説明

太陽電池封止材用樹脂組成物、及び太陽電池封止材、並びにそれを用いた太陽電池モジュール

【課題】エチレン・α−オレフィン共重合体、及びプロピレン−エチレンランダム共重合体を含有し、透明性に優れ、しかも、耐熱性、柔軟性の3要素を両立し、かつ接着性、水蒸気透過度にも優れる太陽電池封止材用樹脂組成物、及び太陽電池封止材、並びそれを用いてなる太陽電池モジュールの提供。
【解決手段】下記の成分(A)及び成分(B)を樹脂成分として含有することを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物等により提供。
成分(A):下記(a1)の特性を有するメタロセン系触媒により製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)密度:0.860〜0.890g/cm
成分(B):下記(b1)の特性を有するメタロセン系触媒により製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体
(b1)曲げ弾性率:100以上〜500MPa以下(JIS K7171)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止材用樹脂組成物、及び太陽電池封止材、並びにそれを用いた太陽電池モジュールに関し、より詳しくは、エチレン・α−オレフィン共重合体とプロピレン−エチレンランダム共重合体を含有し、耐熱性、透明性、柔軟性のいずれにも優れ、しかも、接着性、耐水蒸気透過性にも優れる太陽電池封止材樹脂組成物、及び太陽電池封止材、並びにそれを用いた太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の増加など地球環境問題がクローズアップされる中で、水力、風力、地熱などの有効利用とともに太陽光発電が再び注目されるようになった。
太陽光発電は、一般にシリコン、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレンなどの太陽電池素子を上部透明保護材と下部基板保護材とで保護し、太陽電池素子と保護材とを樹脂製の封止材で固定し、パッケージ化した太陽電池モジュールを用いるものであり、水力、風力などと比べて規模は小さいものの、電力が必要な場所に分散して配置できることから、発電効率等の性能向上と価格の低下を目指した研究開発が推進されている。また、国や自治体で住宅用太陽光発電システム導入促進事業として設置費用を補助する施策が採られることで、徐々にその普及が進みつつある。
しかしながら、更なる普及には一層の低コスト化が必要であり、そのため、従来型のシリコンやガリウム−砒素などに代わる新たな素材を用いた太陽電池素子の開発だけでなく、太陽電池モジュールの製造コストをより一層低減する努力も地道に続けられている。
【0003】
太陽電池モジュールを構成する太陽電池封止材の条件としては、太陽電池の発電効率が低下しないように、太陽光の入射量を確保するため、透明性が良好なことが求められている。また、太陽電池モジュールは通常、屋外に設置されるから長期間太陽光に晒され温度上昇する。それにより樹脂製の封止材が流動し、モジュールが変形したりするトラブルを避けるために、耐熱性を有するものでなければならない。また、年々、太陽電池素子の材料コストを削減するために薄肉化が進んでおり、一層柔軟性に優れた封止材も求められている。
また、太陽電池モジュールは、前記のとおり、長期間太陽光に晒されると温度が上昇し、それによりガラス基板と樹脂製封止材との接着力が低下して、ガラス基板から樹脂製封止材が分離し、その空間に空気や水分が入って、モジュールが変形したりするので、これを防止するため、接着性に優れた封止材が求められている。
【0004】
現在、太陽電池モジュールにおける太陽電池素子の封止材では、一般にエチレン−酢酸ビニル共重合体が樹脂成分として採用されている。特許文献1のように、この樹脂成分には一般に有機過酸化物が配合されており、架橋することで太陽電池モジュールが製造されている。
【0005】
最近では、太陽電池モジュールの製造コストを抑えるために、封止作業に要する時間のさらなる短縮が求められており、特許文献2では、封止材の樹脂成分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体に代わり、結晶化度が40%以下の非晶性又は低結晶性のα−オレフィン系共重合体からなる太陽電池封止材が提案されている。この特許文献2には、非晶質又は低結晶性のエチレン・1−ブテン共重合体に、有機過酸化物を混合し、異型押出機を用いて加工温度100℃でシートを作製することが例示されているが、樹脂圧が上がるため、十分な生産性は得られない。
【0006】
一方、太陽電池封止材として、エチレン−酢酸ビニル共重合体を使用する場合、光や熱の影響による黄変が懸念されている。太陽電池封止材が黄変すると光透過性が低下して太陽電池セルの変換効率が低下する等の不具合が生じるためである。
【0007】
そのため、ポリオレフィン系共重合体と結晶性ポリオレフィンからなるポリマーブレンドまたはポリマーアロイを用いた太陽電池封止用組成物(特許文献3参照)が提案されている。
これにより、耐熱性、耐クリープ性、耐スクラッチ性が改善されるものの、前記結晶性ポリオレフィンの融点(DSC法)が、110℃以上170℃以下であって、低結晶性のポリオレフィン系共重合体とは結晶化度が異なるため、両者の境界で乱反射が起り、シートの透明性が低下してしまう。
【0008】
また、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリビニルブチラール、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、シリコーン樹脂のいずれか一種を主成分とし、更に架橋剤などを含有させた太陽電池用カバーフィルムとその製造方法が提案されている(特許文献4)。これにより樹脂性能及び生産性が向上し、且つ、省資源、コスト低減が期待される。
しかしながら、実施例においては、上記の樹脂を単独で使用しており、生産性、耐熱性、透明性、柔軟性、耐久性及びガラス基板への接着性を同時に満足させるものではない。
【0009】
また、太陽電池モジュールの封止材として、(a)約0.90g/cc未満の密度、(b)ASTM D−882−02により測定して約150メガパスカル(mPa)未満の2%割線係数、(c)約95℃未満の融点、(d)ポリマーの重量に基づいて約15〜50重量%のα−オレフィン含量、(e)約−35℃未満のTg、ならびに(f)少なくとも約50のSCBDI、の条件の1以上を満たすポリオレフィンコポリマーを含むポリマー材料が提案されている(特許文献5参照)。
そして、本出願人もメタロセン触媒を用いて重合され、かつ(a1)メルトフローレート、(a2)密度、(a3)Z平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)、(a4)α−オレフィンの含有量が特定条件にあるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)、エチレンと環状アミノビニル化合物との共重合体(B)及び有機過酸化物(C)を含有する組成物からなる太陽電池封止材を提案した(特許文献6参照)。
【0010】
ところが、太陽電池モジュールでは、太陽電池素子の薄膜化に伴い、太陽電池封止材も薄膜化する傾向がある。その際、太陽電池封止材の上部または下部保護材側から衝撃が加わると、配線が断線しやすいことが問題となっていた。それを改良するため、封止材の剛性を高くすることが求められるが、特許文献5のポリマー材料では剛性を高くすると、架橋効率が悪くなることが問題となっていた。
また、特許文献6に記載されたエチレン・α−オレフィン共重合体は、水蒸気透過度が小さいため太陽電池封止材の樹脂組成物として好適であるが、一方で、エチレン・α−オレフィン共重合体だけでは、耐熱性に弱いという弱点がある。
このように、従来の技術では、太陽電池モジュールの生産性が高められ、透明性に優れ、しかも耐熱性、柔軟性、耐久性及びガラス基板への接着性にも優れる太陽電池封止材用樹脂組成物は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−116182号公報
【特許文献2】特開2006−210906号公報
【特許文献3】特開2001−332750号公報
【特許文献4】特開2000−91611号公報
【特許文献5】特表2010−504647号公報
