説明

太陽電池ストリング、太陽電池モジュールおよび太陽電池セル

【課題】太陽電池セルの実装密度が低下するのを抑制し、かつ、製造時間を短縮しながら、太陽電池セルの破壊を抑制することが可能な太陽電池ストリングを提供する。
【解決手段】この太陽電池ストリング1は、複数の太陽電池セル2と、配線基板3とを備える。太陽電池セル2の半導体基板10は、n型導電領域10cと、半導体基板10の裏面10b側に設けられたn+型導電領域10d、p型導電領域10eおよび10fとを含む。配線基板3は、太陽電池セル2aのn+型導電領域10dと太陽電池セル2bのp型導電領域10eとを電気的に接続し、太陽電池セル2aのp型導電領域10fと太陽電池セル2bのn+型導電領域10dとを電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池ストリング、太陽電池モジュールおよび太陽電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池は、地球環境問題への関心の高まりから、環境負荷の小さなクリーンなエネルギー源として注目が高まっている。
【0003】
太陽電池に用いられる材料としては、化合物半導体材料や有機材料を用いたものなど様々な種類があるが、現在はシリコン結晶を用いたものが主流となっている。
【0004】
太陽電池は、通常、太陽電池セル単体で使用されることは少なく、所定の出力が得られるように、複数の太陽電池セルが直列や並列に接続され、太陽電池ストリングが形成される。そして、太陽電池ストリングを封止材で封止することにより、太陽電池モジュールとして用いられる。
【0005】
しかしながら、太陽電池モジュールの使用中に、何らかの原因で一部の太陽電池セルに影が生じた場合には、他の太陽電池セルで発生する電圧が、影が生じた太陽電池セルに逆バイアス電圧として印加される。この逆バイアス電圧が、影が生じた太陽電池セルのブレークダウン電圧を超えると、影が生じた太陽電池セルが短絡破壊し、太陽電池モジュール全体の出力が低下する。
【0006】
そこで、逆バイアス電圧による破壊を抑制するために、種々の構造が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0007】
上記特許文献1には、直列に接続された複数の太陽電池セルと、複数のバイパスダイオードとを備えた太陽電池モジュールが開示されている。
【0008】
この太陽電池モジュールでは、太陽電池セルの受光面側の電極は、リード線などを用いて、一方側に隣接する太陽電池セルの裏面側の電極に接続されている。また、太陽電池セルの裏面側の電極は、リード線などを用いて、他方側に隣接する太陽電池セルの受光面側の電極に接続されている。このようにして、複数の太陽電池セルが直列に接続されている。
【0009】
また、この太陽電池モジュールでは、バイパスダイオードが、太陽電池セル毎に、太陽電池セルに並列に外付けされている。このため、この太陽電池モジュールでは、何らかの原因で一部の太陽電池セルに影が生じた場合に、影が生じた太陽電池セルに電流が流れないように電流をバイパスさせることができるので、影が生じた太陽電池セルが逆バイアス電圧により破壊されるのを抑制することができる。
【0010】
上記特許文献2には、光電変換用のpn接合と、光電変換用のpn接合に並列に接続されたバイパス用のpn接合とが一体的に形成された太陽電池セルが開示されている。
【0011】
この太陽電池セルでは、p型シリコン基板の受光面にn+型拡散層を形成し、p型シリコン基板とn+型拡散層とによって光電変換用のpn接合を構成している。また、p型シリコン基板の裏面の一部の領域に、n型拡散領域を形成するとともに、n型拡散領域の裏面の一部にp型拡散層を形成し、n型拡散領域とp型拡散層とによってバイパス用のpn接合を構成している。
【0012】
また、p型シリコン基板の受光面上には、n+型拡散層に電気的に接続される表面電極が形成されており、p型シリコン基板の裏面上には、p型シリコン基板に電気的に接続される裏面電極が形成されている。また、表面電極の一部は、p型シリコン基板の側面を通過するとともに裏面側まで達するように形成されており、p型拡散層に電気的に接続されている。また、p型シリコン基板の側面上などには、表面電極がp型シリコン基板やn型拡散領域に短絡するのを抑制するために、酸化膜が形成されている。
【0013】
上記特許文献2では、表面電極の一部を裏面側まで達するように形成しているので、隣接する太陽電池セル同士を、裏面側のみで接続することができる。
【0014】
また、上記特許文献2では、バイパス用のpn接合を光電変換用のpn接合に並列に接続することによって、上記特許文献1と同様、何らかの原因で一部の太陽電池セルに影が生じた場合に、影が生じた太陽電池セルに電流が流れないように電流をバイパスさせることができる。これにより、影が生じた太陽電池セルが逆バイアス電圧により破壊されるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平5−152596号公報(第1図)
【特許文献2】特開平3−24768号公報(第4頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記特許文献1では、太陽電池セル毎にバイパスダイオードを外付けするので、太陽電池セルと同じ数だけバイパスダイオードを取り付ける必要がある。このため、太陽電池モジュールの製造に時間がかかるとともに、太陽電池モジュールにおける太陽電池セルの実装密度が低下するという問題点がある。
【0017】
また、上記特許文献1では、隣接する太陽電池セル同士を電気的に接続して太陽電池モジュールを製造する際に、太陽電池セルの受光面側の電極と裏面側の電極との両方を配線する必要があるので、太陽電池モジュールの構造が複雑になるとともに、製造にさらに時間がかかるという問題点がある。また、隣接する太陽電池セル同士の間に、リード線などを通すための隙間を設ける必要があるので、太陽電池モジュールにおける太陽電池セルの実装密度が低下するという問題点がある。
【0018】
また、上記特許文献2では、p型シリコン基板の側面上などに酸化膜を形成するとともに、表面電極の一部を裏面側まで達するように形成するので、太陽電池セルの製造に時間がかかるという問題点がある。
【0019】
また、上記特許文献2では、p型シリコン基板とn+型拡散層とによって光電変換用のpn接合を構成するとともに、n型拡散領域とp型拡散層とによってバイパス用のpn接合を構成している。すなわち、光電変換用のpn接合とバイパス用のpn接合とを別々に形成しているので、太陽電池セルの製造に、さらに時間がかかるという問題点がある。
