ペプチドのコーディング配列);付加機能を提供するもの等の付加アミノ酸をコードする付加コーディング配列が挙げられる。従って、抗体をコードする配列は抗体フラグメント、部分又は変異体を含む融合抗体の精製を容易にするペプチドをコードする配列等のマーカー配列と融合することができる。
【0072】
核酸の構築
本発明の単離核酸は当分野で周知の通り、(a)組換え法、(b)合成技術、(c)精製技術、又はその組み合わせにより作製することができる。
【0073】
核酸は本発明の抗NIgSAbポリヌクレオチド配列に加えていくつかの配列を含むと適切である。例えば、ポリヌクレオチドを単離し易くするために、1個以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含むマルチクローニング部位を核酸に挿入することができる。また、本発明の翻訳ポリヌクレオチドを単離し易くするために翻訳可能な配列を挿入することもできる。例えば、ヘキサヒスチジンマーカー配列は本発明の蛋白質を精製するために好適な手段を提供する。コーディング配列以外の本発明の核酸は場合により本発明のポリヌクレオチドのクローニング及び/又は発現用のベクター、アダプター、又はリンカーである。
【0074】
このようなクローニング及び/又は発現配列に付加配列を加えると、クローニング及び/又は発現におけるその機能を最適化するか、ポリヌクレオチドを単離し易くするか、又はポリヌクレオチドの細胞導入を改善することができる。クローニングベクター、発現ベクター、アダプター、及びリンカーの使用は当分野で周知である(例えばAusubel,前出;又はSambrook,前出参照)。
【0075】
核酸を構築するための組換え法
本発明の単離核酸組成物(例えばRNA、cDNA、ゲノムDNA、又はその任意組み合わせ)は当業者に公知の多数のクローニング法を使用して生物起源から得ることができる。所定態様では、ストリンジェント条件下で本発明のポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを使用してcDNA又はゲノムDNAライブラリーで所望配列を同定する。RNAの単離とcDNA及びゲノムライブラリーの構築は当業者に周知である(例えばAusubel,前出;又はSambrook,前出参照)。
【0076】
核酸を構築するための合成法
本発明の単離核酸は公知方法により直接化学合成により作製することもできる(例えばAusubelら,前出参照)。化学合成は一般に、相補的配列とのハイブリダイゼーション又は1本鎖を鋳型として使用するDNAポリメラーゼによる重合により2本鎖DNAに変換することが可能な1本鎖オリゴヌクレオチドを生産する。当業者に自明の通り、DNAの化学合成は一般に約100塩基以下の配列には最も有効であるが、化学又はリガーゼ法により単に短い配列のライゲーションにより長い配列を得ることができる。
【0077】
組換え発現カセット
本発明は更に本発明の核酸を含む組換え発現カセットを提供する。本発明の核酸配列(例えば本発明の抗体をコードするcDNA又はゲノム配列)を使用して、少なくとも1種の所望宿主細胞に導入可能な組換え発現カセットを構築することができる。組換え発現カセットは一般に所期宿主細胞におけるポリヌクレオチドの転写を誘導する転写開始調節配列と機能的に連結した本発明のポリヌクレオチドを含む。本発明の核酸の発現を誘導するには異種プロモーターと非異種(即ち内在)プロモーターの両者を利用することができる。
【0078】
所定態様では、本発明のポリヌクレオチドの発現をアップレギュレート又はダウンレギュレートするように本発明のポリヌクレオチドの非異種形の適当な位置(上流、下流又はイントロン内)にプロモーター、エンハンサー、又は他のエレメントとして機能する単離核酸を導入することができる。例えば、突然変異、欠失及び/又は置換により内在プロモーターをin vivo又はin vitro改変することができる。
【0079】
ベクター及び宿主細胞
本発明は本発明の単離核酸分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子組換えされた宿主細胞、及び当分野で周知のような組換え技術による少なくとも1種の抗NIgSAbの生産にも関する。例えば各々参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むSambrookら,前出;Ausubelら,前出参照。
【0080】
ポリヌクレオチドは場合により宿主での増殖用選択マーカーを含むベクターと結合することができる。一般に、リン酸カルシウム沈殿等の沈殿や、荷電脂質との複合体にプラスミドベクターを導入する。ベクターがウイルスである場合には、適当なパッケージング細胞株を使用してin vitroパッケージングした後に宿主細胞に形質導入することができる。
【0081】
DNAインサートは適当なプロモーターと機能的に連結すべきである。発現構築物は更に転写開始部位、終結部位、及び転写領域における翻訳用リボソーム結合部位を含む。構築物により発現される成熟転写産物のコーディング部分は始点の翻訳開始コドンと、翻訳すべきmRNAの末端に適切に配置された終結コドン(例えばUAA、UGA又はUAG)を含むことが好ましく、哺乳動物又は真核細胞発現にはUAAとUAGが好ましい。
【0082】
発現ベクターは場合により少なくとも1種の選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては限定されないが、例えばメトトレキセート(MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR,米国特許第4,399,216号;4,634,665号;4,656,134号;4,956,288号;5,149,636号及び5,179,017号;真核細胞培養用としてアンピシリン、ネオマイシン(G418)、ミコフェノール酸、又はグルタミンシンテターゼ(GS,米国特許第5,122,464号;5,770,359号及び5,827,739号)耐性遺伝子、及び大腸菌や他の細菌又は原核細胞培養用としてテトラサイクリン又はアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる(上記特許は参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む)。上記宿主細胞に適した培地と培養条件は当分野で公知である。適切なベクターは当業者に容易に理解されよう。宿主細胞へのベクター構築物の導入はリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストランによるトランスフェクション、カチオン脂質によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染又は他の公知方法により実施することができる。このような方法は例えばSambrook,前出,第1−4及び16−18章;Ausubel,前出,第1,9,13,15,16章等の当分野の文献に記載されている。
【0083】
少なくとも1種の本発明の抗体は融合蛋白質等の修飾形態で発現させることができ、分泌シグナルに加え、付加異種機能領域も含むことができる。例えば、精製中又はその後の操作及び保存中に宿主細胞における安定性と持続性を改善するために、付加アミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域を抗体のN末端に付加することができる。また、精製を容易にするためにペプチド部分を本発明の抗体に付加することができる。このような領域は抗体又は少なくとも1個のそのフラグメントの最終作製の前に除去することができる。このような方法はSambrook,前出,第17.29−17.42及び18.1−18.74章;Ausubel,前出,第16,17及び18章等の多数の標準実験マニュアルに記載されている。
【0084】
当業者は本発明の蛋白質をコードする核酸の発現に利用可能な多数の発現システムを熟知している。あるいは、本発明の核酸は本発明の抗体をコードする内在DNAを含む宿主細胞で(操作により)発現させることにより宿主細胞で発現させることができる。このような方法は、例えば参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む米国特許第5,580,734号、5,641,670号、5,733,746号及び5,733,761号に記載されているように、当分野で周知である。
【0085】
