説明

太陽電池封止材料および太陽電池モジュール

【課題】 太陽電池素子に対し優れた密着性を有して太陽電池品質の長期安定性や、モジュール生産性に優れた太陽電池用封止材料および該封止材料を用いて封止されてなる耐熱性、耐候性に優れた太陽電池モジュールを提供することである。
【解決手段】 本発明の太陽電池封止材料は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体を含むことを特徴とし、太陽電池素子に塗布し光硬化させることにより、従来の生産時間を大幅に短縮できる。さらに、リン酸基を有するビニル系単量体(b)を含有する組成物とすることが好ましい。リン酸基を有するビニル系単量体(b)としては(メタ)アクリル酸系単量体が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で流動性を有し分子末端に(メタ)アクリロイル系基を有するビニル重合体を必須成分とする組成物を用いた太陽電池用封止材料、および該組成物の硬化物を使用してなる太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や環境汚染の防止等の面から、太陽光を直接電気エネルギーに変換する太陽電池が広く使用されるようになってきている。太陽電池の更なる普及を促すためには、自動車部材や建築部材に求められるような性能、長期信頼性や生産性向上による太陽電池モジュール低価格化などが重要となる。
【0003】
一般に太陽電池モジュールは、シリコン(結晶、多結晶、アモルファス)や、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレンなどのレアメタルを含む太陽電池素子を、受光面側透明保護部材と裏面側保護部材とで保護し、太陽電池素子と保護部材とを封止材で固定し、モジュール化したものである。太陽電池モジュールの構成は上述の太陽電池素子の種類によって若干異なるが、太陽電池素子封止材料に求められる性質は、太陽電池モジュールを構成している太陽電池素子や保護部材との密着性が良好であることである。特に太陽電池モジュールは屋外に設置されて気温の上昇や風雨に曝されるため、被着物と封止材の密着性が悪いと水分が浸入し太陽電池素子を劣化させる虞がある。
【0004】
現在、太陽電池モジュールにおける太陽電池素子の封止材料としては、柔軟性、透明性等の観点から、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が使用されている。EVAは、その耐熱性、接着性が不足しているところから、有機過酸化物やシランカップリング剤などを併用し、架橋により耐熱性を向上させ、シランカップリング剤により接着性を向上させている(特許文献1)。EVAを使用する場合、これらの添加剤を配合したEVAのシートをまず作成し、得られたシートを用いて太陽電池素子を封止する必要がある。このシートの製造段階では、有機過酸化物が分解しないような低温度での成形が必要であるため、押出成形速度を大きくすることができず、また太陽電池素子の封止段階では、ラミネーターにおいて数分から十数分かけて加熱プレスで仮接着する工程と、有機過酸化物が分解する高温度で数十分ないし数時間かけて加熱して本接着する工程とからなる2段階の時間をかけての架橋・接着工程を経る必要があった。そのため架橋性EVAシートの製造と、太陽電池モジュールの製造には手間と時間がかかり、太陽電池モジュールの製造コストを上昇させる要因の一つとなっていた。
【0005】
また近年、コストダウンのために太陽電池素子を薄くする試みが盛んであるが、なかでも結晶系太陽電池素子はバルク(インゴット)から薄板状に切り出したものであるため、太陽電池素子自体で強度を持たせる必要があるが、薄板上に直接配線などをして使用するため、非常に壊れやすいものとなっている。例えば架橋性EVAを使用したモジュール作製時にラミネーターで加熱プレスする際にかかるプレス圧や、加熱プレス後の冷却時に各積層材料の異なる熱膨張率の差に由来すると考えられる応力により、太陽電池素子が破壊される問題がある。
【0006】
また一方で、速硬化可能なアクリレート系樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を主成分としたものでは、耐油性に優れるものも開発されているが(例えば、特許文献2)、主鎖中にエーテル結合やエステル結合を有するため、長期耐熱性に問題がある。長期耐熱性、耐候性を有し、かつ、速硬化が可能な光硬化性のアクリレート系樹脂として、主鎖がリビングラジカル重合により得られ、その末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体がある(特許文献3、4)。しかし、太陽電池モジュールへの適用はこれまで検討がなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−113077号公報
【特許文献2】特開昭64−000112号公報
【特許文献3】特開2000−072816号公報
【特許文献4】特開2000−095826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、簡素な装置を用い、容易な方法により、太陽電池素子に対し優れた密着性を有して太陽電池品質の長期安定性を付与しうる、モジュール生産性に優れた太陽電池用封止材料、および該封止材料を用いて封止されてなる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の現状に鑑み、鋭意検討した結果、特定のビニル系重合体を含む組成物が、モジュール生産性が高く、太陽電池素子に対し優れた密着性を有して太陽電池品質の長期安定性を付与しうる太陽電池用封止材料となることを見出し、また、該太陽電池用封止材料で封止することで耐熱性、耐候性に優れたモジュールとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、 下記一般式(1)で表される基を、1分子あたり少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体(a)を含むことを特徴とする太陽電池封止材料、および該材料を使用した太陽電池モジュールに関する。このような本発明の太陽電池封止材料は、太陽電池素子に塗布し光硬化させることにより生産時間を従来に比べて大幅に短縮できる。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。)
好ましい実施態様としては、さらに、リン酸基を有するビニル系単量体(b)を含有する、硬化性組成物であることを特徴とする太陽電池封止材料に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、前記リン酸基を有するビニル系単量体(b)が(メタ)アクリル酸系単量体である太陽電池封止材料に関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、さらに、環構造を有するビニル系単量体(c)を含有することを特徴とする太陽電池封止材料に関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、前記環構造を有するビニル系単量体(c)が(メタ)アクリル酸系単量体であることを特徴とする太陽電池封止材料に関する。
【0016】
好ましい実施態様としては、前記ビニル系重合体(a)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)の値が1.8未満であることを特徴とする太陽電池封止材料に関する。
【0017】
好ましい実施態様としては、前記ビニル系重合体(a)の主鎖がリビングラジカル重合により製造されたものであることを特徴とする太陽電池封止材料に関する。
【0018】
好ましい実施態様としては、前記原子移動ラジカル重合は、触媒として銅の錯体を用いる太陽電池封止材料に関する。
【0019】
好ましい実施態様としては、前記ビニル系重合体(a)の主鎖が、連鎖移動剤を用いたビニル系モノマーの重合により製造されたものである太陽電池封止材料に関する。
【0020】
好ましい実施態様としては、前記ビニル系重合体(a)の主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも一種を主として重合して製造されたものである太陽電池封止材料に関する。
【0021】
好ましい実施態様としては、前記ビニル系重合体(a)の主鎖が(メタ)アクリル酸エステルを主として重合して製造されたものである太陽電池封止材料に関する。
【0022】
好ましい実施態様としては、前記ビニル系重合体(a)の主鎖がアクリル酸エステルを主として重合して製造されたものである太陽電池封止材料に関する。
【0023】
好ましい実施態様としては、前記ビニル系重合体(a)の数平均分子量が3000以上である太陽電池封止材料に関する。
【0024】
好ましい実施態様としては、さらに、開始剤(d)を含有する太陽電池封止材料に関する。
【0025】
好ましい実施態様としては、前記開始剤(d)が、熱重合開始剤、光重合開始剤およびレドックス開始剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である太陽電池封止材料に関する。
