説明

太陽電池用バックシートおよび太陽電池モジュール

【課題】本発明は、外見的には黒色に着色されていても特定波長の赤外線を反射して蓄熱を防止する性質を有し、屋外で長期間使用しても加水分解を起しにくく耐候性にも優れた太陽電池用バックシートおよびこれを具備した太陽電池モジュールの提供を目的とする。
【解決手段】太陽電池セルの裏面に配置されるバックシートに、少なくとも反射層、黒色接着層を含ませ、黒色接着層には黒色顔料を含ませることによって、セルに近くなる側の該バックシートの明度L*が40%以下であり、且つ900nm〜2400nmにおける光の最大反射率が30%以上とすることができたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定波長の赤外線を反射する昇温を防止する性能を有するバックシートを具備することで、変換効率の高い黒色の太陽電池モジュールを提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因となる石油に代わるエネルギー供給手段として、太陽電池が注目を浴びており、その需要が高まっている。太陽電池の需要増に伴い、太陽電池用バックシートなどの部品の安定供給及び低コスト化が求められており、また、太陽電池の発電効率を向上させるための要求も高まっている。
【0003】
太陽電池用バックシートは、太陽電池セルへの水など異物の浸入を防ぐために設けられるものである。
【0004】
従来、太陽電池用バックシートとしては、太陽光の反射率を高めて太陽電池の発電効率を高めるために、ポリエステルシートの両面に白色の熱可塑性樹脂シートを積層したものが用いられている(特許文献1、2)。
【0005】
一方、太陽電池は家屋の屋根などに配置されるので、近年、デザインの観点から、黒色などの暗色に着色した太陽電池用バックシートが要求されている。しかしながら、従来の黒色の太陽電池用バックシートは、樹脂にカーボンブラックを練り込んで成形されたものが一般的であるため、カーボンブラックが太陽光を吸収して温度が上昇し、太陽電池の発電効率を低下させるだけでなく、耐久性も低下させる懸念があった。
【0006】
一方、ゴム強化ビニル系樹脂に赤外線反射特性を有する無機顔料を練り込んで成形された昇温防止性能の高い太陽電池用バックシートも提案されている(特許文献3)が、赤外線反射率の更なる向上が求められている。
【0007】
さらには、モジュールを構成する単結晶セルについては、製造会社により微妙に色合いが異なるため、デザインの観点から、微妙な色合いの違いに対応できるバックシートが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−270025号公報
【特許文献2】特開2007−177136号公報
【特許文献3】特開2007−103813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、外見的には黒色に着色されていても特定波長の赤外線を反射して昇温を防止する性質を有した太陽電池用バックシートを具備させることで、変換効率に優れた黒色太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、太陽電池セルの裏面に配置されるバックシートであって、
少なくとも反射層、黒色接着層を含んでなる積層体であり、
黒色接着層には黒色顔料が含まれてなり、
セルに近くなる側の該バックシートの明度L*が40以下であり、且つ900nm〜2400nmにおける光の最大反射率が30%以上であることを特徴とする太陽電池用バックシートである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記黒色接着層が、少なくとも2層以上あることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用バックシートである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記黒色接着層に含まれる黒色顔料が、ペリレン系顔料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池用バックシートである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記反射層が、波長900〜2400nmの範囲における最大の反射率が50%以上である金属箔からなることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の太陽電池バックシートである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記積層体が、太陽電池セルから近い側から、封止材密着層、黒色接着層、基材層、黒色接着層、反射層、接着層、耐候性樹脂層からなることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4のいずれかに記載の太陽電池用バックシートである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記黒色接着層が、ウレタン系接着剤であることを特徴とする太陽電池バックシートを有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5のいずれかに記載の太陽電池用バックシートである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記セルの明度と前記太陽電池用バックシートの明度L*の差が30以下であることを特徴とする太陽電池バックシートを有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6のいずれかに記載の太陽電池用バックシートである。