【特許文献6】特開2010−155915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、生産性が良く、透明性、光線透過率に優れ、しかも柔軟性、耐熱性、接着性、耐水蒸気透過性にも優れる太陽電池封止材樹脂組成物、及び太陽電池封止材、並びにそれを用いた太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の性状を有するエチレン・α−オレフィン共重合体と特定の性状を有するプロピレン−エチレンランダム共重合体を組み合わせて樹脂成分とし、必要により有機過酸化物などの添加剤を配合した樹脂組成物を用いることにより、透明性、光線透過率に優れ、しかも柔軟性、耐熱性、接着性、耐水蒸気透過性にも優れる太陽電池封止材が得られ、これを用いれば太陽電池モジュールの生産性が大幅に向上するとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の成分(A)及び成分(B)を樹脂成分として含有することを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
成分(A):下記(a1)の特性を有するメタロセン系触媒により製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)密度:0.860〜0.890g/cm
成分(B):下記(b1)の特性を有するメタロセン系触媒により製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体
(b1)曲げ弾性率:100以上〜500MPa以下(JIS K7171)
【0015】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、成分(A)と成分(B)の配合割合が、樹脂組成物中の含有量として、成分(A)が40重量%以上70重量%以下に対して、30重量%以上60重量%以下であることを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、成分(A)の樹脂密度と成分(B)の樹脂密度の差が、0.015以内であることを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
【0017】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、成分(A)が、MFRが1以上20以下、曲げ弾性率が2MPa以上50MPa以下であることを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、 成分(B)が、下記(B−i)及び(B−ii)の特徴を満たすことを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
(B−i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でエチレン含量1.0〜7wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)を30〜70wt%、第2工程で成分(B1)よりも5〜20wt%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)を70〜30wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体であること
(B−ii)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が、tanδ曲線の非晶部のガラス転移による単一のピークを0℃以下に有すること
【0019】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5の発明において、さらに、下記の成分(C)を含有し、その含有量が、成分(A)及び成分(B)からなる樹脂成分100重量部に対して、0.01〜5重量部であることを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
成分(C):シランカップリング剤
【0020】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、さらに、下記の成分(D)を含有し、その含有量が、成分(A)及び成分(B)からなる樹脂成分100重量部に対して、0.2〜5重量部であることを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
成分(D):有機過酸化物
【0021】
さらに、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物を成形してなることを特徴とする太陽電池封止材が提供される。
一方、本発明の第9の発明によれば、第8の発明の太陽電池封止材を用いた太陽電池モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の太陽電池封止材用樹脂組成物は、特定の密度を有するエチレン・α−オレフィン共重合体と特定の曲げ弾性率を有するプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる樹脂組成物を主成分としているので、水蒸気透過度が小さく、耐熱性、透明性、光線透過率、柔軟性、接着性、耐久性等に優れている。
また、有機過酸化物が配合されていると、樹脂組成物をシート化する際に、樹脂成分が比較的短時間で架橋して十分な接着力を有するので、これを用いた太陽電池封止材封止材により、太陽電池モジュールの形成が容易であり生産性に優れ、製造コストを低減することができる。また、樹脂成分にシランカップリング剤がさらに配合された太陽電池封止材を用いると、得られた太陽電池モジュールは、透明性、柔軟性、耐候性、接着性等に一層優れるものとなり、長期間安定した変換効率を維持することが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.太陽電池封止材用樹脂組成物
本発明の太陽電池封止材用樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)は、下記の成分(A)及び成分(B)を樹脂成分として含有することを特徴とする。
成分(A):下記(a1)の特性を有するメタロセン系触媒により製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)密度:0.860〜0.890g/cm
成分(B):下記(b1)の特性を有するメタロセン系触媒により製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体
(b1)曲げ弾性率:100以上〜500MPa以下(JIS K7171)
【0024】
(1)成分(A):エチレン・α−オレフィン共重合体
本発明に用いる成分(A)は、下記(a1)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体である。
(a1)密度:0.860〜0.890g/cm
密度は、JIS−K6922−2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定される。
【0025】
本発明に用いる成分(A)は、さらに下記(a2)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。
(a2)MFR(メルトフローレート):0.1〜20g/10分
本発明に用いる成分(A)は、さらに下記(a3)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であることがより好ましい。
(a3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下
本発明に用いる成分(A)は、さらに下記(a4)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であることがより好ましい。
(a4)曲げ弾性率(JIS K7171に準拠)が2〜50MPa
【0026】
(i)成分(A)のモノマー構成
本発明に使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位を主成分としたエチレンとα−オレフィンのランダム共重合体である。
コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。
【0027】
かかるエチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−ペンテン−1共重合体等が挙げられる。なかでも、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体が好ましい。
