太陽電池モジュールおよびその製造方法
【課題】 ぎらつきなどの外観不良を防止するために発生する従来の各種の問題を解決し、ぎらつき等のない外観に優れた薄膜系の太陽電池モジュールおよびそれを簡易かつ安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】 ガラス基板10と、ガラス基板10の光入射面と異なる面上に形成された光半導体素子とを備える。ガラス基板10は、光入射面に防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスからなる。光半導体素子は、透明電極層2、光半導体層3、および裏面電極層5が順次積層されてなる。
【解決手段】 ガラス基板10と、ガラス基板10の光入射面と異なる面上に形成された光半導体素子とを備える。ガラス基板10は、光入射面に防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスからなる。光半導体素子は、透明電極層2、光半導体層3、および裏面電極層5が順次積層されてなる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、太陽電池モジュールおよびその製造方法に関するものであり、特に、太陽光発電に用いられる太陽電池モジュールおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、CO2 の増加や資源の枯渇といった環境問題に対応して、新エネルギが注目され、中でも太陽光発電が有望視されている。その中心となる太陽電池モジュールには、結晶系と薄膜系のモジュールがある。
【0003】結晶系の太陽電池モジュールは、小面積の結晶板(ウエハ)をモジュールの大きさのガラス板(カバーガラス)の上に20〜30枚配置し、配線して、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)などの充填材、およびテドラ(Tedler)(登録商標)などの裏面保護フィルムを用いて封止保護して構成される。
【0004】また、薄膜系の太陽電池モジュール(基板一体型太陽電池モジュール)は、モジュールの大きさのガラス板の上に直接、透明電極層、薄膜半導体層、および裏面電極層を順次形成し、レーザスクライブ等のパターニング手段により各層を分離し、接続して、所望の電圧、電流を得ている。封止保護については、結晶系の太陽電池モジュールと同様の充填剤および表面保護フィルムが用いられる。このように構成される薄膜系の太陽電池モジュールは、発電に寄与する層が薄い点、構造材料が1枚で済む点、および配線が簡略な点で、結晶系の太陽電池モジュールよりもコスト面では優れている。
【0005】一方、太陽電池モジュールの設置についての最近の状況をみると、太陽光発電のように遠隔地で大量の太陽電池モジュールを並べて使用することはほとんどなく、住宅の屋根の上に設置したり、屋根の機能を兼ねる形としての屋根一体型太陽電池モジュールとして設置されることが極めて多い。また、昨今、太陽電池モジュールを屋根の上に設置して、住宅で消費する電力を賄うとともに、余剰電力を電力会社に売却する、いわゆる系統連継システムの普及によって、戸建て住宅を対象とした太陽光発電システムが増加している。このようなシステムにおいては、太陽電池モジュールを住宅の屋根に設置することを前提としているため、建物自体や周辺の住宅との美観が重要になる。こうした場合、太陽電池モジュールの表面が鏡のようになり、太陽光が反射され、「眩しさ」や「ぎらつき」などの問題が近隣の住民や通行人から指摘されるケースが考えられる。また、屋根の材料として用いる場合に、風景や空がモジュール表面に映り込み、外観上高級感が損なわれているとの指摘を建築設計者の間から受けていた。
【0006】このような問題について、以下のような工夫が行なわれている。たとえば、結晶系の太陽電池モジュールにおいては、カバーガラスに型板ガラスを用いることにより、カバーガラス表面で光の乱反射や拡散を起こすことが提案されている。実際、このような目的に使用するためのカバーガラスとして、専用の型板ガラスが、米国AFG社(AFG Industries Inc. )より「Sunadex」、「Solite」、「Solatex」などの商品名で販売されている。また、1982年の第16回IEEE Photovoltaic Specialists Conference(議事録p.828〜p.833)には、これらの型板ガラスが屋根瓦式太陽電池モジュールに利用されたことが、GE社(General Electric Company)により開示されている。
【0007】一方、薄膜系の太陽電池モジュールにおいては、小さな面積のサブモジュールを結晶系の太陽電池モジュールと同様な構造で封止して、そのカバーガラスに上述の専用型板ガラスを用いることが検討されている。また、たとえば特開平6−45628号公報には、完成した太陽電池モジュールの表面に、ビーズを混入した光を拡散する樹脂を塗布することが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、薄膜系の太陽電池モジュールの場合、上述した方法では、製造工程が通常の場合と比較して複雑となるため、前述したコスト面での薄膜系太陽電池モジュールのメリットがなくなってしまうという問題がある。
【0009】また、カバーガラスとして型板ガラスを張りつける方法においては、重量の増加、張りつけるための接着樹脂の耐光性の問題、太陽電池へ到達する光量の低下による光電変換特性の低下などの問題が起きてしまう。さらに、モジュール表面に樹脂を塗布する方法においては、樹脂の耐候性の問題が発生してしまう。
【0010】本発明の目的は、上述したぎらつき等の外観不良を防止するために発生する従来の各種の問題を解決し、ぎらつき等のない外観に優れた薄膜系の太陽電池モジュールおよびそれを簡易かつ安価に製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明による太陽電池モジュールは、第1および第2の面を有するガラス基板と、ガラス基板の第1の面上に形成された光半導体素子とを備え、ガラス基板は、光が入射される第2の面に防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスからなり、光半導体素子は、第1電極層、光半導体層、および第2電極層が順次積層されてなる。
【0012】請求項2の発明による太陽電池モジュールは、請求項1の発明の構成において、光半導体素子は、第1電極層、光半導体層、および第2電極層が複数の領域に分離され、ガラス基板の第2の面は、算術平均粗さRaが50μm〜500μmの範囲内にあり、凹凸の平均間隔Smが0.1mm〜10mmの範囲内にある。
【0013】請求項3の発明による太陽電池モジュールは、請求項1の発明の構成において、第1電極層、光半導体層、および第2電極層の少なくともいずれかは、レーザパターニング工程により複数の領域に分離され、ガラス基板の第2の面は、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲100μmから5000μmまでの対応する領域内の算術平均粗さRaが500μm以下である。
【0014】請求項4の発明による太陽電池モジュールは、請求項3の発明の構成において、ガラス基板の第2の面は、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲100μmから5000μmまでの対応する領域内の算術平均粗さRaが100μm以下である。
【0015】請求項5の発明による太陽電池モジュールの製造方法は、ガラス基板の第1の面上に、第1電極層、光半導体層、および第2電極層を順次積層する工程と、第1電極層、光半導体層、および第2電極層を複数の領域に分離する工程とを備え、第1電極層、光半導体層、および第2電極層の少なくともいずれかは、レーザパターニング工程により複数の領域に分離され、ガラス基板は、光が入射される第2の面に防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスからなり、レーザパターニング工程の前に、ガラス基板の第2の面の少なくともレーザ照射される部分上に、屈折率が1.3〜1.7の透明材料を配置してレーザ照射される面を平滑にする工程をさらに備える。
【0016】請求項6の発明による太陽電池モジュールの製造方法は、請求項5の発明の構成において、レーザパターニング工程の後、透明材料を除去する工程をさらに備える。
【0017】請求項7の発明による太陽電池モジュールの製造方法は、請求項5または請求項6の発明の構成において、透明材料の屈折率が1.45〜1.55である。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一例として、アモルファス半導体を含む太陽電池を1段縦方向に接続し、モジュール面内で集積、接続されて構成される太陽電池モジュールについて説明する。
【0019】図1は、本発明による第1実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【0020】図1を参照して、この太陽電池モジュールは、ガラス基板10と、ガラス基板10の光入射面と異なる面上に形成された透明電極層2と、透明電極層2上に形成された光半導体層3と、光半導体層3上に、反射促進層4を介在して形成された裏面電極層5とを備えている。
