説明

太陽熱集熱装置およびそれを用いた建物の太陽熱集熱構造

【課題】ファンのような外部動力による送り手段を用いることなく、太陽熱で昇温した空気を適宜の場所に導くことができかつ設置場所も自由に選択することのできる太陽熱集熱装置と、それを用いた建物の太陽熱集熱構造を提供することを課題とする。
【解決手段】太陽熱集熱装置Aは、太陽熱受熱面側である第1空気通路21と放熱面側である第2空気通路22が断熱材層20を挟んで並存し、かつ第1空気通路21と第2空気通路22とが両端部の断熱材層20が存在しない領域17,18で連通することで空気の循環路30を形成している。その太陽熱集熱装置Aを、建物の外装材36と内装材37あるいは床材35との間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱集熱装置およびそれを用いた建物の太陽熱集熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギーの有効利用が要望され、一例として、太陽熱を利用して暖かい空気を作り、その空気を床暖房や室内暖房に利用することが提案されている。特許文献1には、建築物の壁面に、太陽熱集熱外壁板(ソーラーウオール)を取り付け、それと床下土間空間との間を連通させて集熱通気構造を形成し、前記連通部にファンを取り付けて太陽熱集熱外壁板で暖まった空気を床下土間空間に引き込むようにしたソーラーウオールシステムが記載されている。また、特許文献2には、下位空気入口と上位空気出口とを備えた太陽熱集熱器を用い、太陽熱による空気の温度差上昇作用によって下位空気入口から空気が流入し上位空気出口から暖められた空気が流出するようにし、太陽熱集熱器から温度差上昇作用により上昇してくる空気を蓄熱盤内に送り込んで蓄熱し、その輻射熱で床面を暖めるようにした太陽熱利用床暖房システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−24139号公報
【特許文献2】特開2004−20044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、暖めた空気をファンを利用して床下土間空間等に送り込むようにしたシステムは、ファンを駆動するための外部動力を必要とし、自然エネルギーの有効利用という課題から見ると、なお改善すべき余地がある。特許文献2に記載のシステムは、空気の温度差上昇作用を利用して、暖まった空気を蓄熱盤に送り込むようにしており、他の動力を使用しないでシステムを運用できる利点がある。しかし、蓄熱盤は空気が上昇していく場所に配置する必要があり、システムの設置環境が制限を受け、例えば一階部の床暖房等には利用することが難しいという不都合がある。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ファンのような外部動力による送り手段を用いることなく、太陽熱で昇温した空気を適宜の場所に導くことができかつ設置場所も自由に選択することのできる太陽熱集熱装置と、それを用いた建物の太陽熱集熱構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による太陽熱集熱装置は、太陽熱受熱面側である第1空気通路と放熱面側である第2空気通路が断熱材層を挟んで並存し、かつ前記第1空気通路と前記第2空気通路とは断熱材層が存在しない両端部において連通することで空気の循環路が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明による太陽熱集熱装置では、第1空気通路の全部または一部を太陽の熱を受けることのできる場所(例えば、建物の屋外側)に面するようにして配置すると、空気循環路における第1空気通路内の空気は暖まって上昇し、第1空気通路の上端部に至る。第1空気通路と第2空気通路との間には断熱材層が介在しているので、第2空気通路内の空気が暖まることはなく、むしろ第2空気通路側からの放熱により空気の温度は降下する。すなわち、循環路内の空気は、一方側では昇温し他方側では降温することとなり、ファンのような他の動力を用いることなく、循環路内で繰り返し循環する。
【0008】
従って、本発明による太陽熱集熱装置では、第1空気通路の少なくとも一部が太陽からの熱を受けることのできる場所となるようにして適所に配置することにより、空気循環経路の他の任意の場所から太陽熱エネルギーを取り出して利用することが可能となり、しかも、空気の循環のために外部の動力を必要とすることもない。
【0009】
また、本発明による太陽熱集熱装置は、それ自体で1つの装置として存在するので、その取り扱いおよび建物への取り付け等はきわめて容易である。
【0010】
本発明による太陽熱集熱装置において、その外体は、熱伝導性の良好な任意の材料で作ることができるが、成形および組み立て加工が容易なことから、樹脂材料または銅やアルミのような金属材料が好ましい。断熱材層も断熱効果を備える任意の材料で作ることができるが、高い断熱性能を備えながら軽量であり加工も容易なことから、発泡樹脂材料は特に好ましい。
【0011】
