太陽光発電システム用ケーブル及びその製造方法
【課題】従来の無酸素銅(OFC)、タフピッチ銅(TPC)に比して高い導電性を備え、かつ従来のOFCに比して高い屈曲寿命を有する太陽光発電システム用ケーブルを提供する。
【解決手段】本発明に係る太陽光発電システム用ケーブルは、導体と、その外周に被覆された絶縁層と、その絶縁層の外周に被覆されたシースとを有する太陽光発電システム用ケーブルであり、その導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択された添加元素を含み残部が銅及び不可避的不純物からなるものであり、その導電率が101.5%以上であることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る太陽光発電システム用ケーブルは、導体と、その外周に被覆された絶縁層と、その絶縁層の外周に被覆されたシースとを有する太陽光発電システム用ケーブルであり、その導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択された添加元素を含み残部が銅及び不可避的不純物からなるものであり、その導電率が101.5%以上であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い導電性を備え、かつ軟質材においても高い屈曲寿命を有する軟質希薄銅合金材料を用いた太陽光発電システム用ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システム用(PV)ケーブルには、電気用軟銅線のより線を導体とした単心の架橋ポリエチレン絶縁ビニルシース(CV)や耐燃性ポリエチレンシース(CE)ケーブルが使用されている。
【0003】
太陽光発電システム用(PV)ケーブルに使用する電気用軟銅線撚線には、電力への変換効率の向上を図るため、高い導電性を有する軟質銅線が望まれている。
【0004】
また、太陽光発電システムに用いられるケーブルは、過酷な曲げ、ねじれ、引張りなどが組み合わさった外力が繰り返し負荷される環境下で使用されているため、高い屈曲寿命を有する、軟質銅線が望まれている。
【0005】
今日までに、高導電性および耐屈曲性を維持する銅材料の開発が進められている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
例えば、特許文献1に係る発明は、引張強さ、伸び及び導電率が良好な耐屈曲ケーブル用導体に関する発明であり、特に純度99.99wt%以上の無酸素銅に、純度99.99wt%以上のインジウムを0.05〜0.70mass%、純度99.9wt%以上のPを0.0001〜0.003mass%の濃度範囲で含有させてなる銅合金を線材に形成した耐屈曲ケーブル用導体について記載されている。
【0007】
また、特許文献2に係る発明には、インジウムが0.1〜1.0wt%、硼素が0.01〜0.1wt%、残部が銅である耐屈曲性銅合金線について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−363668号公報
【特許文献2】特開平9−256084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、あくまでも硬質銅線に関する発明であり、耐
屈曲性に関する具体的な評価はされておらず、より耐屈曲性にすぐれる軟質銅線について
の検討は何等なされていない。また、添加元素の量が多いため、導電性が低下してしまう。軟質銅線に関しては、まだ十分に検討がなされたとはいえない。
【0010】
また、特許文献2に係る発明は、軟質銅線に関する発明であるが、特許文献1に係る発明と同様に、添加元素の添加量が多いため、導電性が低下してしまう。
【0011】
一方で、原料となる銅材料として無酸素銅(OFC)などの高導電性銅材を選択することで、高い導電性を確保することが考えられる。
【0012】
しかしながら、この無酸素銅(OFC)を原料とし、導電性を維持すべく他の元素を添
加せずに使用した場合には、銅荒引線の加工度をあげて伸線することにより無酸素銅線内
部の結晶組織を細かくすることによって耐屈曲性を向上させるとする考え方も有効かもし
れないが、この場合には、伸線加工による加工硬化により硬質線材としての用途には適し
ているが、軟質線材への適用ができないという問題がある。
【0013】
太陽光発電システム用(PV)ケーブルに使用されている電気用軟銅線撚線素材としては、一般的にタフピッチ銅(TPC)、前述の無酸素銅(OFC)などであり、電導率は99パーセント程度であった。従って、電力へ変換する際のロスが大きかった。
【0014】
近年、環境保全の機運の高まりもあり、太陽光エネルギーの有効活用の観点から、更なる太陽電池の発電効率化が望まれており、これらタフチッピ銅又は無酸素銅に代わる更なる高導電性材料の開発が急がれている。
【0015】
また、太陽光発電システム用(PV)ケーブルは、狭い箇所に小さな曲げ半径での敷設せざるを得ない場合があり、折り曲げや屈曲箇所のストレス、ダメージに起因する電気的悪影響を及ぼすという問題がある。
【0016】
そこで、本発明は、従来のOFC素材、TPC素材に比して高い導電性を備え、高い変換効率を有し、かつ従来のOFC素材に比して高い屈曲寿命を有する太陽光発電システム用(PV)ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、導体と、その外周に被覆された絶縁層と、前記絶縁層の外周に被覆されたシースとを有する太陽光発電システム用ケーブルにおいて、
前記導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択された添加元素を含み残部が銅及び不可避的不純物からなるものであり、その導電率が101.5%以上であることを特徴とする太陽光発電システム用ケーブルを提供する。
【0018】
また、導体と、その外周に被覆された絶縁層と、前記絶縁層の外周に被覆されたシースとを有する太陽光発電システム用ケーブルにおいて、前記導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Ti4〜25mass ppm、硫黄3〜12mass ppmを含み、残部が不可避的不純物及び銅からなり、その導電率が101.5%以上であることを特徴とする太陽光発電システム用ケーブルを提供する。
【0019】
また、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、添加元素を含み、残部が不可避的不純物及び銅である希薄銅合金材料を、SCR連続鋳造圧延により、1100℃以上1320℃以下で鋳造し、この鋳造材からワイヤロッドを作製し、そのワイヤロッドを最初の圧延ロールでの温度が880℃以下、最終圧延ロールでの温度が550℃以上の条件で熱間圧延して、これを伸線して導体を形成する工程と、前記導体の外周に絶縁層を形成する工程と、その絶縁層の外周に樹脂を被覆してシース層を形成する工程とを備えることを特徴とする太陽光発電システム用ケーブルの製造方法を提供する。
【0020】
さらに、前記添加元素は、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択されたことを特徴とすることができる。
【0021】
また、前記添加元素はTiであり、Tiを4〜25mass ppm、硫黄3〜12mass ppmを含むことを特徴とすることができる。
【0022】
さらにまた、前記導体は、その導電率が101.5%IACS以上であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来のOFC素材、TPC素材に比して高い導電性を備え、高い変換効率を有し、かつ従来のOFC素材に比して高い屈曲寿命を有する太陽光発電システム用(PV)ケーブルを得ることができるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の太陽光発電システム用(PV)ケーブルを示す図である。
【図2】TiS粒子のSEM像を示す図である。
【図3】図2の分析結果を示す図である。
【図4】TiO2粒子のSEM像を示す図である。
【図5】図4の分析結果を示す図である。
【図6】Ti−O−S粒子のSEM像を示す図である。
【図7】図6の分析結果を示す図である。
【図8】屈曲疲労試験の概略を示す図である。
【図9】比較材14と実施材7における屈曲寿命を測定したグラフである。
【図10】比較材15と実施材8における屈曲寿命を測定したグラフである。
【図11】比較材15の幅方向における断面組織の写真である。
【図12】実施材8の幅方向における断面組織の写真である。
【図13】試料の表層における平均結晶粒サイズの測定方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な一実施の形態を詳述する。
【0026】
本発明の太陽光発電システム用ケーブルは、図1に示す様に、導体と、その外周に被覆された絶縁層と、前記絶縁層の外周に被覆されたシースとを有するケーブルである。この導体の素材には、高い導電性と高い屈曲寿命が望まれている。そこで、先ず、本発明の目的は、導体の素材として、導電率101.5%IACS(万国標準軟銅(International Anneld Copper Standard)抵抗率1.7241×10−8Ωmを100%とした導電率)を満足する軟質型銅材としての軟質希薄銅合金材料を得ることにある。また、副次的な目的は、SCR連続鋳造設備を用い、表面傷が少なく、製造範囲が広く、安定生産が可能である。また、ワイヤロッドに対する加工度90%(例えばφ8mm→φ2.6mm)での軟化温度が148℃以下の材料の開発にある。
【0027】
