説明

夾雑物回収装置

【課題】流体管内から効率的に夾雑物の回収を行うことができる夾雑物回収装置を提供すること。
【解決手段】流体管1内に滞留している夾雑物を流体管1内から回収する夾雑物回収装置であって、流体管1内を管軸方向に向けて移動することで流体管1の底部に塊状を成して滞留している夾雑物を分散させる分散手段と、分散手段により分散された夾雑物を流体管1内から回収する回収手段13と、を備え、流体管1の底部で塊状を成して滞留している夾雑物を分散手段によって流体管1の底部から分散させることで、これら分散した夾雑物を回収手段13によって回収し易い大きさとし、効率的に夾雑物を流体管1内から回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管内に滞留している夾雑物を流体管内から回収する夾雑物回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非磁性体からなる中心軸に複数のリング状の永久磁石(回収手段)を外嵌させた吸着体を、分岐孔が穿設された本管(流体管)内に案内し、永久磁石を本管の管軸方向に移動させることで分岐孔を穿設した際に本管の内底面に落下した金属粉(夾雑物)を永久磁石によって吸着して回収する金属切粉除去装置(夾雑物回収装置)がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3125852号公報(第4頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の夾雑物回収装置にあっては、本管(流体管)の底部に金属粉(夾雑物)が塊状を成して滞留していると、永久磁石(回収手段)を本管内において本管の管軸方向に移動させることで、永久磁石の一部である前端箇所のみに金属粉(夾雑物)が集中して吸着されてしまうため、金属粉を全量吸着できないばかりか、既に永久磁石に吸着された金属粉を介して弱い磁力で吸着された金属粉が本管内に脱落してしまい、効率的に金属粉の回収ができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、流体管内から効率的に夾雑物の回収を行うことができる夾雑物回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の夾雑物回収装置は、
流体管内に滞留している夾雑物を流体管内から回収する夾雑物回収装置であって、
流体管内を管軸方向に向けて移動することで流体管の底部に塊状を成して滞留している夾雑物を分散させる分散手段と、該分散手段により分散された夾雑物を流体管内から回収する回収手段と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、流体管の底部で塊状を成して滞留している夾雑物を分散手段によって流体管の底部から分散させることで、これら分散した夾雑物を回収手段によって回収し易い大きさとし、効率的に夾雑物を流体管内から回収することができる。
【0007】
本発明の夾雑物回収装置は、
前記分散手段は、該分散手段が流体管の管軸方向に移動することで流体管の内周面に当接して回動するローラと、該ローラの回動力により塊状を成す夾雑物を分散させる分散体と、から構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、分散手段が流体管の管軸方向に移動するときのローラの回動力により分散体を作動させることで、塊状を成す夾雑物を分散させ、再び夾雑物が底部に滞留しないよう、確実に分散した夾雑物を回収手段により回収することができる。
【0008】
本発明の夾雑物回収装置は、
前記分散体は、前記ローラの回動力により前記分散体の移動方向を向く軸回りに自転しながら流体管の内周面を流体管の周方向に向けて揺動することを特徴としている。
この特徴によれば、分散体は、流体管の管軸方向に移動しながら流体管の底部における周方向の広範囲に亘って塊状の夾雑物を分散させることができるので、より効率的かつ広範囲にわたり回収手段によって夾雑物を回収することができる。
【0009】
本発明の夾雑物回収装置は、
前記分散体は、流体管の前記内周面に当接するとともに、前記分散手段の移動方向に沿って螺旋状に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、螺旋状に形成された分散体を流体管の管軸方向に向けて移動させることで、塊状を成す夾雑物を流体管の管軸方向かつ周方向に分散させて回収しやすくすることができる。
【0010】
本発明の夾雑物回収装置は、