【0021】透明電極層2としては、ITO、SnO2 、またはこれらの積層体であるITO/SnO2 等の光を透過し得る材料が用いられる。
【0022】また、光半導体層3は、この実施の形態においては、p型非晶質シリコン半導体層31、i型非晶質シリコン半導体層32、およびn型非晶質シリコン半導体層33が順次積層されて構成されている。なお、本発明において、光半導体層3は、このような構造に限定されるものではない。すなわち、光半導体層3としては、非晶質シリコンa−Si、水素化非晶質シリコンa−Si:H、水素化非晶質シリコンカーバイドa−SiC:H、非晶質シリコンナイトライド等の他、シリコンと炭素、ゲルマニウム、錫などの他の元素との合金からなる非晶質シリコン系半導体の非晶質あるいは微結晶を、pin型、nip型、ni型、pn型、MIS型、ヘテロ接合型、ホモ接合型、ショットキバリア型あるいはこれらを組合せた型などに合成した半導体層が用いられる。
【0023】また、透明電極層2、光半導体層3、および裏面電極層5が順次積層されて構成される光半導体素子は、図1に示す領域Yの部分において、透明電極層2、光半導体層3、および裏面電極層5の少なくともいずれかの層に溝が形成されることにより、複数の領域Zに分離され、各領域Zは、互いに電気的に直列または並列に接続されている。
【0024】ガラス基板の材料としては、青板ガラス、白板ガラス等のソーダライムガラスの他、パイレックス、低アルカリガラス等の少し高級なボロシリケート系ガラス等が用いられる。また、ガラス基板10には、光入射面に凹凸形状が形成された型板ガラスが用いられている。具体的には、ガラス基板10の光入射面の表面粗さは、算術平均粗さRaが50〜500μmの範囲内にあり、凹凸の平均間隔Smが0.1mm〜10mmの範囲内にある。
【0025】図1に示す構造を有する太陽電池モジュールにおいて、「ぎらつき」等の外観不良を防止するために十分な防眩効果を得るためには、ガラス基板10の光入射面の表面粗さは、算術平均粗さRaの値が好ましくは50μm以上であり、より好ましくは100μm以上であるとよい。また、凹凸の平均間隔Smの値は、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは3mm以下であるとよい。
【0026】一方、後述するように、光半導体素子をレーザパターニング工程により複数の領域に分離することを考慮すると、ガラス基板10の光入射面の表面粗さは、算術平均粗さRaの値が好ましくは500μm以下であり、より好ましくは100μm以下であるとよい。また、凹凸の平均間隔Smの値は、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは1mm以上であるとよい。
【0027】このように構成される薄膜系太陽電池モジュールによれば、所望の電圧、電流を得ることができる。
【0028】次に、図1に示す第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法について説明する。図2〜図7は、図1に示す第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【0029】まず、図2を参照して、光入射面に所定の凹凸形状が形成された型板ガラス10の光入射面と異なる面の全面上に、透明電極層2を形成する。
【0030】次に、図3を参照して、透明電極層2が形成されたガラス基板10の所定の位置にレーザ光を照射して、透明電極層2の所定部分をガラス基板10が露出されるまで除去することにより、透明電極層2を複数の領域に分離する。レーザ光は、矢印Aに示すようにガラス基板10の光入射面側から照射してもよいし、矢印Bに示すように光入射面と異なる光半導体素子形成面側から照射してもよい。
【0031】次に、図4を参照して、透明電極層2、およびレーザ照射により露出されたガラス基板10上に、p型非晶質シリコン半導体層31、i型非晶質シリコン半導体層32、およびn型非晶質シリコン半導体層33を、順次積層する。この実施の形態においては、p型非晶質シリコン半導体層31、i型非晶質シリコン半導体層32、およびn型非晶質シリコン半導体層33の3層により、光半導体層3が構成されている。
【0032】次に、図5を参照して、透明電極層2および光半導体層3が形成されたガラス基板10の所定の位置にレーザ光を照射して、光半導体層3の所定部分を透明電極層2が露出されるまで除去することにより、光半導体層3を複数の領域に分離する。レーザ光は、矢印Aに示すようにガラス基板10の光入射面側から照射してもよいし、矢印Bに示すように光入射面と異なる半導体素子形成面側から入射してもよい。
【0033】次に、図6を参照して、光半導体層3、およびレーザ照射により露出された透明電極層2上に、反射促進層4を形成し、さらにその上に、裏面電極層5を形成する。なお、この実施の形態においては、光半導体層3と裏面電極層5との間に反射促進層4が介在されているが、光半導体層3上に直接裏面電極層5を形成してもよい。
【0034】次に、図7を参照して、透明電極層2、光半導体層3、反射促進層4、および裏面電極層5が形成されたガラス基板10の所定の位置にレーザ光を照射して、光半導体層3、反射促進層4、および裏面電極層5の所定部分を透明電極層2が露出されるまで除去することにより、光半導体層3、反射促進層4、および裏面電極層5を複数の領域に分離する。レーザ光は、矢印Aに示すようにガラス基板10の光入射面側から照射してもよいし、矢印Bに示すように光入射面と異なる光半導体素子形成面側から照射してもよい。
【0035】なお、この実施の形態においては、レーザ照射により、光半導体層3、反射促進層4、および裏面電極層5を、透明電極層2が露出されるまで除去しているが、反射促進層4および裏面電極層5のみを光半導体層3が露出されるまで除去してもよい。
【0036】続いて、透明電極層2および裏面電極層5に取出し電極を取付けた後、ガラス基板10の光半導体素子形成面を、EVA等の充填材、およびテドラ等の裏面保護フィルムを用いて封止、保護する。充填材としては、EVAの他、ポリビニルブチラール等を用いることもできる。これらのEVA(屈折率:1.482)、ポリビニルブチラール(屈折率:1.48〜1.49)等はともに、ガラス基板として用いられるソーダライムガラス(屈折率:1.51〜1.52)、ボロシリケート系ガラス(屈折率:1.47)等との屈折率が近くなるように設計されている。
【0037】このように封止して得られた太陽電池に、さらに端子ボックスおよびフレームを取付けることにより、第1実施形態の太陽電池モジュールが完成する。
【0038】図8は、本発明による第2実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【0039】図8を参照して、この太陽電池モジュールは、ガラス基板20の光入射面のうち、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分を中心としてその周囲の100μmから5000μmまでの対応する領域X内の算術平均粗さRaが、500μm以下となっている。一方、ガラス基板20の光入射面の他の領域は、防眩効果を奏するように凹凸形状が形成されている。
【0040】なお、この第2実施形態の太陽電池モジュールの他の構造は、図1に示す第1実施形態の太陽電池モジュールの構造と全く同様であるので、その説明は省略する。また、この第2実施形態の太陽電池モジュールの製造方法は、図2〜図7に示した第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法と全く同様であるので、その説明も省略する。
【0041】図9は、本発明による第3実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【0042】図9を参照して、この太陽電池モジュールは、ガラス基板30の光入射面の算術平均粗さRaが500μmより大きくなっている。
【0043】なお、この第3実施形態の太陽電池モジュールの他の構造は、図1に示す第1実施形態の太陽電池モジュールの構造と全く同様であるので、その説明は省略する。
【0044】次に、このように構成される第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法について説明する。
【0045】図10は、第3実施形態の太陽電池モジュールの製造における問題点を説明するための図である。
【0046】図10を参照して、この第3実施形態の太陽電池モジュールにおいては、ガラス基板30の光入射面の算術平均粗さRaが、図1に示す第1実施形態の太陽電池モジュールにおけるガラス基板10の光入射面の算術平均粗さRaよりも大きい。
【0047】そのため、図2〜図7に示すようにレーザスクライブ等のレーザパターニング工程を施した場合に、ガラス基板の光入射面に形成された凹凸形状の部分において、照射したレーザ光の散乱が生じる。その結果、レーザ加工すべき部分の周辺に余分なレーザエネルギが照射されて、各層の変質や不必要な加工が生じたり、加工部分にレーザエネルギが集中せず、必要な加工ができなくなる等の問題が生じる。
【0048】具体的には、図10の矢印Aに示すように、光入射面からレーザ光を照射した場合には、ガラス基板30の凹凸形状が形成された光入射面に到達したレーザ光が矢印に示すように散乱し、種々の部分にレーザ光が照射される。その結果、加工すべき部分のレーザ加工が不十分となるとともに、光半導体層3および反射促進層4の一部に不必要な加工が施され、ピンホールやショート欠陥等の欠陥部7が生じてしまう。