高純度銅(6N、純度99.9999%)に関しては、加工度90%での軟化温度は130℃である。したがって安定生産が可能な130℃以上で148℃以下の軟化温度で軟質材の導電率が101.5%IACS以上である軟質銅を安定して製造できる軟質希薄銅合金材料としての素材とその製造条件を求めることを検討した。
【0028】
ここで、酸素濃度1〜2mass ppmの高純度銅(4N)を用い、実験室にて小型連続鋳造機(小型連鋳機)を用いて、チタン(Ti)を数mass ppm添加した溶湯から製造したφ8mmのワイヤロッドをφ2.6mm(加工度90%)にして軟化温度を測ると160〜168℃であり、これ以上低い軟化温度にはならない。また、導電率は、101.7%IACS程度である。よって、酸素濃度を低くして、Tiを添加しても、軟化温度を下げることができず、また高純度銅(6N)の導電率102.8%IACSよりも悪くなることがわかった。
【0029】
この原因は、溶湯の製造中に不可避的不純物として、硫黄を数mass ppm以上含
み、この硫黄とチタンとでTiS等の硫化物が十分形成されないために、軟化温度が下がらないものと推測される。
【0030】
そこで、本発明では、軟化温度を下げることと、導電率を向上させるために、2つの方
策を検討し、2つの効果を合わせることで目標を達成した。
【0031】
(a)素材の酸素濃度を2mass ppmを超える量に増やしてチタンを添加する。これにより、先ず溶銅中ではTiSとチタン酸化物(TiO2)やTi−O−S粒子が形成されると考えられる(図2、図4のSEM像と図3、図5の分析結果参照)。なお、図3、図5、図7において、PtおよびPdは観察のための蒸着元素である。
【0032】
(b)次に熱間圧延温度を、通常の銅の製造条件(950〜600℃)よりも低く設定
(880〜550℃)することで、銅中に転位を導入し、硫黄(S)が析出し易いようにする。これによって、転位上へのSの析出又はチタンの酸化物(TiO2)を核としてSを析出させ、その一例として溶銅と同様Ti−O−S粒子等を形成させる(図6のSEM像と、図7の分析結果参照)。
【0033】
図2〜7は、表1の実施例1の上から三段目に示す酸素濃度、硫黄濃度、Ti濃度をもつφ8mmの銅線(ワイヤロッド)の横断面をSEM観察及びEDX分析にて評価したものである。観察条件は、加速電圧15keV、エミッション電流10μAとした。
【0034】
(a)と(b)により、銅中の硫黄が晶出と析出を行い、冷間伸線加工後に軟化温度と
導電率を満足する銅ワイヤロッドができる。
【0035】
次に、本発明では、SCR連続鋳造設備で製造条件の制限として(1)〜(4)を制限
した。
【0036】
(1)組成について
本実施の形態に係る太陽発電システム用ケーブルの導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択された添加元素を含み、残部が銅及び不可避的不純物からなるものであり、その導電率が101.5%以上であるものを用いる。
【0037】
添加元素として、Ti、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn及びCrからなる群から選択されたものを選んだ理由は、これらの元素は他の元素と結合しやすい活性元素であり、Sと結合しやすいためSをトラップすることができ、銅母材(マトリクス)を高純度化することができるためである。添加元素は1種以上含まれていてもよい。また、合金の性質に悪影響を及ぼすことのないその他の元素および不純物を合金に含有させることもできる。
【0038】
また、以下に説明する好適な実施の形態においては、酸素含有量が2を超え30mass ppm以下が良好であることを説明しているが、添加元素の添加量およびSの含有量によっては、合金の性質を備える範囲において、2を超え400mass ppmを含むことができる。
【0039】
導電率が101.5%IACS以上の軟質銅材を得る場合、不可避的不純物を含む純銅に、硫黄3〜12mass ppmと、酸素2を超え30mass ppm以下と、Ti4〜25mass ppmを含む軟質希薄銅合金材料でワイヤロッドとするのがよい。2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素を含有していることから、この実施の形態では、いわゆる低酸素銅(LOC)を対象としている。
【0040】
通常、純銅の工業的製造において、電気銅を製造する際に、硫黄が銅中に取り込まれてしまうため、硫黄を3mass ppm以下とするのは難しい。汎用電気銅の硫黄濃度上限は12mass ppmである。
【0041】
制御する酸素は、上述したように、少ないと軟化温度が下がり難いので2mass ppmを超える量とする。また酸素が多すぎると、熱間圧延工程で、表面傷が出やすくなるので30mass ppm以下とする。
【0042】
(2)分散している物質について
硫黄及びチタンは、TiO、TiO2、TiS、Ti−O−Sの形で化合物または、凝集物を形成し、残りのTiとSが固溶体の形で存在している。TiOのサイズが200n
m以下、TiO2は1000nm以下、TiSは200nm以下、Ti−O−Sは300nm以下で結晶粒内に分布している軟質希薄銅合金材料とする。結晶粒とは銅の結晶組織のことを意味する。
【0043】
但し、鋳造時の溶銅の保持時間や冷却状況により、形成される粒子サイズが変わるので
鋳造条件の設定も必要である。
【0044】
(3)鋳造条件について
SCR連続鋳造圧延により、鋳塊ロッドの加工度が90%(30mm)〜99.8%(5mm)でワイヤロッドを造る、一例として、加工度99.3%でφ8mmワイヤロッドを造る方法を用いる。
【0045】
(a)溶解炉内での溶銅温度は、1100℃以上1320℃以下とする。溶銅の温度が
高いとブローホールが多くなり、傷が発生するとともに粒子サイズが大きくなる傾向にあるので、1320℃以下とする。1100℃以上としたのは、銅が固まりやすく製造が安定しないためであるが、溶銅温度は、出来るだけ低い温度が望ましい。
【0046】
(b)熱間圧延温度は、最初の圧延ロールでの温度が880℃以下、最終圧延ロールで
の温度が550℃以上とする。
【0047】
通常の純銅製造条件と異なり、溶銅中での硫黄の晶出と熱間圧延中の硫黄の析出が本発
明の課題であるので、その駆動力である固溶限をより小さくするためには、溶銅温度と熱
間圧延温度を(a)、(b)とするのがよい。
【0048】
通常の熱間圧延温度は、最初の圧延ロールでの温度が950℃以下、最終圧延ロールで
の温度が600℃以上であるが、固溶限をより小さくするためには、本発明では、最初の
圧延ロールでの温度が880℃以下、最終圧延ロールでの温度が550℃以上に設定する。
【0049】
550℃以上にする理由は、この温度以下ではワイヤロッドの傷が多いので製品になら
ないためである。熱間圧延温度は、最初の圧延ロールでの温度が880℃以下、最終圧延
ロールでの温度が550℃以上で、できるだけ低い方が望ましい。こうすることで、軟化
温度(φ8〜φ2.6に加工後)が限りなく高純度銅(6N、軟化温度130℃)に近くなる。
【0050】
(c)直径φ8mmサイズのワイヤロッドの導電率が101.5%IACS以上であり、冷間伸線加工後のφ2.6mmの軟化温度が130℃〜148℃である軟質希薄銅合金線または板状材料を得ることができる。
【0051】
導電率は、無酸素銅のレベルで101.7%IACS程度であり、タフピッチ銅で101.2%IACS程度であり、高純度銅(6N)で102.8%IACSであるため、本発明の導体としては、低周波から高周波の電流を流すのに伝送ロスを少なくするためには、出来るだけ高純度銅(6N)に近い導電率であることが望ましく、101.5%IACS以上必要であり、軟化温度はその工業的価値から見て148℃以下である。Tiを添加しない場合は、160〜165℃である。高純度銅(6N)の軟化温度は127〜130℃であったので、得られたデータから限界値を130℃とする。このわずかな違いは、高純度銅(6N)にない不可避的不純物にある。
【0052】
(4)鋳造条件の制限
銅はシャフト炉で溶解の後、還元状態の樋になるように制御した、すなわち還元ガス(
CO)雰囲気の下で、希薄合金の構成元素の硫黄濃度、Ti濃度、酸素濃度を制御して鋳造し、圧延するワイヤロッドを安定して製造する方法がよい。銅酸化物の混入や粒子サイズが大きいので品質を低下させる。
【0053】
ここで、添加元素としてTiを選択した理由は次の通りである。
【0054】
(a)Tiは溶融銅の中で硫黄と結合し化合物を造りやすいためである。
【0055】
(b)Zrなど他の添加金属に比べて加工でき扱いやすい。
【0056】
(c)Nbなどに比べて安価である。
【0057】
(d)酸化物を核として析出しやすいからである。
【0058】
本発明の好適な実施の形態では添加元素として、Tiを選択したが、これに限定されるものではなく、Ti、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、N、Mn、及びCrからなる群から選択された添加元素としてもよい。
【0059】
以上により、本発明に係る軟質希薄銅合金材料は、溶融半田めっき材(線、板、箔)、軟質純銅、高導電率銅、やわらかい銅線として使用でき、焼鈍時のエネルギーを低減でき、生産性が高く、導電率、軟化温度、表面品質に優れた実用的な軟質希薄銅合金材料を得ることが可能となる。
【0060】
また、本発明に係る軟質希薄銅合金線の表面にめっき層を形成してもよい。めっき層としては、例えば、錫、ニッケル、銀を主成分とするものを適用可能であり、いわゆるPbフリーめっきを用いてもよい。
【0061】
また、本発明に係る軟質希薄銅合金線を複数本撚り合わせた軟質希薄銅合金撚線として使用することも可能である。
【0062】
また、本発明に係る軟質希薄銅合金線又は軟質希薄銅合金撚線の周りに、絶縁層を設けたケーブルとして使用することもできる。
【0063】
また、本発明に係る軟質希薄銅合金線を複数本撚り合わせて中心導体とし、中心導体の外周に絶縁体被覆を形成し、絶縁体被覆の外周に銅又は銅合金からなる外部導体を配置し、その外周にジャケット層を設けた同軸ケーブルとして使用することもできる。
