説明

太陽電池基板加工装置および太陽電池基板加工方法

【課題】「うねり」のある太陽電池基板、または曲面状の太陽電池基板を加工する場合であっても、高い精度でパターン加工することができ、太陽電池素子の変換効率を大きく向上させることができる。
【解決手段】本発明の太陽電池基板加工装置は、太陽電池基板60を保持する基板保持部50と、基板保持部50により保持された太陽電池基板60に、集光レンズ22を介してレーザ光LBを照射するレーザ照射部20とを備えている。基板保持部50近傍には、レーザ照射部20からのレーザ光LBによって太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPを測定する測定部10が配置されている。測定部10によって測定された太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPの大きさに基づいて、太陽電池基板60上におけるレーザ光LBのスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズ22と太陽電池基板60の間の距離が調整可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は「うねり」のある太陽電池基板、または曲面状の太陽電池基板を加工する場合であっても、高い精度でパターン加工することができる太陽電池基板加工装置および太陽電池基板加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池素子を製造する場合、シリコン膜、金属膜、透明電極膜などをパターニングすることが必要となる。このようなシリコン膜には、アモルファス・シリコン膜または多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)が用いられる場合が多い。特に、近年は原料のシリコンの供給不安が広がっているため、薄いシリコン薄膜を用いた太陽電池素子への期待が高まっている。
【0003】
太陽電池素子を得るために太陽電池基板をパターン加工する方法として、レーザ光による加工法が幅広く利用されてきた。これは、加工対象であるシリコン膜、金属膜、透明電極膜などをPEP工程なしでパターニングできるメリットが大きかったためである。
【0004】
ところで、パターン加工の精度が太陽電池素子の変換効率に影響を与えるため、太陽電池基板のパターン加工の要求精度は年々厳しくなってきている。
【0005】
このように太陽電池基板をパターン加工する際のパラメータとしては、レーザ波長、レーザエネルギ、パルス幅、繰り返し周波数、走査速度、加工スポット径などを挙げることができる。このうち、レーザ波長、パルス幅、繰り返し周波数、走査速度といったパラメータは、変動要因が小さく、比較的安定している。これに対して、レーザエネルギと加工スポット径は、変動しやすく、比較的、パターン加工に影響を与えやすいパラメータである。
【0006】
このようなレーザエネルギと加工スポット径のうち、レーザエネルギは、加工点エネルギのモニタリングと実測値を基準としたパワーフィードバックによって、±数%以下の精度を確保することができる。
【0007】
これに対して、加工スポット径を一定に保つことは、現状では有効な方法を見出せなかったため、改善が求められていた。特に、太陽電池基板が大型化するにつれて、太陽電池基板の「うねり」が増大する傾向にあり、加工スポット径を一定に保つことが深刻な問題となってきている。
【0008】
また、近年、太陽電池を瓦等の曲面をもった建築部材上に貼り付けて使う用途が広がっている。このため、従来は平面基板上に形成していた太陽電池素子を、曲面基板上に形成する要求が高まってきている。しかしながら、このような曲面を有する太陽電池素子を形成する場合、加工スポット径を一定に保つことが格段に難しくなる。
【0009】
ところで、現状、レーザ加工幅に対する典型的な要求精度は、50μm±5μmである。この要求精度を満足するために必要な、太陽電池基板のシリコン薄膜と集光レンズとの間の距離の所定の距離からのズレ(位置決め精度)は、実験的には±10μm以下である。これに対して、太陽電池素子を製造するための太陽電池基板に発生している「うねり」は、実測値で最大で±100μmであった。このため、何の制御もしない状態でパターン加工を行うと、上述した要求精度を到底満足することはできない。なお、50μm±5μmというレーザ加工幅に対する要求精度は、年々厳しくなってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、「うねり」のある太陽電池基板、または曲面状の太陽電池基板を加工する場合であっても、高い精度でパターン加工することができ、太陽電池素子の変換効率を大きく向上させることができる太陽電池基板加工装置および太陽電池基板加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、太陽電池基板をレーザ光でパターン加工する太陽電池基板加工装置において、太陽電池基板を保持する基板保持部と、基板保持部により保持された太陽電池基板に、集光レンズを介してレーザ光を照射するレーザ照射部と、基板保持部近傍に配置され、レーザ照射部からのレーザ光によって太陽電池基板から発生するスペックルパターンを測定する測定部とを備え、測定部によって測定された太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさに基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離が調整可能であることを特徴とする太陽電池基板加工装置である。
