説明

太陽電池モジュール用端子ボックス

【課題】 リードを接続する際の作業性を改善する。
【解決手段】 ボックス本体10の基板11上に複数の端子板30が並設されている。端子板30は、太陽電池モジュールからのプラス電極及びマイナス電極と両電極に対応する外部接続用のケーブル60との間を電気的に中継している。両電極にはリード40が接続され、このリード40は基板11の開口部からボックス本体10内に引き込まれる。端子板30には、リード40の先端部との接続固定に先立って、その先端縁に開口するリード差込口36からリード40の先端部を差し込んで仮保持しておくための仮保持溝34が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用端子ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムは、家屋の屋根上に敷設した太陽電池モジュールからの直流電流をインバータ等を介して各電器製品に供給するようになっている。太陽電池モジュールは複数の太陽電池モジュールからなり、各太陽電池モジュールの電極を端子ボックスを介して直列または並列接続した構造となっている。
【0003】
従来の端子ボックスとしては、ボックス本体の基板上に並設されて一端が太陽電池モジュールの裏面側から引き出されたプラス電極及びマイナス電極に接続されるとともに他端が外部接続用のケーブルに接続される二つの端子板と、各端子板間に架け渡される逆流用のバイパスダイオードとを備えたものが知られている(例えば、以下の特許文献1を参照)。
基板にはプラス電極及びマイナス電極の両電極に接続されたリードの挿通を許容する開口が設けられており、この開口上方に端子板の先端部が臨んでいる。したがって、一方の端子板の先端部にプラス電極に接続されたリードの端末が半田付け等して接続され、他方の端子板の先端部にマイナス電極に接続されたリードの端末が同じく半田付け等して接続されるようになっている。
【特許文献1】特許第3498945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の場合には、リードの先端を折り曲げて端子板に当接させた状態を保持しつつ半田溶接等の接続作業を行わねばならず、そのため、接続作業中にリードの遊動を抑える必要があって作業しづらいという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、リードを接続する際の作業性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、ボックス本体の基板上に複数の端子板が並設され、これら端子板が太陽電池モジュールからのプラス電極及びマイナス電極と両電極に対応する外部接続用のケーブルとの間を電気的に中継し、かつ、前記基板には前記両電極に接続されたリードを前記ボックス本体内に引き込むための開口部が設けられ、この開口部から突き出るリードの先端部を前記端子板に接続固定するようにした太陽電池モジュール用端子ボックスにおいて、前記端子板には、前記リードの先端部との接続固定に先立って、その外周縁に開口するリード差込口から前記リードの先端部を差し込んで仮保持しておくための仮保持溝が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記リード差込口の内縁は、前記リードの先端部に向かって末広がりの形態で前記リードの先端部を誘い込み可能な誘い込み部となっているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記リードの先端部は、断面長方形に形成されており、前記リード差込口は、前記端子板の外周縁のうち前記リードの先端部の短辺側と対向する縁部に設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
開口部から突き出るリードの先端部を端子板のリード差込口から仮保持溝へ向けて差し込んで仮保持させ、その仮保持状態から半田溶接等の接続作業を行うようにしたから、接続作業中のリードの遊動を抑えることができて作業性が良好となる。また、リードの先端部を仮保持させる際の作業負担も少ない。
【0010】
<請求項2の発明>
リードの先端部が仮保持溝のセンターから多少位置ずれしていても、末広がり形状をなす誘い込み部によってリードの先端部を仮保持溝へ円滑かつ確実に誘導することができる。
【0011】
<請求項3の発明>
