説明

太陽電池電極用ペーストおよび太陽電池電極用ガラスフリット

【課題】ガラスフリットを構成する低融点ガラスのシリコン基板の表面に対する濡れ性を改善し、太陽電池の特性向上に寄与しうる太陽電池電極用ペーストを提供する。
【解決手段】ガラスフリットとアルミニウム金属微粒子と有機ビヒクルとを含み、ガラスフリットが、モル%で表示して、実質的に以下の成分からなる、太陽電池電極用ペーストとする。P25:42〜52%、T−SnO:48〜58%、T−FeO:0〜1.8%。ここで、T−SnOおよびT−FeOは、当該ガラス組成物に含まれる全ての錫または鉄の酸化物をSnOまたはFeOに換算して算出される全酸化錫量または全酸化鉄量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の電極を形成するためのペーストに関し、さらにこのペーストに配合して使用されるガラスフリットに関する。本発明は、特に、結晶系シリコン太陽電池の裏面電極を形成するためのペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
結晶系シリコンを光電変換材料として用いる太陽電池の製造工程では、通常、シリコン基板上に電極用ペーストを塗布し、このペーストを焼成して裏面電極を形成するプロセスが実施される。シリコン基板としては、一般に、p型シリコン基板が用いられる。電極用ペーストは、通常、金属微粒子、ガラスフリットおよび有機ビヒクルを含んでいる。金属微粒子は電極に導電性を与え、ガラスフリットは金属微粒子とシリコン基板との結合を促進させる無機バインダーとしての役割を果たし、有機ビヒクルはペーストに流動性を与える。
【0003】
金属微粒子としてはアルミニウム金属微粒子が適している。アルミニウム金属微粒子を含む電極用ペーストを用いると、ペーストの焼成によりシリコン基板と裏面電極との間にシリコン−アルミニウム合金層が形成され、この合金層の下には、アルミニウムが拡散したp+層が形成される。p+層とp型シリコン基板とのドーパントの濃度差により、これらの界面に電位障壁として作用する電位差が生じ、キャリアの再結合が抑制される。この効果は、BSF(Back Surface Field)効果と呼ばれ、キャリア収集の効率を向上させる。
【0004】
有機ビヒクルとしては、例えば、エチルセルロース、アクリル樹脂、アルキッド樹脂等をグリコールエーテル系、ターピネオール系等の溶剤に溶解したものが用いられる。
【0005】
ガラスフリットは、融点が低いガラス組成物(低融点ガラス)により構成される。周知のとおり、環境上の問題から鉛を含まない低融点ガラスが求められており、種々の低融点ガラスが開発されている。太陽電池の電極形成用のガラスフリットとしては、ビスマス系の低融点ガラスが広く使用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-93079号公報(段落0022,0045)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまで着目されていなかったことであるが、ガラスフリットとして用いる低融点ガラスの特性としては、シリコン基板の表面に対する濡れ性が極めて重要である。シリコン基板の表面上に形成される裏面電極の厚さを均一化するためには、シリコン−アルミニウム合金層の厚さが均一であることが望ましい。また、シリコン基板の反りを抑制するためにも、シリコン−アルミニウム合金層の厚さは均一であることが望ましい。そして、シリコン−アルミニウム合金層の厚さを均一化するためには、ペーストの焼成時にガラスフリットがシリコン基板の表面を十分に濡らすことが望まれる。
【0008】
すなわち、ペーストの焼成時に、ガラスフリットは、溶融した状態でシリコン基板の表面上を広がりつつシリコンとアルミニウムとの反応を促進する。溶融したガラスフリットの広がりが制限されると、シリコンとアルミニウムとの反応が均一に進行しないことになり、シリコン−アルミニウム合金層の均一性が損なわれる。しかし、従来からガラスフリットを構成する低融点ガラスとして用いられてきたビスマス系の低融点ガラスは、シリコン基板の表面における濡れ性の観点から選択されたものではなく、本発明者が評価したところによると、その濡れ性は十分なものではなかった。
【0009】