【0012】
このような構成によって、「うねり」のある太陽電池基板、または曲面状の太陽電池基板を加工する場合であっても、高い精度でパターン加工することができ、太陽電池素子の変換効率を大きく向上させることができる。
【0013】
本発明は、太陽電池基板をレーザ光でパターン加工する太陽電池基板加工装置において、太陽電池基板を保持する基板保持部と、基板保持部により保持された太陽電池基板に、集光レンズを介してレーザ光を照射するレーザ照射部と、基板保持部近傍に配置され、レーザ照射部からのレーザ光によって太陽電池基板から発生するスペックルパターンを測定する測定部と、基板保持部近傍に配置され、太陽電池基板の表面形状を検出する形状検出部とを備え、測定部によって測定された太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさと、形状検出部によって検出された太陽電池基板の表面形状とに基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離が調整可能であることを特徴とする太陽電池基板加工装置である。
【0014】
このような構成によって、より大きな「うねり」のある太陽電池基板、またはより大きな曲面を有する太陽電池基板を加工する場合であっても、高い精度でパターン加工することができ、太陽電池素子の変換効率を大きく向上させることができる。
【0015】
本発明は、測定部によって測定された太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさを最大にすることによって、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径を定めることを特徴とする太陽電池基板加工装置である。
【0016】
このような構成によって、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、当該スポット径を精度良く制御することができる。
【0017】
本発明は、測定部は、CCD素子又はラインセンサーからなることを特徴とする太陽電池基板加工装置である。
【0018】
本発明は、形状検出部に接続され、形状検出部によって検出された太陽電池基板の表面形状を記憶する形状記憶部をさらに備え、形状記憶部に記憶された太陽電池基板の表面形状に基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離が調整可能であることを特徴とする太陽電池基板加工装置である。
【0019】
本発明は、形状検出部は、レーザ変位計又は接触式変位計からなることを特徴とする太陽電池基板加工装置である。
【0020】
本発明は、集光レンズは、基板保持部に対する距離が調整自在であることを特徴とする太陽電池基板加工装置である。
【0021】
このような構成により、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、当該スポット径の大きさを容易に制御することができる。
【0022】
本発明は、基板保持部は、太陽電池基板の集光レンズに対する距離が調整自在になるよう、太陽電池基板を保持することを特徴とする太陽電池基板加工装置である。
【0023】
このような構成により、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、当該スポット径の大きさを容易に制御することができる。
【0024】
本発明は、基板保持部近傍に設けられ、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径を計測するスポット径計測部と、当該スポット径計測部と前記レーザ照射部に接続された制御部とをさらに備え、制御部は、スポット径計測部からの情報に基づいて、前記スポット径が一定範囲から外れたと判断すると、レーザ照射部の駆動を停止することを特徴とする太陽電池基板加工装置である。
【0025】
このような構成により、太陽電池基板上で、所定の範囲のスポット径を確実に維持することができるので、太陽電池基板をより高い精度でパターン加工することができる。
【0026】
本発明は、太陽電池基板をレーザ光でパターン加工する太陽電池基板加工方法において、基板保持部によって、太陽電池基板を保持する基板保持工程と、レーザ照射部によって、基板保持部により保持された太陽電池基板に、集光レンズを介してレーザ光を照射するレーザ照射工程と、基板保持部近傍に配置された測定部によって、レーザ照射部からのレーザ光によって太陽電池基板から発生するスペックルパターンを測定する測定工程とを備え、測定部によって測定された太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさに基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離を調整することを特徴とする太陽電池基板加工方法である。
【0027】
このような構成によって、「うねり」のある太陽電池基板、または曲面状の太陽電池基板を加工する場合であっても、高い精度でパターン加工することができ、太陽電池素子の変換効率を大きく向上させることができる。
【0028】