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用バックシートを用いたことを特徴とする太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、太陽電池モジュールにおけるバックシートに、少なくとも黒色接着層と反射層を設けることによって、太陽電池モジュールに入射した光の内、発電に寄与せずむしろセルの温度を上昇させることで発電効率を悪化させる赤外線を、既存のカーボンブラックを使用した黒色バックシートより多く太陽電池モジュール外に放出させることができるという効果を有するものである。
【0019】
また、黒色接着層で色を着色させるため、色を調整することが比較的簡易である。また、反射層が金属であるため、効率よくモジュール側面から熱を放出させることが可能となる。さらには、黒色接着層を2層とすることで、封止剤との密着を向上させることができるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の太陽電池モジュールの断面を示した概略図である。
【図2】図2は、本発明の太陽電池モジュールに用いられるバックシートにおける一形態を示した図である。
【図3】図3は、本発明の太陽電池モジュールに用いられるバックシートの波長毎の反射特性の測定結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明における太陽電池モジュールの断面図を図1に示し、太陽電池モジュールに用いられるバックシートにおける一形態について図2に示す。以下、バックシートの各層における形態、および太陽電池モジュールについて説明する。
【0022】
前記反射層は、光線反射性の金属層であり、具体的には、波長900〜2400nmの光の最大反射率が50%以上、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である金属層である。
【0023】
前記金属層を用いることで、赤外の反射だけでなく、端面方向への放熱の効果も得ることが出来る。上記金属層としての金属箔は、アルミニウム、金、銀、ニッケル、銅、ステンレスなど光を反射できるものであれば特に限定はされないが、水蒸気バリア性、加工性、及びコストの面からアルミニウム箔が好ましく使用できる。
【0024】
前記金属箔の厚みについては、水蒸気バリア性を確保すること、また、放熱させる観点から、20μm以上の膜厚が望ましい。一方であまり厚い場合には切断加工などに労力を要するため、100μm以下であることが望ましい。
【0025】
なお、アルミニウム箔については、アルミニウムに加える微量金属により多数の種類があり、例えば、8079材、8021材、3003材などが市販されており、それらが使用できる。
【0026】
前記黒色接着層は、水酸基を有する樹脂とイソシアネート基を含有した樹脂及び、黒色顔料からなる層である。
【0027】
本発明で用いる黒色顔料は、可視光線は吸収して黒色となるが、赤外線は透過させる性質を有するものである。この黒色顔料を用いた本発明を用いたバックシートにおいては、D65の2度視野による色測定において平方根((△a)+(△b))が4以下となるような無彩色であり、かつ波長900nmから2400nmの間における最大反射率が30%以上となるものが適している。
【0028】
これを満たす黒色顔料としての具体例として、ペリレン系黒色顔料が挙げられる。ペリレン系黒色顔料としては、Paliogen Black S 0084,Paliogen Black L 0086, Lumogen Black FK4280, Lumogen Black FK4281などがBASF社から市販されている。これらの赤外線透過性着色剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
また、この黒色接着層については、赤外線の透過性を損なわない限り、黒色顔料の他、別の顔料や染料などの着色剤と組み合わせて使用することもできる。
【0030】
なお、上記黒色顔料については、紫部分にあたる短波長の光を透過させるため、若干紫味を帯びている。そのため黄色の顔料や染料などの着色剤と組み合わせることでより無彩色に近づけることが出来る。また、接着剤の硬化剤としてのイソシアネートをキシレンジイソシアネート(XDI)とすることによっても、無彩色に近づけることができる。また、その他の色を有する顔料、染料を用いることで、色を調整することもできる。
【0031】
これらの色調整によって、各社で作成される単結晶セルの微妙な色味の違いに対応した黒色を作成することが可能となる。
【0032】