【0049】一方、図10の矢印Bに示すように、光半導体素子形成面からレーザ光を照射した場合には、ガラス基板30の凹凸形状が形成された光入射面に到達したレーザ光が矢印に示すように乱反射されて、加工すべき部分の周辺に照射される。その結果、光半導体層3の一部に不必要な加工が施され、ピンホールやショート欠陥等の欠陥部6が生じてしまう。
【0050】図11は、このような問題を解決し、レーザパターニング工程を用いた第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための断面図である。
【0051】図11を参照して、この方法においては、レーザスクライブ等のレーザパターニング工程の際に、少なくともレーザ照射される部分に、レーザ照射面を平滑にするためのレベリング剤81を塗布することにより、光の散乱を防止している。
【0052】レベリング剤81としては、ガラス基板として用いられるソーダライムガラス(屈折率:1.51〜1.52)やボロシリケート系ガラス(屈折率:1.47)と屈折率の近い材料が用いられる。好ましくは、屈折率が1.3〜1.7、より好ましくは、屈折率が1.45〜1.55の材料が、レベリング剤として好ましく用いられる。たとえば、屈折率が1.45〜1.55の材料をレベリング剤として用いた場合には、レーザスクライブにより100μm幅のパターニングを行なった場合にも、良好なエッジが得られる。
【0053】また、レベリング剤としては、透明な液体、グリス状のもの、もしくは透明な樹脂状のものでレーザ加工前の塗布が容易なものが好ましく用いられる。レーザ加工後においては、レベリング剤をそのまま残す場合と除去する場合とがあり、安全性、工程の状況等に応じて下記の例に限定されず適宜選択される。また、レベリング剤は、レーザ加工される部分にのみ塗布してもよいし、レーザ加工後に除去する場合であればガラス基板の光入射面の全面に塗布してもよい。
【0054】具体的に、固体の材料であり、レーザ加工後もそのまま残しておくレベリング材の例としては、酢酸ビニル樹脂(屈折率:1.45〜1.47)、ポリエチレン(屈折率:1.51)、ポリエステル(屈折率:1.523〜1.57)、メタクリル酸メチル樹脂(屈折率:1.488〜1.49)、塩化ビニル樹脂(屈折率:1.54〜1.55)、ポリビニールアルコール(屈折率:1.49〜1.55)等が挙げられる。また、EVA(屈折率:1.482)、ポリビニルブチラール(屈折率:1.48〜1.49)等の樹脂は、ガラス基板材料と屈折率が近くなるように設計され、従来より太陽電池モジュールの充填材としても用いられているため、容易に入手できる点で特に好ましく用いられる。
【0055】一方、液体系の材料であり、レーザ加工後除去するレベリング剤の例としては、o−キシレン(屈折率:1.51)、グリセリン(屈折率:1.48)、クロロベンゼン(屈折率:1.52)、テトラクロロエチレン(屈折率:1.51)、四塩化炭素(屈折率:1.461)、エチルベンゼン(屈折率:1.5)等が挙げられる。また、従来より結晶の屈折率を測定する手法である液浸法で用いられる液体の中で、屈折率が1.5に近いものとして、1,2−ジブロモプロパン(屈折率:1.516)やテレビン油と1,2−ジブロモエチレンの混合液(屈折率:1.48〜1.535)等があり、これらもレベリング剤として適宜利用できる。さらに、水(屈折率:1.33)は、取扱いが容易で安全性に優れているため、レベリング剤として特に好ましく用いられる。
【0056】また、図12は、レーザパターニング工程を用いた第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の他の例を説明するための断面図である。
【0057】図12を参照して、この方法においては、レーザスクライブ等のレーザパターニング工程の際に、ガラス基板30を、蓋のない容器92内に収容された水91中に浸漬しながら、レーザ照射を行なっている。前述したように、水の屈折率はガラスの屈折率と大変近い。したがって、この方法によれば、図11においてレベリング剤を塗布した場合と同様に、レーザ照射面が平滑となる。その結果、光の散乱が防止され、良好なパターニングを行なうことができる。
【0058】
【実施例】
(実施例1)以下のように、図1に示す構造の太陽電池モジュールを作製した。
【0059】ガラス基板10として、型板加工した白板ガラス(フロートガラスで鉄イオンを除去したもの)を用いた。ガラス基板10の光入射面には、算術平均粗さRaが300μmであり、凹凸の平均間隔Smが1mmの凹凸形状が形成されていた。ガラス基板10のサイズは、450mm×900mmであり、モジュールの強度を維持するため厚みが4mmであった。
【0060】このガラス基板10の凹凸形状が形成された光入射面と異なる面上に、図2に示すように、厚さ約700nmのSnO2 透明電極層2を形成した。形成されたSnO2 層2の表面は、200nm程度の凹凸を有していた。
【0061】次に、形成されたSnO2 透明電極層2を、図3に示すように、レーザスクライブにてパターン加工した。
【0062】次に、図4に示すように、SnO2 層2および露出されたガラス基板10上に、プラズマCVD法を用いて、光半導体層3を形成した。具体的には、SiH4、B2 H6 およびCH4 を分解してp型水素化非晶質シリコンカーバイドa−SiC:H層31を、SiH4 を分解してi型水素化非晶質シリコンa−Si:H層32を、SiH4 およびPH3 を分解してn型水素化非晶質シリコンa−Si:H層33を、順次積層して、光半導体層3を形成した。
【0063】次に、形成された光半導体層3を、図5に示すように、レーザスクライブにてパターン加工した。
【0064】続いて、図6に示すように、光半導体層および露出されたSiO2 透明電極層2上に、スパッタ法を用いて、ZnOからなる反射促進層4と、高光反射金属としてAgからなる裏面電極層5とを積層した。
【0065】次に、形成された反射促進層4および裏面電極層5を、図7に示すように、レーザスクライブにてパターン加工した。
【0066】最後に、透明電極層2および裏面電極層5に取出し電極を接続した後、光半導体素子形成面をEVAおよびテドラを用いて封止、保護し、端子ボックスおよびフレームを取付けた。
【0067】このようにして、図1に示す構造を有する太陽電池モジュールが得られた。この太陽電池モジュールにおいて、レーザスクライブにより溝が形成された領域Yの長さは約300μmであり、複数に分離された光半導体素子の各領域Zの長さは約9mmであった。
【0068】レーザスクライブの際には、図3、5および7の矢印Aに示すガラス基板10の光入射面側からと、矢印Bに示す光半導体素子形成面側からとのいずれからも、レーザ照射を試みた。その結果、いずれの側からレーザ照射を行なった場合にも、良好なパターンを形成することができ、レーザパターニング工程における問題は何ら生じなかった。
【0069】このようにして得られた太陽電池モジュールを屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、ぎらつきのない良好な外観が得られることがわかった。
【0070】(比較例1)ガラス基板として、通常の平面ガラスを用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製した。
【0071】図13は、得られた太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【0072】図13を参照して、この太陽電池モジュールにおいては、ガラス基板40の光入射面は、凹凸形状が形成されておらず、平滑であった。なお、他の構造については、図1に示す実施例1の太陽電池モジュールと全く同様であるので、その説明は省略する。
【0073】このようにして得られた太陽電池モジュールを屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、鏡面状の反射による周囲の風景の映り込みがあり、建材として外観上不適当であった。
【0074】(比較例2)ガラス基板として、光入射面に算術平均粗さRaが600μmであり、凹凸の平均間隔Smが1mmの凹凸形状が形成された型板ガラスを用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製した。
【0075】その結果、光半導体素子形成面側からレーザ光を照射した場合には、図10に示すように、光の乱反射によってピンホールが生じ、ショート欠陥ができた。また、光入射面側からレーザ光を照射した場合にも、図10に示すように、光の散乱によって所望の部分以外の部分が加工されてしまい、パターニングを良好に行なうことができなかった。
【0076】(比較例3)ガラス基板として、光入射面に算術平均粗さRaが200μmであり、凹凸の平均間隔Smが0.05mmの凹凸形状が形成された型板ガラスを用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製した。
【0077】その結果、光半導体素子形成面側からレーザ光を照射した場合には、図10に示すように、光の乱反射によってピンホールが生じ、ショート欠陥ができた。また、光入射面側からレーザ光を照射した場合にも、図10に示すように、光の散乱によって所望の部分以外の部分が加工されてしまい、パターニングを良好に行なうことができなかった。