【0026】
さらに本発明は、上記に記載の太陽電池封止材料を使用した太陽電池モジュールに関する。
【0027】
好ましい実施態様としては、上記に記載の太陽電池封止材料を加熱および/または活性エネルギー線により硬化させた硬化物を含む太陽電池モジュールに関する。
【0028】
好ましい実施態様としては、前記活性エネルギー線がUVおよび/または電子線である太陽電池モジュールに関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の太陽電池用封止材料は、太陽電池モジュールの生産性、太陽電池モジュール性能の長期品質安定性を向上させるものとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の太陽電池モジュール
【図2】本発明の太陽電池モジュール
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の詳細について述べる。
【0032】
<<ビニル系重合体(a)>>
<主鎖>
本発明におけるビニル系重合体(a)は、速硬化が可能な、下記一般式(1)で表される基((メタ)アクリロイル系基)を1分子あたり少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体である。
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。)
ビニル系重合体(a)における(メタ)アクリロイル系基の数は、架橋させるという観点から1分子あたり2個以上有することが好ましく、より好ましくは2〜3個、さらには2個である。
【0035】
ビニル系重合体(a)は(メタ)アクリロイル系基を、1分子あたり少なくとも1個をビニル系重合体の分子末端に有するものであるが、架橋点間分子量を大きくすることでゴム弾性を得るという観点から、(メタ)アクリロイル系基を2個以上有する場合には両末端に有することが好ましい。
【0036】
上記一般式(1)中のRは水素原子または炭素数1〜20の有機基であるが、好ましくは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0037】
上記炭素数1〜20の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、ニトリル基などがあげられ、これらは水酸基などの置換基を有していてもよい。
【0038】
前記炭素数1〜20のアルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基など、炭素数6〜20のアリール基としては、たとえばフェニル基、ナフチル基など、炭素数7〜20のアラルキル基としては、たとえばベンジル基、フェニルエチル基などがあげられる。
【0039】
Rの具体例としては、たとえば−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2nCH3(nは2〜19の整数を表わす)、−C65、−CH2OH、−CNなどがあげられ、好ましくは−H、−CH3である。
【0040】
ビニル系重合体(a)の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。具体的には特開2005−232419公報段落[0018]記載の各種モノマーのような、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー、ケイ素含有ビニル系モノマー、マレイミド系モノマー、ニトリル基含有ビニル系モノマー、アミド基含有ビニル系モノマー、ビニルエステル類、アルケン類、共役ジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
【0041】
本発明の硬化性組成物に使用されるビニル系重合体(a)の主鎖は、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマーを主として重合して製造されるものであることが好ましい。ここで「主として」とは、ビニル系重合体(a)を構成するモノマー単位のうち、50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。
【0042】
なかでも、生成物の物性等から、芳香族ビニル系モノマー及び/または(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましく、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーがより好ましくアクリル酸エステルモノマーがさらに好ましい。特に好ましいアクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシブチルなどが挙げられる。
【0043】
本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0044】
本発明におけるビニル系重合体(a)の分子量分布、即ち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、よりさらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。分子量分布が大きすぎると同一架橋点間分子量における粘度が増大し、取り扱いが困難になる傾向にある。本発明でのGPC測定は、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0045】
本発明におけるビニル系重合体(a)の数平均分子量は特に制限はないが、GPCで測定した場合に、500〜1,000,000の範囲であることが好ましく、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜80,000がさらに好ましく、8,000〜50,000がなおさら好ましい。分子量が低くなりすぎると、ビニル系重合体(a)の本来の特性が発現されにくい傾向があり、一方、高くなりすぎると、取扱いが困難になる傾向がある。
【0046】
<ビニル系重合体(a)の合成法>
本発明で使用するビニル系重合体(a)は、種々の重合法により得ることができ、特に限定されないが、モノマーの汎用性、制御の容易性等の点からラジカル重合法が好ましく、ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合がより好ましい。この制御ラジカル重合法は「連鎖移動剤法」と「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。得られるビニル系重合体(a)の分子量、分子量分布の制御が容易であるリビングラジカル重合がさらに好ましく、原料の入手性、重合体末端への官能基導入の容易さから原子移動ラジカル重合が特に好ましい。上記ラジカル重合、制御ラジカル重合、連鎖移動剤法、リビングラジカル重合法、原子移動ラジカル重合は公知の重合法ではあるが、これら各重合法については、たとえば、特開2005−232419公報や、特開2006−291073公報などの記載を参照できる。
【0047】
本発明におけるビニル系重合体(a)の好ましい合成法の一つである、原子移動ラジカル重合について以下に簡単に説明する。
【0048】
原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられることが好ましい。具体的には特開2005−232419公報段落[0040]〜 [0064]記載の化合物が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリロイル系基を1分子内に2つ以上有するビニル系重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。
【0050】
原子移動ラジカル重合において用いられるビニル系モノマーとしては特に制約はなく、上述した例示したビニル系モノマーをすべて好適に用いることができる。
【0051】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体でありより好ましくは0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルを中心金属とする遷移金属錯体、特に好ましくは銅の錯体が挙げられる。銅の錯体を形成するために使用される1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル若しくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。
【0052】
重合反応は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては特に限定されず、特開2005−232419公報段落[0067]記載の溶剤が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体CO2を媒体とする系においても重合を行うことができる。
【0053】
重合温度は、限定はされないが、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃の範囲である。
【0054】