【0064】
また、この同軸ケーブルの複数本をシールド層内に配置し、前記シールド層の外周にシ
ースを設けた複合ケーブルとして使用することもできる。
【0065】
また、上述の実施の形態では、SCR連続鋳造圧延法によりワイヤロッドを作製し、熱間圧延にて軟質材を作製する例で説明したが、双ロール式連続鋳造圧延法またはプロペルチ式連続鋳造圧延法により製造するようにしても良い。
【実施例】
【0066】
表1は実験条件と結果に関するものである。
【0067】
【表1】
【0068】
先ず、実験材として、表1に示した酸素濃度、硫黄濃度、Ti濃度で、φ8mmの銅線
(ワイヤロッド):加工度99.3%をそれぞれ作製した。φ8mmの銅線は、SCR連続鋳造圧延により、熱間圧延加工を施したものである。Tiは、シャフト炉で溶解された銅溶湯を還元ガス雰囲気で桶に流し、桶に流した銅溶湯を同じ還元ガス雰囲気の鋳造ポットに導き、この鋳造ポットにて、Tiを添加した後、これをノズルを通して鋳造輪と無端ベルトとの間に形成される鋳型にて鋳塊ロッドを作成した。この鋳塊ロッドを熱間圧延加工してφ8mmの銅線を作成したものである。その実験材を冷間伸線して、φ2.6mmのサイズにおける半軟化温度と導電率を測定し、またφ8mmの銅線における分散粒子サイズを評価した。
【0069】
酸素濃度は、酸素分析器(レコ(Leco;商標)酸素分析器)で測定した。硫黄、T
iの各濃度はICP発光分光分析器で分析した結果である。
【0070】
φ2.6mmのサイズにおける半軟化温度の測定は、400℃以下で各温度1時間の保
持後、水中急冷し、引張試験を実施しその結果から求めた。室温での引張試験の結果と4
00℃で1時間のオイルバス熱処理した軟質銅線の引張試験の結果を用いて求めた。この
2つの引張試験の引張強さを足して2で割った値を示す強度に対応する温度を半軟化温度
と定義し求めた。
【0071】
分散粒子のサイズは小さく沢山分布することが望ましい。その理由は、硫黄の析出サイトとして働くためサイズが小さく数が多いことが要求される。すなわち直径500nm以下の分散粒子が90%以上である場合を合格とした。ここに「サイズ」とは化合物のサイズであり、化合物の形状の長径と短径のうちの長径のサイズを意味する。また、「粒子」とは前記TiO、TiO2、TiS、Ti−O―Sのことを示す。また、「90%」とは、全体の粒子数に対しての該当粒子数の割合を示すものである。
【0072】
表1において、比較材1は、実験室でAr雰囲気において直径φ8mmの銅線を試作し
た結果であり、Tiを、0〜18mass ppm添加したものである。
【0073】
このTi添加で、Ti添加量ゼロの半軟化温度215℃に対して、13mass pp
mは160℃まで低下して最小となり、15,18mass ppmの添加で高くなって
おり、要望の軟化温度148℃以下にはならなかった。また、導電率102%以上を満足していないため、総合評価は×であった。
【0074】
そこで、次にSCR連続鋳造圧延法にて、酸素濃度を7〜8mass ppmに調整し
てφ8mm銅線(ワイヤロッド)の試作を行った。
【0075】
比較材2は、SCR連続鋳造圧延法で試作した中でTi濃度の少ないもの(0,2ma
ss ppm)であり、導電率は101.5%IACS以上であるが、半軟化温度が164,157℃であり、要求の148℃以下を満足しないので、総合評価で、×となった。
【0076】
実施材1については、酸素濃度と硫黄が、ほぼ一定(7〜8mass ppm、5ma
ss ppm)、Ti濃度の異なる(4〜25mass ppm)試作材の結果である。
【0077】
このTi濃度4〜25mass ppmの範囲では、軟化温度132℃以下であり、導
電率も101.5%IACS以上であり、分散粒子サイズも500nm以下の粒子が90%以上であり良好である。そしてワイヤロッドの表面もきれいであり、いずれも製品性能として満足している(総合評価○)。
【0078】
ここで、実施材1のうち上から3番目のTi濃度が13mass ppmのときに、導電率が最大値である102.4%IACSを示し、この濃度の周辺では、導電率は、僅かに低い値であった。これは、Tiが13mass ppmのときに、銅中の硫黄分を化合物として捕捉することで、高純度銅(6N)に近い導電率を示したためである。
【0079】
よって、酸素濃度を高くし、Tiを添加することで、半軟化温度と導電率の双方を満足
させることができる。
【0080】
比較材3は、Ti濃度が25mass ppmを超える試作材である。この比較材3は、半軟化温度は要望を満足しているが、導電率が101.5%IACSを下回っているため、総合評価は×であった。
【0081】
比較材4は、Ti濃度を60mass ppmと高くした試作材である。この比較材4
は、導電率は要望を満足しているが、半軟化温度は148℃以上であり、製品性能を満足
していない。さらにワイヤロッドの表面傷も多く、製品にすることは難しかった。よって、Tiの添加量は60mass ppm未満がよい。
【0082】
次に実施材2については、硫黄濃度を5mass ppmとし、Ti濃度を13〜10
mass ppmとし、酸素濃度を変えて、酸素濃度の影響を検討した試作材である。
【0083】
酸素濃度に関しては、2を超え30mass ppm以下まで、大きく濃度が異なる試作材とした。但し、酸素が2mass ppm未満は、生産が難しく安定した製造ができないため、総合評価は△とした。また酸素濃度を30mass ppmと高くしても半軟化温と導電率の双方を満足することがわかった。
【0084】
また比較材5に示すように、酸素が40mass ppmの場合には、ワイヤロッド
表面の傷が多く、製品にならない状況であった。
【0085】
よって、酸素濃度が2を超え30mass ppm以下の範囲とすることで、半軟化温度、導電率101.5%IACS以上、分散粒子サイズのいずれの特性も満足させることができ、またワイヤロッドの表面もきれいであり、いずれも製品性能を満足させることができる。
【0086】
次に実施材3は、それぞれ酸素濃度と硫黄濃度とを比較的同じ近い濃度とし、Ti濃度
を4〜20mass ppmと変えた試作材の例である。この実施材3においては、硫黄
が2mass ppmより少ない試作材は、その原料面から実現できなかったが、Tiと
硫黄の濃度を制御することで、半軟化温度と導電率の双方を満足させることができる。
【0087】
比較材6の硫黄濃度が18mass ppmで、Ti濃度が13mass ppmの場
合には、半軟化温度が162℃で高く、必要特性を満足できなかった。また、特にワイヤ
ロッドの表面品質が悪いので、製品化は難しかった。
【0088】
以上より、硫黄濃度が2〜12mass ppmの場合には、半軟化温度、導電率10
1.5%IACS以上、分散粒子サイズいずれの特性も満足しており、ワイヤロッドの表面もきれいですべての製品性能を満足することがわかった。
【0089】
また比較材7として高純度銅(6N)を用いた検討結果を示したが、半軟化温度127〜130℃であり、導電率も102.8%IACSであり、分散粒子サイズも、500nm以下の粒子はまったく認められなかった。
【0090】
【表2】
表2は、製造条件としての、溶融銅の温度と圧延温度を示したものである。
【0091】
比較材8は、溶銅温度が高めの1330〜1350℃で且つ圧延温度が950〜600
℃でφ8mmのワイヤロッドを試作した結果を示したものである。
【0092】
この比較材8は、半軟化温度と導電率は満足するものの、分散粒子のサイズに関しては、1000nm程度のものもあり500nm以上の粒子も10%を超えていた。よって、これは不適とした。
【0093】
実施材4は、溶銅温度が1200〜1320℃で且つ圧延温度が低めの880〜550
℃でφ8mmのワイヤロッドを試作した結果を示したものである。この実施材4について
は、ワイヤ表面品質、分散粒子サイズも良好で、総合評価は○であった。
【0094】
比較材9は、溶銅温度が1100℃で且つ圧延温度が低めの880〜550℃でφ8mmのワイヤロッドを試作した結果を示したものである。この比較材9は、溶銅温度が低い
ため、ワイヤロッドの表面傷が多く製品には適さなかった。これは、溶銅温度が低いため、圧延時に傷が発生しやすいためである。
【0095】
比較材10は、溶銅温度が1300℃で且つ圧延温度が高めの950〜600℃でφ8mmのワイヤロッドを試作した結果を示したものである。この比較材10は、熱間圧延温度が高いため、ワイヤロッドの表面品質が良いが、分散粒子サイズも大きなものがあり、総合評価は×となった。
【0096】
比較材11は、溶銅温度が1350℃で且つ圧延温度が低めの880〜550℃でφ8
mmのワイヤロッドを試作した結果を示したものである。この比較材11は、溶銅温度が
高いため、分散粒子サイズが大きなものがあり、総合評価は×となった。
【0097】
(軟質希薄銅合金線の軟質特性)
表3は、無酸素銅線を用いた比較材12と低酸素銅に13mass ppmのTiを含有した軟質希薄銅合金線を用いた実施材5とを試料とし、異なる焼鈍温度で1時間の焼鈍
を施したもののビッカース硬さ(Hv)を検証した表である。
【0098】
実施材5は、表1の実施材1に記載した合金組成と同じものを使用した。なお、試料としては、2.6mm径の試料を用いた。この表によると、焼鈍温度が400℃のときに比較材12と実施材5とのビッカース硬さ(Hv)は同等レベルとなり、焼鈍温度が600℃でも同等のビッカース硬さ(Hv)を示している。このことから、本発明の軟質希薄銅合金線は十分な軟質特性を有するとともに、無酸素銅線と比較しても、特に焼鈍温度が400℃を超える領域においては優れた軟質特性を備えていることがわかる。
【0099】
【表3】
(軟質希薄銅合金線の耐力及び屈曲寿命についての検討)
表4は、無酸素銅線を用いた比較材13と低酸素銅に13mass ppmのTiを含