前記黒色接着層の着色度合いは、前記黒色接着層が赤外線透過性を充足する限り特に限定されないが、通常、太陽電池用バックシートのセル側に対向する面のL*値(明度)が40以下、好ましくは35以下、より好ましくは30以下となる程度に着色していればよい。
【0033】
前記黒色接着層における着色剤の含有量(赤外線透過性着色剤及びその他の着色剤の総量)は、黒色接着層赤外線透過性を損なわない限り、特に制限されないが、通常、黒色接着層を構成する樹脂の固形成分100質量部に対し、5〜30質量部が好ましく、7.5〜20質量部がより好ましい。着色剤の含有量が固形成分で5質量部未満では、着色が不十分になる。一方、着色剤の含有量が固形成分で30質量部を超えると、赤外線の透過が不十分になったり、製造コストが上昇するおそれがある。
【0034】
なお、ここでのL*はD65光源における2度視野で測定した値である。
【0035】
前記黒色接着層における水酸基を含む熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオールなどが上げられるが、好ましくはアクリルポリオール、ポリエステルポリオールを用いるとよい。
【0036】
前記熱可塑性樹脂の硬化剤としては、多価イソシアネートが用いられる。イソシアネート類としては、原料のイソシアネートにより、トリレンジイソシアネート(TDI)系、ヘキサメチレンジイソシアネート(HID)系、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)系、キシリレンジイソシアネート(XDI)系等が挙げられるが、これらについていずれも用いることができる。
【0037】
また、さらに合成方法の違いによりアダクト型とイソシアヌレート型とタイプが分けられるが、それらどれも用いることができる。
【0038】
本発明の太陽電池バックシートの基材層は、太陽電池モジュールにおける帯電圧を高めるために設けられる。また、この基材層は、黒色接着層を透過した赤外線を透過させ、かつ、反射層から反射した赤外線を再度透過させる機能を有するものであるため、赤外線の透過性が高いほうが好ましい。通常、着色剤を含まない樹脂をフィルム又はシートとして成形することで作成でき、透明又は半透明であることが好ましく、透明であることがより好ましい。
【0039】
前記基材層としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、エチレン・酢酸ビニル系樹脂等が使用できる。
【0040】
なお、これらの樹脂において、単独で用いても良いし、2種以上の樹脂を組み合わせて用いても良い。特にこれらの内、機械強度、高い耐熱性、強度、耐候性、耐久性、水蒸気バリア性、誘電率、コストなどの観点からポリエステル系樹脂がよく、その中でもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0041】
前記封止材密着層としては、一般的に太陽電池モジュールにおける封止材との密着性が良好な樹脂が良い。また、封止材密着層は基材層と同様、黒色接着層を透過した赤外線を透過させ、かつ、反射層から反射した赤外線を再度透過させる機能を有するものであるため、赤外線の透過性が高いほうが好ましい。これらは、通常、着色剤を含まない樹脂をフィルム又はシートとして成形することで作成でき、透明又は半透明であることが好ましく、透明であることが、更に好ましい。
【0042】
前記封止材密着層としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、エチレン・酢酸ビニル系樹脂などが使用できる。
【0043】
これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。これらのうち、エチレン・酢酸ビニル系樹脂系の樹脂が封止材と材質が同じであり密着性が期待できる上、コストの点で好ましく使用できる。
【0044】
接着層は、水酸基を有する樹脂とイソシアネート基を含有した硬化剤とからなるものであって、水酸基を含む熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオールなどが上げられるが、好ましくはアクリルポリオール、ポリエステルポリオールを用いることができる。
【0045】
前記硬化剤としては、多価イソシアネートが用いられ、イソシアネート類としては、原料のイソシアネートにより、トリレンジイソシアネート(TDI)系、ヘキサメチレンジイソシアネート(HID)系、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)系、キシリレンジイソシアネート(XDI)系等が挙げられるが、これらについていずれも用いることができる。
【0046】
また、さらに合成方法の違いによりアダクト型とイソシアヌレート型とタイプが分けられるが、それらどれを用いても特に問題はない。
【0047】
前記接着層は黒色接着層と同じ材料でも機能上問題ないものの、黒色顔料を加えたことによりコストアップの原因となること、黒色顔料は本来接着に関与しない材料であること、また、セルに遠い側のバックシートの色は通常白色であるため、黒色接着層を用いた場合にはセルに遠い側からバックシートを見た場合にはその明度を低下させる原因となるので、黒色顔料を含まない方が望ましい。