<重合性の炭素−炭素二重結合導入法>
得られたビニル系重合体への重合性の炭素−炭素二重結合((メタ)アクリロイル系基)の導入方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、特開2004−203932公報段落[0080]〜[0091]記載の方法が挙げられる。これらの方法の中でも制御がより容易である点から、下記一般式(2)で表されるビニル系重合体の末端ハロゲン基を、下記一般式(3)で示される化合物で置換することにより製造されたものであることが好ましい。
【0055】
【化3】

【0056】
(式中、R1、R2は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、又は、ヨウ素を表す。)
【0057】
【化4】

【0058】
(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。M+はアルカリ金属、または4級アンモニウムイオンを表す。)
上記一般式(2)で表される末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体は、上述した有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいは、ハロゲン化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。
【0059】
上記一般式(3)で表される化合物としては特に限定されないが、Rの具体例としては、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C65、−CH2OH、−CN、等が挙げられ、好ましくは−H、−CH3である。
【0060】
+はオキシアニオンの対カチオンであり、M+の種類としてはアルカリ金属イオン、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および4級アンモニウムイオンが挙げられる。4級アンモニウムイオンとしてはテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンおよびジメチルピペリジニウムイオン等が挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオンである。上記一般式(3)のオキシアニオンの使用量は、上記一般式(2)のハロゲン基に対して、好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1.0〜1.2当量である。この反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、求核置換反応であるため極性溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル、等が用いられる。反応を行う温度は限定されないが、一般に0〜150℃で、重合性の末端基を保持するために好ましくは室温〜100℃で行う。
【0061】
<<リン酸基を有するビニル系単量体(b)>>
本発明の硬化性組成物は、好ましくはリン酸基を有するビニル系単量体(b)が含有される。リン酸基を有するビニル系単量体(b)としては、反応性の観点から、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸系単量体がより好ましく、例えば2−((メタ)アクリロイルシエチルホスフェート)、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルフォスフェート等が挙げられる。
【0062】
本発明のリン酸基を有するビニル系単量体(b)は、2個以上の重合性基を有してしても構わない。
【0063】
本発明の硬化性組成物におけるリン酸基を有するビニル系単量体(b)の添加量としては、ビニル系重合体(a)100重量部に対して、0.1〜100重量部であることが好ましい。機械強度、相溶性、揺変性のバランスの点で0.5〜70重量部が好ましく、1〜50重量部がより好ましい。
【0064】
本発明の硬化性組成物においては、リン酸基を有するビニル系単量体(b)を1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
<<環構造を有するビニル系単量体(c)>>
本発明の硬化性組成物には、さらに環構造を有するビニル系単量体(c)を含有させることができる。リン酸基を有するビニル系単量体(b)と環構造を有するビニル系単量体(c)とを併用すると、基材に対する接着性が向上する利点がある。
【0066】
環構造を有するビニル系単量体(c)としては、特に限定はないが、反応性の点から環構造を有する(メタ)アクリル系が好ましい。また、環構造としては、脂環構造、芳香環が挙げられるが、接着性付与の点から脂環構造、更に好ましくは多環式構造が好ましい。
【0067】
環構造を有するビニル系単量体(c)の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、 ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、 ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ−ト、 ベンジル(メタ)アクリレート、 ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、 ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレ−トなどが挙げられる。
【0068】
また、環構造を有するビニル系単量体(c)としては、2個以上の重合性基を有していても構わない。
【0069】
環構造を有するビニル系単量体(c)の添加量としては、ビニル系重合体(a)100重量部に対して、0.1〜1000重量部である。機械強度、相揺変性のバランスの点で0.5〜500重量部が好ましく、1〜100重量部がより好ましい。
【0070】
<<開始剤(d)>>
本発明の硬化性組成物には、さらに開始剤(d)を含有させることができる。開始剤(d)としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、および、レッドクス開始剤等が挙げられる。
【0071】
なお、熱重合開始剤、光重合開始剤、レッドクス開始剤はそれを単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として使用してもよいが、混合物として使用する場合には、各開始剤の使用量は、後述のそれぞれの範囲内にあることが好ましい。
【0072】
熱重合開始剤としては、特に制限はないが、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤等が挙げられる。これら熱重合開始剤としては公知のものを使用することができる。例えば、特開2006−2654884公報段落[0104]〜[0106]記載のものが挙げられる。
【0073】
熱重合開始剤としては、特にアゾ系開始剤及び過酸化物開始剤からなる群から好適に選ばれる。更に好ましいものは、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド並びにこれらの混合物である。
【0074】
熱重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0075】
(d)成分として熱重合開始剤を使用する場合、熱重合開始剤は触媒的に有効な量で存在し、その添加量は特に限定されないが、本発明の(a)成分および(b)成分((c)成分を含有する場合は(a)成分、(b)成分および(c)成分)合計100重量部に対して好ましくは約0.01〜5重量部、より好ましくは約0.025〜2重量部である。
【0076】
レドックス(酸化還元)系開始剤は、幅広い温度領域で使用できる。特に、下記開始剤種は常温で使用できることが有利である。適切なレドックス系開始剤としては、限定されるわけではないが、例えば特開2006−2654884公報段落[0109]記載のものが挙げられる。
【0077】
レドックス開始剤系では有機過酸化物と第3級アミンの組み合わせ、有機化酸化物と遷移金属の組み合わせが好ましく、クメンハイドロパーオキサイドとアニリン類の組み合わせ、クメンハイドロパーオキサイドとコバルトナフテートの組み合わせがさらに好ましい。
【0078】
レドックス系開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0079】
(d)成分としてレドックス系開始剤を使用する場合、レドックス系開始剤は触媒的に有効な量で存在し、その添加量は特に限定されないが、本発明の(a)成分および(b)成分((c)成分を含有する場合は(a)成分、(b)成分および(c)成分)合計100重量部に対して好ましくは約0.01〜5重量部、より好ましくは約0.025〜2重量部である。
【0080】
活性エネルギー線より硬化させる場合には、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル開始剤と光アニオン開始剤とが挙げられる。
【0081】