また、α−オレフィンは、1種または2種以上の組み合わせでもよい。2種のα−オレフィンを組み合わせた三元共重合体としては、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン三元共重合体、エチレン・1−ブテン・1−ヘキセン三元共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン三元共重合体、エチレン・1−ブテン・1−オクテン三元共重合体等が挙げられる。
コモノマーとして、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、及び1,9−デカジエン等のジエン化合物を、α−オレフィンに少量配合してもよい。これらのジエン化合物を配合すると、長鎖分岐ができるので、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶性を低下させ、透明性、柔軟性、接着性等が良くなり、分子間の架橋剤ともなるので、機械的強度が増加する。また長鎖分岐の末端基は、不飽和基であるから、有機過酸化物による架橋反応や、酸無水物基含有化合物若しくはエポキシ基含有化合物との共重合反応やグラフト反応を容易におこすことができる。
【0028】
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、原料モノマーとして用いたエチレン含有量が95〜60重量%で、好ましくは90〜65重量%、より好ましくは85〜70重量%であり、また、α−オレフィンの含有量が好ましくは5〜40重量%であり、より好ましくは10〜35重量%、さらに好ましくは15〜30重量%である。この範囲では柔軟性と耐熱性が良好である。
ここでα−オレフィンの含有量は、下記の条件の13C−NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子製 JEOL−GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
【0029】
(ii)成分(A)の重合触媒及び重合法
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を使用して製造された共重合体であることを必須とする。メタロセン系触媒により製造されたエチレン・α―オレフィン共重合体は、他のチーグラー触媒等により得られたエチレン・α―オレフィン共重合体に比べて、シャープな分子量分布を有するという特徴がある。そして、本発明の必須成分(B)と混合してもなおかつ透明性、柔軟性、及び耐熱性を良好に保つためには、成分(A)も成分(B)も双方メタロセン触媒により得られた重合体であることが必要である。製造法としては、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法等が挙げられる。
【0030】
メタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物と助触媒とを触媒成分とする触媒が挙げられ、適宜公知の製造方法を採用し製造しえる。
エチレン・α−オレフィン共重合体の市販品としては、日本ポリエチレン社製のハーモレックス(登録商標)シリーズ、カーネル(登録商標)シリーズ、プライムポリマー社製のエボリュー(登録商標)シリーズ、住友化学社製のエクセレン(登録商標)GMHシリーズ、エクセレン(登録商標)FXシリーズ、三井化学社製のタフマーPシリーズ(登録商標)、ダウ・ケミカル社製のエンゲージ(登録商標)が挙げられ、カーネル(登録商標)シリーズが好ましい。
【0031】
(iii)成分(A)の特性
(a1)密度
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、密度が0.860〜0.890g/cmでなければならない。好ましい密度は0.865〜0.890さらに特に好ましいのは0.870〜0.885g/cmの超低密度エチレン・α−オレフィン共重合体である。密度がこの範囲であれば、混合する後述のプロピレン−エチレンランダム共重合体との相性がよく、太陽電池封止材用の樹脂組成物として必須の透明性・柔軟性に優れる。また、加工後のシートが接着してしまわず、しかも加工後のシート剛性が高すぎないので、取り扱い性がよい。
【0032】
ポリマーの密度を調節するには、例えばα−オレフィン含有量、重合温度、触媒量などを適宜調節する方法がとられる。
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS−K6922−2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して、23℃で測定する。
【0033】
太陽電池モジュールでは、太陽電池素子の薄膜化に伴い、上部保護材がガラスからフィルムに置き換えられたものも普及してきている。上部保護材がフィルム化された太陽電池モジュールは、雨天や湿度が高い環境に曝されると、上部保護材側から水分が浸入しやすく電極を腐蝕するため、封止材の水蒸気透過度を小さくすることが求められる。これまで汎用されてきたエチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン−官能基含有モノマー共重合体では、コモノマーである酢酸ビニル含有量は、20〜40重量%、特に25〜35重量%が好ましいとされているが、水蒸気透過度が大きいという難点があった。これに対して、成分(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、水蒸気透過度が小さい。
【0034】
本発明に用いる成分(A)は、さらに下記(a2)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。
(a2)MFR(メルトフローレート):0.1〜20g/10分
MFRはJIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定される。
本発明に用いる成分(A)は、さらに下記(a3)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。
(a3)Z平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、ゲルパーミエーションクロマグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下である。また、Mz/Mnは、2.0以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上である。ただし、Mz/Mnが8.0を超えると透明性が悪化する。Mz/Mnを所定の範囲に調整するには、適当な触媒系を選択する方法等によることができる。
【0035】
なお、(Mz/Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行い、測定条件は次のとおりである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの較正は、東ソー製 単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=−3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
なお、Z平均分子量(Mz)は、高分子量成分の平均分子量への寄与が大きいので、Mz/Mnは、Mw/Mnに比べて高分子量成分の存在を確認しやすい。高分子量成分は、透明性に影響を与える要因であり、高分子量成分が多いと透明性は悪化する。また、架橋効率も悪化する傾向が見られる。よって、Mz/Mnは小さい方が好ましい。
【0036】
本発明に用いる成分(A)は、さらに下記(a4)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であることがより好ましい。
(a4)曲げ弾性率(JIS K7171に準拠)が2〜50MPa
曲げ弾性率がこの範囲にあるエチレン・α―オレフィン共重合体(A)を用いることにより、成分(B)のプロピレン−エチレンランダム共重合体と混合しても、太陽電池封止材に必要とされる柔軟性を維持した樹脂組成物を得ることができる。
【0037】
(2)成分(B):プロピレン−エチレンランダム共重合体
本発明に用いる成分(B)は、プロピレンモノマーを主成分として、好ましくは共重合体中50重量%以上含有した、以下に詳述するプロピレン−エチレンランダム共重合体である。
前述のとおり、成分(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、水蒸気透過度が小さいため太陽電池封止材の樹脂組成物として好適であるが、一方で、成分(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体だけでは、耐熱性に弱いという弱点がある。
