説明

太陽電池用接着シート及びその製造方法並びに太陽電池モジュール

【課題】 本発明は、製膜時において、エチレン系共重合体をTダイ内で滞留或いは固化させてしまうことなく、安定して均一に製膜することができる太陽電池用接着シートを提供する。
【解決手段】 本発明の太陽電池用接着シートAは、熱可塑性樹脂を含有するシート層1、1・・・が2層以上、積層一体化されてなる太陽電池用接着シートであって、有機過酸化物を含有し且つ架橋助剤を含有しない過酸化物シート層1aと、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層1bとを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールを作製する際に用いられる太陽電池用接着シート及びその製造方法並びに太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンやセレンの半導体ウェハからなる太陽電池モジュールは、両面に太陽電池用接着シートが積層された太陽電池素子の上面に透明保護材を、下面に裏面保護材を重ね合わせて得た積層体を減圧下で脱気しながら加熱し、太陽電池素子の上下面に保護材を接着シートを介して積層一体化させることによって製造されている。又、シリコンや化合物半導体などからなる太陽電池セルを薄膜状に基板上に積層させてなる構造を含む太陽電池モジュールにおいても、太陽電池セルを封止するために同様の太陽電池用接着シートが用いられている。
【0003】
このような太陽電池モジュールに用いられる太陽電池用接着シートとしては、例えば、特許文献1に、有機過酸化物を含有するエチレン共重合体からなる太陽電池モジュール用保護シートにおいて、有機過酸化物として、ジアルキルパーオキサイド(A)と、アルキルパーオキシエステル及びパーオキシケタールからなる群より選ばれる少なくとも一種の過酸化物(B)を、(A)/(B)の重量比が10/90〜90/10の割合で配合したものを用いることを特徴とする太陽電池モジュール用保護シートが提案されている。そして、この太陽電池モジュール用保護シートを製膜する方法としては、押出機でエチレン共重合体及び有機過酸化物からなる樹脂組成物を80〜130℃で溶融混練し、押出機の先端に配設されたTダイから押出製膜する方法が開示されている。
【0004】
ここで、上記太陽電池モジュール用保護シートを、Tダイを用いて製膜する場合、Tダイ内の温度が80〜110℃であると、樹脂の溶融粘度が高くなって、樹脂組成物がTダイ内で滞留しやすくなる。すると、Tダイ内でシート状に展開された樹脂組成物と、温度の高いTダイ内面との接触時間が長くなるため、Tダイ内面に接触している樹脂組成物中の有機過酸化物が分解して、樹脂の架橋が進行する。従って、樹脂組成物の溶融粘度が更に高くなり、樹脂組成物がTダイ内で滞留して、均一な厚みのシートを製膜することができないという問題が生じる。又、このように樹脂が架橋して、樹脂組成物の溶融粘度が高くなることで、樹脂組成物のTダイ内での滞留時間が一段と長くなるので、樹脂の架橋が更に進行してしまい、樹脂がTダイ内で固化してシートを押出すことができなくなるといった事態も生じていた。
【0005】
一方、上記太陽電池モジュール用保護シートの製膜時において、Tダイ内の温度が110〜130℃であると、Tダイ内面の温度が高温であることから、Tダイ内でシート状に展開された樹脂組成物がTダイ内面に熱せられて、有機過酸化物が分解し、樹脂の架橋が進行する。従って、上記樹脂組成物の溶融粘度が更に高くなり、樹脂組成物がTダイ内で滞留して、均一な厚みのシートを得ることができないという問題が生じた。又、Tダイ内で樹脂組成物が滞留すると、シート状に展開された樹脂組成物とTダイ内面との接触時間が長くなって、樹脂の架橋が更に進行するため、樹脂がTダイ内で固化してシートを押出すことができなくなるといった事態も生じていた。
【0006】
又、特許文献2には、エチレン系共重合体及び有機過酸化物からなるシート層が3層以上、積層一体化されてなる太陽電池用接着シートであって、上記シート層のうちの両側最外シート層に上記エチレン系共重合体100重量部に対して、有機過酸化物0.3〜3重量部及びスコーチ防止剤0.01〜2重量部が含有されていると共に、上記両側最外シート層の厚みの和がシート全体の厚みの20%以下である太陽電池用接着シートが開示されている。
【0007】
しかしながら、上記太陽電池用接着シートの両側最外シート層にはスコーチ防止剤が含有されており、このスコーチ防止剤が原因となって太陽電池用接着シートが着色するといった問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−26791号公報
【特許文献2】特開2007−299917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、製膜時において、熱可塑性樹脂がTダイ内において滞留或いは固化することがなく、安定して均一な厚みに製膜することができる太陽電池用接着シート及びその製造方法並びに太陽電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の太陽電池用接着シートは、熱可塑性樹脂を含有するシート層が2層以上、積層一体化されてなる太陽電池用接着シートであって、有機過酸化物を含有し且つ架橋助剤を含有しない過酸化物シート層と、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層とを有することを特徴とする。
【0011】
上記太陽電池用接着シートにおいて、過酸化物シート層と架橋助剤シート層とが互いに隣接して積層一体化されていることを特徴とする。
【0012】
上記太陽電池用接着シートにおいて、過酸化物シート層と架橋助剤シート層との間に、有機過酸化物及び架橋助剤を含有しない架橋剤非含有シート層が介在していることを特徴とする。
【0013】
上位太陽電池用接着シートにおいて、両側の最外シート層は、有機過酸化物及び架橋助剤を含有しない架橋剤非含有シート層であることを特徴とする。
【0014】
上記太陽電池用接着シートにおいて、シート層の厚みが300μm以下であることを特徴とする。又、上記太陽電池用接着シートにおいて、過酸化物シート層を構成している熱可塑性樹脂がポリエチレン系樹脂又はエチレン−プロピレンゴムであることを特徴とする。
【0015】