光ラジカル開始剤としては、本発明の硬化性組成物の硬化性と貯蔵安定性のバランスの点で、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドがより好ましい。
【0082】
光アニオン開始剤としては、例えば、1,10−ジアミノデカン、4,4’−トリメチレンジピペラジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト−アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類等が挙げられる。
【0083】
近赤外光重合開始剤としては、近赤外光吸収性陽イオン染料等を使用しても構わない。近赤外光吸収性陽イオン染料としては、650〜1500nmの領域の光エネルギーで励起する、例えば特開平3−111402号公報、特開平5−194619号公報等に開示されている近赤外光吸収性陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体等を用いるのが好ましく、ホウ素系増感剤を併用することがさらに好ましい。
【0084】
これらの光重合開始剤は、単独、又は2種以上混合して用いても、他の化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0085】
他の化合物との組み合わせとしては、具体的には、ジエタノールメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンとの組み合わせ、さらにこれにジフェニルヨードニウムクロリド等のヨードニウム塩を組み合わせたもの、メチレンブルー等の色素及びアミンと組み合わせたもの等が挙げられる。
【0086】
なお、前記光重合開始剤を使用する場合、必要により、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、パラターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤類を添加することもできる。
【0087】
(d)成分として光重合開始剤を使用する場合、その添加量は特に制限はないが、硬化性と貯蔵安定性の点から、(a)成分および(b)成分((c)成分を含有する場合は(a)成分、(b)成分および(c)成分)合計100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましい。
【0088】
<<硬化性組成物>>
本発明の硬化性組成物は、上記(a)および(b)場合によってさらに(c)成分を含有してなるものであるが、物性を調整するために、さらに各種の添加剤、例えば、重合性のモノマー及び/またはオリゴマー硬化調整剤、金属石鹸、充填材、微小中空粒子、可塑剤、接着性付与剤、溶剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、物性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、光硬化性樹脂等を、必要に応じて適宜配合してもよい。これらの各種添加剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0089】
<重合性のモノマー及び/またはオリゴマー>
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でモノマー及び/またはオリゴマーを添加することができる。ラジカル重合性の基を有する、モノマー及び/又はオリゴマー、あるいは、アニオン重合性の基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが、硬化性の点から好ましい。
【0090】
前記ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル系基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基等が挙げられる。なかでも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル系基を有するものが好ましい。
【0091】
前記アニオン重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル系基、スチレン基、アクリロニトリル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基等が挙げられる。なかでも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル系基を有するものが好ましい。
【0092】
前記モノマーの具体例としては、特開2006−265488公報段落[0123]〜[0131]記載のものが挙げられる。
【0093】
前記オリゴマーとしては、特開2006−265488公報段落[0132]記載のものが挙げられる。
【0094】
上記のうち、(メタ)アクリロイル系基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが好ましい。また、(メタ)アクリロイル系基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの数平均分子量は、5000以下であることが好ましい。さらに、表面硬化性の向上や、作業性向上のための粘度低減のために、モノマーを用いる場合には、分子量が1000以下であることが、相溶性が良好であるという理由からさらに好ましい。
【0095】
重合性のモノマー及び/又はオリゴマーの使用量としては、表面硬化性の向上、タフネスの付与、粘度低減による作業性の観点から、(a)成分および(b)成分((c)成分を含有する場合は(a)成分、(b)成分および(c)成分)合計100重量部(以下、単に部ともいう)に対して、1〜200部が好ましく、5〜100部がより好ましい。
【0096】
<充填材>
充填材としては、特に限定されないが特開2005−232419公報段落[0158]記載の充填材が挙げられる。これら充填材のうちでは、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等が好ましい。
【0097】
特に、これら充填材で強度の高い硬化物を得たい場合には、主に結晶性シリカ、溶融シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー及び活性亜鉛華等から選ばれる充填材を添加できる。なかでも、比表面積(BET吸着法による)が50m2/g以上、通常50〜400m2/g、好ましくは100〜300m2/g程度の超微粉末状のシリカが好ましい。またその表面が、オルガノシランやオルガノシラザン、ジオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で予め疎水処理されたシリカが更に好ましい。
【0098】
また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛及びシラスバルーン等から選ばれる充填材を添加できる。なお、一般的に、炭酸カルシウムは、比表面積が小さいと、硬化物の破断強度、破断伸びの改善効果が充分でないことがある。比表面積の値が大きいほど、硬化物の破断強度、破断伸びの改善効果はより大きくなる。
【0099】
更に、炭酸カルシウムは、表面処理剤を用いて表面処理を施してある方がより好ましい。表面処理炭酸カルシウムを用いた場合、表面処理していない炭酸カルシウムを用いた場合に比較して、本発明の硬化性組成物の作業性を改善し、該硬化性組成物の貯蔵安定性効果がより向上すると考えられる。
【0100】
前記の表面処理剤としては、公知のものを使用でき、例えば、特開2005−232419公報段落[0161]記載の表面処理剤が挙げられる。
【0101】
この表面処理剤の処理量は、炭酸カルシウムに対して、0.1〜20重量%の範囲で処理するのが好ましく、1〜5重量%の範囲で処理するのがより好ましい。処理量が0.1重量%未満の場合には、作業性の改善効果が充分でないことがあり、20重量%を越えると、硬化性組成物の貯蔵安定性が低下することがある。
【0102】
特に限定はされないが、炭酸カルシウムを用いる場合、配合物のチクソ性や硬化物の破断強度、破断伸び等の改善効果を特に期待する場合には、膠質炭酸カルシウムを用いるのが好ましい。
【0103】
一方、重質炭酸カルシウムを配合物の増量、コストダウン等を目的として添加することがある特開2005−232419公報段落[0163]記載のものを使用することができる。
【0104】
上記充填材は、目的や必要に応じて単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。充填材を用いる場合の添加量は、(a)成分および(b)成分((c)成分を含有する場合は(a)成分、(b)成分および(c)成分)合計100重量部に対して、充填材を5〜1000重量部の範囲で使用するのが好ましく、20〜500重量部の範囲で使用するのがより好ましく、40〜300重量部の範囲で使用するのが特に好ましい。配合量が5重量部未満の場合には、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性と耐候接着性の改善効果が充分でないことがあり、1000重量部を越えると該硬化性組成物の作業性が低下することがある。