抗体、その特定部分又は変異体の生産に有用な細胞培養の例は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞システムは細胞単層形態のことが多いが、哺乳動物細胞懸濁液又はバイオリアクターも使用することができる。無傷のグリコシル化蛋白質を発現することが可能な多数の適切な宿主細胞株が当分野で開発されており、COS−1(例えばATCC CRL 1650)、COS−7(例えばATCC CRL−1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC CRL− 10)、CHO(例えばATCC CRL 1610)及びBSC−1(例えばATCC CRL−26)細胞株、Cos−7細胞、CHO細胞、hepG2細胞、P3X63Ag8.653、SP2/0−Ag14、293細胞、HeLa細胞等が挙げられ、例えば、American Type Culture Collection,Manassas,Va(www.atcc.org)から容易に入手可能である。1態様では、宿主細胞は骨髄腫及びリンパ腫細胞等のリンパ起源細胞を含む。
【0086】
これらの細胞の発現ベクターは限定されないが、以下の発現調節配列即ち複製起点;プロモーター(例えば後期又は初期SV40プロモーター、CMVプロモーター(米国特許第5,168,062号及び5,385,839号)、HSV tkプロモーター、pgk(ホスホグリセリン酸キナーゼ)プロモーター、EF−1αプロモーター(米国特許第5,266,491号)、少なくとも1種のヒト免疫グロブリンプロモーター;エンハンサー、及び/又はプロセシング情報部位(例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えばSV40 large T AgポリA付加部位)、及び転写終結配列の1種以上を含む。例えばAusubelら,前出;Sambrookら,前出参照。本発明の核酸又は蛋白質の生産に有用な他の細胞も公知であるか、及び/又は例えばAmerican Type Culture Collection Catalogue of Cell Lines and Hybridomas(www.atcc.org)又は他の公知もしくは商業ソースから入手可能である。
【0087】
真核宿主細胞を利用する場合には、ポリアデニル化又は転写終結配列をベクターに組込むのが一般的である。終結配列の1例はウシ成長ホルモン遺伝子のポリアデニル化配列である。転写産物の正確なスプライシングのための配列を付加することもできる。スプライシング配列の1例はSV40由来VP1イントロンである(Spragueら,45 J.VIROL.,773−781(1983))。更に、当分野で公知のように、宿主細胞における複製を制御するための遺伝子配列をベクターに組込むことができる。
【0088】
抗体の精製
抗NIgSAbは限定されないが、プロテインA又はプロテインG精製、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、イオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィー等の周知方法により血清、又はハイブリドーマ又は組換え細胞培養から回収及び精製することができる。高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も精製に利用することができる。例えば各々参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むColligan,Current Protocols in Immunology、又はCurrent Protocols in Protein Science,(John Wiley & Sons,New York,New York,1997−2001),例えば第1,4,6,8,9,10章参照。本明細書に記載する他の文献の多くに加え、種々の精製並びに関連蛋白質フォールディング及びリフォールディング法が当分野で周知であり、抗体又は他のNIgSBR分子精製に適用することができ、例えばR.Scopes,Protein Purification,Springer−Verlag,N.Y.(1982);Deutscher,Methods in Enzymology Vol.182:Guide to Protein Purification,Academic Press,Inc.N.Y.(1990);Sandana Bioseparation of Proteins,Academic Press,Inc.(1997);Bollagら,Protein Methods,2nd Edition Wiley−Liss,NY(1996);Walker The Protein Protocols Handbook Humana Press,NJ(1996);Harris and Angal Protein Purification Applications:A Practical Approach IRL Press at Oxford,Oxford,England(1990);Scopes Protein Purification:Principles and Practice 3rd Edition Springer Verlag,NY(1993);Janson and Ryden Protein Purification:Principles,High Resolution Methods and Applications,Second Edition Wiley−VCH,NY(1998);及びWalker Protein Protocols on CD−ROM Humana Press,NJ(1998);並びにその引用文献に記載されているものが挙げられる。
【0089】
本発明のNIgSBR及び抗NIgSAbとしては天然精製物、化学合成法の生成物、及び原核又は真核宿主(例えば細菌、真菌、酵母、植物、昆虫、非哺乳動物、及び哺乳動物細胞)から組換え技術により生産された生成物の任意のものが挙げられる。組換え生産法で使用する宿主に応じて、本発明の抗体はグリコシル化してもよいし、グリコシル化しなくてもよいが、所定態様ではグリコシル化していることが好ましい。このような方法はいずれも参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込むSambrook,前出,セクション17.37−17.42;Ausubel,前出,第10,12,13,16,18及び20章,Colligan,Protein Science,前出,第12−14章等の多数の標準実験マニュアルに記載されている。
【0090】
本発明のポリクローナル抗NIgSAbは変性免疫グロブリンと結合する抗体を除去するように処理することができる。この処理はポリクローナル抗NIgSAbを変性免疫グロブリンと接触させた後に、変性免疫グロブリンと結合している抗体を除去することにより実施することができる。この除去は例えば不溶性支持体に固定した変性免疫グロブリンを使用して実施することができる。未結合抗体を採取するか又は変性免疫グロブリンと結合した抗体と共に変性免疫グロブリンを固定した不溶性支持体を除去することにより、支持体に固定した変性免疫グロブリンと結合する任意抗体を残りの抗体源から分離することができる。当業者に容易に理解される通り、不溶性支持体はビーズ、プレート、ウェル、チューブ、シート、又は広範な形状、寸法もしくは材料の任意のものとすることができる。
【0091】
NIgSBRの作製
一般に本明細書に記載するように抗体以外の任意NIgSBRを同定し、単離し、特性決定することができる。当業者に容易に理解される通り、一般に特定クラスのNIgSBR化合物又は分子に適合又は適応するように任意特定非抗体NIgSBRを当分野で公知の標準方法及び操作で使用することができる。該当特定NIgSBRの単離、精製、製剤化、操作等に適合又は適切な方法は過度の実験を介さずに当業者に容易に理解され、選択されよう。上記のように、蛋白質又は関連NIgSBRについては、以下の文献がこのような方法についてかなり詳細に記載している:Scopes,Protein Purification,Springer−Verlag,N.Y.(1982);Deutscher,Methods in Enzymology Vol.182:Guide to Protein Purification,Academic Press,Inc.N.Y.(1990);Sandana Bioseparation of Proteins,Academic Press,Inc.(1997);Bollagら,Protein Methods,2nd Edition Wiley−Liss,NY(1996);Walker The Protein Protocols Handbook Humana Press,NJ(1996);Harris and Angal Protein Purification Applications:A Practical Approach IRL Press at Oxford,Oxford,England(1990);Scopes Protein Purification:Principles and Practice 3rd Edition Springer Verlag,NY(1993);Janson and Ryden Protein Purification:Principles,High Resolution Methods and Applications,Second Edition Wiley−VCH,NY(1998);及びWalker Protein Protocols on CD−ROM Humana Press,NJ(1998)。