太陽光発電エリア出力推定装置、太陽光発電エリア出力推定システム及び太陽光発電エリア出力推定方法
【課題】大規模の太陽光発電設備に対してでも発電出力を正確に推定することができる太陽光発電エリア出力推定装置を提供する。
【解決手段】太陽光発電設備が設置された発電エリアQの発電出力を推定する太陽光発電エリア出力推定装置100であって、発電エリアQ内の観測地点Pから天空を撮像することで得られる天空画像上における、発電エリアQに太陽光を照射する領域である照射領域を取得する照射領域取得部110と、取得された照射領域内に含まれる雲面積を取得する雲面積取得部120と、取得された雲面積を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する発電出力算出部130とを備える。
【解決手段】太陽光発電設備が設置された発電エリアQの発電出力を推定する太陽光発電エリア出力推定装置100であって、発電エリアQ内の観測地点Pから天空を撮像することで得られる天空画像上における、発電エリアQに太陽光を照射する領域である照射領域を取得する照射領域取得部110と、取得された照射領域内に含まれる雲面積を取得する雲面積取得部120と、取得された雲面積を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する発電出力算出部130とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電設備が設置されたエリアの発電出力を推定する太陽光発電エリア出力推定装置、太陽光発電エリア出力推定システム及び太陽光発電エリア出力推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電などの分散型電源を設置し、当該太陽光発電と商用電力系統からの電力により、消費する電力負荷に電力を供給する需要家が増えてきている。ここで、太陽光発電を有効に活用するためには、太陽光発電の発電出力を推定することが重要であるが、太陽光発電の発電出力を推定するには、太陽の光を遮る雲の位置を観測する必要がある。
【0003】
このため、従来、任意の地点から雲底の温度情報を取得し、当該温度情報に基づいて雲底の高度を測定することで、雲の位置を観測する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この手法によって、所定の観測地点での日射量を予測することができ、当該観測地点に設置された太陽光発電の発電出力を推定することができる。
【0004】
また、所定の観測地点から雲画像を撮像し、当該雲画像を用いて当該観測地点での日射量を予測する手法によっても、当該観測地点に設置された太陽光発電の発電出力を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−170350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の手法では、大規模の太陽光発電設備に対しては、発電出力を正確に推定することができないという問題がある。
【0007】
ここで、大規模の太陽光発電設備とは、例えば、広大なエリアに太陽光発電を設置した太陽光発電所や、太陽光発電を全面導入した大規模団地などである。つまり、当該大規模の太陽光発電設備においては、広大な発電エリアを有するため、当該発電エリア全体の発電出力の変動は、所定の観測地点における発電出力の変動とは異なる。
【0008】
このため、上記従来の手法では、当該大規模の太陽光発電設備が有する発電エリアのうちの所定の観測地点における発電出力を推定することはできるが、当該発電エリア全体での発電出力を推定することはできない。
【0009】
このように、従来の手法では、大規模の太陽光発電設備に対しては、発電出力を正確に推定することができないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、大規模の太陽光発電設備に対してでも発電出力を正確に推定することができる太陽光発電エリア出力推定装置、太陽光発電エリア出力推定システム及び太陽光発電エリア出力推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る太陽光発電エリア出力推定装置は、太陽光発電設備が設置されたエリアである発電エリアの発電出力を推定する太陽光発電エリア出力推定装置であって、前記発電エリア内の観測地点から天空を撮像することで得られる画像である天空画像上における、前記発電エリアに太陽光を照射する領域である照射領域を取得する照射領域取得部と、取得された前記照射領域内に含まれる雲の面積である雲面積を取得する雲面積取得部と、取得された前記雲面積を用いて、前記発電エリアの発電出力を算出する発電出力算出部とを備える。
【0012】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、天空画像上の照射領域を取得して、取得した照射領域内に含まれる雲面積を取得し、当該雲面積を用いて、太陽光発電設備が設置された発電エリアの発電出力を算出する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置は、発電エリアが広大であっても、照射領域内の雲面積から、当該発電エリア内に照射する太陽光の割合を把握することで、当該発電エリアの発電出力を正確に算出することができる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0013】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、前記照射領域内に含まれると想定される雲の高度ごとに前記照射領域を取得し、前記雲面積取得部は、取得された前記照射領域ごとに前記雲面積を取得し、前記発電出力算出部は、取得された前記照射領域ごとの前記雲面積を用いて、前記発電エリアの発電出力を算出する。
【0014】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度ごとに照射領域を取得し、取得した照射領域ごとに雲面積を取得して、当該照射領域ごとの雲面積を用いて、発電エリアの発電出力を算出する。ここで、様々な高度の雲が太陽光を遮ることとなるが、天空画像内の雲画像に対応した照射領域は、雲の高度によって異なった大きさの領域になる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度ごとに照射領域を取得して、取得した照射領域ごとに、照射領域内の雲面積から、発電エリア内に照射する太陽光の割合を把握することで、当該発電エリアの発電出力を正確に算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、前記照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、外形が小さい前記照射領域を取得する。
【0016】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度が高いほど、外形が小さい照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度が高い照射領域ほど小さい領域になるため、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度が高いほど、外形が小さい照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0017】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、前記雲の高度に反比例した大きさの前記照射領域を取得する。
【0018】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度に反比例した大きさの照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度と照射領域の大きさとは反比例するため、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度に反比例した大きさの照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0019】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、前記観測地点から撮像された赤外線画像から得られる雲底の温度を用いて、前記雲の高度を算出することで、前記照射領域を取得する。
【0020】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、赤外線画像から得られる雲底の温度を用いて、雲の高度を算出することで、照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、照射領域は高度によって異なった大きさの領域になるため、太陽光発電エリア出力推定装置は、赤外線画像から得られる雲底の温度から雲の高度を算出し、照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0021】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、太陽の高度角が小さいほど、大きい圧縮率で縦方向に圧縮された前記照射領域を取得する。
【0022】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、太陽の高度角が小さいほど、大きい圧縮率で縦方向に圧縮された照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度角が小さいほど、照射領域は縦方向に大きく圧縮される。このため、太陽光発電エリア出力推定装置は、太陽の高度角が小さいほど大きく縦方向に圧縮された照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0023】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された前記照射領域を取得する。
【0024】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度角をθとすれば、照射領域は縦方向にsinθ倍に圧縮される。このため、太陽光発電エリア出力推定装置は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0025】
また、好ましくは、前記雲面積取得部は、現在の雲の位置と、雲の移動方向及び速さとから、所定時刻での前記雲面積を算出することで、前記所定時刻での前記雲面積を取得する。
【0026】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、現在の雲の位置と、雲の移動方向及び速さとから、所定時刻での雲面積を算出し、取得する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置は、現在の雲の位置と雲の移動方向及び速さとを算出、または他の装置から取得することで、短時間先の所定時刻における雲面積を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、所定時刻における発電出力を正確に推定することができる。
【0027】
また、好ましくは、前記発電出力算出部は、前記照射領域の面積に対する前記雲面積の比率に換算係数を乗じて、前記発電エリアの発電出力の低下率を算出することにより、前記発電エリアの発電出力を算出する。
【0028】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、照射領域の面積に対する雲面積の比率に換算係数を乗じて、発電エリアの発電出力の低下率を算出することにより、発電エリアの発電出力を算出する。つまり、照射領域の面積に対する雲面積の比率を用いて、発電エリア内への太陽光の照射が抑制される比率を算出することで、発電エリアの発電出力の低下率を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、発電エリアの発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0029】
また、好ましくは、前記発電出力算出部は、前記照射領域内の雲画像の明度が高いほど、または前記照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出することで、前記発電エリアの発電出力を算出する。
【0030】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、照射領域内の雲画像の明度が高いほど、または照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出することで、発電エリアの発電出力を算出する。ここで、照射領域内の雲画像の明度が高い場合には、発電エリア内への太陽光の照射の抑制は小さくなり、また照射領域内に含まれる雲の高度が高い場合にも、発電エリア内への太陽光の照射の抑制は小さくなる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置は、当該雲画像の明度が高いほど、または当該雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出し、算出した換算係数を用いて、発電エリアの発電出力を算出する。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、発電エリアの発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0031】
また、好ましくは、前記発電出力算出部は、前記照射領域ごとに、当該照射領域の面積に対する当該照射領域内の雲面積の比率に、当該照射領域に対応する換算係数を乗じて、当該照射領域における発電出力の低下率を算出し、算出した前記照射領域ごとの低下率を積算することで、前記発電エリアの発電出力の低下率を算出し、前記発電エリアの発電出力を算出する。
【0032】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、照射領域ごとに、当該照射領域における発電出力の低下率を算出し、算出した当該低下率を積算することで、発電エリアの発電出力の低下率を算出し、発電エリアの発電出力を算出する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置は、高度が異なる雲が存在する場合には、高度の異なる雲ごとに照射領域を取得し、取得した照射領域ごとに発電出力の低下率を算出し、積算することで、発電エリアの発電出力の低下率を算出する。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、高度の異なる雲を考慮した発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0033】