本発明による太陽熱集熱装置は、全体が1つの部材として作られていてもよく、長手方向に分割した複数個の部材を1つに接合することで、1つの太陽熱集熱装置としてもよい。例えば、第1の直線部と曲がり部と第2の直線部とをこの順で連接して1つの太陽熱集熱装置としてもよい。その場合には、第1の直線部の先端と第2の直線部の先端とに、前記した断熱材層が存在しない空気の連通部が形成される。
【0012】
本発明による建物の太陽熱集熱構造は、上記した太陽熱集熱装置を用いた集熱構造であって、太陽熱集熱装置が建物の外装材と内装材との間に前記第1空気通路の全部または一部を外装材側として配置されていることを特徴とする。この建物の太陽熱集熱構造では、暖められた空気が建物の内装材側で放熱することで、屋内を暖房することができる。
【0013】
本発明による建物の太陽熱集熱構造の他の態様は、さらに蓄熱槽を含み、前記太陽熱集熱装置の一方の端部側は前記蓄熱槽内に位置していることを特徴とする。この態様では、例えば蓄熱槽内に水を入れておくことにより、その水温を上昇させることができる。なお、蓄熱槽は建物の床下等に設置したものでもよく、建物に近接した適宜の場所に設置したものでもよい。
【0014】
本発明において、外装材の言葉は、建物の壁面構造での外装材とともに、屋根構造の外装材をも含むものとして用いている。屋根構造での外装材には、通常の屋根材が含まれる。また、内装材の言葉は、建物の壁面構造での内装材とともに、床構造での床材をも含むものとして用いている。従って、本発明による太陽熱集熱構造において、太陽熱集熱装置は、建物の壁面構造部分のみでなく、建物の屋根構造部分および床構造部分も含めて配置される場合がある。建物の壁面構造部分と屋根構造部分の双方に太陽熱集熱装置を配置する場合には、双方に配置される太陽熱集熱装置は、それぞれ独立したものであってもよく、一つの連続した形態のものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ファンのような外部動力による送り手段を用いることなく、太陽熱で昇温した空気を適宜の場所に導くことができ、かつ配置場所も自由に選択することのできる太陽熱集熱装置が提供される。また、それを用いた建物の太陽熱集熱構造も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による太陽熱集熱装置の一例を説明する図であり、図1(a)は全体の斜視図、図1(b)は図1(a)のa−a線による断面図。
【図2】本発明による建物外壁における太陽熱集熱構造の一例を説明する図。
【図3】本発明による建物外壁における太陽熱集熱構造の他の例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。
図1は、太陽熱集熱装置の一例を示す。この太陽熱集熱装置Aは、樹脂材料で作られた外体10とその内部に配置された発泡樹脂材料で作られた断熱材層20とを有する。外体10は長さの長い袋状部材であり、気密構造とされていることが望ましい。ただし、わずかであれば、空気が出入りしていても差し支えない。
【0018】
外体10は、表面壁11と裏面壁12と左右の側面壁13,14と上下の端部壁15,16を有し、表面壁11と裏面壁12との間に、前記した断熱材層20が位置している。断熱材層20の左右の側面は、外体10の左右の側面壁13,14に隙間のない状態で当接しており、断熱材層20の長手方向の両端は外体10の上下の端部壁15,16には当接していない。すなわち、外体10の長手方向の両端部は、断熱材層20が存在しない領域17,18とされている。
【0019】
上記の構成であり、太陽熱集熱装置Aは、表面壁11と断熱材層20との間に第1の空間(以下、第1空気通路21という)を有し、また、裏面壁12と断熱材層20との間は第2の空間(以下、第2空気通路22という)を有している。そして、第1空気通路21と第2空気通路22の一方の端部は前記断熱材層が存在しない領域17で連通状態にあり、他方の端部は断熱材層が存在しない領域18で連通状態にある。言い換えれば、太陽熱集熱装置Aの内部には、第1空気通路21、断熱材層が存在しない領域17、第2空気通路22、断熱材層が存在しない領域18とがこの順で繋がる空気の循環路30が形成されている。
【0020】
図示のものでは、太陽熱集熱装置Aは、長さ方向のほぼ中央部でL字状に屈曲したものとして示されるが、これは例示であり、全体が直線状であってもよく、一方の端部に偏った位置に屈曲部を有していてもよい。太陽熱集熱装置Aが使用される場所に応じて、適宜の形状のものを選択すればよい。また、全体が1つの構造物として示されるが、複数の部品を連結することで、1つの太陽熱集熱装置Aとしてもよい。例えば、図1に示すものにおいて、垂直姿勢にある第1の直線部A1と水平姿勢にある第2の直線部A2とを曲がり部A3によって一体に連接した構成とすることもできる。それにより、製造を容易化することができる。
【0021】
図2は、上記の太陽熱集熱装置Aを用いた建物の太陽熱集熱構造の一例を示す。この太陽熱集熱構造30Aにおいて、建物は通常のものであってよく、基礎構造31と壁面構造32と屋根構造33を備える。基礎構造31はコンクリート基礎34を有し、その上に適宜の床材35が取り付けられている。壁面構造32は外装材36と内装材37を有し、外装材36と内装材37との間には、適宜の間隔で柱や間柱(不図示)が立て込まれている。また、内装材37に接するようにして発泡樹脂材料などからなる壁面断熱材(不図示)が配置される場合もある。屋根構造33は屋根材38と天井材(不図示)を備えている。