核酸操作については、Sambrook and Ausubelが核酸(及び蛋白質と所定の小分子)の詳細な単離、精製、製剤化及び操作方法を記載している。有機合成技術と得られる分子の単離、精製、製剤化及び操作法については、例えばOrganic Chemistry by Fessendon and Fessendon,(1982,Second Edition,Willard Grant Press,Boston Mass.);Advanced Organic Chemistry by March(Third Edition,1985,Wiley and Sons,New York);及びAdvanced Organic Chemistry by Carey and Sundberg(Third Edition,Parts A and B,1990,Plenum Press,NewYork)参照。多数の化合物の単離、精製、製剤化及び操作に関する更に詳細は2004年Sigmaカタログ(USA)又は2004年Aldrichカタログ(Milwaukee,WI,USA)に記載されている。
【0092】
診断法
本発明は研究、治療又は診断法で使用するための本明細書に記載する検出可能に標識した抗NIgSAbを提供する。
【0093】
本発明の抗NIgSAbは試料中又は支持体上の他の抗原又は抗体を検出又は定量するイムノアッセイ等の各種方法で有用である。抗体を検出するためのイムノアッセイは一般に本発明の検出可能に標識された抗NIgSAbの存在下で試料をインキュベートする段階と、試料中で結合した標識抗体を検出する段階を含む。種々の臨床アッセイ法が例えばImmunoassays for the 80’s,(Eds.A.Vollerら,University Park,1981)及びPaul(ed.)FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY,FOURTH EDITION,Lippincott−Raven,NY,NY(1999)に記載されているように、当分野で周知である。
【0094】
従って、アッセイで使用される抗NIgSAb、NIgSBR又は他の任意抗体分子はニトロセルロース、又は細胞、細胞内容物もしくは蛋白質を固定化することが可能な別の固体支持体に付加することができる。その後、支持体を適切な緩衝液と他の所望試薬で洗浄した後、検出可能に標識された抗NIgSAb又は検出可能に標識されたNIgSBRで処理することができる。次に、固相支持体に緩衝液で2回目の洗浄を行い、検出可能に標識された未結合抗NIgSAb又は検出可能に標識された未結合NIgSBRを除去することができる。その後、固体支持体に結合した標識量を公知方法段階により検出又は定量することができる。
【0095】
「固相支持体」又は「キャリヤー」としてはペプチド、蛋白質、抗原又は抗体と結合することが可能な任意支持体が挙げられる。周知支持体又はキャリヤーとしてはガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び修飾セルロース、ニトロセルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、及びマグネタイトが挙げられる。キャリヤーの性質は本発明の目的ではある程度まで可溶性であるか又は不溶性とすることができる。支持体材料はカップリングした分子が抗原又は抗体と結合できる限り、ほぼ任意の可能な構造形状とすることができる。従って、支持体形状はビーズ等の円形、又は試験管内面やロッド外面等の円筒形とすることができる。あるいは、表面はシート、培養皿、試験ストリップ等のように平坦でもよい。好適支持体としてはポリスチレンビーズとプレートのウェルが挙げられる。抗体、ペプチド又は抗原と結合するのに適した他の多数のキャリヤーが存在することは当業者に容易に理解されるか、あるいは日常的実験により確認することができる。
【0096】
周知方法段階により所与ロットの抗NIgSAb又はNIgSBRの結合活性を決定することができる。当業者は本明細書に開示する方法に加えて周知方法を使用して日常的実験により有効な最適アッセイ条件を決定することができる。
【0097】
抗NIgSAb又はNIgSBRを検出可能に標識するには、酵素イムノアッセイ(EIA)、又は酵素イムノソルベントアッセイ(ELISA)用酵素と結合することにより実施することができる。結合した酵素は暴露される基質と反応し、例えば分光光度測定、蛍光光度測定又は目視手段により検出することができる化学部分を発生する。本発明の抗NIgSAbを検出可能に標識するために使用することができる酵素としては限定されないが、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、Δ5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、α−グリセロリン酸脱水素酵素、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスフアターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グリコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0098】
抗NIgSAb又はNIgSBRを放射性標識することにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)により非変性免疫グロブリンを検出することができる(例えば、Workら,Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology,North Holland Publishing Company,N.Y.(1978)参照)。放射性同位体はガンマカウンターもくはシンチレーションカウンターの使用等の手段又はオートラジオグラフィーにより検出することができる。本発明の目的に特に有用な同位体はH、125I、131I、35S、14C及び125Iである。
【0099】
抗NIgSAb又はNIgSBRを蛍光化合物で標識することもできる。蛍光標識物質を適正な波長の光に暴露すると、その存在を蛍光により検出することができる。最も一般に使用されている蛍光標識化合物としてはイソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド及びフルオレサミンが挙げられる。Haugland,HAND BOOK OF FLOURESCENT PROBES AND RESEARCH PRODUCTS,NINTH EDITION Molecular Probes,Inc.,Eugene Oregon(2003)も参照。
【0100】
抗NIgSAb又はNIgSBRは152Eu又は他のランタニド系等の蛍光発光金属を使用して検出可能に標識することもできる。これらの金属はジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の金属キレート基を使用して抗NIgSAbに結合することができる。
【0101】
抗NIgSAb又はNIgSBRは化学発光化合物と結合することにより検出可能に標識することもできる。その後、化学反応中に発生する発光の存在を検出することにより化学発光標識した抗体の存在を判定する。特に有用な化学発光標識化合物の例はルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及び蓚酸エステルである。
【0102】
同様に、生物発光化合物を使用して本発明の抗NIgSAb又はNIgSBRを標識することもできる。生物発光は生体系に存在する型の化学発光であり、触媒蛋白質が化学発光反応の効率を増加する。生物発光蛋白質の存在は発光の存在を検出することにより判定される。標識目的に重要な生物発光化合物はルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンである。
【0103】
抗NIgSAb又はNIgSBRの検出は例えば、検出可能な標識が放射性ガンマ線放出体である場合には例えばシンチレーションカウンターを使用し、例えば標識が蛍光物質である場合には蛍光計を使用して実施することができる。酵素標識の場合には、酵素の基質を利用する比色法により検出することができる。基質の酵素反応の程度を同様に作製した標準と目視比較することにより検出することもできる。