なお、本発明は、このような太陽光発電エリア出力推定装置として実現することができるだけでなく、当該太陽光発電エリア出力推定装置と、観測地点に設置された、太陽を追尾する太陽追尾装置と、当該太陽追尾装置に設けられ、太陽に向けて天空を撮像することで天空画像を生成する撮像装置とを備える太陽光発電エリア出力推定システムとしても実現することができる。
【0034】
これにより、太陽光発電エリア出力推定システムは、例えば全天カメラで全天画像を撮像するよりも精度の高い画像を撮像することができ、当該精度の高い画像を用いて、発電エリアの発電出力を正確に推定することができる。
【0035】
また、本発明は、このような太陽光発電エリア出力推定装置または太陽光発電エリア出力推定システムとして実現することができるだけでなく、当該太陽光発電エリア出力推定装置に含まれる処理部が行う特徴的な処理をステップとする太陽光発電エリア出力推定方法としても実現することができる。また、太陽光発電エリア出力推定方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータに実行させるプログラムや集積回路として実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る太陽光発電エリア出力推定装置によれば、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定システムが発電エリア内に配置された状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する照射領域を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する照射領域を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が照射領域を取得する処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する天空画像を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する天空画像を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する高度の異なる照射領域を説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が雲までの距離を算出する手法を説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する高度角の異なる照射領域を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する高度角の異なる照射領域を説明するための図である。
【図14A】本発明の実施の形態に係る雲面積取得部が所定時刻での雲面積を取得する処理を説明するための図である。
【図14B】本発明の実施の形態に係る雲面積取得部が所定時刻での雲面積を取得する処理を説明するための図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る雲面積取得部が所定時刻での雲面積を取得する処理を説明するための図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る発電出力算出部が発電エリアの発電出力を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置及び太陽光発電エリア出力推定システムについて、説明する。
【0039】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0040】
図1は、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定システム10が発電エリア内に配置された状態を示す図である。
【0041】
同図に示すように、太陽光発電エリア出力推定システム10は、太陽光発電設備が設置されたエリアである発電エリアQの発電出力を推定するためのシステムであり、発電エリアQ内の観測地点Pに配置されている。
【0042】
ここで、発電エリアQは、例えば、広大なエリアに太陽光発電を設置した太陽光発電所や、太陽光発電を全面導入した大規模団地などの大規模の太陽光発電設備が有する発電エリアである。つまり、太陽20からの太陽光が発電エリアQ内に照射することで、発電エリアQ内に配置されている太陽光発電が発電する。
【0043】
具体的には、当該太陽光は平行光線であるので、同図に示す仮想の傾斜柱A内を通って、当該太陽光が発電エリアQ内に照射される。そして、例えば、当該傾斜柱A内に雲30が存在する場合には、発電エリアQ内に影Kが形成され、当該影Kの影響によって発電エリアQの発電出力は減少する。
【0044】
なお、発電エリアQは、当該大規模の太陽光発電設備が有する全ての発電エリアでなくともよく、一部の発電エリアであってもよい。また、同図では、発電エリアQは、円形状であるが、発電出力を推定したいエリアを示す形状であればどのような形状であってもよく、例えば、当該大規模の太陽光発電設備が有する発電エリアが四角形状であれば、発電エリアQを四角形状にしてもよい。
【0045】
また、観測地点Pは、発電エリアQ内のどの位置であってもかまわないが、好ましくは、発電エリアQの中心位置である。
【0046】
次に、太陽光発電エリア出力推定システム10の構成について、説明する。
【0047】
図2は、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定システム10の構成を示す図である。
【0048】
同図に示すように、太陽光発電エリア出力推定システム10は、太陽光発電エリア出力推定装置100、太陽追尾装置11、可視光カメラ12及び赤外線カメラ13を備えている。
【0049】
太陽光発電エリア出力推定装置100は、発電エリアQの発電出力を推定する装置である。なお、太陽光発電エリア出力推定装置100は、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータシステムがプログラムを実行することによって実現されてもよいし、専用のコンピュータシステムによって実現されてもよい。太陽光発電エリア出力推定装置100の詳細な構成については、後述する。
【0050】
太陽追尾装置11は、観測地点Pに設置された、太陽20を追尾する装置である。具体的には、太陽追尾装置11は、太陽20の軌道を計算するとともに、センサによって太陽20を検知することで、太陽20の方角や高度角(同図に示す角度θ)を把握し、太陽20を自動追尾する。
【0051】
可視光カメラ12は、太陽追尾装置11に設けられ、太陽20に向けて天空を撮像することで天空画像を生成する撮像装置である。つまり、可視光カメラ12は、太陽追尾装置11が太陽20を自動追尾することで、常に太陽20を中心位置に含む太陽20周辺の天空画像を撮像することができる。なお、太陽20からの光が直接可視光カメラ12に入射して可視光カメラ12が損傷するのを防ぐため、可視光カメラ12の前方には、遮光球12aが配置されている。
【0052】
赤外線カメラ13は、太陽追尾装置11に設けられ、太陽20に向けて天空を撮像することで赤外線画像を生成する撮像装置である。つまり、赤外線カメラ13は、太陽追尾装置11が太陽20を自動追尾することで、常に太陽20を中心位置に含む太陽20周辺の赤外線画像を撮像することができる。なお、太陽20からの光が直接赤外線カメラ13に入射して赤外線カメラ13が損傷するのを防ぐため、赤外線カメラ13の前方には、遮光球13aが配置されている。
【0053】
以上により、太陽光発電エリア出力推定システム10は、例えば全天カメラで全天画像を撮像するよりも精度の高い画像を撮像することができ、当該精度の高い画像を用いて、発電エリアQの発電出力を正確に推定することができる。
【0054】
なお、可視光カメラ12及び赤外線カメラ13は、全天画像を撮像する全天カメラであってもよく、この場合、太陽光発電エリア出力推定システム10は、太陽追尾装置11を備えていなくともかまわない。
【0055】
次に、太陽光発電エリア出力推定装置100の構成について、説明する。
【0056】
図3は、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
【0057】
同図に示すように、太陽光発電エリア出力推定装置100は、照射領域取得部110、雲面積取得部120、発電出力算出部130及び記憶部140を備えている。
【0058】
照射領域取得部110は、発電エリアQ内の観測地点Pから天空を撮像することで得られる画像である天空画像上における、発電エリアQに太陽光を照射する領域である照射領域を取得する。つまり、照射領域取得部110は、可視光カメラ12が撮像した天空画像を取得し、当該天空画像上の照射領域を取得する。なお、照射領域を取得するとは、照射領域を示す情報を取得することをいう。
【0059】
図4及び図5は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が取得する照射領域を説明するための図である。
【0060】
図4に示すように、太陽光発電エリア出力推定システム10の可視光カメラ12は、観測地点Pから太陽20に向けて、撮像領域Sの天空画像を撮像することとする。ここで、撮像領域S内の領域Rは、照射領域を示している。つまり、照射領域Rは、図1における傾斜柱Aの撮像領域S内の領域であり、発電エリアQに太陽光を照射する天空画像上の領域である。
【0061】
このように、可視光カメラ12は、図5に示すような撮像領域Sの天空画像を撮像し、照射領域取得部110は、可視光カメラ12から当該天空画像を取得する。そして、照射領域取得部110は、当該天空画像上の照射領域Rを取得する。なお、照射領域取得部110が当該照射領域Rを取得する手法の詳細な説明については、後述する。
【0062】
また、傾斜柱A内に雲30が存在すれば(発電エリアQ内に影Kが存在すれば)、照射領域R内には、雲領域Cが撮像される。また、撮像領域Sの中心位置には遮光球12aが撮像され、太陽20からの直接光の入射を防いでいる。
【0063】
図3に戻り、雲面積取得部120は、照射領域取得部110が取得した照射領域R内に含まれる雲の面積である雲面積を取得する。具体的には、雲面積取得部120は、例えば図5に示す照射領域R内に雲領域Cの領域Mが含まれている場合には、当該領域Mの面積を雲面積として取得する。なお、照射領域取得部110が取得した照射領域とは、照射領域取得部110が取得した情報で示される照射領域のことをいう。
【0064】
発電出力算出部130は、雲面積取得部120が取得した雲面積を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する。具体的には、発電出力算出部130は、照射領域Rの面積に対する雲面積の比率に換算係数を乗じて、発電エリアQの発電出力の低下率を算出することにより、発電エリアQの発電出力を算出する。なお、発電出力算出部130が発電エリアQの発電出力を算出する手法の詳細な説明については、後述する。
【0065】
記憶部140は、発電エリアQの発電出力を推定するためのデータなどを記憶しているメモリである。記憶部140は、例えば、天空画像、照射領域、雲面積や換算係数などの情報を記憶している。
【0066】
例えば、照射領域取得部110は、可視光カメラ12から天空画像を取得して、記憶部140に記憶させたり、取得した照射領域を記憶部140に記憶させたりする。また、雲面積取得部120は、照射領域取得部110が取得した照射領域を記憶部140から読み出したり、取得した雲面積を記憶部140に記憶させたりする。また、発電出力算出部130は、雲面積取得部120が取得した雲面積を記憶部140から読み出したり、取得した換算係数を記憶部140に記憶させたりする。
【0067】
なお、太陽光発電エリア出力推定装置100は、上記の構成の他に、キーボードやマウス等の入力部や、液晶ディスプレイ等の表示部なども備えていることにしても良い。
【0068】
次に、太陽光発電エリア出力推定装置100が発電エリアQの発電出力を推定する処理(太陽光発電エリア出力推定方法)について、説明する。
【0069】
図6は、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置100が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0070】
同図に示すように、まず、照射領域取得部110は、発電エリアQ内の観測地点Pから撮像された天空画像上における照射領域を取得する(S102)。この照射領域取得部110が照射領域を取得する処理(照射領域取得ステップ)について、以下に詳細に説明する。
【0071】
図7は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が照射領域を取得する処理の一例を示すフローチャートである。
【0072】
同図に示すように、まず、照射領域取得部110は、可視光カメラ12から天空画像を取得する(S202)。つまり、照射領域取得部110は、可視光カメラ12が撮像した天空画像を取得する。
【0073】
図8及び図9は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が取得する天空画像を説明するための図である。
【0074】
まず、図8に示すように、観測地点Pの上空に、低層雲31と高層雲32とが存在することとする。ここで、低層雲31は、一部が、図1に示したような発電エリアQ内に太陽光を照射する仮想の傾斜柱A内に存在している。また、高層雲32は、傾斜柱A内には存在していない。つまり、低層雲31のみが、発電エリアQ内に影Kを形成している。
【0075】
ここで、同図の撮像領域S1は、太陽光発電エリア出力推定システム10の可視光カメラ12が撮像する低層雲31の高さに対応した撮像領域であり、撮像領域S2は、可視光カメラ12が撮像する高層雲32の高さに対応した撮像領域である。
【0076】
また、撮像領域S1内の照射領域R1は、低層雲31の高さに対応した傾斜柱A内の照射領域であり、撮像領域S2内の照射領域R2は、高層雲32の高さに対応した傾斜柱A内の照射領域である。
【0077】
そして、図9に示すように、低層雲31及び高層雲32は、例えば、撮像領域S1内に雲領域C1及び雲領域C2として投影することができる。このように、照射領域取得部110は、雲領域C1及び雲領域C2を含む撮像領域S1の天空画像を取得する。
