説明

太陽電池用裏面保護シート

【課題】太陽電池セルの温度上昇を抑制する機能を有する太陽電池用裏面保護シートを提供する。
【解決手段】太陽電池セルの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートであって、熱エネルギーを振動エネルギーに変換することによって熱エネルギーを消費する機能を有する熱変換フィラーを含有する熱変換層を有し、前記熱変換層中の前記熱変換フィラーの密度が3〜35g/m2であることを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートに関し、特に太陽電池セルの温度上昇を抑制する機能を有する太陽電池用裏面保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルは主に建築物の屋上に設置されるため、太陽光による直接的な加熱と同時に屋根からも熱が伝わり、太陽電池セルの温度は70℃以上に達することがある。太陽電池セルが結晶シリコン系である場合には、温度上昇により約0.4%/℃の割合で変換効率が低下すると言われている。なお、太陽電池セルの裏面側には一般に太陽電池用裏面保護シートが積層され、これらを合わせて一般に太陽電池モジュールと称されている。
【0003】
太陽電池セルの温度上昇を抑制する方法として幾つかの方法が提案されている。
【0004】
特許文献1は、太陽電池モジュール用放熱膜及びその放熱膜を備えた太陽電池モジュールに関する。具体的には、放熱性を有する塗料の層(放熱膜)を太陽電池セルの裏面に設けることにより、モジュール温度を下げることが記載されている。なお、この塗料の層に耐候性を持たせるためにはオーバーコートや耐候性フィルムが必要であるが、放熱性の妨げにならないような材料を選択することが必要である。
【0005】
特許文献2は、ミスト噴霧システムに関する。具体的には、熱変換塗料を使用したミスト噴霧システムにより太陽電池モジュールにミストを噴霧してモジュール温度を下げることが記載されている。なお、特許文献2における太陽電池用裏面保護シートや太陽電池セル自体には温度上昇を抑制する機能はない。
【0006】
上記熱変換塗料は、熱エネルギーを振動エネルギーに変換することによって熱エネルギーを消費する機能を有する熱変換分子を含有する塗料である。この塗料は、例えば、アルバー工業株式会社から製品名「タフコートD42,D47」等として販売されており、一般に消熱塗料とも呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-12967号公報
【特許文献2】特開2010-78264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、太陽電池セルの温度上昇を抑制する機能を有する太陽電池用裏面保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の熱変換層を有する太陽電池用裏面保護シートを用いる場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記の太陽電池用裏面保護シートに関する。
1.太陽電池セルの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートであって、
熱エネルギーを振動エネルギーに変換することによって熱エネルギーを消費する機能を有する熱変換フィラーを含有する熱変換層を有し、前記熱変換層中の前記熱変換フィラーの密度が3〜35g/m2であることを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。
2.樹脂フィルム基材を有し、前記樹脂フィルム基材の片面又は両面に前記熱変換層が形成されている、上記項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
3.樹脂フィルム基材の片側に前記太陽電池セルの裏面と接着させる熱融着層を有し、他方の側に耐候性フィルムを有し、前記樹脂フィルム基材の片面又は両面に前記熱変換層が形成されている、上記項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
4.前記熱変換層は、前記熱変換フィラーを含有する塗料を塗布・乾燥することにより形成されている、上記項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
5.前記熱融着層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体と熱融着可能な成分を含有する、上記項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
【0011】
以下、本発明の太陽電池用裏面保護シートについて詳細に説明する。
【0012】
