説明

天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法

【課題】化石資源に代わるカーボンニュートラルを目指した天然樹脂の耐熱性、耐衝撃性、耐加水分解性、成形性などの機能的欠点を克服し、天然の自然物のみを原料としながら簡便な製造方法によって、250℃以上の高温に耐えられて熱膨張も少なく高温環境での反りも抑制し、軽量で強度もある天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法の提供を行う。
【解決手段】拘束高温加硫処理を施し、天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂と、ガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂で構成された積層体であり、天然繊維と弾性ゴムによる強度と衝撃性、天然繊維とガラス質微小中空球による軽量性と高温環境における反りの抑制、ガラス質微小中空球による耐熱性、エボナイトの特性である、熱膨張も少なく、絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性に優れ、機械的強度をも有する天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法の提供を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然繊維とガラス質微小中空球を含有した弾性ゴム及びガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法であり、天然繊維と弾性ゴムによる強度と衝撃性、天然繊維とガラス質微小中空球による軽量性と高温環境における反りの抑制、ガラス質微小中空球による耐熱性、そしてエボナイトの特性である、熱膨張が少なく、絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性に優れ、機械的強度をも有する樹脂積層体及び樹脂基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の持続と化石資源の枯渇から、化石資源に代わるカーボンニュートラルを目指した天然樹脂等の開発が盛んに行われているが、現存するバイオマスを原料とした天然樹脂の殆どは複雑な製造工程を必要とし、例えばバイオマスを原料とした天然樹脂に代表されるポリ乳酸樹脂は、糖化、発酵、精製、重合と多くの製造工程を要することで製造コストが高価になってしまうことと、ポリ乳酸樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、耐加水分解性、成形性などの機能に劣り、その機能欠点を補うために、成長が早く、二酸化炭素排出量削減及び二酸化炭素の固定化等に期待されているケナフ等の植物資源による天然繊維を含有したポリ乳酸樹脂であっても、その耐熱温度はせいぜい170℃程度である。(例えば、特許文献1)そのため耐熱性を要求する製品もしくは生産加工上で高温加工に耐えられる天然樹脂は存在しておらず、ガラス基板、ポリイミド基板、ポリエステル基板、セラミック、金属箔等に代わるカーボンニュートラルの天然樹脂を用いた製品が現れてこなかった。
【0003】
上記のガラス基板、ポリイミド基板、ポリエステル基板、セラミック、金属箔等を用いた製品として太陽電池がある。(例えば、特許文献2)太陽電池は、地球環境の持続と化石資源の枯渇から、化石資源に代わる次世代のエネルギーとして期待されているが、現在の太陽電池は、製造コストが高く、重量もかさばる上に導入コストも高いという欠点もあり、まだまだ容易に扱える製品とまではなっていない。したがって太陽電池の低コスト化と軽量化を図るために、安価な樹脂や金属箔による基板材の研究開発が盛んに行われてはいるが、太陽電池を製造するときの製膜温度はかなり高温になるために、高温の製膜温度に耐えられる樹脂は限られている。また高耐熱の樹脂のほとんどは高価であることと、高耐熱の樹脂もしくは金属箔による基板材と半導体との異なる熱膨張によって生じる半導体層へのクラックや、高温の製膜温度による基板材の反り問題が残っており、(例えば、特許文献3)高耐熱だけではなく、熱膨張も少なく、高温環境での反りも発生しない安価な樹脂基板の実用化が望まれている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−185789号公報
【特許文献2】特公昭59−53178号公報
【特許文献3】特開2000−140143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、化石資源に代わるカーボンニュートラルを目指した天然樹脂もしくは天然繊維樹脂の欠点を克服し、天然の自然物のみを原料とし、なおかつ簡便な製造方法によって250℃以上の高温に耐えられて、強度、軽量共に、ポリイミド(PI)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)等のスーパエンジニアリングプラスチック同等か、それ以上でありながら、安価で、熱膨張も少なく、そして高温環境における反りの発生も無いうえに、絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性に優れ、機械的強度も強い天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法の提供を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体は、化石資源に代わるカーボンニュートラルを目指した素材であり、その素材の芯材及び補強材は、天然繊維とガラス質微小中空球を含有した弾性ゴムからなる天然繊維樹脂であり、希薄した天然ゴムラテックスを粘材に、適度の長さに解繊した天然繊維とを留め漉き加工を行った天然繊維からなる不織布と、硫黄とガラス質微小中空球を天然ゴムラテックスに混合したバインダーを塗布し積み重ねた後に臭気ガス低減処置と圧縮圧着加工を行った積層体である。