本発明は、ガラスフリットを構成する低融点ガラスのシリコン基板の表面に対する濡れ性を改善し、太陽電池の特性向上に寄与しうる太陽電池電極用ペーストを提供することを目的とする。本発明の別の目的は、太陽電池の電極の形成に使用するためのガラスフリットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ガラスフリットと、アルミニウム金属微粒子と、有機ビヒクルとを含み、ガラスフリットが、モル%で表示して、実質的に以下の成分からなる、太陽電池電極用ペーストを提供する。
25:42〜52%、
T−SnO:48〜58%、
T−FeO:0〜1.8%
【0011】
本明細書において、「T−SnO」は、当該ガラス組成物に含まれる全ての錫の酸化物をSnOに換算して算出される全酸化錫量である。また、「T−FeO」は、当該ガラス組成物に含まれる全ての鉄の酸化物をFeOに換算して算出される全酸化鉄量である。
【0012】
また、「実質的に以下の成分からなる」との文言は、本発明の目的の達成を阻害しない範囲においてその他成分の存在を許容する趣旨であり、具体的には、上記に示した金属酸化物(P25、錫酸化物および鉄酸化物)以外の成分をその合計量が0.5モル%未満、好ましくは0.1モル%未満、より好ましくは0.05モル%未満となる範囲で含んでいてもよいことを示す。
【0013】
本発明は、その別の側面から、モル%で表示して、実質的に以下の成分からなる、太陽電池電極用ガラスフリットを提供する。
25:42〜52%、
T−SnO:48〜58%、
T−FeO:0〜1.8%
【発明の効果】
【0014】
本発明によるガラスフリットは、シリコン基板の表面に対する濡れ性に優れた特性を有する。このため、このガラスフリットを含む太陽電池電極用ペーストは、シリコン基板の表面における均一な厚さのシリコン−アルミニウム合金層の形成に適している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例の欄で作製したガラス試料のP25含有率と対Si濡れ面積との関係を示す図
【図2】実施例の欄で作製したガラス試料のT−FeO含有率と対Si濡れ面積との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
[ガラス組成物(低融点ガラス)]
以下において、ガラス組成物の成分を示す%は、すべてモル%である。
【0017】
本発明によるガラスフリットは実質的に以下の成分からなるガラス組成物により構成される。括弧内の数値は、左から順に、各成分の好ましい含有率、より好ましい含有率、特に好ましい含有率である。
25:42〜52%、(42.5〜50%、43〜47%、43〜45%)
T−SnO:48〜58%、(50〜57.5%、53〜57%、55〜57%)
T−FeO:0〜1.8%、(0〜1.5%、0〜1%、0〜0.7%)
【0018】
25は、網目形成酸化物であり、低融点ガラスにおいてその骨格を形成する。P25が少なすぎるとガラス化が困難となり、多すぎると耐水性が低下する。網目形成酸化物としてのP25は、比重が高すぎない低融点ガラスの実現に適している。P25を網目形成酸化物とする低融点ガラスは、ビスマス系ガラスよりも比重が小さく、太陽電池軽量化の要請に応えることが容易である。
【0019】
錫酸化物(T−SnO)は、ガラスの融点を低下させると共に、ガラスの耐水性を高める成分である。T−SnOが少なすぎるとガラスの耐水性が低下し、多すぎるとガラス化が困難となる。
【0020】
錫酸化物は、通常、SnOおよびSnO2としてガラス中に存在することが知られている。4価の錫(Sn4+)の存在はガラスを容易に失透させる要因となり得る。したがって、ガラスに存在する錫酸化物に占めるSnOの比率(SnO比)は高いことが好ましい。
【0021】
鉄酸化物(T−FeO)の添加は、ガラスの耐水性の向上に効果がある。しかし、T−FeOが多くなるにつれて、シリコン基板の表面に対する低融点ガラスの濡れ性は低下する。
【0022】
鉄酸化物は、通常、FeOおよびFe23としてガラス中に存在することが知られている。鉄酸化物、特にFeOは、ガラスの赤外線吸収率の向上に効果がある。太陽電池の量産工程では電極用ペーストの焼成に赤外線ヒータが使用されることが多い。したがって、赤外線吸収性の向上のため、ガラス中には、微量のT−FeO、例えば0.01%以上、特に0.1%以上のT−FeOが存在することが好ましい。また、ガラスに存在する鉄酸化物に占めるFeOの比率(FeO比)は高いことが好ましい。
【0023】
なお、Fe23は、ガラス融液中でSnOとともに存在すると、以下の化学反応を通じ、SnOをSnO2へと酸化するとともに、FeOへと還元される。
Fe23+SnO→2FeO+SnO2