本発明の太陽電池モジュールは、上記太陽電池用接着シートによって太陽電池素子が上下方向から封止一体化されており、上側の太陽電池用接着シート上に透明保護材が積層一体化されていると共に、下側の太陽電池用接着シート上に裏面保護材が積層一体化されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の太陽電池モジュールは、透明基板上に太陽電池セルが薄膜状に形成されていると共に、この太陽電池セル上に請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の太陽電池用接着シートが積層一体化されて、上記透明基板と上記太陽電池用接着シートとによって太陽電池セルが封止されており、上記太陽電池用接着シート上に裏面保護材が積層一体化されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の太陽電池モジュールは、基板上に太陽電池セルが薄膜状に形成されていると共に、この太陽電池セル上に請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の太陽電池用接着シートが積層一体化されて、上記基板と上記太陽電池用接着シートとによって太陽電池セルが封止されており、上記太陽電池用接着シート上に透明保護材が積層一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の太陽電池用接着シートは、熱可塑性樹脂を含有するシート層が2層以上、積層一体化されてなる太陽電池用接着シートであって、有機過酸化物を含有し且つ架橋助剤を含有しない過酸化物シート層と、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層とを有することを特徴とするので、太陽電池用接着シートの製膜時において、熱可塑性樹脂がTダイ内で過度に架橋して滞留し或いは固化するようなことはなく、よって、太陽電池用接着シートは均一な厚みを有しており、太陽電池素子と保護材とを太陽電池用接着シートを介して全体的に確実に圧着一体化させることができる。
【0019】
又、上記太陽電池用接着シートにおいて、過酸化物シート層と架橋助剤シート層とが互いに隣接して積層一体化されている場合には、太陽電池素子を封止する際に、過酸化物シート層に含有されている有機過酸化物と、架橋助剤シート層に含有されている架橋助剤とが円滑に混合し、過酸化物シート層及び架橋助剤シート層が共に所望の架橋度に架橋し、よって、太陽電池用接着シートは優れた耐熱性を有し、温度が高くなる屋外での使用においても長期間に亘って優れた接着性を確実に維持し、得られる太陽電池モジュールは優れた耐久性を有する。
【0020】
本発明の太陽電池用封止シートの製造方法は、上述の如き構成を有しており、有機過酸化物シート層用の樹脂組成物は、有機過酸化物を含有しているものの架橋助剤を含有していないことから、架橋性が抑えられていると共に、架橋助剤シート層用の樹脂組成物は、有機過酸化物を含有していないことから架橋性は有していない。
【0021】
そして、太陽電池用接着シートAの製膜時において、高温となっているTダイ内面と直接、接触する架橋助剤シート層用の樹脂組成物又は架橋剤非含有シート層用の樹脂組成物は、架橋性を有していないことからTダイとの接触によっても架橋することはない一方、過酸化物シート層用の樹脂組成物は、有機過酸化物を含有しているものの、Tダイ内面と直接、接触することはなく、架橋助剤シート層用の樹脂組成物が介在していることから、過度に加熱されることはなく、Tダイ内において殆ど架橋することはない。
【0022】
従って、本発明の太陽電池用接着シートの製造方法において、過酸化物シート層用の樹脂組成物及び架橋助剤シート層用の樹脂組成物がTダイ内において滞留或いは固化するようなことはなく、過酸化物シート層及び架橋助剤シート層をTダイから円滑に押出して均一な厚みを有する太陽電池用接着シートAを製造することができる。
【0023】
更に、本発明の太陽電池用封止シートの製造方法において、Tダイ内にて、過酸化物シート層用の樹脂組成物と、架橋助剤シート層用の樹脂組成物との間に、架橋剤非含有シート層の樹脂組成物を介在させている場合には、過酸化物シート層用の樹脂組成物中の有機過酸化物と、架橋助剤シート層用の樹脂組成物中の架橋助剤とが併存することを確実に阻止し、過酸化物シート層用の樹脂組成物及び架橋助剤シート層用の樹脂組成物がTダイ内において滞留或いは固化するようなことをより確実に防止し、過酸化物シート層及び架橋助剤シート層をTダイからより円滑に押出してより均一な厚みを有する太陽電池用接着シートAを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の太陽電池用接着シートを示した縦断面図である。
【図2】本発明の太陽電池用接着シートを用いた太陽電池モジュールの縦断面図である。
【図3】本発明の太陽電池用接着シートの他の一例を示した縦断面図である。
【図4】本発明の太陽電池用接着シートの他の一例を示した縦断面図である。
【図5】本発明の太陽電池用接着シートを用いた太陽電池モジュールの他の一例を示した縦断面図である。
【図6】本発明の太陽電池用接着シートを用いた太陽電池モジュールの他の一例を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の太陽電池モジュールの一例を図面を参照しながら説明する。太陽電池用接着シートAは、熱可塑性樹脂を含有するシート層1、1・・・が2層以上、積層一体化されてなる太陽電池用接着シートであって、有機過酸化物を含有し且つ架橋助剤を含有しない過酸化物シート層1aと、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層1bとを有する。
【0026】
先ず、図1に示したように、太陽電池用接着シートAが3層のシート層1、1・・・が積層一体化されてなる場合について説明する。
【0027】
太陽電池モジュールのシート層1を構成している熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレン系共重合体、ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレンゴム、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。そして、後述する過酸化物シート層を構成している熱可塑性樹脂としては、架橋性が低い、ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレンゴムが好ましい。