【0078】
図7に戻り、次に、照射領域取得部110は、赤外線カメラ13から赤外線画像を取得する(S204)。つまり、照射領域取得部110は、赤外線カメラ13が撮像した赤外線画像を取得する。
【0079】
具体的には、図9に示したように、太陽光発電エリア出力推定システム10の赤外線カメラ13は、可視光カメラ12と同様に、観測地点Pから雲領域C1及び雲領域C2を含む赤外線画像を撮像し、照射領域取得部110は、当該赤外線画像を取得する。
【0080】
そして、照射領域取得部110は、赤外線画像に含まれる雲画像について、雲底の温度を取得する(S206)。つまり、照射領域取得部110は、赤外線画像に含まれる雲領域C1及び雲領域C2について、雲領域C1及び雲領域C2における画像を解析することで、雲底の温度を取得する。
【0081】
そして、照射領域取得部110は、赤外線画像に含まれる雲画像について、雲の高度を算出する(S208)。つまり、照射領域取得部110は、赤外線画像に含まれる雲領域C1及び雲領域C2について、雲領域C1及び雲領域C2における雲底の高度を算出する。
【0082】
ここで、高度が10km以内の対流圏においては、高度が100m上昇すると、大気温度は約0.6度低下する。このため、照射領域取得部110は、観測地点Pでの大気温度と取得した雲底の温度とを比較し、温度が0.6度低下するたびに高度が100m上昇するとして、当該雲底の高度を算出する。
【0083】
このように、照射領域取得部110は、観測地点Pから撮像された赤外線画像から得られる雲底の温度を用いて、雲の高度を算出する。
【0084】
そして、照射領域取得部110は、太陽追尾装置11から太陽の高度角を取得する(S210)。つまり、太陽追尾装置11は、常に太陽の高度角を把握して太陽を追尾しているので、照射領域取得部110は、太陽追尾装置11から、図2に示された太陽20の高度角である角度θを取得する。
【0085】
そして、照射領域取得部110は、照射領域を生成する(S212)。以下に、照射領域取得部110が照射領域を生成する手法について、詳細に説明する。
【0086】
まず、照射領域取得部110は、照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、外形が小さい照射領域を生成する。
【0087】
図10は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が取得する高度の異なる照射領域を説明するための図である。
【0088】
ここで、同図に示す照射領域R1は、低層雲31の高さに対応した撮像領域S1内の照射領域である。また、照射領域R3は、図9に示した照射領域R2を撮像領域S1内に投影することで示される領域である。つまり、照射領域R3は、高層雲32の高さに対応した照射領域R2を撮像領域S1内に投影したものである。
【0089】
このため、照射領域取得部110は、低層雲31の高さに対応した照射領域として照射領域R1を生成し、高層雲32の高さに対応した照射領域として照射領域R3を生成する。ここで、照射領域取得部110は、雲の高度に反比例した大きさの照射領域を生成する。
【0090】
つまり、低層雲31の高度をH1とし、高層雲32の高度をH2とし、照射領域R1の横方向の幅をW1とし、照射領域R3の横方向の幅をW2とした場合、照射領域取得部110は、以下の式1を用いて当該W2を算出する。
【0091】
W2=W1×H1/H2 (式1)
【0092】
また、照射領域取得部110は、照射領域R3の縦方向の幅についても同様に、照射領域R1の縦方向の幅にH1/H2を乗じることで、算出する。なお、横方向とは、天空画像に含まれる画像の水平方向を示す方向であり、縦方向とは、天空画像内の当該横方向に垂直な方向である。つまり、上方が天空、下方が地上となる方向が縦方向である。
【0093】
このようにして、照射領域取得部110は、照射領域R1に対して照射領域R3を生成することができる。
【0094】
ここで、照射領域取得部110は、低層雲31及び高層雲32の高度を用いるのではなく、観測地点Pから低層雲31及び高層雲32までの距離を算出し、当該距離を用いて、照射領域を生成することにしてもよい。
【0095】
図11は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が雲までの距離を算出する手法を説明するための図である。
【0096】
同図に示すように、太陽光発電エリア出力推定装置100の照射領域取得部110は、可視光カメラ12または赤外線カメラ13が撮像した画像に含まれる太陽20の位置と雲30の位置とから、太陽20と雲30との上下画角差αを算出する。
【0097】
そして、照射領域取得部110は、太陽追尾装置11から取得した太陽20の高度角θから、上下画角差αを差し引くことで、雲30の高度角βを算出する。そして、照射領域取得部110は、雲30の高度Hから、以下の式2を用いて、観測地点Pと雲30との直線距離Dを算出する。
【0098】
D=H/sinβ (式2)
【0099】
このようにして、照射領域取得部110は、観測地点Pと低層雲31との直線距離D1と、観測地点Pと高層雲32との直線距離D2とを算出し、以下の式3を用いて、照射領域R3の横方向の幅W2を算出する。
【0100】
W2=W1×D1/D2 (式3)
【0101】
また、照射領域取得部110は、照射領域R3の縦方向の幅についても同様に、照射領域R1の縦方向の幅にD1/D2を乗じることで、算出する。このようにして、照射領域取得部110は、照射領域R1に対して照射領域R3を生成する。
【0102】
また、照射領域取得部110は、太陽の高度角が小さい(高度が低い)ほど、大きい圧縮率で縦方向に圧縮された照射領域を取得する。
【0103】
図12及び図13は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が取得する高度角の異なる照射領域を説明するための図である。
【0104】
ここで、これらの図に示す照射領域R4は、観測地点Pから見た場合の太陽20の高度が、照射領域R1よりも低い場合に対応した撮像領域S3内の照射領域である。つまり、照射領域R4は、照射領域R1よりも大きい圧縮率で縦方向に圧縮された照射領域である。このため、照射領域取得部110は、太陽20の高度角が小さい場合に対応した照射領域として照射領域R4を生成する。
【0105】
具体的には、照射領域R1における太陽20の高度角をθ1、照射領域R4における太陽20の高度角をθ2とした場合、図13に示すように、照射領域取得部110は、照射領域R1の縦方向の幅をW3、照射領域R4の縦方向の幅をW4として、以下の式4を用いて、照射領域R4の縦方向の幅W4を算出する。
【0106】
W4=W1×sinθ2/sinθ1 (式4)
【0107】
このように、照射領域取得部110は、太陽20の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された照射領域を生成する。なお、この場合、照射領域は、横方向については、圧縮されない。
【0108】
以上のように、照射領域取得部110は、照射領域内に含まれると想定される雲の高度ごとに、照射領域を生成し、取得する。
【0109】
なお、照射領域取得部110は、円形または楕円形の照射領域を取得することとしたが、照射領域の形状は四角形状など、発電エリアQの形状に対応した形状であればよい。つまり、照射領域取得部110は、照射領域の形状にかかわらず、上記のように縦方向または横方向に圧縮または伸長された照射領域を取得する。
【0110】
以上により、照射領域取得部110が照射領域を取得する処理(図6のS102:照射領域取得ステップ)は、終了する。
【0111】
図6に戻り、次に、雲面積取得部120は、照射領域取得部110が取得した照射領域内に含まれる雲の面積である雲面積を取得する(S104)。ここで、太陽光発電エリア出力推定装置100が現在の発電出力を推定する場合には、雲面積取得部120は、現在の雲面積を取得する。また、太陽光発電エリア出力推定装置100が将来の発電出力を推定する場合には、雲面積取得部120は、当該将来の雲面積を取得する。
【0112】
このように、雲面積取得部120は、所定時刻での雲面積を取得する。この雲面積取得部120が所定時刻での雲面積を取得する処理(雲面積取得ステップ)について、以下に詳細に説明する。
【0113】
図14A、図14B及び図15は、本発明の実施の形態に係る雲面積取得部120が所定時刻での雲面積を取得する処理を説明するための図である。
【0114】
図14Aに示すように、例えば撮像領域S1内に投影された低層雲31の雲領域C1は、低層雲31が移動することで、移動する。このため、雲面積取得部120は、異なる時刻で撮像された複数の天空画像における雲領域C1の位置から、雲領域C1の移動方向及び速さを算出する。
【0115】
そして、雲面積取得部120は、現在の雲領域C1の位置と、算出した雲領域C1の移動方向及び速さとを用いて、例えば10分後や20分後など所定時刻での雲面積を算出する。
【0116】
具体的には、図14Bに示すように、雲面積取得部120は、算出した雲領域C1の移動方向及び速さとから、現在の照射領域R1の位置から、当該移動方向とは逆方向に当該速さで照射領域R1を移動させる。そして、雲面積取得部120は、移動させた照射領域(同図に示す照射領域R0)と雲領域C1とが重なっている部分の面積を、所定時刻での雲面積として算出する。
【0117】
このように、雲面積取得部120は、現在の雲の位置と、雲の移動方向及び速さとから、所定時刻での雲面積を算出することで、所定時刻での雲面積を取得する。
【0118】
また、雲面積取得部120は、照射領域取得部110が取得した照射領域ごとに、雲面積を取得する。
【0119】
例えば、図15に示すように、雲面積取得部120は、低層雲31に対応した雲面積として、照射領域R1と雲領域C1とが重なっている部分の領域M1の面積を取得し、高層雲32に対応した雲面積として、照射領域R3と雲領域C2とが重なっている部分の領域M2の面積を取得する。
【0120】
このように、雲面積取得部120は、複数の照射領域について、雲面積を取得する。
【0121】
以上により、雲面積取得部120が所定時刻での雲面積を取得する処理(図6のS104:雲面積取得ステップ)は、終了する。
【0122】
図6に戻り、次に、発電出力算出部130は、雲面積取得部120が取得した雲面積を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する(S106)。この発電出力算出部130が発電エリアQの発電出力を算出する処理(発電出力算出ステップ)について、以下に詳細に説明する。
【0123】
図16は、本発明の実施の形態に係る発電出力算出部130が発電エリアQの発電出力を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【0124】
同図に示すように、まず、発電出力算出部130は、照射領域取得部110が取得した全ての照射領域について、以下の処理(S304〜S308)を実施する(ループ1:S302〜S310)。
【0125】
まず、発電出力算出部130は、対象とする照射領域について、当該照射領域の面積を取得する(S304)。例えば、発電出力算出部130は、天空画像を解析し、当該照射領域の面積を算出することで、当該照射領域の面積を取得する。
【0126】
そして、発電出力算出部130は、対象とする照射領域に対応する換算係数を取得する(S306)。ここで、換算係数とは、当該照射領域内の雲によって太陽光が遮断される割合を示す0から1の間の数値であり、雲によって太陽光が遮断される場合に換算係数を1とし、遮断されない場合には換算係数を0とする。
【0127】
具体的には、発電出力算出部130は、当該照射領域内の雲画像の明度が高いほど、または照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出する。
【0128】
つまり、当該照射領域内の雲画像の明度が高い場合には、太陽光が雲を透過する割合が大きくなるので、発電出力算出部130は、当該照射領域内の雲画像の明度が高いほど、換算係数が小さくなるように換算係数を算出する。また、当該照射領域内に含まれる雲の高度が高い場合には、太陽光が雲を透過する割合が大きくなるので、発電出力算出部130は、当該照射領域内の雲画像の明度が高いほど、換算係数が小さくなるように換算係数を算出する。
【0129】
そして、発電出力算出部130は、対象とする照射領域における発電出力の低下率を算出する(S308)。
【0130】
具体的には、発電出力算出部130は、照射領域の面積に対する雲面積の比率に換算係数を乗じて、発電エリアQの発電出力の低下率を算出する。例えば、照射領域R1の面積をr1、雲面積取得部120が取得した領域M1の雲面積をm1、換算係数をaとすると、発電出力算出部130は、以下の式5により、発電エリアQの発電出力の低下率t1を算出する。
【0131】
t1=a×m1/r1 (式5)
【0132】
なお、発電出力算出部130は、照射領域R1内の雲画像について、複数の換算係数を算出してもよく、この場合には、発電出力算出部130は、換算係数に対応した雲面積ごとに上記の式5の計算を行い、算出した結果を積算することで、低下率t1を算出する。
【0133】
以上のようにして、発電出力算出部130は、照射領域取得部110が取得した全ての照射領域について、上記の処理(S304〜S308)を繰り返し実施する(ループ1:S302〜S310)。
【0134】
次に、発電出力算出部130は、算出した低下率を積算し、発電エリアQの発電出力の低下率を算出する(S312)。
【0135】
つまり、発電出力算出部130は、照射領域ごとに、当該照射領域の面積に対する当該照射領域内の雲面積の比率に、当該照射領域に対応する換算係数を乗じて、当該照射領域における発電出力の低下率を算出し、算出した照射領域ごとの低下率を積算することで、発電エリアQの発電出力の低下率を算出する。
【0136】
例えば、図15に示す場合、発電出力算出部130は、照射領域R1において算出した低下率t1と、照射領域R3において算出した低下率t2とを加算することで、発電エリアQの発電出力の低下率T(=t1+t2)を算出する。
【0137】
そして、発電出力算出部130は、算出した発電エリアQの発電出力の低下率Tから、発電エリアQの発電出力Z1を算出する(S314)。つまり、発電出力算出部130は、発電エリアQ内に雲が存在しないと仮定した場合の発電エリアQの発電出力をZ0として、当該発電出力Z1を、以下の式6を用いて算出する。
【0138】
Z1=Z0×(1−T) (式6)
【0139】