【0078】(実施例2)ガラス基板として、光入射面のうち、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲1000μmの対応する領域内の算術平均粗さRaが50μmであり、凹凸の平均間隔Smが1mmであり、光入射面の他の領域には光拡散による防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスを用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製した。
【0079】レーザスクライブの際には、ガラス基板側からと光半導体素子形成面側からとのいずれからも、レーザ照射を試みた。その結果、いずれの側からレーザ照射を行なった場合にも、良好なパターンを形成することができ、レーザパターニング工程における問題は何ら生じなかった。
【0080】また、このようにして得られた太陽電池モジュールを、屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、ぎらつきのない良好な外観が得られることがわかった。
【0081】(実施例3)ガラス基板として、光入射面のうち、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲1000μmの対応する領域が、通常の平面ガラスと同等に平滑なテクスチャを有しており、光入射面の他の領域には光拡散による防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスを用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製した。
【0082】レーザスクライブの際には、ガラス基板の光入射面側からと、光半導体素子形成面側からとのいずれからも、レーザ照射を試みた。その結果、いずれの側からレーザ照射を行なった場合にも、良好なパターンを形成することができ、レーザパターニング工程における問題は何ら生じなかった。
【0083】このようにして得られた太陽電池モジュールを、屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、ぎらつきのない良好な外観が得られることがわかった。
【0084】(実施例4)ガラス基板として、比較例2で用いたのと同様の形状を有する型板ガラスを用い、図1111で説明した方法に従い、太陽電池モジュールを作製した。
【0085】すなわち、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲1000μmの対応する領域上に、レベリング剤として、四塩化炭素を塗布した後、レーザスクライブ加工を行なった。レーザ加工後は、レベリング剤を除去した。
【0086】レーザスクライブの際には、ガラス基板の光入射面側からと、光半導体素子形成面側からとのいずれからも、レーザ照射を試みた。その結果、いずれの側からレーザ照射を行なった場合にも、良好なパターンを形成することができ、レーザパターニング工程における問題は何ら生じなかった。
【0087】このようにして得られた太陽電池モジュールを、屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、ぎらつきのない良好な外観が得られることがわかった。
【0088】(実施例5)ガラス基板として、比較例2で用いたのと同様の形状を有する型板ガラスを用い、図1212で説明した方法に従い、太陽電池モジュールを作製した。
【0089】始めに、図12に示すように、光入射面が上になるようにしてガラス基板30を水91中に浸漬しながら、矢印Aに示すようにレーザ照射を行なった。次に、光入射面が下になるようにしてガラス基板30を水91中に浸漬しながらレーザ照射を行なった。このようにして、ガラス基板30の光入射面側からと、光半導体素子形成面側からとのいずれからも、レーザ照射を試みた。その結果、いずれの側からレーザ照射を行なった場合にも、良好なパターンを形成することができ、レーザパターニング工程における問題は何ら生じなかった。
【0090】このようにして得られた太陽電池モジュールを、屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、ぎらつきのない良好な外観が得られることがわかった。
【0091】
【発明の効果】以上説明したように、本願発明によれば、従来ガラス基板として用いていた通常の平面ガラスに代えて、光入射面に所定の凹凸形状が形成された型板ガラスを用いる以外は、僅かな材料、工程の変更のみで、防眩対策のなされた薄膜系太陽電池モジュールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図3】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図4】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図5】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図6】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図7】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図8】本発明による第2実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【図9】本発明による第3実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【図10】第3実施形態の太陽電池モジュールの製造における問題点を説明するための図である。
【図11】本発明によるレーザパターニング工程を用いた第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図12】本発明によるレーザパターニング工程を用いた第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の他の例を説明するための断面図である。
【図13】比較例の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
2 透明電極層
3 光半導体層
4 反射促進層
5 裏面電極層
6、7 欠陥部
10、20、30、40 ガラス基板
31、32、33 非晶質シリコン半導体層
81 レベリング剤
91 水
なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、太陽電池モジュールおよびその製造方法に関するものであり、特に、太陽光発電に用いられる太陽電池モジュールおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、CO2 の増加や資源の枯渇といった環境問題に対応して、新エネルギが注目され、中でも太陽光発電が有望視されている。その中心となる太陽電池モジュールには、結晶系と薄膜系のモジュールがある。
【0003】結晶系の太陽電池モジュールは、小面積の結晶板(ウエハ)をモジュールの大きさのガラス板(カバーガラス)の上に20〜30枚配置し、配線して、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)などの充填材、およびテドラ(Tedler)(登録商標)などの裏面保護フィルムを用いて封止保護して構成される。
【0004】また、薄膜系の太陽電池モジュール(基板一体型太陽電池モジュール)は、モジュールの大きさのガラス板の上に直接、透明電極層、薄膜半導体層、および裏面電極層を順次形成し、レーザスクライブ等のパターニング手段により各層を分離し、接続して、所望の電圧、電流を得ている。封止保護については、結晶系の太陽電池モジュールと同様の充填剤および表面保護フィルムが用いられる。このように構成される薄膜系の太陽電池モジュールは、発電に寄与する層が薄い点、構造材料が1枚で済む点、および配線が簡略な点で、結晶系の太陽電池モジュールよりもコスト面では優れている。
【0005】一方、太陽電池モジュールの設置についての最近の状況をみると、太陽光発電のように遠隔地で大量の太陽電池モジュールを並べて使用することはほとんどなく、住宅の屋根の上に設置したり、屋根の機能を兼ねる形としての屋根一体型太陽電池モジュールとして設置されることが極めて多い。また、昨今、太陽電池モジュールを屋根の上に設置して、住宅で消費する電力を賄うとともに、余剰電力を電力会社に売却する、いわゆる系統連継システムの普及によって、戸建て住宅を対象とした太陽光発電システムが増加している。このようなシステムにおいては、太陽電池モジュールを住宅の屋根に設置することを前提としているため、建物自体や周辺の住宅との美観が重要になる。こうした場合、太陽電池モジュールの表面が鏡のようになり、太陽光が反射され、「眩しさ」や「ぎらつき」などの問題が近隣の住民や通行人から指摘されるケースが考えられる。また、屋根の材料として用いる場合に、風景や空がモジュール表面に映り込み、外観上高級感が損なわれているとの指摘を建築設計者の間から受けていた。