【0024】
したがって、ガラス融液中においてFeOの一部がFe23へと酸化されたとしても、その融液中に十分な量のSnOが存在すれば、上記の化学反応が進行し、FeO比は高く保たれる。本発明者が別途検討したところによると、後述する実施例のように、ガラス原料に錫酸化物および鉄酸化物としてそれぞれSnOおよびFeOを配合するとともに、得られるガラスにおけるFeOに対するSnOの比率をモル比SnO/FeOが3以上となる程度に高めておくと(本発明で規定された組成範囲内ではモル比SnO/FeOが常に3を大きく上回る)、得られるガラスのSnO比は70%以上に、FeO比は80%以上、例えば80〜90%程度に保たれる。
【0025】
なお、本明細書では、上述のSnO比およびFeO比もモル基準で算出した値を採用する。すなわち、「SnO比」は、T−SnOに対するSnOのモル基準で示した比率であり、「FeO比」は、T−FeOに対するFeOのモル基準で示した比率である。
【0026】
本発明によるガラスフリットは、実質的に、P25、T−SnO(実際にはSnOおよびSnO2としてガラス中に存在する)およびT−FeO(実際にはFeOおよびFe23としてガラス中に存在する)からなる組成を有するが、上記で説明したように、その他の各成分を合計量で0.5%未満の範囲で含んでいても構わない。ただし、その他成分の合計量は、0.1%未満、さらには0.05%未満に抑えることが好ましい。言い換えれば、本発明によるガラスフリットを構成するガラス組成物において、P25、T−SnOおよびT−FeOの含有率の合計は99.5%以上であり、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.95%以上である。
【0027】
ガラスフリットを構成するガラス組成物が含んでいてもよいその他の成分としては、B23、Al23、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Y23、La23、SiO2、GeO2、TiO2、ZrO2を例示できる。以上の各成分は、ごく微量の添加であれば差し支えないものの、以下の理由により過剰な量の添加は避けるべきである。B23、Al23は、ガラスの軟化点を大幅に上昇させ、ガラスを失透させやすくする成分である。MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOは、ガラスの軟化点を大幅に上昇させる成分である。Y23、La23、SiO2、GeO2、TiO2、ZrO2は、ガラスを失透させやすくする成分である。
【0028】
ガラスフリットを構成するガラス組成物は、P25と、SnOまたはSnO2として存在する錫酸化物と、FeOまたはFe23として存在する鉄酸化物と、上記に列記したその他成分(B23〜ZrO2)から選ばれる少なくとも1種の成分と、からなる組成を有していてもよく、後述する実施例におけるように、P25と、SnOまたはSnO2として存在する錫酸化物と、FeOまたはFe23として存在する鉄酸化物とからなる組成を有していてもよい。上記に列記した成分(B23〜ZrO2)とは異なり、微量であってもその混入が望ましくない成分としては、Cr、Mn、Ni、Coの酸化物が挙げられる。ガラスフリットを構成するガラス組成物は、これら混入が望ましくない成分を含まないことが好ましい。
【0029】
ガラスフリットは、従来から公知のガラスの製造方法を適用することにより得ることができる。すなわち、各成分の原料を所定比率で混合して原料バッチを調製し、その原料バッチを熔融し、ガラス融液を冷却してガラスを得る、いわゆる熔融法を適用すれば製造できる。ガラス融液をガラスフリットへと成形する方法としては、回転する一対のロールの間に形成した隙間にガラス融液を供給することにより、ガラス融液をフリット状に成形する、ロールプレス法を例示できる。
【0030】
本発明によるガラスフリットは3〜4g/cm3の密度を有し得る。この程度の低い密度(比重)を有する低融点ガラスは、比重が6.5〜7.5程度であるBi23−B23−ZnO系ガラスと比較して、アルミニウム金属微粒子(比重2.7)と均一に混合するべきガラスフリットを構成するガラス組成物として遥かに適している。
【0031】
軟化点は組成に基づいて定まる特性である。本発明によるガラスフリットを構成するガラス組成物は、その過半がP25および錫酸化物(T−SnO)から構成されているため、その軟化点が450℃を上回ることはない。軟化点が低いガラス組成物により構成されたガラスフリットの使用は、シリコン基板の反りの抑制に効果がある。ガラス組成物の軟化点は、425℃以下、特に400℃以下が好ましい。