本発明では、特定の密度を有するエチレン・α−オレフィン共重合体と、特定の曲げ弾性率を有するプロピレンーエチレンランダム共重合体を適切に組み合わせることにより、透明性と柔軟性を阻害せず、耐熱性をさらに改善しようとするものである。
【0038】
なお、一般的なポリプロピレン系樹脂は、耐熱性に優れた樹脂として知られているが、硬いという欠点を有する。例えば、ホモポリプロピレン樹脂は曲げ弾性率が1000MPa〜2000MPa以上であり、一般のブロックポリプロピレン樹脂の曲げ弾性率は500MPaから1800MPaである。
ところが、近年、曲げ弾性率が100MPa以上500MPa以下のメタロセン系触媒により製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体が軟質ポリプロピレンとして提案され、リアクターメイドのR−TPO(熱可塑性エラストマー)とも呼ばれている。そして、このプロピレン−エチレンランダム共重合体は、透明性、耐熱性が高く、柔軟性も他のポリプロピレン系共重合体に比べると格段に優れている。
本発明では、かかる特定の曲げ弾性率を有する軟質ポリプロピレン(プロピレン−エチレンランダム共重合体)を、上記の特定のエチレン・α−オレフィン共重合体を組み合わせることで、太陽電池封止材に最適な樹脂組成物を提供するものである。
【0039】
本発明に使用されるプロピレンーエチレンブロック共重合体(B)とは、プロピレンを主成分とした、プロピレンとエチレンをランダムに共重合した重合体であり、メタロセン系触媒を用いて製造された樹脂でなければならない。
また、このプロピレン−エチレンランダム共重合体の中でも、本願発明では、(b1)曲げ弾性率が100MPa以上500MPa以下である共重合体を用いる必要がある。曲げ弾性率が100MPa未満のプロピレンーエチレンランダム共重合体は入手しがたく、また、500MPaを超えると太陽電池封止材用に用いる樹脂組成物としては硬すぎてエチレン・α―オレフィン共重合体との相性が悪いという問題点がある。好ましい曲げ弾性率は、150MPa以上400MPa以下、さらに好ましくは200MPa以上350MPa以下である。この曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定される。
こうした、メタロセン系触媒を用いて製造されてなり、曲げ弾性率(JIS K7171)が100MPa以上500MPa以下であるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の市販品としては、日本ポリプロ社製「ウェルネクス(登録商標)」シリーズのプロピレン−エチレンランダム共重合体等が挙げられる。メタロセン触媒により得られる、リアクターメイドの熱可塑性エラストマー(R−TPO)とも呼ばれる軟質ポリプロピレンである。
【0040】
こうした曲げ弾性率100MPa以上500MPa以下の、メタロセン系触媒を用いて製造されてなるプロピレン−エチレンランダム共重合体の製造方法としては、例えば特開2005−132992号公報記載の公知の製法で得られるものが知られており、特に限定されるものではないが、本発明において特に好ましい曲げ弾性率(JIS K7171)が100MPa以上500MPa以下であるプロピレン−エチレンランダム共重合体(B)としては、例えば下記(B−i)〜(B−ii)の特徴を満たすものが挙げられる。
【0041】
(B−i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でエチレン含量1.0〜7重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)を30〜70重量%、第2工程で成分(B1)よりも5〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)を70〜30重量%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体であること
(B−ii)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が、tanδ曲線の非晶部のガラス転移による単一のピークを0℃以下に有すること
すなわち、このような条件(B−i)を満たすプロピレン−エチレンランダム共重合体(B)は、逐次重合により成分(B1)と成分(B2)のブレンド状態にある共重合体である。
【0042】
(3)成分(B1)について
(3−1)成分(B1)中のエチレン含量E(B1)
第1工程で製造される成分(B1)は、ベタツキを抑制し、耐熱性を発現するために、融点が比較的高く、結晶性を有するプロピレン単独重合体あるいはエチレン含量が7wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体である。エチレン含量が7重量%を超えると融点が低くなりすぎ耐熱性を悪化させるため、エチレン含量は7重量%以下、好ましくは6重量%以下とされる。
なお、成分(B1)はプロピレン単独重合体でも改良された柔軟性や透明性及び耐熱性を示すが、これらのバランスを最も高くできるのは、エチレン含量が0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上含むプロピレン−エチレンランダム共重合体成分である。
【0043】
(3−2)成分(B)中に占める成分(B1)の割合
ブロック共重合体成分(B)中に占める成分(B1)の割合が多すぎると、成分(B)の柔軟性及び透明性が悪化し、それに伴い組成物全体の透明性と柔軟性が阻害される。そこで成分(B1)の割合は70重量%以下、好ましくは60重量%以下である。一方、成分(B1)の割合が少なくなりすぎるとベタツキが増加し、耐熱性が顕著に悪化するといった問題を生じるため、成分(B1)の割合は30重量%以上、好ましくは40重量%以上である。
【0044】
(4)成分(B2)について
(4−1)成分(B2)中のエチレン含量E(B2)
第2工程で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B2)は、共重合体の柔軟性と透明性及び耐衝撃性を向上させるのに必要な成分である。そこで、成分(B2)はこの効果を充分発揮するために特定範囲のエチレン含量であることが好ましい。
すなわち、本発明の共重合体成分(B)において、成分(B1)に対し成分(B2)の結晶性は低い方が、柔軟性改良効果が大きく、結晶性はプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量で制御され、エチレン含量が多いほど柔軟性が高くなるため、成分(B2)中のエチレン含量E(B2)は、成分(B1)中のエチレン含量E(B1)よりも5重量%以上多くないとその効果は充分でなく、好ましくは6重量%以上、より好ましくは8重量%以上、成分(B1)よりも多くのエチレンを含む。
【0045】
ここで、成分(B1)と成分(B2)のエチレン含量の差をE(gap)(=E(B2)−E(B1))と定義すると、E(gap)は5重量%以上、好ましくは6重量%以上、より好ましくは8重量%以上である。
一方、成分(B2)の結晶性を下げるためにエチレン含量を増加させ過ぎると、成分(B1)と成分(B2)のエチレン含量の差E(gap)が大きくなり、マトリクスとドメインに分かれた相分離構造を取って、顕著に透明性が低下する。これは、元来ポリプロピレンはポリエチレンとの相溶性が低く、プロピレン−エチレンランダム共重合体においても、エチレン含量が異なるものの相互の相溶性は、エチレン含量の違いが大きくなると低下するためである。E(gap)の上限については、後述する固体粘弾性測定によりtanδのピークが単一になる範囲にあればよいが、そのためにはE(gap)は20重量%以下、好ましくは、18重量%以下、より好ましくは16重量%以下の範囲とされる。
【0046】
(4−2)成分(B)中に占める成分(B2)の割合
成分(B2)の割合が多すぎるとベタツキが増加し、一方、成分(B2)の割合が少なくなりすぎると柔軟性が低下する。よって、成分(B2)の割合は、成分(B1)の割合をも勘案して、70〜30重量%、好ましくは60〜40重量%の範囲となる。
【0047】
(5)成分(B1)と(B2)の各成分のエチレン含量E(B1)とE(B2)及び各成分量W(B1)とW(B2)の特定方法
成分(B1)と(B2)の各エチレン含量及び成分量は、重合時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、より正確にこれらを特定するためには、特開2005−132992号公報記載の分析(分別法)を用いることが望ましい。
