説明

天然石微粉末または/および天然土微粉末を含有する紙用塗料

【課題】紙またはダンボール等に塗布することによって、消臭性能・遠赤外線の放射性能・保湿性能、抗菌性能等の性能を付与し、それらの結果として、特に食品や野菜・生花等の包装材料として求められる鮮度保持機能を付与せしめる包装材料用塗料を提供することにある。
【解決手段】特定の天然石微粉末または天然土微粉末またはそれらの混合微粉末を配合した塗料を紙またはダンボールの表面に塗布することによって上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙またはダンボール等の包装材料の表面に塗布する塗料に関し、更に詳細には、紙またはダンボール等の包装材料の表面に塗布することにより耐水性・防湿性・耐油性・耐熱性・保冷性等を付与することができると共に、含有された天然石微粉末または/および天然土微粉末が特有に持つ消臭性能・遠赤外線の放射性能・保湿性能・抗菌性能等により、特に食品や野菜・生花等の包装材料に求められる鮮度保持機能という優れた効果を付与することができ、更に、これら包装材料を古紙として再生するときに紙繊維から容易に分離させることができる紙用塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐水性・防湿性・耐油性・保冷性等を有する包装材料としては発泡スチロールが使われてきたが、廃棄物となった場合には一部再生することは可能とはなっているものの、焼却処理あるいは埋め立て処理されるのが一般的である。しかし、焼却処理を行った場合にはダイオキシン等の有害物質が発生することや、埋め立て処理された場合にはほとんど分解されない等の問題点がある。
【0003】
また、発泡スチロール以外のもので耐水性・防湿性・耐油性・保冷性等を有する包装材料として使われているものには紙の表面にポリプロピレン、ポリエチレン等のフィルムやアルミ箔をラミネート加工により被着したものがあるが、こうしたプラスチックフィルムやアルミ箔を熱融着した紙は古紙として再生する工程において離解装置によって繊維状化することが容易ではなく、この結果再生パルプの原料とすることが不可能であり、結局焼却処理あるいは埋め立て処理するしかない。
【0004】
そこで、離解性のある樹脂にセラミック微粉末を混合攪拌した塗料、および、そのような塗料を紙の表面に塗布することにより耐水性、耐油性、耐熱性の高い包装材料を得る方法が提案されている。
【0005】
しかし、このセラミック微粉末を含有する塗料を塗布した包装材料は、確かに耐水性、耐油性、耐熱性があり、尚かつ古紙としての再生が可能ではあるものの、特に食品や野菜・生花等の包装材料として求められる消臭性能・遠赤外線の放射性能・保湿性能、抗菌性能等による鮮度保持機能という優れた効果は期待できるものではなかった。
【特許文献1】特開平7−145597(段落0006、0007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の主たる目的は、紙またはダンボール等に塗布することによって、消臭性能・遠赤外線の放射性能・保湿性能、抗菌性能等の性能を付与し、それらの結果として、特に食品や野菜・生花等の包装材料として求められる鮮度保持機能を付与せしめる包装材料用塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、セラミックの代わりに特定の天然石微粉末または天然土微粉末あるいはそれらの混合微粉末を配合した塗料を紙またはダンボールの表面に塗布することによって上記課題を達成できることを見出し、遂に発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の塗料に係わるものである。
1.離解性のあるスチレン−アクリル系樹脂または離解性のあるアクリル系樹脂または前記スチレン−アクリル系樹脂と前記アクリル系樹脂の混合樹脂70〜95重量%に天然石微粉末または天然土微粉末または前記微粉末2種類以上の混合微粉末30〜5重量%を混合攪拌してなる紙用塗料。
2.前記紙用塗料に、更に、アルミペーストまたは/および顔料を添加混合してなる紙用塗料。
3.前記微粉末が角閃石微粉末である前記項1または項2に記載の紙用塗料。
4.前記微粉末がトルマリン微粉末である前記項1または項2に記載の紙用塗料。