本発明は、太陽電池基板をレーザ光でパターン加工する太陽電池基板加工方法において、基板保持部によって、太陽電池基板を保持する基板保持工程と、基板保持部近傍に配置された形状検出部によって、太陽電池基板の表面形状を検出する形状検出工程と、レーザ照射部によって、基板保持部により保持された太陽電池基板に、集光レンズを介してレーザ光を照射するレーザ照射工程と、基板保持部近傍に配置された測定部によって、レーザ照射部からのレーザ光によって太陽電池基板から発生するスペックルパターンを測定する測定工程とを備え、測定部によって測定された太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさと、形状検出部によって検出された太陽電池基板の表面形状とに基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離を調整することを特徴とする太陽電池基板加工方法である。
【0029】
このような構成によって、より大きな「うねり」のある太陽電池基板、またはより大きな曲面を有する太陽電池基板を加工する場合であっても、高い精度でパターン加工することができ、太陽電池素子の変換効率を大きく向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさに基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離を調整することができる。このため、「うねり」のある太陽電池基板、または曲面状の太陽電池基板を加工する場合であっても、高い精度でパターン加工することができ、太陽電池素子の変換効率を大きく向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る太陽電池基板加工装置の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0032】
本発明の太陽電池基板加工装置は、ガラス基板62と、当該ガラス基板62上に配置されたシリコン薄膜61とからなる太陽電池基板60(図2参照)に対して、レーザ光LBを用いてパターン加工するものである。
【0033】
図1に示すように、太陽電池基板加工装置は、太陽電池基板60を保持する基板保持部50と、基板保持部50により保持された太陽電池基板60に、レーザ光LBを照射するレーザ照射部20と、基板保持部50近傍に配置され、レーザ照射部20からのレーザ光LBによって太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPを測定する測定部10とを備えている。
【0034】
また、図1に示すように、レーザ照射部20と基板保持部50との間には、レーザ照射部20から照射されたレーザ光LBを略平行にするコリメートレンズ21と、コリメートレンズ21によって略平行になったレーザ光LBを太陽電池基板60上に集光する集光レンズ22とが配置されている。なお、測定部10としては、CCD素子やラインセンサーなどを用いることができる。
【0035】
図1に示すレーザ照射部20としては、太陽電池基板60のシリコン薄膜61への吸収率が高いSHG-YAGレーザまたはSHG-YVO4レーザを用いることが好ましい。ところで、これらSHG-YAGレーザおよびSHG-YVO4レーザの波長は、いずれも532nmである。また、Qスイッチ法を用いてレーザ照射部20からレーザ光LBを照射することによって、ナノ秒オーダーのパルスレーザを照射することができ、太陽電池基板60のシリコン薄膜61への熱影響を抑制することができる。なお、レーザ照射部20から照射されるレーザ光LBは、集光レンズ22によって太陽電池基板60上に集光され、数10μmのスポット径になっている。
【0036】
また、図1に示すように、基板保持部50は、水平方向に自在に移動する水平方向移動機構51と、上下自在に移動する上下方向移動機構55とを有している。なお、集光レンズ22には、集光レンズ22を上下方向に移動させるレンズ駆動部22aが設けられている。
【0037】
また、図1に示すように、レンズ駆動部22a、上下方向移動機構55および測定部10は各々、制御部40に接続されている。そして、この制御部40は、測定部10によって測定された太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPの大きさに基づいて、太陽電池基板60上におけるレーザ光LBのスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズ22と太陽電池基板60の間の距離を調整することができる。
【0038】
具体的には、図1に示す制御部40は、集光レンズ22を上下方向に自在に移動させたり、上下方向移動機構55を上下方向に移動させたりして、基板保持部50に対する距離を調整することができる。このため、制御部40は、測定部10によって測定された太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPの大きさを最大にすることによって、太陽電池基板60上におけるレーザ光LBのスポット径が一定範囲に入るよう、レーザ光LBのスポット径の大きさを容易に制御することができる。
【0039】
また、図1に示すように、基板保持部50近傍には、太陽電池基板60上におけるレーザ光LBのスポット径を計測するスポット径計測部25が設けられている。また、当該スポット径計測部25とレーザ照射部20には、制御部40が接続されている。そして、この制御部40は、スポット径計測部25からの情報に基づいて、スポット径が一定範囲から外れたと判断すると、レーザ照射部20の駆動を停止させる。
【0040】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0041】