【0048】
前記耐候性樹脂層は、反射層よりもセルに遠い側の最外部に設けられる層であって、耐候性樹脂層としては、屋外に設置されることを鑑み、耐水性、紫外線に対する耐久性等の耐候性を有しているものが望ましく、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリエチレンナフタレート(PEN樹脂)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)
スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が使用できる。
【0049】
上述の樹脂の中でも、高い耐熱性、強度、耐候性、耐久性、水蒸気バリア性等をバランス良く有したものとして、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂が好ましく使用できる。
【0050】
上述のポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂の中でも、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0051】
上述のフッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が使用できる。
【0052】
これらのフッ素系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)やテトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー(ETFE)が特に好ましく使用できる。
【0053】
上述の環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、シクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)、シクロヘキサジエン(及びその誘導体)、ノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンを重合させてなるポリマー、また当該環状ジエンとエチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系モノマーの1種又は2種以上とを共重合させてなるコポリマー等が使用できる。
【0054】
これらの環状ポリオレフィン系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるシクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)又はノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンのポリマーが特に好ましく使用できる。
【0055】
なお、耐候性樹脂層の形成材料としては、上述の合成樹脂を1種又は2種以上混合して使用することができる。また、耐候性樹脂層の形成材料中には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を混合することができる。
【0056】
この添加剤としては、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等が使用できる。上述の耐候性樹脂層の成形方法としては、特に限定されず、例えば押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の公知の方法を用いることができる。
【0057】
本発明における太陽電池モジュールにおけるバックシートの層構成としては、セルに近い側を左側にして順に並べると以下の積層構成をとることが可能である。
1)基材層/黒色接着層/反射層
2)基材層/黒色接着層/反射層/黒色接着層/耐候性樹脂層
3)基材層/黒色接着層/反射層/接着層/耐候性樹脂層
4)封止材密着層/接着層/基材層/黒色接着層/反射層/接着層/耐候性樹脂層
5)封止材密着層/黒色接着層/基材層/接着層/反射層/接着層/耐候性樹脂層
6)封止材密着層/接着層/基材層/黒色接着層/反射層/黒色接着層/耐候性樹脂層
7)封止材密着層/黒色接着層/基材層/接着層/反射層/黒色接着層/耐候性樹脂層
8)封止材密着層/黒色接着層/基材層/黒色接着層/反射層/黒色接着層/耐候性樹脂層
9)封止材密着層/黒色接着層/基材層/黒色接着層/反射層/接着層/耐候性樹脂層
これらの内、9)の構成が、黒色でありかつ封止材との密着も得ることが出来、耐候性も得られるため好ましく使用できる。9)の構成については図2に示した。
【0058】
本発明の太陽電池用バックシートを使用した太陽電池モジュールは、通常、太陽光の受光面側から、ガラス等の表面保護部材、封止材、セル、封止膜および本発明の太陽電池用バックシートの順で構成される。
【0059】
表面保護部材としては、一般的にガラスが使用される。ガラスは透明性および耐候性に優れるが、耐衝撃性が低く、重いため、一般住宅の屋根に載せる太陽電池の場合には、耐候性の透明樹脂も好ましく使用される。透明樹脂としては、フッ素系樹脂フィルムが挙げられる。表面保護部材の厚さは、ガラスを使用した場合は、通常3〜5mm、透明樹脂を使用した場合は、通常0.2〜0.6mmである。