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、太陽電池セルの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートであって、
熱エネルギーを振動エネルギーに変換することによって熱エネルギーを消費する機能を有する熱変換フィラーを含有する熱変換層を有し、前記熱変換層中の前記熱変換フィラーの密度が3〜35g/m2であることを特徴とする。
【0013】
上記特徴を有する本発明の太陽電池用裏面保護シートは、熱変換層中の熱変換フィラーが熱エネルギーを振動エネルギーに変換して消費するため、太陽電池セルの温度上昇を抑制することができる。熱エネルギーの反射又は輻射を利用して温度上昇を抑制する塗膜であれば最外層に形成することが望まれるが、本発明で用いる熱変換層であれば最外層でなくとも熱エネルギーを消費できるため、熱変換層を内側の層(表面に露出しない層)として形成することができる。また、最外層に耐候性フィルムを形成する場合には、従来は放熱性の妨げにならない材料を選択する必要があったが、本発明ではかかる制限はなく公知の耐候性フィルムを幅広く使用することができる。
【0014】
太陽電池用裏面保護シートは、一般に樹脂フィルム基材に接着剤層を介して熱融着層(太陽電池セルの裏面と接着するための熱融着層)を積層した層構成が知られている。また、樹脂フィルム基材の他方の側に接着剤層を介して耐候性フィルムを積層したものが知られている。
【0015】
本発明で用いる熱変換層は、熱融着層による太陽電池セルの裏面と太陽電池用裏面保護シートとの接着の妨げにならない位置であれば形成位置は限定されない。例えば、本発明の太陽電池用裏面保護シートは、図1の(a)〜(d)に示す層構成が挙げられる。
【0016】
図1の(a)の層構成は、樹脂フィルム基材1に接着剤層3を介して熱融着層2が積層されており、樹脂フィルム基材1の他方の面に熱変換層4が形成されている。
【0017】
図1の(b)の層構成は、図1の(a)の層構成において、熱変換層4の外側に接着剤層3を介して耐候性フィルム5が形成されている。このように、最外層に耐候性フィルム5を形成することにより、太陽電池用裏面保護シートの耐スクラッチ性を高められる上、熱変換層の損傷を防止又は抑制することができる。
【0018】
図1の(c)の層構成は、図1の(b)の層構成において、樹脂フィルム基材1の片面に形成されていた熱変換層4を樹脂フィルム基材1の両面に形成したものである。熱変換層4を樹脂フィルム基材1の片面にのみ形成する場合には、熱変換層4の形成時に積層体がカールする可能性がある。よって、図1の(c)の層構成のように樹脂フィルム基材1の両面に熱変換層4を形成することによりカールを防止又は抑制することができる。
【0019】
図1の(d)の層構成は、図1の(c)の層構成において、接着剤層3と熱変換層4とを同一層(層6)としたものである。つまり、層6は熱交換層兼接着剤層である。層6は、接着剤層を形成する組成物に、本発明で用いる熱変換フィラーを所定の密度となるように配合し、製膜することにより得られる。
【0020】
なお、上記(a)〜(d)の層構成は例示であり、他の層構成も当然に採用でき、また、樹脂フィルム基材、耐候性フィルム中に熱変換フィラーを配合することにより、これらの層に熱変換層の機能を付与することもできる。
【0021】
以下、樹脂フィルム基材、熱融着層、接着剤層、熱変換層及び耐候性フィルムについて詳細に説明する。
【0022】
樹脂フィルム基材
樹脂フィルム基材としては限定されず、従来の太陽電池用裏面保護シートに用いられている樹脂フィルム基材が広く使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアクリルニトリル、ポリシクロオレフィン、ポリフェニレンエーテル等からなる樹脂フィルム基材が挙げられる。
【0023】
基材としては、アルミニウム箔などの金属箔を使用することにより熱伝導性を向上させ、熱変換効果を増幅することも考えられるが、太陽電池セルと接着する際に太陽電池用裏面保護シートに電極線を取り出すための孔を開ける必要があり、太陽電池用裏面保護シートに金属類が含まれていると絶縁処理が不十分な場合には太陽電池セルが短絡するおそれがあることから、本発明のように樹脂フィルム基材を用いることが好ましい。しかしながら、絶縁処理を十分に行うことができる場合には、必要に応じて、樹脂フィルム基材とともにアルミニウム箔などの金属箔を併用することもできる。
【0024】
樹脂フィルム基材の厚さは限定的ではないが、200〜300μmが好ましく、100〜250μmがより好ましい。樹脂フィルム基材の厚さが薄すぎると太陽電池用裏面保護シートとしての耐電圧が低く、厚すぎると太陽電池用裏面保護シートとしての重量が増大し、太陽電池セルの裏面に接着した場合に、長期の使用に伴って太陽電池セルから剥がれる可能性があるためである。
【0025】
熱融着層