前記分散体は、前記回収手段の外方側に配置された複数条のリブであることを特徴としている。
この特徴によれば、流体管の管軸方向に移動するリブによって流体管の底部から分散されたばかりの夾雑物を、リブとともに流体管の管軸方向に移動する回収手段によって即座に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例における吸着体により夾雑物を回収する夾雑物回収装置を示す側断面図である。
【図2】(a)は、吸着体を示す側面図であり、(b)は、吸着体を示す一部破断側断面図である。
【図3】吸着体を示す正面図である。
【図4】流体管及び夾雑物回収装置を示す正面断面図である。
【図5】吸引体により夾雑物を回収する夾雑物回収装置を示す側断面図である。
【図6】(a)は、吸引体を示す側面図であり、(b)は、吸引体を示す一部破断正面断面図である。
【図7】流体管及び夾雑物回収装置を示す一部破断正面断面図である。
【図8】図7における流体管の内周面における底部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る夾雑物回収装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0013】
実施例に係る夾雑物回収装置につき、図1から図8を参照して説明する。以下、図1の紙面右側を吸着体の移動方向である流体管の下流側(前方側)として説明する。図1に示すように、本実施例の流体管1は、略円筒形状に形成された鉄等の磁性を有する金属管であり、略水平方向に延設され、内部には流体としての上水が流れている。
【0014】
また、この流体管1の内径側には、流体管1の防食処理として磁性を有さないモルタル等の材質により防食層1dが形成されている。本実施例では流体管1内の流体は上水であるが、流体管1の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0015】
この流体管1の所定箇所には、筐体2が密封状に取り付けられている。この筐体2は、流体管1に対して上方から配設され、流体管1の外周の上側を被覆する第1ケース3と、流体管1に対して下方から配設され、流体管1の外周の下側を被覆する第2ケース4と、から構成されており、第1ケース3の流体管1の管軸方向における略中央部には、上方に向けて分岐口3bが貫通形成されている。また、第1ケース3における流体管1の外周面との対向面には、分岐口3bの下端部を囲むように環状の密封部材5が配設されている。
【0016】
この筐体2は、第1ケース3を流体管1の上方から配設することで流体管1の外周面1aに密封部材5を密着させるとともに、第2ケース4を流体管1の下方から配設した後、第1ケース3及び第2ケース4の両フランジ3a,4aをボルト・ナット8等で緊締することで流体管1に対して固着されている。
【0017】
図1及び図4に示すように、第1ケース3の流体管1における管軸方向の両端部には、それぞれ密封部材6が配設されている。また、第2ケース4の流体管1における管軸方向の両端部及び両フランジ3a,4a間に渡り、連続する密封部材7が配設されている。このため、筐体2は、前述のようにボルト・ナット8等によりフランジ3a,4aが緊締されることで筐体2と流体管1との間で密封部材6の周方向の両端部が密封部材7に密着するとともに、密封部材5,6,7が弾性変形し、筐体2と流体管1との間を密封している。
【0018】
尚、本実施例では、このように筐体2と流体管1との間を密封部材5,6,7により密封しているが、流体管1に対して第1ケース3と第2ケース4とを配設した後、第1ケース3と第2ケース4との間、第1ケース3と流体管1の外周面1aとの間及び第2ケース4と流体管1の外周面1aとの間に溶接を施すことで筐体2と流体管1との間を密封してもよい。
【0019】
図1に示すように、筐体2の上端部には、分岐口3bと連通するように開閉弁9が密封状に取り付けられている。この開閉弁9は、水平方向にスライド移動させることで分岐口3bを開閉させる弁体9aを備えている。
【0020】
このように筐体2に取り付けられた開閉弁9の上端部には、下方に向けて開口する図示しないカバー体が、開閉弁9を介して分岐口3bに連通するように密封状に取り付けられるようになっており、該カバー体内から図示しないホールソー等の穿設手段を流体管1に向けて進行させることで、不断流状態で流体管1に分岐部である穿孔1bが穿設されるようになっている。尚、この穿孔1bの穿設時に生じた夾雑物である流体管1の切粉は、流体管1を構成する磁性を有する金属粉の他、磁性を有さない防食層1dを構成するモルタル粉を含み、流体管1内の底部の内周面1c上に切粉塊30を形成して滞留する。尚、流体管の分岐部は、穿設により切粉が生じた当該穿孔とは異なる孔部であってもよい。更に尚、本発明の夾雑物回収装置が回収する対象となる夾雑物は、穿設時に生じる切粉に限らず、例えば流体管内に経年的に滞留した錆や種々の混入物であってもよい。