【0104】
例えば患者から組織標本を採取し、検出可能に標識された本発明の抗NIgSAb又はNIgSBRと前記標本の組み合わせを提供することにより、in situ検出を行うこともできる。検出可能に標識された抗NIgSAb又はNIgSBRは検出可能に標識された抗NIgSAb又はNIgSBRを生体試料に添加又は重層することにより提供することが好ましい。このような方法を使用することにより、試験組織中の天然免疫グロブリンの存在のみならず、天然免疫グロブリンの分布も測定することができる。本発明を使用すると、当業者に自明の通り、このようなin situ検出を達成するように各種組織学的方法(例えば染色法)の任意のものを応用することができる。
【0105】
本発明の抗NIgSAb又はNIgSBRは免疫測定アッセイ(「2部位」又は「サンドイッチ」アッセイとも言う)で使用するように適応させることができる。典型的免疫測定アッセイでは、所定量の未標識抗体(又は抗体フラグメント)を被験液に不溶性の固体支持体に固定し、固相抗体、抗原、及び検出可能に標識された物質の間に形成された三元複合体を検出及び/又は定量できるように所定量の検出可能に標識された抗NIgSAb又はNIgSBRを加える。
【0106】
典型的な免疫測定アッセイとしては、固相に固定した抗体をまず被験試料と接触させて二元固相抗体−抗体複合体の形成により試料から抗原を抽出する「フォワード」アッセイが挙げられる。適切なインキュベーション時間後、固体支持体を洗浄して未反応抗原を含む液体試料の残渣を除去した後、(「レポーター分子」として機能する)既知量の標識抗体を含む溶液と接触させる。未標識抗体を介して固体支持体に固定した抗原と標識抗体に複合体を形成させる第2のインキュベーション時間後に、固体支持体に2回目の洗浄を実施し、未反応標識固体を除去する。この型のフォワードサンドイッチアッセイは抗原の有無を判定する単純な「イエス/ノー」アッセイでもよいし、既知量の非変性免疫グロブリンを含む標準試料で得られた測定値と標識抗体測定値を比較することにより定量的にすることもできる。このような「2部位」又は「サンドイッチ」アッセイはWide(Radioimmune Assay Method,(Ed.Kirkham,Livingstone,Edinburgh(1970)199−206)により記載されている。
【0107】
天然免疫グロブリンで同様に有用であり得る他の型の「サンドイッチ」アッセイは所謂「同時」アッセイと「リバース」アッセイである。同時アッセイはインキュベーション段階が1回だけであり、固体支持体に固定した抗体、抗原、及び標識抗体と他の所望抗原を同時に被験試料に加える。インキュベーションの完了後、固体支持体を洗浄し、液体試料の残渣と未結合標識抗体を除去する。その後、従来の「フォワード」サンドイッチアッセイと同様に、固体支持体に結合している標識抗体の存在を判定する。
【0108】
「リバース」アッセイでは、まず液体試料に標識抗体溶液を加えた後に、適切なインキュベーション時間後に固体支持体に固定した未標識抗体を加える段階的添加を利用する。2回目のインキュベーション後に固相を従来通りに洗浄して被験試料の残渣と未反応標識抗体を除去する。次に、固体支持体に結合した標識抗体の存在を「同時」及び「フォワード」アッセイと同様に判定する。1態様では、同一又は別のエピトープに特異的な本発明の抗NIgSAb及び/又はNIgSBRの組み合わせを使用して高感度多部位免疫放射定量測定アッセイを実施することができる。
【0109】
本発明の抗NIgSAb又はNIgSBRを含むキット又は製品を作製することができる。このようなキット又は製品は研究、治療、又は診断法の実施で使用される。
【0110】
一般に本明細書に記載する方法では、抗NIgSAb及びNIgSBRは交換可能であり、例えば検出可能に標識する場合には、相互に置き換えることもできるし、相互に組み合わせることもできる。
【0111】
以下、実施例により本発明を例証するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。本発明に従って置換可能な本質的に等価の各種パラメーター及び材料が当業者に認識されよう。
【実施例1】
【0112】
抗体の生産
免疫及び融合方法
Lou/Mラットにマウス血清免疫グロブリンを免疫した。Balb/cマウスにウサギ血清免疫グロブリンを免疫した。3回免疫後に血清力価を試験した。血清力価の高い動物に由来する脾臓をマウス骨髄腫融合パートナーSP2/Oと融合した。
【0113】
融合プロトコール
A.培地調製
1)IMDM基礎培地:
2)20%FBS完全培地:
IMDM基礎培地500ml+FBS100ml+P/S6.5ml(ストック溶液濃度:ペニシリン10,000単位/ml;ストレプトマイシン100,000単位/ml)+グルタミン6.5ml(ストック溶液濃度:200μM)。
3)サプリメント:
100x HAT
50x HES(Hybridoma Enhancing Supplement:ハイブリドーマ増強サプリメント)。
4)融合培地:
完全培地500ml
100x HAT 5ml
50x HES 10ml。
5)50% PEG(Sigma,MW 1500)。
【0114】
B.骨髄腫細胞の調製
1)融合前に骨髄腫細胞株を少なくとも10−20% FBS IMDM培地で3〜4日間培養した。細胞融合前は骨髄腫を対数増殖期に維持した。
2)光学顕微鏡を使用して骨髄腫細胞の増殖と生存をチェックした。
3)骨髄腫細胞をフラスコの表面から静かに剥がし、50mlコニカルチューブに移した。
4)骨髄腫細胞を1100rpmで5分間遠心した。
5)上清を捨て、細胞ペレットを基礎IMDM培地に再懸濁した。
6)骨髄腫細胞を1100rpmで5分間遠心した。
7)上清を捨て、細胞ペレットを基礎IMDM培地に再懸濁した。
8)洗浄を1回繰返し、細胞カウントを実施した。
【0115】
C.脾細胞の調製を以下のように実施した:
1)動物を麻酔し、心臓穿刺によりできるだけ多量を採血した後に頸部脱臼させた。
2)動物を75%エタノール浴に2〜3分間浸漬した。
3)左腹側領域を露出させるように動物の右側を下にし、75%エタノールで消毒した発泡スチレンラックにピンで固定した。
4)左脚の皮膚を鋏でV字形に切開した。切り口から皮膚を引っ張って切開を拡大することにより、腹膜を露出させた。左腹部の腹膜の真下に脾臓が暗赤色塊として見えた。
5)腹膜を小鋏で切開し、脾臓を露出させた。
6)脾臓を摘出し、付着物を取り除いて脾臓を取出した。予め湿潤させたナイロンスクリーンセルストレナーを50mlコニカルチューブの頂部に載せ、その上に脾臓を置いた。脾臓を小型カーブ鋏で小切片に裁断した。
7)脾臓切片を1ccシリンジプランジャーでセルストレナーに押し付け、圧延作用によりホモジナイズした。基礎IMDM培地(場合によりペニシリン/ストレプトマイシン)を加えた50mlコニカルチューブで脾細胞をリンスした。全脾細胞が分離するまで脾細胞を連続的にホモジナイズ及びリンスした。
8)脾細胞を1100rpmで5分間遠心した。上清を捨て、ペレットを再懸濁した。IMDM 40mlを細胞に加え、上記のように遠心を繰返した。これを第1洗浄物とした。
9)洗浄した脾細胞ペレットをIMDM培地に再懸濁し、細胞カウントを実施した。
【0116】
D.脾細胞と骨髄腫の融合を以下のように実施した:
1)脾細胞と骨髄腫細胞を2−5:1の脾細胞対骨髄腫細胞比で混合した(2:1又は3:1が好ましい)。
2)細胞混合物を1500rpmで7分間遠心した。
3)ガラスパスツールピペットを使用して上清を吸引し、50mlコニカルチューブの側面に水分が残らないようにした。
4)チューブの側面を発泡スチレンラックにぶつけることによりペレットを静かに剥がした。
5)(37℃まで予め加温しておいた)50%PEGを時折撹拌しながら1分間かけて滴下した。
マウス又はハムスター融合体 0.8−1.0ml PEG
ラット融合体 0.9−1.2ml PEG。
6)細胞/50%PEG懸濁液を反応させた。
マウス又はハムスター融合体:1分15秒
ラット融合体:1分30秒。
7)予め加温しておいた基礎IMDM培地15mlを5分間かけて徐々に加えた:
a)最初の1分間は時折混合しながら1mlを加えた。
b)次の1分間は時折混合しながら培地2mlを加えた。
c)次の2〜3分間で残りの培地を時折混合しながら加えた。
8)細胞懸濁液を37℃水浴で2〜5分間インキュベートした。
9)細胞を1000rpmで5分間遠心した。
10)上清を捨て、ペレットを静かに再懸濁した。次に細胞を適正容量の融合培地(HAT培地)に注意深く移した。
11)30分〜1時間後にハイブリドーマ培養液200μl/ウェルを幅広オリフィスチップで96ウェル平底組織培養プレートにプレーティングした。
12)混合物を37℃、湿度100%の7%COインキュベーターで3〜4日間培養した。上清の2/3を全ウェルから吸引した後、細胞コロニーがばらばらにならないようにHT培地140−180μl/ウェルを幅広オリフィスチップで注意深く再添加した。