熱融着層は、太陽電池用裏面保護シートの表面層(太陽電池セル側)であり、太陽電池セルの封止材(太陽電池セルの最下層に配置され、一般にエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含有する。)と接着させる層である。熱融着層は、上記封止材と接着できる材料であれば限定されないが、EVAと熱融着可能な成分を含有することが好ましい。また、EVAとの密着性を考慮して、熱融着層のマトリックスとしては0.910〜0.940g/cm3の直鎖低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0026】
熱融着層は、紫外線の影響による黄変を防止する点で無機系の紫外線吸収剤を含有することが好ましい。無機系の紫外線吸収剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、シリカ、酸化鉄、カーボン等が挙げられるが、この中でも酸化チタン又はカーボンが好ましい。
【0027】
紫外線吸収剤の平均粒子径としては、0.1〜5μmが好ましい。平均粒子径が5μmを超えると分散性が悪くなり、均一な紫外線吸収効果が得られなくなるおそれがある。また、平均粒子径が0.1μm未満になるとコストの点で不利である。
【0028】
紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収効果が十分に得られ、且つ、封止剤であるEVAとの良好な密着性を維持する点で0.1〜30質量%が好ましい。含有量が0.1質量%未満であると、紫外線吸収効果が十分でなく紫外線の影響により黄変のおそれがある。また、含有量が30質量%を超えるとEVAとの密着性が低下するおそれがある。
【0029】
熱融着層の紫外線透過率は、20%以下が好ましい。紫外線透過率が20%を超えると、紫外線吸収効果が十分でなく黄変のおそれがある。なお、紫外線透過率の下限値は特に限定されないが、通常は1%程度である。
【0030】
熱融着層の厚さは限定的ではないが、上記紫外線吸収剤を十分に含有させる観点で5〜200μmが好ましく、30〜180μmがより好ましい。厚さが5μm未満であると、紫外線吸収剤を十分に含有させることができないおそれがある。
【0031】
接着剤層
太陽電池用裏面保護シートの各層を接着するための接着剤層は限定されない。例えば、ウレタン系の接着剤を用いてドライラミネーション法により接着することが好ましい。
【0032】
ウレタン系の接着剤としては、2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、ポリエステルポリウレタンポリオール系接着剤等があるが、この中でも特に2液硬化型ウレタン系接着剤が好ましい。接着剤の種類及び厚さは、接着させる各層の種類に応じて適宜設定することができる。
【0033】
熱変換層
熱変換層は、熱エネルギーを振動エネルギーに変換することによって熱エネルギーを消費する機能を有する熱変換フィラー(熱変換分子)を含有する。太陽光線等に含まれる赤外線は、熱変換層に伝播すると熱エネルギーに変換されて熱変換層中に分散・移動するが、熱変換層中の熱変換フィラーに接触することにより直ちに振動エネルギー変換され、このエネルギー変換が熱変換フィラーの表層で生じるために殆どの熱エネルギーはすみやかに消費される。そのため、熱変換層中に熱エネルギーが蓄積されることなく消費される。また、本発明では熱変換層を形成することにより、太陽電池用裏面保護シートの耐電圧性も向上させることができる。
【0034】
本発明では、熱変換層中の熱変換フィラーの密度(含有密度)は3〜35g/m2であればよく、10〜35g/m2であれば好ましい。熱変換フィラーの密度は、3 g/m2未満であると熱変換効率が不十分になるおそれがある。また、35 g/m2を超えて配合しても配合に見合った熱変換効率の向上は得られない。よって、本発明では3〜35g/m2の密度を採用している。
【0035】
熱変換層は、上記熱変換フィラーを含有する塗料を塗布・乾燥することにより形成されることが好ましい。上記塗料は、いわゆる熱変換塗料(消熱塗料)と称され、例えば、アルバー工業株式会社から製品名「タフコートD42,D47」等として販売されている。この「タフコートD42,D47」は、アクリルポリオールを主剤とし、イソシアネートを硬化剤として含有する熱変換塗料である。
【0036】
熱変換層は、熱伝導効率を高めるために熱伝導フィラーを添加してもよい。熱伝導フィラーとしては、例えば、アルミニウム粉、窒化アルミ、窒化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの熱伝導フィラーは、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0037】
熱変換層の厚さは限定的ではないが、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましく、50〜100μmが最も好ましい。厚さが10μm未満であると熱変換効率が乏しく、200μmを超えると膜厚化に見合った熱変換効率の向上は得られない。なお、熱変換層は、前記の通り、樹脂フィルム基材の片面又は両面に設けてもよく、両面に設ける場合には、合計厚さが上記範囲となるように2層に分けて形成することが好ましい。