まず、基板保持部50によって、太陽電池基板60が保持される(基板保持工程81)(図1および図4参照)。
【0042】
次に、基板保持部50の水平方向移動機構51によって、太陽電池基板60の最初の加工部分がレーザ照射部20の下方に配置され、所定位置に位置決めされる。その後、レーザ照射部20によって、基板保持部50により保持された太陽電池基板60に、集光レンズ22を介してレーザ光LBが照射される(レーザ照射工程83)(図1および図4参照)。このようにレーザ光LBを照射することによって、太陽電池基板60が予定線72に沿った割断線71で割断され、パターン加工される。
【0043】
この間、基板保持部50近傍に配置された測定部10によって、レーザ照射部20からのレーザ光LBによって太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPが測定される(測定工程85)(図1および図4参照)。
【0044】
次に、基板保持部50の水平方向移動機構51によって、次の太陽電池基板60の加工部分がレーザ照射部20の下方に配置され、所定位置に位置決めされる。
【0045】
その後、測定部10によって測定された太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPの大きさに基づいて、太陽電池基板60上におけるレーザ光LBのスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズ22と太陽電池基板60の間の距離が調整される(間隙調整工程87)(図1および図4参照)。
【0046】
具体的には、測定部10によって測定された太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPの大きさが最大になるように、制御部40が、レンズ駆動部22aを制御して集光レンズ22を上下方向に自在に移動させたり、上下方向移動機構55を駆動制御して上下方向に移動させたりして、集光レンズ22と太陽電池基板60の間の距離を調整する(図1参照)。このように、制御部40が、測定部10によって測定されたスペックルパターンSPの大きさが最大になるように集光レンズ22と太陽電池基板60の間の距離を制御することによって、太陽電池基板60表面で散乱される散乱光の強度を一定に保つことができ、ひいては太陽電池基板60に照射されるレーザ光LBの強度を一定に保つことができる。このため、制御部40は、太陽電池基板60上におけるレーザ光LBのスポット径の大きさを精度良く制御することができる。
【0047】
この後は、上述したレーザ照射工程83および測定工程85から各工程が、順次繰り返し行われる。
【0048】
上述のように、間隙調整工程87において、測定部10によって測定された太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPの大きさに基づいて、集光レンズ22と太陽電池基板60の間の距離が調整される。このため、太陽電池基板加工装置は、「うねり」のある太陽電池基板60、または曲面状の太陽電池基板60を加工する場合であっても、太陽電池基板60のシリコン薄膜61と集光レンズ22との間の距離の所定の距離からのズレ(位置決め精度)を、±5μm以下の範囲にすることができる。
【0049】
この結果、従来の太陽電池基板加工装置では、図3(a)に示すように、太陽電池基板60上に照射されるレーザ光LBの強度が、太陽電池基板60上の場所(座標)によって大きく異なってしまっていたのに対して、本発明の太陽電池基板加工装置によると、図3(b)に示すように、太陽電池基板60上に照射されるレーザ光LBの強度を、太陽電池基板60上の場所(座標)に左右されずに、ほぼ一定に保つことができる。このため、本発明の太陽電池基板加工装置は、パターン加工の幅に対する要求精度である50μm±5μmを、確実に達成することができる。
【0050】
従って、本発明の太陽電池基板加工装置によると、「うねり」のある太陽電池基板60、または曲面状の太陽電池基板60を加工する場合であっても、高い精度でパターン加工することができ、得られる太陽電池素子の変換効率を大きく向上させることができる。
【0051】
また、上述のような測定工程85において、制御部40は、スポット径計測部25からの情報に基づいて、スポット径が一定範囲から外れたと判断すると、レーザ照射部20の駆動を停止させる。このため、太陽電池基板60上のスポット径が、所定の範囲内に確実に維持されるので、太陽電池基板60をより高い精度でパターン加工することができる。
【0052】
第2の実施の形態
次に図5(a)(b)および図6により本発明の第2の実施の形態について説明する。図5(a)(b)および図6に示す第2の実施の形態は、基板保持部50近傍に配置された、太陽電池基板60の表面形状を検出する形状検出部30と、当該形状検出部30によって検出された太陽電池基板60の表面形状を記憶する形状記憶部35をさらに設けたものであり、他は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。ところで、形状検出部30としては、レーザ変位計や接触式変位計などを用いることができる。
【0053】
図5(a)(b)および図6に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0054】
図5(a)に示すように、形状記憶部35は制御部40に接続されている。このため、制御部40は、測定部10によって測定された太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPの大きさだけでなく、形状記憶部35に記憶された太陽電池基板60の表面形状にも基づいて、集光レンズ22と太陽電池基板60の間の距離を調整することができる。