【0028】
シート層1に用いられるエチレン系共重合体は、エチレンと、エチレンと共重合し得るプロピレン以外の共重合性モノマーとの共重合体であり、このような共重合性モノマーとしては、特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステルなどが挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。なお、上記共重合性モノマーは、単独でエチレンと共重合されていても、二種以上がエチレンと共重合されていてもよい。
【0029】
上記エチレン系共重合体中に含まれる共重合性モノマーの量は、少ないと、得られる太陽電池用接着シートの透明性が不足し、太陽電池素子の発電効率が低下することがある一方、多いと、太陽電池用接着シートの製膜安定性や機械的強度が不十分になることがあるので、5〜50重量%であることが好ましく、10〜40重量%がより好ましく、14〜35重量%が特に好ましい。
【0030】
そして、エチレン系共重合体のメルトフローレイトは、小さいと、太陽電池用接着シートの製膜安定性が低下することがある一方、大きいと、太陽電池用接着シートの機械的強度が不十分となることがあるので、1〜100g/10分が好ましい。なお、本発明におけるエチレン系共重合体のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgf(21.18N)の条件下で測定された値をいう。
【0031】
ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状高密度ポリエチレン樹脂などが挙げられ、単独で用いられても併用されてもよい
【0032】
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン成分が50重量%を超えて含有され且つプロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体の何れであってもよい。
【0033】
なお、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィン等が挙げられる。
【0034】
ここで、上記太陽電池用接着シートAは、太陽電池モジュールの製造時に、透明保護材又は裏面保護材の何れか一方或いは双方と、太陽電池素子との間に介在させて用いられ、減圧下での脱気処理後に加圧下での加熱圧着によって、太陽電池素子を封止一体化すると共に、太陽電池素子と上下保護材とを接着させる。熱可塑性樹脂、特に、エチレン系共重合体は、太陽電池用接着シートに特に必要とされる透明性、接着性及び耐熱性のうち、透明性と接着性には優れているものの、耐熱性が低いという問題点がある。そこで、太陽電池用接着シートAを構成している熱可塑性樹脂に有機過酸化物を含有させ、太陽電池モジュールの製造時に加えられる熱で熱可塑性樹脂を架橋させて、太陽電池用接着シートAの耐熱性を向上させている。
【0035】
しかしながら、後述するような太陽電池用接着シートAの製膜工程において、熱可塑性樹脂が過度に架橋されてしまうと、熱可塑性樹脂がTダイ内で滞留して厚みが均一な太陽電池用接着シートを得ることができない、或いは、Tダイ内で熱可塑性樹脂が固化して太陽電池用接着シートを製膜することができないなどの問題が生じてしまう。
【0036】
そこで、本発明の太陽電池用接着シートAは、有機過酸化物を含有し且つ架橋助剤を含有しない過酸化物シート層1aを中央シート層として、この過酸化物シート層1aの両面に、最外シート層として、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層1b、1bが積層一体化されてなる。
【0037】
このように、太陽電池用接着シートAを構成しているシート層1a、1bは、有機過酸化物又は架橋助剤の何れか一方のみを含有しており、有機過酸化物及び架橋助剤は併存していない。
【0038】
即ち、シート層1aは、有機過酸化物を含有しているものの架橋助剤を含有していないことから、架橋性が抑えられていると共に、架橋助剤シート層1bは、有機過酸化物を含有していないことから架橋性は有していない。
【0039】
そして、太陽電池用接着シートAの製膜時において、高温となっているTダイ内面と直接、接触する架橋助剤シート層1bは架橋性を有していないことからTダイとの接触によっても架橋することはない。
【0040】
一方、中央の過酸化物シート層1aは、有機過酸化物を含有しているものの、Tダイ内面と直接、接触することはなく、架橋助剤シート層1bが介在していることから、過度に加熱されることはなく、Tダイ内において殆ど架橋することはない。
【0041】
従って、太陽電池用接着シートの製膜時において、シート層1a、1bがTダイ内において滞留或いは固化するようなことはなく、シート層1a、1bをTダイから円滑に押出して均一な厚みを有する太陽電池用接着シートAを得ることができる。
【0042】
シート層1aに用いられる有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(136℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(119℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(125℃)、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン(102℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(106℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(107℃)、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(111℃)、2,2−ジ(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン(114℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(115℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