リード差込口が端子板の外周縁のうちリードの先端部の短辺側と対向する縁部に設けられているから、リードの先端部を捻ったりすることなくそのままリード差込口から仮保持溝へ平行移動させることで仮保持溝に仮保持させることができ、作業性がより良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4によって説明する。本実施形態にかかる太陽電池モジュール用端子ボックスは、表面に直列接続された多数の太陽電池セルを配した太陽電池モジュール(図示せず)の裏面側に取り付けられるものであって、ボックス本体10と、ボックス本体10内に並設された多数の端子板30と、隣接する端子板30間に架け渡される逆流用のバイパスダイオード50とを備えて構成される。
【0013】
ボックス本体10は、合成樹脂材によって上面開放の箱型に形成されており、その内部に絶縁樹脂が充填され、かつ、上方からカバー(図示せず)が被せられるようになっている。詳しくはボックス本体10は、図1に示すように、複数の端子板30が横並びで載置された略矩形状の基板11と、基板11の周縁部から立ち上げられて四方を取り囲む側板12と、基板11上の所定位置から立ち上げられて隣り合う端子板30間を区画する仕切壁13とを備える。基板11には略方形状の開口部14が複数あいており、各開口部14上方に対応する端子板30の先端部が臨んでいる。基板11の各開口部14には太陽電池モジュールのプラス電極及びマイナス電極の両電極に接続されたリード40が挿通され、挿通されたリード40の先端部は端子板30の先端縁に仮保持されたあと半田付けにより接続可能とされている。リード40は、可撓性を有する細帯状をなし、全長に亘って断面長方形に形成されている。なお、リード40の端子板30に対する仮保持構造については後に詳述する。
【0014】
基板11の上面には、端子板30に設けられた被係止孔35に緊密に嵌め込み可能な係止突部19が設けられている。係止突部19は、平面視して略方形状をなし、その先端周縁部がテーパ状に切り欠かれている。基板11において係止突部19を挟んだ両側二位置には、撓み可能な一対の係止片17が突出して形成されている。各係止片17は、基板11から上方へ垂直に立ち上げられたあと内側へ折り返された形態とされ、その折り返し端にて端子板30の上面を基板11側へ押さえ付けるようになっている。かかる係止片17は、端子板30が基板11上に載せられる過程で対応する端子板30の両側部の夫々と摺接して弾性的に拡開変形され、端子板30が基板11上に載せられるに伴ない復元してその折り返し端を端子板30の上面両側部に当接させ、端子板30を基板11側へ押し付け固定するものである。
【0015】
また、側板12の一端側(図1に示す下側)の両側部には切り欠き20が設けられ、ここに上方から外部出力用のケーブル60が嵌め込まれ、さらにその上方からケーブル押さえ部材65が嵌着されてケーブル60が固定されるようになっている。仕切壁13は、端子板30の外縁形状に沿うように区画形成され、仕切壁13内の端子板30上にシリコン樹脂等の絶縁樹脂が充填されるようになっている。つまり、仕切壁13は、絶縁樹脂の樹脂流れを塞き止め、ボックス本体10内の全体に絶縁樹脂を充填しないことで絶縁樹脂の節約に寄与している。
【0016】
端子板30は、導電性金属板により一端から他端にかけて長く延びた帯状に形成されている。基板11の両側部に配された端子板30には対応する外部接続用のケーブル60が接続されている。ケーブル60の端末は被覆61の剥離によって芯線62が露出しており、この芯線62に対して端子板30の端部に形成されたバレル部31がかしめ付けられることにより、ケーブル60と端子板30とが接続されるようになっている。なお、ケーブル60の端末にはコネクタ部(図示せず)が接続されている。
【0017】
そして、隣り合う端子板30(上記基板11の両側部に配された端子板30を除く)同士は、その一端部にて連繋部32を介して一体に連なっている。このうち一方の端子板30は太陽電池モジュール側との接点を備えておらず、他方の端子板30より短寸に形成されてその先端周りが仕切壁13に取り囲まれている。この一方の端子板30が迂回して配されている分だけバイパスダイオード50が発生する熱の放熱効果が高められている。端子板30の両側縁には付設部33が側方へ張り出して設けられ、付設部33の先端縁が隣り合う端子板30間で対向状に配されている。
【0018】
また、隣り合う端子板30間にはバイパスダイオード50が架け渡されている。図示する場合には、三つのバイパスダイオード50が端子板30を長さ方向に横切って直列状に配されている。