【0060】
封止材としては、オレフィン系樹脂が使用される。ここでオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン、または、ジオレフィンを重合若しくは共重合した重合体の総称であり、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エステルなど他のモノマーとの共重合体やアイオノマーなども含む。
【0061】
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が使用でき、そのうち、EVAが広く用いられている。
【0062】
EVAは、粘着剤や接着剤として塗工される場合や、シート状で使われる場合があるが、シート状で熱圧着して使われることが一般的である。シート状で使われる場合の厚みは、通常0.2〜5.0mmである。
【0063】
セルとしては、公知のシリコンが使用できる。シリコンとしては、アモルファ
スシリコンであっても、単結晶シリコンであっても多結晶シリコンであってもよい。該バックシートは黒色であり、シリコンとの境目を目立たせなくすることが目的の一つであるため、最も黒色に近い単結晶シリコンと組み合わせが好適である。
【実施例】
【0064】
以下に、例を挙げて、本発明をさらに実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例において、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
【0065】
<実施例1>
黒色接着層の黒色樹脂における黒色接着剤として、2液硬化性の接着剤(ハイボン、日立化成ポリマー製)に、黒色顔料(Lumogen FK4281、BASF社製)をインキ重量に対して6%、固形成分比で10%となるように加えたものを用意した。
【0066】
まず、反射層と耐候性樹脂層を接着層を介して貼り合わせた。ここで、反射層としては40μm厚のアルミニウム箔(8079材、サンアルミ製)を、耐候性樹脂層としては耐加水分解性PET(X10S、東レ製)を用いた。また、接着層としては黒色顔料を含まない2液硬化性の接着剤(ハイボン、日立化成ポリマー製)を用いた。
【0067】
貼り合わせの方法としては、耐候性樹脂層に対してワイヤーバーを用いて接着層を塗工により積層し、90℃のオーブンで3分乾燥させた。その後、接着層が積層された耐候性樹脂層の接着層の面に先の反射層をラミネーターにより貼り合わせを行なった。
【0068】
ついで、上記とは別に、基材層としてPET(ダイアホイル、三菱化学製)を用い、その上に黒色接着層をワイヤーバーにより塗布量7g/mになるように塗工し、90℃のオーブンで3分乾燥させることで基材層に黒色接着層を積層した。
その後、耐候樹脂層と反射層が接着層により一体化したものを、基材の黒色接着層が塗工された側に対してラミネーターにより貼り合わせた。
【0069】
さらに、先の貼り合わせが行なわれていない基材の表面に黒色接着層を塗工し、封止材密着層をラミネーターにより貼り合わせた。ついでこれらについて50℃で1週間エージングすることにより層構成9)のバックシートを得た。
【0070】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0071】
<比較例1>としては、以下の層構成の黒色バックシート品を用いた。その層構成は、PETフイルム/アルミニウム箔/PETフイルム/黒色EVAからなる4層品を用いた。
【0072】
以下に、評価方法について説明する。
【0073】
下記の実施例及び比較例における、各種評価項目の測定方法を以下に示す。
【0074】
反射率測定(%)法としては、実施例に示した方法に従いバックシートを作成した後、セルに近い側の面を測定面として、日本分光社製V−670(波長範囲400〜2400nm)により、900〜2400nmの波長範囲における反射率を測定し、最大の反射率値を読み取る方法である。
【0075】
L*値(%)の求め方としては、実施例に示した方法に従いバックシートを作成した後、セルに近い側の面を測定面として、L*値を測定する方法である。測定器は東洋精機製分光光度計TCS−IIにより測定した。測定条件としてはD65光源を用い2度視野で行う。
【0076】
耐湿熱性の求め方としては、実施例に示した方法に従いバックシートを作成した後、表面保護部材とバックシートを封止材を介して貼り合わせした後、温度105℃、湿度100%の条件下で96又は192時間放置し、そのサンプルについて、バックシートの層間の剥離強度をAG2000引張試験器(島津製作所製)を用いて剥離強度を測定する方法である。サンプルの幅は10mm、引張速度は300mm/分、90°の角度で剥離試験を行った。なお、ここでは表面保護部材としては5インチ平方の青板ガラス、封止材としてEVAを用いた。
【0077】
昇温防止性の求め方としては、温度25℃±2℃、湿度50±5%RHに調節された室において、100mm×100mmの太陽電池用バックシートを、高さ200mmから人工太陽照明灯XC―100(セリック(株)製)を照射して、10分後の試験片の表面温度を、表面温度計を用いて測定する方法である。なお測定面はセルに近い側に光を照射して試験を行った。