13)9〜10日後にハイブリドーマ上清をスクリーニングした。
【0117】
天然免疫グロプリンに対する抗体の優先的反応性の特性決定
スクリーニング:96ウェルプレート中の全クローンをELISAにより以下のようにスクリーニングした:
1)ELISAプレートにPBS中濃度2μg/mlのマウス血清IgG 100μl/ウェルをコーティングした。プレートをシールし、4℃で一晩インキュベートした。
2)ウェルを吸引し、300μl/ウェルを上回る洗浄用緩衝液で3回洗浄した。プレートを反転させ、吸収紙に吸収させて残留緩衝液を除去した。
3)ウェルをアッセイ希釈剤200μl/ウェルでブロックし、室温で1時間インキュベートした。
4)ステップ2を繰返した。
5)TCS試料100μl/ウェルをウェルに加えた。プレートをシールし、室温で2時間インキュベートした。
6)ステップ2を繰返し、合計5回洗浄した。
7)HRP標識マウス抗ラット抗体100μl/ウェルをアッセイ希釈剤に加え、2000倍濃度に希釈した。プレートをシールし、室温で1時間インキュベートした。
8)ステップ2を繰返し、合計5回洗浄した。
9)ABTS基質を使用の20分間以内に融解し、基質11ml当たり30% H 11μlを加えた。ABTS基質溶液100μl/ウェルを各ウェルに加えた。プレートを室温で10〜20分間インキュベートした。
10)プレートを405nmで読み取った。
【0118】
全陽性クローンを選択し、以下の試験を実施した:
1)特異性試験:ELISAプレートにPBS中2μg/mlの各種マウスアイソタイプ100μl/ウェルをコーティングした。マウスIgG1.2a、2b、G3、IgA及びIgMをA、B、C、D、E、F及びG行に加えた。試料を1、2、3、4列等に加えた。他のアッセイステップは上記スクリーニングプロトコールに記載したように実施した。
2)アイソタイプ試験:ELISAプレートにPBS中2μg/mlの各種抗マウスアイソタイプmAb100μl/ウェルをコーティングした。マウスIgG1.2a、2b、G3、IgA及びIgMをA、B、C、D、E、F及びG行に加えた。試料を1、2、3、4列等に加えた。他のアッセイステップは上記スクリーニングプロトコールに記載したように実施した。
3)免疫グロブリンのウェスタンブロット/イムノブロットを以下のように実施した:
1)血清IgG(天然及び変性)試料を作製し、SDS−PAGEゲルを泳動した。
2)最良の蛋白質転写結果が得られるように転写システム製造業者の説明書に従って試料をゲルからImmobilon−P膜に転写した。
3)ブロットをTCS試料と共に抗体結合緩衝液で一晩4℃にてインキュベートした。
4)膜と試料の一晩インキュベーション後、ブロットを5分間TBSTで5回洗浄した。
5)HRP標識抗Igの2000倍希釈液と共にブロットを1時間室温でインキュベートした。
6)抗NIgSAbのインキュベーション後、ブロットを5分間TBSTで5回洗浄した。
7)製造業者のPierce Chemiluminescence HRP基質説明書に従ってブロットを展開した。
8)ブロットを適当な時間写真フィルムに露光した。最良結果を得るためには、1分〜15分間露光し、特異的抗体−抗原反応に対応する化学発光シグナルを可視化すべきである。天然免疫グロブリンと反応するが、変性免疫グロブリンと反応しなかったクローンを増殖させ、精製し、HRP抗NIgSAbと結合した後、免疫沈降/ウェスタンブロット(IP/WB)試験を実施した:
4)IP/WBは以下のように実施した:
ステップI:細胞溶解液調製を以下のように実施した:
1.Jurkat細胞約10個を採取した。
2.細胞をコニカルチューブ内にてPBS約10mlで洗浄し、400xgで10分間遠心した。
3.上清を捨て、ステップ2を繰返した。
4.2回目の洗浄後、上清を完全に捨て、1X Protease Inhibitor Cocktailを加えた冷溶解用緩衝液1mlに細胞ペレットを再懸濁した(最終濃度10細胞/ml)。チューブを静かにボルテックスした。
5.チューブを時折混合しながら氷上に30分間置いた。
6.細胞溶解液を10,000xgで15分間4℃にて遠心した。
7.ペレットを撹乱しないように上清を注意深く集め、清浄なチューブに移した。この時点で細胞溶解液を長期保存に備えて−80℃で凍結することができる。ペレットを捨てた。
【0119】
ステップII:細胞溶解液プレクリアを以下のように実施した:
1.抗免疫グロブリンビーズスラリー50μlを試験管に移し、冷溶解用緩衝液450μlを加えた。混合物を10000xgで60秒間遠心し、溶解用緩衝液を除去した。冷溶解用緩衝液500μlで洗浄を繰返し、ビーズを冷溶解用緩衝液50μlに再懸濁した。
2.抗免疫グロブリンビーズスラリー50μlと溶解用緩衝液500μlを試験管に加え、氷上で60分間インキュベートした。
3.混合物を10000xgで10分間4℃にて遠心し、上清を別の試験管に移した。ビーズが混入した場合には、上清を再遠心し、更に別の試験管に移さなければならない。
【0120】
ステップIII:免疫沈降を以下のように実施した:
1.プレクリア済み冷溶解液を入れた試験管に抗ヒトカスパーゼ−7抗体5μgを加えた。
2.混合物を4℃で1時間インキュベートした。
3.プレチルド溶解用緩衝液中の抗免疫グロブリンスラリー50μlを(上記プレクリアステップ1に指示したように調製した)混合物に加えた。
4.混合物をロッキングプラットフォーム又はローテーターで4℃にて1時間インキュベートした。
5.試験管を10000xgで60秒間4にて遠心した。
6.上清を注意深く完全に除去し、ビーズを溶解用緩衝液500μlで3回洗浄した。バックグラウンドを最小限にするために、これらの洗浄で上清を完全に除去するように注意した。
7.最終洗浄後、上清を吸引し、試料緩衝液50μlをビーズペレットに加え、100℃まで10分間加熱混合した。
8.混合物を10,000xgで5分間遠心した後、上清を集め、SDS−PAGEゲルにロードした。ゲルを後で泳動する場合にはこの時点で上清試料を集めて凍結保存することができる。
9.SDS−PAGEの製造業者の説明書に従う。
10.転写システム製造業者の説明書に従って試料をSDS−PAGEゲルからImmobilon−P膜に転写した。
11.ブロットを抗体結合緩衝液中2μg/mlの抗ヒトカスパーゼ−7mAb(一次抗体)と共に一晩4℃でインキュベートした。
12.膜と一次抗体の一晩インキュベーション後、ブロットを5分間TBSTで5回洗浄した。
13.HRP標識した第2段階mAb(抗NIgSAb)の250倍希釈液と共にブロットを1時間室温でインキュベートした。
14.二次抗体のインキュベーション後、ブロットを5分間TBSTで5回洗浄した。
15.Pierce Chemiluminescence HRP基質説明書に従ってブロットを展開した。
16.ブロットを適当な時間写真フィルムに露光した。最良結果を得るためには、1分〜15分間露光し、特異的抗体−抗原反応に対応する化学発光シグナルを可視化する。
【0121】
本発明の方法は免疫沈降段階から持ち込まれる変性軽鎖及び重鎖分子との結合に起因するバックグラウンドノイズを減らしながら、最適シグナルのために高い優先度で天然免疫グロブリンと結合する抗体を選択的に集積した。
【0122】
本発明の抗NIgSAb及びNIgSBRの実例として、IP/ウェスタンブロットで天然免疫グロブリンと特異的に結合するようにクローンeB144により産生されたモノクローナル抗体を図1、2及び3に示し、同図から明らかなように、本発明の抗NIgSAb及びNIgSBRは変性免疫グロブリン分子の重鎖と軽鎖の両方と反応する従来のポリクローナル抗体に比較して天然免疫グロブリンのみと選択的に反応するという実質的利点がある。図面から明らかなように、天然免疫グロブリンとの結合を100%とすると、抗NIgSAbで検出された変性免疫グロブリン分子との結合は約0%であった。
【0123】
検出可能に標識された本発明の抗NIgSAbを使用したイムノブロットの結果を図1に示す。組換えヒトIL−2 100ngをウサギ抗ヒトIL−2ポリクローナル抗体で免疫沈降させた。SDS−PAGEに20ng/ウェルをロードし、ウェスタンブロット膜に転写した。レーン1は従来の標識ポリクローナル抗体(Amershamロバ抗ウサギIg,1:5000)と共にインキュベートし、このレーンの付加バンドは変性免疫グロブリン軽鎖及び重鎖汚染物質を示す。レーン2は本発明の方法に従って調製した検出可能に標識されたモノクローナルラット抗ウサギIg上清と共にインキュベートした。
【0124】
更に本発明の方法により生産された抗体と変性ウサギ免疫グロブリンの反応の欠如の選択方法を示す。各レーンは異なる抗体を使用してプローブした。各パネルの対応するレーンは同一抗体でプローブした。天然抗体と優先的に結合する抗体の生産を示す。レーン5、6、10、12、15はウェスタンブロットにより抗NIgSAbが変性ウサギ免疫グロブリンに対する抗体反応性を殆ど又は全く示さないことを各々示す。レーン4、7、8、11、13、14、16、及び17は各々天然免疫グロブリンと変性免疫グロブリンの両者と反応した。