この天然繊維を含有したエボナイトからなる天然繊維樹脂からなる芯材及び補強材の表面に、ガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂であり、多めの硫黄を混合した天然ゴムラテックスに耐熱性の改善を目的としたガラス質微小中空球を含有した混合物を塗布もしくは型内含浸を行い、臭気ガス低減処置、圧縮圧着加工と拘束高温加硫処理を行い、天然繊維とガラス質微小中空球を含有したエボナイト積層体と成すことで、250℃以上の高温に耐えられて、高温環境における反りもなく、また軽量で強度が有りながら、エボナイトの特性である、熱膨張も少なく、絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性に優れ、機械的強度も強い天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体を作ることが出来る。
本発明は、天然の自然物のみを原料とし、なおかつ簡便な製造方法による天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体は、天然の自然物のみを原料とし、なおかつ簡便な製造方法でありながら、熱膨張も少なく、絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性に優れ、機械的強度も強いエボナイトの特性を持ち、天然繊維と弾性ゴムによる強度と衝撃性、天然繊維とガラス質微小中空球による比重1以下の軽量性と高温環境における反りの抑制をも施した天然繊維樹脂と、ガラス質微小中空球による250℃以上の高温に耐えられる耐熱改善を施した耐熱改善天然樹脂とで構成された天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体である。したがって耐熱性を要求する製品もしくは生産工程上での高温加工に耐えられる製品及び、ガラス基板、ポリイミド基板、ポリエステル基板、セラミック、金属箔などを用いる製品等の代替品としての活用に期待ができる。

【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態においての天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の断面図。
【図2】本発明の実施の形態においての天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法のフローチャート。
【図3】本発明の実施の形態においての天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体における芯材及び、補強材となる不織布作成工程のフローチャート。
【図4】本発明の実施の形態においての天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体における芯材及び、補強材となる不織布の断面図、分解図、圧縮状態の図。
【図5】本発明の実施の形態においての天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体における表層部の作成工程のフローチャート。
【図6】本発明の実施の形態においての天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体における芯材及び、補強材の外観写真図。
【図7】本発明の実施の形態においての完成した天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の外観写真図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実態の形態について説明する。
原料及び配合割合
(1)芯材及び補強材となる天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂に用いる天然ゴムは、ゴム樹液、それを濃縮したもの、さらには保存剤等を配合したもの及び固形ゴムを液状化したものである。
(2)芯材及び補強材となる不織布の作製工程である留め漉き加工に用いる粘材は、液状ゴム、ゴム樹液、それを濃縮したもの、さらには保存剤等を配合したもの及び、固形ゴムを液状化したものを、天然ゴムラテックス 100重量部に対し、水 3、000重量部位上で希薄したものである。
(3)天然繊維の形状は特に限定しないが、留め漉き加工を容易に行うための繊維長は5〜10mm程度が好ましく、完成体となる天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の形状によっては10〜150mmの繊維長も好ましい。また繊維径は1mm以下であれば繊維径は特に限定しない。
(4)上記の天然繊維は、植物及び動物に由来する天然繊維であり、このうち植物に由来する植物性天然繊維としては、ヘンプ、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、シュロ、芭蕉、綿花、麦、稲、竹、各種針葉樹、各種広葉樹などから得られた天然繊維であり、これらの1種もしくは2種以上を併用してもよい。また、稲藁、麦藁、バカス等の農業残渣や、おがくず、間伐材、廃材等から得られる木材チップとの併用も可能である。
(5)穀物資源から発酵により得られる乳酸を原料とするポリ乳酸を繊維化した生分解性繊維との併用及び単独使用も可能である。
(6)高等植物の木化に関与する高分子のフェノール性化合物であるリグニンの含有も可能である。
(7)動物に由来する動物性天然繊維としては、各種動物の獣毛の併用も可能である。
(8)天然繊維を原料にして製造される植物系の再生繊維や、ペットボトル等を再生して製造される化学系の再生繊維との併用及び、単独使用も可能である。また化学繊維であるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表されるポリアミド系合成繊維、アセテートに代表されるセルロース系半合成繊維、プロミックスに代表されるタンパク質系半合成繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジックに代表されるセルロース系再生繊維、無機繊維であるガラス繊維や炭素繊維との併用及び単独使用も可能である。
