説明

太陽電池モジュール

【課題】 外枠の嵌合部分からのシール材のはみ出しが少ない構造、外枠の組立作業が容易で耐水性が良好な構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 太陽電池パネル3と、その外周をシール材30を介して嵌め込む嵌合部分22を有する外枠20とを備え、外枠20の嵌合部分22が、シール材30を溜めるための背面側凹部25を少なくとも備えると共に、嵌合部分22の先端側であって且つ背面側にシール材30を溜めることが可能な凹部28を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽電池モジュールの構造が、例えば、実開昭61-151353号に開示されている。この構造は、太陽電池素子を含む矩形板状の太陽電池パネルと、この太陽電池パネルの外周にシール材を介して嵌め込まれた外枠とを備えるものである。
【特許文献1】実開昭61-151353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来の太陽電池モジュールの要部断面図を図5に示し、従来の問題点を説明する。図5において、50は太陽電池素子51を含む板状の太陽電池パネル、60はこの太陽電池パネル50の外周にシール材52を介して嵌め込まれた金属製外枠である。太陽電池パネル50は、受光面側の透光性絶縁基板52と、裏面側の金属箔を絶縁性フィルムで挟着した耐候性フィルム53とを用いて、太陽電池素子51をその間に挟み、内部の隙間に透明樹脂54を充てんした構造である。
【0004】
この構造においては、シール材52に流動性のシリコーン樹脂又はウレタン樹脂を使用した場合、図5に示すように、太陽電池パネル50を外枠60に嵌め込んで組み立てを完了したとき、余りのシール材が嵌合部分よりはみ出し、この余りのシール材を取り除く作業が必要となる。
【0005】
また、シール材52に非流動性のブチルゴムやアクリルフォームを基材とした両面粘着テープ等の樹脂を用いると、上記のような余りのシール材を取り除く作業は不要となるものの、樹脂に流動性がないために余りの樹脂が嵌合部の外に逃げることができず、外枠の組立て作業がしにくい。上記の組立て作業を容易にするため、樹脂の量を少なくすると、この部分での耐水性が低下する。
【0006】
更には、耐候性フィルム53は金属箔を絶縁性フィルムで挟着した構造であり、その外周端部において金属箔は、金属製外枠60と近接又は接触することになり、絶縁不良になることが少なくなかった。絶縁性を維持するために、太陽電池パネル50の外周に絶縁テープを施してから、外枠60を組み立てる必要があった。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するために成されたものであり、外枠の嵌合部分からのシール材のはみ出しが少ない構造、外枠の組立作業が容易で耐水性及び止水性が良好な構造、又は絶縁性が良好な構造の太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、太陽電池素子を含む板状の太陽電池パネルと、この太陽電池パネルの外周を、シール材を介して嵌め込む嵌合部分を有する外枠とを備え、前記外枠の嵌合部分は、前記シール材を溜めるための背面側凹部を少なくとも備えると共に、前記嵌合部分の先端側であって且つ背面側に前記シール材を溜めることが可能な凹部または凸部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、次の第1の効果を有している。外枠の内側にシール材を溜める部分を備えているので、シール材に流動性のシリコーン樹脂又はウレタン樹脂を使用した場合、余りのシール材が、上記の溜める部分に溜まることになるので、上述の発明が解決しようとする課題に記載したような嵌合部分よりはみ出した余りのシール材を取り除く作業が不要となる。また、シール材に非流動性のブチルゴムやアクリルフォームを基材とする両面粘着テープ等の樹脂を用いると、この樹脂が上記の溜める部分に納まることになるので、外枠の組立作業が容易であると共に、十分な量の樹脂を利用することができるので耐水性も良好である。上述の発明が解決しようとする課題に記載したような、樹脂に流動性がないために余りの樹脂が嵌合部の外に逃げることができず、外枠の組立作業がしにくい問題点、組立作業を容易にするために樹脂の量を少なくすることによる耐水性及び止水性の低下の問題点を解消することができる。
【0010】
次に、本発明は、外枠の嵌合部分が、前記シール材を溜めるための背面側凹部を少なくとも備えると共に、前記嵌合部分の先端側であって且つ背面側に前記シール材を溜めることが可能な凹部または凸部を備えるので、シール材の量が少ない場合であっても、背面側において、凹部または凸部によりシール材が埋まっていれば、確実に水分の侵入を防止することができる。
【0011】
また、本発明は、太陽電池パネルにおいて、裏面側に、金属箔又は金属板の表面及び裏面上を絶縁とした耐候性部材を有しており、金属製外枠において、耐候性部材の端部が対向する外枠の内側に、シール材を溜めるための凹部が設けられていることより、上記の第1の効果に加えて、金属箔又は金属板と金属製外枠が接触することがなく、太陽電池モジュールに要求される絶縁性を得ることができる。
【0012】
