説明

太陽電池及びその太陽電池を用いた太陽電池モジュール

【課題】 この発明は、ワイヤ痕が表面に形成されている基板においても、集電極に断線等が発生することなく形成できる太陽電池装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 この発明の太陽電池10は、シリコン基板20dを含み、基板10dの表面にフィンガー電極30とバスバー電極40を有する集電極が設けられた太陽電池であって、フィンガー電極30は、基板20dに有するワイヤ痕10bに平行に位置するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池及びその太陽電池を用いた太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、クリーンで無尽蔵に供給される太陽光を直接電気に変換することができるため、新しいエネルギー源として期待されている。
【0003】
かかる太陽電池の普及に伴いシリコンウェハの需要は年々増加している。このようなシリコンウェハには、多結晶と単結晶があり、次のような方法で製造されている。
【0004】
多結晶シリコンウェハは、四角形の多結晶インゴットを製造し、この多結晶シリコンインゴットからバンドソーなどを用いて多数の四角形の多結晶シリコンインゴットブロックを切り出す。そして、この多結晶シリコンインゴットブロックをスライス加工することにより、シリコンウェハを製造する。
【0005】
また、単結晶シリコンウェハは、引き上げ法により得られた円筒形のシリコンインゴットを四角く切断し、切断面を含めた側面を研削して形を整え、四角形のシリコンインゴットブロックを用意する。この四角形のシリコンインゴットブロックをスライス加工することにより、シリコンウェハを製造している。
【0006】
ところで、多結晶シリコンインゴットや単結晶シリコンインゴットのスライス加工として、ワイヤソーという装置を用いてシリコンインゴットをスライスする方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図7に、マルチワイヤソーを用いた従来のシリコンインゴットのスライス方法を模式的な斜視図として示す。
【0008】
図7に示すように、シリコンインゴット105がインゴット保持部104に取り付けられる。そして、4本の軸102…には、ワイヤ101が隣接するワイヤ101との間隔が等間隔となるように、設置されており、ワイヤ101が所定の速度で走行している。この走行しているワイヤ101に砥粒が分散液に分散されたスラリーを供給しながら、シリコンインゴット105を図7に示される矢印方向に所定の移動速度で移動させることによって、ワイヤ101によりシリコンインゴット105がスライスされ、複数枚のウェハが同時に得られる。
【0009】
スラリーを用いない方法としては、ワイヤ基材表面にダイヤモンド薄膜又はダイヤモンド状薄膜を被着した固定砥粒方式のものがある。
【0010】
上記した多結晶シリコンウェハや単結晶シリコンウェハを用いた結晶系シリコン太陽電池の多くは、一導電型を有する単結晶或いは多結晶シリコン基板の表面、裏面のいずれか一方の面にp型領域が形成されており、他方の面にn型領域が形成されている。表裏面上には、それぞれの面で生成したキャリアを集電するためのフィンガー電極を含む集電極が形成されている。この集電極は、例えば、銀ペーストを用いてスクリーン印刷により形成される。
【0011】
また、結晶系シリコン太陽電池の多くは、光を受光する受光面、又は受光面と裏面の両方に、光の反射による変換効率の低下を低減するための微少な凹凸を形成する表面加工が施されている。
【0012】
図8は、基板表面に集電極を形成した太陽電池を示す平面図である。太陽電池は、基板20d上に集電極としてのフィンガー電極30及びバスバー電極40を備える。フィンガー電極30は、太陽電池の光電変換部からキャリアを収集する電極である。フィンガー電極30は、基板20dの受光面略全域にわたって複数本、ライン上に形成される。このフィンガー電極30は、例えば、樹脂材料をバインダーとし、銀粒子等の導電性粒子をフィラーとした樹脂型導電性ペーストを用いて形成される。
【0013】
バスバー電極40は、複数本のフィンガー電極30からキャリアを集電する電極であり、フィンガー電極30と交差するように形成される。バスバー電極40は、例えば、樹脂材料をバインダーとし、フィンガー電極30と同様に銀粒子等の導電性粒子をフィラーとした樹脂型導電性ペーストを用いて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−173721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来、上記したフィンガー電極が断線し、出力特性が低下することがあった。この問題は、基板の厚みが薄くなるほど顕著になった。
