説明

太陽光励起多重波長高効率レーザー装置

【課題】従来の太陽光励起レーザー装置の効率を上げる。
【解決手段】太陽光1により励起されるレーザー媒質を多層化しそれぞれの層に波長に最適化したCr、Nd、Erの複合材料をレーザー体層4、6に添加する事により、太陽が持つ広領域の波長ごとに別個にドーピング材で吸収され、それぞれレーザ励起を行い、複数の波長で発信することにより、太陽光1エネルギーを高効率でコヒーレントレーザー光エネルギーに変換するエネルギー変換装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光エネルギー集中による励起を用いたレーザー装置による太陽エネルギー変換集約装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで太陽集光熱利用や太陽電池エネルギー利用技術開発が行なわれてきた.これらはクリーンエネルギーであるが他の方式によるエネルギーコストを上回る。このためより効率の高い太陽エネルギー利用の可能性が追求されてきた。
【特許文献1】特開2006−319291号公報
【非特許文献1】レーザー学会Vol.32pp.48−53模擬太陽光励起のD型断面大口径マルチモードNdファイバーレーザー
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
太陽エネルギーをレーザー光に高効率変換し、レーザーのコヒーレント性によりエネルギーの集中集約性を上げ、高エネルギー密度を達成し水素やエネルギー性化学合成物質に変換する方法が考案されてきた。このとき太陽光エネルギーのレーザーへの変換効率が課題となる。
【0004】
太陽光は紫外域、可視域、近赤外域にエネルギーを有する。この広い波長域を有効に利用するにはレーザー母材に多数の吸収―発振材をドープしそれぞれのドープ材で発振すると太陽光の利用率が上がる。
【0005】
しかし可視域や近赤外線域全域を吸収する複数の材料を同一物質にドーピングするとそれぞれの材料のエネルギー準位間で量子遷移や供ドープ他物質における発振波長での吸収が起こり、太陽エネルギーのレーザーエネルギーへの変換効率が上がらない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、この発明は、複数の波長領域にわけた各々の材料を各単位領域のセラミックドメインごとに作成し、そのドメインを複合し一体化整形したレーザー材料を太陽エネルギー変換レーザーに用いる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、収束太陽光は集約され空胴内に入射されレーザー体を照射し励起する。この時太陽光は広領域の波長ごとに別個にドーピング材に吸収され、それぞれの波長に対応するドープレーザー物質を励起する。これによりそれぞれ独立の波長域においてレーザー光が発振し複数の波長のレーザー光となる。この結果太陽光からレーザー光への変換効率が高く取れる。また銅添加ガラスにより紫外光を吸収しレーザー体を紫外光より保護しかつ紫外光を可視光に変換しレーザー体の吸収を高める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
太陽光はミラーやレンズの光学系で集光されレーザー体にはいる。この発明の一実施形態を、図1図2、図3及び図4に示す。この発明は図1に示されるように紫外光を含む太陽光を集中し紫外光を可視域に変換し、その下部の複数の材料層に対し可視部および赤外線部を吸収させ、それぞれレーザー励起を用い、複数の波長で発振することにより太陽光エネルギーを高効率でコヒーレントレーザー光エネルギーに変換するエネルギー変換装置である。
【0009】
図2a,b,c、においてNdとCrをドープしたサブμm級YAG結晶粉末により制作された数十μm〜mmサイズのセラミック区画の形状に整形されたセラミックドメイン体と、赤外域の励起光吸収にErをドープしたサブμm級YAG結晶粉末により制作された数十μm〜mmレベルサイズのセラミック区画の形状に整形されたドメイン体とを混合し、これを一体化した。このそれぞれのセラミックドメイン体を規則的に交互に組み合わせ一体化したものa、ランダムに組み合わせ一体化したものb、やそれぞれを別個に一体化しmmの厚さを有した層状にこれを組み合わせたものc、を材料にしたレーザー体を図1に示す。
【0010】
図1に示すレーザー体内部を層状に分割し、冷却のための厚さ数mmの空胴層を設けた場合を図2に示す。また層状に形成したセラミック体を重ねあわせた場合その間を密着せず空胴にしてもよい。このとき液体または気体の冷媒がこの空胴層内を流れ、熱を運ぶ場合もある。
【0011】
図4にエネルギー変換装置を示す。集約された収束太陽光は入射角度を拡大させてこの空胴内においてレーザーを照射するが、吸収されない太陽光は図4に示されるエネルギー変換装置の空胴内を拡散する。空胴内部は反射率の高い物質で出来ており、太陽光は一部は直接またそれ以外は反射され最終的に図2または図3におけるレーザー体に太陽光はすべて当たり吸収される。
【0012】
複数個の配置により逆行して空胴内よりテーパー部入り口から戻る光成分がごく微量発生する。この成分は空胴内断面積と入り口断面積の比率で決まる。この入り口面積は図4に示されるように構造的に小さく取ることにより大幅に抑制される。
【0013】