【0038】
なお、熱変換層と接着剤層を兼ねる場合には、前記接着剤層を形成する組成物中に上記熱変換フィラーを所定密度となるように配合し、熱交換層兼接着剤層とすればよい。
【0039】
耐候性フィルム
耐候性フィルムとしては限定されず、従来の太陽電池用裏面保護シートに用いられている耐候性フィルムが広く使用できる。耐候性及び電気絶縁性を有するフィルムとしては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などのフッ素系フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム;その他、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。上記PETとしては、屋外での耐久性も考慮して耐加水分解性PETを好適に使用できる。
【0040】
その他、エンジニアリングプラスチック及びフッ素系樹脂も挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、液晶ポリマー(LCP)等が挙げられる。
【0041】
耐候性フィルムは単層でも複層(積層フィルム)でもよい。単層の場合には、厚みが20〜250μmであることが好ましい。複層の場合には、耐候性に優れるフィルムと電気絶縁性に優れるフィルムとの積層体であることが好ましい。この場合には、電気絶縁性に優れるフィルムを樹脂フィルム基材側に配置し、耐候性に優れるフィルムを最外層とすることが好ましい。耐候性に優れるフィルムとしては、厚みが20〜150μmのフッ素系フィルムが好ましく、電気絶縁性に優れるフィルムとしては、厚みが100〜250μmのPETフィルムが好ましい。
【発明の効果】
【0042】
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、熱変換層中の熱変換フィラーが熱エネルギーを振動エネルギーに変換して消費するため、太陽電池セルの温度上昇を抑制することができる。熱エネルギーの反射又は輻射を利用して温度上昇を抑制する塗膜であれば最外層に形成することが望まれるが、本発明で用いる熱変換層であれば最外層でなくとも熱エネルギーを消費できるため、熱変換層を内側の層(表面に露出しない層)として形成することができる。また、最外層に耐候性フィルムを形成する場合には、従来は放熱性の妨げにならない材料を選択する必要があったが、本発明ではかかる制限はなく公知の耐候性フィルムを幅広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の太陽電池用裏面保護シートの層構成を例示した図である。
【図2】(A):実施例1及び比較例1、(B)実施例2及び比較例2、(C)実施例3及び比較例3、(D)実施例4〜6及び比較例4〜6で作製した太陽電池用裏面保護シートの層構成を示す図である。
【図3】試験例1で用いる擬似モジュールを示す図である。
【図4】試験例1で用いる加熱装置を示す図である。
【図5】熱変換フィラーの密度(g/m2)と温度降下率(%)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0045】
実施例1
ポリエステルフィルム(帝人製、125μm)の片面に熱変換塗料D-47(アルバー工業株式会社製)を100μm塗工した。熱変換フィラーの含有密度は12g/m2であった。また、熱変換塗料を塗工していない面に、EVA封止材と接着する熱融着層として、直鎖低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ製、50μm)を、ドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法で接着した。ドライラミネート用接着剤としては三井化学株式会社製、製品名タケラックA315(100重量部)と製品名タケネートA50(10重量部)を混合したポリウレタン系接着剤を、固形分の塗布量が5g/m2となるように調整し、太陽電池用裏面保護シートを作製した。
【0046】
実施例2
ポリエステルフィルム(帝人製、125μm)の両面に熱変換塗料D-47(アルバー工業株式会社製)を50μmずつ塗工した。熱変換フィラーの含有密度は12g/m2であった。これに耐候性付与層としてPVFフィルム(デュポン製テドラー、38μm)と、EVA封止材と接着する熱融着層として、直鎖低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ製、50μm)を各々の面にドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法で接着した。ドライラミネート用接着剤としては三井化学株式会社製、製品名タケラックA315(100重量部)と製品名タケネートA50(10重量部)を混合したポリウレタン系接着剤を、固形分の塗布量が5g/m2となるように調整し、太陽電池用裏面保護シートを作製した。