(9)紡績・織布工場から排出される糸屑や布屑及び、縫製工場から排出される裁ち落としや端切れなどによる屑繊維との併用及び単独使用も可能である。
(10)上記の植物性天然繊維、生分解性繊維、動物性天然繊維、化学繊維及び屑繊維のうちで、地球環境の持続を考慮した結果、植物性天然繊維が好ましく、そのなかでもヘンプから得られた植物性天然繊維の靭皮部から得られるヘンプ繊維が好ましい。
(11)芯材及び補強材となる不織布で用いられる天然繊維の量は特に限定しないが、不織布1枚の天然繊維の量は完成体となる天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の質量の8%以上になることが好ましい。
(12)芯材及び補強材となる不織布で用いられる天然繊維の全体量は、完成体となる天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の質量の30%以上になることが好ましく、(11)の不織布4枚以上を用いると良い。
(13)芯材及び補強材となる不織布とのバインダーに用いられる天然ゴムは、ゴム樹液、それを濃縮したもの、さらには保存剤等を配合したもの及び固形ゴムを液状化したものである。この天然ゴムラテックス 100重量部に対し、硫黄の配合割合は5〜30重量部であることが好ましい。
(14)芯材及び補強材となる不織布のバインダーに用いられるガラス質微小中空球の配合割合は、天然ゴムラテックス 100重量部に対し、ガラス質微小中空球 30〜70重量部であることが好ましい。
(15)上記のガラス質微小中空球と天然ゴムラテックスを混練しやすくすることと、塗布及び含浸工程での加工性を高めるために、天然ゴムラテックス 100重量部に対し、水 100〜200重量部を配合することが好ましい。
(16)流動性と拘束高温加硫処理時の臭気発生抑制剤として、ヒバオイルを0〜10重量部配合することが好ましい。
(17)拘束加熱硬化処理時に発生する臭気ガス発生の低減を図るために、0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなる水溶液に1時間以上浸透させることが好ましい。
【0010】
(18)表層部のガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂に用いる天然ゴムは、ゴム樹液、それを濃縮したもの、さらには保存剤等を配合したもの及び固形ゴムを液状化したものである。この天然ゴムラテックス 100重量部に対し、加硫材として用いる硫黄の配合割合は30〜50重量部であることが好ましい。
(19)上記の耐熱天然樹脂に用いるガラス質微小中空球として、アルミナバブル、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、パーライトなどが挙げられるが、地球環境の持続を考慮した結果、自然物を原料としたシラスバルーンとパーライトが好ましく、その中でも中心粒径が小さくて、耐熱性、軽量性、強度等を考慮すると、微粉のシラスバルーンが最も好ましい。
(20)上記のガラス質微小中空球の形状は真球状が最も好ましい形状だが、中空体であれば特に形状にはこだわらない。またガラス質微小中空球の中心粒径としては10〜20μmが好ましく、その中でも最も好ましい中心粒径は14μm前後である。
(21)上記のガラス質微小中空球の配合割合は、天然ゴムラテックス 100重量部に対し、ガラス質微小中空球 50〜70重量部であることが好ましい。
(22)上記のガラス質微小中空球と天然ゴムラテックスを混練しやすくすることと、塗布及び含浸工程での加工性を高めるために、天然ゴムラテックス 100重量部に対し、水 100〜200重量部を配合することが好ましい。
(23)流動性と拘束高温加硫処理時の臭気発生抑制剤として、ヒバオイルを0〜10重量部配合することが好ましい。
(24)拘束高温加硫処理時に発生する臭気ガスの発生低減を図るために、0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなる水溶液に1時間以上浸透させることが好ましい。
【0011】
圧着圧縮処理
(25)天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体に均一な板厚を提供し、なおかつ高温環境での反りの発生を抑制するために、天然繊維からなる不織布に、硫黄とガラス質微小中空球を混合した天然ゴムからなるバインダーを塗布し交互に積み重ねた積層体に第1浸透処理を行い、50kgf/cm2以上の加圧力で圧着圧縮加工を行うことで、均一な板厚の天然繊維樹脂による芯材及び補強材とする。この均一な板厚の天然繊維樹脂による芯材及び補強材の積層体が高温環境における反りの発生を抑制することとなる。なお圧着圧縮加工時の加圧時間は特に限定しない。
(26)拘束加熱硬化処理を施した芯材及び補強材の表面に、ガラス質微小中空球と多めの硫黄を混合した天然ゴムからなる混合物を塗布及び型内含浸を行った積層体に第2浸透処理を行い、50kgf/cm2以上の加圧力で圧着圧縮加工を行うことで、表層部となる耐熱天然樹脂の表面を滑らかな状態とする。また第2浸透処理後の表層部は、強い転写能力を持つため、剥離剤等の塗跡が拘束高温加硫処理後の完成体に反映されてしまう。したがって平滑性が高く耐熱性も高い剥離材を用いることで天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の平滑性を向上することが出来る。なお加圧時間は特に限定せず、表層部が均一に滑らかな状態になった時点を加圧時間の目安とすれば良い。
【0012】
加熱、加硫処理