【0022】
太陽熱集熱構造30Aにおいて、上記した太陽熱集熱装置Aの垂直姿勢にある第1の直線部A1が、前記壁面構造32の柱や間柱の間における外装材36と内装材37の間に位置し、水平姿勢にある第2の直線部A2が前記床材35の裏面に接するようにして配置されている。すなわち、太陽熱集熱装置Aの垂直姿勢にある第1の直線部A1における前記第1空気通路21の部分が外装材36を介して太陽熱を受ける面となっている。
【0023】
この太陽熱集熱構造30Aでは、建物の壁面構造32を構成する外装材36に太陽光が照射すると、外装材36からの輻射熱によって、太陽熱集熱装置Aの第1空気通路21における外装材36に面している領域での空気が暖まり、第1空気通路21を上昇する。一方、太陽熱集熱装置Aの第2空気通路22は放熱環境にあり、暖まった空気が上端の断熱材層が存在しない領域17に達すると、そこで方向を転換して、第2空気通路22内を下降していく。
【0024】
外装材36に対する太陽光の照射が継続することで、第2空気通路22内を下降した空気は、下端側の断熱材層が存在しない領域18に達し、そこで方向を転換して第1空気通路21側に入り込み、そこを移動して、再び、太陽光が照射している外装材36の裏面に面した領域に到達する。すなわち、空気は、前記した循環路30内を循環し、その過程で、受熱による昇温と放熱による降温を繰り返す。
【0025】
図2に示す例において、壁面構造32の内装材37に接するようにして発泡樹脂材料などからなる壁面断熱材(不図示)が配置される場合には、昇温した空気が第2空気通路22を流れる過程で、壁面構造32の部分を流下するときにはあまり放熱せずに、床材35の裏面に達することができる。そして、床材35の裏面を流れる過程で大きく放熱する。それにより、床材35が暖められ、床暖房ひいては室内暖房に寄与するようになる。なお、この形態では、水平姿勢にある第2の直線部A2の裏面、すなわち、床材35と反対側の面に適宜の断熱材層を配置することにより、床暖房あるいは室内暖房の熱効率を向上させることができる。
【0026】
図示しないが、太陽熱集熱装置Aを、屋根構造33における屋根材38の裏面にまで延長させることもできる。この態様では、より広い面積を太陽熱受熱面とすることができるので、より高い集熱効果が得られる。また、単に壁面構造の部分のみに太陽熱集熱装置Aを配置して、内装材からの輻射熱で室内暖房を行うときには、直線状部分のみからなる太陽熱集熱装置を用いるようにする。
【0027】
図3は、太陽熱集熱装置Aを用いた建物の太陽熱集熱構造の他の例を示す。この太陽熱集熱構造30Bでは、コンクリート基礎34と床材35との間に、水を受熱材とする蓄熱槽40が形成されており、太陽熱集熱装置Aの一方端側が前記蓄熱槽40内に位置している。この態様では、太陽熱で昇温した空気の熱は、蓄熱槽40内で主に放熱されるようになり、水の温度が上昇する。その温水の熱を、夜間に、床暖房あるいは室内暖房として利用することができる。また、温水を風呂あるいは炊事等で利用することもできる。
【符号の説明】
【0028】
A…太陽熱集熱装置、
10…外体、
17,18…断熱材層が存在しない領域、
20…断熱材層、
21…第1空気通路、
22…第2空気通路、
30…空気の循環路、
30A,30B…太陽熱集熱装置を用いた建物の太陽熱集熱構造、
31…基礎構造、
32…壁面構造、
33…屋根構造、
34…コンクリート基礎、
35…床材、
36…外装材、
37…内装材、
38…屋根材、
40…蓄熱槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱受熱面側である第1空気通路と放熱面側である第2空気通路が断熱材層を挟んで並存し、かつ前記第1空気通路と前記第2空気通路とは断熱材層が存在しない両端部において連通することで空気の循環路が形成されていることを特徴とする太陽熱集熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽熱集熱装置が、建物の外装材と内装材との間に前記第1空気通路の全部または一部を外装材側として配置されていることを特徴とする建物の太陽熱集熱構造。
【請求項3】
請求項2に記載の建物の太陽熱集熱構造であって、さらに蓄熱槽を含み、前記太陽熱集熱装置の一方の端部側は前記蓄熱槽内に位置していることを特徴とする建物の太陽熱集熱構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の建物の太陽熱集熱構造であって、前記外装材は建物の壁面および屋根面の外装材を含み、前記内装材は建物の壁面および床面の内装材を含むことを特徴とする建物の太陽熱集熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−133161(P2011−133161A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292201(P2009−292201)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】