(118℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(118℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(119℃)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(119℃)、t−ブチルパーオキシマレイン酸(119℃)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(119℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(121℃)、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン(122℃)、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート(127℃)、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(136℃)、t−ブチルクミルパーオキサイド(137℃)、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(138℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(138℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(144℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(150℃)、p−メンタンハイドロパーオキサイド(151℃)などが挙げられ、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。なお、上記括弧内の温度は1時間半減期温度を表す。
【0043】
シート層1aに含有される有機過酸化物の量は、少ないと、太陽電池モジュールの製造時において、熱可塑性樹脂の架橋が不十分になって、太陽電池用接着シートの耐熱性が不足し、得られる太陽電池モジュールの耐久性が低下し、多いと、太陽電池用接着シートの製膜時において、シート層1aが架橋してTダイ内に滞留し、均一な厚みの太陽電池用接着シートを得ることができなくなり、或いは、熱可塑性樹脂がTダイ内で固化して、太陽電池用接着シートを押出すことができなくなるので、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.3〜3重量部が好ましく、0.5〜1.5重量部がより好ましい。
【0044】
架橋助剤としては、アリル基、ビニル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を2個以上有する多官能モノマーが挙げられ、これらは、ポリマーラジカルを安定化して架橋効率を高めると共に、架橋点を集中させて、ゲルの生成を促進させる。上記多官能モノマーとしては、例えば、フタル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼン;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールなどの(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートなどが挙げられ、単独で使用されてもよいし、二種以上が併用されてもよい。
【0045】
シート層1bに含有されている架橋助剤の量は、少ないと、太陽電池モジュールの製造時に太陽電池用接着シートの架橋が不充分となることがあり、多いと、太陽電池用接着シートの架橋度が高くなり過ぎて硬くなるために、太陽電池素子に余分な応力がかかるなど、太陽電池素子を保護する上で好ましくないことがあるので、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜1重量部が好ましい。
【0046】
又、シート層1a、1bの厚みは、厚いと、太陽電池モジュールを製造する際に、過酸化物シート層1aに含有されている有機過酸化物と、架橋助剤シート層1b、1bに含有されている架橋助剤とが充分に混合せず、太陽電池用接着シートA全体の架橋が不充分となり、太陽電池用接着シートAの耐熱性が低下することがあるので、300μm以下が好ましく、太陽電池用接着シートの厚みが不均一となることがあるので、1〜300μmがより好ましい。
【0047】
なお、シート層1a、1bには、太陽電池用接着シートAの物性を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、難燃剤などの添加剤を添加してもよい。
【0048】
更に、シート層1a、1bには、太陽電池用接着シートAの物性を損なわない範囲内であれば、太陽電池用接着シートAの接着性を高める目的で、カップリング剤を添加してもよい。このようなカップリング剤としては、アミノ基、グリシジル基、メタクリロキシ基及びメルカプト基からなる群より選ばれた一種又は二種以上の官能基を有するシランカップリング剤が好適に用いられ、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0049】
次に、太陽電池用接着シートAの製膜方法について説明する。太陽電池用接着シートAの製膜には、2機以上の押出機が一のフィードブロックを介して一のTダイに接続された多層押出装置などにより製膜することができ、例えば、3層分の押出機を有する多層押出装置を用意し、この多層押出装置の2機の押出機に両側の架橋助剤シート層1b用の熱可塑性樹脂及び架橋助剤、並びに、必要に応じて加えられる添加剤を含有する樹脂組成物を供給する一方、残り1機の押出機に過酸化物シート層1a用の熱可塑性樹脂及び有機過酸化物、並びに、必要に応じて加えられる添加剤を含有する樹脂組成物を供給して、それぞれの押出機中で樹脂組成物を溶融混練し、フィードブロックに供給して、フィードブロックの先端に配設されたTダイより架橋助剤シート層1b、過酸化物シート層1a及び架橋助剤シート層1bをこの順序に積層一体化された状態となるようにシート状に押出製膜し、押出された溶融状態のシートを冷却ロールで冷却、固化して巻き取ることにより製膜することができる。なお、両側のシート層1b、1bが同一の樹脂組成からなる場合には、一の押出機で溶融混練を行い、押出機より押出された溶融樹脂組成物を二つに分岐させた上でフィードブロックに供給して製膜してもよい。