(27)芯材及び補強材となる天然繊維樹脂からなる積層体の表面に、ガラス質微小中空球と多めの硫黄を混合した天然ゴムからなる混合物を塗布及び型内含浸加工と第2浸透処理、そして圧着圧縮加工を行い、拘束状態を維持したままで加熱温度250℃以上、加熱時間30分程度の拘束高温加硫処理を行うことで、天然繊維とガラス質微小中空球を含有したエボナイト積層体である天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体とする。
【0013】
浸透処理
(28)芯材及び補強材となる天然繊維からなる不織布と、硫黄とガラス質微小中空球を混合した天然ゴムラテックスからなるバインダーとを交互に積み重ねた積層体を、第1浸透処理である0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液に浸透させることで、拘束高温加硫処理で発生する臭気ガスの低減を行う。
(29)芯材及び補強材となる天然繊維樹脂からなる積層体の表面に、ガラス質微小中空球と多めの硫黄を混合した天然ゴムからなる混合物を、塗布及び型内含浸加工を行った後、第2浸透処理である0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液に浸透させることで、拘束高温加硫処理に発生する臭気ガスの低減を行う。
(30)(28)の第1浸透処理、(29)の第2浸透処理と2回の浸透処理を行うことで、酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液の接触面が、積層体の表面だけではなく芯材内部にも持つことで、拘束高温加硫処理で発生する臭気ガスを効率的に抑えることが出来る。

【0014】
次に、図1〜図7に基づいて本発明の実態の形態に係る天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法の実施例の説明を行う。
本発明の実態の形態に係る天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体は、天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂、及びガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂で構成された積層体であり、図1に天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の断面図を示している。また図2は天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法のフローチャートであり、図3は天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体における芯材及び補強材となる不織布作成工程のフローチャートであり、図4は天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体における芯材及び補強材となる不織布の断面図、分解図、圧縮状態の図であり、図5は天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体における表層部の作成工程のフローチャートである。また図6は天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体における芯材及び補強材の外観写真図であり、図7は完成した天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の外観写真図である。
【0015】
(31)天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1は、図1に示すように、芯材及び補強材となる天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂積層体2と、表層部のガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂11とから構成された天然繊維とガラス質微小中空球を含有したエボナイト積層体化した天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体である。
(32)芯材及び補強材となる天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂積層体2は、図1、図4に示すように、天然繊維からなる不織布21とガラス質微小中空球を含有した耐熱天然樹脂22とを交互に積み重ねて積層体にしたもので、積層の数は特に限定せず、完成体となる天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1の板厚に合わせて、天然繊維樹脂積層体2の積層の数を調整する。
(33)図1に示す天然繊維樹脂積層体2は、図2、図3に示す第1混合行程S01で、天然ゴムラテックス 100重量部に対し、水 3、000重量部以上で希薄した粘剤M02と、天然繊維M01を 6重量部解繊加工S10で解繊し、留め漉き加工S20、乾燥S30、ローラ成形加工S40、成形加工S150を行い、不織布完成S160と成す。この不織布完成S160は、図1、図3、図4で示す天然繊維からなる不織布21であり、天然繊維からなる不織布21の1枚の厚みは、図4で示すように天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1の板厚H1に対し3分の1程度の板厚H2である。また不織布21の天然繊維の質量は、天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1の全体量の8%以上であり、天然繊維樹脂積層体2における天然繊維の質量は、天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1の全体量の30%以上となるようにする。
