説明

太陽電池基板及びこれを用いた太陽電池モジュール

【課題】簡単な構造で且つ簡易な製造工程を実現することで、直列抵抗損失を少なくすることを可能とした。
【解決手段】太陽電池モジュール1は、半導体層3と、半導体層3を上面に形成させた半導体電極基板10と、この半導体電極基板10上に対向して配置された対向電極基板20と、上下の半導体電極基板10、対向電極基板20同士の間でセル間を分離するスペーサー4と、上下の半導体電極基板10、対向電極基板20同士の間に注入されている電解質層5とを備えている。半導体電極基板10は、有機樹脂基板11と、この有機樹脂基板11の上面11aに設けられた凹溝12と、この凹溝12内に配置された集電電極13と、有機樹脂基板11の上面11aに所定膜厚をもって全面にわたって層状に被覆された透明導電膜14とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池基板及びこれを用いた色素増感太陽電池などの太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のため、炭酸ガス排出を低減するための各種方策が全世界的に検討されている。特に発電においては、従来の火力・原子力・水力発電などの大規模集中発電に加え、太陽エネルギー、風力、地熱など、再生可能エネルギー(自然エネルギー)などを活用した分散発電によりトータルとしての炭酸ガス排出量低減に向け、取り組みがなされている。
【0003】
このうち特に太陽電池は、すでにシリコン系を中心に実用化され、店舗・住宅の屋根への搭載などが一般的になっている。しかしながら、シリコン系太陽電池は、その製造のために必要な高純度シリコン原料が高価格であり、真空プロセスを多用する製造方法である等のためコストが高くなる。さらなる普及のためには、安価・製造容易で高効率な新規太陽電池が望まれている。これに対応する一つの技術として、有機太陽電池があげられ、そのうち、特に効率が高い色素増感太陽電池が注目を集めており、比較的簡易な製造方法、安価な原材料、高い効率から、次世代太陽電池の有力候補と考えられている。
【0004】
一般的に、この種の色素増感太陽電池では、光入射面に透明導電膜を使用しているが、この透明導電膜はシート抵抗が金属膜と比較して高いため、大面積モジュールを作製する場合、直列抵抗損失が大きな問題となっている。これに対応する一つの技術として、複数のユニットセルに分割し、それらのセルを平面的に直列接続して配置する方法が、例えば特許文献1、2に開示されている。
特許文献1には、隣接する各色素増感太陽電池セルの間に、対向する基板の間隔を保持する帯状のスペーサーを設置し、スペーサーの表面に一般的な蒸着法、無電解メッキ等の湿式法、溶液塗布方式などの方法により導電層を形成し、この導電層を介して隣接する各色素増感太陽電池セルを電気的に直列接続することで、スペーサー表面の導電層と基板上の各セルの電極を構成する導電層との接触面積を増大させ、直列抵抗損失を低下させることを可能とした色素増感太陽電池モジュールについて記載されている。
また、特許文献2には、透明電極基板に集電電極を設ける方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−018862号公報
【特許文献2】特開2003−203681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の色素増感太陽電池モジュールでは、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1では、スペーサーの表面に形成される導電層が上述したように蒸着法、無電解メッキ等の湿式法、溶液塗布方式などの方法となるうえ、基板上の導電層をなす透明導電膜の形成工程も透明導電膜のレーザー照射による分断方法となることから、製造工程が複雑になるという問題があった。
また、特許文献2では、一般的に直列抵抗を下げようとした場合、電極面積を増加させる必要があるが、一方で開口率が低下することから、その点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で且つ簡易な製造工程を実現することで、直列抵抗損失を少なくすることを可能とした太陽電池基板及びこれを用いた太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る太陽電池基板では、樹脂基板の一方の表面に設けられた凹溝と、凹溝内に配置された第1導電材料と、樹脂基板の表面に層状に被覆された第2導電材料とを備え、凹溝における対向する一方の溝側面側の第2導電材料は、一方の溝側面上に延びて第1導電材料と電気的に接続され、凹溝における他方の溝側面側の第2導電材料は、第1導電材料に対して電気的に絶縁されていることを特徴としている。