【0050】
太陽電池用接着シートAの製膜工程において、シート層1a、1bを構成する樹脂組成物を押出機内で溶融混練させる際の温度は、高いと、樹脂組成物中の有機過酸化物が分解して、熱可塑性樹脂の架橋が進行してしまうことがあるので、使用する有機過酸化物の1時間半減期温度よりも10℃以上低い温度であることが好ましく、二種以上の有機過酸化物を用いる場合においては、使用する有機過酸化物のうち、最も低い有機過酸化物の1時間半減期温度よりも10℃以上低い温度であるのが好ましい。
【0051】
又、太陽電池用接着シートAは、上記製造方法の他に、各シート層を構成するフィルムを押出ラミネートなどの汎用の方法を用いて積層一体化することによって製造してもよい。
【0052】
更に、上記太陽電池用接着シートAは、太陽電池モジュール製造時の加熱圧着工程における脱気性を向上させるために、表面にエンボス加工が施されるのが好ましい。なお、太陽電池用接着シートAの表面にエンボス加工を施す方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、Tダイから押出された直後の溶融状態の太陽電池用接着シートAを、表面にエンボス模様が施されたエンボスロールと、このエンボスロールに対峙して配設されたゴムロールとの間に供給し、エンボスロールを溶融シートに押圧させて、太陽電池用接着シートAの表面にエンボス加工を施す方法が挙げられる。なお、一旦製造された太陽電池用接着シートAを再度、加熱して溶融状態とした上で上述の要領でエンボス加工を施してもよい。
【0053】
そして、本発明の太陽電池用接着シートAを用いて太陽電池モジュールを製造する方法としては、太陽電池素子2の上面に太陽電池用接着シートAを介してガラス板などの透明保護材3を積層させると共に、太陽電池素子2の下面に太陽電池用接着シートAを介して裏面保護材4を積層させた積層体を作製し、この積層体を減圧下で加熱圧着する。なお、太陽電池素子2としては、単結晶又は多結晶ウェハを用いてなる構造の太陽電池素子や、基板上に、シリコンや化合物半導体などを薄膜状に積層一体化させてなる太陽電池素子が挙げられる。
【0054】
すると、太陽電池素子の上下面に積層した太陽電池用接着シートA、Aのシート層1a、1bが溶融し、太陽電池素子2、2間の隙間を埋めると共に、シート層1a、1b同士が混合して、過酸化物シート層1aに含有されている有機過酸化物と、架橋助剤シート層1bに含有されている架橋助剤とが混合し、太陽電池用接着シートA全体が有機過酸化物と架橋助剤との併存によって充分に架橋されて優れた耐熱性が付与される。
【0055】
そして、太陽電池素子2の上面には太陽電池用接着シートAを介して透明保護材3が積層一体化されると共に、太陽電池素子2の下面には太陽電池用接着シートAを介して裏面保護材4が積層一体化されて太陽電池モジュールBを得ることができる(図2参照)。
【0056】
上記では、太陽電池用接着シートAが3層のシート層1b、1a、1bを積層一体化してなる場合を説明したが、太陽電池用接着シートAは、図3に示したように、4層以上のシート層1、1・・・が積層一体化されてなるものであってもよい。
【0057】
このような太陽電池用接着シートAの場合、両側の最外シート層は、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層1b、1bとし、両側の架橋助剤シート層1b、1bを除いた残余のシート層のうちの少なくとも一のシート層が、有機過酸化物を含有し且つ架橋助剤を含有しない過酸化物シート層1aであることが好ましい。
【0058】
更に、太陽電池用接着シートAとして、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層1bと、有機過酸化物を含有し且つ架橋助剤を含有しない過酸化物シート層1aとが交互に積層一体化され、且つ、両側の最外シート層が、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層1b、1bであることがより好ましい。
【0059】
このように、過酸化物シート層1aと、架橋助剤シート層1bとが交互に積層一体化していることで、太陽電池モジュールの作製時におけるシート層1a、1bの溶融時に、過酸化物シート層1aに含有されている有機過酸化物と、架橋助剤シート層1bに含有されているシート層1bとを均一に混合させることができ、その結果、太陽電池用接着シートAを全体的に均一に且つ充分に架橋して耐熱性に優れたものとすることができる。
【0060】
又、太陽電池用接着シートAは、図4に示したように、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層1bと、有機過酸化物を含有し且つ架橋助剤を含有しない過酸化物シート層1aとが積層一体化された2層構造であってもよい。
【0061】
更に、太陽電池用封止シートAは、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層1bと、有機過酸化物を含有し且つ架橋助剤を含有しない過酸化物シート層1aとの間に、有機過酸化物及び架橋助剤を含有しない架橋剤非含有シート層が介在していてもよい。
【0062】
太陽電池用封止シートAにおいて、過酸化物シート層1aと架橋助剤シート層1bとの間に架橋剤非含有シート層が介在していることによって、過酸化物シート層1aと架橋助剤シート層1bとの界面において、過酸化物シート層1a中に含有されている有機過酸化物と、架橋助剤シート層1b中に含有されている架橋助剤とが併存することを阻止することができ、太陽電池用封止シートの製膜時において、過酸化物シート層1aと架橋助剤シート層1bとがTダイ内において滞留或いは固化するようなことをより確実に防止することでき、過酸化物シート層1aと架橋助剤シート層1bとをTダイから円滑に押出してより均一な厚みを有する太陽電池用封止シートAとすることができる。
【0063】
又、太陽電池用接着シートAは、その両側の最外シート層が有機過酸化物及び架橋助剤を含有しない架橋剤非含有シート層であってもよい。このように、太陽電池用接着シートAの最外シート層を架橋剤非含有シート層とすることによって、製膜時において、高温となっているTダイ内面と直接、接触する架橋剤非含有シート層は架橋性を有していないことからTダイとの接触によっても架橋することはなく、より均一な厚みを有する太陽電池用接着シートAとすることができる。