【0006】このような問題について、以下のような工夫が行なわれている。たとえば、結晶系の太陽電池モジュールにおいては、カバーガラスに型板ガラスを用いることにより、カバーガラス表面で光の乱反射や拡散を起こすことが提案されている。実際、このような目的に使用するためのカバーガラスとして、専用の型板ガラスが、米国AFG社(AFG Industries Inc. )より「Sunadex」、「Solite」、「Solatex」などの商品名で販売されている。また、1982年の第16回IEEE Photovoltaic Specialists Conference(議事録p.828〜p.833)には、これらの型板ガラスが屋根瓦式太陽電池モジュールに利用されたことが、GE社(General Electric Company)により開示されている。
【0007】一方、薄膜系の太陽電池モジュールにおいては、小さな面積のサブモジュールを結晶系の太陽電池モジュールと同様な構造で封止して、そのカバーガラスに上述の専用型板ガラスを用いることが検討されている。また、たとえば特開平6−45628号公報には、完成した太陽電池モジュールの表面に、ビーズを混入した光を拡散する樹脂を塗布することが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、薄膜系の太陽電池モジュールの場合、上述した方法では、製造工程が通常の場合と比較して複雑となるため、前述したコスト面での薄膜系太陽電池モジュールのメリットがなくなってしまうという問題がある。
【0009】また、カバーガラスとして型板ガラスを張りつける方法においては、重量の増加、張りつけるための接着樹脂の耐光性の問題、太陽電池へ到達する光量の低下による光電変換特性の低下などの問題が起きてしまう。さらに、モジュール表面に樹脂を塗布する方法においては、樹脂の耐候性の問題が発生してしまう。
【0010】本発明の目的は、上述したぎらつき等の外観不良を防止するために発生する従来の各種の問題を解決し、ぎらつき等のない外観に優れた薄膜系の太陽電池モジュールおよびそれを簡易かつ安価に製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明による太陽電池モジュールは、第1および第2の面を有するガラス基板と、ガラス基板の第1の面上に形成された光半導体素子とを備え、ガラス基板は、光が入射される第2の面に防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスからなり、光半導体素子は、第1電極層、光半導体層、および第2電極層が順次積層されてなる。
【0012】請求項2の発明による太陽電池モジュールは、請求項1の発明の構成において、光半導体素子は、第1電極層、光半導体層、および第2電極層が複数の領域に分離され、ガラス基板の第2の面は、算術平均粗さRaが50μm〜500μmの範囲内にあり、凹凸の平均間隔Smが0.1mm〜10mmの範囲内にある。
【0013】請求項3の発明による太陽電池モジュールは、請求項1の発明の構成において、第1電極層、光半導体層、および第2電極層の少なくともいずれかは、レーザパターニング工程により複数の領域に分離され、ガラス基板の第2の面は、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲100μmから5000μmまでの対応する領域内の算術平均粗さRaが500μm以下である。
【0014】請求項4の発明による太陽電池モジュールは、請求項3の発明の構成において、ガラス基板の第2の面は、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲100μmから5000μmまでの対応する領域内の算術平均粗さRaが100μm以下である。
【0015】請求項5の発明による太陽電池モジュールの製造方法は、ガラス基板の第1の面上に、第1電極層、光半導体層、および第2電極層を順次積層する工程と、第1電極層、光半導体層、および第2電極層を複数の領域に分離する工程とを備え、第1電極層、光半導体層、および第2電極層の少なくともいずれかは、レーザパターニング工程により複数の領域に分離され、ガラス基板は、光が入射される第2の面に防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスからなり、レーザパターニング工程の前に、ガラス基板の第2の面の少なくともレーザ照射される部分上に、屈折率が1.3〜1.7の透明材料を配置してレーザ照射される面を平滑にする工程をさらに備える。
【0016】請求項6の発明による太陽電池モジュールの製造方法は、請求項5の発明の構成において、レーザパターニング工程の後、透明材料を除去する工程をさらに備える。
【0017】請求項7の発明による太陽電池モジュールの製造方法は、請求項5または請求項6の発明の構成において、透明材料の屈折率が1.45〜1.55である。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一例として、アモルファス半導体を含む太陽電池を1段縦方向に接続し、モジュール面内で集積、接続されて構成される太陽電池モジュールについて説明する。
【0019】図1は、本発明による第1実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【0020】図1を参照して、この太陽電池モジュールは、ガラス基板10と、ガラス基板10の光入射面と異なる面上に形成された透明電極層2と、透明電極層2上に形成された光半導体層3と、光半導体層3上に、反射促進層4を介在して形成された裏面電極層5とを備えている。
【0021】透明電極層2としては、ITO、SnO2 、またはこれらの積層体であるITO/SnO2 等の光を透過し得る材料が用いられる。
【0022】また、光半導体層3は、この実施の形態においては、p型非晶質シリコン半導体層31、i型非晶質シリコン半導体層32、およびn型非晶質シリコン半導体層33が順次積層されて構成されている。なお、本発明において、光半導体層3は、このような構造に限定されるものではない。すなわち、光半導体層3としては、非晶質シリコンa−Si、水素化非晶質シリコンa−Si:H、水素化非晶質シリコンカーバイドa−SiC:H、非晶質シリコンナイトライド等の他、シリコンと炭素、ゲルマニウム、錫などの他の元素との合金からなる非晶質シリコン系半導体の非晶質あるいは微結晶を、pin型、nip型、ni型、pn型、MIS型、ヘテロ接合型、ホモ接合型、ショットキバリア型あるいはこれらを組合せた型などに合成した半導体層が用いられる。
【0023】また、透明電極層2、光半導体層3、および裏面電極層5が順次積層されて構成される光半導体素子は、図1に示す領域Yの部分において、透明電極層2、光半導体層3、および裏面電極層5の少なくともいずれかの層に溝が形成されることにより、複数の領域Zに分離され、各領域Zは、互いに電気的に直列または並列に接続されている。
【0024】ガラス基板の材料としては、青板ガラス、白板ガラス等のソーダライムガラスの他、パイレックス、低アルカリガラス等の少し高級なボロシリケート系ガラス等が用いられる。また、ガラス基板10には、光入射面に凹凸形状が形成された型板ガラスが用いられている。具体的には、ガラス基板10の光入射面の表面粗さは、算術平均粗さRaが50〜500μmの範囲内にあり、凹凸の平均間隔Smが0.1mm〜10mmの範囲内にある。
【0025】図1に示す構造を有する太陽電池モジュールにおいて、「ぎらつき」等の外観不良を防止するために十分な防眩効果を得るためには、ガラス基板10の光入射面の表面粗さは、算術平均粗さRaの値が好ましくは50μm以上であり、より好ましくは100μm以上であるとよい。また、凹凸の平均間隔Smの値は、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは3mm以下であるとよい。
【0026】一方、後述するように、光半導体素子をレーザパターニング工程により複数の領域に分離することを考慮すると、ガラス基板10の光入射面の表面粗さは、算術平均粗さRaの値が好ましくは500μm以下であり、より好ましくは100μm以下であるとよい。また、凹凸の平均間隔Smの値は、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは1mm以上であるとよい。
【0027】このように構成される薄膜系太陽電池モジュールによれば、所望の電圧、電流を得ることができる。
【0028】次に、図1に示す第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法について説明する。図2〜図7は、図1に示す第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【0029】まず、図2を参照して、光入射面に所定の凹凸形状が形成された型板ガラス10の光入射面と異なる面の全面上に、透明電極層2を形成する。
【0030】次に、図3を参照して、透明電極層2が形成されたガラス基板10の所定の位置にレーザ光を照射して、透明電極層2の所定部分をガラス基板10が露出されるまで除去することにより、透明電極層2を複数の領域に分離する。レーザ光は、矢印Aに示すようにガラス基板10の光入射面側から照射してもよいし、矢印Bに示すように光入射面と異なる光半導体素子形成面側から照射してもよい。
【0031】次に、図4を参照して、透明電極層2、およびレーザ照射により露出されたガラス基板10上に、p型非晶質シリコン半導体層31、i型非晶質シリコン半導体層32、およびn型非晶質シリコン半導体層33を、順次積層する。この実施の形態においては、p型非晶質シリコン半導体層31、i型非晶質シリコン半導体層32、およびn型非晶質シリコン半導体層33の3層により、光半導体層3が構成されている。