【0021】
穿孔1bの穿設後は、前記穿設手段を前記カバー体内に引き戻し、弁体9aをスライド移動させることで分岐口3bを閉塞する。そして、開閉弁9から前記カバー体及び穿設手段を取り外し、図1に示すように、開閉弁9に新たにカバー体10を密封状に取り付ける。このカバー体10は、下方に向けて開口しており、開閉弁9を介して分岐口3bに連通するようになっている。また、カバー体10の上部には、開放することでカバー体10の内方と外方とを連通させる排出弁10bが設けられている。
【0022】
カバー体10の上端部には、上下方向を向く貫通孔10aが形成されており、貫通孔10aには、導入筒11が上下動可能に挿入されている。この導入筒11の上端部には、開放することで導入筒11の内方と外方とを連通させる排出弁11cが設けられている。また、導入筒11の下端部には、流体管1内の底部の内周面1c上に滞留している切粉から磁性を有する切粉を吸着させて回収するための、本発明における回収手段としての吸着体13が配置されている。
【0023】
吸着体13は、導入筒11を下方に移動させることで、カバー体10内から穿孔1bを介して流体管1内に配置されるようになっている。尚、貫通孔10aと導入筒11の間には、図示しない密封部材が設けられており、カバー体10の密封性を維持している。
【0024】
吸着体13は、図2(a)、図2(b)及び図3に示すように、流体管1内において前方側に配置される吸着部16と、吸着部16の後方に配置される枢支部17と、から主に構成されている。このうち吸着部16は、流体管1内において前方側に向けて開口するステンレス鋼あるいは樹脂等の磁力を有さない材質により構成された略円筒形状の筒体18と、この筒体18内に収納される磁力を有する永久磁石19と、筒体18の前端部に螺挿されることで筒体18を閉塞する磁力を有さない蓋体20と、を備えている。
【0025】
蓋体20の前端部には、複数(本実施例では4つ)のボールキャスタ20aが埋設されており、吸着体13を流体管1内に案内する際に蓋体20の前端部が流体管1の内周面1cに近接することで、これらボールキャスタ20a内のボールのいずれかが流体管1の内周面1cに当接して転動するようになっている。
【0026】
また、筒体18の外周面18aにおける前端部には、筒体18の周方向に沿って磁力を有さない複数本の断面視略円形状の本発明におけるリブ(分散体)としての棒材21の前端部が接続されている。これら棒材21の中間部は、筒体18において螺旋状を成すように延設され、更に棒材21の後端部は、筒体18の外周面における後端部に接続されている。このため、筒体18には、これら複数本の棒材21の中間部が流体管1の管軸方向に沿って筒体18の外周面から距離を置いて囲繞するように螺旋状を成して形成されている。
【0027】
尚、これら複数本の棒材21の前端部及び後端部を除く箇所と筒体18の外周面18aとの間は中空に形成されている。更に、筒体18の後端部における筒体18の同一軸心上には、後述する枢支孔17aに挿入される枢軸18bが、筒体18の後方に向けて突出形成されている。
【0028】
枢支部17には、前方側に向けて開口する枢支孔17aが形成されており、この枢支孔17a内には、ベアリング17bが嵌入されている。更に、この枢支孔17aには、吸着部16の枢軸18bが挿入されるようになっている。すなわち、吸着部16は、枢支孔17a内のベアリング17bに枢軸18bが保持されるため、枢支部17に対して回動自在に枢支される。
【0029】
また、枢支部17における水平方向の両端部の下部には、一対のローラ17c,17cが、枢支部17の水平方向を向く枢軸によって回動自在に枢支されている。これら一対のローラ17c,17cの上方である枢支部17における水平方向の両端部には、水平方向を向く一対の枢軸17d,17dが形成されている。これら枢軸17d,17dのうち、一方には、従動ローラ17eが回動可能に枢支されている。
【0030】