【0009】
本発明では、樹脂基板の表面に被覆される第2導電材料を凹溝によって分断させ、一方の溝側面側の第2導電材料のみを凹溝内に配置された第1導電材料に接触させて電気的に接続することで、複数のユニットセルに分割することができる。
また、凹溝は、フィルム成形時のロール転写や、押し出しスリットの表面への溝加工により樹脂基板に対して容易に成形することができる。そして、凹溝が狭い溝幅であっても、厚み(深さ寸法)を大きくすることで、電極面積を増大させることが可能であり、これにより接触抵抗を低減することができる。そのため、開口率の低下を抑制することができ、低抵抗な基板が得られ、従来のような複雑なパターニング工程を行わずにセル間を容易に分離することができる。
【0010】
また、本発明に係る太陽電池基板では、一方の溝側面は、樹脂基板の表面の平面方向とのなす角度が鋭角となることが好ましい。
この場合、一方の溝側面が樹脂基板の表面に対して滑らかに連続するので、一方の溝側面と樹脂基板の表面との頂部での第2導電材料の断線を抑えることができ、第1導電材料と第2導電材料との電気的な接続をより確実に行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る太陽電池基板では、他方の溝側面は、樹脂基板の表面の平面方向とのなす角度が鈍角になることがより好ましい。
この場合、他方の溝側面と樹脂基板の表面との交差稜線においてこれら他方の溝側面と樹脂基板との表面とがなす角度が鋭角となって、他方の溝側面が下方に向けた傾斜面となるので、第2導電材料の形成工程において、他方の溝側面上に第2導電材料が被覆されず、これにより第1導電材料と他方の溝側面側の第2導電材料との電気的な絶縁をより確実に行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る太陽電池基板では、凹溝には、第2導電材料を被覆した第1導電材料を配置させた状態で、絶縁部材が液密に嵌合されていることが好ましい。
本発明では、凹溝内に第1導電材料を配置させた状態で絶縁部材が液密に嵌合され、第1導電材料が電解質層に露出しない状態となるので、第1導電材料の腐食による断線を防止することができ、太陽電池モジュールとしての信頼性及び耐久性の向上が図れる。
【0013】
また、本発明に係る太陽電池基板を用いた太陽電池モジュールでは、上述した太陽電池基板を用いた太陽電池モジュールであって、凹溝によって絶縁された第2導電材料上に半導体層が設けられ、半導体層を挟んで第2導電材料と対向して配置されるとともに、第2導電材料と略同寸法に絶縁された対向電極が設けられ、半導体層を挟んで互いに対向する第2導電材料と対向電極とを有する複数のセルが、平面方向に直列に接続されていることを特徴としている。
また、上述の太陽電池モジュールは、色素増感太陽電池モジュールであることが好ましい。
本発明では、上述した太陽電池基板を備え、簡易な製造工程により凹溝を形成することができ、また凹溝の深さ寸法を大きくすることで簡単に電極面積を増大させ、直列抵抗損失を少なくすることができることから、複数のセルを平面方向に直列に接続した高品質な太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の太陽電池基板及びこれを用いた太陽電池モジュールによれば、フィルム成形時のロール転写等の簡易な製造工程で凹溝を形成することができ、これにより従来のような複雑なパターニング工程を行わずにセル間分離を容易に行うことができる。
また、凹溝の厚み(深さ寸法)を大きくするといった簡単な構造により電極面積を増大させ、直列抵抗損失を少なくすることができることから、直列抵抗の影響を低減した太陽電池モジュールの作製が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態による太陽電池モジュールの概略構成を示す模式的な断面図である。
【図2】図1に示す半導体電極基板の一部拡大図である。
【図3】半導体電極基板側の凹溝の構成を示す断面図である。
【図4】対向電極基板側の凹溝の構成を示す断面図である。
【図5】半導体電極基板側の集電電極と対向電極基板側の集電電極との接続方法の一例を示す模式的な平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態による太陽電池モジュールの概略構成を示す模式的な断面図である。