【0032】次に、図5を参照して、透明電極層2および光半導体層3が形成されたガラス基板10の所定の位置にレーザ光を照射して、光半導体層3の所定部分を透明電極層2が露出されるまで除去することにより、光半導体層3を複数の領域に分離する。レーザ光は、矢印Aに示すようにガラス基板10の光入射面側から照射してもよいし、矢印Bに示すように光入射面と異なる半導体素子形成面側から入射してもよい。
【0033】次に、図6を参照して、光半導体層3、およびレーザ照射により露出された透明電極層2上に、反射促進層4を形成し、さらにその上に、裏面電極層5を形成する。なお、この実施の形態においては、光半導体層3と裏面電極層5との間に反射促進層4が介在されているが、光半導体層3上に直接裏面電極層5を形成してもよい。
【0034】次に、図7を参照して、透明電極層2、光半導体層3、反射促進層4、および裏面電極層5が形成されたガラス基板10の所定の位置にレーザ光を照射して、光半導体層3、反射促進層4、および裏面電極層5の所定部分を透明電極層2が露出されるまで除去することにより、光半導体層3、反射促進層4、および裏面電極層5を複数の領域に分離する。レーザ光は、矢印Aに示すようにガラス基板10の光入射面側から照射してもよいし、矢印Bに示すように光入射面と異なる光半導体素子形成面側から照射してもよい。
【0035】なお、この実施の形態においては、レーザ照射により、光半導体層3、反射促進層4、および裏面電極層5を、透明電極層2が露出されるまで除去しているが、反射促進層4および裏面電極層5のみを光半導体層3が露出されるまで除去してもよい。
【0036】続いて、透明電極層2および裏面電極層5に取出し電極を取付けた後、ガラス基板10の光半導体素子形成面を、EVA等の充填材、およびテドラ等の裏面保護フィルムを用いて封止、保護する。充填材としては、EVAの他、ポリビニルブチラール等を用いることもできる。これらのEVA(屈折率:1.482)、ポリビニルブチラール(屈折率:1.48〜1.49)等はともに、ガラス基板として用いられるソーダライムガラス(屈折率:1.51〜1.52)、ボロシリケート系ガラス(屈折率:1.47)等との屈折率が近くなるように設計されている。
【0037】このように封止して得られた太陽電池に、さらに端子ボックスおよびフレームを取付けることにより、第1実施形態の太陽電池モジュールが完成する。
【0038】図8は、本発明による第2実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【0039】図8を参照して、この太陽電池モジュールは、ガラス基板20の光入射面のうち、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分を中心としてその周囲の100μmから5000μmまでの対応する領域X内の算術平均粗さRaが、500μm以下となっている。一方、ガラス基板20の光入射面の他の領域は、防眩効果を奏するように凹凸形状が形成されている。
【0040】なお、この第2実施形態の太陽電池モジュールの他の構造は、図1に示す第1実施形態の太陽電池モジュールの構造と全く同様であるので、その説明は省略する。また、この第2実施形態の太陽電池モジュールの製造方法は、図2〜図7に示した第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法と全く同様であるので、その説明も省略する。
【0041】図9は、本発明による第3実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【0042】図9を参照して、この太陽電池モジュールは、ガラス基板30の光入射面の算術平均粗さRaが500μmより大きくなっている。
【0043】なお、この第3実施形態の太陽電池モジュールの他の構造は、図1に示す第1実施形態の太陽電池モジュールの構造と全く同様であるので、その説明は省略する。
【0044】次に、このように構成される第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法について説明する。
【0045】図10は、第3実施形態の太陽電池モジュールの製造における問題点を説明するための図である。
【0046】図10を参照して、この第3実施形態の太陽電池モジュールにおいては、ガラス基板30の光入射面の算術平均粗さRaが、図1に示す第1実施形態の太陽電池モジュールにおけるガラス基板10の光入射面の算術平均粗さRaよりも大きい。
【0047】そのため、図2〜図7に示すようにレーザスクライブ等のレーザパターニング工程を施した場合に、ガラス基板の光入射面に形成された凹凸形状の部分において、照射したレーザ光の散乱が生じる。その結果、レーザ加工すべき部分の周辺に余分なレーザエネルギが照射されて、各層の変質や不必要な加工が生じたり、加工部分にレーザエネルギが集中せず、必要な加工ができなくなる等の問題が生じる。
【0048】具体的には、図10の矢印Aに示すように、光入射面からレーザ光を照射した場合には、ガラス基板30の凹凸形状が形成された光入射面に到達したレーザ光が矢印に示すように散乱し、種々の部分にレーザ光が照射される。その結果、加工すべき部分のレーザ加工が不十分となるとともに、光半導体層3および反射促進層4の一部に不必要な加工が施され、ピンホールやショート欠陥等の欠陥部7が生じてしまう。
【0049】一方、図10の矢印Bに示すように、光半導体素子形成面からレーザ光を照射した場合には、ガラス基板30の凹凸形状が形成された光入射面に到達したレーザ光が矢印に示すように乱反射されて、加工すべき部分の周辺に照射される。その結果、光半導体層3の一部に不必要な加工が施され、ピンホールやショート欠陥等の欠陥部6が生じてしまう。
【0050】図11は、このような問題を解決し、レーザパターニング工程を用いた第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための断面図である。
【0051】図11を参照して、この方法においては、レーザスクライブ等のレーザパターニング工程の際に、少なくともレーザ照射される部分に、レーザ照射面を平滑にするためのレベリング剤81を塗布することにより、光の散乱を防止している。
【0052】レベリング剤81としては、ガラス基板として用いられるソーダライムガラス(屈折率:1.51〜1.52)やボロシリケート系ガラス(屈折率:1.47)と屈折率の近い材料が用いられる。好ましくは、屈折率が1.3〜1.7、より好ましくは、屈折率が1.45〜1.55の材料が、レベリング剤として好ましく用いられる。たとえば、屈折率が1.45〜1.55の材料をレベリング剤として用いた場合には、レーザスクライブにより100μm幅のパターニングを行なった場合にも、良好なエッジが得られる。
【0053】また、レベリング剤としては、透明な液体、グリス状のもの、もしくは透明な樹脂状のものでレーザ加工前の塗布が容易なものが好ましく用いられる。レーザ加工後においては、レベリング剤をそのまま残す場合と除去する場合とがあり、安全性、工程の状況等に応じて下記の例に限定されず適宜選択される。また、レベリング剤は、レーザ加工される部分にのみ塗布してもよいし、レーザ加工後に除去する場合であればガラス基板の光入射面の全面に塗布してもよい。
【0054】具体的に、固体の材料であり、レーザ加工後もそのまま残しておくレベリング材の例としては、酢酸ビニル樹脂(屈折率:1.45〜1.47)、ポリエチレン(屈折率:1.51)、ポリエステル(屈折率:1.523〜1.57)、メタクリル酸メチル樹脂(屈折率:1.488〜1.49)、塩化ビニル樹脂(屈折率:1.54〜1.55)、ポリビニールアルコール(屈折率:1.49〜1.55)等が挙げられる。また、EVA(屈折率:1.482)、ポリビニルブチラール(屈折率:1.48〜1.49)等の樹脂は、ガラス基板材料と屈折率が近くなるように設計され、従来より太陽電池モジュールの充填材としても用いられているため、容易に入手できる点で特に好ましく用いられる。
【0055】一方、液体系の材料であり、レーザ加工後除去するレベリング剤の例としては、o−キシレン(屈折率:1.51)、グリセリン(屈折率:1.48)、クロロベンゼン(屈折率:1.52)、テトラクロロエチレン(屈折率:1.51)、四塩化炭素(屈折率:1.461)、エチルベンゼン(屈折率:1.5)等が挙げられる。また、従来より結晶の屈折率を測定する手法である液浸法で用いられる液体の中で、屈折率が1.5に近いものとして、1,2−ジブロモプロパン(屈折率:1.516)やテレビン油と1,2−ジブロモエチレンの混合液(屈折率:1.48〜1.535)等があり、これらもレベリング剤として適宜利用できる。さらに、水(屈折率:1.33)は、取扱いが容易で安全性に優れているため、レベリング剤として特に好ましく用いられる。
【0056】また、図12は、レーザパターニング工程を用いた第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の他の例を説明するための断面図である。