更には、本発明は、太陽電池パネルにおいて、受光面側の透光性絶縁基板と、裏面側の金属箔を絶縁性フィルムで挟着した耐候性フィルムとを用いて、太陽電池素子をその間に挟み、内部の隙間に透明樹脂を充てんした構造であって、外枠において、透光性絶縁基板の外周の裏面側エッジが位置する部分、つまりが耐候性フィルムの金属箔の端部に対向する外枠の内側に、シール材を溜めるための凹部が設けられている。よって、上記第1の効果に加えて、金属箔と金属製外枠が接触することがなく、太陽電池モジュールに要求される絶縁性を得ることができる。
【0013】
また、本発明は、前記凸部が外枠の外側に向いていることより、太陽電池モジュールが組み立てられた後に、シール材が外枠の内側に抜け出ることが防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【実施例1】
【0015】
以下に本発明の第1実施例を、図1を用いて詳細に説明する。図において、図1(a)は太陽電池モジュールの斜視図、図1(b)は、(a)におけるA-A’断面図である。図1において、10は太陽電池素子11を含む矩形板状の太陽電池パネル、20はこの太陽電池パネル10の外周にシール材30を介して嵌め込まれたアルミ又はステンレス等の金属製外枠である。太陽電池モジュールにおける外枠20の断面構造は、A-A’断面しか図示してないが、各4辺において外枠20の断面構造は同一である。
【0016】
次に太陽電池パネル10の構造について説明する。太陽電池パネル10は、受光面側のガラス等の透光性絶縁基板12と、裏面側の金属箔を絶縁性フィルムで挟着した耐候性部材としての耐候性フィルム13とを用いて、結晶系又はアモルファスシリコン系の複数の太陽電池素子11をその間に挟み、内部の隙間にPVB又はEVA等の接着性の透明樹脂14を充てんした構造である。耐候性フィルム13の材質ついて、金属箔(約50〜100μm)にアルミ、亜鉛メッキ鋼板又はステンレス等、絶縁性フィルムにフッ素系樹脂又PET系樹脂等を利用することができる。
【0017】
外枠20において、21は中空構造の本体部分、22は本体部分21の上部に位置し太陽電池パネル10の外周部をシール材30を介して嵌め込む断面コの字状の嵌合部分、23は本体部分21の外側に位置する外周溝である。この外周溝23は、太陽電池モジュールを屋外に設置したとき、雨水が流れる溝である。
【0018】
本発明の特徴である外枠20の嵌合部分22について、以下に説明する。嵌合部分22の内側において、太陽電池パネル10の受光面側に対向して、シール材30を溜めるための受光面側凹部24を、太陽電池パネル10の背面側に対向して、シール材30を溜めるための背面側凹部25を有している。更に、透光性絶縁基板12の外周の裏面側エッジ15に対向して、シール材30を溜めるための凹部26を有している。そして、この透光性絶縁基板12の裏面側エッジ15においては、絶縁性フィルム13の端部、つまり金属箔の端部が位置することになる。
【0019】
次に、この第1実施例の効果を説明する。シール材30に流動性のシリコーン樹脂又はウレタン樹脂を使用した場合、余りのシール材30が、受光面側凹部24、背面側凹部25、凹部26に溜まることになるので、上述の発明が解決しようとする課題に記載したような嵌合部分よりはみ出した余りのシール材を取り除く作業が不要となる。
【0020】
また、シール材に非流動性のブチルゴムやアクリルフォームを基材とした両面粘着テープ等の樹脂を用いると、この樹脂が受光面側凹部24、背面側凹部25、凹部26に納まることになるので、外枠20の組立作業が容易であると共に、十分な量の樹脂を利用することができるので耐水性も良好である。上述の発明が解決しようとする課題に記載したような、樹脂に流動性がないために余りの樹脂が嵌合部の外に逃げることができず、外枠の組立作業がしにくい問題点、組立作業を容易にするために樹脂の量を少なくすることによる耐水性及び止水性の低下の問題点を解消することができた。
【0021】
更には、凹部26に対向して、透光性絶縁基板12の外周側の裏面側エッジ15、つまり絶縁フィルム13の金属箔の端部が位置することになり、金属箔と金属製外枠20が接触することがないので、絶縁不良となることがない。絶縁性のテストは、JIS8918として、太陽電池モジュールに要求されるものであり、以下のテスト内容である。第1実施例の太陽電池モジュールは、この絶縁性テストを満足することができた。
【0022】
テスト1:太陽電池パネルの正極、負極を短絡した状態の出力端子と金属製外枠との間に、最大システム電圧の2倍に1000Vを加えた電圧を1分間印加する。この後、光照射時の太陽電池特性を測定し、その値が電圧印加前の95%以上であり、絶縁破壊、外観異常が発生してないこと。
【0023】
テスト2:太陽電池パネルの正極、負極を短絡した状態の出力端子と金属製外枠との間に、1000Vを印加したときの抵抗が100MΩ以上であること。
【実施例2】
【0024】
次に、図2を用いて、本発明の第2実施例を説明する。上述の第1実施例と同じ構造部分については、説明を省略し、異なる構造部分についてのみ説明をする。
【0025】