【図7】第2の実施の形態による集電電極の接続方法を示す模式的な平面図である。
【図8】変形例による凹溝を示す断面図であって、図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態による太陽電池基板及びこれを用いた太陽電池モジュールについて、図面に基づいて説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1における符号1は、本第1の実施の形態による色素増感太陽電池モジュール(以下、単に「太陽電池モジュール」という)を示している。この太陽電池モジュール1は、対向する基板10、20間に平面的に直列接続された複数の色素増感太陽電池セルS、S、…を配列させたものである。
ここで、図1に示す太陽電池モジュール1において、基板10、20の平面に対する法線方向を上下方向といい、基板10、20の面方向を平面方向として、以下統一して用いる。
【0018】
太陽電池モジュール1は、半導体層3と、半導体層3を上面に形成させた半導体電極基板10(太陽電池基板)と、この半導体電極基板10上に対向して配置された対向電極基板20(太陽電池基板)と、上下の電極基板10、20同士の間でセルS、S間を分離するスペーサー4(絶縁部材)と、上下の電極基板10、20同士の間に注入されている電解質層5とを備えて概略構成となっている。
【0019】
半導体電極基板10は、有機樹脂基板11と、この有機樹脂基板11の上面11a(表面)に設けられた凹溝12と、この凹溝12内に配置された集電電極13(第1導電材料)と、有機樹脂基板11の上面11aに所定膜厚をもって全面にわたって層状に被覆された透明導電膜14(第2導電材料)とから構成されている。
【0020】
凹溝12は、セルS、S間を分離する位置、すなわち隣接するセル同士の境界に設けられており、有機樹脂基板11の上面11aに対して、フィルム成形時のロール転写や、押し出しスリットの表面への溝加工により成形されている。例えば、表面に突起を有するローラー(図示省略)により表面賦形を行うことで、凹溝12を成形することができる。
【0021】
凹溝12の形状は、図2に示すように、溝底面幅寸法D1及び溝深さ寸法D2を各種条件に応じて任意に設定することが可能であるが、例えば有機樹脂基板11の厚さ寸法が0.5mmであるとき、溝底面幅寸法D1を0.1mm、溝深さ寸法D2を0.2mmに設定することができる。そして、図3に示すように、凹溝12は、その内面側で対向する溝側面12a、12bのうち紙面右側の第1溝側面12a(一方の溝側面)の有機樹脂基板11の上面11aの平面方向とのなす第1角度θ1が90度より小さい鋭角の斜面からなり、また紙面左側の第2溝側面12b(他方の溝側面)の有機樹脂基板11の上面11aの平面方向とのなす第2角度θ2が90度より大きい鈍角の斜面となっている。なお、図3では、第1角度θ1が60度であり、第2角度θ2が120度となっている。
【0022】
図2に示すように、凹溝12内に設けられる集電電極13は、銀(Ag)インク等の材料から形成され、凹溝12の溝深さ寸法D2以下の厚さ寸法をなし、すなわち溝底12cから深さ方向で中間位置までの範囲に設けられている。このような集電電極13は、例えば一般的な硬化型の銀(Ag)ペーストを凹溝12にディスペンサを用いて塗布することにより形成される。このときの塗布量をスキャン速度で調整することで、所定の厚さ寸法で形成することが可能である。
【0023】
有機樹脂基板11の上面11aに被覆される透明導電膜14は、例えばインジュウムドープ酸化スズ(ITO)が直流マグネトロンスパッタによって形成されたものである。ここで、本実施の形態では、予め有機樹脂基板11に上述した形状の凹溝12が形成されているので、スパッタ時にターゲットとサンプルとの離間を一定以上、離すことや、コリメータを使用して製膜に異方性をもたせることで、凹溝12における急峻な壁面、すなわち前記第2角度θ2が90度より大きい鈍角の斜面となる第2溝側面12bには透明導電膜14の膜を製膜させず、一方の第1溝側面12aのみに膜を形成することが可能である。これにより、一枚の有機樹脂基板11上に複数の区画に分断された導電領域(セルS)がパターニング工程を行わずに作製されることとなる。
【0024】
また、第1溝側面12a側の透明導電膜14(符号14A)は、凹溝12の第1溝側面12a上に延びて集電電極13の上面に載った状態で接触し、この集電電極13と電気的に接続されている。