【0125】
図3は非変性免疫グロブリンに対する本発明の抗NIgSAbの親和性を示す。JURKAT細胞溶解液(1X10e7細胞/ml 0.5ml)をマウス抗ヒトカスパーゼ7(5μg)で免疫沈降させた。SDS−PAGEに10μl/ウェル(1X10細胞)をロードし、ウェスタンブロット膜に転写した。レーン1は従来の標識ポリクローナル抗体(Jacksonポリクローナル抗マウスIg,1:5000)と共にインキュベートし、このレーンの付加バンドは軽鎖及び重鎖汚染物質を示す。レーン2は本発明の検出可能に標識された抗NIgSAb(抗マウスIg)(1:300)と共にインキュベートした。レーン3はレーン1に使用した従来の標識ポリクローナル抗体(Jacksonポリクローナル抗マウスIg,1:5000)を使用したレーン2の再ブロットである。レーン3の付加バンドの出現は軽鎖及び重鎖汚染物質を示し、本発明の検出可能に標識された抗NIgSAb(抗マウスIg)(1:300)が汚染性変性Igよりも天然Igと選択的且つ優先的に結合することが確認された。
【実施例2】
【0126】
ポリクローナル抗NIgSAbを作製するためのサブトラクティブ免疫
手順:
【0127】
1日目:完全アジュバントを使用して最終抗体生産に所望されない寛容原(変性免疫グロブリン)(25−50mg)をマウス6匹に注射(i.p.)する。10分後に滅菌リン酸緩衝食塩水中のシクロホスファミド(SIGMA)100mg/kg体重を注射する。この目的には、2mg/mlシクロホスファミド溶液を調製する。
【0128】
2日目:シクロホスファミドを再び注射する(100mg/kg体重)。
【0129】
3日目:シクロホスファミド注射を繰返す。
【0130】
7日目:マウスから採血し、ELISAにより抗体力価を測定する。
【0131】
14日目:不完全アジュバントを使用して最終抗体生産に所望されない寛容原(25−50mg)をマウス6匹に注射(i.p.)する。10分後に滅菌リン酸緩衝食塩水中のシクロホスファミド100mg/kg体重を注射する。
【0132】
15日目:シクロホスファミドを再び注射する(100mg/kg体重)。
【0133】
16日目:シクロホスファミド注射を繰返す。
【0134】
21日目:マウスから採血し、抗体力価を測定する。抗体力価が得られない場合には、次段階に進む。まだ抗体力価が存在している場合には寛容原とシクロホスファミドの注射を繰返す。
【0135】
28日目:完全アジュバントを使用して所望免疫原(天然免疫グロブリン)を免疫する。
【0136】
38日目:マウスから採血し、抗体力価アッセイを実施する。
【0137】
42日目:不完全アジュバントを使用して免疫原の免疫を繰返す。
【0138】
46日目:マウスから採血し、抗体力価を測定する。この抗体が抗NIgSAbに相当する。所望抗体力価(約1/10以上)が得られるならば、モノクローナル抗体を動物用に生産する場合には翌日細胞融合を実施する。所望力価が得られないならば、所望力価が得られるまでアジュバントによる免疫原注射を2週置きに繰返す。
【実施例3】
【0139】
哺乳動物細胞における抗NIgSAbのクローニングと発現
典型的な哺乳動物発現ベクターはmRNAの転写開始を媒介する少なくとも1種のプロモーターエレメントと、抗体コーディング配列と、転写終結と転写産物のポリアデニル化に必要なシグナルを含む。付加エレメントとしてエンハンサー、Kozak配列及びRNAスプライシングの供与部位と受容部位により挟まれる介在配列が挙げられる。SV40に由来する初期及び後期プロモーター、レトロウイルスに由来する長い末端反復配列(LTRS)(例えばRSV,HTLVI,HIVI)及びサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターにより高度に効率的な転写を達成できる。他方、細胞エレメント(例えばヒトアクチンプロモーター)も使用できる。本発明の実施に使用するのに適切な発現ベクターとしては、例えばpIRES1neo、pRetro−Off、pRetro−On、PLXSN、又はpLNCX(Clonetech Labs,Palo Alto,California)、pcDNA3.1(+/−)、pcDNA/Zeo(+/−)又はpcDNA3.1/Hygro(+/−)(Invitrogen)、PSVL及びPMSG(Pharmacia,Uppsala,Sweden)、pRSVcat(ATCC 37152)、pSV2dhfr(ATCC 37146)及びpBC12MI(ATCC 67109)等のベクターが挙げられる。使用することができる哺乳動物宿主細胞としてはヒトHela293、H9及びJurkat細胞、マウスNIH3T3及びC127細胞、Cos1、Cos7及びCV1、ウズラQC1−3細胞、マウスL細胞並びにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。
【0140】
あるいは、染色体に組込まれた遺伝子を含む安定な細胞株で遺伝子を発現させることができる。dhfr、gpt、ネオマイシン又はハイグロマイシン等の選択マーカーとのコトランスフェクションによりトランスフェクトした細胞を同定及び単離することができる。
【0141】
トランスフェクトした遺伝子を増幅し、コードされる抗体を多量に発現させることもできる。DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)マーカーは該当遺伝子の数百又は数千のコピーをもつ細胞株を開発するために有用である。別の有用な選択マーカーは酵素グルタミンシンターゼ(GS)である(Murphyら,227 BIOCHEM.J.,277−279(1991);及びBebbingtonら,10 Bio/TECHNOLOGY,169−175(1992))。これらのマーカーを使用し、哺乳動物細胞を選択培地で増殖させ、最高の耐性をもつ細胞を選択する。これらの細胞株は染色体に組込まれた増幅遺伝子を含む。多くの場合にはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びNSO細胞を抗体産生に使用する。
【0142】
発現ベクターpC1及びpC4はラウス肉腫ウイルスの強力なプロモーター(LTR)(Cullenら,5 MOLEC.CELL.BIOL.,438−447(1985))とCMVエンハンサーのフラグメント(Boshartら,41 CELL,521−530(1985))を含む。例えば制限酵素切断部位BamHI、XbaI及びAsp718によるマルチクローニング部位は該当遺伝子のクローニングを助長する。ベクターは更にラットプレプロインスリン遺伝子のポリアデニル化及び終結シグナルである3’イントロンを含む。
【実施例4】
【0143】
非変性免疫グロブリンに対して反応性のモノクローナル抗体の作製
本発明の方法で使用することができるモノクローナル抗体を作製するためにはマウスを使用することができる。
【0144】
免疫
抗NIgSAbハイブリドーマを作製するためには1種以上の免疫スケジュールを使用することができる。以下の典型的な免疫プロトコール後に最初の数種の融合を実施することができるが、他の同様の公知プロトコールも使用することができる。20週齢雌及び/又は外科的に去勢した雄マウス数匹に最終容量100〜400μL(例えば200)となるように等容量のTITERMAX又は完全フロイントアジュバントで乳化した所望免疫グロブリン蛋白質1〜1000μgをIP及び/又はID免疫する。各マウスに場合により2個のSQ部位の各々に生理的食塩水100μL中1〜10μgを投与してもよい。次に1〜7、5〜12、10〜18、17〜25及び/又は21〜34日後に等容量のTITERMAX又は不完全フロイントアジュバントで乳化した免疫グロブリン蛋白質をマウスにIP(1〜400μg)及びSQ(1〜400μg x2)免疫することができる。12〜25日後と25〜40日後に抗凝血剤を使用せずに眼後穿刺によりマウスから採血することができる。次に血液を室温で1時間凝固させ、血清を採取し、公知方法に従って抗免疫グロブリンEIAアッセイを使用して力価を測定する。繰返して注射しても力価が増加しない場合には融合を実施する。その時点で、生理的食塩水100μLで希釈した免疫グロブリン蛋白質1〜400μgをマウスに最終IVブースター注射することができる。3日後に頸部脱臼によりマウスを安楽死させ、脾臓を無菌摘出し、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、及び0.25μg/mLアンホテリシンB(PSA)を加えた冷リン酸緩衝食塩水(PBS)10mLに浸漬することができる。脾臓をPSA−PBSで滅菌潅流することにより脾細胞を回収する。細胞を冷PSA−PBSで1回洗浄し、トリパンブルー色素排除法を使用してカウントし、25mM Hepesを加えたRPMI 1640培地に再懸濁する。