第2実施例においては、耐候性部材16として、第1実施例の耐候性フィルム13に代えて、厚さ約0.1〜0.5mm程度(また、これ以上の厚さでも利用できる)のアルミ、ステンレ又は亜鉛メッキ鋼板等の金属板の表面及び裏面上を絶縁としたものを利用している。ここで、第1実施例の耐候性フィルム13における金属箔に代えて、第2実施例では金属板とすることにより、耐候性を向上できると共に、裏面からの衝撃等に対して強さを増すことができる。
【0026】
金属板の表面及び裏面上を絶縁とする構造としては、フッ素系樹脂又はPET系樹脂等の絶縁性フィルムを被着する構造、絶縁性樹脂材料を焼き付け塗装する構造が利用できる。
【0027】
第2実施例においては、凹部26に対向して、耐候性部材16の金属板の端部が位置することになり、金属板と金属製外枠20が接触することがないので、絶縁不良となることがない。その他、第2実施例は、第1実施例と同様の効果を備えている。
【実施例3】
【0028】
次に、図3を用いて、本発明の第3実施例を説明する。上述の第1実施例と同じ構造部分については、説明を省略し、異なる構造部分についてのみ説明をする。第3実施例においては、シール材30を溜めるための受光面側凹部24、背面側凹部25、凹部26に加えて、コの字状の嵌合部分22の先端側に複数の凹部27、28を備えている。
【0029】
従って、シール材30の量が少ない場合であっても、受光面側、背面側において、いずれかの凹部にシール材30が埋まっていれば、確実に水分の侵入を防止することができる。その他、第3実施例は、第1実施例と同様の効果を備えている。
【実施例4】
【0030】
次に、図4を用いて、本発明の第4実施例を説明する。上述の第1実施例と同じ構造部分については、説明を省略し、異なる構造部分についてのみ説明をする。
【0031】
第4実施例においては、シール材30を溜めるための受光面側凹部24、背面側凹部25、凹部26に加えて、コの字状の嵌合部分22の先端側に、複数の凸部31、32を備えている。そして、凸部31、32は、凸部が外枠20の外側に向いた状態になっている。
【0032】
従って、外枠20の外側に向いた凸部31、32により、太陽電池モジュールが組み立てられた後に、シール材30が外枠20の嵌合部分22より、内側に抜け出ることが防止できる。更には、シール材30の量が少ない場合であっても、受光面側、背面側において、複数の凸部31、32間のいずれかの凹部にシール材30が埋まっていれば、確実に水分の侵入を防止することができる。その他、第4実施例は、第1実施例と同様の効果を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施例を示し、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるA-A’断面図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す断面図である。
【図4】本発明の第4実施例を示す断面図である。
【図5】従来の太陽電池モジュールを示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 太陽電池パネル
11 太陽電池素子
13 耐候性フィルム
14 透明樹脂
15 裏面側エッジ
16 耐候性部材
20 外枠
22 嵌合部分
24 受光面側凹部
25 背面側凹部
26、27、28 凹部
30 シール材
31、32 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池素子を含む板状の太陽電池パネルと、この太陽電池パネルの外周を、シール材を介して嵌め込む嵌合部分を有する外枠とを備え、前記外枠の嵌合部分は、前記シール材を溜めるための背面側凹部を少なくとも備えると共に、前記嵌合部分の先端側であって且つ背面側に前記シール材を溜めることが可能な凹部または凸部を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記太陽電池パネルは、裏面側に、金属箔又は金属板の表面及び裏面上を絶縁とした耐候性部材を有し、
前記外枠において、前記耐候性部材の端部が対向する前記外枠の嵌合部分に、前記シール材を溜めるための凹部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記太陽電池パネルは、受光面側の透光性絶縁基板と、裏面側の金属箔を絶縁性フィルムで挟着した耐候性フィルムとを用いて、太陽電池素子をその間に挟み、内部の隙間に透明樹脂を充てんした構造であって、
前記外枠において、前記透光性絶縁基板の外周の裏面側エッジが対向する前記外枠の嵌合部分に、前記シール材を溜めるための凹部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記凸部が前記嵌合部分の先端側とは反対側に向いていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−179961(P2006−179961A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87506(P2006−87506)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【分割の表示】特願平11−46754の分割
【原出願日】平成11年2月24日(1999.2.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】