【0016】
この発明の目的は、フィンガー電極の断線を抑制し、良好な出力特性を有する太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者がフィンガー電極の断線の原因を鋭意検討したところ、以下のことが判明した。ワイヤソーによりスライス加工したシリコンウェハには、ワイヤ痕(スライス痕)が周期的に現れる。
【0018】
前述したように、基板表面には、スライスした際のワイヤ痕が周期的に残っている。図8において、一点鎖線でワイヤ痕10bを例示している。図9は、フィンガー電極30を形成した部分を模式的に拡大した断面図である。図9に示すように、このワイヤ痕10bは、スライス加工速度が速く、低コスト化が期待できるワイヤソー方式を用いた場合、基板20dの表面に形成される。ワイヤ痕10bは、周囲の浅いダメージ層(凹み)に対して、局所的に深いダメージ層(凹み)が入り形成される。このダメージ層を含めて、異方性エッチングにより、表面に凹凸10c形状を形成しても、ワイヤ痕10bの深いダメージ層はそのまま残ることになる。
【0019】
このようなワイヤ痕10bに対して、フィンガー電極30を直交する方向に形成した場合、図9に示すように、深いダメージ層のワイヤ痕10bを跨って、フィンガー電極30が形成されることになる。
【0020】
このため、ワイヤ痕10bの凹みにより、フィンガー電極30が上手く形成されずに、フィンガー電極30が断線するなどの問題が生じる場合があった。
【0021】
更に、現在基板の薄型化が検討されているが、薄型化された基板に従来と同等の大きさの凹凸(テクスチャ)を形成すると、基板が割れやすくなる。そこで、従来よりも小さなサイズの凹凸を形成することが試みられている。このために、凹凸形成のためのエッチング時に、エッチング量を減らして凹凸のサイズを小さくすることが行われている。
【0022】
しかしながら、このようにエッチング量を減らすとワイヤ痕が消えずに残りやすくなり、フィンガー電極の断線が増えるものと考えられる。この発明は、上記知見に基づきなされたものである。
【0023】
すなわち、この発明の太陽電池は、結晶系シリコン基板を含み、表面にフィンガー電極を有する集電極が設けられた太陽電池であって、前記フィンガー電極は、基板表面のワイヤ痕に平行に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、前記フィンガー電極は、基板表面のワイヤ痕を基準として、このワイヤ痕に平行に形成すればよい。
【0025】
また、この発明は、複数の太陽電池と、前記複数の太陽電池同士を電気的に接続する配線部材とを備える太陽電池モジュールであって、前記複数の太陽電池は、光電変換部と、前記光電変換部上に形成され、基板のワイヤ痕に平行に位置するように形成された電極とを有し、前記電極と重なるように前記配線部材が接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
この発明は、深い溝のワイヤ痕をフィンガー電極が長手方向に跨ることがなくなり、フィンガー電極の断線を抑制することができ、太陽電池出力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施形態にかかる太陽電池を示す平面図である。
【図2】この発明の実施形態にかかる太陽電池のフィンガー電極を形成した部分を模式的に拡大した断面図である。
【図3】この発明の実施形態にかかる太陽電池を示す断面図である。
【図4】図1に示した太陽電池のバスバー電極上に配線部材を配設した状態を示す平面図である。
【図5】図1に示した太陽電池のバスバー電極上に配線部材を配設した状態を示す断面図である。
【図6】この発明の実施形態に係る太陽電池モジュールの側面拡大断面図である。
【図7】マルチワイヤソーを用いたシリコンインゴットのスライス方法を示す模式的斜視図である。
【図8】基板表面に集電極を形成した太陽電池を示す平面図である。
【図9】フィンガー電極を形成した部分を模式的に拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0029】
この発明の実施形態にかかる太陽電池10の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、太陽電池10の平面図である。太陽電池10は、図1に示すように、基板20dに、光電変換部20、フィンガー電極30及びバスバー電極40を備える。
【0030】