この従動ローラ17eは、その周面の一部箇所がローラ17cの周面と回動可能に当接しているとともに、周面のローラ17cとは異なる箇所が筒体18における後端部18cとも回動可能に当接している。このため、従動ローラ17eは、ローラ17cが回動することで枢軸17d周りに回動し、ローラ17cの回動力を筒体18に伝達する。そして、筒体18は、従動ローラ17eから伝達されたローラ17cの回動力により枢支部17に対して筒体18の周方向に回動するようになっている。
【0031】
尚、枢支部17の後端部には、ワイヤーロープ等の操作ケーブル23の一端が接続されている。この操作ケーブル23の他端は、導入筒11内を介して図示しないカバー体10外に配置されている。このため、作業者は、この操作ケーブル23を導入筒11を介して流体管1内に送り出し若しくは流体管1内から引き戻すことで、流体管1内における吸着体13を移動操作可能となっている。
【0032】
また、図1及び図4に示すように、導入筒11の下端部には、カバー体10内で吸着体13を案内する導入体11aが取り付けられている。この導入体11aは、上端部から下端部かけて流体管1の管軸方向である上流側(後方側)から下流側(前方側)に傾斜をなす傾斜面11bを備えており、吸着体13は、この傾斜面11bに当接することで、吸着体13の上部が後方側に傾倒した状態でカバー体10内において導入体11aに案内されるようになっている。
【0033】
図5及び図7に示すように、開閉弁9には、カバー体10に換えて、カバー体24を密封状に取り付けることが可能となっている。このカバー体24は、カバー体10と同様に、下方に向けて開口しており、開閉弁9を介して分岐口3bに連通するようになっている。また、カバー体24の上部には、開放することでカバー体24の内方と外方とを連通させる排出弁24bが設けられている。
【0034】
カバー体24の上端部には、上下方向を向く貫通孔24aが形成されており、貫通孔24aには、導入筒25が上下動可能に挿入されている。この導入筒25の上端部には、開放することで導入筒25の内方と外方とを連通させる排出弁25dが設けられている。また、導入筒25の下方には、流体管1内の底部の内周面1c上に滞留している切粉を吸引するための吸引体26が、導入筒25の下端部よりも下方に突出して配置されている。
【0035】
この吸引体26は、図6(a)及び図6(b)に示すように、流体管1内を撮影する撮像装置であるカメラ27及び流体管1内から切粉を吸引するための一対の吸引ヘッド28,28を備えている。これらカメラ27及び両吸引ヘッド28,28は、流体管1内において下流側(前方側)を向くようになっている。また、両吸引ヘッド28,28は、カメラ27を水平方向から左右に挟むように配設されている。
【0036】
詳述すると、カメラ27には、クランプ29aが取り付けられており、両吸引ヘッド28,28には、それぞれクランプ29bが取り付けられている。これらクランプ29aとクランプ29b,29bとは、水平方向を向く連結棒29cにより連結されている。つまり、本実施例におけるカメラ27及び両吸引ヘッド28,28は、クランプ29a、クランプ29b,29b及び連結棒29cにより連結されることで、一体に構成されている。
【0037】
両吸引ヘッド28,28の後端部には、吸引ホース28a,28aの一端が接続されている。これら吸引ホース28a,28aは、導入筒25を通過して、他端が導入筒25におけるカバー体24の上方に形成された分岐孔部25e,25eを介してカバー体24外に延設されている。これら両吸引ホース28a,28aの他端には、吸引ホース28a,28aの他端を開閉操作可能な排出弁28b,28bが設けられている。
【0038】
更に、カメラ27の後端部には、吸引ホース28a,28aよりも強度の強い支持ケーブルである通信ケーブル27aが接続されている。この通信ケーブル27aは、他端が導入筒25内を通過して導入筒25の上端孔部25fを介しカバー体24外に延設されている。尚、この通信ケーブル27aの他端は、流体管1の外部に設置された図示しないディスプレイ等に接続されており、カメラ27によって撮影された映像は、通信ケーブル27aを介して該ディスプレイに表示されるようになっている。更に尚、分岐孔部25eと上端孔部25fとは、導入筒25において比較的近傍箇所に形成されているため、通信ケーブル27aと吸引ホース28a,28aを同期して導入することが容易となっている。
【0039】
導入筒25の下端部には、カバー体24内で吸引体26を保持する導入体25aが取り付けられている。この導入体25aには、左右方向を向く枢軸によって流体管1の管軸方向に回動可能なガイド板25bが枢支されている。吸引体26は、カバー体24内においてこのガイド板25bに当接することで、前方側を下方に向けた略垂直状態で案内されるようになっている。