有した軟質希薄銅合金線を用いた実施材6を試料とし、異なる焼鈍温度で1時間の焼鈍を
施したものの0.2%耐力値の推移を検証した表である。なお、試料としては、2.6m
m径の試料を用いた。
【0100】
この表によると、焼鈍温度が400℃のときに比較材13と実施材6の0.2%耐力値が同等レベルであり、焼鈍温度600℃では実施材6も比較材13もほぼ同等の0.2%耐力値となっていることがわかる。
【0101】
【表4】
つぎに、本発明に係る軟質希薄銅合金線は、屈曲寿命の高さが要求されるが、無酸素銅
線を用いた比較材14と低酸素銅にTiを添加した軟質希薄銅合金線を用いた実施材7に
おける屈曲寿命を測定した結果を図9に表す。ここでは試料としては、0.26mm径の
線材に対して焼鈍温度400℃で1時間の焼鈍を施したものを用い、比較材14は比較材
12と同様の成分組成であり、実施材7も実施材5(実施材1)と同様の成分組成のものを使用した。
【0102】
ここに、屈曲寿命の測定方法は、屈曲疲労試験により、行った。屈曲疲労試験は、荷重を負荷し、試料表面に引張と圧縮の繰返し曲げひずみを与える試験である。屈曲疲労試験は図8に示す様に、屈曲ヘッド4を用いて行う。試料5は、(A)のように曲げ治具6(リング)の間にセットし、クランプ7で把持し、荷重を負荷したまま、(B)のように治具が90度回転し曲げを与える。この操作で、曲げ治具に接している線材表面には、圧縮ひずみが、これに対応して反対側の表面には、引張ひずみが負荷される。その後、再び(A)の状態に戻る。次に(B)に示した向きと反対方向に90度回転し曲げを与える。この場合も、曲げ治具に接している線材表面には、圧縮ひずみが、これに対応して反対側の表面には、引張ひずみが負荷され(C)の状態になる。そして(C)から最初の状態(A)に戻る。この屈曲疲労1サイクル(A)(B)(A)(C)(A)に要する時間は4秒である。表面曲げ歪は以下の式により求めることができる。
【0103】
表面曲げ歪(%)=r/(R+r)×100(%)、R:素線曲げ半径(30mm)、r=素線半径
図9の実験データによると、本発明に係る実施材7は比較材14に比して高い屈曲寿命
を示した。
【0104】
また、無酸素銅線を用いた比較材15と低酸素銅にTiを添加した軟質希薄銅合金線を
用いた実施材8における屈曲寿命を測定した結果を図10に表す。ここでは試料としては、0.26mm径の線材に対して焼鈍温度600℃で1時間の焼鈍を施したものを用い、比較材15は比較材12と同様の成分組成であり、実施材8も実施材5(実施材1)と同様の成分組成のものを使用した。屈曲寿命の測定方法は、図8の測定方法と同様の条件により、行った。この場合も、本発明に係る実施材8は比較材15に比して高い屈曲寿命を示した。この結果は、いずれの焼鈍条件下においても実施材7、8の方が比較材14、15に比して0.2%耐力値が大きい値を示していたことに起因するものであると理解される。
【0105】
(軟質希薄銅合金線の結晶構造についての検討)
また、図11は、実施材8の試料の幅方向における断面組織の写真を表したものであり、図12は、比較材15の幅方向における断面組織の写真を表したものである。図11は、比較材15の結晶構造を示し、図12は実施材8の結晶構造を示す。これをみると、比較材15の結晶構造は、表面部から中央部にかけて全体的に大きさの等しい結晶粒が均一に並んでいることがわかる。これに対し、実施材8の結晶構造は、全体的に結晶粒の大きさがまばらであり、特筆すべきは、試料の断面方向の表面付近に薄く形成されている層における結晶粒サイズが内部の結晶粒サイズに比べて極めて小さくなっていることである。
【0106】
発明者らは、比較材15には形成されていない、表層に現れた微細結晶粒層が実施材8
の屈曲特性の向上に寄与しているものと考えている。
【0107】
このことは、通常であれば、焼鈍温度600℃で1時間の焼鈍処理を行えば、比較材1
5のように再結晶により均一に粗大化した結晶粒が形成されるものであると理解されるが、本発明の場合には、焼鈍温度600℃で1時間の焼鈍処理を行ってもなお、その表層に
は微細結晶粒層が残存していることから、軟質銅材でありながら、屈曲特性の良好な軟質
希薄銅合金材料が得られたものであると考えられる。
【0108】
そして、図11および図12に示す結晶構造の断面写真をもとに、実施材8および比較材15の試料の表層における平均結晶粒サイズを測定した。
【0109】
ここに、表層における平均結晶粒サイズの測定方法は、図13に示すように、0.26mm径の幅方向断面の表面から深さ方向に10μm間隔で50μmの深さまでの長さ1mmの線上の範囲での結晶粒サイズを測定した夫々の実測値を平均した値を表層における平均結晶粒サイズとした。
【0110】
測定の結果、比較材15の表層における平均結晶粒サイズは、50μmであったのに対し、実施材8の表層における平均結晶粒サイズは、10μmである点で大きく異なっていた。表層の平均結晶粒サイズが細かいことによって、屈曲疲労試験による亀裂の進展が抑制され、屈曲疲労寿命が延びたと考えられる(結晶粒サイズが大きいと結晶粒界に沿って亀裂が進展してしまうが、結晶粒サイズが小さいと亀裂の進展の方向が変わるため、進展
が抑制される)。このことが、上述のとおり、比較材と実施材との屈曲特性の面で大きな
相違を生じたものと考えられる。
【0111】
また、2.6mm径である実施材6、比較材13の表層における平均結晶粒サイズは、
2.6mm径の幅方向断面の表面から深さ方向に50μmの深さにおける長さ10mmの範囲での結晶粒サイズを測定した。
【0112】
測定の結果、比較材13の表層における平均結晶粒サイズは、100μmであったのに
対し、実施材6の表層における平均結晶粒サイズは、20μmであった。
【0113】
本発明の効果を奏するものとして、表層の平均結晶粒サイズの上限値としては、20μm以下のものが好ましく、製造上の限界値から5μm以上のものが想定される。
【0114】
(太陽光発電システム用ケーブルの実施形態について)
SCR連続鋳造圧延法で試作した前記実施材1(表1参照)のうち、上から3番目の素材を、溶銅温度1320℃で鋳造し、且つ圧延温度が880℃〜550℃でφ8mmのワイヤロッド(荒引線)を作成し、さらにこれを伸線加工してφ2.6mmの素線を得た後、更にφ0.6mm又はφ0.8mmまで冷間伸線を行い、素線を得た。
【0115】
これらの素線を7本より合わせたものを導体とし、図1に示す様に、その導体の外周に絶縁層を形成し、その絶縁層の外周に樹脂を被覆してシース層を形成して太陽光発電システム用ケーブルの製造した。
【0116】
ここで、絶縁層の形成には架橋ポリエチレンを使用し、シース層の形成には、ビニル混合物、又は耐燃性ポリエチレンを使用した。
【0117】
上記の実施形態において、銅素線として、上前記実施材1のうち、上から3番目の素材と同じものを使用することから、以下のような効果が認められる。
【0118】
導体1がTiを含み残部が不可避的不純物からなり、表面から50μm深さまでの表層における平均結晶粒サイズが20μm以下である軟質希薄銅合金線にすることで、従来のOFC素材およびTPC素材に比して、6N相当の高い導電性を備え、6Nよりコストを掛けずに太陽光発電システム用ケーブルを供給することができる。
【0119】
また、高導電率の導体を使用した太陽光発電システム用ケーブルは、導体抵抗が少なく、電流を多く流すことが出来るので、電力への変換時のロス率を低減させることが出来、変換効率を高める効果が期待出来る。
【0120】
また、本発明の太陽光発電システム用ケーブルは、従来のOFC素材に比して、OFCより優れた屈曲性をもつため、小さな曲げ半径での折り曲げに適しているといえる。
【0121】
よって、本発明の太陽光発電システム用ケーブルは、従来のOFC素材、TPC素材に比して高い導電性(導電率が101.5%以上)を備え、かつ従来のOFC素材に比して高い屈曲寿命を有するものである。
【符号の説明】
【0122】
1…導体、2…絶縁層、3…シース、4…屈曲ヘッド、5…試料、6…リング、7…クランプ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い導電性を備え、かつ軟質材においても高い屈曲寿命を有する軟質希薄銅合金材料を用いた太陽光発電システム用ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システム用(PV)ケーブルには、電気用軟銅線のより線を導体とした単心の架橋ポリエチレン絶縁ビニルシース(CV)や耐燃性ポリエチレンシース(CE)ケーブルが使用されている。
【0003】
太陽光発電システム用(PV)ケーブルに使用する電気用軟銅線撚線には、電力への変換効率の向上を図るため、高い導電性を有する軟質銅線が望まれている。
【0004】
また、太陽光発電システムに用いられるケーブルは、過酷な曲げ、ねじれ、引張りなどが組み合わさった外力が繰り返し負荷される環境下で使用されているため、高い屈曲寿命を有する、軟質銅線が望まれている。
【0005】
今日までに、高導電性および耐屈曲性を維持する銅材料の開発が進められている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
例えば、特許文献1に係る発明は、引張強さ、伸び及び導電率が良好な耐屈曲ケーブル用導体に関する発明であり、特に純度99.99wt%以上の無酸素銅に、純度99.99wt%以上のインジウムを0.05〜0.70mass%、純度99.9wt%以上のPを0.0001〜0.003mass%の濃度範囲で含有させてなる銅合金を線材に形成した耐屈曲ケーブル用導体について記載されている。
【0007】
また、特許文献2に係る発明には、インジウムが0.1〜1.0wt%、硼素が0.01〜0.1wt%、残部が銅である耐屈曲性銅合金線について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−363668号公報