一方、第2溝側面12b側の透明導電膜14(符号14B)は、有機樹脂基板11の表面11aと第2溝側面12bとの頂部11cで切断され、第2溝側面12bが製膜されていない状態となっている。そのため、透明導電膜14Bは、集電電極13に対して非接触状態であり、電気的に絶縁されている。
【0025】
図1に示す半導体層3は、凹溝12によって絶縁された透明導電膜14上に形成され、例えば厚さ寸法が10μmで、透明導電膜14の水平面にスクリーン印刷により二酸化チタン(TiO)膜が形成されている。なお、TiOインクとしては、市販の低温焼成タイプのインクが挙げられ、このときの焼成温度は150℃とされる。さらに、半導体層3は、例えばN719色素を用いて周知の染色方法により染色されている。
【0026】
次に、透明導電膜14と対向して配置されるとともに半導体電極基板10の対極基板となる対向電極基板20は、半導体電極基板10とほぼ同様の構成であるので、ここでは異なる構成についてのみ詳細に説明する。
すなわち、図1に示すように、対向電極基板20は、有機樹脂基板21と、有機樹脂基板21の下面21a(表面)に設けられた凹溝22と、この凹溝22内に配置された集電電極23(第1導電材料)と、有機樹脂基板21の下面21aに所定膜厚をもって全面にわたって層状に被覆された対向導電膜24(第2導電材料、対向電極)とを備えて概略構成されている。
【0027】
対向導電膜24は、白金(Pt)膜からなり、半導体層3を挟んで透明導電膜14と対向する位置で略同寸法に絶縁されている。
図4に示すように、凹溝22は、その第1溝側面22aと第2溝側面22bとが対向する半導体電極基板10側の凹溝12とは向きが反対となっている。すなわち、凹溝22において、図1の紙面左側に第1溝側面22aが配置され、紙面右側に第2溝側面22bが配置されている。
【0028】
スペーサー4は、アクリルやエポキシなどの絶縁材料からなるシール材であり、半導体層3と対向導電膜24との間に電解質層5を確保するとともに、隣接するセル同士の間を絶縁状態に分離して対向する電極基板10、20同士の離間を一定に保持するものである。具体的には、スペーサー4は、その上下端4a、4bがそれぞれ凹溝12、22に対して液密に嵌合され、この状態で集電電極13、23を保護し、腐食を防止するようになっている。
スペーサー4の作成方法として、例えば30μm径のミクロパールを混入させた熱硬化接着材を凹溝12、22及び半導体層3の外周に塗布し、両電極基板10、20の凹溝12、22が平面位置で一致するように対向させ、真空中で張り合わせを行い、所定の硬化温度で接着材を硬化させる。このとき、ゲル化した電解質が熱で融解し、樹脂の硬化と同時に電解質の半導体層3への浸入が行われることになる。なお、電極基板10、20の張り合わせの際、セル同士の直列接続部に予め熱硬化型の導電接着材を塗布し、透明導電膜14と対向導電膜24との直列接続も同時に行っておく。
【0029】
電解質層5は、ゲル化した電解質をスクリーン印刷により半導体層3の上面に例えば30μmで塗布することにより形成されている。
【0030】
次に、上述した構成の太陽電池モジュール1の作用と集電電極の接続方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1、図2及び図4に示すように、本太陽電池モジュール1では、半導体電極基板10側の有機樹脂基板11の上面11aと対向電極基板20側の有機樹脂基板21の下面21aとに被覆される透明導電膜14及び対向導電膜24を凹溝12、22によって分断させ、第1溝側面12a、22a側の透明導電膜14A及び対向導電膜24Aのみを凹溝12、22内に配置された集電電極13、23に接触させて電気的に接続することで、複数のユニットセルS、S、…に分割することができる。
【0031】
また、凹溝12、22は、フィルム成形時のロール転写や、押し出しスリットの表面への溝加工により有機樹脂基板11、21に対して容易に成形することができる。そして、凹溝12、22が狭い溝幅であっても、厚み(例えば図2に示す溝深さ寸法D2)を大きくすることで、電極面積を増大させることが可能であり、これにより接触抵抗を低減することができる。そのため、開口率の低下を抑制することができ、低抵抗な基板10、20が得られ、従来のような複雑なパターニング工程を行わずにセル間を容易に分離することができる。
【0032】