このように、発電出力算出部130は、照射領域ごとの雲面積を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する。なお、雲面積取得部120が取得した雲面積が所定時刻での雲面積であれば、発電出力算出部130は、当該所定時刻での発電エリアQの発電出力を算出する。
【0140】
以上により、発電出力算出部130が発電エリアQの発電出力を算出する処理(図6のS106:発電出力算出ステップ)は、終了する。
【0141】
以上のように、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置100によれば、天空画像上の照射領域を取得して、取得した照射領域内に含まれる雲面積を取得し、当該雲面積を用いて、太陽光発電設備が設置された発電エリアQの発電出力を算出する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置100は、発電エリアQが広大であっても、照射領域内の雲面積から、当該発電エリアQ内に照射する太陽光の割合を把握することで、当該発電エリアQの発電出力を正確に算出することができる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0142】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度ごとに照射領域を取得し、取得した照射領域ごとに雲面積を取得して、当該照射領域ごとの雲面積を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する。ここで、様々な高度の雲が太陽光を遮ることとなるが、天空画像内の雲画像に対応した照射領域は、雲の高度によって異なった大きさの領域になる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度ごとに照射領域を取得して、取得した照射領域ごとに、照射領域内の雲面積から、発電エリアQ内に照射する太陽光の割合を把握することで、当該発電エリアQの発電出力を正確に算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0143】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度が高いほど、外形が小さい照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度が高い照射領域ほど小さい領域になるため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度が高いほど、外形が小さい照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0144】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度に反比例した大きさの照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度と照射領域の大きさとは反比例するため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度に反比例した大きさの照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0145】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、赤外線画像から得られる雲底の温度を用いて、雲の高度を算出することで、照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、照射領域は高度によって異なった大きさの領域になるため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、赤外線画像から得られる雲底の温度から雲の高度を算出し、照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0146】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、太陽の高度角が小さいほど、大きい圧縮率で縦方向に圧縮された照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度角が小さいほど、照射領域は縦方向に大きく圧縮される。このため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、太陽の高度角が小さいほど大きく縦方向に圧縮された照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0147】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度角をθとすれば、照射領域は縦方向にsinθ倍に圧縮される。このため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0148】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、現在の雲の位置と、雲の移動方向及び速さとから、所定時刻での雲面積を算出し、取得する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置100は、現在の雲の位置と雲の移動方向及び速さとを算出、または他の装置から取得することで、短時間先の所定時刻における雲面積を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、所定時刻における発電出力を正確に推定することができる。
【0149】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、照射領域の面積に対する雲面積の比率に換算係数を乗じて、発電エリアQの発電出力の低下率を算出することにより、発電エリアQの発電出力を算出する。つまり、照射領域の面積に対する雲面積の比率を用いて、発電エリアQ内への太陽光の照射が抑制される比率を算出することで、発電エリアQの発電出力の低下率を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、発電エリアQの発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0150】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、照射領域内の雲画像の明度が高いほど、または照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出することで、発電エリアQの発電出力を算出する。ここで、照射領域内の雲画像の明度が高い場合には、発電エリアQ内への太陽光の照射の抑制は小さくなり、また照射領域内に含まれる雲の高度が高い場合にも、発電エリアQ内への太陽光の照射の抑制は小さくなる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、当該雲画像の明度が高いほど、または当該雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出し、算出した換算係数を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、発電エリアQの発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0151】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、照射領域ごとに、当該照射領域における発電出力の低下率を算出し、算出した当該低下率を積算することで、発電エリアQの発電出力の低下率を算出し、発電エリアQの発電出力を算出する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置100は、高度が異なる雲が存在する場合には、高度の異なる雲ごとに照射領域を取得し、取得した照射領域ごとに発電出力の低下率を算出し、積算することで、発電エリアQの発電出力の低下率を算出する。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、高度の異なる雲を考慮した発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0152】
以上、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置100及び太陽光発電エリア出力推定システム10について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0153】
また、本発明は、このような太陽光発電エリア出力推定装置100または太陽光発電エリア出力推定システム10として実現することができるだけでなく、当該太陽光発電エリア出力推定装置100に含まれる処理部が行う特徴的な処理をステップとする太陽光発電エリア出力推定方法としても実現することができる。また、太陽光発電エリア出力推定方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータに実行させるプログラムや集積回路として実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、大規模の太陽光発電設備に対してでも発電出力を正確に推定することができる太陽光発電エリア出力推定装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0155】
10 太陽光発電エリア出力推定システム
11 太陽追尾装置
12 可視光カメラ
12a 遮光球
13 赤外線カメラ
13a 遮光球
20 太陽
30 雲
100 太陽光発電エリア出力推定装置
110 照射領域取得部
120 雲面積取得部
130 発電出力算出部
140 記憶部
A 傾斜柱
C、C1、C2 雲領域
K 影
M、M1、M2 領域
P 観測地点
Q 発電エリア
R、R0、R1、R2、R3、R4 照射領域
S、S1、S2、S3 撮像領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電設備が設置されたエリアの発電出力を推定する太陽光発電エリア出力推定装置、太陽光発電エリア出力推定システム及び太陽光発電エリア出力推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電などの分散型電源を設置し、当該太陽光発電と商用電力系統からの電力により、消費する電力負荷に電力を供給する需要家が増えてきている。ここで、太陽光発電を有効に活用するためには、太陽光発電の発電出力を推定することが重要であるが、太陽光発電の発電出力を推定するには、太陽の光を遮る雲の位置を観測する必要がある。
【0003】
このため、従来、任意の地点から雲底の温度情報を取得し、当該温度情報に基づいて雲底の高度を測定することで、雲の位置を観測する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この手法によって、所定の観測地点での日射量を予測することができ、当該観測地点に設置された太陽光発電の発電出力を推定することができる。
【0004】
また、所定の観測地点から雲画像を撮像し、当該雲画像を用いて当該観測地点での日射量を予測する手法によっても、当該観測地点に設置された太陽光発電の発電出力を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−170350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の手法では、大規模の太陽光発電設備に対しては、発電出力を正確に推定することができないという問題がある。
【0007】
ここで、大規模の太陽光発電設備とは、例えば、広大なエリアに太陽光発電を設置した太陽光発電所や、太陽光発電を全面導入した大規模団地などである。つまり、当該大規模の太陽光発電設備においては、広大な発電エリアを有するため、当該発電エリア全体の発電出力の変動は、所定の観測地点における発電出力の変動とは異なる。
【0008】
このため、上記従来の手法では、当該大規模の太陽光発電設備が有する発電エリアのうちの所定の観測地点における発電出力を推定することはできるが、当該発電エリア全体での発電出力を推定することはできない。
【0009】
このように、従来の手法では、大規模の太陽光発電設備に対しては、発電出力を正確に推定することができないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、大規模の太陽光発電設備に対してでも発電出力を正確に推定することができる太陽光発電エリア出力推定装置、太陽光発電エリア出力推定システム及び太陽光発電エリア出力推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る太陽光発電エリア出力推定装置は、太陽光発電設備が設置されたエリアである発電エリアの発電出力を推定する太陽光発電エリア出力推定装置であって、前記発電エリア内の観測地点から天空を撮像することで得られる画像である天空画像上における、前記発電エリアに太陽光を照射する領域である照射領域を取得する照射領域取得部と、取得された前記照射領域内に含まれる雲の面積である雲面積を取得する雲面積取得部と、取得された前記雲面積を用いて、前記発電エリアの発電出力を算出する発電出力算出部とを備える。
【0012】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、天空画像上の照射領域を取得して、取得した照射領域内に含まれる雲面積を取得し、当該雲面積を用いて、太陽光発電設備が設置された発電エリアの発電出力を算出する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置は、発電エリアが広大であっても、照射領域内の雲面積から、当該発電エリア内に照射する太陽光の割合を把握することで、当該発電エリアの発電出力を正確に算出することができる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0013】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、前記照射領域内に含まれると想定される雲の高度ごとに前記照射領域を取得し、前記雲面積取得部は、取得された前記照射領域ごとに前記雲面積を取得し、前記発電出力算出部は、取得された前記照射領域ごとの前記雲面積を用いて、前記発電エリアの発電出力を算出する。