【特許文献2】特開平9−256084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、あくまでも硬質銅線に関する発明であり、耐
屈曲性に関する具体的な評価はされておらず、より耐屈曲性にすぐれる軟質銅線について
の検討は何等なされていない。また、添加元素の量が多いため、導電性が低下してしまう。軟質銅線に関しては、まだ十分に検討がなされたとはいえない。
【0010】
また、特許文献2に係る発明は、軟質銅線に関する発明であるが、特許文献1に係る発明と同様に、添加元素の添加量が多いため、導電性が低下してしまう。
【0011】
一方で、原料となる銅材料として無酸素銅(OFC)などの高導電性銅材を選択することで、高い導電性を確保することが考えられる。
【0012】
しかしながら、この無酸素銅(OFC)を原料とし、導電性を維持すべく他の元素を添
加せずに使用した場合には、銅荒引線の加工度をあげて伸線することにより無酸素銅線内
部の結晶組織を細かくすることによって耐屈曲性を向上させるとする考え方も有効かもし
れないが、この場合には、伸線加工による加工硬化により硬質線材としての用途には適し
ているが、軟質線材への適用ができないという問題がある。
【0013】
太陽光発電システム用(PV)ケーブルに使用されている電気用軟銅線撚線素材としては、一般的にタフピッチ銅(TPC)、前述の無酸素銅(OFC)などであり、電導率は99パーセント程度であった。従って、電力へ変換する際のロスが大きかった。
【0014】
近年、環境保全の機運の高まりもあり、太陽光エネルギーの有効活用の観点から、更なる太陽電池の発電効率化が望まれており、これらタフチッピ銅又は無酸素銅に代わる更なる高導電性材料の開発が急がれている。
【0015】
また、太陽光発電システム用(PV)ケーブルは、狭い箇所に小さな曲げ半径での敷設せざるを得ない場合があり、折り曲げや屈曲箇所のストレス、ダメージに起因する電気的悪影響を及ぼすという問題がある。
【0016】
そこで、本発明は、従来のOFC素材、TPC素材に比して高い導電性を備え、高い変換効率を有し、かつ従来のOFC素材に比して高い屈曲寿命を有する太陽光発電システム用(PV)ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、導体と、その外周に被覆された絶縁層と、前記絶縁層の外周に被覆されたシースとを有する太陽光発電システム用ケーブルにおいて、
前記導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択された添加元素を含み残部が銅及び不可避的不純物からなるものであり、その導電率が101.5%以上であることを特徴とする太陽光発電システム用ケーブルを提供する。
【0018】
また、導体と、その外周に被覆された絶縁層と、前記絶縁層の外周に被覆されたシースとを有する太陽光発電システム用ケーブルにおいて、前記導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Ti4〜25mass ppm、硫黄3〜12mass ppmを含み、残部が不可避的不純物及び銅からなり、その導電率が101.5%以上であることを特徴とする太陽光発電システム用ケーブルを提供する。
【0019】
また、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、添加元素を含み、残部が不可避的不純物及び銅である希薄銅合金材料を、SCR連続鋳造圧延により、1100℃以上1320℃以下で鋳造し、この鋳造材からワイヤロッドを作製し、そのワイヤロッドを最初の圧延ロールでの温度が880℃以下、最終圧延ロールでの温度が550℃以上の条件で熱間圧延して、これを伸線して導体を形成する工程と、前記導体の外周に絶縁層を形成する工程と、その絶縁層の外周に樹脂を被覆してシース層を形成する工程とを備えることを特徴とする太陽光発電システム用ケーブルの製造方法を提供する。
【0020】
さらに、前記添加元素は、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択されたことを特徴とすることができる。
【0021】
また、前記添加元素はTiであり、Tiを4〜25mass ppm、硫黄3〜12mass ppmを含むことを特徴とすることができる。
【0022】
さらにまた、前記導体は、その導電率が101.5%IACS以上であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来のOFC素材、TPC素材に比して高い導電性を備え、高い変換効率を有し、かつ従来のOFC素材に比して高い屈曲寿命を有する太陽光発電システム用(PV)ケーブルを得ることができるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の太陽光発電システム用(PV)ケーブルを示す図である。
【図2】TiS粒子のSEM像を示す図である。
【図3】図2の分析結果を示す図である。
【図4】TiO2粒子のSEM像を示す図である。
【図5】図4の分析結果を示す図である。
【図6】Ti−O−S粒子のSEM像を示す図である。
【図7】図6の分析結果を示す図である。
【図8】屈曲疲労試験の概略を示す図である。
【図9】比較材14と実施材7における屈曲寿命を測定したグラフである。
【図10】比較材15と実施材8における屈曲寿命を測定したグラフである。
【図11】比較材15の幅方向における断面組織の写真である。
【図12】実施材8の幅方向における断面組織の写真である。
【図13】試料の表層における平均結晶粒サイズの測定方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な一実施の形態を詳述する。
【0026】
本発明の太陽光発電システム用ケーブルは、図1に示す様に、導体と、その外周に被覆された絶縁層と、前記絶縁層の外周に被覆されたシースとを有するケーブルである。この導体の素材には、高い導電性と高い屈曲寿命が望まれている。そこで、先ず、本発明の目的は、導体の素材として、導電率101.5%IACS(万国標準軟銅(International Anneld Copper Standard)抵抗率1.7241×10−8Ωmを100%とした導電率)を満足する軟質型銅材としての軟質希薄銅合金材料を得ることにある。また、副次的な目的は、SCR連続鋳造設備を用い、表面傷が少なく、製造範囲が広く、安定生産が可能である。また、ワイヤロッドに対する加工度90%(例えばφ8mm→φ2.6mm)での軟化温度が148℃以下の材料の開発にある。
【0027】
高純度銅(6N、純度99.9999%)に関しては、加工度90%での軟化温度は130℃である。したがって安定生産が可能な130℃以上で148℃以下の軟化温度で軟質材の導電率が101.5%IACS以上である軟質銅を安定して製造できる軟質希薄銅合金材料としての素材とその製造条件を求めることを検討した。
【0028】
ここで、酸素濃度1〜2mass ppmの高純度銅(4N)を用い、実験室にて小型連続鋳造機(小型連鋳機)を用いて、チタン(Ti)を数mass ppm添加した溶湯から製造したφ8mmのワイヤロッドをφ2.6mm(加工度90%)にして軟化温度を測ると160〜168℃であり、これ以上低い軟化温度にはならない。また、導電率は、101.7%IACS程度である。よって、酸素濃度を低くして、Tiを添加しても、軟化温度を下げることができず、また高純度銅(6N)の導電率102.8%IACSよりも悪くなることがわかった。
【0029】
この原因は、溶湯の製造中に不可避的不純物として、硫黄を数mass ppm以上含
み、この硫黄とチタンとでTiS等の硫化物が十分形成されないために、軟化温度が下がらないものと推測される。
【0030】
そこで、本発明では、軟化温度を下げることと、導電率を向上させるために、2つの方
策を検討し、2つの効果を合わせることで目標を達成した。
【0031】
(a)素材の酸素濃度を2mass ppmを超える量に増やしてチタンを添加する。これにより、先ず溶銅中ではTiSとチタン酸化物(TiO2)やTi−O−S粒子が形成されると考えられる(図2、図4のSEM像と図3、図5の分析結果参照)。なお、図3、図5、図7において、PtおよびPdは観察のための蒸着元素である。
【0032】
(b)次に熱間圧延温度を、通常の銅の製造条件(950〜600℃)よりも低く設定
(880〜550℃)することで、銅中に転位を導入し、硫黄(S)が析出し易いようにする。これによって、転位上へのSの析出又はチタンの酸化物(TiO2)を核としてSを析出させ、その一例として溶銅と同様Ti−O−S粒子等を形成させる(図6のSEM像と、図7の分析結果参照)。
【0033】
図2〜7は、表1の実施例1の上から三段目に示す酸素濃度、硫黄濃度、Ti濃度をもつφ8mmの銅線(ワイヤロッド)の横断面をSEM観察及びEDX分析にて評価したものである。観察条件は、加速電圧15keV、エミッション電流10μAとした。
【0034】
(a)と(b)により、銅中の硫黄が晶出と析出を行い、冷間伸線加工後に軟化温度と
導電率を満足する銅ワイヤロッドができる。
【0035】
次に、本発明では、SCR連続鋳造設備で製造条件の制限として(1)〜(4)を制限
した。
【0036】
(1)組成について
本実施の形態に係る太陽発電システム用ケーブルの導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択された添加元素を含み、残部が銅及び不可避的不純物からなるものであり、その導電率が101.5%以上であるものを用いる。
【0037】