また、凹溝12、22の第1溝側面12a、22aが有機樹脂基板11、21の表面11a、21aに対して滑らかに連続するので、第1溝側面12a、22aと有機樹脂基板11、21の表面11a、21aとの頂部11b、21bでの透明導電膜14A、対向導電膜24Aの断線を抑えることができ、集電電極13、23と透明導電膜14A、対向導電膜24Aとの電気的な接続をより確実に行うことができる。
【0033】
さらに、凹溝12、22の第2溝側面12b、22bと有機樹脂基板11、21の表面11a、21aとの交差稜線において、これら第2溝側面12b、22bと有機樹脂基板11、21の表面11a、21aとのなす角度が鋭角となって、第2溝側面12b、22bが下方に向けた傾斜面となるので、透明導電膜14B及び対向導電膜24Bの形成工程において、第2溝側面12b、22b上に透明導電膜14B及び対向導電膜24Bが被覆されず、これにより集電電極13、23と透明導電膜14B及び対向導電膜24Bとの電気的な絶縁をより確実に行うことができる。
【0034】
さらにまた、凹溝12、22内に集電電極13、23を配置させた状態でスペーサー4が液密に嵌合され、集電電極13、23が電解質層5に露出しない状態となるので、集電電極13、23の腐食による断線を防止することができ、太陽電池モジュール1としての信頼性及び耐久性の向上が図れる利点がある。
【0035】
続いて、互いに対向する集電電極13、23同士の接続について、図5に基づいて説明する。なお、図5は、太陽電池モジュール1を平面視した際の集電電極13、23の積層状態が分かり易いように集電電極13、23の接続状態を簡略化し、一部を省略した図となっている。
本第1の実施の形態による太陽電池モジュール1では、上下に対向する集電電極13、23は集電対象とするセルがそれぞれ異なっている。つまり、平面視で同一位置に配置される上下の集電電極13、23のうち、図1に示す半導体電極基板10側の集電電極13は凹溝12の第1溝側面12a側(図1の紙面右側)のセル(例えば図5で符号S1)が集電対象となっており、対向電極基板20側の集電電極23は凹溝22の第1溝側面22a側(図1で紙面左側)のセル(図5で符号S2)が集電対象となっている。そして、平面視で同一位置の集電電極13、23同士が接続され、太陽電池モジュール1全体で直列接続となっている。
【0036】
このように本太陽電池モジュール1では、直列接続を行うことにより、任意の出力電圧を得ることができ、またセル内部での上下配線ショートによるセル全体の不良を回避することが可能である。
そして、電極接続部T1は、電解質層5に露出しないスペーサー4の外部に設けられており、腐食の低減が図れるようになっている。
さらにこの場合、平面視で同一位置の集電電極13、23同士を接続すれば良いので、隣接するセルにわたって接続配線を引き回す必要がなく、簡易な構造で実現可能となる。
【0037】
上述のように本第1の実施の形態による太陽電池基板及びこれを用いた太陽電池モジュールでは、フィルム成形時のロール転写等の簡易な製造工程で凹溝12、22を形成することができ、これにより従来のような複雑なパターニング工程を行わずにセル間分離を容易に行うことができる。
また、凹溝12、22の厚み(深さ寸法)を大きくするといった簡単な構造により電極面積を増大させ、直列抵抗損失を少なくすることができることから、直列抵抗の影響を低減した太陽電池モジュール1の作製が可能となる。
【0038】
次に、本発明による太陽電池基板及びこれを用いた太陽電池モジュールの他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0039】
(第2の実施の形態)
図6に示すように、第2の実施の形態による太陽電池モジュール1Aは、対向する半導体電極基板10と対向電極基板20のそれぞれの集電電極13、23との接続方法を変え、上下に対向する集電電極13、23の集電対象とするセルSを同一とした構成となっている。
すなわち、上下の電極基板10、20の凹溝12、22は、図6の断面視で半導体層3を挟んで上下対称となっている。そのため、対向電極基板20側の凹溝22は、図6で紙面右側に第1溝側面22aが配置され、紙面左側に第2溝側面22bが配置されている。そして、第1溝側面22aにおいて、対向電極膜24が集電電極23と電気的に接続している。
【0040】
ここで、図7は、太陽電池モジュール1Aを平面視した際の集電電極13、23の積層状態が分かり見や易いように集電電極13、23の接続状態を簡略化し、一部を省略した図となっている。
第2の実施の形態による太陽電池モジュール1Aでは、図7に示すように、一方のセル(例えば図7で符号S1)の半導体電極基板10側の集電電極13と、そのセルS1に隣接する他方のセル(図7で符号S2)の対向電極基板20側の集電電極23とが電極接続部T2で導電接着材等により接続され、これによりセルS1、S2間が直列接続されている。