【0014】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度ごとに照射領域を取得し、取得した照射領域ごとに雲面積を取得して、当該照射領域ごとの雲面積を用いて、発電エリアの発電出力を算出する。ここで、様々な高度の雲が太陽光を遮ることとなるが、天空画像内の雲画像に対応した照射領域は、雲の高度によって異なった大きさの領域になる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度ごとに照射領域を取得して、取得した照射領域ごとに、照射領域内の雲面積から、発電エリア内に照射する太陽光の割合を把握することで、当該発電エリアの発電出力を正確に算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、前記照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、外形が小さい前記照射領域を取得する。
【0016】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度が高いほど、外形が小さい照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度が高い照射領域ほど小さい領域になるため、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度が高いほど、外形が小さい照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0017】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、前記雲の高度に反比例した大きさの前記照射領域を取得する。
【0018】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度に反比例した大きさの照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度と照射領域の大きさとは反比例するため、太陽光発電エリア出力推定装置は、雲の高度に反比例した大きさの照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0019】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、前記観測地点から撮像された赤外線画像から得られる雲底の温度を用いて、前記雲の高度を算出することで、前記照射領域を取得する。
【0020】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、赤外線画像から得られる雲底の温度を用いて、雲の高度を算出することで、照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、照射領域は高度によって異なった大きさの領域になるため、太陽光発電エリア出力推定装置は、赤外線画像から得られる雲底の温度から雲の高度を算出し、照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0021】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、太陽の高度角が小さいほど、大きい圧縮率で縦方向に圧縮された前記照射領域を取得する。
【0022】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、太陽の高度角が小さいほど、大きい圧縮率で縦方向に圧縮された照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度角が小さいほど、照射領域は縦方向に大きく圧縮される。このため、太陽光発電エリア出力推定装置は、太陽の高度角が小さいほど大きく縦方向に圧縮された照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0023】
また、好ましくは、前記照射領域取得部は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された前記照射領域を取得する。
【0024】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度角をθとすれば、照射領域は縦方向にsinθ倍に圧縮される。このため、太陽光発電エリア出力推定装置は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0025】
また、好ましくは、前記雲面積取得部は、現在の雲の位置と、雲の移動方向及び速さとから、所定時刻での前記雲面積を算出することで、前記所定時刻での前記雲面積を取得する。
【0026】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、現在の雲の位置と、雲の移動方向及び速さとから、所定時刻での雲面積を算出し、取得する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置は、現在の雲の位置と雲の移動方向及び速さとを算出、または他の装置から取得することで、短時間先の所定時刻における雲面積を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、所定時刻における発電出力を正確に推定することができる。
【0027】
また、好ましくは、前記発電出力算出部は、前記照射領域の面積に対する前記雲面積の比率に換算係数を乗じて、前記発電エリアの発電出力の低下率を算出することにより、前記発電エリアの発電出力を算出する。
【0028】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、照射領域の面積に対する雲面積の比率に換算係数を乗じて、発電エリアの発電出力の低下率を算出することにより、発電エリアの発電出力を算出する。つまり、照射領域の面積に対する雲面積の比率を用いて、発電エリア内への太陽光の照射が抑制される比率を算出することで、発電エリアの発電出力の低下率を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、発電エリアの発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0029】
また、好ましくは、前記発電出力算出部は、前記照射領域内の雲画像の明度が高いほど、または前記照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出することで、前記発電エリアの発電出力を算出する。
【0030】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、照射領域内の雲画像の明度が高いほど、または照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出することで、発電エリアの発電出力を算出する。ここで、照射領域内の雲画像の明度が高い場合には、発電エリア内への太陽光の照射の抑制は小さくなり、また照射領域内に含まれる雲の高度が高い場合にも、発電エリア内への太陽光の照射の抑制は小さくなる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置は、当該雲画像の明度が高いほど、または当該雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出し、算出した換算係数を用いて、発電エリアの発電出力を算出する。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、発電エリアの発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0031】
また、好ましくは、前記発電出力算出部は、前記照射領域ごとに、当該照射領域の面積に対する当該照射領域内の雲面積の比率に、当該照射領域に対応する換算係数を乗じて、当該照射領域における発電出力の低下率を算出し、算出した前記照射領域ごとの低下率を積算することで、前記発電エリアの発電出力の低下率を算出し、前記発電エリアの発電出力を算出する。
【0032】
これによれば、太陽光発電エリア出力推定装置は、照射領域ごとに、当該照射領域における発電出力の低下率を算出し、算出した当該低下率を積算することで、発電エリアの発電出力の低下率を算出し、発電エリアの発電出力を算出する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置は、高度が異なる雲が存在する場合には、高度の異なる雲ごとに照射領域を取得し、取得した照射領域ごとに発電出力の低下率を算出し、積算することで、発電エリアの発電出力の低下率を算出する。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置は、高度の異なる雲を考慮した発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0033】
なお、本発明は、このような太陽光発電エリア出力推定装置として実現することができるだけでなく、当該太陽光発電エリア出力推定装置と、観測地点に設置された、太陽を追尾する太陽追尾装置と、当該太陽追尾装置に設けられ、太陽に向けて天空を撮像することで天空画像を生成する撮像装置とを備える太陽光発電エリア出力推定システムとしても実現することができる。
【0034】
これにより、太陽光発電エリア出力推定システムは、例えば全天カメラで全天画像を撮像するよりも精度の高い画像を撮像することができ、当該精度の高い画像を用いて、発電エリアの発電出力を正確に推定することができる。
【0035】
また、本発明は、このような太陽光発電エリア出力推定装置または太陽光発電エリア出力推定システムとして実現することができるだけでなく、当該太陽光発電エリア出力推定装置に含まれる処理部が行う特徴的な処理をステップとする太陽光発電エリア出力推定方法としても実現することができる。また、太陽光発電エリア出力推定方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータに実行させるプログラムや集積回路として実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る太陽光発電エリア出力推定装置によれば、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定システムが発電エリア内に配置された状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する照射領域を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する照射領域を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が照射領域を取得する処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する天空画像を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する天空画像を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する高度の異なる照射領域を説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が雲までの距離を算出する手法を説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する高度角の異なる照射領域を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る照射領域取得部が取得する高度角の異なる照射領域を説明するための図である。
【図14A】本発明の実施の形態に係る雲面積取得部が所定時刻での雲面積を取得する処理を説明するための図である。
【図14B】本発明の実施の形態に係る雲面積取得部が所定時刻での雲面積を取得する処理を説明するための図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る雲面積取得部が所定時刻での雲面積を取得する処理を説明するための図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る発電出力算出部が発電エリアの発電出力を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置及び太陽光発電エリア出力推定システムについて、説明する。
【0039】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0040】
図1は、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定システム10が発電エリア内に配置された状態を示す図である。
【0041】
同図に示すように、太陽光発電エリア出力推定システム10は、太陽光発電設備が設置されたエリアである発電エリアQの発電出力を推定するためのシステムであり、発電エリアQ内の観測地点Pに配置されている。
【0042】
ここで、発電エリアQは、例えば、広大なエリアに太陽光発電を設置した太陽光発電所や、太陽光発電を全面導入した大規模団地などの大規模の太陽光発電設備が有する発電エリアである。つまり、太陽20からの太陽光が発電エリアQ内に照射することで、発電エリアQ内に配置されている太陽光発電が発電する。
【0043】
具体的には、当該太陽光は平行光線であるので、同図に示す仮想の傾斜柱A内を通って、当該太陽光が発電エリアQ内に照射される。そして、例えば、当該傾斜柱A内に雲30が存在する場合には、発電エリアQ内に影Kが形成され、当該影Kの影響によって発電エリアQの発電出力は減少する。
【0044】
なお、発電エリアQは、当該大規模の太陽光発電設備が有する全ての発電エリアでなくともよく、一部の発電エリアであってもよい。また、同図では、発電エリアQは、円形状であるが、発電出力を推定したいエリアを示す形状であればどのような形状であってもよく、例えば、当該大規模の太陽光発電設備が有する発電エリアが四角形状であれば、発電エリアQを四角形状にしてもよい。
【0045】
また、観測地点Pは、発電エリアQ内のどの位置であってもかまわないが、好ましくは、発電エリアQの中心位置である。
【0046】
次に、太陽光発電エリア出力推定システム10の構成について、説明する。
【0047】
図2は、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定システム10の構成を示す図である。