【0020】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、太陽電池セルの実装密度が低下するのを抑制し、かつ、製造時間を短縮しながら、太陽電池セルの破壊を抑制することが可能な太陽電池ストリング、太陽電池モジュールおよび太陽電池セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による太陽電池ストリングは、複数の太陽電池セルと、複数の太陽電池セル同士を電気的に接続する接続部材とを備え、太陽電池セルは、第1導電型の第1領域を有する半導体基板と、半導体基板の裏面に設けられ、第1領域よりも高濃度の不純物を有する第1導電型の第2領域と、半導体基板の裏面に設けられた第2導電型の第3領域および第4領域とを含み、複数の太陽電池セルは、互いに電気的に接続される第1の太陽電池セルと第2の太陽電池セルとを含み、接続部材は、第1の太陽電池セルの第2領域と第2の太陽電池セルの第3領域とを電気的に接続する第1接続部と、第1の太陽電池セルの第4領域と第2の太陽電池セルの第2領域とを電気的に接続する第2接続部とを含む。
【0022】
この第1の局面による太陽電池ストリングでは、第4領域と第1領域とにより、ダイオードを形成することができる。また、上記のように、接続部材を、第1の太陽電池セルの第2領域と第2の太陽電池セルの第3領域とを電気的に接続する第1接続部と、第1の太陽電池セルの第4領域と第2の太陽電池セルの第2領域とを電気的に接続する第2接続部とを含むように構成することによって、第1の太陽電池セルの第2領域と第2の太陽電池セルの第3領域とを電気的に接続することができるとともに、第1の太陽電池セルの第4領域と第2の太陽電池セルの第2領域とを電気的に接続することができる。これらにより、第2の太陽電池セルに並列に、第1の太陽電池セルの上記ダイオードを接続することができ、このダイオードを、バイパスダイオードとして機能させることができる。このため、何らかの原因で第2の太陽電池セルに影が生じた場合に、第2の太陽電池セルに電流が流れないように電流をバイパスさせることができるので、第2の太陽電池セルが逆バイアス電圧により破壊されるのを抑制することができる。
【0023】
このように、第1の局面による太陽電池ストリングでは、太陽電池セル毎にバイパスダイオードを外付けする必要がなくなるので、太陽電池セル毎にバイパスダイオードを外付けする場合に比べて、太陽電池ストリングの製造時間を短縮することができるとともに、太陽電池ストリングにおける太陽電池セルの実装密度が低下するのを抑制することができる。
【0024】
また、第1の局面による太陽電池ストリングでは、第1導電型の第1領域と第2導電型の第3領域とにより、太陽光に照射されることにより発電するダイオードが形成される。また、上記のように、第4領域と第1領域とにより、バイパスダイオードが形成される。すなわち、第1領域を、太陽光に照射されることにより発電するダイオードと、バイパスダイオードとに共用することができる。これにより、太陽光に照射されることにより発電するダイオードと、バイパスダイオードとを別々に形成する場合に比べて、太陽電池セルの製造時間を短縮することができる。
【0025】
また、第1の局面による太陽電池ストリングでは、上記のように、半導体基板の裏面に、第2領域、第3領域および第4領域を設けることによって、半導体基板の裏面側のみで配線することができるので、構造を簡素化することができるとともに、製造時間をより短縮することができる。
【0026】
また、半導体基板の裏面側のみで配線することができるので、隣接する太陽電池セル同士の間に、リード線などを通すための隙間を設ける必要がない。これにより、太陽電池セルの実装密度が低下するのをより抑制することができる。
【0027】
また、半導体基板の裏面に第2領域、第3領域および第4領域を設けることによって、半導体基板の受光面側に電極を設け、その電極の一部を裏面側まで達するように形成する必要がない。これにより、太陽電池セルの製造に時間がかかるのをより抑制することができる。
【0028】
また、第1の局面による太陽電池ストリングでは、太陽電池セルの受光面に、例えば電極などを設ける必要がないので、太陽電池セルの受光面積が小さくなるのを抑制することができる。これにより、発電効率が低下するのを抑制することができる。
【0029】
上記第1の局面による太陽電池ストリングにおいて、好ましくは、接続部材は、絶縁性の基材と、基材の表面上に形成された配線層からなる第1接続部および第2接続部とを含む。このように構成すれば、接続部材を用いて、第1の太陽電池セルと第2の太陽電池セルとを容易に電気的に接続することができる。また、上記のような接続部材を用いれば、接続部材上に複数の太陽電池セルを搭載した後、例えばリフロー処理などを行うことにより、複数の太陽電池セルと接続部材とを一度に電気的に接続することができる。これにより、太陽電池ストリングを容易に製造することができるとともに、製造時間をより短縮することができる。
【0030】
上記第1の局面による太陽電池ストリングにおいて、好ましくは、太陽電池セルは、半導体基板の受光面に設けられ、第4領域の受光面側を覆う遮光部を含む。このように構成すれば、第4領域が太陽光に照射されるのを抑制することができる。これにより、第4領域と第1領域とにより形成されるダイオード(パイパスダイオード)が発電することによる電力損失を抑制できるので、太陽電池セルの発電効率が低下するのを抑制することができる。
【0031】
上記第1の局面による太陽電池ストリングにおいて、好ましくは、第4領域は、半導体基板の裏面の端部近傍に設けられている。このように構成すれば、接続部材の第1接続部と第2接続部とが交差するのを容易に抑制することができる。すなわち、第1接続部および第2接続部の配線が複雑になるのを抑制することができる。
【0032】
上記第1の局面による太陽電池ストリングにおいて、好ましくは、太陽電池セルの各々には、第4領域が複数設けられている。このように構成すれば、第4領域と第1領域とにより形成されるダイオード(バイパスダイオード)に電流が流れる際に生じる熱を、分散させることができる。これにより、太陽電池セルが高温になるのを抑制することができるので、太陽電池セルの発電効率が低下するのを抑制することができる。
【0033】
上記第1の局面による太陽電池ストリングにおいて、第3領域と第4領域との間に、第2領域が配置されていてもよい。
【0034】
上記第1の局面による太陽電池ストリングにおいて、好ましくは、第2領域、第3領域および第4領域上には、それぞれ、第1電極、第2電極および第3電極が設けられている。このように構成すれば、太陽電池セルの第2領域、第3領域および第4領域を、容易に、接続部材に電気的に接続することができる。
【0035】
上記第1の局面による太陽電池ストリングにおいて、好ましくは、1つの接続部材に対して1つのバイパスダイオードが設けられており、バイパスダイオードは、第1の太陽電池セルに並列に接続されている。このように構成すれば、全ての太陽電池セルの各々に、並列にバイパスダイオード(第4領域と第1領域とにより形成されるダイオードを含む)を接続することができるので、いずれの太陽電池セルに影が生じた場合にも、太陽電池セルが破壊するのを抑制することができる。
【0036】
この発明の第2の局面による太陽電池モジュールは、上記の構成の太陽電池ストリングと、太陽電池ストリングを封止する封止材とを備える。このように構成すれば、太陽電池セルの実装密度が低下するのを抑制し、かつ、製造時間を短縮しながら、太陽電池セルの破壊を抑制することが可能な太陽電池モジュールを得ることができる。
【0037】