【0040】
ガイド板25bの下端部には、水平方向を向く枢軸によってローラが枢支されている。該ローラは、導入筒25が下方に移動することで流体管1の内周面1cに当接することで回動し、ガイド板25bの下部を前方側に向けて傾斜させるようになっている。更に、ガイド板25bの後部には、ガイド板25bが前方側に向けて傾斜することで流体管1の内周面に摺接しながら後方側に向けて所定角度まで傾斜することでガイド板25bの前方側への傾斜を案内する案内板25cが左右方向を向く枢軸によって枢支されている。
【0041】
このように構成された夾雑物回収装置を用いて流体管1内から切粉を回収するには、先ず、図1及び図4に示すように、前述したように開閉弁9に導入筒11の下端部及び吸着体13を収納したカバー体10を密封状に取り付けた後、弁体9aをスライド移動させることで分岐口3bを開放する。
【0042】
この状態で、排出弁10b,11cを開放し、カバー体10及び導入筒11内を流体管1内の流体で満たし、内部の空気を排出する。排出弁10b,11cを閉塞した後、吸着体13を保持している導入筒11を下方である流体管1内に向けて穿孔1bを介して移動させていく。そして、導入体11aの下端部における流体管1の径方向側端部11d,11dを流体管1の底部の内周面1cに当接させた後、作業者がカバー体10の外方から操作ケーブル23を流体管1内に向けて送り出すことで、吸着体13を傾斜面11bに沿って下方に移動させる。
【0043】
尚、導入筒11は、操作ケーブル23を流体管1内に送り出す際に、導入体11aから吸着体13を流体管1内に送り出す反力を、流体管1の底部における内周面1cと当接する流体管1の径方向側端部11d,11dで支持するので、操作ケーブル23を流体管1内に送り出す力のロスを少なくして操作ケーブル23が撓むことなく導入体11aから吸着体13を流体管1内に送り出すことができる。
【0044】
このとき、いずれかのボールキャスタ20aのボールが流体管1の底部の内周面1cに当接することで転動するため、吸着体13は、後端部を傾斜面11bに摺接させつつ流体管1内に進入し、流体管1内の底部において前端部が流体管1の下流側(前方側)を向く水平状態となる。
【0045】
この状態で作業者が操作ケーブル23を流体管1内に継続して送り出すことで、吸着体13は、一対のローラ17c,17cを流体管1の底部の内周面1c上で回動させながら前方に向けて移動する。このとき、吸着体13は、筒体18に従動ローラ17eを介してローラ17cの回動力が伝達されるため、筒体18を枢支部17に対して筒体18の周方向に回動させる。
【0046】
この筒体18の周方向への回動によって、各棒材21が流体管1の底部における内周面1cに摺接するため、吸着体13は、各棒材21が流体管1の底部における内周面1cから受ける内周面1cの周方向を向く反力を受け、図3に示すように、流体管1内を流体管1の底部における内周面1cの周方向に沿って揺動しながら下流側に向かって移動する。
【0047】
吸着体13は、このように筒体18を回動させながら流体管1内を移動することで、各棒材21により流体管1内の底部の内周面1c上に滞留している切粉塊30を破砕していくとともに、各棒材21によって生じる流体圧によって破砕されたことで粉末状となった磁性を有する切粉及び磁性を有さない切粉を流体管1内の底部における最低部を中心にした平面視左右両側部に分散させる。つまり、本発明における分散手段は、ローラ17cと棒材21とから構成されている。
【0048】
このとき、吸着体13は、まき上げられた切粉内を移動することで、回動している筒体18の外周面18aの略全周に亘って、永久磁石19の磁力によって磁性を有する切粉を吸着することができる。更に、棒材21の回動とともに外周面18aも回動するので、流体管1内における底部に分散した磁性を有する切粉の大部分若しくは略全量を外周面18aの全周面で吸着することができる。
【0049】
尚、筒体18の外周面18aに付着した磁性を有する切粉は、各棒材21よりも吸着体13の内側に位置しているため、流体管1の内周面1cに接触することがないよう棒材21によって保護されている。このため、本実施例では、筒体18の外周面18aに吸着された磁性を有する切粉は、棒材21によって囲繞されていることで、流体管1の内周面1cに接触すること無く、筒体18の外周面18aからの脱落を防止できるようになっている。
【0050】