バイパスダイオード50は、メサ型のベアチップダイオード(図示せず)と一対の導体片51とからなり、両導体片51は互いの重合領域間にベアチップダイオードを挟み込むことでベアチップダイオードと電気的に接続されている。そして、両導体片51は、互いの重合領域から離れる方向に延び、その延出端側にて対応する端子板30に半田溶接、抵抗溶接、もしくは超音波溶接等して接続されている。
【0019】
さて、端子板30(図示する場合は開口部14に臨む四つの端子板30)には、その先端縁にリード差込口36が開口して設けられており、かつ、このリード差込口36に連通してスリット状の仮保持溝34が端子板30の長さ方向に延出して設けられている。リード差込口36は、平面視して略Vの字に形成され、その内縁が仮保持溝34の先端から端子板30の先端縁に向かって末広がりの扇形状をなすリード誘い込み用の誘い込み部36Aとなっている。この誘い込み部36Aの形成によって端子板30の先端コーナー部は、鋭角に尖がった形状となっている。
【0020】
リード差込口36には、開口部14から上方に突き出るリード40の先端部が対向位置する関係にある。この状態からリード40の先端部をリード差込口36側へ向けて図示矢線方向へ移動することにより、誘い込み部36Aによってリード40の先端部が仮保持溝34へ案内されるようになっている。リード40の先端部は、端子板30に半田付けによって接続固定されるまでの間、仮保持溝34への差し込みによって厚み方向に挟持された状態で仮保持されることとなる。
【0021】
次に、本実施形態の製造方法及び作用効果を説明する。まず、端子板30のバレル部31をケーブル60の端末に露出された芯線62にかしめ付けて端子板30とケーブル60とをかしめ接続する。続いて、上方から端子板30を基板11上に載せる。端子板30を基板11上に載せる過程で、基板11上の係止突部19を端子板30の被係止孔35に嵌め込むとともに基板11上の係止片17を端子板30との当接によって弾性的に拡開変形させ、その後、係止突部19を被係止孔35に遊動規制した状態で緊密に嵌め込むとともに、係止片17の復元によって端子板30をその浮き上がりを規制した状態で基板11側へ押し付け固定する。そして、基板11の両側部に配された端子板30に関しては、上方からケーブル押さえ部材65をケーブル60に覆い被せつつ取り付け、ケーブル60を基板11上に固定する。
【0022】
続いて、バイパスダイオード50を隣り合う端子板30に架け渡すようにして載せ、バイパスダイオード50の両導体片51と端子板30とが重なり合う部分に、半田溶接、抵抗溶接、もしくは超音波溶接を施し、両導体片51と端子板30とを電気的に接続する。
【0023】
次いで、ボックス本体10を太陽電池モジュールの裏面側に接着もしくはボルトで固着する。取り付けの過程で太陽電池モジュールの両電極に接続されたリード40を基板11の開口部14を通してボックス本体10内に引き込み、かかるリード40を端子板30の先端部に半田接続して固定する。詳しくは、開口部14を通して上方に突き出るリード40の先端部を端子板30のリード差込口36から仮保持溝34へ圧入気味に差し込み、リード40の先端部を仮保持溝34にいったん仮保持させ、続いて、図3に示すように、仮保持溝34におけるリード40の先端部周りに半田接続部90を形成してリード40の先端部を端子板30に接続固定する。このとき、図4に示すように、仮保持溝34から突き出るリード40の先端部を端子板30上に折り曲げたあと半田接続部90を形成してもよく、こうすると、端子板30との接続代を大きく取れる。この後は、仕切壁13内の端子板30上にシリコン樹脂等の絶縁樹脂を充填し、さらにカバーをボックス本体10に被せて蓋閉めする。
【0024】
以上のように本実施形態によれば、リード40の先端部を端子板30に半田接続するに先立って、かかるリード40の先端部を端子板30のリード差込口36から仮保持溝34に差し込んで仮保持しておく構成としたので、半田接続中のリード40の遊動を抑えることができ、作業性が良好となる。
【0025】
ここで、仮保持用の孔を端子板30に対して全周を閉じた形態で貫設した場合には、上方からリード40の先端を孔に差し入れる必要があるから、かかる孔に狙いを付ける分の注意力が必要とされて作業負担が大きい。しかるに本実施形態では、リード40の先端部を仮保持させるに際し、リード40の先端部をリード差込口36から仮保持溝34へ平行移動して差し込むだけであるから、作業負担が少ない。