【0055】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0056】
まず、基板保持部50によって、太陽電池基板60が保持される(基板保持工程81)(図1および図6参照)。
【0057】
次に、基板保持部50近傍に配置された形状検出部30によって、太陽電池基板60の表面形状全体が検出される(形状検出工程91)(図5(a)および図6参照)。このとき、基板保持部50の水平方向移動機構51によって、太陽電池基板60が形状検出部30に対して走査される(図5(a)参照)。
【0058】
また、上述の形状検出工程91において、形状検出部30に接続された形状記憶部35によって、形状検出部30で検出された太陽電池基板60の表面形状が記憶される(形状記憶工程93)(図5(a)および図6参照)。
【0059】
次に、基板保持部50の水平方向移動機構51によって、太陽電池基板60の最初の過加工部分がレーザ照射部20の下方に配置され、所定位置に位置決めされる。その後、レーザ照射部20によって、基板保持部50により保持された太陽電池基板60に、集光レンズ22を介してレーザ光LBが照射される(レーザ照射工程83)(図1、図5(b)および図6参照)。
【0060】
このとき、基板保持部50近傍に配置された測定部10によって、レーザ照射部20からのレーザ光LBによって太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPが測定される(測定工程85)(図1および図6参照)。
【0061】
次に、基板保持部50の水平方向移動機構51によって、次の太陽電池基板60の加工部分がレーザ照射部20の下方に配置され、所定位置に位置決めされる。
【0062】
その後、形状検出部30によって検出されて、形状記憶部35に記憶された太陽電池基板60の表面形状に関する情報と、測定部10によって測定された太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPの大きさに関する情報とに基づいて、太陽電池基板60上におけるレーザ光LBのスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズ22と太陽電池基板60の間の距離が調整される(間隙調整工程87)(図1、図5(b)および図6参照)。
【0063】
具体的には、制御部40が、形状検出部30によって検出されて、形状記憶部35に記憶された太陽電池基板60の表面形状に関する情報によって、太陽電池基板60の大まかな表面形状を把握して、集光レンズ22と太陽電池基板60との間の距離を予想する。そして、太陽電池基板60の表面形状から予想された集光レンズ22と太陽電池基板60との間の距離を考慮し、かつ測定部10によって測定された太陽電池基板60から発生するスペックルパターンSPの大きさを考慮することによって、集光レンズ22と太陽電池基板60の間の距離を調整する。
【0064】
このため、本実施の形態の太陽電池基板加工装置によると、±100μmよりもさらに大きな「うねり」を有する太陽電池基板60、またはより大きな曲面を有する太陽電池基板60を加工する場合であっても、このような太陽電池基板60を高い精度でパターン加工することができ、得られる太陽電池素子の変換効率を大きく向上させることができる。
【0065】
この後は、上述したレーザ照射工程83および測定工程85から各工程が、順次繰り返し行われる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による太陽電池基板加工装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明による太陽電池基板加工装置によって加工される太陽電池基板を示す斜視図。
【図3】本発明の第1の実施の形態による太陽電池基板加工装置によって、太陽電池基板上に照射されるレーザ光の強度分布を示すグラフ図。
【図4】本発明の第1の実施の形態による太陽電池基板加工方法を示すフロー図。
【図5】本発明による太陽電池基板加工装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【図6】本発明の第2の実施の形態による太陽電池基板加工方法を示すフロー図。
【符号の説明】
【0067】
10 測定部
20 レーザ照射部
22 集光レンズ
50 基板保持部
25 スポット径計測部
30 形状検出部
35 形状記憶部
40 制御部
55 上下方向移動機構
60 太陽電池基板
61 シリコン薄膜
62 ガラス基板
81 基板保持工程
83 レーザ照射工程
85 測定工程
87 間隙調整工程
91 形状検出工程
93 形状記憶工程
LB レーザ光
SP スペックルパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池基板をレーザ光でパターン加工する太陽電池基板加工装置において、
太陽電池基板を保持する基板保持部と、
基板保持部により保持された太陽電池基板に、集光レンズを介してレーザ光を照射するレーザ照射部と、
基板保持部近傍に配置され、レーザ照射部からのレーザ光によって太陽電池基板から発生するスペックルパターンを測定する測定部とを備え、