この発明の第3の局面による太陽電池セルは、第1導電型の第1領域を有する半導体基板と、半導体基板の裏面に設けられ、第1領域よりも高濃度の不純物を有する第1導電型の第2領域と、半導体基板の裏面に設けられた第2導電型の第3領域および第4領域とを備える。
【0038】
この第3の局面による太陽電池セルでは、第4領域と第1領域とにより、ダイオードを形成することができる。また、複数の太陽電池セルにより太陽電池ストリングを構成する場合に、複数の太陽電池セルのうちの第1の太陽電池セルの第2領域と複数の太陽電池セルのうちの第2の太陽電池セルの第3領域とを電気的に接続するとともに、第1の太陽電池セルの第4領域と第2の太陽電池セルの第2領域とを電気的に接続すれば、第2の太陽電池セルに並列に、第1の太陽電池セルの上記ダイオードを接続することができ、このダイオードを、バイパスダイオードとして機能させることができる。このため、何らかの原因で第2の太陽電池セルに影が生じた場合に、第2の太陽電池セルに電流が流れないように電流をバイパスさせることができるので、第2の太陽電池セルが逆バイアス電圧により破壊されるのを抑制することができる。
【0039】
このように、第3の局面による太陽電池セルを用いれば、複数の太陽電池セルにより太陽電池ストリングを構成する場合に、太陽電池セル毎にバイパスダイオードを外付けする必要がなくなるので、太陽電池セル毎にバイパスダイオードを外付けする場合に比べて、太陽電池ストリングの製造時間を短縮することができるとともに、太陽電池ストリングにおける太陽電池セルの実装密度が低下するのを抑制することができる。
【0040】
また、第3の局面による太陽電池セルでは、第1導電型の第1領域と第2導電型の第3領域とにより、太陽光に照射されることにより発電するダイオードが形成される。また、上記のように、第4領域と第1領域とにより、バイパスダイオードが形成される。すなわち、第1領域を、太陽光に照射されることにより発電するダイオードと、バイパスダイオードとに共用することができる。これにより、太陽光に照射されることにより発電するダイオードと、バイパスダイオードとを別々に形成する場合に比べて、太陽電池セルの製造時間を短縮することができる。
【0041】
また、第3の局面による太陽電池セルでは、上記のように、半導体基板の裏面に、第2領域、第3領域および第4領域を設ける。これにより、複数の太陽電池セルにより太陽電池ストリングを構成する場合に、半導体基板の裏面側のみで配線することができるので、太陽電池ストリングの構造を簡素化することができるとともに、製造時間をより短縮することができる。
【0042】
また、複数の太陽電池セルにより太陽電池ストリングを構成する場合に、半導体基板の裏面側のみで配線することができるので、隣接する太陽電池セル同士の間に、リード線などを通すための隙間を設ける必要がない。これにより、太陽電池セルの実装密度が低下するのをより抑制することができる。
【0043】
また、半導体基板の裏面に第2領域、第3領域および第4領域を設けることによって、半導体基板の受光面側に電極を設け、その電極の一部を裏面側まで達するように形成する必要がない。これにより、太陽電池セルの製造に時間がかかるのをより抑制することができる。
【0044】
また、第3の局面による太陽電池セルでは、太陽電池セルの受光面に、例えば電極などを設ける必要がないので、太陽電池セルの受光面積が小さくなるのを抑制することができる。これにより、発電効率が低下するのを抑制することができる。
【0045】
上記第3の局面による太陽電池セルにおいて、好ましくは、半導体基板の受光面に設けられ、第4領域の受光面側を覆う遮光部をさらに備える。このように構成すれば、第4領域が太陽光に照射されるのを抑制することができる。これにより、第4領域と第1領域とにより形成されるダイオード(パイパスダイオード)が発電することによる電力損失を抑制できるので、太陽電池セルの発電効率が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0046】
以上のように、本発明によれば、太陽電池セルの実装密度が低下するのを抑制し、かつ、製造時間を短縮しながら、太陽電池セルの破壊を抑制することが可能な太陽電池ストリングおよびそれを備えた太陽電池モジュールを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの構造を示した平面図である。
【図2】図1の100−100線に沿った断面図である。
【図3】図1の150−150線に沿った断面図である。
【図4】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの構造を示した平面図である。
【図5】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの構造を示した底面図である。
【図6】図4の200−200線に沿った断面図である。
【図7】図4の250−250線に沿った断面図である。
【図8】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの配線基板の構造を示した平面図である。
【図9】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの等価回路を示した図である。
【図10】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの動作を説明するための図である。
【図11】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの動作を説明するための図である。
【図12】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図13】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図14】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図15】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図16】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図17】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図18】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図19】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図20】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図21】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図22】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングの太陽電池セルの製造プロセスを説明するための断面図である。