【0026】
また、リード40の先端部が仮保持溝34から幅方向に位置ずれしていても、末広がり形状をなす誘い込み部36Aによってリード40の先端部を仮保持溝34へ円滑かつ確実に誘導することができる。
【0027】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図5によって説明する。図5は、端子板30の先端部の拡大平面図であり、図示上方が先端側となっている。この実施形態2では、端子板30におけるリード差込口36及び仮保持溝34の配設位置が実施形態1と異なるが、その他は実施形態1と同様である。
【0028】
実施形態2は、端子板30の先端部一側縁にリード差込口36が開口して設けられている。詳しくは、仮保持溝34は幅方向(左右方向)に沿って延出して設けられ、リード差込口36は仮保持溝34の図示する右端から端子板30の右側縁にかけて末広がりに開口しており、端子板30の先端右側コーナー部は右側方に向けて鋭角に尖がった形状となっている。
【0029】
図5に示すように、開口部14から上方に突き出たリード40の先端部がその短辺側を仮保持溝34と対向させつつ端子板30の右端外方に位置する場合には、かかるリード40の先端部を捻ったりすることなくそのまま仮保持溝34へ向けて平行移動することができ、リード40の先端部を仮保持溝34に難なく仮保持させることが可能となる。
【0030】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、端子板の先端部の外周縁にリード差込口が開口していたが、本発明においては、基板の開口部に臨む範囲内で端子板の基端寄りの側縁にリード差込口が開口していても構わない。
【0031】
(2)上記実施形態では、誘い込み部の形成によって端子板の先端コーナー部が鋭角に尖がった形態となっていたが、本発明においては、リード差込口の開口幅を窄めることによって端子板の先端コーナー部の尖がり形状を無くしても構わない。
(3)本発明においては、誘い込み部を無くして仮保持溝が端子板の外周縁に直接開口していても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態1の平面図
【図2】リードの先端部を差し込む前の端子板の先端部の拡大平面図
【図3】リードが端子板に半田接続された状態を示す拡大断面図
【図4】変形例を示す図3相当図
【図5】実施形態2の図2相当図
【符号の説明】
【0033】
10…ボックス本体
11…基板
14…開口部
30…端子板
31…バレル部
34…仮保持溝
50…バイパスダイオード
51…導体片
60…ケーブル
65…ケーブル押さえ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス本体の基板上に複数の端子板が並設され、これら端子板が太陽電池モジュールからのプラス電極及びマイナス電極と両電極に対応する外部接続用のケーブルとの間を電気的に中継し、かつ、前記基板には前記両電極に接続されたリードを前記ボックス本体内に引き込むための開口部が設けられ、この開口部から突き出るリードの先端部を前記端子板に接続固定するようにした太陽電池モジュール用端子ボックスにおいて、
前記端子板には、前記リードの先端部との接続固定に先立って、その外周縁に開口するリード差込口から前記リードの先端部を差し込んで仮保持しておくための仮保持溝が設けられていることを特徴とする太陽電池モジュール用端子ボックス。
【請求項2】
前記リード差込口の内縁は、前記リードの先端部に向かって末広がりの形態で前記リードの先端部を誘い込み可能な誘い込み部となっていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用端子ボックス。
【請求項3】
前記リードの先端部は、断面長方形に形成されており、前記リード差込口は、前記端子板の外周縁のうち前記リードの先端部の短辺側と対向する縁部に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール用端子ボックス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−5098(P2006−5098A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178707(P2004−178707)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】