5.前記微粉末が珪藻土微粉末である前記項1または項2に記載の紙用塗料。
6.前記微粉末が角閃石微粉末およびトルマリン微粉末である前記項1または項2に記載の紙用塗料。
7.前記微粉末が角閃石微粉末および珪藻土微粉末である前記項1または項2に記載の紙用塗料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料を紙またはダンボール等の包装材料の表面に塗布することにより、耐水性・防湿性・耐油性・耐熱性・保冷性等を付与することができると共に、含有された天然石微粉末または/および天然土微粉末が特有に持つ消臭性能・遠赤外線の放射性能・保湿性能、抗菌性能等の優れた性能を付与することができ、食品や野菜・生花の包装材料として、鮮度保持機能(効果)の高い包装材料とすることができる。
【0010】
また、離解性のある塗料であるので紙またはダンボールの古紙再生が可能であり、焼却したとしても環境を汚染する有害物質を含まないから無公害であり、埋め立て処理をしたとしても二次分解物が土壌を痛めることはない。
【0011】
更に、アルミペーストを混入することにより、保冷性能のあるアルミカラーの包装材料を、また、顔料を混入することにより色彩感覚の優れた包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の要旨とするところは、離解性のあるスチレン−アクリル系樹脂または離解性のあるアクリル系樹脂または前記スチレン−アクリル系樹脂と前記アクリル系樹脂の混合樹脂70〜95重量%に天然石微粉末または天然土微粉末または前記微粉末2種類以上の混合微粉末30〜5重量%を混合し、必要に応じてアルミペーストまたは/および顔料を添加してなる紙またはダンボール等のコーティング用塗料にある。
【0013】
また、この塗料の具体的な製造方法は、先ず離解性のあるスチレン−アクリル系樹脂または離解性のあるアクリル系樹脂または前記スチレン−アクリル系樹脂と前記アクリル系樹脂の混合樹脂70〜95重量%に天然石微粉末または天然土微粉末または前記微粉末2種類以上の混合微粉末30〜5重量%を混合し、分散剤、消泡剤を少量加えて攪拌する。次に、必要に応じてアルミペーストまたは顔料を所要量(少量)添加して攪拌するものである。
【0014】
本発明の塗料の紙またはダンボールへのコーティングは、エアドクターコーター、グラビアロールコーター等の塗工機で行うが、その時の塗料粘度はコーティング方法にあわせて溶媒にて調節する。尚、付着量は用途によって決定される。
【実施例】
【0015】
実施例1
スチレン−アクリル系樹脂(昭和電工株式会社製ポリゾール(登録商標)AM−2200)80重量%、角閃石微粉末(株式会社古代石器製)20重量%の塗料を配合し、ダンボールの両面に固形分付着料15g/mで塗布乾燥し、そのダンボールにて野菜運搬用ダンボールケースおよび生花運搬用ダンボールケースを作成し、実施例1とした。
【0016】
実施例2
スチレン−アクリル系樹脂(昭和電工株式会社製ポリゾール(登録商標)AM−2200)80重量%、トルマリン微粉末(株式会社アダン鉱山中央研究所製トルマリン)20重量%の塗料を配合し、ダンボールの両面に固形分付着料15g/mで塗布乾燥し、そのダンボールにて野菜運搬用ダンボールケースおよび生花運搬用ダンボールケースを作成し、実施例2とした。
【0017】
実施例3
スチレン−アクリル系樹脂(昭和電工株式会社製ポリゾール(登録商標)AM−2200)70重量%、珪藻土微粉末(オプライト鉱業株式会社製オプライト(登録商標)W−3005S)30重量%の塗料を配合し、ダンボールの両面に固形分付着料15g/mで塗布乾燥し、そのダンボールにて野菜運搬用ダンボールケースおよび生花運搬用ダンボールケースを作成し、実施例3とした。
【0018】
実施例4
スチレン−アクリル系樹脂(昭和高分子株式会社製ポリゾール(登録商標)AM−2200)80重量%、角閃石微粉末(株式会社古代石器製)15重量%、トルマリン微粉末(株式会社アダン鉱山中央研究所製白トルマリン)5重量%の塗料を配合し、ダンボールの両面に固形分付着料15g/mで塗布乾燥し、そのダンボールにて野菜運搬用ダンボールケースおよび生花運搬用ダンボールケースを作成し、実施例4とした。
【0019】
実施例5