吸着体13に磁性を有する切粉を吸着させた後、作業者は、操作ケーブル23を導入筒11から引き出すことで吸着体13を導入体11aに保持させる。この状態で、作業者は、導入筒11を引き上げることで吸着体13をカバー体10内に配置させるとともに、弁体9aをスライド移動させて分岐口3bを閉塞する。
【0051】
そして、カバー体10を開閉弁9から取り外した後、筒体18から蓋体20を取り外し、筒体18内に収納されている永久磁石19を取り出す。このとき、筒体18は、永久磁石19による磁力が無くなるため、筒体18の外周面18aに吸着されている磁性を有する切粉が筒体18の外周面18aから離間する。このように、本実施例では、筒体18内から永久磁石19を取り出すだけで、筒体18の外周面18aに吸着されている磁性を有する切粉を筒体18から容易に除去して回収することができる。
【0052】
次の作業を説明すると、図5及び図7に示すように、開閉弁9に、カバー体10に換えて導入筒25の下端部及び吸引体26を収納したカバー体24を密封状に取り付け、弁体9aをスライド移動させることで分岐口3bを開放する。この状態で、排出弁24b,25dを開放し、カバー体24及び導入筒25内を流体管1内の流体で満たし、内部の空気を排出する。排出弁24b,25dを閉塞した後、吸引体26を保持している導入筒25を下方である流体管1内に向けて穿孔1bを介して移動させていく。このとき、通信ケーブル27a及び吸引ホース28a,28aは、導入筒25とともに流体管1内に向けて移動することで、通信ケーブル27aと吸引ホース28a,28aとの間に移動距離の差が出ることなく、通信ケーブル27a及び吸引ホース28a,28aに負荷がかからないようになっている。
【0053】
そして、ガイド板25bの下端部に枢支されている前記ローラを流体管1の底部の内周面1cに当接させるとともに、更に導入筒25を下方に向けて移動させることで、ガイド板25bを流体管1の底部に対して傾斜させ、同時に導入体25aの下端部における流体管1の径方向側端部25g,25gを流体管1の底部の内周面1cに当接させる。このとき、案内板25cがガイド板25bの傾斜を案内する。
【0054】
そして、作業者がカバー体24の外方から比較的強度の強い通信ケーブル27aを流体管1内に送り出すとともに、吸引ホース28a,28aを通信ケーブル27aに追随させることで、吸引体26を所定角度に傾斜したガイド板25bに沿って流体管1内の底部に移動させる。このとき、吸引体26のガイド板25bから流体管1内の底部への移動時には、作業者によって流体管1内に送り出される通信ケーブル27aのみに負荷がかかるようになっている。このため、内部が空洞の吸引ホース28a,28aは、負荷がかかることにより周壁部が破損し吸引した夾雑物が漏出する虞が防止されている。
【0055】
尚、導入筒25は、図8に示すように、吸引ホース28a,28aとともに通信ケーブル27aを流体管1内に送り出す際に、導入体25aから吸入体26を流体管1内に送り出す反力を、流体管1の底部における内周面1cと当接する流体管1の径方向側端部25g,25gで支持するので、通信ケーブル27aを流体管1内に送り出す力のロスを少なくして通信ケーブル27aが撓むことなく導入体11aから吸着体13を流体管1内に送り出すことができる。
【0056】
更に、図5及び図7に示すように、吸引ホース28a,28aの排出弁28b,28bを開放することで、流体管1内の流体圧と流体管1外の大気圧差によって吸引ヘッド28,28から吸引ホース28a,28aの他端である排出弁28b,28bに向けて流体の吸引が開始される。尚、吸引ホースの他端側に例えばポンプ等の吸引手段を接続し、当該吸引手段により夾雑物を吸引するようにしてもよい。この状態で作業者が前記ディスプレイに表示されているカメラ27によって撮影された流体管1内の映像を目視確認しながら吸引ホース28a,28aを流体管1内に継続して送り出すことで、吸引体26は、カメラ27の下端部を流体管1の底部の内周面1cに摺接させながら前方に向けて移動する。
【0057】
このとき、吸引体26は、吸引ヘッド28,28によって流体管1内から流体を吸引しながら流体管1内を前方に向けて移動することで、流体管1内に磁性を有する切粉が未だ残留している場合は、当該切粉と、磁性を有さない切粉とを吸引ヘッド28,28によって吸引する。上述したように、切粉は、吸着体13の棒材21により流体管内の底部における平面視左右両側部に分散しているため、カメラ27を左右に挟むように各々配設された吸引ヘッド28,28により、分散した切粉を吸引し易いばかりか、吸引した切粉を両吸引ホース28a,28aで分けて排出するため、吸引ホース28a,28aが詰まることが無い。
【0058】