入射集約太陽光のレーザー体での吸収性を上げるため反射防止のための屈折率整合物をテーパ部に付加する。またレーザー本体での照射太陽光や透過レーザーの表面反射を防ぐためレーザー体に反射防止膜を設ける。
【0014】
図4は図1で示されるエネルギー変換装置を直列的に複数個光軸を合わせこれを配置し、並列に複数個配置した装置を示す。このためレーザー出力は増幅され重ねあわされる。この出力を集めこの最終端末にエンルギー性物質生成装置を置く。レーザーの伝播性の向上や変換率の最適化のため光軸上にレーザーの上下方向に角度回転を加える。
【0015】
太陽励起レーザー光は発振され増幅される。その長さは数百m〜数kmになるがこの長距離伝播中に伝播媒質の揺動、レーザー媒質の不均質性、レーザーの空間非一様性、非線形散乱効果の影響を受ける。これを防止するために図4に示されるように光軸に対応した光学系を挿入する。
【0016】
太陽光のレーザー光への変換効率を上げるために発振部ではミラーの反射率の最適化や増幅部でのレーザーの形状の最適化、全体統合設計を行なうことは当然行なわれる。
【実施例】
【0017】
この実施例によれば、直達太陽光と大気で散乱した周辺光を含めて高反射率テーパー部で伝送され効率よく太陽光を空胴内に導いた。空胴表面は高反射率面で構成されるためこの空胴内において太陽光は高効率で直接または間接にレーザー体を照射しレーザー励起した。太陽光はドープ物質を励起しそれぞれに対応した波長で発振した。銅添加保護ガラスで紫外線域は吸収され可視域の光を放出した。この放出可視域光は、太陽の透過光と合同で、Nd及びCrにより吸収されNdの1.06μmの波長で発振した。透過近赤外線域ではErにより吸収されErの2.4μmで発振した。この2波長レーザーは光軸に沿って伝搬し複数の直列太陽励起レーザーを通過することにより各レーザーで増幅されエネルギーを集積し伝播した。この最終端に設置された炉においてエネルギー利用された。また集積されるレーザーは一列だけでなくこの列が並列に多数列並んだ場合もあった。これにより大面積の太陽エネルギーが空間的に集積され最終端に集まりこれを制御することにより高効率で極めて高いエネルギー密度が達成できた。
【0018】
図4の実施形態では、ディスク型太陽励起レーザーであったがアクティブミラー型やジグザグスラブ型の集合体や複合体でも同様で、このとき太陽光はこの形状に合わせて収束照射されテーパー太陽光集約装置により太陽光を収束入射し、レーザー体を照射励起した。
【0019】
セラミック一体型だけでなく同様の物質をドープした透明度の高い誘電率の整合したプラスティックやガラスでレーザー体を整形することが出来た。またセラミック区画を透明度の高い誘電率の整合したプラスティックやガラスでレーザー体を整形することが出来た。またセラミック、プラスティックやガラスをそれぞれに合わせてレーザー体を整形することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0020】
太陽光励起により発振したレーザーは増幅し大出力が可能である。これらは水素の直接水分解や熱化学反応によるエネルギー性化合物生成に用いられる。このように生成された水素やエネルギー性化合物は燃料電池やガスタービン燃料に用いられる。
【0021】
太陽光レーザー光は狭いスペクトルを有しているためこのスペクトルに整合した太陽電池により高効率エネルギー変換ができる。この電気を直接利用したり水の電気分解による水素生成が可能である。また同様に熱電素子の利用もある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の太陽光レーザー体を示す。
【図2】この発明の冷却部付設レーザー体を示す。
【図3】冷却層付きレーザー体を示す。
【図4】直列に並べられたエネルギー変換装置の複数列からのレーザー光軸
【符号の説明】
【0023】
1 収束太陽光
2 冷却板
3 外部銅添加紫外線変換−保護兼用光学ガラス
4 Cr、Nd添加セラミックレーザー
5 冷却層
6 Er、Nd添加セラミックレーザー
7 レーザー体1 交互ドメイン配置型
8 レーザー体2 ランダムドメイン配置型
9 レーザー体3 多層膜ドメイン配置型 可視域レーザー材層
10 レーザー体4 多層膜ドメイン配置型 赤外域レーザー材層
11 テーパー型集光集約補助体(内側高反射体)
12 陽光入射孔
13 円筒形中空空胴
14 空胴内側高反射体
15 レーザー体本体
16 レーザー光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光励起型レーザーにおいて太陽光の紫外線部分を吸収し可視光に変換する銅添加保護ガラスを有した、可視域部分における励起光吸収にNdとCrをドープしたYAG結晶粉末と、赤外域の励起光吸収にNdとErをドープしたYAG結晶粉末とを別個にセラミック化しこれを複合的に合わせレーザー体として一体化したレーザー材料による太陽光励起多重波長レーザー発振増幅を用いた太陽光エネルギー変換装置。
【請求項2】
前記装置を特徴とするそれぞれ異なるドープ物質からなるレーザー結晶材セラミックを誘電率の整合する結合体を用いて接合し、空胴内において配置した太陽光波長の広領域を吸収し多重波長で発振する太陽光励起レーザー装置を用いた太陽光エネルギー変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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