(34)図2、図3に示す原料M03である天然ゴムラテックス 100重量部、硫黄 5〜30重量部、ガラス質微小中空球 30〜70重量部、水 100〜200重量部、ヒバオイル 0〜10重量部を第2混合行程S02で混合し、上記(31)で作成した天然繊維からなる不織布21に、図2で示すバインダー塗布加工S50を、図3に示す不織布21とバインダー塗布加工S501を行い、さらに不織布21とバインダー塗布加工S502・・・・・と数回バインダー塗布加工S50を繰り返し、数層の積層体である天然繊維樹脂2とする。
(35)(34)で作成した芯材及び補強材となる天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂2を、拘束高温加硫処理時に発生する臭気ガス低減を図るために、図2、図3に示す0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液に1時間以上、第1浸透処理S60を行う。
(36)(35)で酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液に浸透した天然繊維樹脂2を、図4に示す所定の板厚H3になるように50kgf/cm2以上の加圧力で、図2、図3に示す圧着圧縮加工S70を行う。なお圧着圧縮加工S70を行った後の板厚H3は、完成体の天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1の板厚H1に対し3分の2程度に圧縮するのが望ましい。
(37)(36)で積層体とした芯材及び補強材となる天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂2の周囲を所定の大きさに合わせて、図2、図3で示す成形加工S80を行う。なお図6は成形加工S80を行った後の天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体における芯材及び、補強材となる天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂2の外観写真図である。
(38)次からの工程は、表層部のガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂11の作成工程である。
(39)表層部のガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂11は、図2、図5に示す塗布加工S901、型内含浸加工S902の2つの加工法があり、完成体となる天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1が板状の場合では塗布加工S901が適しており、完成体となる天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1がブロック体の場合では型内含浸加工S902が適している。したがって求める完成体の天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1の形状に合わせて塗布加工S901、型内含浸加工S902のどちらかの加工法を選択すれば良い。
(40)図2、図5に示す表層部のガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂11は、原料M3の天然ゴムラテックス 100重量部、硫黄 30〜50重量部、ガラス質微小中空球 30〜70重量部、水 100〜200重量部、ヒバオイル 0〜10重量部を第3混合行程S03で混合し、(39)で作成した弾性ゴム状態化した芯材及び補強材となる天然繊維とエボナイトからなる天然繊維樹脂2の表面に塗布加工S901、もしくは型内に混合物を注入し、(39)で作成した混合物の上に芯材及び補強材となる天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂2を挿着し包み込む様に型内含浸加工S902を行う。
(41)(40)で塗布加工S901の加工法を選択した場合では、そのまま第2浸透処理S100に進むが、型内含浸加工S902の加工法を選択した場合、乾燥工程S1003、縁取り加工である成形加工S904を行った後に、第2浸透処理S100に進む。なお乾燥工程S903における乾燥方法は特に限定せず、自然乾燥もしくは、乾燥機等による機械乾燥のどちらかを選択しても良い。また乾燥時間も特に限定せず、型内含浸加工S902に注入した混合物の表面が白く変色し固化した時点を乾燥時間の目安とすれば良い。
(42)塗布加工S901、もしくは型内含浸加工S902、乾燥工程S903、成形加工S904を行った積層体を、加硫処理事に発生する臭気ガス低減を図るために、図2、図3に示す0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液に1時間以上、第2浸透処理S100を行う。
(43)(42)で第2浸透処理S100を行った芯材及び、補強材となる天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂2を、図2、図5に示す圧着圧縮加工S120を50kgf/cm2以上の加圧力で圧着圧縮する。なお加圧時間は特に限定せず、表層部のガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱天然樹脂11の表面が滑らかになった時点を加圧時間の目安とすれば良い。
(44)圧着圧縮加工S110を行った後、塗布加工S901で作成した積層体の場合では、(43)で作成した積層体を金属板で挟んだ後に金属板ごとクランプ等で固定し、さらに50kgf/cm2以上の加圧力で拘束した状態を維持したままで、また型内含浸加工S902の場合では、金型で50kgf/cm2以上の圧縮力を維持したままで、図2、図5で示す拘束高温加硫加工S120を加硫温度250℃以上、加硫時間45分程度行い、天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1をエボナイト積層体とする。