【0047】
実施例3
ポリエステルフィルム(帝人製、125μm)の片面に熱変換塗料D-47(アルバー工業株式会社製)を100μm塗工した。熱変換フィラーの含有密度は12g/m2であった。これの熱変換塗料を塗工していない面に、耐候性付与層としてPVFフィルム(デュポン製テドラー、38μm)を設け、熱変換塗料面側にEVA封止材と接着する熱融着層として、直鎖低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ製、50μm)を各々の面にドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法で接着した。ドライラミネート用接着剤としては三井化学株式会社製、製品名タケラックA315(100重量部)と製品名タケネートA50(10重量部)を混合したポリウレタン系接着剤を、固形分の塗布量が5g/m2となるように調整し、太陽電池用裏面保護シートを作製した。
【0048】
実施例4〜6
実施例3の熱変換塗料層厚みを10μm、200μm、300μmとして、その他は同様に作製した。
【0049】
比較例1〜6
実施例1〜6において、熱変換塗料層を設けず、その他同様に作製した。
【0050】
試験例1(加熱試験)
図2に示すようにガラス/EVA/熱電対/EVA/試料の順に積層させ、真空ラミネーター(NPC製)で擬似モジュールを作製した。試料として、実施例1〜6及び比較例1〜6で作製した太陽電池用裏面保護シートをそれぞれ使用した。
【0051】
図3に示すようにホットプレート上にガラス面を下向きに設置させ、熱電対の実体温度を測定し温度差が最大となる時点での最大温度差を調べた。
【0052】
試験結果を下記表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果から明らかなように、熱変換層を形成した実施例1〜6の太陽電池用裏面保護シートは熱変換層を形成しない比較例1〜6と比較して熱電対の実体温度が低く抑えられており、太陽電池セルの温度上昇を抑制できることが分かる。
【0055】
試験例2
鋼板に熱変換フィラーを含有する熱変換塗料を塗布・乾燥し、その表面を白熱灯で加熱した際における、熱変換フィラーの含有密度と温度低下率との関係を調べた。
【0056】
結果を図5に示す。図5の結果から明らかなように、熱変換フィラーの含有密度が3〜35g/m2である場合に良好な温度低下率が得られている。
【符号の説明】
【0057】
1.樹脂フィルム基材
2.熱融着層
3.接着剤層
4.熱変換層
5.耐候性フィルム
6.熱交換層兼接着剤層
7.ガラス
8.EVA
9.熱電対
10.EVA
11.試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルの裏面側に配置される太陽電池用裏面保護シートであって、
熱エネルギーを振動エネルギーに変換することによって熱エネルギーを消費する機能を有する熱変換フィラーを含有する熱変換層を有し、前記熱変換層中の前記熱変換フィラーの密度が3〜35g/m2であることを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。
【請求項2】
樹脂フィルム基材を有し、前記樹脂フィルム基材の片面又は両面に前記熱変換層が形成されている、請求項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項3】
樹脂フィルム基材の片側に前記太陽電池セルの裏面と接着させる熱融着層を有し、他方の側に耐候性フィルムを有し、前記樹脂フィルム基材の片面又は両面に前記熱変換層が形成されている、請求項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項4】
前記熱変換層は、前記熱変換フィラーを含有する塗料を塗布・乾燥することにより形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項5】
前記熱融着層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体と熱融着可能な成分を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用裏面保護シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−8776(P2013−8776A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139237(P2011−139237)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】