そして、電極接続部T2は、電解質層5に露出しないスペーサー4の外部に設けられており、腐食の低減が図れるようになっている。
【0041】
なお、図7では、セルの一方の側でのみ直列接続を行う電極接続部T2を設けているが、両側で接続を行ってもよい。これにより直列抵抗損失のさらなる低減が図れ、また断線による故障の可能性を低下させることができる。
【0042】
以上、本発明による太陽電池基板及びこれを用いた太陽電池モジュールの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では凹溝12、22の第1溝側面12a、22a及び第2溝側面12b、22bが平面なしているが、これに制限されることはなく、それら側面が曲面であってもかまわない。例えば、図8に示すように、有機樹脂基板11の上面11aに対して、或いは凹溝12の溝底12cに対して第1溝側面12aと第2溝側面12bとが滑らかに湾曲して接続する曲面であってもかまわない。
【0043】
また、第1溝側面12a、22a及び第2溝側面12b、22bの第1角度θ1と第2角度θ2とのいずれか一方、或いは両方が有機樹脂基板の表面の平面方向に対して90度となる凹溝であってもかまわない。
すなわち、対向電極の抵抗が十分小さく、上述した実施の形態の対向電極基板20に集電電極23を形成しなくてもよい場合であって、単純な並列集電を行う場合に、凹溝内で対向する第1溝側面と第2溝側面とに傾斜面とする必要はなく、単に集電電極の埋め込みの機能を有すればよい。
【符号の説明】
【0044】
1、1A 太陽電池モジュール
3 半導体層
4 スペーサー
5 電解質層
10 半導体電極基板(太陽電池基板)
11、21 有機樹脂基板
11a 上面(表面)
21a 下面(表面)
12、22 凹溝
12a、22a 第1溝側面(一方の溝側面)
12b、22b 第2溝側面(他方の溝側面)
13、23 集電電極(第1導電材料)
14、14A、14B 透明導電膜(第2導電材料)
20 対向電極基板(太陽電池基板)
24、24A、24B 対向導電膜(第2導電材料、対向電極)
θ1 第1角度
θ2 第2角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板の一方の表面に設けられた凹溝と、
該凹溝内に配置された第1導電材料と、
前記樹脂基板の表面に層状に被覆された第2導電材料と、
を備え、
前記凹溝における対向する一方の溝側面側の前記第2導電材料は、該一方の溝側面上に延びて前記第1導電材料と電気的に接続され、
前記凹溝における他方の溝側面側の前記第2導電材料は、前記第1導電材料に対して電気的に絶縁されていることを特徴とする太陽電池基板。
【請求項2】
前記一方の溝側面は、前記樹脂基板の表面の平面方向とのなす角度が鋭角となることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池基板。
【請求項3】
前記他方の溝側面は、前記樹脂基板の表面の平面方向とのなす角度が鈍角になることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池基板。
【請求項4】
前記凹溝には、前記第2導電材料を被覆した前記第1導電材料を配置させた状態で、絶縁部材が液密に嵌合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の太陽電池基板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の太陽電池基板を用いた太陽電池モジュールであって、
前記凹溝によって絶縁された前記第2導電材料上に半導体層が設けられ、
該半導体層を挟んで前記第2導電材料と対向して配置されるとともに、前記第2導電材料と略同寸法に絶縁された対向電極が設けられ、
前記半導体層を挟んで互いに対向する前記第2導電材料と前記対向電極とを有する複数のセルが、平面方向に直列に接続されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項6】
色素増感太陽電池モジュールであることを特徴とする請求項5に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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