【0105】
<微小中空粒子>
物性の大きな低下を起こすことなく軽量化、低コスト化を図ることを目的として、微小中空粒子をこれら補強性充填材に併用して添加することができる。
【0106】
このような微小中空粒子(以下において、「バルーン」と称することがある。)には、直径が1mm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下の無機質あるいは有機質の材料で構成された中空体(無機系バルーンや有機系バルーン)が挙げられる。特に、真比重が1.0g/cm3以下である微小中空体を用いることが好ましく、更には0.5g/cm3以下である微小中空体を用いることが好ましい。
【0107】
前記無機系バルーン及び有機系バルーンとしては、特開2005−232419公報段落[0168]〜[0170]に記載されているバルーンを使用することができる。
【0108】
上記バルーンは単独で使用しても良く、2種類以上混合して用いても良い。さらに、これらバルーンの表面を脂肪酸、脂肪酸エステル、ロジン、ロジン酸リグニン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミカップリング剤、ポリプロピレングリコール等で、分散性及び配合物の作業性を改良するために処理したものも使用することができる。これらのバルーンは、配合物を硬化させた場合の物性のうち、柔軟性及び伸び・強度を損なうことなく、軽量化させコストダウンするために使用される。
【0109】
バルーンの添加量は、特に限定されないが、(a)成分および(b)成分((c)成分を含有する場合は(a)成分、(b)成分および(c)成分)合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、更に好ましくは0.1〜30重量部の範囲で使用できる。この量が0.1重量部未満では軽量化の効果が小さく、50重量部より多いとこの配合物を硬化させた場合の機械特性のうち、引張強度の低下が認められることがある。また、バルーンの比重が0.1以上の場合は、その添加量は好ましくは3〜50重量部、更に好ましくは5〜30重量部である。
【0110】
<酸化防止剤>
本発明の硬化性組成物には、各種酸化防止剤を必要に応じて用いてもよい。これらの酸化防止剤としては、p−フェニレンジアミン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤や、二次酸化防止剤としてリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0111】
<可塑剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて可塑剤を配合することができる。
【0112】
可塑剤としては特に限定されないが、物性の調整、性状の調節等の目的により、例えば、特開2005−232419公報段落[0173]記載の可塑剤が挙げられる。これらの中では、粘度の低減効果が顕著であり、耐熱性試験時における揮散率が低いという点から、ポリエステル系可塑剤、ビニル系重合体が好ましい。また、数平均分子量500〜15000の重合体である高分子可塑剤が、添加することにより、該硬化性組成物の粘度及び該硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸び等の機械特性が調整できるとともに、重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持できるため好適である。なお、限定はされないがこの高分子可塑剤は、官能基を有しても有しなくても構わない。
【0113】
上記高分子可塑剤の数平均分子量は、500〜15000と記載したが、好ましくは800〜10000であり、より好ましくは1000〜8000である。分子量が低すぎると熱にさらされたり液体に接した場合に可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できないことがある。また、分子量が高すぎると粘度が高くなり、作業性が低下する傾向がある。これらの高分子可塑剤のうちで、ビニル系重合体と相溶するものが好ましい。中でも相溶性及び耐候性、耐熱老化性の点からビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中でも(メタ)アクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がさらに好ましい。このアクリル系重合体の合成法は、従来からの溶液重合で得られるものや、無溶剤型アクリルポリマー等を挙げることができる。後者のアクリル系可塑剤は溶剤や連鎖移動剤を使用せず高温連続重合法(USP4414370、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、USP5010166)にて作製されるため、本発明の目的にはより好ましい。その例としては特に限定されないが、東亞合成品UPシリーズ等が挙げられる(工業材料1999年10月号参照)。勿論、他の合成法としてリビングラジカル重合法をも挙げることができる。この方法によれば、その重合体の分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことから好ましく、更には原子移動ラジカル重合法がより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0114】
高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましく、1.8未満が好ましい。1.7以下がより好ましく、1.6以下がなお好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましく、1.3以下が最も好ましい。
【0115】
上記高分子可塑剤を含む可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、必ずしも必要とするものではない。また必要によっては高分子可塑剤を用い、物性に悪影響を与えない範囲で低分子可塑剤を更に併用しても良い。
【0116】
なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
【0117】
可塑剤を用いる場合の使用量は、限定されないが、(a)成分および(b)成分((c)成分を含有する場合は(a)成分、(b)成分および(c)成分)合計100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜50重量部である。1重量部未満では可塑剤としての効果が発現しにくい傾向があり、100重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する傾向がある。
【0118】
上記可塑剤以外に、本発明においては、次に述べる反応性希釈剤を用いても構わない。
【0119】
反応性希釈剤として、硬化養生中に揮発し得るような低沸点の化合物を用いた場合は、硬化前後で形状変化を起こしたり、揮発物により環境にも悪影響を及ぼしたりすることから、常温での沸点が100℃以上である有機化合物が特に好ましい。
【0120】
反応性希釈剤の具体例としては、1−オクテン、4−ビニルシクロヘキセン、酢酸アリル、1,1−ジアセトキシ−2−プロペン、1−ウンデセン酸メチル、8−アセトキシ−1,6−オクタジエン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
反応性希釈剤の添加量は、(a)成分および(b)成分((c)成分を含有する場合は(a)成分、(b)成分および(c)成分)合計100重量部に対し、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは0.5〜70重量部、さらに好ましくは1〜50重量部である。
【0122】
<光安定剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて光安定剤を添加しても良い。光安定剤は各種のものが知られており、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー化学発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235〜242)等に記載された種々のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0123】
特に限定はされないが、光安定剤の中でも、紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、例えば、チヌビンP、チヌビン234、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン329、チヌビン213(以上いずれも日本チバガイギー製)等のようなベンゾトリアゾール系化合物やチヌビン1577等のようなトリアジン系、CHIMASSORB81等のようなベンゾフェノン系、チヌビン120(日本チバガイギー製)等のようなベンゾエート系化合物等が例示できる。また、ヒンダードアミン系化合物も好ましく用いられ、そのような化合物の具体的には2006−274084号公報記載のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。更には紫外線吸収剤とヒンダードアミン系化合物の組合せはより効果を発揮することがあるため、併用することが好ましいことがある。