【0064】
上記架橋剤非含有シート層の厚みは、厚いと、太陽電池モジュールの製造時において、過酸化物シート層中の有機過酸化物と架橋助剤中の架橋助剤との混合が不充分となり、太陽電池用封止シート全体の架橋が不充分となって耐熱性が低下することがあるので、50μm以下が好ましく、35μm以下がより好ましく、25μm以下が特に好ましく、1〜10μmが最も好ましい。
【0065】
なお、架橋剤非含有シート層には、太陽電池用接着シートAの物性を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、カップリング剤、難燃剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0066】
4層以上或いは2層構造の太陽電池用接着シートAの製造時において、太陽電池用接着シートの層数分の押出機を有する多層押出装置を用意し、各押出機に、各シート層を構成する樹脂組成物を供給して、それぞれの押出機中で樹脂組成物を溶融混練し、フィードブロックに供給して、フィードブロックの先端に配設されたTダイよりシート層が所望の順序で積層一体化された状態となるようにシート状に押出製膜し、押出された溶融状態のシートを冷却ロールで冷却、固化して巻き取ることにより製膜することができる。製造する太陽電池用接着シートAにおいて同一の構成を有するシート層が複数層、存在する場合、同一構成を有するシート層用の押出機を共有化し、押出機から押出された樹脂組成物を複数に分岐させることによって押出機の台数を減らしてもよい。
【0067】
又、太陽電池用接着シートAは、上記製造方法の他に、各シート層を構成するフィルムを押出ラミネートなどの汎用の方法を用いて積層一体化することによって製造してもよい。
【0068】
上記では、太陽電池素子をその上下面から太陽電池用接着シートAを用いて封止一体化してなる構造を有する太陽電池モジュールBを説明したが、本発明の太陽電池用接着シートAは、下記の構造の太陽電池モジュールBにも用いることができる。
【0069】
透明基板5上に、シリコンや化合物半導体などからなる太陽電池セル6が薄膜状に積層一体化されており、この太陽電池セル6上に太陽電池用接着シートAを積層させると共に、太陽電池用接着シートA上に裏面保護材4を積層させた積層体を作製し、この積層体を減圧下で加熱圧着して、透明基板5、太陽電池セル6、太陽電池用接着シートA及び裏面保護材4が積層一体化されてなる太陽電池モジュールBを得ることができる(図5参照)。なお、太陽電池セル6は、透明基板5と太陽電池用接着シートAとによって封止一体化されている。
【0070】
又、基板7上に、シリコンや化合物半導体などからなる太陽電池セル8が薄膜状に積層一体化されており、この太陽電池セル8上に太陽電池用接着シートAを積層させると共に、太陽電池用接着シートA上に透明保護材3を積層させた積層体を作製し、この積層体を
減圧下で加熱圧着して、基板7、太陽電池セル8、太陽電池用接着シートA及び透明保護材3が積層一体化されてなる太陽電池モジュールBを得ることができる(図6参照)。なお、太陽電池セル6は、基板7と太陽電池用接着シートAとによって封止一体化されている。
【0071】
上記太陽電池モジュールBの製造の際も、太陽電池用接着シートAにおける過酸化物シート1aに含有されている有機過酸化物と、架橋助剤シート層1bに含有されている架橋助剤とが混合し、太陽電池用接着シートA全体が有機過酸化物と架橋助剤との併存によって充分に架橋されて優れた耐熱性が付与される。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0073】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
3機の押出機が一のフィードブロックを介して一のTダイに接続された3層共押出装置を用意し、これらの押出機のうち2機を両側の最外シート層となる架橋助剤シート層1b、1b用とし、残りの1機を中央シート層となる過酸化物シート層1a用として、両側の架橋助剤シート層1b、1b用の2機の押出機に、表1に示した所定量のエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレイト:20g/10分)、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(1時間半減期温度:118.8℃)及びトリアリルイソシアヌレート、並びに、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.3重量部を含有する樹脂組成物を供給する一方、過酸化物シート層1a用の押出機に、表1に示した所定量のエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレイト:20g/10分)、低密度ポリエチレン(チューブラー法、メルトフローレイト:20g/10分、融点:109℃)、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(1時間半減期温度:118.8℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(1時間半減期温度:138℃)及びトリアリルイソシアヌレート、並びに、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.3重量部を含有する樹脂組成物を供給した。
【0074】
次に、3機それぞれの押出機にて120℃で樹脂組成物を溶融混練し、溶融状態の樹脂組成物をフィードブロックに供給して、フィードブロックの先端に配設されたTダイより、架橋助剤シート層1b、過酸化物シート層1a及び架橋助剤シート層1bをこの順に積層一体化させた状態に且つその厚み比が表1に示した厚み比となるように共押出して太陽電池用接着シートAを製膜した。そして、Tダイより共押出された直後の溶融状態の太陽電池用接着シートAを、エンボスロールと、このエンボスロールに対峙して配設されたゴムロールとの間に供給し、エンボスロールを溶融状態の太陽電池用接着シートAに押圧させて、太陽電池用接着シートAの表面に深さ0.2mmのエンボス加工を施した後、冷却ロールによって冷却しながら巻き取ることにより、厚みが0.5mmの3層の太陽電池用接着シートAを得た。
【0075】
(実施例5、6)