【0145】
細胞融合
融合は公知方法に従って(例えば当分野で公知のように)1:1〜1:10のマウス骨髄腫細胞対生存脾細胞比で実施することができる。非限定的な例として、脾細胞と骨髄腫細胞を一緒にペレット化することができる。次に、ペレットを37℃の50%(w/v)PEG/PBS溶液(PEG分子量1,450,Sigma)1mLに30秒間かけてゆっくりと再懸濁することができる。次に25mM Hepesを加えたRPMI 1640培地(37℃)10.5mLを10分間かけてゆっくりと加えることにより融合を停止することができる。融合細胞を5分間500〜1500rpmで遠心する。次に細胞をHAT培地(25mM Hepes、10% Fetal Clone I血清(Hyclone)、1mMピルビン酸ナトリウム、4mM L−グルタミン、10μg/mLゲンタマイシン、2.5% Origen培養サプリメント(Fisher)、10% 653馴化RPMI 1640/Hepes培地、50μM 2−メルカプトエタノール、100μMヒポキサンチン、0.4μMアミノプテリン、及び16μMチミジンを加えたRPMI 1640培地)に再懸濁した後、200μL/ウェルで96ウェル平底組織培養プレート15枚にプレーティングする。次に5% COと95%空気を含有する加湿37℃インキュベーターにプレートを7〜10日間入れる。
【0146】
マウス血清中の抗NIgSAbの検出
天然免疫グロブリンに特異的なヒトIgG抗体についてマウス血清をスクリーニングするためには固相EIAを使用することができる。要約すると、プレートにPBS中2μg/mL免疫グロブリンを一晩コーティングすることができる。0.02%(v/v)Tween 20を加えた0.15M食塩水で洗浄後、PBS中1%(w/v)BSA200μL/ウェルで1時間室温にてウェルをブロックすることができる。プレートをすぐに使用するか又は将来の使用に備えて−20℃で凍結する。免疫グロブリンをコーティングしたプレートでマウス血清希釈液50μL/ウェルを室温で1時間インキュベートする。プレートを洗浄した後、1%BSA−PBSで30,000倍に希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)50μL/ウェルでプローブする。プレートを再び洗浄することができ、クエン酸−リン酸基質溶液(0.1Mクエン酸と0.2Mリン酸ナトリウム,0.01% H及び1mg/mL OPD)100μL/ウェルを15分間室温で加える。次に停止溶液(4N硫酸)25μL/ウェルを加え、自動プレートスペクトロフォトメーターによりODを490nmで読み取る。
【0147】
ハイブリドーマ上清中の免疫グロブリンの検出
免疫グロブリンを分泌する増殖陽性ハイブリドーマは適切なEIAにより検出することができる。要約すると、96ウェルポップアウトプレート(VWR,610744)に炭酸ナトリウム緩衝液中10μg/mLヤギ抗マウスIgG Fcを一晩4℃でコーティングすることができる。プレートを洗浄し、1%BSA−PBSで1時間37℃にてブロックし、すぐに使用するか又は−20℃で凍結する。未希釈ハイブリドーマ上清をプレート上で1時間37℃にてインキュベートする。プレートを洗浄し、1%BSA−PBSで10,000倍に希釈したHRP標識ヤギ抗マウス抗体で1時間37℃にてプローブする。次にプレートを上記のように基質溶液と共にインキュベートする。
【0148】
抗NIgSAb反応性の測定
上記のようなハイブリドーマは適切なRIAウェスタンブロット又は他のアッセイを使用して天然免疫グロブリンに対する反応性を同時にアッセイすることができる。ハイブリドーマを分泌する抗NIgSAbを細胞培養で増殖させ、限界希釈法により順次サブクローニングすることができる。得られたクローン集団を増殖させ、凍結培地(95%FBS,5%DMSO)で低温処理し、液体窒素中で保存することができる。本発明のモノクローナル抗体は変性免疫グロブリンに比較して天然免疫グロブリンに特異性を示す。
【0149】
クラスタイピング及びアイソタイピング
抗体のアイソタイプ決定はマウス免疫血清を特定力価についてスクリーニングするために使用したフォーマットと同様のフォーマットでEIAを使用して実施することができる。抗原を上記のように96ウェルプレートにコーティングし、精製抗体2μg/mLをプレート上で1時間室温にてインキュベートすることができる。プレートを洗浄し、1%BSA−PBSで4000倍に希釈したHRP標識ヤギ抗マウスIgG、又はHRP標識ヤギ抗マウスIgG又は他の任意クラス特異的もしくはアイソタイプ特異的抗体で1時間室温にてプローブする。プレートを再び洗浄し、上記のように基質溶液と共にインキュベートする。
【0150】
結果と考察
抗NIgSAbモノクローナル抗体の作製
数種の融合を実施し、天然免疫グロブリンに特異的な抗体数ダースを産生するプレート15枚に各融合体(1440ウェル/融合体)を播種する。免疫グロブリン蛋白質を免疫したマウスに由来する脾細胞を使用して数種の融合を実施する。天然免疫グロブリン反応性モノクローナル抗体数個1組を作製する。抗NIgSAbを更に特性決定し、変性免疫グロブリンに比較して天然免疫グロブリンとの特異的結合を実証する。
【0151】
引用文献
以下の文献は参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む。Ausubelら(Ed.),Current Protocols in Molecular Biology,(John Wiley & Sons,Inc.,New York,New York(1987−1991));Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,(Cold Spring Harbor,NY(1989))、及びSambrookら,Molecular Cloning−A Laboratory Manual(3rd Ed.),Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,(2000);Harlow and Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor,NY(1989));Colliganら(Eds.),Current Protocols in Immunology,(John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994−2001));Colliganら,Current Protocols in Protein Science,(John Wiley & Sons,NY,NY,(1997−2001))。
【0152】
以下の文献は本発明に関連して有用な手順に関する有用な詳細を記載しており、同様に参考資料としてその開示内容全体を本明細書に組込む。
【0153】
(1.)Kohler,G.and C.Milstein,“Continuous Cultures of Fused Cells Secreting Antibody of Predefined Specificity”,NATURE,(1975),256(5517):495−7。
【0154】
(2.)Harlow,E.and D.Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,1988。
【0155】
(3.)“Lymphocyte Hybridomas”,Current Topics in Microbiology and Immunology,Volume 81(F.Melchers,M.Potter,and N.Warner,Editors,Springer−Verlag,,1978)。
【0156】
(4.)Brooksら,“Subtractive Immunization Yields Monoclonal Antibodies that Specifically Inhibit Metastasis”,J.OF CELL BIOL.,(1993)122(6):1351−1359。
【0157】
(5.)Williams,C.V.,C.L.Stechmann and S.C.McLoon,“Subtractive Immunization Techniques for the Production of Monoclonal Antibodies to Rare Antigens”,BIOTECHNIQUES,(1992)12(6):842−847。
【0158】
(6.)Sleister,H.M.and A.G.Rao,“Subtractive Immunization:A Tool for the Generation of Discriminatory Antibodies to Proteins of Similar Sequence”,J.IMMUNOL.METHODS.,(2002)261(1−2):213−220。