【0078】
変換効率測定の求め方としては、4インチの多結晶太陽電池のセルに対し、一方を5インチの強化ガラスとEVA、他方をEVAとフッ素系樹脂シートとし、その間にセルをラミネーターを用いて封止した。その後、フッ素系樹脂シートを剥がすことで、強化ガラス/封止材/セル/封止材からなる単セルモジュールを作成した。その封止材面に対し、5インチサイズの実施例からなるシートと比較例のシートを各々グリセリンで液浸した状態で、ソーラーシミュレータPVM1007A(NewPort社製)を用いて30分照射した後の変換効率を測定する方法である。なお、単セルモジュールの変換効率は11.3%のものを用いた。
【0079】
反射率測定結果を図3に示す。図3のとおり、実施例については900nmから2400nmにおいて最大で30%以上の反射率を示すが、比較例では先の波長範囲において反射率30%以上の部分は得られなかった。
【0080】
色については実施例においてはL*=26.6、a*=−0.11、b*=−0.25となった。また、比較例については、L*=27.0、a*=−0.15,b*=0.49であり、無彩色からの平方根((△a)+(△b))が実施例では0.3、比較例では0.5となり、どちらも、無彩色であり、色については現行品と同等の性能を得ることが出来た。
【0081】
耐湿熱性については、剥離強度が0時間で9N/cm、96時間後で7N/cm、192時間後で、13N/cmであり、一般的に言われている4N/cm以上の剥離強度を保持していた。
【0082】
また色差△E*abは96時間後において1.0、192時間後において0.8であった。これは、一般的に色の違いを感じることの出来る値である4以下であるため、湿熱により変色しないことが確認された。
【0083】
昇温防止性について実施例及び比較例について測定したところ実施例については、10分後の表面温度が40℃であるのに対し、比較例では46℃となっており6℃の昇温が押さえられていることが確認された。
【0084】
モジュールに取り付けた際の変換効率としては、実施例においては、8.9%、比較例においては、8.6%となり相対比で3%の効率向上効果を得た。
【0085】
本発明における、バックシートを有する太陽電池モジュールを用いることで、色や耐湿熱性は現行と同等の性能を保ちつつ、昇温防止性を得ることが可能となるため、効率向上する黒色のモジュールを得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
1、バックシート
2、封止材
3、セル
4、表面保護部材
5、配線
101、耐候性樹脂層
102、接着層
103、反射層
104、基材層
105、黒色接着層
106、封止材密着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルの裏面に配置されるバックシートであって、少なくとも反射層、黒色接着層を含んでなる積層体であり、
黒色接着層には黒色顔料が含まれてなり、
セルに近くなる側の該バックシートの明度L*が40以下であり、且つ900nm〜2400nmにおける光の最大反射率が30%以上であることを特徴とする太陽電池用バックシート。
【請求項2】
前記黒色接着層が、少なくとも2層以上あることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項3】
前記黒色接着層に含まれる黒色顔料が、ペリレン系顔料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項4】
前記反射層が、波長900〜2400nmの範囲における最大の反射率が50%以上である金属箔からなることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の太陽電池バックシート。
【請求項5】
前記積層体が、太陽電池セルから近い側から、封止材密着層、黒色接着層、基材層、黒色接着層、反射層、接着層、耐候性樹脂層からなることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4のいずれかに記載の太陽電池用バックシート。
【請求項6】
前記黒色接着層が、ウレタン系接着剤であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5のいずれかに記載の太陽電池用バックシート。
【請求項7】
前記セルの明度と前記太陽電池用バックシートの明度L*の差が30以下であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6のいずれかに記載の太陽電池用バックシート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用バックシートを用いたことを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−93410(P2013−93410A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233991(P2011−233991)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】