【0057】図12を参照して、この方法においては、レーザスクライブ等のレーザパターニング工程の際に、ガラス基板30を、蓋のない容器92内に収容された水91中に浸漬しながら、レーザ照射を行なっている。前述したように、水の屈折率はガラスの屈折率と大変近い。したがって、この方法によれば、図11においてレベリング剤を塗布した場合と同様に、レーザ照射面が平滑となる。その結果、光の散乱が防止され、良好なパターニングを行なうことができる。
【0058】
【実施例】
(実施例1)以下のように、図1に示す構造の太陽電池モジュールを作製した。
【0059】ガラス基板10として、型板加工した白板ガラス(フロートガラスで鉄イオンを除去したもの)を用いた。ガラス基板10の光入射面には、算術平均粗さRaが300μmであり、凹凸の平均間隔Smが1mmの凹凸形状が形成されていた。ガラス基板10のサイズは、450mm×900mmであり、モジュールの強度を維持するため厚みが4mmであった。
【0060】このガラス基板10の凹凸形状が形成された光入射面と異なる面上に、図2に示すように、厚さ約700nmのSnO2 透明電極層2を形成した。形成されたSnO2 層2の表面は、200nm程度の凹凸を有していた。
【0061】次に、形成されたSnO2 透明電極層2を、図3に示すように、レーザスクライブにてパターン加工した。
【0062】次に、図4に示すように、SnO2 層2および露出されたガラス基板10上に、プラズマCVD法を用いて、光半導体層3を形成した。具体的には、SiH4、B2 H6 およびCH4 を分解してp型水素化非晶質シリコンカーバイドa−SiC:H層31を、SiH4 を分解してi型水素化非晶質シリコンa−Si:H層32を、SiH4 およびPH3 を分解してn型水素化非晶質シリコンa−Si:H層33を、順次積層して、光半導体層3を形成した。
【0063】次に、形成された光半導体層3を、図5に示すように、レーザスクライブにてパターン加工した。
【0064】続いて、図6に示すように、光半導体層および露出されたSiO2 透明電極層2上に、スパッタ法を用いて、ZnOからなる反射促進層4と、高光反射金属としてAgからなる裏面電極層5とを積層した。
【0065】次に、形成された反射促進層4および裏面電極層5を、図7に示すように、レーザスクライブにてパターン加工した。
【0066】最後に、透明電極層2および裏面電極層5に取出し電極を接続した後、光半導体素子形成面をEVAおよびテドラを用いて封止、保護し、端子ボックスおよびフレームを取付けた。
【0067】このようにして、図1に示す構造を有する太陽電池モジュールが得られた。この太陽電池モジュールにおいて、レーザスクライブにより溝が形成された領域Yの長さは約300μmであり、複数に分離された光半導体素子の各領域Zの長さは約9mmであった。
【0068】レーザスクライブの際には、図3、5および7の矢印Aに示すガラス基板10の光入射面側からと、矢印Bに示す光半導体素子形成面側からとのいずれからも、レーザ照射を試みた。その結果、いずれの側からレーザ照射を行なった場合にも、良好なパターンを形成することができ、レーザパターニング工程における問題は何ら生じなかった。
【0069】このようにして得られた太陽電池モジュールを屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、ぎらつきのない良好な外観が得られることがわかった。
【0070】(比較例1)ガラス基板として、通常の平面ガラスを用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製した。
【0071】図13は、得られた太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【0072】図13を参照して、この太陽電池モジュールにおいては、ガラス基板40の光入射面は、凹凸形状が形成されておらず、平滑であった。なお、他の構造については、図1に示す実施例1の太陽電池モジュールと全く同様であるので、その説明は省略する。
【0073】このようにして得られた太陽電池モジュールを屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、鏡面状の反射による周囲の風景の映り込みがあり、建材として外観上不適当であった。
【0074】(比較例2)ガラス基板として、光入射面に算術平均粗さRaが600μmであり、凹凸の平均間隔Smが1mmの凹凸形状が形成された型板ガラスを用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製した。
【0075】その結果、光半導体素子形成面側からレーザ光を照射した場合には、図10に示すように、光の乱反射によってピンホールが生じ、ショート欠陥ができた。また、光入射面側からレーザ光を照射した場合にも、図10に示すように、光の散乱によって所望の部分以外の部分が加工されてしまい、パターニングを良好に行なうことができなかった。
【0076】(比較例3)ガラス基板として、光入射面に算術平均粗さRaが200μmであり、凹凸の平均間隔Smが0.05mmの凹凸形状が形成された型板ガラスを用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製した。
【0077】その結果、光半導体素子形成面側からレーザ光を照射した場合には、図10に示すように、光の乱反射によってピンホールが生じ、ショート欠陥ができた。また、光入射面側からレーザ光を照射した場合にも、図10に示すように、光の散乱によって所望の部分以外の部分が加工されてしまい、パターニングを良好に行なうことができなかった。
【0078】(実施例2)ガラス基板として、光入射面のうち、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲1000μmの対応する領域内の算術平均粗さRaが50μmであり、凹凸の平均間隔Smが1mmであり、光入射面の他の領域には光拡散による防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスを用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製した。
【0079】レーザスクライブの際には、ガラス基板側からと光半導体素子形成面側からとのいずれからも、レーザ照射を試みた。その結果、いずれの側からレーザ照射を行なった場合にも、良好なパターンを形成することができ、レーザパターニング工程における問題は何ら生じなかった。
【0080】また、このようにして得られた太陽電池モジュールを、屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、ぎらつきのない良好な外観が得られることがわかった。
【0081】(実施例3)ガラス基板として、光入射面のうち、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲1000μmの対応する領域が、通常の平面ガラスと同等に平滑なテクスチャを有しており、光入射面の他の領域には光拡散による防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスを用い、実施例1と同様に太陽電池モジュールを作製した。
【0082】レーザスクライブの際には、ガラス基板の光入射面側からと、光半導体素子形成面側からとのいずれからも、レーザ照射を試みた。その結果、いずれの側からレーザ照射を行なった場合にも、良好なパターンを形成することができ、レーザパターニング工程における問題は何ら生じなかった。
【0083】このようにして得られた太陽電池モジュールを、屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、ぎらつきのない良好な外観が得られることがわかった。
【0084】(実施例4)ガラス基板として、比較例2で用いたのと同様の形状を有する型板ガラスを用い、図1111で説明した方法に従い、太陽電池モジュールを作製した。
【0085】すなわち、レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲1000μmの対応する領域上に、レベリング剤として、四塩化炭素を塗布した後、レーザスクライブ加工を行なった。レーザ加工後は、レベリング剤を除去した。
【0086】レーザスクライブの際には、ガラス基板の光入射面側からと、光半導体素子形成面側からとのいずれからも、レーザ照射を試みた。その結果、いずれの側からレーザ照射を行なった場合にも、良好なパターンを形成することができ、レーザパターニング工程における問題は何ら生じなかった。
【0087】このようにして得られた太陽電池モジュールを、屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、ぎらつきのない良好な外観が得られることがわかった。
【0088】(実施例5)ガラス基板として、比較例2で用いたのと同様の形状を有する型板ガラスを用い、図1212で説明した方法に従い、太陽電池モジュールを作製した。
【0089】始めに、図12に示すように、光入射面が上になるようにしてガラス基板30を水91中に浸漬しながら、矢印Aに示すようにレーザ照射を行なった。次に、光入射面が下になるようにしてガラス基板30を水91中に浸漬しながらレーザ照射を行なった。このようにして、ガラス基板30の光入射面側からと、光半導体素子形成面側からとのいずれからも、レーザ照射を試みた。その結果、いずれの側からレーザ照射を行なった場合にも、良好なパターンを形成することができ、レーザパターニング工程における問題は何ら生じなかった。