尚、本実施例における吸引体26は、通信ケーブル27aを流体管1内に送り出すとともに吸引ホース28a,28aを追随させることで流体管1内を前方に向けて移動しながら吸引ヘッド28,28によって切粉を吸引しているが、作業者は、通信ケーブル27a、吸引ホース28a,28aの流体管1内への送り出し量、または流体管1内からの引き戻し量を調整することで吸引体26の切粉を吸引する吸引方向を変更可能となっている。より詳しくは、例えば支持ケーブルである中央の通信ケーブル27aを送り出しも引き戻しもさせずに固定させたままで、平面視左右いずれか一方の吸引ホース28aのみを僅かに引き戻し、他方の吸引ホース28aを追随させることで、一体のカメラ27及び吸引ヘッド28,28は、引き戻した前記一方の吸引ホース28a側の方を向くように操作できる。
【0059】
このため、作業者は、カメラ27で撮影された映像を前記ディスプレイで視認しながら吸引ホース28a,28aを流体管1内へ送り出し操作、または流体管1内から引き戻し操作することで、流体管1内の広範囲に亘って切粉を吸引することができる。
【0060】
このように吸引ヘッド28,28によって流体管1内から吸引された切粉は、排出弁28b,28bを介して流体管1外に排出されることで回収される。次に、作業者は、前記ディスプレイに表示されている映像を基に流体管1内からの切粉の回収が終了したと判断した後、吸引ホース28a,28aを導入筒25から引き戻すことで吸引体26を導入体25aに保持させるとともに、カメラ14を導入体25aに保持させる。この状態で、作業者は、導入筒25を引き上げることで吸引体26をカバー体24内に配置させるとともに、弁体9aをスライド移動させて分岐口3bを閉塞する。
【0061】
以上、本実施例における夾雑物回収装置にあっては、流体管1内を管軸方向に向けて移動することで流体管1の底部に塊状を成して滞留している夾雑物である切粉を分散させる分散手段と、分散手段により分散された切粉を流体管1内から回収する吸着体13と、を備えるので、流体管1の底部で塊状を成して滞留している切粉を分散手段によって流体管1の底部から分散させることで、これら分散した切粉を吸着体13によって回収し易い大きさとし、効率的に切粉を流体管1内から回収することができる。
【0062】
また、分散手段は、分散手段が流体管1の管軸方向に移動することで流体管1の内周面1cに当接して回動するローラ17cと、ローラ17cの回動力により塊状を成す夾雑物である切粉を分散させる筒体18と、から構成されているので、分散手段が流体管1の管軸方向に移動するときのローラ17cの回動力により分散体を作動させることで、塊状を成す切粉を分散させ、再び切粉が底部に滞留しないよう、確実に分散した切粉を吸着体13により回収することができる。
【0063】
また、分散体は、ローラ17cの回動力により筒体18の移動方向を向く軸回りに自転しながら流体管1の内周面1cを流体管1の周方向に向けて揺動するので、筒体18は、流体管1の管軸方向に移動しながら流体管1の底部における周方向の広範囲に亘って塊状の夾雑物である切粉を分散させることができるので、より効率的かつ広範囲にわたり吸着体13によって切粉を回収することができる。
【0064】
また、分散体は、流体管1の内周面1cに当接するとともに、分散手段の移動方向に沿って螺旋状に形成されているので、螺旋状に形成された分散体を流体管1の管軸方向に向けて移動させることで、塊状を成す夾雑物である切粉を流体管1の管軸方向かつ周方向に分散させて回収しやすくすることができる。
【0065】
また、分散体は、吸着体13の外方側に配置された複数条の棒材21であるので、流体管1の管軸方向に移動する棒材21によって流体管1の底部から分散されたばかりの夾雑物である切粉を、棒材21とともに流体管1の管軸方向に移動する吸着体13によって即座に回収することができる。
【0066】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0067】
例えば、前記実施例では、筒体18に回動手段として螺旋状を成すリブとしての棒材21を複数条形成し、これら棒材21を流体管1の底部の内周面1cに摺接させることで筒体18を周方向に回動させて夾雑物である切粉を流体管1内に分散させたが、枢支部17内に回動手段としてモータを内蔵し、このモータの駆動力によって筒体18を回動させて流体管1内に切粉を分散させるようにしてもよい。
【0068】