光電変換部20は、太陽光を受けることによりキャリアを生成する。ここで、キャリアとは、太陽光が光電変換部20に吸収されて生成される正孔と電子とをいう。光電変換部20は、内部にn型領域とp型領域とを有しており、n型領域とp型領域との界面で半導体接合が形成される。光電変換部20は、単結晶シリコン、多結晶シリコン等の結晶系半導体材料により構成される半導体基板を用いて形成することができる。光電変換部20は、一例として互いに逆導電型を有する単結晶シリコンと非晶質シリコン層との間に真性な非晶質シリコン層を介挿し、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面の特性を改善した太陽電池が用いられる。
【0031】
この実施形態における基板20dは、多結晶シリコンインゴット又は単結晶シリコンインゴットをワイヤソーによるスライス加工で形成されたものであり、スライスに起因して表面に形成された深い溝などのワイヤ痕10bが基板20dの表裏面に残っている。
【0032】
このワイヤ痕10bは、図2に示すように、溝幅が最大5μm程度、溝の深さが最大10μm、長さが最大3cm程度である。また、基板20dの表裏面には、異方性エッチングにより、光の反射による変換効率の低下を低減するための微少な凹凸10cを形成する表面加工が施されている。
【0033】
この実施形態では、図1に示すように、スライスに起因して表面に形成された深い溝などのワイヤ痕10bに平行にフィンガー電極30を形成している。このため、生産ラインにおいては、ワイヤ痕(スライス痕)10bを基準として、フィンガー電極30がワイヤ痕10bと平行になるように、基板10bのセッティング方向を決定し、各製造の工程を決めている。
【0034】
スライス痕10bと平行にフィンガー電極30を形成することで、図2に示すように、銀ペーストを用いて電極30を形成したときも、深い溝のワイヤ痕10bをフィンガー電極30が長手方向に跨ることがなくなる。このため、フィンガー電極30の断線を抑制することができる。
【0035】
上記したフィンガー電極30は、光電変換部20からキャリアを収集する電極である。図1に示すように、フィンガー電極30は、ワイヤ痕10bに平行にライン状に形成される。フィンガー電極30は、基板20dの光電変換部20の受光面略全域にわたって複数本形成される。フィンガー電極30は、例えば、樹脂材料をバインダーとし、銀粒子等の導電性粒子をフィラーとした樹脂型導電性ペーストを用いて形成されるが、これに限るものではない。なお、図3に示すように、フィンガー電極30は、光電変換部20の受光面上及び裏面上において同様に形成される。フィンガー電極30の厚さは50μm程度、線幅は100μm〜120μmである。
【0036】
バスバー電極40は、複数本のフィンガー電極30からキャリアを集電する電極である。図1に示すように、バスバー電極40は、フィンガー電極30と交差するように形成される。バスバー電極40は、例えば、樹脂材料をバインダーとし、フィンガー電極30と同様に銀粒子等の導電性粒子をフィラーとした樹脂型導電性ペーストを用いて形成されるが、これに限るものではない。なお、図3に示すように、バスバー電極40は、光電変換部20の裏面上にも形成される。
【0037】
ここで、バスバー電極40の本数は、光電変換部20の大きさなどを考慮して、適当な本数に設定することができる。この実施形態に係る太陽電池10は、2本のバスバー電極40を備えるが、3本以上であっても良い。この実施形態では、バスバー電極40は、厚さ50μm、幅1mmである。
【0038】
なお、バスバー電極40は、ワイヤ痕10bと直交する方向に形成されるが、バスバー電極40は、フィンガー電極30に比べて線幅が太く、断線の虞は小さい。また、このバスバー電極40上に後述するように、配線部材11が接続されるので、万が一、部分的に断線していても、配線部材11により導通は確保できる。
【0039】
次に、太陽電池10の構成の一例として、光電変換部20が所謂「HIT(登録商標)」構造を有する場合について、図3を参照しながら説明する。
【0040】
図3に示すように、光電変換部20は、透光性導電膜20a、p型非晶質シリコン層20b、真性(i)型非晶質シリコン層20c、n型単結晶シリコン基板20d、i型非晶質シリコン層20e、n型非晶質シリコン層20f及び透光性導電膜20gを備える。
【0041】
n型単結晶シリコン基板20dの受光面側には、i型非晶質シリコン層20cを介して、p型非晶質シリコン層20bが形成される。p型非晶質シリコン層20bの受光面側には、透光性導電膜20aが形成される。一方、n型単結晶シリコン基板20dの裏面側には、i型非晶質シリコン層20eを介して、n型非晶質シリコン層20fが形成される。n型非晶質シリコン層20fの裏面側には、透光性導電膜20gが形成される。
