説明

太陽光発電システム

【課題】太陽電池モジュールの設置面積を大幅に減らさずとも通路や緊急救助用スペースや緊急離着陸場等を確保することができる太陽光発電システムを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール2と、太陽電池モジュール2の上方に配設された上部材3と、を備える太陽光発電システム1であって、上部材3は、透明体または太陽光を透過する複数の開口部を有する部材により構成されており、上部材3の上面は、通路、緊急救助用スペースまた緊急離着陸場として利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、受光の障害となる物体を上方に配置しないことが基本である。一方、太陽電池により多くの発電量を確保するためには、広い設置面積を確保する必要がある。
そのため、都市部のような人口密集地域では、建物の屋上等を利用して、太陽電池の設置面積を確保している。
【0003】
建物の屋上に太陽電池の設置する場合は、屋上に固定された専用架台を介して太陽電池モジュールを固定するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−20766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、緊急離着陸場(Hの標識を表示した場所)や緊急救助用スペース(Rの標識を表示した場所)や歩行用通路等が確保されている場合には、当該緊急離着陸場等を避けた位置に太陽電池モジュールを設置する必要があるので、緊急離着陸場等を設けない場合に比べて太陽電池モジュールの設置面積が小さくなってしまう。
【0006】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、太陽電池モジュールの設置面積を大幅に減らさずとも通路や緊急救助用スペースや緊急離着陸場等を確保することができる太陽光発電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る第一の太陽光発電システムは、太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールの上方に配設された上部材と、を備え、前記上部材が、透明体により構成されており、前記上部材の上面が、通路、緊急救助用スペースまた緊急離着陸場として利用可能であることを特徴としている。
【0008】
かかる太陽光発電システムは、通路、緊急救助用スペースまたは緊急離着陸場として使用する際の荷重に耐え得る強度の透明体が太陽電池モジュールの上方に配設されているため、当該太陽光発電システム上を避難用ホバリングスペースや歩行通路等として有効に活用することが可能となる。
なお、透明体には、強化ガラスや合わせガラスやポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレイト、アクリル等のプラスチック等を使用すればよい。また、透明体の表面には、滑り止め加工が施されているのが望ましい。
【0009】
また、本発明に係る第二の太陽光発電システムは、太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールの上方に配設された上部材と、を備え、前記上部材が、複数の開口部を有する部材より構成されており、前記上部材の上面が、通路、緊急救助用スペースまた緊急離着陸場として利用可能であることを特徴としている。
【0010】
かかる太陽光発電システムは、上部材が開口部を備えているため、この開口部を通過した太陽光を利用して太陽電池モジュールによる発電を行うとともに、上部材上を避難用ホバリングスペース等として有効に活用することが可能となる。
なお、このような上部材は、例えば、格子状に形成されたグレーチング等により構成すればよい。
【0011】
前記太陽光発電システムにおいて、前記上部材に、緊急救助用スペースの標識(R)や緊急離着陸場の標識(H)が付されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の太陽光発電システムによれば、上部の有効活用と効率的な発電が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽光発電システムを示す斜視図である。
【図2】図1の太陽光発電システムの一部分を示す断面図である。
【図3】図1の太陽光発電システムの一部分を示す斜視図である。
【図4】(a)は図3の太陽光発電システムの変形例を示す斜視図、(b)は(a)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、図1に示すように、ホバリングスペースRを備える建物Bの屋上において、太陽光発電システム1を設置する場合について説明する。
【0015】
太陽光発電システム1は、図2に示すように、建物Bの屋上に縦横に複数並設された太陽電池モジュール2と、太陽電池モジュール2の上方に配設された上部材3と、を備えて構成されている。
【0016】
太陽電池モジュール2は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池セル2a(図3(a)参照)の集合体であり、上面に平板状の防護カバー2bが敷設されている。
【0017】
なお、太陽電池モジュール2の数や配置は限定されるものではなく、太陽光発電システム1の設置が予定された場所の広さや形状等に応じて適宜設定することが可能である。また、太陽電池モジュール2同士の間隔は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0018】
防護カバー2bは、板状の部材であって、太陽電池モジュール2の表面に敷設されていることで、太陽電池セル2aを保護する。なお、防護カバー2bは、太陽電池モジュール2を収容することが可能な箱状または袋状の部材により構成してもよい。
【0019】
防護カバー2bを構成する材料は、太陽光Sを透過する材料により構成されていれば限定されるものではないが、例えば、ガラス、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ETFE(テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体)、PVC(塩化ビニル樹脂)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等が採用される。