添加元素として、Ti、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn及びCrからなる群から選択されたものを選んだ理由は、これらの元素は他の元素と結合しやすい活性元素であり、Sと結合しやすいためSをトラップすることができ、銅母材(マトリクス)を高純度化することができるためである。添加元素は1種以上含まれていてもよい。また、合金の性質に悪影響を及ぼすことのないその他の元素および不純物を合金に含有させることもできる。
【0038】
また、以下に説明する好適な実施の形態においては、酸素含有量が2を超え30mass ppm以下が良好であることを説明しているが、添加元素の添加量およびSの含有量によっては、合金の性質を備える範囲において、2を超え400mass ppmを含むことができる。
【0039】
導電率が101.5%IACS以上の軟質銅材を得る場合、不可避的不純物を含む純銅に、硫黄3〜12mass ppmと、酸素2を超え30mass ppm以下と、Ti4〜25mass ppmを含む軟質希薄銅合金材料でワイヤロッドとするのがよい。2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素を含有していることから、この実施の形態では、いわゆる低酸素銅(LOC)を対象としている。
【0040】
通常、純銅の工業的製造において、電気銅を製造する際に、硫黄が銅中に取り込まれてしまうため、硫黄を3mass ppm以下とするのは難しい。汎用電気銅の硫黄濃度上限は12mass ppmである。
【0041】
制御する酸素は、上述したように、少ないと軟化温度が下がり難いので2mass ppmを超える量とする。また酸素が多すぎると、熱間圧延工程で、表面傷が出やすくなるので30mass ppm以下とする。
【0042】
(2)分散している物質について
硫黄及びチタンは、TiO、TiO2、TiS、Ti−O−Sの形で化合物または、凝集物を形成し、残りのTiとSが固溶体の形で存在している。TiOのサイズが200n
m以下、TiO2は1000nm以下、TiSは200nm以下、Ti−O−Sは300nm以下で結晶粒内に分布している軟質希薄銅合金材料とする。結晶粒とは銅の結晶組織のことを意味する。
【0043】
但し、鋳造時の溶銅の保持時間や冷却状況により、形成される粒子サイズが変わるので
鋳造条件の設定も必要である。
【0044】
(3)鋳造条件について
SCR連続鋳造圧延により、鋳塊ロッドの加工度が90%(30mm)〜99.8%(5mm)でワイヤロッドを造る、一例として、加工度99.3%でφ8mmワイヤロッドを造る方法を用いる。
【0045】
(a)溶解炉内での溶銅温度は、1100℃以上1320℃以下とする。溶銅の温度が
高いとブローホールが多くなり、傷が発生するとともに粒子サイズが大きくなる傾向にあるので、1320℃以下とする。1100℃以上としたのは、銅が固まりやすく製造が安定しないためであるが、溶銅温度は、出来るだけ低い温度が望ましい。
【0046】
(b)熱間圧延温度は、最初の圧延ロールでの温度が880℃以下、最終圧延ロールで
の温度が550℃以上とする。
【0047】
通常の純銅製造条件と異なり、溶銅中での硫黄の晶出と熱間圧延中の硫黄の析出が本発
明の課題であるので、その駆動力である固溶限をより小さくするためには、溶銅温度と熱
間圧延温度を(a)、(b)とするのがよい。
【0048】
通常の熱間圧延温度は、最初の圧延ロールでの温度が950℃以下、最終圧延ロールで
の温度が600℃以上であるが、固溶限をより小さくするためには、本発明では、最初の
圧延ロールでの温度が880℃以下、最終圧延ロールでの温度が550℃以上に設定する。
【0049】
550℃以上にする理由は、この温度以下ではワイヤロッドの傷が多いので製品になら
ないためである。熱間圧延温度は、最初の圧延ロールでの温度が880℃以下、最終圧延
ロールでの温度が550℃以上で、できるだけ低い方が望ましい。こうすることで、軟化
温度(φ8〜φ2.6に加工後)が限りなく高純度銅(6N、軟化温度130℃)に近くなる。
【0050】
(c)直径φ8mmサイズのワイヤロッドの導電率が101.5%IACS以上であり、冷間伸線加工後のφ2.6mmの軟化温度が130℃〜148℃である軟質希薄銅合金線または板状材料を得ることができる。
【0051】
導電率は、無酸素銅のレベルで101.7%IACS程度であり、タフピッチ銅で101.2%IACS程度であり、高純度銅(6N)で102.8%IACSであるため、本発明の導体としては、低周波から高周波の電流を流すのに伝送ロスを少なくするためには、出来るだけ高純度銅(6N)に近い導電率であることが望ましく、101.5%IACS以上必要であり、軟化温度はその工業的価値から見て148℃以下である。Tiを添加しない場合は、160〜165℃である。高純度銅(6N)の軟化温度は127〜130℃であったので、得られたデータから限界値を130℃とする。このわずかな違いは、高純度銅(6N)にない不可避的不純物にある。
【0052】
(4)鋳造条件の制限
銅はシャフト炉で溶解の後、還元状態の樋になるように制御した、すなわち還元ガス(
CO)雰囲気の下で、希薄合金の構成元素の硫黄濃度、Ti濃度、酸素濃度を制御して鋳造し、圧延するワイヤロッドを安定して製造する方法がよい。銅酸化物の混入や粒子サイズが大きいので品質を低下させる。
【0053】
ここで、添加元素としてTiを選択した理由は次の通りである。
【0054】
(a)Tiは溶融銅の中で硫黄と結合し化合物を造りやすいためである。
【0055】
(b)Zrなど他の添加金属に比べて加工でき扱いやすい。
【0056】
(c)Nbなどに比べて安価である。
【0057】
(d)酸化物を核として析出しやすいからである。
【0058】
本発明の好適な実施の形態では添加元素として、Tiを選択したが、これに限定されるものではなく、Ti、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、N、Mn、及びCrからなる群から選択された添加元素としてもよい。
【0059】
以上により、本発明に係る軟質希薄銅合金材料は、溶融半田めっき材(線、板、箔)、軟質純銅、高導電率銅、やわらかい銅線として使用でき、焼鈍時のエネルギーを低減でき、生産性が高く、導電率、軟化温度、表面品質に優れた実用的な軟質希薄銅合金材料を得ることが可能となる。
【0060】
また、本発明に係る軟質希薄銅合金線の表面にめっき層を形成してもよい。めっき層としては、例えば、錫、ニッケル、銀を主成分とするものを適用可能であり、いわゆるPbフリーめっきを用いてもよい。
【0061】
また、本発明に係る軟質希薄銅合金線を複数本撚り合わせた軟質希薄銅合金撚線として使用することも可能である。
【0062】
また、本発明に係る軟質希薄銅合金線又は軟質希薄銅合金撚線の周りに、絶縁層を設けたケーブルとして使用することもできる。
【0063】
また、本発明に係る軟質希薄銅合金線を複数本撚り合わせて中心導体とし、中心導体の外周に絶縁体被覆を形成し、絶縁体被覆の外周に銅又は銅合金からなる外部導体を配置し、その外周にジャケット層を設けた同軸ケーブルとして使用することもできる。
【0064】
また、この同軸ケーブルの複数本をシールド層内に配置し、前記シールド層の外周にシ
ースを設けた複合ケーブルとして使用することもできる。
【0065】
また、上述の実施の形態では、SCR連続鋳造圧延法によりワイヤロッドを作製し、熱間圧延にて軟質材を作製する例で説明したが、双ロール式連続鋳造圧延法またはプロペルチ式連続鋳造圧延法により製造するようにしても良い。
【実施例】
【0066】
表1は実験条件と結果に関するものである。
【0067】
【表1】
【0068】
先ず、実験材として、表1に示した酸素濃度、硫黄濃度、Ti濃度で、φ8mmの銅線
(ワイヤロッド):加工度99.3%をそれぞれ作製した。φ8mmの銅線は、SCR連続鋳造圧延により、熱間圧延加工を施したものである。Tiは、シャフト炉で溶解された銅溶湯を還元ガス雰囲気で桶に流し、桶に流した銅溶湯を同じ還元ガス雰囲気の鋳造ポットに導き、この鋳造ポットにて、Tiを添加した後、これをノズルを通して鋳造輪と無端ベルトとの間に形成される鋳型にて鋳塊ロッドを作成した。この鋳塊ロッドを熱間圧延加工してφ8mmの銅線を作成したものである。その実験材を冷間伸線して、φ2.6mmのサイズにおける半軟化温度と導電率を測定し、またφ8mmの銅線における分散粒子サイズを評価した。
【0069】
酸素濃度は、酸素分析器(レコ(Leco;商標)酸素分析器)で測定した。硫黄、T
iの各濃度はICP発光分光分析器で分析した結果である。
【0070】
φ2.6mmのサイズにおける半軟化温度の測定は、400℃以下で各温度1時間の保
持後、水中急冷し、引張試験を実施しその結果から求めた。室温での引張試験の結果と4
00℃で1時間のオイルバス熱処理した軟質銅線の引張試験の結果を用いて求めた。この
2つの引張試験の引張強さを足して2で割った値を示す強度に対応する温度を半軟化温度
と定義し求めた。
【0071】
分散粒子のサイズは小さく沢山分布することが望ましい。その理由は、硫黄の析出サイトとして働くためサイズが小さく数が多いことが要求される。すなわち直径500nm以下の分散粒子が90%以上である場合を合格とした。ここに「サイズ」とは化合物のサイズであり、化合物の形状の長径と短径のうちの長径のサイズを意味する。また、「粒子」とは前記TiO、TiO2、TiS、Ti−O―Sのことを示す。また、「90%」とは、全体の粒子数に対しての該当粒子数の割合を示すものである。
【0072】
表1において、比較材1は、実験室でAr雰囲気において直径φ8mmの銅線を試作し
た結果であり、Tiを、0〜18mass ppm添加したものである。
【0073】
このTi添加で、Ti添加量ゼロの半軟化温度215℃に対して、13mass pp
mは160℃まで低下して最小となり、15,18mass ppmの添加で高くなって
おり、要望の軟化温度148℃以下にはならなかった。また、導電率102%以上を満足していないため、総合評価は×であった。
【0074】
そこで、次にSCR連続鋳造圧延法にて、酸素濃度を7〜8mass ppmに調整し