5機の押出機が一のフィードブロックを介して一のTダイに接続された5層共押出装置を用意し、これらの押出機のうち2機を両側の最外シート層となる架橋助剤シート層1b、1b用とし、1機を中央シート層となる過酸化物シート層1a用とし、残り2機を架橋剤非含有シート層用とし、両側の架橋助剤シート層1b、1b用の2機の押出機に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレイト:20g/10分)100重量部、トリアリルイソシアヌレート0.75重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.3重量部を含有する樹脂組成物を供給し、過酸化物シート層1a用の押出機に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレイト:20g/10分)100重量部、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(1時間半減期温度:118.8℃)0.83重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.3重量部を含有する樹脂組成物を供給し、架橋剤非含有シート層用の押出機に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレイト:20g/10分)100重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.3重量部を含有する樹脂組成物を供給した。
【0076】
次に、5機それぞれの押出機にて120℃で樹脂組成物を溶融混練し、溶融状態の樹脂組成物をフィードブロックに供給して、フィードブロックの先端に配設されたTダイより、架橋助剤シート層1b、架橋剤非含有シート層、過酸化物シート層1a、架橋剤非含有シート層及び架橋助剤シート層1bをこの順に積層一体化させた状態に且つその厚み比が表2に示した厚み比となるように共押出して太陽電池用接着シートAを製膜した。そして、Tダイより共押出された直後の溶融状態の太陽電池用接着シートAを、エンボスロールと、このエンボスロールに対峙して配設されたゴムロールとの間に供給し、エンボスロールを溶融状態の太陽電池用接着シートAに押圧させて、太陽電池用接着シートAの表面に深さ0.2mmのエンボス加工を施した後、冷却ロールによって冷却しながら巻き取ることにより、各シート層が表2に示した厚み比を有する厚みが0.52mmの5層の太陽電池用接着シートAを得た。
【0077】
上述のようにして太陽電池用接着シートAを24時間以上に亘って押出製膜し続けたところ、実施例1〜6では、製膜を開始してから24時間を経過しても、押出機内やTダイ内でエチレン−酢酸ビニル共重合体が滞留することなく、安定して均一な厚みの太陽電池用接着シートAを得ることができたが、比較例1〜3では、時間の経過と共に太陽電池用接着シートAの幅方向の両端部の厚みが薄くなって、厚みの均一な太陽電池用接着シートAを得ることができなくなった。
【0078】
実施例及び比較例で得られた太陽電池用接着シートAについて、架橋前後のゲル分率及び耐温湿度サイクル試験を下記の要領で行い、その結果を表1に示した。
【0079】
(太陽電池用接着シートの架橋前のゲル分率)
製膜を開始してから1時間後及び10時間後に得られた太陽電池用接着シートAを用意した。そして、これらの太陽電池用接着シートAにおける幅方向の端縁から幅方向に沿って中央側に5cmだけ離間した部分(表1では「シート端部」と表記した)と、幅方向の中央部(表1では、「シート中央部」と表記した)とから、それぞれ約0.2gの試験片を切り出した。この試験片の精秤値をS(g)とした。
【0080】
次に、上記試験片を110℃のキシレン50ミリリットル中に12時間浸漬して、不溶解分を200メッシュの金網で濾過し、金網上の残渣を80℃で4時間減圧乾燥して、乾燥残渣の重量W(g)を秤量し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×W/S ・・・式(1)
【0081】
(太陽電池用接着シートの架橋後のゲル分率)
製膜を開始してから1時間後の太陽電池用接着シートAを150℃で10分間加熱することにより架橋させ、架橋後の太陽電池用接着シートAにおける幅方向の中央部から試験片を切り出し、上記と同様の要領でゲル分率を測定した。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【符号の説明】
【0084】
1a 過酸化物シート層、中央シート層
1b 架橋助剤シート層、最外シート層
1 シート層
2 太陽電池素子
3 透明保護材
4 裏面保護材
A 太陽電池用接着シート
B 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含有するシート層が2層以上、積層一体化されてなる太陽電池用接着シートであって、有機過酸化物を含有し且つ架橋助剤を含有しない過酸化物シート層と、有機過酸化物を含有せず且つ架橋助剤を含有する架橋助剤シート層とを有することを特徴とする太陽電池用接着シート。
【請求項2】
過酸化物シート層と架橋助剤シート層とが互いに隣接して積層一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用接着シート。
【請求項3】
過酸化物シート層と架橋助剤シート層との間に、有機過酸化物及び架橋助剤を含有しない架橋剤非含有シート層が介在していることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用封止シート。
【請求項4】
両側の最外シート層は架橋助剤シート層であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の太陽電池用接着シート。
【請求項5】
両側の最外シート層は、有機過酸化物及び架橋助剤を含有しない架橋剤非含有シート層であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の太陽電池用接着シート。
【請求項6】
過酸化物シート層及び架橋助剤シート層の厚みが300μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れ1項に記載の太陽電池用接着シート。
【請求項7】
架橋剤非含有シート層の厚みが50μm以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の太陽電池用封止シート。