【0124】
光安定剤は前述した酸化防止剤と併用してもよく、併用することによりその効果を更に発揮し、特に耐候性が向上することがあるため特に好ましい。予め光安定剤と酸化防止剤を混合してあるチヌビンC353、チヌビンB75(以上いずれも日本チバガイギー製)などを使用しても良い。
【0125】
光安定剤の使用量は、(a)成分および(b)成分((c)成分を含有する場合は(a)成分、(b)成分および(c)成分)合計100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。0.1重量部未満では耐候性を改善の効果が少なく、10重量部超では効果に大差がなく経済的に不利である。
【0126】
<接着性付与剤>
本発明の硬化性組成物にさらに基材接着性を向上させる目的で接着性付与剤を添加することができる、接着性付与剤としては、架橋性シリル基含有化合物が好ましく、更にはシランカップリング剤が好ましい。
【0127】
これらを具体的に例示すると、特開2005−232419公報段落[0184]記載の接着性付与剤が挙げられる。また、ヒドロシリル化反応を阻害しない範囲において、分子中にエポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、カルバメート基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、ハロゲン基、(メタ)アクリル基等の、炭素原子及び水素原子以外の原子を有する有機基と、架橋性シリル基を併せ持つシランカップリング剤を用いることができる。
【0128】
これらを具体的に例示すると、特開2005−232419公報段落[0185]記載の炭素原子及び水素原子以外の原子を有する有機基と、架橋性シリル基を併せ持つシランカップリング剤が挙げられる。
【0129】
これらの中でも、硬化性及び接着性の点から、分子中にエポキシ基あるいは(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン類がより好ましい。
【0130】
これらは、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0131】
シランカップリング剤以外の接着性付与剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0132】
また、接着性を更に向上させるために、架橋性シリル基縮合触媒を上記接着性付与剤とともに併用することができる。架橋性シリル基縮合触媒としては、例えば、特開2005−232419公報段落[0187]記載されているものが挙げられる。
【0133】
上記接着性付与剤は、(a)成分および(b)成分((c)成分を含有する場合は(a)成分、(b)成分および(c)成分)合計100重量部に対して、0.01〜20重量部配合するのが好ましい。0.01重量部未満では接着性の改善効果が小さく、20重量部を越えると硬化物の物性が低下し易い傾向がある。好ましくは0.1〜10重量部であり、更に好ましくは0.5〜5重量部である。 上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
【0134】
<溶剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて溶剤を配合することができる。
【0135】
配合できる溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は重合体の製造時に用いてもよい。
【0136】
<その他の添加剤>
本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物又はその硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、難燃剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、などがあげられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0137】
このような添加物の具体例は、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号の各明細書などに記載されている。
【0138】
<<硬化物の作製方法>>
本発明の硬化性組成物は、全ての配合成分を予め配合密封した1液型として調製でき、また、開始剤だけを抜いたA液と、開始剤を充填材、可塑剤、溶剤等と混合したB液を成形直前に混合する2液型としても調製できる。
【0139】
<<硬化物>>
本発明の硬化物は、上記硬化性組成物を硬化させて得られるものである。
当該硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されない。
【0140】
(d)成分として熱重合開始剤を用いる場合、その硬化温度は、使用する熱重合開始剤、ビニル系重合体(a)、リン酸基を有するビニル系単量体(b)および(c)環構造を有するビニル系単量体、添加される他の化合物等の種類により異なるが、通常50℃〜250℃が好ましく、70℃〜200℃がより好ましい。
【0141】
(d)成分として光重合開始剤を用いる場合、活性エネルギー線源により光又は電子線を照射して、硬化させることができる。
【0142】
活性エネルギー線源としては特に限定はないが、用いる光重合開始剤の性質に応じて、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー、メタルハライド等が挙げられる。
【0143】
(d)成分として光重合開始剤を用いる場合、その硬化温度は、0℃〜150℃が好ましく、5℃〜120℃がより好ましい。
【0144】
(d)成分としてレドックス系開始剤を用いる場合、その硬化温度は、−50℃〜250℃が好ましく、0℃〜180℃がより好ましい。
【0145】
<<太陽電池モジュール封止方法>>
本発明の末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体組成物は常温下で液状物(流動物)として太陽電池素子状に塗布、供給し封止材とすることができる。封止材の厚みとしてはハンドリングや絶縁性の付与などの点から好ましくは100μm〜1mmである。
【0146】
本発明の太陽電池モジュールは、受光面側透明保護部材と裏面側保護部材との間に、本発明の末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体組成物の封止用組成物を介して太陽電池用セルを封止することにより得られる。前記太陽電池モジュールにおいて、太陽電池用セルを十分に封止するには、大きく分けて結晶系および非晶系(薄膜系とも呼ばれる)の2つの封止法がある。結晶系の太陽電池の場合は図1に示すように、受光面側透明保護部材1、受光面側封止材3A、太陽電池用セル4、裏面側封止材3B及び裏面側保護部材2を積層し、また非晶系の場合は図2に示すように、受光面側透明保護部材1、太陽電池用セル4(受光面側透明保護部材に接している)、裏面側封止材3B、裏面保護部材2を積層し、一体化成形を行う。
【0147】
本発明の結晶系モジュールの封止法の一例として、受光面側透明保護部材1上に、末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体組成物を塗布しUV照射し硬化させることで受光面側封止材3Aを形成し、太陽電池用セル4を封止材3A上に積層し、更に積層体上に、末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体組成物を塗布し、UV透過可能な裏面側保護部材2を積層し、裏面側から再度UV照射を行うことで、太陽電池モジュールを一体成形することができる。
【0148】
本発明の非晶系モジュールの封止法の一例として、受光面側透明保護部材1上に、太陽電池用セル4が形成されたものに、末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体組成物を塗布し、UV透過可能な裏面側保護部材2を積層し、裏面側から再度UV照射を行うことで、太陽電池モジュールを一体成形することができる。
【0149】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体組成物を硬化させるUV照射条件としては、上述の封止材の厚みや、保護部材側から照射する場合は保護部材のUV透過率などにもよるが、積算光量が2000〜10000mJ/cm2で硬化させれば良い。
【0150】
このような構成を有する太陽電池に本発明の封止材を使用することで、従来の架橋性EVA封止材によるモジュール成形にかかる時間が大幅に短縮され、モジュール生産性が向上するとともに、熱プレス(真空ラミネートとも言う)工程が不要なため、プレスや熱に由来する太陽電池セルへの応力付与が殆どないため、セルを損傷することがなく、また、長期間にわたるモジュール使用環境下で水分浸入などによって発生する酸による太陽電池の発電性能の低下を抑制することができ、優れた耐久性を有するものとなる。