【0048】
(6)固体粘弾性測定
(6−1)tanδ曲線のピークによる規定
本発明の(B)成分においては、(B−ii)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する共重合体を用いることも好ましい。これらの測定法や物性等については、特開2005−132992号公報等を参照することができる。
成分(B)が相分離構造を取る場合には、成分(B1)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(B2)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。この場合には、透明性が顕著に悪化するという問題が生じる。
相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定におけるtanδ曲線において判別可能であり、成形品の透明性を悪化する相分離構造の回避は、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することによりもたらされる。
本発明のプロピレン−エチレンランダム共重合体は、透明性を発揮するために、固体粘弾性測定におけるtanδ曲線が0℃以下に単一のピークを持つことが好ましい。
【0049】
(7)ヘイズ
更に本発明の(B)成分は、下記(b2)の特性を有するものが好ましい。
(b2)へイズ(1mm厚):1%以上40%以下(JIS K7136)
(b2)のヘイズは、1mm厚のサンプルを作成し、JIS K7136に準拠し測定した際の%であり、透明性の指標のひとつである。更に好ましくは、1%以上30%以下が挙げられる。
【0050】
(8)(A)と(B)の樹脂密度の組み合わせ
本発明における樹脂組成物の好ましい態様としては、成分(A)と(B)に用いる共重合体の組み合わせとして、樹脂の密度の差が小さい組み合わせ、具体的にはその差が0.015以内である組み合わせを用いるようにすれば、屈折率の差が少なく相分離構造を取っていても透明性を悪化させることがない。特に好ましくは、その差が0.010以内である組み合わせを用いると透明性を悪化させにくい。
ここで、共重合体の樹脂密度の測定は、JIS−K6922−2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定することができる。
【0051】
(9)成分(A)と成分(B)の配合割合
本発明において、成分(A)と成分(B)の配合割合は、樹脂組成物中の含有量として、成分(A)が40重量%以上70重量%以下に対して、30重量%以上60重量%以下となるように成分(B)を配合することが好ましい。この範囲であると、柔軟性や透明性を悪化させずに樹脂組成物の耐熱性を向上することが可能となるためである。そして、好ましい配合割合は、成分(A)45〜65重量%に対し、成分(B)35〜55重量%であり、より好ましくは、成分(A)48〜63重量%に対し、成分(B)37〜52重量%である。
なお、成分(A)及び成分(B)の他に、本発明の透明性等の効果を損なわない範囲で、他の樹脂成分を含有することもできる。
【0052】
(10)成分(C):シランカップリング剤
本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物とガラス基板との接着性を改善するためにシランカップリング剤を用いることができる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセチルシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリスメチルエチルケトオキシムシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等のビニルシラン類、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等のアクリルシラン類、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等のメタクリルシラン類、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルメチルジメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のスチリルシラン類等の不飽和シラン化合物が挙げられる。なお、これらの不飽和シラン化合物は、単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
これらのシランカップリング剤は、成分(A)と成分(B)の合計量を100重量部としたときに、0〜5重量部配合することができる。好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部の配合量で使用される。
【0053】
(11)成分(D):有機過酸化物
本発明の樹脂組成物には、成分(A)及び成分(B)からなる樹脂成分を架橋するために有機過酸化物を用いることができる。
有機過酸化物としては、分解温度(半減期が1時間である温度)が70〜180℃、特に90〜160℃の有機過酸化物を用いることができる。このような有機過酸化物として、例えば、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイドなどが挙げられる。
【0054】
本発明において、成分(D)の配合割合は、成分(A)と成分(B)の樹脂成分合計量を100重量部としたときに、0〜5重量部であり、好ましくは、0.2〜5重量部、より好ましくは、0.5〜3重量部、さらに好ましくは、1〜2重量部である。成分(D)を配合しないか配合割合が上記範囲よりも少ないと、架橋しないかまたは架橋に時間がかかる傾向にあり、また、上記範囲よりも大きいと、分散が不十分となり架橋度が不均一になりやすい。
【0055】
(12)成分(E):ヒンダードアミン系光安定化剤
本発明において、成分(E)として、樹脂組成物にはヒンダードアミン系光安定化剤を配合することが好ましい。ヒンダードアミン系光安定化剤は、ポリマーに対して有害なラジカル種を補足し、新たなラジカルを発生しないようにするものである。ヒンダードアミン系光安定化剤には、低分子量のものから高分子量のものまで多くの種類の化合物があるが、従来公知のものを特に制限されずに用いることができる。
【0056】
低分子量のヒンダードアミン系光安定化剤としては、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロパーオキサイド及びオクタンの反応生成物(分子量737)70重量%とポリプロピレン30重量%からなるもの;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(分子量685);ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート混合物(分子量509);ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量481);テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量791);テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量847);2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物(分子量900);1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物(分子量900)などが挙げられる。
【0057】
高分子量のヒンダードアミン系光安定化剤としては、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量2,000〜3,100);コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(分子量3,100〜4,000);N,N’,N”,N”’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン(分子量2,286)と上記コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物の混合物;ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2,600〜3,400)、並びに、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の環状アミノビニル化合物とエチレンとの共重合体(エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)(分子量1200以上)などが挙げられる。