【0090】このようにして得られた太陽電池モジュールを、屋根上に設置し、20m離れて観察した。その結果、ぎらつきのない良好な外観が得られることがわかった。
【0091】
【発明の効果】以上説明したように、本願発明によれば、従来ガラス基板として用いていた通常の平面ガラスに代えて、光入射面に所定の凹凸形状が形成された型板ガラスを用いる以外は、僅かな材料、工程の変更のみで、防眩対策のなされた薄膜系太陽電池モジュールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図3】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図4】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図5】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図6】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図7】第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図8】本発明による第2実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【図9】本発明による第3実施形態の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【図10】第3実施形態の太陽電池モジュールの製造における問題点を説明するための図である。
【図11】本発明によるレーザパターニング工程を用いた第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図12】本発明によるレーザパターニング工程を用いた第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の他の例を説明するための断面図である。
【図13】比較例の太陽電池モジュールの一部の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
2 透明電極層
3 光半導体層
4 反射促進層
5 裏面電極層
6、7 欠陥部
10、20、30、40 ガラス基板
31、32、33 非晶質シリコン半導体層
81 レベリング剤
91 水
なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 太陽電池モジュールであって、第1および第2の面を有するガラス基板と、前記ガラス基板の前記第1の面上に形成された光半導体素子と、を備え、前記ガラス基板は、光が入射される前記第2の面に防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスからなり、前記光半導体素子は、第1電極層、光半導体層、および第2電極層が順次積層されてなる、太陽電池モジュール。
【請求項2】 前記光半導体素子は、前記第1電極層、前記光半導体層、および前記第2電極層が複数の領域に分離され、前記ガラス基板の前記第2の面は、算術平均粗さRaが50μm〜500μmの範囲内にあり、凹凸の平均間隔Smが0.1mm〜10mmの範囲内にある、請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】 前記第1電極層、前記光半導体層、および前記第2電極層の少なくともいずれかは、レーザパターニング工程により複数の領域に分離され、前記ガラス基板の前記第2の面は、前記レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲100μmから5000μmまでの対応する領域内の算術平均粗さRaが500μm以下である、請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】 前記ガラス基板の前記第2の面は、前記レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲100μmから5000μmまでの対応する領域内の算術平均粗さRaが100μm以下である、請求項3記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】 太陽電池モジュールの製造方法であって、ガラス基板の第1の面上に、第1電極層、光半導体層、および第2電極層を順次積層する工程と、前記第1電極層、前記光半導体層、および前記第2電極層を複数の領域に分離する工程と、を備え、前記第1電極層、前記光半導体層、および前記第2電極層の少なくともいずれかは、レーザパターニング工程により複数の領域に分離され、前記ガラス基板は、光が入射される第2の面に防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスからなり、前記レーザパターニング工程の前に、前記ガラス基板の前記第2の面の少なくともレーザ照射される部分上に、屈折率が1.3〜1.7の透明材料を配置してレーザ照射される面を平滑にする工程をさらに備える、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】 前記レーザパターニング工程の後、前記透明材料を除去する工程をさらに備える、請求項5記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】 前記透明材料の屈折率が1.45〜1.55である、請求項5または請求項6記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項1】 太陽電池モジュールであって、第1および第2の面を有するガラス基板と、前記ガラス基板の前記第1の面上に形成された光半導体素子と、を備え、前記ガラス基板は、光が入射される前記第2の面に防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスからなり、前記光半導体素子は、第1電極層、光半導体層、および第2電極層が順次積層されてなる、太陽電池モジュール。
【請求項2】 前記光半導体素子は、前記第1電極層、前記光半導体層、および前記第2電極層が複数の領域に分離され、前記ガラス基板の前記第2の面は、算術平均粗さRaが50μm〜500μmの範囲内にあり、凹凸の平均間隔Smが0.1mm〜10mmの範囲内にある、請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】 前記第1電極層、前記光半導体層、および前記第2電極層の少なくともいずれかは、レーザパターニング工程により複数の領域に分離され、前記ガラス基板の前記第2の面は、前記レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲100μmから5000μmまでの対応する領域内の算術平均粗さRaが500μm以下である、請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】 前記ガラス基板の前記第2の面は、前記レーザパターニング工程においてレーザ照射される部分の周囲100μmから5000μmまでの対応する領域内の算術平均粗さRaが100μm以下である、請求項3記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】 太陽電池モジュールの製造方法であって、ガラス基板の第1の面上に、第1電極層、光半導体層、および第2電極層を順次積層する工程と、前記第1電極層、前記光半導体層、および前記第2電極層を複数の領域に分離する工程と、を備え、前記第1電極層、前記光半導体層、および前記第2電極層の少なくともいずれかは、レーザパターニング工程により複数の領域に分離され、前記ガラス基板は、光が入射される第2の面に防眩効果を奏するように凹凸形状が形成された型板ガラスからなり、前記レーザパターニング工程の前に、前記ガラス基板の前記第2の面の少なくともレーザ照射される部分上に、屈折率が1.3〜1.7の透明材料を配置してレーザ照射される面を平滑にする工程をさらに備える、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】 前記レーザパターニング工程の後、前記透明材料を除去する工程をさらに備える、請求項5記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】 前記透明材料の屈折率が1.45〜1.55である、請求項5または請求項6記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開平11−74552
【公開日】平成11年(1999)3月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−112398
【出願日】平成10年(1998)4月22日
【出願人】(000000941)鐘淵化学工業株式会社 (3,932)
【公開日】平成11年(1999)3月16日
【国際特許分類】
【出願日】平成10年(1998)4月22日
【出願人】(000000941)鐘淵化学工業株式会社 (3,932)
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