【図23】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングを備えた太陽電池モジュールの構造を示した断面図である。
【図24】図1に示した本発明の一実施形態による太陽電池ストリングを備えた太陽電池モジュールの製造プロセスを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0049】
まず、図1〜図9を参照して、本発明の一実施形態による太陽電池ストリング1の構造について説明する。なお、理解を容易にするために、平面図や底面図であってもハッチングを施す場合もある。
【0050】
本発明の一実施形態による太陽電池ストリング1は、図1〜図3に示すように、複数の太陽電池セル2と、複数の太陽電池セル2を電気的に直列に接続する配線基板3とを備えている。なお、配線基板3は、本発明の「接続部材」の一例である。
【0051】
太陽電池セル2は、図4〜図7に示すように、半導体基板10と、半導体基板10の受光面10a上に設けられた遮光膜11と、半導体基板10の裏面10b上に設けられたn電極12、p電極13および14とを含んでいる。なお、遮光膜11は、本発明の「遮光部」の一例であり、n電極12は、本発明の「第1電極」の一例である。また、p電極13は、本発明の「第2電極」の一例であり、p電極14は、本発明の「第3電極」の一例である。
【0052】
半導体基板10は、n型のシリコン基板を用いて形成されているとともに、例えば、約50μm〜約400μmの厚みに形成されている。また、半導体基板10の受光面10aには、テクスチャ構造(図示せず)が形成されていることが好ましく、半導体基板10の受光面10a上には、反射防止膜(図示せず)が配置されていることが好ましい。このように構成すれば、太陽光が半導体基板10の受光面10aで反射するのを抑制することが可能である。
【0053】
ここで、本実施形態では、半導体基板10は、n型導電領域10cと、半導体基板10の裏面10b側に設けられ、n型導電領域10cよりも高濃度の不純物を有するn+型導電領域10dと、半導体基板10の裏面10b側に設けられたp型導電領域10eおよび10fとを含んでいる。そして、n型導電領域10cとp型導電領域10eとは、pn接合されており、n型導電領域10cとp型導電領域10eとによって、太陽光に照射されることにより発電するダイオード10gが形成されている。なお、n型導電領域10c、n+型導電領域10d、p型導電領域10eおよびp型導電領域10fは、それぞれ、本発明の「第1領域」、「第2領域」、「第3領域」および「第4領域」の一例である。また、n型およびn+型は、本発明の「第1導電型」の一例であり、p型は、本発明の「第2導電型」の一例である。
【0054】
図5に示すように、n+型導電領域10dおよびp型導電領域10eは、共に櫛形状に形成されている。そして、n+型導電領域10dおよびp型導電領域10eは、それぞれの櫛歯が互いに向かい合うように配置されているとともに、それぞれの櫛歯が噛み合わさって交互になるように配置されている。
【0055】
また、図5〜図7に示すように、n+型導電領域10d上に、n+型導電領域10dとオーミック接触するn電極12が形成されている。また、p型導電領域10e上に、p型導電領域10eとオーミック接触するp電極13が形成されている。これらn電極12およびp電極13も、n+型導電領域10dおよびp型導電領域10eと同様、共に櫛形状に形成されている。また、n電極12およびp電極13も、n+型導電領域10dおよびp型導電領域10eと同様、それぞれの櫛歯が互いに向かい合うように配置されているとともに、それぞれの櫛歯が噛み合わさって交互になるように配置されている。
【0056】
また、n+型導電領域10d、p型導電領域10e、n電極12およびp電極13は、それぞれの櫛歯がA方向(複数の太陽電池セル2(図1参照)が配置される方向)に延びるように配置されている。
【0057】
p型導電領域10fは、半導体基板10の裏面10bのA方向の一方側(A1方向)の端部近傍で、かつ、B方向(A方向と直交する方向)の両端部近傍に1つずつ設けられている。すなわち、p型導電領域10fは、半導体基板10の裏面10bのA1方向のコーナー部近傍に2つ設けられている。また、p型導電領域10fとn型導電領域10cとは、pn接合されており、後述するように、p型導電領域10fとn型導電領域10cとによって、バイパスダイオード10hが形成されている。
【0058】
また、p型導電領域10f上に、p型導電領域10fとオーミック接触するp電極14が形成されている。
【0059】
遮光膜11は、約300nm以上約1200nm以下の波長の光を透過しない材料を用いて形成されている。例えば、遮光膜11は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミドまたはエチレンビニルアセテートなどの絶縁性基材や、銀、銅またはアルミニウムなどの金属膜などを用いて形成することが可能であるが、遮光膜11の材料は、遮光性を有していれば上記のものに限定されない。
【0060】
また、遮光膜11は、半導体基板10の受光面10a上のA方向の一方側(A1方向)の端部で、かつ、B方向の両端部に1つずつ設けられている。すなわち、遮光膜11は、半導体基板10の受光面10a上のA1方向のコーナー部に2つ設けられている。
【0061】
また、本実施形態では、遮光膜11は、平面的に見てp型導電領域10fよりも大きい面積を有しているとともに、p型導電領域10fの受光面10a側を覆うように配置されている。具体的には、遮光膜11は、p型導電領域10fの受光面10a側を覆うとともに、n型導電領域10cのうちのp型導電領域10fの近傍に配置された部分の受光面10a側を覆い、かつ、n+型導電領域10dのうちのp型導電領域10fの近傍に配置された部分の受光面10a側を覆うように配置されている。これにより、遮光膜11で覆われた部分は太陽光に照射されることがないので、p型導電領域10fとn型導電領域10cとによって、発電に寄与しないダイオード(バイパスダイオード10h)が形成されている。
【0062】
配線基板3は、図1〜図3に示したように、例えば3つの太陽電池セル2が搭載されるように形成されている。なお、本実施形態では、配線基板3に3つの太陽電池セル2が搭載される場合について説明するが、配線基板3に、2つまたは4つ以上の太陽電池セル2を搭載してもよい。
【0063】
また、配線基板3は、図2および図8に示すように、A方向に延びるように形成されている。また、配線基板3は、一定の厚みに形成された絶縁性の基材20と、基材20の一方面20a上に形成された金属配線層からなる電極部21、22、23および24とによって形成されている。これら電極部21、22、23および24は、基材20の一方面20a上に形成された金属配線層を、例えばエッチングなどによりパターニングすることによって形成されている。このため、電極部21、22、23および24の上面は、同じ高さに形成されている。なお、一方面20aは、本発明の「表面」の一例である。
【0064】