(45)拘束高温加硫加工S120で天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1を、天然繊維とガラス質微小中空球を含有したエボナイト積層体した後に天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1に反りが発生しないように自然冷却を行い、金属板及び金型から天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1を取り出し、図2、図5で示すバリ取りバフ仕上げS130と洗浄S140を行い天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体作製の作業終了とする。なお拘束高温加硫処理を行った直後の天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1は、2〜3分後には手で持てるほどの放熱効果を発揮するため、自然冷却時間は数分程度でも良いが、高熱を保った金属板及び金型と接しているため、エボナイト積層体の表面部と内部との温度差が発生し、そのことで完成体の天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体1が反ってしまう要因ともなる。したがって金属板及び、金型が十分に冷めるまで自然冷却を行った後に完成体を取り出すと良い。
(48)図7は本発明の実施の形態においての完成した天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の外観写真図である。

【符号の説明】
【0016】
1 天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体
11 表層部のガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱天然樹脂
2 芯材及び補強材となる天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂積層体
21 天然繊維からなる不織布
22 不織布のバインダーとなるガラス質微小中空球を含有した耐熱天然樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂と、ガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂で構成された天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法。
【請求項2】
上記の請求項1に記載した天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂は、天然繊維からなる不織布と硫黄とガラス質微小中空球を混合した天然ゴムからなるバインダーを交互に積み重ねた積層体による芯材及び補強材とすることで、天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体に比重1以下の軽量性と強度をもたらせ、なおかつ熱膨張も少ない上に、高温時の反りの発生を抑制することを特徴とする天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法。
【請求項3】
上記の請求項1に記載した天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂に用いる天然繊維による不織布の厚みと積層数を調整することで、板状からブロック状までの多様な形状の天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の作成が可能であることを特徴とする天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法。
【請求項4】
上記の請求項1に記載した天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂に用いる硫黄の配合割合を変えることで弾性力を調整し、天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体に様々な強度、耐衝撃性の機能を付加することを特徴とする天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法。
【請求項5】
上記の請求項1に記載したガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂は、軽量性と耐熱性の向上に寄与するガラス質微小中空球をエボナイトに含有することで、エボナイトの耐熱性の改善が図られることを特徴とする天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法。
【請求項6】
上記の請求項1に記載した天然繊維と弾性ゴムからなる天然繊維樹脂と、ガラス質微小中空球を含有したエボナイトからなる耐熱改善天然樹脂とで構成された積層体を拘束高温加硫処理を施し、天然繊維とガラス質微小中空球を含有したエボナイト積層体とすることで、天然繊維と弾性ゴムによる強度と衝撃性、天然繊維とガラス質微小中空球による軽量性と高温環境における反りの抑制、ガラス質微小中空球による耐熱性、エボナイトの特性である、熱膨張も少なく、絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性に優れ、機械的強度をも有することを特徴とする天然繊維含有高耐熱天然樹脂積層体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218660(P2011−218660A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89976(P2010−89976)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(709006666)
【Fターム(参考)】