【0048】
同図に示すように、太陽光発電エリア出力推定システム10は、太陽光発電エリア出力推定装置100、太陽追尾装置11、可視光カメラ12及び赤外線カメラ13を備えている。
【0049】
太陽光発電エリア出力推定装置100は、発電エリアQの発電出力を推定する装置である。なお、太陽光発電エリア出力推定装置100は、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータシステムがプログラムを実行することによって実現されてもよいし、専用のコンピュータシステムによって実現されてもよい。太陽光発電エリア出力推定装置100の詳細な構成については、後述する。
【0050】
太陽追尾装置11は、観測地点Pに設置された、太陽20を追尾する装置である。具体的には、太陽追尾装置11は、太陽20の軌道を計算するとともに、センサによって太陽20を検知することで、太陽20の方角や高度角(同図に示す角度θ)を把握し、太陽20を自動追尾する。
【0051】
可視光カメラ12は、太陽追尾装置11に設けられ、太陽20に向けて天空を撮像することで天空画像を生成する撮像装置である。つまり、可視光カメラ12は、太陽追尾装置11が太陽20を自動追尾することで、常に太陽20を中心位置に含む太陽20周辺の天空画像を撮像することができる。なお、太陽20からの光が直接可視光カメラ12に入射して可視光カメラ12が損傷するのを防ぐため、可視光カメラ12の前方には、遮光球12aが配置されている。
【0052】
赤外線カメラ13は、太陽追尾装置11に設けられ、太陽20に向けて天空を撮像することで赤外線画像を生成する撮像装置である。つまり、赤外線カメラ13は、太陽追尾装置11が太陽20を自動追尾することで、常に太陽20を中心位置に含む太陽20周辺の赤外線画像を撮像することができる。なお、太陽20からの光が直接赤外線カメラ13に入射して赤外線カメラ13が損傷するのを防ぐため、赤外線カメラ13の前方には、遮光球13aが配置されている。
【0053】
以上により、太陽光発電エリア出力推定システム10は、例えば全天カメラで全天画像を撮像するよりも精度の高い画像を撮像することができ、当該精度の高い画像を用いて、発電エリアQの発電出力を正確に推定することができる。
【0054】
なお、可視光カメラ12及び赤外線カメラ13は、全天画像を撮像する全天カメラであってもよく、この場合、太陽光発電エリア出力推定システム10は、太陽追尾装置11を備えていなくともかまわない。
【0055】
次に、太陽光発電エリア出力推定装置100の構成について、説明する。
【0056】
図3は、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
【0057】
同図に示すように、太陽光発電エリア出力推定装置100は、照射領域取得部110、雲面積取得部120、発電出力算出部130及び記憶部140を備えている。
【0058】
照射領域取得部110は、発電エリアQ内の観測地点Pから天空を撮像することで得られる画像である天空画像上における、発電エリアQに太陽光を照射する領域である照射領域を取得する。つまり、照射領域取得部110は、可視光カメラ12が撮像した天空画像を取得し、当該天空画像上の照射領域を取得する。なお、照射領域を取得するとは、照射領域を示す情報を取得することをいう。
【0059】
図4及び図5は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が取得する照射領域を説明するための図である。
【0060】
図4に示すように、太陽光発電エリア出力推定システム10の可視光カメラ12は、観測地点Pから太陽20に向けて、撮像領域Sの天空画像を撮像することとする。ここで、撮像領域S内の領域Rは、照射領域を示している。つまり、照射領域Rは、図1における傾斜柱Aの撮像領域S内の領域であり、発電エリアQに太陽光を照射する天空画像上の領域である。
【0061】
このように、可視光カメラ12は、図5に示すような撮像領域Sの天空画像を撮像し、照射領域取得部110は、可視光カメラ12から当該天空画像を取得する。そして、照射領域取得部110は、当該天空画像上の照射領域Rを取得する。なお、照射領域取得部110が当該照射領域Rを取得する手法の詳細な説明については、後述する。
【0062】
また、傾斜柱A内に雲30が存在すれば(発電エリアQ内に影Kが存在すれば)、照射領域R内には、雲領域Cが撮像される。また、撮像領域Sの中心位置には遮光球12aが撮像され、太陽20からの直接光の入射を防いでいる。
【0063】
図3に戻り、雲面積取得部120は、照射領域取得部110が取得した照射領域R内に含まれる雲の面積である雲面積を取得する。具体的には、雲面積取得部120は、例えば図5に示す照射領域R内に雲領域Cの領域Mが含まれている場合には、当該領域Mの面積を雲面積として取得する。なお、照射領域取得部110が取得した照射領域とは、照射領域取得部110が取得した情報で示される照射領域のことをいう。
【0064】
発電出力算出部130は、雲面積取得部120が取得した雲面積を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する。具体的には、発電出力算出部130は、照射領域Rの面積に対する雲面積の比率に換算係数を乗じて、発電エリアQの発電出力の低下率を算出することにより、発電エリアQの発電出力を算出する。なお、発電出力算出部130が発電エリアQの発電出力を算出する手法の詳細な説明については、後述する。
【0065】
記憶部140は、発電エリアQの発電出力を推定するためのデータなどを記憶しているメモリである。記憶部140は、例えば、天空画像、照射領域、雲面積や換算係数などの情報を記憶している。
【0066】
例えば、照射領域取得部110は、可視光カメラ12から天空画像を取得して、記憶部140に記憶させたり、取得した照射領域を記憶部140に記憶させたりする。また、雲面積取得部120は、照射領域取得部110が取得した照射領域を記憶部140から読み出したり、取得した雲面積を記憶部140に記憶させたりする。また、発電出力算出部130は、雲面積取得部120が取得した雲面積を記憶部140から読み出したり、取得した換算係数を記憶部140に記憶させたりする。
【0067】
なお、太陽光発電エリア出力推定装置100は、上記の構成の他に、キーボードやマウス等の入力部や、液晶ディスプレイ等の表示部なども備えていることにしても良い。
【0068】
次に、太陽光発電エリア出力推定装置100が発電エリアQの発電出力を推定する処理(太陽光発電エリア出力推定方法)について、説明する。
【0069】
図6は、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置100が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0070】
同図に示すように、まず、照射領域取得部110は、発電エリアQ内の観測地点Pから撮像された天空画像上における照射領域を取得する(S102)。この照射領域取得部110が照射領域を取得する処理(照射領域取得ステップ)について、以下に詳細に説明する。
【0071】
図7は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が照射領域を取得する処理の一例を示すフローチャートである。
【0072】
同図に示すように、まず、照射領域取得部110は、可視光カメラ12から天空画像を取得する(S202)。つまり、照射領域取得部110は、可視光カメラ12が撮像した天空画像を取得する。
【0073】
図8及び図9は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が取得する天空画像を説明するための図である。
【0074】
まず、図8に示すように、観測地点Pの上空に、低層雲31と高層雲32とが存在することとする。ここで、低層雲31は、一部が、図1に示したような発電エリアQ内に太陽光を照射する仮想の傾斜柱A内に存在している。また、高層雲32は、傾斜柱A内には存在していない。つまり、低層雲31のみが、発電エリアQ内に影Kを形成している。
【0075】
ここで、同図の撮像領域S1は、太陽光発電エリア出力推定システム10の可視光カメラ12が撮像する低層雲31の高さに対応した撮像領域であり、撮像領域S2は、可視光カメラ12が撮像する高層雲32の高さに対応した撮像領域である。
【0076】
また、撮像領域S1内の照射領域R1は、低層雲31の高さに対応した傾斜柱A内の照射領域であり、撮像領域S2内の照射領域R2は、高層雲32の高さに対応した傾斜柱A内の照射領域である。
【0077】
そして、図9に示すように、低層雲31及び高層雲32は、例えば、撮像領域S1内に雲領域C1及び雲領域C2として投影することができる。このように、照射領域取得部110は、雲領域C1及び雲領域C2を含む撮像領域S1の天空画像を取得する。
【0078】
図7に戻り、次に、照射領域取得部110は、赤外線カメラ13から赤外線画像を取得する(S204)。つまり、照射領域取得部110は、赤外線カメラ13が撮像した赤外線画像を取得する。
【0079】
具体的には、図9に示したように、太陽光発電エリア出力推定システム10の赤外線カメラ13は、可視光カメラ12と同様に、観測地点Pから雲領域C1及び雲領域C2を含む赤外線画像を撮像し、照射領域取得部110は、当該赤外線画像を取得する。
【0080】
そして、照射領域取得部110は、赤外線画像に含まれる雲画像について、雲底の温度を取得する(S206)。つまり、照射領域取得部110は、赤外線画像に含まれる雲領域C1及び雲領域C2について、雲領域C1及び雲領域C2における画像を解析することで、雲底の温度を取得する。
【0081】
そして、照射領域取得部110は、赤外線画像に含まれる雲画像について、雲の高度を算出する(S208)。つまり、照射領域取得部110は、赤外線画像に含まれる雲領域C1及び雲領域C2について、雲領域C1及び雲領域C2における雲底の高度を算出する。
【0082】
ここで、高度が10km以内の対流圏においては、高度が100m上昇すると、大気温度は約0.6度低下する。このため、照射領域取得部110は、観測地点Pでの大気温度と取得した雲底の温度とを比較し、温度が0.6度低下するたびに高度が100m上昇するとして、当該雲底の高度を算出する。
【0083】
このように、照射領域取得部110は、観測地点Pから撮像された赤外線画像から得られる雲底の温度を用いて、雲の高度を算出する。
【0084】
そして、照射領域取得部110は、太陽追尾装置11から太陽の高度角を取得する(S210)。つまり、太陽追尾装置11は、常に太陽の高度角を把握して太陽を追尾しているので、照射領域取得部110は、太陽追尾装置11から、図2に示された太陽20の高度角である角度θを取得する。
【0085】
そして、照射領域取得部110は、照射領域を生成する(S212)。以下に、照射領域取得部110が照射領域を生成する手法について、詳細に説明する。
【0086】
まず、照射領域取得部110は、照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、外形が小さい照射領域を生成する。
【0087】
図10は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が取得する高度の異なる照射領域を説明するための図である。
【0088】
ここで、同図に示す照射領域R1は、低層雲31の高さに対応した撮像領域S1内の照射領域である。また、照射領域R3は、図9に示した照射領域R2を撮像領域S1内に投影することで示される領域である。つまり、照射領域R3は、高層雲32の高さに対応した照射領域R2を撮像領域S1内に投影したものである。
【0089】
このため、照射領域取得部110は、低層雲31の高さに対応した照射領域として照射領域R1を生成し、高層雲32の高さに対応した照射領域として照射領域R3を生成する。ここで、照射領域取得部110は、雲の高度に反比例した大きさの照射領域を生成する。
【0090】
つまり、低層雲31の高度をH1とし、高層雲32の高度をH2とし、照射領域R1の横方向の幅をW1とし、照射領域R3の横方向の幅をW2とした場合、照射領域取得部110は、以下の式1を用いて当該W2を算出する。
【0091】
W2=W1×H1/H2 (式1)
【0092】
また、照射領域取得部110は、照射領域R3の縦方向の幅についても同様に、照射領域R1の縦方向の幅にH1/H2を乗じることで、算出する。なお、横方向とは、天空画像に含まれる画像の水平方向を示す方向であり、縦方向とは、天空画像内の当該横方向に垂直な方向である。つまり、上方が天空、下方が地上となる方向が縦方向である。
【0093】
このようにして、照射領域取得部110は、照射領域R1に対して照射領域R3を生成することができる。
【0094】
ここで、照射領域取得部110は、低層雲31及び高層雲32の高度を用いるのではなく、観測地点Pから低層雲31及び高層雲32までの距離を算出し、当該距離を用いて、照射領域を生成することにしてもよい。
【0095】
図11は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が雲までの距離を算出する手法を説明するための図である。
【0096】
同図に示すように、太陽光発電エリア出力推定装置100の照射領域取得部110は、可視光カメラ12または赤外線カメラ13が撮像した画像に含まれる太陽20の位置と雲30の位置とから、太陽20と雲30との上下画角差αを算出する。
【0097】
そして、照射領域取得部110は、太陽追尾装置11から取得した太陽20の高度角θから、上下画角差αを差し引くことで、雲30の高度角βを算出する。そして、照射領域取得部110は、雲30の高度Hから、以下の式2を用いて、観測地点Pと雲30との直線距離Dを算出する。
【0098】
D=H/sinβ (式2)
【0099】
このようにして、照射領域取得部110は、観測地点Pと低層雲31との直線距離D1と、観測地点Pと高層雲32との直線距離D2とを算出し、以下の式3を用いて、照射領域R3の横方向の幅W2を算出する。
【0100】
W2=W1×D1/D2 (式3)
【0101】
また、照射領域取得部110は、照射領域R3の縦方向の幅についても同様に、照射領域R1の縦方向の幅にD1/D2を乗じることで、算出する。このようにして、照射領域取得部110は、照射領域R1に対して照射領域R3を生成する。
【0102】
また、照射領域取得部110は、太陽の高度角が小さい(高度が低い)ほど、大きい圧縮率で縦方向に圧縮された照射領域を取得する。
【0103】
図12及び図13は、本発明の実施の形態に係る照射領域取得部110が取得する高度角の異なる照射領域を説明するための図である。
【0104】