【0032】
本発明によるガラスフリットは、シリコン基板の表面に対する濡れ性(対Si濡れ性)に優れている。P25−SnO系の低融点ガラスであっても、成分比が適切に調整されていなければ良好な対Si濡れ性が得られないことには留意する必要がある。対Si濡れ性が成分含有率に極めて敏感な特性であることは、図1および図2から読み取ることができる。本発明によるガラスフリットは、対Si濡れ性が向上するようにその組成が調整されている。その結果、後述する試験法により測定するシリコン基板に対する濡れ面積(対Si濡れ面積)は、8mm2以上、好ましくは10mm2以上、より好ましくは12mm2以上にまで改善されたものとなる。これに対し、ビスマス系ガラスの対Si濡れ面積は、7mm2を下回り、同程度の軟化点を有するP25−SnO系の低融点ガラスよりも対Si濡れ面積が小さいことが確認された(後述する参照例)。
【0033】
ガラスフリットの対Si濡れ性の改善は、裏面電極を形成する際に生じ得る問題の解決に寄与するものである。電極用ペーストをシリコン基板の表面に塗布し、焼成する工程において、ガラスフリットは、シリコン−アルミニウム合金層の形成を補助する役割を担う。ガラスフリットは、焼成工程において、アルミニウム金属微粒子よりも先に(言い換えればより低い温度で)軟化して流動状態に至り、シリコン基板の表面を広がって、シリコンとアルミニウムとの接点に達する。そして、1)シリコンとアルミニウムとの接触を阻害するシリコン表面およびアルミニウム表面の自然酸化膜の除去、2)溶融したアルミニウムの表面張力を低下させることによるシリコン基板に対するアルミニウムの濡れ性の改善、3)自然酸化膜除去後のシリコンおよびアルミニウムの表面を被覆することによるシリコンおよびアルミニウムの再酸化の防止、を通じ、シリコン−アルミニウム合金層の形成を促進する。したがって、ガラスフリットの対Si濡れ性が良好であるほど、シリコン基板の表面のより多くのシリコン−アルミニウム接点において合金化が促進されることになり、その結果、シリコン−アルミニウム合金層が均一に形成されることになる。
【0034】
シリコン−アルミニウム合金層の厚さが均一化すると、その上に形成される裏面電極の厚さも均一化することになる。裏面電極の均一性が向上すれば、太陽電池が本来有する光電変換特性を損なうことなく外部に引き出すことができる。また、この合金層の厚さの均一化は、薄型化が図られているシリコン基板の反りの抑制にも寄与する。すなわち、シリコン−アルミニウム合金の熱膨張係数はシリコンの熱膨張係数とアルミニウムの熱膨張係数との間の値となるため、シリコン−アルミニウム合金層は、本来的には、シリコン基板と裏面電極との間に発生する熱応力を緩和する作用を奏し得るものであるが、その厚さにムラがあると熱応力の集中を緩和できない。シリコン−アルミニウム合金層は、その厚さが均一に形成された場合には、シリコン基板の反りの解消に役立つものとなる。
【0035】
[電極用ペースト]
本発明による電極用ペーストは、上記で説明した低融点ガラスからなるガラスフリットとともに、少なくともアルミニウム金属微粒子および有機ビヒクルを含んでいる。この電極用ペーストは、必要に応じて、有機ビヒクルに不溶または難溶性のウィスカーをさらに含んでいてもよい。
【0036】
アルミニウム金属微粒子、有機ビヒクルその他の成分は、従来から用いられてきたものを特に制限なく、本発明に適用することが可能である。有機ビヒクルとしては、例えば、エチルセルロース、アクリル樹脂、アルキッド樹脂等をグリコールエステル系、ターピネオール系等の溶剤に溶解したものを用いることができる。ただし、これらの成分はあくまでも例示であり、有機ビヒクルを構成する成分が上記に限定されるわけではない。
【0037】
電極用ペーストにおける好ましい成分比は、重量比により表示して、アルミニウム金属微粒子:ガラスフリット:有機ビヒクル=1:0.01〜0.10:0.01〜0.30である。このような成分比となるように公知の撹拌方法を用いて各成分を混合することによって、電極用ペーストが調製される。
【実施例】
【0038】