基材20は、例えば、PET、PEN、ポリイミドまたはエチレンビニルアセテートなどの絶縁性基材を用いて形成することが可能であるが、基材20の材料は、絶縁性を有していれば上記のものに限定されない。
【0065】
電極部21、22、23および24は、例えば、銀、銅またはアルミニウムなどの金属により形成することが可能であるが、電極部21、22、23および24の材質は、導電性を有していれば上記のものに限定されない。
【0066】
また、図5および図8に示すように、電極部21、22、23および24は、太陽電池セル2のn電極12、p電極13および14に対応した形状に形成されている。
【0067】
具体的には、電極部21は、太陽電池セル2のp電極13に対応する櫛形状の部分21aと、基材20のA方向の他方側(A2方向側)の端部近傍に設けられた外部接続用の端子部21bとを含んでいる。電極部22は、太陽電池セル2のn電極12に対応する櫛形状の部分22aと、p電極13に対応する櫛形状の部分22bとを含んでいる。電極部23は、p電極14に対応する部分23aと、n電極12に対応する櫛形状の部分23bと、p電極13に対応する櫛形状の部分23cとを含んでいる。電極部24は、p電極14に対応する部分24aと、n電極12に対応する櫛形状の部分24bと、基材20のA1方向の端部近傍に設けられた外部接続用の端子部24cとを含んでいる。
【0068】
そして、図2および図3に示すように、3つの太陽電池セル2のうちの最もA2方向側に配置される太陽電池セル2aのn電極12、p電極13および14は、それぞれ、電極部22の部分22a、電極部21の部分21aおよび電極部23の部分23aに電気的に接続されている。
【0069】
また、3つの太陽電池セル2のうちの中央に配置される太陽電池セル2bのn電極12、p電極13および14は、それぞれ、電極部23の部分23b、電極部22の部分22bおよび電極部24の部分24aに電気的に接続されている。
【0070】
また、3つの太陽電池セル2のうちの最もA1方向側に配置される太陽電池セル2cのn電極12およびp電極13は、それぞれ、電極部24の部分24b、電極部23の部分23cに電気的に接続されている。なお、本実施形態では、太陽電池セル2cのp電極14は、配線基板3には電気的に接続されていない。
【0071】
3つの太陽電池セル2a、2bおよび2cを配線基板3に上記のように電気的に接続することによって、太陽電池セル2aのn+型導電領域10dと太陽電池セル2bのp型導電領域10eとが、電極部22を介して電気的に接続されているとともに、太陽電池セル2aのp型導電領域10fと太陽電池セル2bのn+型導電領域10dとが、電極部23を介して電気的に接続されている。この場合、太陽電池セル2aは、本発明の「第1の太陽電池セル」となり、太陽電池セル2bは、本発明の「第2の太陽電池セル」となる。また、電極部22は、本発明の「第1接続部」となり、電極部23は、本発明の「第2接続部」となる。
【0072】
そして、図9に示すように、太陽電池セル2aのバイパスダイオード10hが、太陽電池セル2bに並列に接続されている。なお、図9において、一点鎖線で囲われた領域は、太陽光が照射されない領域を示している。
【0073】
同様に、図2および図3に示すように、太陽電池セル2bのn+型導電領域10dと太陽電池セル2cのp型導電領域10eとが、電極部23を介して電気的に接続されているとともに、太陽電池セル2bのp型導電領域10fと太陽電池セル2cのn+型導電領域10dとが、電極部24を介して電気的に接続されている。この場合、太陽電池セル2bは、本発明の「第1の太陽電池セル」となり、太陽電池セル2cは、本発明の「第2の太陽電池セル」となる。また、電極部23は、本発明の「第1接続部」となり、電極部24は、本発明の「第2接続部」となる。
【0074】
そして、図9に示すように、太陽電池セル2bのバイパスダイオード10hが、太陽電池セル2cに並列に接続されている。
【0075】
また、本実施形態では、配線基板3には、太陽電池セル2aに並列になるように、外付けのバイパスダイオード30が接続されている。なお、外付けのバイパスダイオード30は、本発明の「バイパスダイオード」の一例である。また、図1〜図3では、外付けのバイパスダイオード30は省略している。
【0076】
また、本実施形態では、外付けのバイパスダイオード30は、1つの配線基板3に対して1つだけ設けられている。また、バイパスダイオード30のpn接合部は、発電しないように遮光されている。
【0077】
また、太陽電池セル2と配線基板3との電気的な接続は、半田などの導電性接着層(図示せず)を用いて行ってもよいし、後述するように、太陽電池モジュール101に製造する際に、封止材102および104などを用いて太陽電池セル2および配線基板3を上下方向から挟み込むように加圧することにより行ってもよい。いずれの場合にも、配線基板3上に複数の太陽電池セル2を搭載した後、例えばリフロー処理や封止材102および104を用いた加圧処理を行うことにより、複数の太陽電池セル2と配線基板3を一度に電気的に接続することが可能である。これにより、太陽電池ストリング1の製造時間を短縮することが可能である。
【0078】
なお、配線基板3に、太陽電池セル2を2つだけ搭載する場合、配線基板3には、電極部23を設けず、電極部21、22および24のみを設ければよい。また、配線基板3に、太陽電池セル2を4つ以上搭載する場合、配線基板3には、太陽電池セル2が増えた分だけ、電極部22と電極部24との間に電極部23を追加すればよい。
【0079】
次に、図10および図11を参照して、太陽電池ストリング1の動作について説明する。なお、図10および図11において、一点鎖線で囲われた領域は、太陽光が照射されない領域を示している。
【0080】
図10に示すように、太陽電池ストリング1の使用中に、いずれの太陽電池セル2にも影が生じない場合、全ての太陽電池セル2のダイオード10gに電流(I)が流れる。このとき、バイパスダイオード10hおよび外付けのバイパスダイオード30には、電流(I)は流れない。
【0081】
その一方、図11に示すように、例えば太陽電池セル2cに影が生じた場合、太陽電池セル2aおよび2bが発電することにより、太陽電池セル2cに逆バイアス電圧が印加される。そして、太陽電池セル2cのダイオード10gのn側(n+型導電領域10d)が正電位なるとともにp側(p型導電領域10e)が負電位になり、太陽電池セル2bのバイパスダイオード10hのn側(n+型導電領域10d)が負電位なるとともにp側(p型導電領域10f)が正電位になる。
【0082】
このため、太陽電池セル2cのダイオード10gには電流(I)が流れず、太陽電池セル2bのバイパスダイオード10hに電流(I)が流れる。すなわち、太陽電池セル2bのバイパスダイオード10hおよびダイオード10gと、太陽電池セル2aのダイオード10gとに、電流(I)が流れる。なお、このとき、太陽電池セル2aのバイパスダイオード10hと、外付けのバイパスダイオード30とには、電流(I)は流れない。
【0083】
このようにして、影が生じた太陽電池セル2cに電流が流れないように、電流がバイパスされ、逆バイアス電圧の上昇が抑制される。
【0084】