【0159】
本明細書に引用する全刊行物、特許又は他の文献はその開示内容全体を参考資料として組込み、各刊行物、特許又は他の文献がその開示内容全体を参考資料として組込むと個々に記載されているものとして扱う。これらの文献は本発明当時の技術水準を示し、及び/又は本発明の記載と実施可能性を示す。刊行物は任意化学もしくは特許文献、又は全記録、電子又は印刷フォーマットを含む任意媒体フォーマットで入手可能な他の任意情報を含む。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の抗体がウェスタンブロットフォーマットで天然免疫グロブリンと優先的に結合することを示す。
【図2A】図2Aはウェスタンブロットフォーマットで天然免疫グロブリンと優先的に結合する抗体を生産及び選択する本発明の方法の結果を示す。
【図2B】図2Bはウェスタンブロットフォーマットで天然免疫グロブリンと優先的に結合する抗体を生産及び選択する本発明の方法の結果を示す。
【図3】本発明の抗NIgSAb(レーン2)と比較して天然免疫グロブリン(レーン1)と優先的に結合しない従来の抗体を使用したウェスタンブロットの結果を示す。レーン3はレーン1で使用した従来の抗体で再ブロットしたレーン2を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離又は組換え抗NigSAb。
【請求項2】
前記抗NIgSAbが天然免疫グロブリン蛋白質と特異的に結合する請求項1に記載の抗NIgSAb。
【請求項3】
前記抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体部分、抗体フラグメント、抗体変異体、抗NIgSAb、抗NIgSAb部分、抗NIgSAbフラグメント、及び抗NIgSAb変異体から構成される群から選択される請求項2に記載の抗NIgSAb。
【請求項4】
前記抗体が哺乳動物で産生される請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
前記哺乳動物がヒト、マウス、ラット、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ウマ及びハムスターから構成される群から選択される請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
前記ポリクローナル抗体が変性免疫グロブリンのサブトラクティブ免疫後に天然免疫グロブリンを免疫することにより哺乳動物で産生される請求項2に記載のポリクローナル抗体。
【請求項7】
前記ポリクローナル抗体が不溶性支持体に固定した変性免疫グロブリンと前記ポリクローナル抗体を接触させることにより抗変性免疫グロブリン抗体を除去するように処理されている請求項2に記載のポリクローナル抗体。
【請求項8】
前記不溶性支持体がビーズ、プレート、ウェル、チューブ、膜又はシートから構成される群から選択される請求項7に記載のポリクローナル抗体。
【請求項9】
前記抗NIgSAbが組換え動物又は組換え宿主細胞により産生される請求項1に記載の抗NIgSAb。
【請求項10】
前記組換え宿主細胞が哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、及び細菌細胞から構成される群から選択される請求項9に記載の抗NIgSAb。
【請求項11】
前記抗NIgSAbがバクテリオファージにより産生される請求項14に記載の抗NIgSAb。
【請求項12】
抗NigSAbを発現する組換え細胞株。
【請求項13】
少なくとも1種の抗NIgSAbと希釈剤又はキャリヤーを含有する組成物。
【請求項14】
免疫グロブリン抗原に対する抗体をスクリーニングし、天然免疫グロブリンと特異的に結合する抗体を同定する段階を含む少なくとも1種の抗NIgSAbの生産方法。
【請求項15】
前記抗NIgSAbがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体部分、抗体フラグメント、抗体変異体、抗NIgSAbフラグメント、抗NIgSAb部分及び抗NIgSAb変異体から構成される群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
パッケージング材料と少なくとも1種の単離抗NIgSAbを含む容器を含む研究又は診断用製品。
【請求項17】
前記抗NIgSAbが検出可能に標識されている請求項16に記載の製品。
【請求項18】
前記標識が化学発光剤、放射性同位体、酵素、蛍光剤及び発色剤から構成される群から選択される請求項17に記載の製品。
【請求項19】
前記標識がHRPを含む請求項18に記載の製品。
【請求項20】
前記抗体がマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ハムスター及びウマから構成される群から選択される哺乳動物で産生される請求項17に記載の製品。
【請求項21】
試料を1種以上の抗NIgSAbと接触させる段階と、前記抗NIgSAbと前記試料の結合を測定する段階を含む天然免疫グロブリンの検出方法。
【請求項22】
前記抗NIgSAbが検出可能に標識されている請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗NIgSAbが検出可能な反応生成物の形成を触媒する酵素である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記試料が支持体に固定化されている請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記支持体がビーズ、プレート、シート、ストリップ、ウェル、膜及びチューブから構成される群から選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
単離又は組換えNIgSBR。
【請求項27】
NIgSBRが検出可能に標識されている請求項26に記載のNIgSBR。
【請求項28】
前記標識が化学発光剤、放射性同位体、酵素、蛍光剤及び発色剤から構成される群から選択される請求項27に記載のNIgSBR。
【請求項29】
少なくとも1種のNIgSBRと適切な希釈剤又はキャリヤーを含有する組成物。
【請求項30】
パッケージング材料と少なくとも1種のNIgSBRを含む容器を含む研究又は診断用製品。
【請求項31】
1種以上の化合物をスクリーニングし、天然免疫グロブリンと特異的に結合する化合物を同定する段階を含む少なくとも1種のNIgSBRの生産方法。
【請求項32】
前記NIgSBRが蛋白質スカフォールドライブラリー、ペプチドディスプレイライブラリー、特異的進化ライブラリー、及び蛋白質アレイライブラリーから構成される群から選択されるライブラリーから同定される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記NIgSBRがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体部分、抗体フラグメント、抗体変異体、組換え蛋白質、ポリマースカフォールド、組換え化合物、ポリペプチド、哺乳動物システムで作製されたポリマー、非哺乳動物システムで作製されたポリマー、及びファージディスプレイにより大腸菌で作製されたポリマーから構成される群から選択される請求項31に記載の方法。
【請求項34】
試料を1種以上のNIgSBRと接触させる段階と、前記NIgSBRと前記試料の結合を測定する段階を含む天然免疫グロブリンの検出方法。
【請求項35】
前記NIgSBRが検出可能に標識されている請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記試料が支持体に固定化されている請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記支持体がビーズ、プレート、シート、ストリップ、ウェル、膜及びチューブから構成される群から選択される請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−500269(P2008−500269A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534296(P2006−534296)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/032949
【国際公開番号】WO2005/035721
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506120840)イーバイオサイエンス (1)
【Fターム(参考)】