てφ8mm銅線(ワイヤロッド)の試作を行った。
【0075】
比較材2は、SCR連続鋳造圧延法で試作した中でTi濃度の少ないもの(0,2ma
ss ppm)であり、導電率は101.5%IACS以上であるが、半軟化温度が164,157℃であり、要求の148℃以下を満足しないので、総合評価で、×となった。
【0076】
実施材1については、酸素濃度と硫黄が、ほぼ一定(7〜8mass ppm、5ma
ss ppm)、Ti濃度の異なる(4〜25mass ppm)試作材の結果である。
【0077】
このTi濃度4〜25mass ppmの範囲では、軟化温度132℃以下であり、導
電率も101.5%IACS以上であり、分散粒子サイズも500nm以下の粒子が90%以上であり良好である。そしてワイヤロッドの表面もきれいであり、いずれも製品性能として満足している(総合評価○)。
【0078】
ここで、実施材1のうち上から3番目のTi濃度が13mass ppmのときに、導電率が最大値である102.4%IACSを示し、この濃度の周辺では、導電率は、僅かに低い値であった。これは、Tiが13mass ppmのときに、銅中の硫黄分を化合物として捕捉することで、高純度銅(6N)に近い導電率を示したためである。
【0079】
よって、酸素濃度を高くし、Tiを添加することで、半軟化温度と導電率の双方を満足
させることができる。
【0080】
比較材3は、Ti濃度が25mass ppmを超える試作材である。この比較材3は、半軟化温度は要望を満足しているが、導電率が101.5%IACSを下回っているため、総合評価は×であった。
【0081】
比較材4は、Ti濃度を60mass ppmと高くした試作材である。この比較材4
は、導電率は要望を満足しているが、半軟化温度は148℃以上であり、製品性能を満足
していない。さらにワイヤロッドの表面傷も多く、製品にすることは難しかった。よって、Tiの添加量は60mass ppm未満がよい。
【0082】
次に実施材2については、硫黄濃度を5mass ppmとし、Ti濃度を13〜10
mass ppmとし、酸素濃度を変えて、酸素濃度の影響を検討した試作材である。
【0083】
酸素濃度に関しては、2を超え30mass ppm以下まで、大きく濃度が異なる試作材とした。但し、酸素が2mass ppm未満は、生産が難しく安定した製造ができないため、総合評価は△とした。また酸素濃度を30mass ppmと高くしても半軟化温と導電率の双方を満足することがわかった。
【0084】
また比較材5に示すように、酸素が40mass ppmの場合には、ワイヤロッド
表面の傷が多く、製品にならない状況であった。
【0085】
よって、酸素濃度が2を超え30mass ppm以下の範囲とすることで、半軟化温度、導電率101.5%IACS以上、分散粒子サイズのいずれの特性も満足させることができ、またワイヤロッドの表面もきれいであり、いずれも製品性能を満足させることができる。
【0086】
次に実施材3は、それぞれ酸素濃度と硫黄濃度とを比較的同じ近い濃度とし、Ti濃度
を4〜20mass ppmと変えた試作材の例である。この実施材3においては、硫黄
が2mass ppmより少ない試作材は、その原料面から実現できなかったが、Tiと
硫黄の濃度を制御することで、半軟化温度と導電率の双方を満足させることができる。
【0087】
比較材6の硫黄濃度が18mass ppmで、Ti濃度が13mass ppmの場
合には、半軟化温度が162℃で高く、必要特性を満足できなかった。また、特にワイヤ
ロッドの表面品質が悪いので、製品化は難しかった。
【0088】
以上より、硫黄濃度が2〜12mass ppmの場合には、半軟化温度、導電率10
1.5%IACS以上、分散粒子サイズいずれの特性も満足しており、ワイヤロッドの表面もきれいですべての製品性能を満足することがわかった。
【0089】
また比較材7として高純度銅(6N)を用いた検討結果を示したが、半軟化温度127〜130℃であり、導電率も102.8%IACSであり、分散粒子サイズも、500nm以下の粒子はまったく認められなかった。
【0090】
【表2】
表2は、製造条件としての、溶融銅の温度と圧延温度を示したものである。
【0091】
比較材8は、溶銅温度が高めの1330〜1350℃で且つ圧延温度が950〜600
℃でφ8mmのワイヤロッドを試作した結果を示したものである。
【0092】
この比較材8は、半軟化温度と導電率は満足するものの、分散粒子のサイズに関しては、1000nm程度のものもあり500nm以上の粒子も10%を超えていた。よって、これは不適とした。
【0093】
実施材4は、溶銅温度が1200〜1320℃で且つ圧延温度が低めの880〜550
℃でφ8mmのワイヤロッドを試作した結果を示したものである。この実施材4について
は、ワイヤ表面品質、分散粒子サイズも良好で、総合評価は○であった。
【0094】
比較材9は、溶銅温度が1100℃で且つ圧延温度が低めの880〜550℃でφ8mmのワイヤロッドを試作した結果を示したものである。この比較材9は、溶銅温度が低い
ため、ワイヤロッドの表面傷が多く製品には適さなかった。これは、溶銅温度が低いため、圧延時に傷が発生しやすいためである。
【0095】
比較材10は、溶銅温度が1300℃で且つ圧延温度が高めの950〜600℃でφ8mmのワイヤロッドを試作した結果を示したものである。この比較材10は、熱間圧延温度が高いため、ワイヤロッドの表面品質が良いが、分散粒子サイズも大きなものがあり、総合評価は×となった。
【0096】
比較材11は、溶銅温度が1350℃で且つ圧延温度が低めの880〜550℃でφ8
mmのワイヤロッドを試作した結果を示したものである。この比較材11は、溶銅温度が
高いため、分散粒子サイズが大きなものがあり、総合評価は×となった。
【0097】
(軟質希薄銅合金線の軟質特性)
表3は、無酸素銅線を用いた比較材12と低酸素銅に13mass ppmのTiを含有した軟質希薄銅合金線を用いた実施材5とを試料とし、異なる焼鈍温度で1時間の焼鈍
を施したもののビッカース硬さ(Hv)を検証した表である。
【0098】
実施材5は、表1の実施材1に記載した合金組成と同じものを使用した。なお、試料としては、2.6mm径の試料を用いた。この表によると、焼鈍温度が400℃のときに比較材12と実施材5とのビッカース硬さ(Hv)は同等レベルとなり、焼鈍温度が600℃でも同等のビッカース硬さ(Hv)を示している。このことから、本発明の軟質希薄銅合金線は十分な軟質特性を有するとともに、無酸素銅線と比較しても、特に焼鈍温度が400℃を超える領域においては優れた軟質特性を備えていることがわかる。
【0099】
【表3】
(軟質希薄銅合金線の耐力及び屈曲寿命についての検討)
表4は、無酸素銅線を用いた比較材13と低酸素銅に13mass ppmのTiを含
有した軟質希薄銅合金線を用いた実施材6を試料とし、異なる焼鈍温度で1時間の焼鈍を
施したものの0.2%耐力値の推移を検証した表である。なお、試料としては、2.6m
m径の試料を用いた。
【0100】
この表によると、焼鈍温度が400℃のときに比較材13と実施材6の0.2%耐力値が同等レベルであり、焼鈍温度600℃では実施材6も比較材13もほぼ同等の0.2%耐力値となっていることがわかる。
【0101】
【表4】
つぎに、本発明に係る軟質希薄銅合金線は、屈曲寿命の高さが要求されるが、無酸素銅
線を用いた比較材14と低酸素銅にTiを添加した軟質希薄銅合金線を用いた実施材7に
おける屈曲寿命を測定した結果を図9に表す。ここでは試料としては、0.26mm径の
線材に対して焼鈍温度400℃で1時間の焼鈍を施したものを用い、比較材14は比較材
12と同様の成分組成であり、実施材7も実施材5(実施材1)と同様の成分組成のものを使用した。
【0102】
ここに、屈曲寿命の測定方法は、屈曲疲労試験により、行った。屈曲疲労試験は、荷重を負荷し、試料表面に引張と圧縮の繰返し曲げひずみを与える試験である。屈曲疲労試験は図8に示す様に、屈曲ヘッド4を用いて行う。試料5は、(A)のように曲げ治具6(リング)の間にセットし、クランプ7で把持し、荷重を負荷したまま、(B)のように治具が90度回転し曲げを与える。この操作で、曲げ治具に接している線材表面には、圧縮ひずみが、これに対応して反対側の表面には、引張ひずみが負荷される。その後、再び(A)の状態に戻る。次に(B)に示した向きと反対方向に90度回転し曲げを与える。この場合も、曲げ治具に接している線材表面には、圧縮ひずみが、これに対応して反対側の表面には、引張ひずみが負荷され(C)の状態になる。そして(C)から最初の状態(A)に戻る。この屈曲疲労1サイクル(A)(B)(A)(C)(A)に要する時間は4秒である。表面曲げ歪は以下の式により求めることができる。
【0103】
表面曲げ歪(%)=r/(R+r)×100(%)、R:素線曲げ半径(30mm)、r=素線半径
図9の実験データによると、本発明に係る実施材7は比較材14に比して高い屈曲寿命
を示した。
【0104】
また、無酸素銅線を用いた比較材15と低酸素銅にTiを添加した軟質希薄銅合金線を
用いた実施材8における屈曲寿命を測定した結果を図10に表す。ここでは試料としては、0.26mm径の線材に対して焼鈍温度600℃で1時間の焼鈍を施したものを用い、比較材15は比較材12と同様の成分組成であり、実施材8も実施材5(実施材1)と同様の成分組成のものを使用した。屈曲寿命の測定方法は、図8の測定方法と同様の条件により、行った。この場合も、本発明に係る実施材8は比較材15に比して高い屈曲寿命を示した。この結果は、いずれの焼鈍条件下においても実施材7、8の方が比較材14、15に比して0.2%耐力値が大きい値を示していたことに起因するものであると理解される。
【0105】
(軟質希薄銅合金線の結晶構造についての検討)