次に、図6、図7および図12〜図22を参照して、本発明の一実施形態による太陽電池セル2の製造プロセスについて説明する。なお、図13、図15、図17、図19および図21は、図4の200−200線に沿った断面に対応しており、図14、図16、図18、図20および図22は、図4の250−250線に沿った断面に対応している。
【0085】
まず、図12に示すように、例えば、約50μm〜約400μmの厚みに形成された、n型のシリコン基板からなる半導体基板10を準備する。なお、半導体基板10の厚みおよび材質は、上記のものに限定されない。
【0086】
そして、半導体基板10の少なくとも裏面10bの全面上に、300nm程度の厚みを有するSiO2膜などからなる拡散防止マスク50を形成する。このとき、半導体基板10の受光面10a上にも拡散防止マスク50が形成されてもよい。なお、拡散防止マスク50は、例えば熱酸化法などにより、半導体基板10の受光面10aおよび裏面10bに形成してもよい。
【0087】
その後、図13および図14に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、拡散防止マスク50の裏面上のうち、n+型導電領域10d(図6および図7参照)が形成される予定の領域以外の領域下の部分に、フォトレジスト51を形成する。
【0088】
そして、フォトレジスト51をマスクとしてエッチングを行うことにより、拡散防止マスク50の所定領域を除去する。これにより、半導体基板10のn+型導電領域10dが形成される予定の領域の裏面10bが露出する。その後、図15および図16に示すように、フォトレジスト51を除去した後、n型不純物である、例えばリンを含有するPOCl3(オキシ塩化リン)を拡散源として、約770度の温度で30分程度気相拡散処理を行うことによって、半導体基板10の裏面10b側の所定の領域に、n+型導電領域10dを形成する。
【0089】
次に、フッ化水素酸水溶液を用いて拡散防止マスク50を除去した後、図17および図18に示すように、半導体基板10の少なくとも裏面10bの全面上に、400nm程度の厚みを有するSiO2膜などからなる拡散防止マスク52を形成する。このとき、半導体基板10の受光面10a上にも拡散防止マスク52が形成されてもよい。なお、拡散防止マスク52は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより、形成してもよい。
【0090】
この拡散防止マスク52は、n+型導電領域10dを保護する機能と、後述するp型導電領域10eおよび10fの形成時において、p型不純物が半導体基板10の所定領域以外の領域に拡散するのを防止する機能とを有する。
【0091】
そして、図19および図20に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、拡散防止マスク52の裏面上のうち、p型導電領域10eおよび10f(図6および図7参照)が形成される予定の領域以外の領域下の部分上に、フォトレジスト53を形成する。
【0092】
その後、フォトレジスト53をマスクとしてエッチングを行うことにより、拡散防止マスク52の所定領域を除去する。これにより、半導体基板10のp型導電領域10eおよび10fが形成される予定の領域の裏面10bが露出する。そして、図21および図22に示すように、フォトレジスト53を除去した後、p型不純物である、例えばB(ボロン)を含有するBBr3(三臭化ホウ素)を拡散源として、約970度の温度で50分程度気相拡散処理を行うことによって、半導体基板10の裏面10b側の所定の領域に、p型導電領域10eおよび10fを形成する。
【0093】
その後、拡散防止マスク52を除去した後、図6および図7に示すように、半導体基板10のn+型導電領域10d、p型導電領域10eおよび10fの裏面10b上に、n電極12、p電極13および14をそれぞれ形成する。なお、n電極12、p電極13および14は、例えば、フォトリソグラフィ技術や真空蒸着法などを用いて形成することが可能である。
【0094】
次に、p型導電領域10fの受光面10a側を覆うように、半導体基板10の受光面10a上に、遮光膜11を形成する。
【0095】
なお、半導体基板10の受光面10aには、例えば水酸化カリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を用いたエッチングプロセスにより、テクスチャ構造(図示せず)を形成することが好ましい。また、テクスチャ構造を形成した後、半導体基板10の受光面10a上に、反射防止膜(図示せず)を形成することが好ましい。
【0096】
次に、図23を参照して、本発明の一実施形態による太陽電池ストリング1を備えた太陽電池モジュール101の構造について説明する。
【0097】
本発明の一実施形態による太陽電池ストリング1を備えた太陽電池モジュール101は、図23に示すように、太陽電池ストリング1と、太陽電池ストリング1の受光面側を覆う封止材102および透明基板103と、太陽電池ストリング1の裏面側を覆う封止材104および裏面フィルム105と、これらの外周部を固定する枠体106とを備えている。なお、太陽電池モジュール101には、発生した電流を外部に取り出すための端子ボックス(図示せず)が取り付けられている。
【0098】
封止材102は、例えば太陽光に対して透明な樹脂などを用いて形成されている。例えば、封止材102は、エチレンビニルアセテート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂およびゴム系樹脂からなる群から選択された少なくとも1つの透明樹脂を用いることが可能である。なお、封止材102の材料は、太陽光に対して透明であれば上記のものに限定されない。
【0099】
透明基板103は、例えば太陽光に対して透明なガラス基板などを用いて形成することが可能であるが、透明基板103の材質は、太陽光に対して透明であれば特に限定されない。
【0100】
封止材104は、封止材102と同じ樹脂を用いて形成してもよい。また、封止材104は、封止材102と異なり、例えば太陽光に対して透明ではない樹脂などを用いて形成してもよい。なお、図23では、封止材102と封止材104とは互いに接していないが、封止材102と封止材104とが互いに接着することにより一体的に形成されていてもよい。
【0101】
裏面フィルム105は、例えば従来から用いられている耐候性フィルムからなるシート材などを用いることが可能である。耐候性フィルムからなるシート材としては、絶縁性フィルムの間に金属フィルムを挟み込んだものを用いることが好ましい。なお、絶縁性フィルムおよび金属フィルムとしては、従来から公知であるものを用いることが可能である。例えば、絶縁性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどを用いることが可能である。また、金属フィルムとして、アルミニウムなどの金属フィルムを用いれば、例えば、水分や酸素などが封止材104側に透過するのを十分に抑制することが可能であり、太陽電池モジュール101の長期信頼性を十分に確保することが可能である。
【0102】
枠体106は、例えばアルミニウムなどにより形成されている。