ここで、これらの図に示す照射領域R4は、観測地点Pから見た場合の太陽20の高度が、照射領域R1よりも低い場合に対応した撮像領域S3内の照射領域である。つまり、照射領域R4は、照射領域R1よりも大きい圧縮率で縦方向に圧縮された照射領域である。このため、照射領域取得部110は、太陽20の高度角が小さい場合に対応した照射領域として照射領域R4を生成する。
【0105】
具体的には、照射領域R1における太陽20の高度角をθ1、照射領域R4における太陽20の高度角をθ2とした場合、図13に示すように、照射領域取得部110は、照射領域R1の縦方向の幅をW3、照射領域R4の縦方向の幅をW4として、以下の式4を用いて、照射領域R4の縦方向の幅W4を算出する。
【0106】
W4=W1×sinθ2/sinθ1 (式4)
【0107】
このように、照射領域取得部110は、太陽20の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された照射領域を生成する。なお、この場合、照射領域は、横方向については、圧縮されない。
【0108】
以上のように、照射領域取得部110は、照射領域内に含まれると想定される雲の高度ごとに、照射領域を生成し、取得する。
【0109】
なお、照射領域取得部110は、円形または楕円形の照射領域を取得することとしたが、照射領域の形状は四角形状など、発電エリアQの形状に対応した形状であればよい。つまり、照射領域取得部110は、照射領域の形状にかかわらず、上記のように縦方向または横方向に圧縮または伸長された照射領域を取得する。
【0110】
以上により、照射領域取得部110が照射領域を取得する処理(図6のS102:照射領域取得ステップ)は、終了する。
【0111】
図6に戻り、次に、雲面積取得部120は、照射領域取得部110が取得した照射領域内に含まれる雲の面積である雲面積を取得する(S104)。ここで、太陽光発電エリア出力推定装置100が現在の発電出力を推定する場合には、雲面積取得部120は、現在の雲面積を取得する。また、太陽光発電エリア出力推定装置100が将来の発電出力を推定する場合には、雲面積取得部120は、当該将来の雲面積を取得する。
【0112】
このように、雲面積取得部120は、所定時刻での雲面積を取得する。この雲面積取得部120が所定時刻での雲面積を取得する処理(雲面積取得ステップ)について、以下に詳細に説明する。
【0113】
図14A、図14B及び図15は、本発明の実施の形態に係る雲面積取得部120が所定時刻での雲面積を取得する処理を説明するための図である。
【0114】
図14Aに示すように、例えば撮像領域S1内に投影された低層雲31の雲領域C1は、低層雲31が移動することで、移動する。このため、雲面積取得部120は、異なる時刻で撮像された複数の天空画像における雲領域C1の位置から、雲領域C1の移動方向及び速さを算出する。
【0115】
そして、雲面積取得部120は、現在の雲領域C1の位置と、算出した雲領域C1の移動方向及び速さとを用いて、例えば10分後や20分後など所定時刻での雲面積を算出する。
【0116】
具体的には、図14Bに示すように、雲面積取得部120は、算出した雲領域C1の移動方向及び速さとから、現在の照射領域R1の位置から、当該移動方向とは逆方向に当該速さで照射領域R1を移動させる。そして、雲面積取得部120は、移動させた照射領域(同図に示す照射領域R0)と雲領域C1とが重なっている部分の面積を、所定時刻での雲面積として算出する。
【0117】
このように、雲面積取得部120は、現在の雲の位置と、雲の移動方向及び速さとから、所定時刻での雲面積を算出することで、所定時刻での雲面積を取得する。
【0118】
また、雲面積取得部120は、照射領域取得部110が取得した照射領域ごとに、雲面積を取得する。
【0119】
例えば、図15に示すように、雲面積取得部120は、低層雲31に対応した雲面積として、照射領域R1と雲領域C1とが重なっている部分の領域M1の面積を取得し、高層雲32に対応した雲面積として、照射領域R3と雲領域C2とが重なっている部分の領域M2の面積を取得する。
【0120】
このように、雲面積取得部120は、複数の照射領域について、雲面積を取得する。
【0121】
以上により、雲面積取得部120が所定時刻での雲面積を取得する処理(図6のS104:雲面積取得ステップ)は、終了する。
【0122】
図6に戻り、次に、発電出力算出部130は、雲面積取得部120が取得した雲面積を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する(S106)。この発電出力算出部130が発電エリアQの発電出力を算出する処理(発電出力算出ステップ)について、以下に詳細に説明する。
【0123】
図16は、本発明の実施の形態に係る発電出力算出部130が発電エリアQの発電出力を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【0124】
同図に示すように、まず、発電出力算出部130は、照射領域取得部110が取得した全ての照射領域について、以下の処理(S304〜S308)を実施する(ループ1:S302〜S310)。
【0125】
まず、発電出力算出部130は、対象とする照射領域について、当該照射領域の面積を取得する(S304)。例えば、発電出力算出部130は、天空画像を解析し、当該照射領域の面積を算出することで、当該照射領域の面積を取得する。
【0126】
そして、発電出力算出部130は、対象とする照射領域に対応する換算係数を取得する(S306)。ここで、換算係数とは、当該照射領域内の雲によって太陽光が遮断される割合を示す0から1の間の数値であり、雲によって太陽光が遮断される場合に換算係数を1とし、遮断されない場合には換算係数を0とする。
【0127】
具体的には、発電出力算出部130は、当該照射領域内の雲画像の明度が高いほど、または照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出する。
【0128】
つまり、当該照射領域内の雲画像の明度が高い場合には、太陽光が雲を透過する割合が大きくなるので、発電出力算出部130は、当該照射領域内の雲画像の明度が高いほど、換算係数が小さくなるように換算係数を算出する。また、当該照射領域内に含まれる雲の高度が高い場合には、太陽光が雲を透過する割合が大きくなるので、発電出力算出部130は、当該照射領域内の雲画像の明度が高いほど、換算係数が小さくなるように換算係数を算出する。
【0129】
そして、発電出力算出部130は、対象とする照射領域における発電出力の低下率を算出する(S308)。
【0130】
具体的には、発電出力算出部130は、照射領域の面積に対する雲面積の比率に換算係数を乗じて、発電エリアQの発電出力の低下率を算出する。例えば、照射領域R1の面積をr1、雲面積取得部120が取得した領域M1の雲面積をm1、換算係数をaとすると、発電出力算出部130は、以下の式5により、発電エリアQの発電出力の低下率t1を算出する。
【0131】
t1=a×m1/r1 (式5)
【0132】
なお、発電出力算出部130は、照射領域R1内の雲画像について、複数の換算係数を算出してもよく、この場合には、発電出力算出部130は、換算係数に対応した雲面積ごとに上記の式5の計算を行い、算出した結果を積算することで、低下率t1を算出する。
【0133】
以上のようにして、発電出力算出部130は、照射領域取得部110が取得した全ての照射領域について、上記の処理(S304〜S308)を繰り返し実施する(ループ1:S302〜S310)。
【0134】
次に、発電出力算出部130は、算出した低下率を積算し、発電エリアQの発電出力の低下率を算出する(S312)。
【0135】
つまり、発電出力算出部130は、照射領域ごとに、当該照射領域の面積に対する当該照射領域内の雲面積の比率に、当該照射領域に対応する換算係数を乗じて、当該照射領域における発電出力の低下率を算出し、算出した照射領域ごとの低下率を積算することで、発電エリアQの発電出力の低下率を算出する。
【0136】
例えば、図15に示す場合、発電出力算出部130は、照射領域R1において算出した低下率t1と、照射領域R3において算出した低下率t2とを加算することで、発電エリアQの発電出力の低下率T(=t1+t2)を算出する。
【0137】
そして、発電出力算出部130は、算出した発電エリアQの発電出力の低下率Tから、発電エリアQの発電出力Z1を算出する(S314)。つまり、発電出力算出部130は、発電エリアQ内に雲が存在しないと仮定した場合の発電エリアQの発電出力をZ0として、当該発電出力Z1を、以下の式6を用いて算出する。
【0138】
Z1=Z0×(1−T) (式6)
【0139】
このように、発電出力算出部130は、照射領域ごとの雲面積を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する。なお、雲面積取得部120が取得した雲面積が所定時刻での雲面積であれば、発電出力算出部130は、当該所定時刻での発電エリアQの発電出力を算出する。
【0140】
以上により、発電出力算出部130が発電エリアQの発電出力を算出する処理(図6のS106:発電出力算出ステップ)は、終了する。
【0141】
以上のように、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置100によれば、天空画像上の照射領域を取得して、取得した照射領域内に含まれる雲面積を取得し、当該雲面積を用いて、太陽光発電設備が設置された発電エリアQの発電出力を算出する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置100は、発電エリアQが広大であっても、照射領域内の雲面積から、当該発電エリアQ内に照射する太陽光の割合を把握することで、当該発電エリアQの発電出力を正確に算出することができる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0142】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度ごとに照射領域を取得し、取得した照射領域ごとに雲面積を取得して、当該照射領域ごとの雲面積を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する。ここで、様々な高度の雲が太陽光を遮ることとなるが、天空画像内の雲画像に対応した照射領域は、雲の高度によって異なった大きさの領域になる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度ごとに照射領域を取得して、取得した照射領域ごとに、照射領域内の雲面積から、発電エリアQ内に照射する太陽光の割合を把握することで、当該発電エリアQの発電出力を正確に算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0143】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度が高いほど、外形が小さい照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度が高い照射領域ほど小さい領域になるため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度が高いほど、外形が小さい照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0144】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度に反比例した大きさの照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度と照射領域の大きさとは反比例するため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、雲の高度に反比例した大きさの照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0145】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、赤外線画像から得られる雲底の温度を用いて、雲の高度を算出することで、照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、照射領域は高度によって異なった大きさの領域になるため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、赤外線画像から得られる雲底の温度から雲の高度を算出し、照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0146】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、太陽の高度角が小さいほど、大きい圧縮率で縦方向に圧縮された照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度角が小さいほど、照射領域は縦方向に大きく圧縮される。このため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、太陽の高度角が小さいほど大きく縦方向に圧縮された照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0147】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された照射領域を取得する。つまり、天空画像上においては、高度角をθとすれば、照射領域は縦方向にsinθ倍に圧縮される。このため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された照射領域を取得することで、正確に発電出力を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0148】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、現在の雲の位置と、雲の移動方向及び速さとから、所定時刻での雲面積を算出し、取得する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置100は、現在の雲の位置と雲の移動方向及び速さとを算出、または他の装置から取得することで、短時間先の所定時刻における雲面積を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、大規模の太陽光発電設備に対してでも、所定時刻における発電出力を正確に推定することができる。