また、前記実施例では、吸着体13を流体管1の下流側に向けて移動させることで筒体18の外周面18aに夾雑物である切粉を吸着させたが、切粉が流体管1の上流側における底部の内周面1c上にも滞留している場合には、吸着体13を流体管の上流側に向けて移動させて筒体18の外周面18aに切粉を吸着させてもよい。
【0069】
また、前記実施例では、流体管1内で筒体18を回動させることで夾雑物である切粉塊30を破砕し、流体管1内に切粉を分散させて、磁性を有する切粉を永久磁石19の磁力により筒体18の外周面18aに吸着させたが、分散手段として流体管1内で切粉塊30に向けて流体を吹き付けることで切粉塊30を分散させる吹付体を備えるとともに、該吹付体とは別体の回収手段として永久磁石を内蔵する吸着体を備え、流体管1内で前記吹付体により切粉を分散させた後、前記吸着体により分散された切粉から磁性を有する切粉を永久磁石の磁力により吸着するようにしてもよい。
【0070】
また、前記実施例では、磁性を有する夾雑物である切粉を吸着体13により流体管1内から回収し、吸着体13により流体管1内から回収しきれなかった切粉を吸引体26により吸入することで流体管1内から回収したが、筒体18内に収納されている永久磁石19が十分に強力な磁力を有しているとともに、流体管1に穿孔1bを穿設する際に磁性を有さない切粉が発生しない場合には、吸着体13のみで流体管1内から切粉の回収を行ってもよい。
【0071】
また、前記実施例では、本発明のリブとして断面視略円形状の棒材21が螺旋状を成しているが、例えばリブとして、断面視長方形等の非円形状の延材が、当該延材自体がその延長方向に沿って捻りながら螺旋状を成していてもよく、このようにすることで、流体管1内において夾雑物である切粉に大きな渦流を与え、切粉を流体管1内でより分散させることができる。
【0072】
更に、前記実施例では、本発明の夾雑物回収装置は、流体管1の穿設により生じた磁性を有する切粉を回収しているが、例えば、流体管内に混入した砂分に含まれる磁性を有する砂鉄等の夾雑物を回収することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1 流体管
1c 内周面
1d 防食層
2 筐体
11 導入筒
11a 導入体
12 導入筒
12a 導入体
13 吸着体(回収手段)
16 吸着部
17 枢支部
17a 枢支孔
17c ローラ
17e 従動ローラ
18 筒体
18a 外周面
19 永久磁石
21 棒材(リブ)
23 操作ケーブル
24 カバー体
25 導入筒
25a 導入体
25g 端部
26 吸引体
27 カメラ
27a 通信ケーブル
28 吸引ヘッド
28a 吸引ホース
30 切粉塊(夾雑物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管内に滞留している夾雑物を流体管内から回収する夾雑物回収装置であって、
流体管内を管軸方向に向けて移動することで流体管の底部に塊状を成して滞留している夾雑物を分散させる分散手段と、該分散手段により分散された夾雑物を流体管内から回収する回収手段と、を備えることを特徴とする夾雑物回収装置。
【請求項2】
前記分散手段は、該分散手段が流体管の管軸方向に移動することで流体管の内周面に当接して回動するローラと、該ローラの回動力により塊状を成す夾雑物を分散させる分散体と、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の夾雑物回収装置。
【請求項3】
前記分散体は、前記ローラの回動力により前記分散体の移動方向を向く軸回りに自転しながら流体管の内周面を流体管の周方向に向けて揺動することを特徴とする請求項2に記載の夾雑物回収装置。
【請求項4】
前記分散体は、流体管の前記内周面に当接するとともに、前記分散手段の移動方向に沿って螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の夾雑物回収装置。
【請求項5】
前記分散体は、前記回収手段の外方側に配置された複数条のリブであることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の夾雑物回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−22526(P2013−22526A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160347(P2011−160347)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000105556)コスモ工機株式会社 (270)
【Fターム(参考)】