上述したヒンダードアミン系光安定化剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
これらの中でも、ヒンダードアミン系光安定化剤としては、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量2,000〜3,100);コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(分子量3,100〜4,000);N,N’,N”,N”’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン(分子量2,286)と上記コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物の混合物;ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2,600〜3,400);環状アミノビニル化合物とエチレンとの共重合体(エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)が好ましい。
【0059】
これらを用いれば、製品使用時に経時でのヒンダードアミン系光安定剤のブリードアウトを妨げることができる。また、ヒンダードアミン系光安定化剤は、融点が60℃以上であるものが、組成物の作製しやすさの観点から好ましい。
本発明において、ヒンダードアミン系光安定化剤の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計量を100重量部としたときに、0〜2.5重量部である。好ましくは0.01〜2.5重量部、より好ましくは0.01〜1.0重量部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部、特に好ましくは0.01〜0.2重量部、最も好ましくは0.03〜0.1重量部とするのがよい。
前記含有量を0.01重量部以上とすることにより安定化への効果が十分に得られ、2.5重量部以下とすることによりヒンダードアミン系光安定化剤の過剰な添加による樹脂の変色を抑えることができる。
【0060】
また、本発明において、前記有機過酸化物(D)と前記ヒンダードアミン系光安定化剤(E)との重量比(D:E)は、1:0.01〜1:10が好ましく、1:0.02〜1:6.5がより好ましい。これにより、樹脂の黄変を顕著に抑制することが可能となる。
【0061】
(13)架橋助剤
また、本発明の樹脂組成物には架橋助剤を配合することができる。架橋助剤は、架橋反応を促進させ、エチレン・α−オレフィン共重合体、またはエチレン−官能基含有モノマー共重合体の架橋度を高めるのに有効であり、その具体例としては、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物を例示することができる。
【0062】
より具体的には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのようなポリアリル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリロキシ化合物、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。架橋助剤は、樹脂成分100重量部に対し、0〜5重量部程度の割合で配合することができる。
【0063】
(14)紫外線吸収剤
本発明で用いる樹脂組成物には紫外線吸収剤を配合することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。このうち、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いるのが好ましい。
【0064】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0065】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、などを挙げることができる。
またトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどを挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどを挙げることができる。
【0066】
これら紫外線吸収剤は、成分(A)と成分(B)の合計量を100重量部としたときに、0〜2.0重量部配合し、好ましくは0.05〜2.0重量部、より好ましくは0.1〜1.0重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部、最も好ましくは0.2〜0.4重量部配合するのがよい。
【0067】
(15)他の添加成分
本発明で用いる樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン系樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、着色剤、分散剤、充填剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を挙げることができる。
【0068】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、柔軟性等を付与するため、チーグラー系又はメタロセン系触媒によって重合された結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体及び/又はEBR、EPR等のエチレン・α−オレフィンエラストマー若しくはSEBS、水添スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー等のゴム系化合物を、上記樹脂組成物100重量部に対して、3〜75重量部配合することもできる。さらに、溶融張力等を付与するため、高圧法低密度ポリエチレンを3〜75重量部配合することもできる。
【0069】
2.太陽電池封止材とその製造
本発明の太陽電池封止材(以下、単に封止材ともいう)は、上記の樹脂組成物を用いて製造される。太陽電池封止材は、通常、0.1〜1mm程度の厚みのシート状で使用される。0.1mmよりも薄いと強度が小さく、接着が不十分となり、1mmよりも厚いと透明性が低下して問題になる場合がある。好ましい厚さは、0.1〜0.8mmである。
シート状太陽電池封止材は、T−ダイ押出機、カレンダー成形機などを使用する公知のシート成形法によって製造することができる。例えばエチレン・α−オレフィン共重合体およびプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる樹脂成分に、必要に応じて、シランカップリング剤、有機過酸化物(架橋剤)と、ヒンダードアミン系光安定化剤、紫外線吸収剤、架橋助剤、酸化防止剤等の添加剤を予めドライブレンドしてT−ダイ押出機のホッパーから供給し、シート状に押出成形することによって得ることができる。勿論、これらドライブレンドに際して、一部又は全部の添加剤は、マスターバッチの形で使用することができる。また、T−ダイ押出やカレンダー成形において、予めエチレン・α−オレフィン系共重合体およびプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる樹脂成分に、有機過酸化物(架橋剤)など一部又は全部の添加剤を配合し、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて溶融混合して得た樹脂組成物を使用することもできる。
【0070】
上記の樹脂組成物を用いてシートを製造すると、柔軟性及び透明性(全光線透過率、ヘイズ)を保持しつつ、耐熱性に優れた封止材が得られ、また、シートの水蒸気透過度が小さく、ガラスとの接着性もいずれも良好なものとなる。
【0071】
3.太陽電池モジュール
本発明の太陽電池封止材を用い、太陽電池素子を封止し、さらに保護材で固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。
このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば上部透明保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のもの、下部基板保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部透明保護材を形成させるような構成のもの、上部透明保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子(例えば、フッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作成したもの)の下に封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。
【0072】
太陽電池素子としては、特に制限されず、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体系等の各種太陽電池素子を用いることができる。
【0073】
太陽電池モジュールを構成する上部保護材としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などを例示することができる。下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単体もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレススチールなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの1層もしくは多層の保護材を例示することができる。このような上部及び/又は下部の保護材には、封止材との接着性を高めるためにプライマー処理を施すことができる。
本発明における樹脂組成物は、柔軟性があるのでフレキシブルな保護材に適用できるが、シランカップリング剤を含む場合は、上部保護材として、ガラスを用いることが好ましい。
【0074】
太陽電池モジュールの製造に当たっては、本発明の封止材のシートを予め作っておき、封止材が溶融する温度で圧着するという方法によって、すでに述べたような構成のモジュールを形成することができる。また、本発明の封止材を押出コーティングすることによって、太陽電池素子や上部保護材あるいは下部保護材と積層する方法を採用すれば、わざわざシート成形することなく一段階で太陽電池モジュールを製造することが可能である。したがって、本発明の封止材を使用すれば、モジュールの生産性を格段に改良することができる。
【0075】
本発明で、封止材に有機過酸化物(架橋剤)を配合した場合は、有機過酸化物が実質的に分解せず、かつ本発明の封止材が溶融するような温度で、まず太陽電池素子や保護材に該封止材を仮接着し、次いで昇温して充分な接着とエチレン・α−オレフィン共重合体とプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる組成物の架橋を行えばよい。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例によって、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
【0077】
1.樹脂物性の評価方法
(1)メルトフローレート(MFR):エチレン・α−オレフィン共重合体およびプロピレン−エチレンランダム共重合体のMFRは、JIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度:前述の通り、エチレン・α−オレフィン共重合体およびプロピレン−エチレンランダム共重合体の密度は、JIS−K6922−2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定した。
(3)Mz/Mn:前述の通り、GPCにより測定した。
【0078】
2.シートの評価方法
(1)HAZE
厚み2mmのプレスシートを用いて、JIS−K7136−2000に準拠し、株式会社村上色彩技術研究所製HM−150を用い、プレスシート片を、関東化学製特級流動パラフィンを入れたガラス製セルにセットし測定を行った。プレスシートは、180℃、または、210℃の条件で10kg/cm、3分予熱した後、100kg/cmの条件で5分加圧し、その後、5分間冷却することでシートを得た。
(2)光線透過率
厚み2mmのプレスシートを用いて、JIS−K7361−1−1997に準拠し、株式会社村上色彩技術研究所製HM−150を用い、プレスシート片を、関東化学製特級流動パラフィンを入れたガラス製セルにセットし測定を行った。プレスシートは、180℃、または、210℃の条件で10kg/cm、3分予熱した後、100kg/cmの条件で5分加圧し、その後、5分間冷却することでシートを得た。
【0079】
(3)曲げ弾性率
80mm×10mm×4mmのテストピースを用いて、JIS K7171に準拠して、株式会社島津製作所製AUTOGRAPHを用い、測定を行った。テストピースは、180℃、または、210℃の条件で10kg/cm、3分予熱した後、100kg/cmの条件で5分加圧し、その後、5分間冷却することで得たシートを、所定の寸法にサンプリングしテストピースとした。
(4)TMA軟化温度
4mm×4mm×12mmのテストピースを用いて、アルバック理工株式会社製熱機械試験機TM−9300を用い、測定を行った。テストピースは、180℃、または、210℃の条件で10kg/cm、3分予熱した後、100kg/cmの条件で5分加圧し、その後、5分間冷却することで得たシートを、所定の寸法にサンプリングしテストピースとした。
【0080】
4.使用原料
(1)成分(A):エチレン・α−オレフィン共重合体
成分(A)として、次の(PE−1)〜(PE−3)を用いた。物性を表1に示す。
(PE−1):下記の<製造例>で重合したエチレン−αオレフィン共重合体
(PE−2):市販のエチレン、プロピレン共重合体(三井化学社製 TAFMER P−0280)
(PE−3):市販のエチレン、1−オクテンの共重合体(ダウ・ケミカル社製 ENGAGE8200)
【0081】
(2)成分(B):プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、ポリプロピレン
成分(B)として、次の(PP−1)〜(PP−4)を用いた。物性を表1に示す。
なお、表1中の曲げ弾性率、及び2mm厚さのヘイズ値は、それぞれJIS K7171、およびJIS K7136に準拠するものである。
(PP−1)市販のメタロセン系触媒により製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体(日本ポリプロピレン社製 WELNEX RFGVA4)
(PP−2)市販のメタロセン系触媒により製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体(日本ポリプロピレン社製 WINTEC WFX4)
(PP−3)プロピレン−エチレンブロック共重合体(日本ポリプロピレン社製 NOVATEC−PP BC3HF)
(PP−4)ポリプロピレン(NOVATEC−PP FY−4)
【0082】
【表1】

【0083】
<製造例1>
(i)触媒の調製
触媒は、特表平7−508545号公報に記載された方法で調製した。即ち、2.0mモルの錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチルに対して、トリペンタフルオロフェニルホウ素を等モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
(ii)重合
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を用い、反応器内の圧力を130MPaに保ち、エチレンとプロピレン、1−ヘキセンとの混合物を連続的に供給した。また、上記触媒溶液を連続的に供給し、重合温度が105℃を維持するように、その供給量を調整した。反応終了後、MFR=3.5g/10分、密度=0.880g/cm、Mz/Mn=3.7のエチレン・プロピレン・1−へキセン共重合体であるエチレン・αオレフィン共重合体(PE−1)を得た。
このエチレン・αオレフィン共重合体(PE−1)の特性を、前記表1に示す。
【0084】
5.配合比率
下記の実施例、比較例における各組成の配合比率を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
(実施例1〜3)
実施例1は、エチレンとαオレフィン共重合体(PE−1)70重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体(PP−1)30重量%とし、実施例2は、エチレンとαオレフィン共重合体(PE−1)60重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体(PP−1)40重量%とし、実施例3は、エチレンとαオレフィン共重合体(PE−1)50重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体(PP−1)50重量%とし、それらを混合し、40mmφ単軸押出機を用いて設定温度180℃、スクリュー回転数50rpmの条件でペレット化した。