【0151】
本発明に使用される受光面側透明保護部材は、フィルムやシート、または板状で使用される。通常珪酸塩ガラスやポリカーボネート製の板など実用的な強度と透明性を兼ね備えたものが使用され、特にガラス基板であるのがよい。ガラス基板の厚さは、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス基板は、一般に、化学的に或いは熱的に強化させたものであってもよい。
【0152】
本発明に使用されるUV透過可能な裏面保護部材はフィルムやシート、または板状で使用される。UV透過可能な裏面保護部材には、ガラスやプラスチックフィルムの積層体が好ましく使用され、プラスチックフィルムに使用される樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、四フッ化エチレン−エチレン共重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。裏面保護部材は一般的にバックシートと呼ばれる、耐熱性、耐湿性、耐候性、絶縁性を兼ね備えた単層もしくは積層体である。
【0153】
なお、本発明の太陽電池は、上述した通り、受光面側および/または裏面側に用いられる封止材に特徴を有する。したがって、受光面側透明保護部材、裏面側保護部材、および太陽電池用セルなどの前記封止材以外の部材については、特に制限されず、従来公知の太陽電池と同様の構成を有していればよい。
【実施例】
【0154】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。また、下記実施例中、「数平均分子量」及び「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804およびK-802.5;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。下記実施例中、「平均末端(メタ)アクリロイル基数」は、「重合体1分子当たりに導入された(メタ)アクリロイル基数」であり、1H−NMR分析及びGPCにより求められた数平均分子量より算出した。(ただし、1H−NMRはBruker社製ASX−400を使用し、溶媒として重クロロホルムを用いて23℃にて測定した。)下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0155】
(製造例1、2)
各原料の使用量を表1に示す。
【0156】
(1)重合工程
アクリル酸エステル(予め混合されたアクリル酸エステル)を脱酸素した。攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅、全アクリル酸エステルの一部(表1では初期仕込みモノマーとして記載)を仕込み、加熱攪拌した。アセトニトリル(表1では重合用アセトニトリルと記載)、開始剤としてジエチル2,5−ジブロモアジペート(DBAE)を添加、混合し、混合液の温度を約80℃に調節した段階でペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)を添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸エステル(表1では追加モノマーとして記載)を逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加し、重合速度を調整した。重合時に使用したトリアミンの総量を重合用トリアミンとして表1に示す。重合が進行すると重合熱により内温が上昇するので内温を約80℃〜約90℃に調整しながら重合を進行させた。
【0157】
(2)酸素処理工程
モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入した。内温を約80℃〜約90℃に保ちながらしながら反応液を数時間加熱攪拌して反応液中の重合触媒と酸素を接触させた。アセトニトリル及び未反応のモノマーを減圧脱揮して除去し、重合体を含有する濃縮物を得た。濃縮物は著しく着色していた。
【0158】
(3)第一粗精製
トルエンを重合体の希釈溶媒として使用した。重合体100kgに対して100〜150kg程度のトルエンで(2)の濃縮物を希釈し、ろ過助剤(ラジオライトR900、昭和化学工業製)、吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加した。反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入した後、約80℃で数時間加熱攪拌した。不溶な触媒成分をろ過除去した。ろ液は重合触媒残渣によって着色および若干の濁りを有していた。
【0159】
(4)第二粗精製
ろ液を攪拌機付ステンレス製反応容器に仕込み、吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加した。気相部に酸素−窒素混合ガスを導入して約100℃で数時間加熱攪拌した後、吸着剤等の不溶成分をろ過除去した。ろ液はほとんど無色透明な清澄液であった。ろ液を濃縮し、ほぼ無色透明の重合体を得た。
【0160】
(5)(メタ)アクリロイル基導入工程
重合体100kgをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)約100kgに溶解し、アクリル酸カリウム(末端Br基に対して約2モル当量)、熱安定剤(H−TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−n−オキシル)、吸着剤(キョーワード700SEN)、を添加し、約70℃で数時間加熱攪拌した。DMACを減圧留去し、重合体濃縮物を重合体100kgに対して約100kgのトルエンで希釈し、ろ過助剤を添加して固形分をろ別し、ろ液を濃縮し、末端にアクリロイル基を有する重合体[P1]を得た。得られた重合体の1分子あたりに導入されたアクリロイル基数、数平均分子量、分子量分布を併せて表1に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
(太陽電池モジュールの生産性評価)
本発明の実施例に示した(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体組成物を使用した太陽電池モジュールは以下のように製造した。
【0163】
受光面側透明保護部材として厚み3.2mm、縦18cm、横18cmの透明ガラスに本発明の(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体組成物を厚み400μmになるように塗布し、UV照射(UV照射装置に(LH−6;フュージョン・ジャパン社製)ランプエネルギー=184W/cm、照射距離54cm、1m/分の速度で1回通す(積算光量=3030mJ/cm2))し受光面側を硬化させた後、縦5inch横5inchサイズの200μm厚の単結晶系Si太陽電池セル(MOTECH社製)に半田ディップ付の平角銅線を配線したものを載せ、さらに結晶系Si裏面側に本発明の(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体組成物を厚み400μmになるように塗布した後、受光面側透明保護部材と同じ透明ガラスを載せUV照射を行い、積層体を一体硬化させた。このようにして、単結晶系Si太陽電池セルの両面にセル側から順に、本発明の(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体組成物の硬化物、及び透明ガラスが積層されてなる結晶系Si太陽電池モジュールを作製した。
【0164】
比較例として架橋性EVAを使用する場合、単結晶系Si太陽電池セルの両面をセル側から順に、架橋性EVAのシート、及び透明ガラスではさみ、一体成形することで結晶系Si太陽電池モジュールを作製した。この一体成形の条件は170℃で脱気時間3.5分、プレス圧力1kg/cm2、プレス時間3.5分で加熱圧着し、更に150℃のオーブンで120分加熱してEVAを架橋させて太陽電池モジュールを得た。
【0165】
各水準に関してセルを封止するために必要なハンドリング時間(本発明の場合は受光面側透明ガラスへの塗布開始から裏面ガラスの一体化までの時間)と、硬化後のモジュール外観検査による太陽電池セルの割れなどを確認した。
【0166】
(太陽電池モジュールの耐熱耐湿性評価)
前記の(太陽電池モジュールの生産性評価)で割れのない太陽電池モジュールに、AM1.5にスペクトル調整したソーラーシミュレータによって、25℃、照射強度1000mW/cm2の擬似太陽光を照射し、太陽電池の開放電圧[V]、および、1cm2当たりの公称最大出力動作電流[A]および公称最大出力動作電圧[V]を測定し、これらの積から公称最大出力[W](JIS C8911 1998)の初期値を求めた。
【0167】
次に、太陽電池モジュールを、温度85℃、湿度85%RHの環境下に、200時間放置し、耐熱耐湿試験を実施し、放置後の太陽電池モジュールについて上記と同様にして公称最大出力[W]を求め、耐熱耐湿性の優劣を判断した。優劣の判断は以下のように行った。