【請求項8】
過酸化物シート層を構成している熱可塑性樹脂がポリエチレン系樹脂又はエチレン−プロピレンゴムであることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の太陽電池用接着シート。
【請求項9】
複数機の押出機を同一のダイに接続させてなる多層押出装置を用いて太陽電池用封止シートを製造する太陽電池用封止シートの製造方法であって、少なくとも二機の押出機に熱可塑性樹脂及び架橋助剤を含み且つ有機過酸化物を含まない架橋助剤シート層用の樹脂組成物を供給して溶融混練すると共に、残余の押出機のうちの少なくとも一機の押出機に熱可塑性樹脂及び有機過酸化物を含み且つ架橋助剤を含まない過酸化物シート層用の樹脂組成物を供給して溶融混練して、上記架橋助剤シート層用の樹脂組成物及び上記過酸化物シート層用の樹脂組成物を上記ダイから共押出することによって、上記過酸化物シート層用の樹脂組成物からなる過酸化物シート層と、上記架橋助剤シート層用の樹脂組成物からなる架橋助剤シート層とが積層一体化され且つ両側の最外シート層が上記架橋助剤シート層から形成されてなる太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項10】
三機の押出機を同一のダイに接続させてなる多層押出装置を用いて太陽電池用接着シートを製造する太陽電池用封止シートの製造方法であって、二機の押出機に熱可塑性樹脂及び架橋助剤を含み且つ有機過酸化物を含まない架橋助剤シート層用の樹脂組成物を供給して溶融混練すると共に、残り一機の押出機に熱可塑性樹脂及び有機過酸化物を含み且つ架橋助剤を含まない過酸化物シート層用の樹脂組成物を供給して溶融混練して上記ダイから共押出することによって、上記過酸化物シート層用の樹脂組成物からなる過酸化物シート層の両面に、上記架橋助剤シート層用の樹脂組成物からなる架橋助剤シート層が積層一体化されてなる太陽電池用接着シートを製造することを特徴とする太陽電池用接着シートの製造方法。
【請求項11】
複数機の押出機を同一のダイに接続させてなる多層押出装置を用いて太陽電池用封止シートを製造する太陽電池用封止シートの製造方法であって、少なくとも二機の押出機に熱可塑性樹脂及び架橋助剤を含み且つ有機過酸化物を含まない架橋助剤シート層用の樹脂組成物を供給して溶融混練し、残余の押出機のうちの少なくとも一機の押出機に熱可塑性樹脂及び有機過酸化物を含み且つ架橋助剤を含まない過酸化物シート層用の樹脂組成物を供給して溶融混練し、残余の押出機のうちの少なくとも二機の押出機に熱可塑性樹脂を含み且つ有機過酸化物及び架橋助剤を含まない架橋剤非含有シート層用の樹脂組成物を供給して溶融混練し、上記架橋助剤シート層用の樹脂組成物、上記過酸化物シート層用の樹脂組成物及び上記架橋剤非含有シート層用の樹脂組成物を上記ダイから共押出することによって、上記過酸化物シート層用の樹脂組成物からなる過酸化物シート層と、上記架橋助剤シート層用の樹脂組成物からなる架橋助剤シート層と、上記架橋剤非含有シート層用の樹脂組成物からなる架橋剤非含有シート層とが両側の最外シート層が上記架橋助剤シート層となるように積層一体化され且つ上記過酸化物シート層と上記架橋助剤シート層との間に上記架橋剤非含有シート層が介在してなる太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項12】
複数機の押出機を同一のダイに接続させてなる多層押出装置を用いて太陽電池用封止シートを製造する太陽電池用封止シートの製造方法であって、少なくとも二機の押出機に熱可塑性樹脂及び架橋助剤を含み且つ有機過酸化物を含まない架橋助剤シート層用の樹脂組成物を供給して溶融混練し、残余の押出機のうちの少なくとも一機の押出機に熱可塑性樹脂及び有機過酸化物を含み且つ架橋助剤を含まない過酸化物シート層用の樹脂組成物を供給して溶融混練し、残余の押出機のうちの少なくとも二機の押出機に熱可塑性樹脂を含み且つ有機過酸化物及び架橋助剤を含まない架橋剤非含有シート層用の樹脂組成物を供給して溶融混練し、上記架橋助剤シート層用の樹脂組成物、上記過酸化物シート層用の樹脂組成物及び上記架橋剤非含有シート層用の樹脂組成物を上記ダイから共押出することによって、上記過酸化物シート層用の樹脂組成物からなる過酸化物シート層と、上記架橋助剤シート層用の樹脂組成物からなる架橋助剤シート層と、上記架橋剤非含有シート層用の樹脂組成物からなる架橋剤非含有シート層とが両側の最外シート層が上記架橋剤非含有シート層となるように積層一体化されてなる太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の太陽電池用接着シートによって太陽電池素子が上下方向から封止一体化されており、上側の太陽電池用接着シート上に透明保護材が積層一体化されていると共に、下側の太陽電池用接着シート上に裏面保護材が積層一体化されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項14】
透明基板上に太陽電池セルが薄膜状に形成されていると共に、この太陽電池セル上に請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の太陽電池用接着シートが積層一体化されて、上記透明基板と上記太陽電池用接着シートとによって太陽電池セルが封止されており、上記太陽電池用接着シート上に裏面保護材が積層一体化されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項15】
基板上に太陽電池セルが薄膜状に形成されていると共に、この太陽電池セル上に請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の太陽電池用接着シートが積層一体化されて、上記基板と上記太陽電池用接着シートとによって太陽電池セルが封止されており、上記太陽電池用接着シート上に透明保護材が積層一体化されていることを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−258427(P2010−258427A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74507(P2010−74507)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】