測定部によって測定された太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさに基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離が調整可能であることを特徴とする太陽電池基板加工装置。
【請求項2】
太陽電池基板をレーザ光でパターン加工する太陽電池基板加工装置において、
太陽電池基板を保持する基板保持部と、
基板保持部により保持された太陽電池基板に、集光レンズを介してレーザ光を照射するレーザ照射部と、
基板保持部近傍に配置され、レーザ照射部からのレーザ光によって太陽電池基板から発生するスペックルパターンを測定する測定部と、
基板保持部近傍に配置され、太陽電池基板の表面形状を検出する形状検出部とを備え、
測定部によって測定された太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさと、形状検出部によって検出された太陽電池基板の表面形状とに基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離が調整可能であることを特徴とする太陽電池基板加工装置。
【請求項3】
測定部によって測定された太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさを最大にすることによって、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径を定めることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の太陽電池基板加工装置。
【請求項4】
測定部は、CCD素子又はラインセンサーからなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の太陽電池基板加工装置。
【請求項5】
形状検出部に接続され、形状検出部によって検出された太陽電池基板の表面形状を記憶する形状記憶部をさらに備え、
形状記憶部に記憶された太陽電池基板の表面形状に基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離が調整可能であることを特徴とする請求項2記載の太陽電池基板加工装置。
【請求項6】
形状検出部は、レーザ変位計又は接触式変位計からなることを特徴とする請求項2記載の太陽電池基板加工装置。
【請求項7】
集光レンズは、基板保持部に対する距離が調整自在であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の太陽電池基板加工装置。
【請求項8】
基板保持部は、太陽電池基板の集光レンズに対する距離が調整自在になるよう、太陽電池基板を保持することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の太陽電池基板加工装置。
【請求項9】
基板保持部近傍に設けられ、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径を計測するスポット径計測部と、
当該スポット径計測部と前記レーザ照射部に接続された制御部とをさらに備え、
制御部は、スポット径計測部からの情報に基づいて、前記スポット径が一定範囲から外れたと判断すると、レーザ照射部の駆動を停止することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の太陽電池基板加工装置。
【請求項10】
太陽電池基板をレーザ光でパターン加工する太陽電池基板加工方法において、
基板保持部によって、太陽電池基板を保持する基板保持工程と、
レーザ照射部によって、基板保持部により保持された太陽電池基板に、集光レンズを介してレーザ光を照射するレーザ照射工程と、
基板保持部近傍に配置された測定部によって、レーザ照射部からのレーザ光によって太陽電池基板から発生するスペックルパターンを測定する測定工程とを備え、
測定部によって測定された太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさに基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離を調整することを特徴とする太陽電池基板加工方法。
【請求項11】
太陽電池基板をレーザ光でパターン加工する太陽電池基板加工方法において、
基板保持部によって、太陽電池基板を保持する基板保持工程と、
基板保持部近傍に配置された形状検出部によって、太陽電池基板の表面形状を検出する形状検出工程と、
レーザ照射部によって、基板保持部により保持された太陽電池基板に、集光レンズを介してレーザ光を照射するレーザ照射工程と、
基板保持部近傍に配置された測定部によって、レーザ照射部からのレーザ光によって太陽電池基板から発生するスペックルパターンを測定する測定工程とを備え、
測定部によって測定された太陽電池基板から発生するスペックルパターンの大きさと、形状検出部によって検出された太陽電池基板の表面形状とに基づいて、太陽電池基板上におけるレーザ光のスポット径が一定範囲に入るよう、集光レンズと太陽電池基板の間の距離を調整することを特徴とする太陽電池基板加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−71874(P2008−71874A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248155(P2006−248155)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】