【0103】
次に、図23および図24を参照して、本発明の一実施形態による太陽電池モジュール101の製造プロセスについて説明する。
【0104】
まず、図24に示すように、太陽電池ストリング1を、封止材102と封止材104との間に配置する。そして、封止材102、太陽電池ストリング1および封止材104を、透明基板103と裏面フィルム105との間に配置する。
【0105】
その後、透明基板103および裏面フィルム105を上下方向から加圧しながら、封止材102および104を加熱し硬化させる。これにより、透明基板103から裏面フィルム105までが一体化される。
【0106】
なお、太陽電池ストリング1を封止材102と封止材104との間に配置した状態で、太陽電池セル2と配線基板3とを、半田などの導電性接着層により予め固定していてもよいし、固定していなくてもよい。
【0107】
太陽電池セル2と配線基板3とを導電性接着層により予め固定していない場合であっても、封止材102および104を硬化させた状態では、封止材102および104の硬化による圧力により、太陽電池セル2と配線基板3とは電気的に接続される。このように、太陽電池セル2と配線基板3とを、半田などの導電性接着層を用いずに電気的に接続すれば、使用する材料の数を削減することが可能であるとともに、製造工程を簡略化することが可能である。
【0108】
そして、図23に示すように、一体化した透明基板103から裏面フィルム105までの外周部を、枠体106に嵌め込むことにより、太陽電池モジュール101が作製される。
【0109】
本実施形態では、上記のように、p型導電領域10fの受光面10a側を覆う遮光膜11を設けることによって、p型導電領域10fとn型導電領域10cとにより、発電に寄与しないダイオード(バイパスダイオード10h)を形成することができる。また、太陽電池セル2aのバイパスダイオード10hを、太陽電池セル2bに並列に接続するとともに、太陽電池セル2bのバイパスダイオード10hを、太陽電池セル2cに並列に接続することによって、何らかの原因で太陽電池セル2bや太陽電池セル2cに影が生じた場合に、太陽電池セル2bや太陽電池セル2cに電流が流れないように電流をバイパスさせることができるので、太陽電池セル2bや太陽電池セル2cが逆バイアス電圧により破壊されるのを抑制することができる。
【0110】
このように、本実施形態では、太陽電池セル2毎にバイパスダイオード30を外付けする必要がなくなるので、太陽電池セル2毎にバイパスダイオード30を外付けする場合に比べて、太陽電池ストリング1の製造時間を短縮することができるとともに、太陽電池ストリング1における太陽電池セル2の実装密度が低下するのを抑制することができる。
【0111】
また、本実施形態では、上記のように、n型導電領域10cとp型導電領域10eとにより、太陽光に照射されることにより発電するダイオード10gを形成している。また、p型導電領域10fとn型導電領域10cとにより、バイパスダイオード10hを形成している。すなわち、n型導電領域10cを、ダイオード10gとバイパスダイオード10hとに共用している。これにより、ダイオード10gとバイパスダイオード10hとを別々に形成する場合に比べて、太陽電池セル2の製造時間を短縮することができる。
【0112】
また、本実施形態では、上記のように、半導体基板10の裏面10b側に、n+型導電領域10d、p型導電領域10eおよび10fを設けることによって、半導体基板10の裏面10b側のみで配線することができるので、太陽電池ストリング1の構造を簡素化することができるとともに、製造時間をより短縮することができる。
【0113】
また、半導体基板10の裏面10b側のみで配線することができるので、隣接する太陽電池セル2同士の間に、リード線などを通すための隙間を設ける必要がない。これにより、太陽電池セル2の実装密度が低下するのをより抑制することができる。
【0114】
また、半導体基板10の裏面10b側に、n+型導電領域10d、p型導電領域10eおよび10fを設けることによって、半導体基板10の受光面10a側に電極を設け、その電極の一部を裏面側まで達するように形成する必要がない。これにより、太陽電池セル2の製造に時間がかかるのをより抑制することができる。
【0115】
また、本実施形態では、上記のように、太陽電池セル2の受光面10a上に、遮光膜11以外のもの(例えば電極など)を設ける必要がないので、太陽電池セル2の受光面積が小さくなるのを抑制することができる。これにより、発電効率が低下するのを抑制することができる。
【0116】
また、本実施形態では、上記のように、p型導電領域10fを、半導体基板10の裏面10bの端部近傍に設けることによって、配線基板3の、例えば、電極部22と電極部23とが交差するのを容易に抑制することができる。すなわち、例えば、配線基板3の配線が複雑になるのを抑制することができる。
【0117】
また、本実施形態では、上記のように、太陽電池セル2の各々に、p型導電領域10fを複数(2つ)設けることによって、p型導電領域10fとn型導電領域10cとにより形成されるダイオード(バイパスダイオード10h)に電流が流れる際に生じる熱を、分散させることができる。これにより、太陽電池セル2が高温になるのを抑制することができるので、太陽電池セル2の発電効率が低下するのを抑制することができる。
【0118】
また、本実施形態では、上記のように、太陽電池セル2aに並列に、バイパスダイオード30を接続することによって、全ての太陽電池セル2に並列に、バイパスダイオード30または10hを接続することができるので、いずれの太陽電池セル2に影が生じた場合にも、太陽電池セル2が破壊するのを抑制することができる。
【0119】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0120】
例えば、上記実施形態では、第1導電型をn型またはn+型とし、第2導電型をp型とした例について示したが、本発明はこれに限らず、第1導電型をp型またはp+型とし、第2導電型をn型としてもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、複数の太陽電池セルを直列に接続することにより太陽電池ストリングを構成する場合について示したが、本発明はこれに限らず、複数の太陽電池セルを直列および並列に接続することにより太陽電池ストリングを構成してもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、シリコン基板からなる半導体基板を用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、シリコン基板以外の半導体基板を用いてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、p型導電領域10fの受光面10a側を覆うように遮光膜11を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、p型導電領域10fの受光面10a側に遮光膜11を設けなくてもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、配線基板を用いて太陽電池セル同士を電気的に接続した例について示したが、本発明はこれに限らず、配線基板以外の接続部材を用いて、太陽電池セル同士を電気的に接続してもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、n+型導電領域10d、p型導電領域10eおよび10fを、気相拡散処理を行うことにより形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、n+型導電領域10d、p型導電領域10eおよび10fを、塗布拡散法を行うことにより形成してもよいし、不純物イオンをイオン注入することにより形成してもよい。