また、図11は、実施材8の試料の幅方向における断面組織の写真を表したものであり、図12は、比較材15の幅方向における断面組織の写真を表したものである。図11は、比較材15の結晶構造を示し、図12は実施材8の結晶構造を示す。これをみると、比較材15の結晶構造は、表面部から中央部にかけて全体的に大きさの等しい結晶粒が均一に並んでいることがわかる。これに対し、実施材8の結晶構造は、全体的に結晶粒の大きさがまばらであり、特筆すべきは、試料の断面方向の表面付近に薄く形成されている層における結晶粒サイズが内部の結晶粒サイズに比べて極めて小さくなっていることである。
【0106】
発明者らは、比較材15には形成されていない、表層に現れた微細結晶粒層が実施材8
の屈曲特性の向上に寄与しているものと考えている。
【0107】
このことは、通常であれば、焼鈍温度600℃で1時間の焼鈍処理を行えば、比較材1
5のように再結晶により均一に粗大化した結晶粒が形成されるものであると理解されるが、本発明の場合には、焼鈍温度600℃で1時間の焼鈍処理を行ってもなお、その表層に
は微細結晶粒層が残存していることから、軟質銅材でありながら、屈曲特性の良好な軟質
希薄銅合金材料が得られたものであると考えられる。
【0108】
そして、図11および図12に示す結晶構造の断面写真をもとに、実施材8および比較材15の試料の表層における平均結晶粒サイズを測定した。
【0109】
ここに、表層における平均結晶粒サイズの測定方法は、図13に示すように、0.26mm径の幅方向断面の表面から深さ方向に10μm間隔で50μmの深さまでの長さ1mmの線上の範囲での結晶粒サイズを測定した夫々の実測値を平均した値を表層における平均結晶粒サイズとした。
【0110】
測定の結果、比較材15の表層における平均結晶粒サイズは、50μmであったのに対し、実施材8の表層における平均結晶粒サイズは、10μmである点で大きく異なっていた。表層の平均結晶粒サイズが細かいことによって、屈曲疲労試験による亀裂の進展が抑制され、屈曲疲労寿命が延びたと考えられる(結晶粒サイズが大きいと結晶粒界に沿って亀裂が進展してしまうが、結晶粒サイズが小さいと亀裂の進展の方向が変わるため、進展
が抑制される)。このことが、上述のとおり、比較材と実施材との屈曲特性の面で大きな
相違を生じたものと考えられる。
【0111】
また、2.6mm径である実施材6、比較材13の表層における平均結晶粒サイズは、
2.6mm径の幅方向断面の表面から深さ方向に50μmの深さにおける長さ10mmの範囲での結晶粒サイズを測定した。
【0112】
測定の結果、比較材13の表層における平均結晶粒サイズは、100μmであったのに
対し、実施材6の表層における平均結晶粒サイズは、20μmであった。
【0113】
本発明の効果を奏するものとして、表層の平均結晶粒サイズの上限値としては、20μm以下のものが好ましく、製造上の限界値から5μm以上のものが想定される。
【0114】
(太陽光発電システム用ケーブルの実施形態について)
SCR連続鋳造圧延法で試作した前記実施材1(表1参照)のうち、上から3番目の素材を、溶銅温度1320℃で鋳造し、且つ圧延温度が880℃〜550℃でφ8mmのワイヤロッド(荒引線)を作成し、さらにこれを伸線加工してφ2.6mmの素線を得た後、更にφ0.6mm又はφ0.8mmまで冷間伸線を行い、素線を得た。
【0115】
これらの素線を7本より合わせたものを導体とし、図1に示す様に、その導体の外周に絶縁層を形成し、その絶縁層の外周に樹脂を被覆してシース層を形成して太陽光発電システム用ケーブルの製造した。
【0116】
ここで、絶縁層の形成には架橋ポリエチレンを使用し、シース層の形成には、ビニル混合物、又は耐燃性ポリエチレンを使用した。
【0117】
上記の実施形態において、銅素線として、上前記実施材1のうち、上から3番目の素材と同じものを使用することから、以下のような効果が認められる。
【0118】
導体1がTiを含み残部が不可避的不純物からなり、表面から50μm深さまでの表層における平均結晶粒サイズが20μm以下である軟質希薄銅合金線にすることで、従来のOFC素材およびTPC素材に比して、6N相当の高い導電性を備え、6Nよりコストを掛けずに太陽光発電システム用ケーブルを供給することができる。
【0119】
また、高導電率の導体を使用した太陽光発電システム用ケーブルは、導体抵抗が少なく、電流を多く流すことが出来るので、電力への変換時のロス率を低減させることが出来、変換効率を高める効果が期待出来る。
【0120】
また、本発明の太陽光発電システム用ケーブルは、従来のOFC素材に比して、OFCより優れた屈曲性をもつため、小さな曲げ半径での折り曲げに適しているといえる。
【0121】
よって、本発明の太陽光発電システム用ケーブルは、従来のOFC素材、TPC素材に比して高い導電性(導電率が101.5%以上)を備え、かつ従来のOFC素材に比して高い屈曲寿命を有するものである。
【符号の説明】
【0122】
1…導体、2…絶縁層、3…シース、4…屈曲ヘッド、5…試料、6…リング、7…クランプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、その外周に被覆された絶縁層と、前記絶縁層の外周に被覆されたシースとを有する太陽光発電システム用ケーブルにおいて、
前記導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択された添加元素を含み残部が銅及び不可避的不純物からなるものであり、その導電率が101.5%以上であることを特徴とする太陽光発電システム用ケーブル。
【請求項2】
導体と、その外周に被覆された絶縁層と、前記絶縁層の外周に被覆されたシースとを有する太陽光発電システム用ケーブルにおいて、
前記導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Ti4〜25mass ppm、硫黄3〜12mass ppmを含み、残部が不可避的不純物及び銅からなり、その導電率が101.5%以上であることを特徴とする太陽光発電システム用ケーブル。
【請求項3】
2mass ppmを超える量の酸素を含有し、添加元素を含み、残部が不可避的不純物及び銅である希薄銅合金材料を、SCR連続鋳造圧延により、1100℃以上1320℃以下で鋳造し、この鋳造材からワイヤロッドを作製し、そのワイヤロッドを最初の圧延ロールでの温度が880℃以下、最終圧延ロールでの温度が550℃以上の条件で熱間圧延して、これを伸線して導体を形成する工程と、
前記導体の外周に絶縁層を形成する工程と、
その絶縁層の外周に樹脂を被覆してシース層を形成する工程とを備える
ことを特徴とする太陽光発電システム用ケーブルの製造方法。
【請求項4】
前記添加元素は、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の太陽光発電システム用ケーブルの製造方法。
【請求項5】
前記添加元素はTiであり、Tiを4〜25mass ppm、硫黄3〜12mass ppmを含むことを特徴とする請求項3に記載の太陽光発電システム用ケーブルの製造方法。
【請求項6】
前記導体は、その導電率が101.5%IACS以上であることを特徴とする請求項3乃至5に記載の太陽光発電システム用ケーブルの製造方法。
【請求項1】
導体と、その外周に被覆された絶縁層と、前記絶縁層の外周に被覆されたシースとを有する太陽光発電システム用ケーブルにおいて、
前記導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択された添加元素を含み残部が銅及び不可避的不純物からなるものであり、その導電率が101.5%以上であることを特徴とする太陽光発電システム用ケーブル。
【請求項2】
導体と、その外周に被覆された絶縁層と、前記絶縁層の外周に被覆されたシースとを有する太陽光発電システム用ケーブルにおいて、
前記導体は、2mass ppmを超える量の酸素を含有し、Ti4〜25mass ppm、硫黄3〜12mass ppmを含み、残部が不可避的不純物及び銅からなり、その導電率が101.5%以上であることを特徴とする太陽光発電システム用ケーブル。
【請求項3】
2mass ppmを超える量の酸素を含有し、添加元素を含み、残部が不可避的不純物及び銅である希薄銅合金材料を、SCR連続鋳造圧延により、1100℃以上1320℃以下で鋳造し、この鋳造材からワイヤロッドを作製し、そのワイヤロッドを最初の圧延ロールでの温度が880℃以下、最終圧延ロールでの温度が550℃以上の条件で熱間圧延して、これを伸線して導体を形成する工程と、
前記導体の外周に絶縁層を形成する工程と、
その絶縁層の外周に樹脂を被覆してシース層を形成する工程とを備える
ことを特徴とする太陽光発電システム用ケーブルの製造方法。
【請求項4】
前記添加元素は、Mg、Zr、B、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Ti及びCrからなる群から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の太陽光発電システム用ケーブルの製造方法。
【請求項5】
前記添加元素はTiであり、Tiを4〜25mass ppm、硫黄3〜12mass ppmを含むことを特徴とする請求項3に記載の太陽光発電システム用ケーブルの製造方法。
【請求項6】
前記導体は、その導電率が101.5%IACS以上であることを特徴とする請求項3乃至5に記載の太陽光発電システム用ケーブルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−87369(P2012−87369A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235446(P2010−235446)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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