【0042】
フィンガー電極30及びバスバー電極40は、透光性導電膜20aの受光面側及び透光性導電膜20gの裏面側それぞれに形成される。
【0043】
次に、太陽電池ストリング1並び太陽電池モジュール1aの構成について、図4ないし図6を参照しながら説明する。図4は、図1ないし図3に示した太陽電池10のバスバー電極40上に配線部材11を配設した状態を示す平面図、図5は、バスバー電極部分における拡大断面図である。
【0044】
図4、図5に示すように、配線部材11は、バスバー電極40に沿って配置される。即ち、配線部材11は、太陽電池10のバスバー電極40上に配設される。配線部材11の幅は、バスバー電極40の幅と略同等である。配線部材11は、バスバー電極40に接触する。
【0045】
このように、バスバー電極40と配線部材11とは、光電変換部20上に配置される。そして、配線部材11とバスバー電極40とは、半田により電気的に接続されている。
【0046】
図5に示すように、配線部材11は、低抵抗体としての厚さ200μm、幅1mmの銅箔11a、この銅箔11aの周囲に設けられる錫若しくは錫を含む合金材料からなる半田層11bを含む。
【0047】
半田層11bは、錫、SnAgCu、SnPb、SnCuNi等が用いられ、この実施形態では、SnAgCu半田層11bが銅箔11aの周囲に設けられる。図5に示すように、配線部材11は、受光面側及び裏面側において同様の外形を有する。
【0048】
バスバー電極40と配線部材11とは、光電変換部20上に配置される。そして、配線部材11とバスバー電極40が重なった部分の全体に熱風や赤外線が放射される。配線部材11の表面にコーティングされた半田層11を溶融させて、バスバー電極40と配線部材11とを電気的に接続する。
【0049】
この発明の実施形態に係る太陽電池モジュール1aの概略構成について、図6を参照しながら説明する。図6は、この実施形態に係る太陽電池モジュール1aの側面拡大断面図である。
【0050】
太陽電池モジュール1aは、太陽電池ストリング1、受光面側保護材2、裏面側保護材3及び封止材4を備える。太陽電池モジュール1aは、受光面側保護材2と裏面側保護材3との間に、封止材4によって太陽電池ストリング1を封止することにより構成される。
【0051】
太陽電池ストリング1は、複数の太陽電池10と配線部材11を備える。太陽電池ストリング1は、複数の太陽電池10を配線部材11によって互いに接続することにより構成される。
【0052】
太陽電池10は、太陽光が入射する受光面と、受光面の反対側に設けられた裏面とを有する。太陽電池10の受光面上及び裏面上には電極が形成される。
【0053】
配線部材11は、太陽電池10の受光面上に形成された電極と、この太陽電池に隣接する他の太陽電池10の裏面上に形成された電極とに接続される。これにより、隣接する太陽電池10、10間は電気的に接続される。配線部材11は、銅箔板と、この銅箔板の表面にメッキされた半田とを含む。この配線部材11は、銅箔板の厚さは約200μm、幅約1mm、半田の膜厚は約40μmである。
【0054】
受光面側保護材2は、封止材4の受光面側に配置されており、太陽電池モジュール100の表面を保護する。受光面側保護材2としては、透光性及び遮水性を有するガラス、透光性プラスチック等を用いることができる。
【0055】
裏面側保護材3は、封止材4の裏面側に配置されており、太陽電池モジュール100の背面を保護する。裏面側保護材3としては、PET(Polyethylene Terephthalate)等の樹脂フィルム、Al箔を樹脂フィルムでサンドイッチした構造を有する積層フィルムなどを用いることができる。
【0056】
封止材4は、受光面側保護材2と裏面側保護材3との間で太陽電池ストリング1を封止する。封止材4としては、EVA、EEA、PVB、シリコン、ウレタン、アクリル、エポキシ等の透光性の樹脂を用いることができる。
【0057】
なお、以上のような構成を有する太陽電池モジュール100の外周には、Al(アルミニウム)フレーム(図示しない)を取り付けることができる。
【0058】
次に、この発明による太陽電池と比較のための太陽電池を用意し、出力特性を測定した結果を示す。実施例は、図1に示すように、ワイヤ痕10bに対してフィンガー電極30を平行に形成したもの、比較例は、図8に示すように、ワイヤ痕10bに対してフィンガー電極30を直交する方向に形成したものである。その他の構成は実施例と比較例とも同じである。比較例の太陽電池の出力の最大値(Pmax)並びにバスバー間抵抗(Ω)を100%とした場合の相対値である。
【0059】