25、SnOおよびFeOの各特級試薬を原料として用い、これらを表1および表2に示す組成を有するガラスが得られるように混合して原料バッチを得た。原料バッチは最終的に得られたガラスが15gとなるように調製した。次いで、原料バッチをアルミナるつぼに投入し、電気炉内において、1000℃で1時間熔融した。電気炉内は大気雰囲気とした。その後、アルミナるつぼを電気炉内から取り出し、アルミナるつぼ内のガラス融液をるつぼ内に保持した状態で、四方を断熱材で囲んだ箱内において放冷することにより、ガラス試料を作製した。また、表1に示されているBi23−B23−ZnO系ガラスを、成分を構成する各酸化物または炭酸塩を原料として、上記と同様にして作製した。このビスマス系低融点ガラスの組成は、特開2009−62263号公報の実施例1に開示されている組成を参照して定めた(後述する表の欄外にモル換算した組成を示す)。なお、特開2009−62263号公報に開示されているビスマス系低融点ガラスは、太陽電池の電極形成ではなくセラミックパッケージ等の封着に用いるためのものであるが、その軟化点などから見て、シリコン基板上における高い濡れ性が期待できるため、この公報中に開示されている組成を参照例とすることとした。
【0039】
得られた各ガラス試料について、ガラス化の状態、軟化点、対Si濡れ性(対Si濡れ面積)を測定した。
【0040】
ガラス化の状態は、目視により観察して全体として結晶化しているものを×、目視により観察してガラス化しているものを○として評価した。
【0041】
軟化点は、大気雰囲気中、昇温速度10℃/分でDTA(示査熱分析)を実施し、得られた曲線の第2吸熱部の裾の温度から測定した。
【0042】
対Si濡れ面積は、0.0220g±0.0002gのガラス粒をシリコン板上に置いた状態で、500℃で30分間保持し、冷却後、ガラス粒に覆われたシリコン板の面積を測定することにより求めた。
【0043】
以上の結果を表1および表2にまとめて示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表1に示したP25含有率と対Si濡れ面積との関係を図1として、表2に示したT−FeO含有率と対Si濡れ面積との関係を図2としてそれぞれ示す。
【0047】
例えば比較例3,4と参照例とを対比すると、対Si濡れ面積が軟化点のみによって定まる特性ではなく、ビスマス系ガラスと比較してP25−SnO系ガラスが対Si濡れ性において優れていることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、シリコン基板に対する濡れ性に優れたガラスフリットを含み、シリコン基板の表面に厚さの均一性に優れたシリコン−アルミニウム合金層を形成することに適した太陽電池電極形成用ペーストを提供するものとして、高い利用価値を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフリットと、アルミニウム金属微粒子と、有機ビヒクルとを含み、
前記ガラスフリットが、モル%で表示して、実質的に以下の成分からなる、
太陽電池電極用ペースト。
25:42〜52%
T−SnO:48〜58%
T−FeO:0〜1.8%
ただし、T−SnOは、ガラス組成物に含まれる全ての錫の酸化物をSnOに換算して算出される全酸化錫量であり、T−FeOは、ガラス組成物に含まれる全ての鉄の酸化物をFeOに換算して算出される全酸化鉄量である。
【請求項2】
前記ガラスフリットが、モル%で表示して、実質的に以下の成分からなる、
請求項1に記載の太陽電池電極用ペースト。
25:42.5〜50%
T−SnO:50〜57.5%
T−FeO:0〜1.5%
【請求項3】
前記ガラスフリットが、モル%で表示して、0.01%以上のT−FeOを含む、
請求項1または2に記載の太陽電池電極用ペースト。
【請求項4】
モル%で表示して、実質的に以下の成分からなる、太陽電池電極用ガラスフリット。
25:42〜52%、
T−SnO:48〜58%、
T−FeO:0〜1.8%
ただし、T−SnOは、ガラス組成物に含まれる全ての錫の酸化物をSnOに換算して算出される全酸化錫量であり、T−FeOは、ガラス組成物に含まれる全ての鉄の酸化物をFeOに換算して算出される全酸化鉄量である。
【請求項5】
モル%で表示して、実質的に以下の成分からなる、
請求項4に記載の太陽電池電極用ガラスフリット。
25:42.5〜50%
T−SnO:50〜57.5%
T−FeO:0〜1.5%
【請求項6】
モル%で表示して、0.01%以上のT−FeOを含む、
請求項4または5に記載の太陽電池電極用ガラスフリット。

【図1】
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【図2】
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