【0149】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、照射領域の面積に対する雲面積の比率に換算係数を乗じて、発電エリアQの発電出力の低下率を算出することにより、発電エリアQの発電出力を算出する。つまり、照射領域の面積に対する雲面積の比率を用いて、発電エリアQ内への太陽光の照射が抑制される比率を算出することで、発電エリアQの発電出力の低下率を算出することができる。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、発電エリアQの発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0150】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、照射領域内の雲画像の明度が高いほど、または照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出することで、発電エリアQの発電出力を算出する。ここで、照射領域内の雲画像の明度が高い場合には、発電エリアQ内への太陽光の照射の抑制は小さくなり、また照射領域内に含まれる雲の高度が高い場合にも、発電エリアQ内への太陽光の照射の抑制は小さくなる。このため、太陽光発電エリア出力推定装置100は、当該雲画像の明度が高いほど、または当該雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出し、算出した換算係数を用いて、発電エリアQの発電出力を算出する。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、発電エリアQの発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0151】
また、太陽光発電エリア出力推定装置100は、照射領域ごとに、当該照射領域における発電出力の低下率を算出し、算出した当該低下率を積算することで、発電エリアQの発電出力の低下率を算出し、発電エリアQの発電出力を算出する。つまり、太陽光発電エリア出力推定装置100は、高度が異なる雲が存在する場合には、高度の異なる雲ごとに照射領域を取得し、取得した照射領域ごとに発電出力の低下率を算出し、積算することで、発電エリアQの発電出力の低下率を算出する。これにより、太陽光発電エリア出力推定装置100は、高度の異なる雲を考慮した発電出力を正確に算出することができるので、大規模の太陽光発電設備に対してでも、発電出力を正確に推定することができる。
【0152】
以上、本発明の実施の形態に係る太陽光発電エリア出力推定装置100及び太陽光発電エリア出力推定システム10について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0153】
また、本発明は、このような太陽光発電エリア出力推定装置100または太陽光発電エリア出力推定システム10として実現することができるだけでなく、当該太陽光発電エリア出力推定装置100に含まれる処理部が行う特徴的な処理をステップとする太陽光発電エリア出力推定方法としても実現することができる。また、太陽光発電エリア出力推定方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータに実行させるプログラムや集積回路として実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、大規模の太陽光発電設備に対してでも発電出力を正確に推定することができる太陽光発電エリア出力推定装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0155】
10 太陽光発電エリア出力推定システム
11 太陽追尾装置
12 可視光カメラ
12a 遮光球
13 赤外線カメラ
13a 遮光球
20 太陽
30 雲
100 太陽光発電エリア出力推定装置
110 照射領域取得部
120 雲面積取得部
130 発電出力算出部
140 記憶部
A 傾斜柱
C、C1、C2 雲領域
K 影
M、M1、M2 領域
P 観測地点
Q 発電エリア
R、R0、R1、R2、R3、R4 照射領域
S、S1、S2、S3 撮像領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電設備が設置されたエリアである発電エリアの発電出力を推定する太陽光発電エリア出力推定装置であって、
前記発電エリア内の観測地点から天空を撮像することで得られる画像である天空画像上における、前記発電エリアに太陽光を照射する領域である照射領域を取得する照射領域取得部と、
取得された前記照射領域内に含まれる雲の面積である雲面積を取得する雲面積取得部と、
取得された前記雲面積を用いて、前記発電エリアの発電出力を算出する発電出力算出部と
を備える太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項2】
前記照射領域取得部は、前記照射領域内に含まれると想定される雲の高度ごとに前記照射領域を取得し、
前記雲面積取得部は、取得された前記照射領域ごとに前記雲面積を取得し、
前記発電出力算出部は、取得された前記照射領域ごとの前記雲面積を用いて、前記発電エリアの発電出力を算出する
請求項1に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項3】
前記照射領域取得部は、前記照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、外形が小さい前記照射領域を取得する
請求項1または2に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項4】
前記照射領域取得部は、前記雲の高度に反比例した大きさの前記照射領域を取得する
請求項3に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項5】
前記照射領域取得部は、前記観測地点から撮像された赤外線画像から得られる雲底の温度を用いて、前記雲の高度を算出することで、前記照射領域を取得する
請求項2〜4のいずれか1項に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項6】
前記照射領域取得部は、太陽の高度角が小さいほど、大きい圧縮率で縦方向に圧縮された前記照射領域を取得する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項7】
前記照射領域取得部は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された前記照射領域を取得する
請求項6に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項8】
前記雲面積取得部は、現在の雲の位置と、雲の移動方向及び速さとから、所定時刻での前記雲面積を算出することで、前記所定時刻での前記雲面積を取得する
請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項9】
前記発電出力算出部は、前記照射領域の面積に対する前記雲面積の比率に換算係数を乗じて、前記発電エリアの発電出力の低下率を算出することにより、前記発電エリアの発電出力を算出する
請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項10】
前記発電出力算出部は、前記照射領域内の雲画像の明度が高いほど、または前記照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出することで、前記発電エリアの発電出力を算出する
請求項9に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項11】
前記発電出力算出部は、
前記照射領域ごとに、当該照射領域の面積に対する当該照射領域内の雲面積の比率に、当該照射領域に対応する換算係数を乗じて、当該照射領域における発電出力の低下率を算出し、
算出した前記照射領域ごとの低下率を積算することで、前記発電エリアの発電出力の低下率を算出し、前記発電エリアの発電出力を算出する
請求項9または10に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽光発電エリア出力推定装置と、
前記観測地点に設置された、太陽を追尾する太陽追尾装置と、
前記太陽追尾装置に設けられ、太陽に向けて天空を撮像することで前記天空画像を生成する撮像装置と
を備える太陽光発電エリア出力推定システム。
【請求項13】
太陽光発電設備が設置されたエリアである発電エリアの発電出力を推定する太陽光発電エリア出力推定方法であって、
前記発電エリア内の観測地点から天空を撮像することで得られる画像である天空画像上における、前記発電エリアに太陽光を照射する領域である照射領域を取得する照射領域取得ステップと、
取得された前記照射領域内に含まれる雲の面積である雲面積を取得する雲面積取得ステップと、
取得された前記雲面積を用いて、前記発電エリアの発電出力を算出する発電出力算出ステップと
を含む太陽光発電エリア出力推定方法。
【請求項14】
請求項13に記載の太陽光発電エリア出力推定方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
太陽光発電設備が設置されたエリアである発電エリアの発電出力を推定する太陽光発電エリア出力推定装置であって、
前記発電エリア内の観測地点から天空を撮像することで得られる画像である天空画像上における、前記発電エリアに太陽光を照射する領域である照射領域を取得する照射領域取得部と、
取得された前記照射領域内に含まれる雲の面積である雲面積を取得する雲面積取得部と、
取得された前記雲面積を用いて、前記発電エリアの発電出力を算出する発電出力算出部と
を備える太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項2】
前記照射領域取得部は、前記照射領域内に含まれると想定される雲の高度ごとに前記照射領域を取得し、
前記雲面積取得部は、取得された前記照射領域ごとに前記雲面積を取得し、
前記発電出力算出部は、取得された前記照射領域ごとの前記雲面積を用いて、前記発電エリアの発電出力を算出する
請求項1に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項3】
前記照射領域取得部は、前記照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、外形が小さい前記照射領域を取得する
請求項1または2に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項4】
前記照射領域取得部は、前記雲の高度に反比例した大きさの前記照射領域を取得する
請求項3に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項5】
前記照射領域取得部は、前記観測地点から撮像された赤外線画像から得られる雲底の温度を用いて、前記雲の高度を算出することで、前記照射領域を取得する
請求項2〜4のいずれか1項に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項6】
前記照射領域取得部は、太陽の高度角が小さいほど、大きい圧縮率で縦方向に圧縮された前記照射領域を取得する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項7】
前記照射領域取得部は、太陽の高度角をθとして、縦方向にsinθ倍に圧縮された前記照射領域を取得する
請求項6に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項8】
前記雲面積取得部は、現在の雲の位置と、雲の移動方向及び速さとから、所定時刻での前記雲面積を算出することで、前記所定時刻での前記雲面積を取得する
請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項9】
前記発電出力算出部は、前記照射領域の面積に対する前記雲面積の比率に換算係数を乗じて、前記発電エリアの発電出力の低下率を算出することにより、前記発電エリアの発電出力を算出する
請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項10】
前記発電出力算出部は、前記照射領域内の雲画像の明度が高いほど、または前記照射領域内に含まれる雲の高度が高いほど、小さくなるように換算係数を算出することで、前記発電エリアの発電出力を算出する
請求項9に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項11】
前記発電出力算出部は、
前記照射領域ごとに、当該照射領域の面積に対する当該照射領域内の雲面積の比率に、当該照射領域に対応する換算係数を乗じて、当該照射領域における発電出力の低下率を算出し、
算出した前記照射領域ごとの低下率を積算することで、前記発電エリアの発電出力の低下率を算出し、前記発電エリアの発電出力を算出する
請求項9または10に記載の太陽光発電エリア出力推定装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽光発電エリア出力推定装置と、
前記観測地点に設置された、太陽を追尾する太陽追尾装置と、
前記太陽追尾装置に設けられ、太陽に向けて天空を撮像することで前記天空画像を生成する撮像装置と
を備える太陽光発電エリア出力推定システム。
【請求項13】
太陽光発電設備が設置されたエリアである発電エリアの発電出力を推定する太陽光発電エリア出力推定方法であって、
前記発電エリア内の観測地点から天空を撮像することで得られる画像である天空画像上における、前記発電エリアに太陽光を照射する領域である照射領域を取得する照射領域取得ステップと、
取得された前記照射領域内に含まれる雲の面積である雲面積を取得する雲面積取得ステップと、
取得された前記雲面積を用いて、前記発電エリアの発電出力を算出する発電出力算出ステップと
を含む太陽光発電エリア出力推定方法。
【請求項14】
請求項13に記載の太陽光発電エリア出力推定方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−68429(P2013−68429A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205217(P2011−205217)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
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