【0020】
上部材3は、歩行に耐え得る強度を有する部材により構成されている。
本実施形態では、図3(a)に示すように、上部材3として太陽光Sを透過することが可能な透明体により構成された板材を使用する。なお、上部材3を構成する材料は限定されるものではないが、例えば、強化ガラスや合わせガラスやポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレイト、アクリル等のプラスチック等を使用する。
【0021】
上部材3の表面には、ホバリング標識Raが付されている。本実施形態では上部材3にペイントすることによりホバリング標識Raを付したが、例えば、所定の色の透明体からなる上部材3を組み合わせることにより、全体としてホバリング標識Raを表示してもよい。
【0022】
また、上部材3の表面には、滑り止め加工として、歩行に支障をきたすことのない細かい多数の凹凸や溝が形成されている。
なお、上部材3の滑り止め処理は、凹凸加工や溝加工に限定されるものではなく、例えば、凸部材を設置するなどして行ってもよい。
【0023】
本実施形態では、上部材3を、支持部材4を介して太陽電池モジュール2の上方に配置することで、太陽電池モジュール2との間に所定の間隔をあけた状態で配置する。
なお、上部材3の設置方法および支持部材4の構成等は限定されるものではなく、適宜行えばよい。また、太陽電池モジュール2と上部材3との間隔も限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0024】
なお、上部材3は、太陽光Sの透過が可能であれば、必ずしも透明体により構成する必要はなく、例えば、図4(a)に示す上部材3’ように、グレーチング等の複数の開口部3aを有する部材であってもよい。
【0025】
なお、各開口部3aの側面3bには、図4(b)に示すように、反射率を向上させる加工が施されているのが望ましい。
【0026】
開口部3aの側面3bに当該加工が施されていれば、上部材3’に照射された太陽光Sが側面3bに反射して太陽電池モジュール2に照射されることで、上部材3’の影による発電量の低下を抑制するように構成されている。
また、太陽の高度が低い朝方や夕方においても、側面3bにより反射することで、太陽光Sが太陽電池モジュール2に入射しやすくなる。
【0027】
開口部3aの側面3bの反射率を向上させる加工方法は限定されるものではなく、例えば、反射板の貼着や鏡面状に加工するなど、適宜行えばよい。また、側面3bの反射率を向上させる加工は必要に応じて実施すればよく、省略してもよい。
【0028】
なお、図4(a)では、上部材3’として、格子状のグレーチングを採用しているが、上部材の形状は限定されるものではない。また、開口部3aの数、形状、配置等は、太陽電池モジュール2による発電に必要な太陽光Sの透過が可能であれば限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0029】
また、上部材3’は、表面にホバリング標識Raを付してもよいが、上部材3’の配置や形状により、ホバリング標識Raを建物Bの屋上に表示してもよい。
【0030】
以上、太陽光発電システム1によれば、太陽電池モジュール2の上方に上部材3,3’が配設されているため、太陽電池モジュール2の上部での歩行が可能となる。
【0031】
また、上部材3,3’は、太陽光の透過が可能な部材により構成されているため、太陽電池モジュール2による発電が可能に構成されている。
【0032】
また、上部材3,3’には、ホバリング標識Raが表示されているため、ホバリングスペースRと太陽電池との共存が可能に構成されている。そのため、建物Bの屋上において、太陽電池モジュール2の設置面積を狭めることなく、ホバリングスペースRを確保することが可能となる。
【0033】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることはいうまでもない。
【0034】
前記実施形態では、本発明に係る太陽光発電システム1を建物Bの屋上に配設し、太陽光発電システム1上をホバリングスペースRとして使用する場合について説明したが、太陽光発電システム1上の使用目的は限定されるものではなく、例えば緊急離着陸場や歩行通路として使用してもよい。
なお、緊急離着陸場として使用する場合には、上部材3の表面に緊急離着陸場の標識を付すものとする。また、上部材3は、ヘリコプターの離着陸に耐え得る強度を備えている必要がある。
【0035】
また、太陽光発電システム1の設置箇所は、建物Bの屋上に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 太陽光発電システム
2 太陽電池モジュール
3,3’ 上部材
3a 開口部
R ホバリングスペース
Ra ホバリング標識(標識)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールと、
前記太陽電池モジュールの上方に配設された上部材と、を備える太陽光発電システムであって、
前記上部材が、透明体により構成されており、
前記上部材の上面が、通路、緊急救助用スペースまた緊急離着陸場として利用可能であることを特徴とする、太陽光発電システム。
【請求項2】
太陽電池モジュールと、
前記太陽電池モジュールの上方に配設された上部材と、を備える太陽光発電システムであって、
前記上部材が、複数の開口部を有する部材より構成されており、
前記上部材の上面が、通路、緊急救助用スペースまた緊急離着陸場として利用可能であることを特徴とする、太陽光発電システム。
【請求項3】
前記上部材に、緊急離着陸場の標識や緊急救助用スペースの標識が付されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の太陽光発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−151278(P2011−151278A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12702(P2010−12702)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】