○:200時間耐熱耐湿試験後の公称最大出力を初期値で除した値が0.95以上
×:200時間耐熱耐湿試験後の公称最大出力を初期値で除した値が0.95未満
(実施例1)
(a)成分として製造例1で得られた重合体[P1]100部と、(b)成分としてリン酸基含有メタアクリル単量体(商品名;ライトエステルP−1M(2−メタアクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート)共栄社化学製))10部と、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名IRGANOX1010:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)1部と、(d)成分として、光ラジカル開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(DAROCUR1173;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.2部、及びビス(2、4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE819;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.1部とを加え、十分に溶解・混合後、60℃で1時間加熱脱泡を行ったものを封止用組成物として使用した。各実施例の封止用組成物の組成を表2に示す。
【0168】
【表2】

【0169】
この封止用組成物を使用して得られた太陽電池モジュールの生産性評価、耐熱耐湿性評価の結果を表3に示す。
【0170】
【表3】

【0171】
(実施例2〜4)
実施例1のリン酸含有メタクリル単量体を表2に記載している量に変更した以外は、実施例1と同様の方法により封止用組成物および太陽電池モジュールを作製した。太陽電池モジュールの生産性評価、耐熱耐湿性評価の結果を表2に示す。
【0172】
(実施例5)
実施例1のリン酸含有メタクリル単量体に替えて、リン酸アクリル単量体(品名;ライトアクリレートP−1A(2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート)共栄社化学製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により封止用組成物および太陽電池モジュールを作製した。太陽電池モジュールの生産性評価、耐熱耐湿性評価の結果を表3に示す。
【0173】
(実施例6〜8)
実施例5のリン酸含有アタクリル単量体を表2に記載している量に変更した以外は、実施例5と同様の方法により封止用組成物および太陽電池モジュールを作製した。太陽電池モジュールの生産性評価、耐熱耐湿性評価の結果を表3に示す。
【0174】
(実施例9)
実施例1のリン酸含有メタクリル単量体に替えて、リン酸アクリル単量体(品名;ライトアクリレートP−1A(2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート)共栄社化学製)2部、(c)成分として(メタ)アクリル単量体(FA−512A(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート)日立化成工業製)10部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により封止用組成物および太陽電池モジュールを作製した。太陽電池モジュールの生産性評価、耐熱耐湿性評価の結果を表3に示す。
【0175】
(実施例10)
実施例9の重合体[P1]を重合体[P2]に変更し、(c)成分の(メタ)アクリル単量体(FA−512A(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート)日立化成工業製)20部とした以外は実施例9を同様の方法により封止用組成物および太陽電池モジュールを作製した。太陽電池モジュールの生産性評価、耐熱耐湿性評価の結果を表3に示す。
【0176】
(比較例1)
市販の太陽電池封止用EVAシート(サンビック社製:Ultra Pearl、0.40mm厚)を使用して、太陽電池モジュールを作製した。生産性評価、耐熱耐湿性評価の結果を表3に示す。
【符号の説明】
【0177】
1.受光面側透明保護部材
2.裏面側透明保護部材
3A.受光面側封止材
3B.裏面側封止材
4.太陽電池用セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される基を、1分子あたり少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体(a)を含むことを特徴とする太陽電池封止材用組成物。
【化5】

(式中、Rは水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。)
【請求項2】
さらに、リン酸基を有するビニル系単量体(b)を含有する、硬化性組成物であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項3】
リン酸基を有するビニル系単量体(b)が、(メタ)アクリル酸系単量体である、請求項2に記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項4】
さらに、環構造を有するビニル系単量体(c)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項5】
環構造を有するビニル系単量体(c)が、(メタ)アクリル酸系単量体である請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項6】
ビニル系重合体(a)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)の値が1.8未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項7】
ビニル系重合体(a)の主鎖がリビングラジカル重合により製造されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項8】
リビングラジカル重合が原子移動ラジカル重合であることを特徴とする請求項7記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項9】
原子移動ラジカル重合が、触媒として銅の錯体を用いる重合である請求項8記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項10】
ビニル系重合体(a)の主鎖が、連鎖移動剤を用いたビニル系モノマーの重合により製造されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項11】
ビニル系重合体(a)の主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも一種を主として重合して製造されたものである請求項1〜10のいずれかに記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項12】
ビニル系重合体(a)の主鎖が、(メタ)アクリル酸エステルを主として重合して製造されたものである請求項11記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項13】
ビニル系重合体(a)の主鎖が、アクリル酸エステルを主として重合して製造されたものである請求項11記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項14】
ビニル系重合体(a)の数平均分子量が3000以上である請求項1〜13のいずれかに記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項15】
さらに、開始剤(d)を含有する請求項1〜14のいずれか一項に記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項16】
開始剤(d)が、熱重合開始剤、光重合開始剤およびレドックス開始剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項15記載の太陽電池封止材用組成物。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の太陽電池封止材用組成物を硬化させて得られる硬化物を含む太陽電池モジュール。
【請求項18】
太陽電池封止材用組成物を加熱および/または活性エネルギー線により硬化させた硬化物を含む請求項17記載の太陽電池モジュール。
【請求項19】
活性エネルギー線がUVおよび/または電子線である請求項18記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−59753(P2012−59753A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198733(P2010−198733)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】