また、例えばCVD法などを用いて、半導体基板に不純物層を積層することにより形成してもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、n型不純物として、リンを含有するPOCl3を用いるとともに、p型不純物として、Bを含有するBBr3を用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、n型不純物およびp型不純物として、POCl3やBBr3以外の不純物を用いてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、例えば水酸化カリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を用いて、半導体基板の受光面にテクスチャ構造を形成する例について示したが、本発明はこれに限らず、酸性水溶液や、反応性プラズマなどを用いて、半導体基板の受光面にテクスチャ構造を形成してもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、太陽電池モジュールに枠体を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、太陽電池モジュールに枠体を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 太陽電池ストリング
2 太陽電池セル
2a 太陽電池セル(第1の太陽電池セル)
2b 太陽電池セル(第1の太陽電池セル、第2の太陽電池セル)
2c 太陽電池セル(第2の太陽電池セル)
3 配線基板(接続部材)
10 半導体基板
10a 受光面
10b 裏面
10c n型導電領域(第1領域)
10d n+型導電領域(第2領域)
10e p型導電領域(第3領域)
10f p型導電領域(第4領域)
11 遮光膜(遮光部)
12 n電極(第1電極)
13 p電極(第2電極)
14 p電極(第3電極)
20 基材
20a 一方面(表面)
22 電極部(第1接続部)
23 電極部(第1接続部、第2接続部)
24 電極部(第2接続部)
30 バイパスダイオード
101 太陽電池モジュール
102 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セル同士を電気的に接続する接続部材とを備え、
前記太陽電池セルは、
第1導電型の第1領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板の裏面に設けられ、前記第1領域よりも高濃度の不純物を有する第1導電型の第2領域と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2導電型の第3領域および第4領域とを含み、
前記複数の太陽電池セルは、互いに電気的に接続される第1の太陽電池セルと第2の太陽電池セルとを含み、
前記接続部材は、
前記第1の太陽電池セルの第2領域と前記第2の太陽電池セルの第3領域とを電気的に接続する第1接続部と、
前記第1の太陽電池セルの第4領域と前記第2の太陽電池セルの第2領域とを電気的に接続する第2接続部とを含むことを特徴とする太陽電池ストリング。
【請求項2】
前記接続部材は、
絶縁性の基材と、
前記基材の表面上に形成された配線層からなる前記第1接続部および前記第2接続部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池ストリング。
【請求項3】
前記太陽電池セルは、前記半導体基板の受光面に設けられ、前記第4領域の前記受光面側を覆う遮光部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池ストリング。
【請求項4】
前記第4領域は、前記半導体基板の裏面の端部近傍に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池ストリング。
【請求項5】
前記太陽電池セルの各々には、前記第4領域が複数設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池ストリング。
【請求項6】
前記第3領域と前記第4領域との間に、前記第2領域が配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池ストリング。
【請求項7】
前記第2領域、前記第3領域および前記第4領域上には、それぞれ、第1電極、第2電極および第3電極が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池ストリング。
【請求項8】
1つの前記接続部材に対して1つのバイパスダイオードが設けられており、
前記バイパスダイオードは、前記第1の太陽電池セルに並列に接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池ストリング。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池ストリングと、
前記太陽電池ストリングを封止する封止材とを備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項10】
第1導電型の第1領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板の裏面に設けられ、前記第1領域よりも高濃度の不純物を有する第1導電型の第2領域と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2導電型の第3領域および第4領域とを備えることを特徴とする太陽電池セル。
【請求項11】
前記半導体基板の受光面に設けられ、前記第4領域の前記受光面側を覆う遮光部をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の太陽電池セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−165837(P2011−165837A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26111(P2010−26111)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】