説明

太陽電池用積層体

【課題】太陽電池用シリコンウエハーを薄型化すること。
【解決手段】シリコンウエハー層と保護層とを有する太陽電池用積層体。該保護層は、電極を有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶型または多結晶型の太陽電池は、コストや変換効率の点から、最も普及している太陽電池であるが、さらなるコスト削減等の観点から、シリコンウエハーの薄型化が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる太陽電池用シリコンウエハーを厚さ300μm以下に薄型化すると、運搬時や加工時には破損しやすく、また、熱処理時にはウエハの反りが生じやすく、それらの改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、太陽電池用シリコンウエハーの薄型化について鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
1.シリコンウエハー層と保護層とを有する太陽電池用積層体;
2.シリコンウエハー層の両面または片面に保護層を有する前項1に記載される積層体;
3.シリコンウエハー層の厚さが50μm以上、250μm以下である前項1または2に記載される積層体;および
4.保護層が電極を有している前項1〜3のいずれかに記載される積層体;
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、太陽電池用シリコンウエハーの薄型化が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の積層体の断面図の一例である。
【図2】図2は、結晶Si系太陽電池作製プロセスの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、シリコンウエハー層と保護層とを有する太陽電池用積層体である。
【0009】
シリコンウエハー層の厚さは、通常300μm以下であり、好ましくは50μm以上、250μm以下の範囲である。
【0010】
保護層は、シリコンウエハー層の両面に有していてもよいし、片面のみに有していてもよい。保護層の基材としては特に制限は無く、例えば、ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタアクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、シリコーン等の合成樹脂が用いられ、単体であっても複層体であってもよい。その厚さは、20μm以上、500μm以下の範囲であることが好ましい。フィルム状の基材をシリコンウエハー層に積層することにより保護層を形成してもよいし、液状やゲル状等の流動性の基材をシリコンウエハーの表面に塗布し、固化させて積層することにより保護層を形成してもよい。
【0011】
該保護層は、電極を有していてもよい。電極材料としては特に制限はないが、例えば、一般的に太陽電池用電極材料として使用されているAg、Al、Au、Cuなどを挙げることができる。中でも、裏面電極材としては電気伝導性の観点からAgまたはAlが好ましく、さらにシリコンウエハー内の該電極付近にp+層を形成することによりBSF(Back Surface Field)効果を得るためにAlがより好ましい。表面電極としては電気伝導性の観点からAgがより好ましい。また該保護層内の電極の形状としては特に制限は無いが、太陽光を効率的に吸収させる観点から表面電極は、高アスペクト比(図1中のb/a値が1以上)の形状がより好ましい。
【0012】
フィルム状の保護層をシリコンウエハー層に積層させる際に、粘着剤を用いてもよい。粘着剤には特に制限はなく、例えば、溶液型粘着剤、エマルジョン型粘着剤、ホットメルト型粘着剤等の公知の粘着剤を使用することができる。具体的には、アクリル系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。粘着層の 厚さは、1μm以上、200μm以下の範囲であることが好ましい。
【0013】
次に、本発明の積層体の製造方法について説明する。本発明の積層体は、シリコンインゴットの平面状の表面に保護層を形成する第一工程と、保護層が形成された表面を有するシリコンインゴットから該表面と平行にシリコンウエハー層を切り出す第二工程とを含む方法により製造される。また、かかる製造方法は、さらに、切り出されたシリコンウエハー層のうち保護層を有さない平面状の表面に保護層を形成する第三工程を含んでいてもよい。
【0014】
シリコンインゴットの純度は、切り出されるシリコンウエハー層が太陽電池用として使用可能な範囲であれば、特に限定されない。その平面状の表面とは、シリコンインゴットからシリコンウエハー層または不要部分を切り出して得られる面をいう。保護層は、該表面に粘着剤を塗布し、その上にフィルム状の基材を貼付する方法により形成してもよいし、予め粘着剤が塗布されたフィルム状の基材を、該表面に粘着剤が接するように貼付する方法により形成してもよいし、該表面に液状やゲル状等の流動性の基材を塗布し、固化させる方法により形成してもよい。
【0015】
保護層が形成された表面を有するシリコンインゴットからシリコンウエハー層を切り出す方法としては、例えば、バンドソー(帯ノコギリ)やワイヤーソーを用いる方法等の通常の方法が挙げられる。第一工程で得られる保護層が形成された表面から、所望する太陽電池用シリコンウエハー層の厚さに相当する箇所を切断すればよい。
【0016】
第三工程における保護層の形成は、第一工程と同様に実施すればよい。
【0017】
本発明の太陽電池用積層体は、必要に応じて加熱処理や化学的処理により、保護層や粘着層を除去し、シリコンウエハー層を残すことができる。この際、保護層が電極を有している場合は、電極を有するシリコンウエハー層が形成される。
【0018】
また本発明の太陽電池用積層体は、モジュール工程において他の一般的な封止材と積層させることもできる。
【0019】
本発明の積層体の製造を含む結晶Si系太陽電池作製プロセスの一例を図2に示す。図2において、I.は上記の第一工程に、II.は上記の第二工程に、III.は上記の第三工程に、それぞれ相当する。したがって、II.またはIII.の段階で本発明の積層体が製造される。図2のIV.以降の工程は必要に応じて実施すればよい。例えば、VII.やIX.の工程は、保護層に電極を有している場合にのみ実施すればよい。また、VIII.の工程は、上記の保護層や粘着層を除去するための加熱処理に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明により、太陽電池用シリコンウエハーの薄型化が期待される。
【符号の説明】
【0021】
1.シリコンウエハー層
2.保護層(着色部分は電極を表す)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウエハー層と保護層とを有する太陽電池用積層体。
【請求項2】
シリコンウエハー層の両面または片面に保護層を有する請求項1に記載される積層体。
【請求項3】
シリコンウエハー層の厚さが50μm以上、250μm以下である請求項1または2に記載される積層体。
【請求項4】
保護層が電極を有している請求項1〜3のいずれかに記載される積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−283051(P2010−283051A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133777(P2009−133777)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】