この発明の実施例では、バスバー間抵抗が比較例に対して98%となり、抵抗が低くなっている。そして、太陽電池出力は、101%と比較例より1%出力が向上している。これは、フィンガー電極30の断線が抑制されたことによると考えられる。
【0060】
次に、本実施形態に係る太陽電池モジュール100の製造方法について説明する。
【0061】
まず、100mm角のn型単結晶シリコン基板20dをアルカリ水溶液で異方性エッチング加工することにより、n型単結晶シリコン基板20dの受光面に微細な凹凸を形成する。又、n型単結晶シリコン基板20dの受光面を洗浄して、不純物を除去する。
【0062】
次に、ワイヤ痕10bを基準として、基板20dをセットし、n型単結晶シリコン基板20dの受光面側に、CVD(化学気相成長)法を用いて、i型非晶質シリコン層20c、p型非晶質シリコン層20bを順次積層する。同様に、n型単結晶シリコン基板20dの裏面側に、i型非晶質シリコン層20e、n型非晶質シリコン層20fを順次積層する。
【0063】
次に、PVD(物理蒸着)法を用いて、p型非晶質シリコン層20bの受光面側に透光性導電膜20aを形成する。同様に、n型非晶質シリコン層20fの裏面側に透光性導電膜20gを形成する。以上により、光電変換部20が作製される。
【0064】
次に、ワイヤ痕10bを基準として、基板20dをセットし、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の印刷法を用いて、エポキシ系熱硬化型の銀ペーストを、ワイヤ痕10bにフィンガー電極30が平行に位置するように、光電変換部20の受光面上及び裏面上に所定のパターンで配置する。
【0065】
銀ペーストを所定条件で加熱して溶剤を揮発させた後、さらに加熱することにより本乾燥する。その後、バスバー電極40上の一部に樹脂層41が残るようにして、保護層21を設ける。以上により、太陽電池10が作製される。
【0066】
次に、バスバー電極40上に、配線部材11を半田付けする。これにより、配線部材11と太陽電池10とを機械的かつ電気的に接続する。具体的には、まず、光電変換部20の受光面及び裏面それぞれに形成されたバスバー電極40上に配線部材11を配置する。次に、所定の温度に配線部材11を加熱し、半田を溶融してバスバー電極40に配線部材11を半田付けする。この半田付けにより、バスバー電極40と配線部材11との間に一定間隔で被接着部分が形成されることになる。以上により、太陽電池ストリング1が作成される。
【0067】
次に、ガラス基板(受光面側保護材2)上に、EVA(封止材4)シート、太陽電池ストリング1、EVA(封止材4)シート及びPETシート(裏面側保護材3)を順次積層して積層体とする。
【0068】
次に、上記積層体を、真空雰囲気において加熱圧着することにより仮圧着した後、所定条件で加熱することによりEVAを完全に硬化させる。以上により、太陽電池モジュール1aが製造される。
【0069】
なお、太陽電池モジュール100には、端子ボックスやAlフレーム等を取り付けることができる。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 太陽電池ストリング、2 受光面側保護材、3 裏面側保護材、4 封止材、10 太陽電池、10b ワイヤ痕、11 配線部材、20d 基板、30 フィンガー電極、40 バスバー電極、41 樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶系シリコン基板を含み、表面にフィンガー電極を有する集電極が設けられた太陽電池であって、
前記フィンガー電極は、基板表面のワイヤ痕に平行に位置するように形成されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記フィンガー電極は、基板表面のワイヤ痕を基準として、このワイヤ痕に平行に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
複数の太陽電池と、前記複数の太陽電池同士を電気的に接続する配線部材とを備える太陽電池モジュールであって、
前記複数の太陽電池は、光電変換部と、前記光電変換部上に形成され、基板のワイヤ痕に平行に位置するように形成された電極とを有し、
前記電極と重なるように前記配線部材が接続されていることを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−159676(P2011−159676A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18019(P2010−18019)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】