得られたペレットを、180℃−10kg/cmの条件で、3分予熱した後、180℃−100kg/cmの条件で5分加圧し、その後、5分間冷却することで、厚み2mm、4mmのシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率は厚み2mmのシートで、耐熱性、曲げ弾性率は厚み4mmのシートを用い、各サンプル形状にした後に評価した。評価結果を表3に示す。
【0087】
(実施例4)
実施例4は、TAFMER P−0280(PE−2)70重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体(PP−1)30重量%を混合し、40mmφ単軸押出機を用いて設定温度180℃、スクリュー回転数50rpmの条件でペレット化した。
得られたペレットを、180℃−10kg/cmの条件で、3分予熱した後、180℃−100kg/cmの条件で5分加圧し、その後、5分間冷却することで、厚み2mm、4mmのシートを作製し、実施例1と同様にHAZE、光線透過率、耐熱性、曲げ弾性率を評価した。評価結果を表3に示す。
【0088】
(実施例5)
実施例5は、ENGAGE8200(PE−3)70重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体(PP−1)30重量%を混合し、40mmφ単軸押出機を用いて設定温度180℃、スクリュー回転数50rpmの条件でペレット化した。
得られたペレットを、180℃−10kg/cmの条件で、3分予熱した後、180℃−100kg/cmの条件で5分加圧し、その後、5分間冷却することで、厚み2mm、4mmのシートを作製し、実施例1と同様にHAZE、光線透過率、耐熱性、曲げ弾性率を評価した。評価結果を表3に示す。
【0089】
(比較例1〜3)
比較例1は、エチレン・α−オレフィン共重合体(PE−1)を、比較例2は、TAFMER P−0280(PE−2)を、比較例3は、ENGAGE8200(PE−3)を各々単独で用いて、180℃−10kg/cmの条件で、3分予熱した後、180℃−100kg/cmの条件で5分加圧し、その後、5分間冷却することで、厚み2mm、4mmのシートを作製し、実施例1と同様にHAZE、光線透過率、耐熱性、曲げ弾性率を評価した。評価結果を表3に示す。
【0090】
(比較例4〜6)
比較例4〜6は、実施例2におけるWELNEX RFGVA4(PP−1)に替えて、WINTEC WFX4(PP−2)、NOVATEC−PP BC3HF(PP−3)、NOVATEC−PP FY−4(PP−4)を用い、210℃−10kg/cmの条件で、3分予熱した後、210℃−100kg/cmの条件で5分加圧し、その後、5分間冷却することで、厚み2mm、4mmのシートを作製し、実施例2と同様にHAZE、光線透過率、耐熱性、曲げ弾性率を評価した。評価結果を表3に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
(評価)
表3から明らかなように、比較例1〜3では、樹脂成分として、エチレン・α−オレフィン共重合体(PE−1、PE−2、PE−3)のみを用いて入る為、耐熱性が低い。
これに対して、本発明の実施例1〜5では、太陽電池封止材の材料として、エチレン・α−オレフィン共重合体(PE−1、PE−2、PE−3)(A)に、曲げ弾性率が100MPa以上500MPa以下の範囲のプロピレン−エチレンランダム共重合体(PP−1)(B)を加える事で、柔軟性、透明性を保持しつつ、耐熱性の改良を達成した。
また、比較例4〜6から見られるように、(B)成分として、曲げ弾性率が500MPaを超えるプロピレン−エチレンランダム共重合体(PP−2)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−3)、ポリプロピレン(PP−4)を用いた場合、耐熱性は改善するものの、全光線透過率の低下を招き、太陽電池封止材の材料としては使用できない。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の太陽電池封止材用樹脂組成物は、耐熱性、柔軟性、透明性のいずれにも優れており、水蒸気透過度が小さいので、太陽電池封止材として、光線透過率、耐熱性、接着性等が要求される太陽電池モジュールの材料として利用される。また、柔軟性が高いことから、基板としてフレキシブルなフィルムを用いた太陽電池の封止材として有用であり、ガラスとの接着性が高いことから、基板としてガラス板を用いた太陽電池の封止材としても有用である。また、IC(集積回路)の封止材としても利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)及び成分(B)を樹脂成分として含有することを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物。
成分(A):下記(a1)の特性を有するメタロセン系触媒により製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)密度:0.860〜0.890g/cm
成分(B):下記(b1)の特性を有するメタロセン系触媒により製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体
(b1)曲げ弾性率:100以上〜500MPa以下(JIS K7171)
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の配合割合が、樹脂組成物中の含有量として、成分(A)が40重量%以上70重量%以下に対して、30重量%以上60重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)の樹脂密度と成分(B)の樹脂密度の差が、0.015以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項4】
成分(A)が、MFRが1以上20以下、曲げ弾性率が2MPa以上50MPa以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項5】
成分(B)が、下記(B−i)及び(B−ii)の特徴を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
(B−i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でエチレン含量1.0〜7wt%のプロ
ピレン−エチレンランダム共重合体成分(B1)を30〜70wt%、第2工程で成分(
B1)よりも5〜20wt%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共
重合体成分(B2)を70〜30wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレ
ンランダムブロック共重合体であること
(B−ii)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線
において、tanδ曲線が、tanδ曲線の非晶部のガラス転移による単一のピークを0
℃以下に有すること
【請求項6】
さらに、下記の成分(C)を含有し、その含有量が、成分(A)及び成分(B)からなる樹脂成分100重量部に対して、0.01〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
成分(C):シランカップリング剤
【請求項7】
さらに、下記の成分(D)を含有し、その含有量が、成分(A)及び成分(B)からなる樹脂成分100重量部に対して、0.2〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
成分(D):有機過酸化物
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物を成形してなることを特徴とする太陽電池封止材。
【請求項9】
請求項8の太陽電池封止材を用いた太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2013−21082(P2013−21082A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152242(P2011−152242)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】