スチレン−アクリル系樹脂(昭和高分子株式会社製ポリゾール(登録商標)AM−2200)70重量%、角閃石微粉末(株式会社古代石器製)10重量%、珪藻土微粉末(オプライト鉱業株式会社製オプライト(登録商標)W−3005S)20重量%の塗料を配合し、ダンボールの両面に固形分付着料15g/mで塗布乾燥し、そのダンボールにて野菜運搬用ダンボールケースおよび生花運搬用ダンボールケースを作成し、実施例5とした。
【0020】
比較例1
何の塗料も塗布していないダンボールにて野菜運搬用ダンボールケースおよび生花運搬用ダンボールケースを作成し、比較例1とした。
【0021】
比較例2
スチレン−アクリル系樹脂(日本ゼオン株式会社製ニポール(登録商標)LX1706)80重量%、セラミック微粉末(日本軽金属株式会社製アルミナA)20重量%の塗料を配合し、ダンボールの両面に固形分付着料15g/mで塗布乾燥し、そのダンボールにて野菜運搬用ダンボールケースおよび生花運搬用ダンボールケースを作成し、比較例2とした。
【0022】
以上の実施例5件と比較例2件につきガスバリアー性、破裂強度、引き裂き強度、平滑度、耐水性等の包装材料としての基本的特性について試験してみたところ、比較例1が耐水性等で問題があった以外は大きな違いはなかった。
【0023】
また、食品用包装材料として毒性等の問題はないか材質試験、溶出試験を行ったところ、どれも全く問題なく、食品用包装材料として使用できることがわかった。
【0024】
各試料の野菜および生花の鮮度保持機能(効果)について比較するために、各試料のダンボールケースに野菜としてはブロッコリーを、生花としてはリンドウ(切り花)を通常運搬する状態で詰め、室温20℃、湿度60%の室内に放置して、外観鮮度の経時変化を観察した。その観察結果を表1(ブロッコリー)、表2(リンドウ)に示す。尚、鮮度評価の◎はケースに詰めたときの状態とほとんど変わらないもの、○は花または葉に若干萎れ・変色した部分が見られるもの、△は花または葉の半分ぐらいが萎れ・変色しているもの、×は花または葉がほぼ完全に萎れ・変色しているもの、とした。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
表1、表2から明らかなように、実施例1から5は比較例1,2と比べて高い鮮度保持機能を有することがわかる。特に何の塗料も塗布していない通常のダンボールケース(比較例1)と比べた場合には非常に鮮度保持効果が大きい。尚、比較例1と比較例2を比べると、比較例2の方が若干高い鮮度保持機能を示しているが、これは比較例2のダンボールの両面が塗装されていることで防湿性が向上し、内容物の乾燥を防いでいることによるものであり、この効果は、実施例1から実施例5にも同様に付与されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離解性のあるスチレン−アクリル系樹脂または離解性のあるアクリル系樹脂または前記スチレン−アクリル系樹脂と前記アクリル系樹脂の混合樹脂70〜95重量%に天然石微粉末または天然土微粉末または前記微粉末2種類以上の混合微粉末30〜5重量%を混合してなる紙用塗料。
【請求項2】
前記紙用塗料に、更に、アルミペーストまたは/および顔料を添加混合してなる紙用塗料。
【請求項3】
前記微粉末が角閃石微粉末である請求項1または請求項2に記載の紙用塗料。
【請求項4】
前記微粉末がトルマリン微粉末である請求項1または請求項2に記載の紙用塗料。
【請求項5】
前記微粉末が珪藻土微粉末である請求項1または請求項2に記載の紙用塗料。
【請求項6】
前記微粉末が角閃石微粉末およびトルマリン微粉末の混合微粉末である請求項1または請求項2に記載の紙用塗料。
【請求項7】
前記微粉末が各閃石微粉末および珪藻土微粉末の混合微粉末である請求項1または請求項2に記載の紙用塗料。

【公開番号】特開2008−95262(P2008−95262A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305930(P2006−305930)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【出願人】(506377411)株式会社NCPコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】