始原肝幹細胞および近位肝幹細胞
【課題】肝障害を治療するため、および生体人工器官を作製するために使用され得る肝前駆細胞始原肝幹細胞および近位肝幹細胞の提供。
【解決手段】ヒト始原肝幹細胞は、ヒト肝臓から免疫選択によって、またはヒト始原肝幹細胞を選択する条件下でヒト肝臓細胞を培養することによって単離される。近位肝幹細胞は、免疫選択によって、または発生因子を含む条件下でヒト肝臓細胞を培養することによって単離される。近位肝幹細胞はまた、始原肝幹細胞を含むコロニーを、発生因子を含む条件下で培養することによって単離する。
【解決手段】ヒト始原肝幹細胞は、ヒト肝臓から免疫選択によって、またはヒト始原肝幹細胞を選択する条件下でヒト肝臓細胞を培養することによって単離される。近位肝幹細胞は、免疫選択によって、または発生因子を含む条件下でヒト肝臓細胞を培養することによって単離される。近位肝幹細胞はまた、始原肝幹細胞を含むコロニーを、発生因子を含む条件下で培養することによって単離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、成熟肝細胞を生じる多能性細胞であるヒト肝幹細胞に関する。これらは、2つの幹細胞集団を含む:近位(proximal)肝幹細胞を生じる非常に始原的な前駆細胞である導管板(ductal plate)幹細胞、肝実質細胞および胆管細胞を生じる近位幹細胞。本発明はまた、ヒト肝導管板幹細胞を単離する方法、ならびに近位肝幹細胞および肝実質細胞関連(committed)前駆細胞および胆管関連前駆細胞を単離することに関する。本発明の細胞を含む組成物は、細胞治療および遺伝子治療のため、ならびに生体人工器官の確立のために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1. ヒト肝臓の解剖学
成熟肝の主要な構造的および機能的単位は腺房であり、これは、横断面において2つの別個の血管床の周りに車輪様に組織化されている:末梢に3〜7セットの門脈三管(各々が門脈細静脈、肝細動脈、および胆管を有する)があり、中央部に中心静脈を有する。肝細胞は、有窓内皮の両側に並ぶ細胞板として組織化され、これは、門脈および中心の脈管系と連続する一連の肝洞様毛細血管を規定する。最近のデータにより、ヘーリング管(各々の門脈三管の周りに位置する細管)が、ボトルブラシと同様のパターンを形成するゾーン1の全体にわたって伸長し肝板(liver plate)に接合する小管を産生することが示された(Theise, N. 1999 Hepatology. 30: 1425-1433)。
【0003】
狭い腔隙であるディッセ腔は、肝洞様毛細血管に沿って肝実質細胞から内皮を分離する。この組織化の結果、肝実質細胞は、各々が肝洞様毛細血管に面する2つの基底ドメイン、および隣接する肝実質細胞間の接触領域によって規定される先端ドメインを有する。基底ドメインは、血液と接触し、血漿成分の吸収および分泌に関与するのに対して、先端ドメインは、胆汁酸塩の分泌に特化された胆小管を形成し、相互連絡ネットワークを通して胆管と連係する。血液は、門脈細静脈および肝細動脈から、肝洞様毛細血管を通して末端の肝細静脈および中心静脈に流れる。
【0004】
この微小循環のパターンに基づいて、腺房は3つのゾーンに分けられる:ゾーン1、門脈周囲領域;ゾーン2、腺房中央領域;およびゾーン3、中心周囲領域。増殖能力、形態学的判断基準、倍数性、および大部分の肝臓特異的遺伝子は、ゾーンの位置に相関する(Gebhardt, R.ら、1988. FEBS Lett. 241: 89-93; Gumucio, J. J. 1989, 第19巻. Springer International, Madrid; Traber, P.ら、1988. Gastroenterology. 95: 1130-43)。腺房を横切った、酸素を含む血液成分の濃度勾配と、引き続く門脈三管から中心静脈への血流の方向は、このゾーン化の一部の原因である(例えば、解糖および糖新生の相互区画化)。しかし、2つだけ例を挙げると、ギャップジャンクションタンパク質コネキシン26の門脈周囲領域ゾーンへの存在、およびグルタミンシンテターゼの中心周囲領域ゾーンへの存在は、このような勾配に感受性がなく、大部分の組織特異的遺伝子により代表的なものであり、そして細胞、または微小環境における血流以外の変数に固有の因子によって決定されるようである。
【0005】
肝実質細胞に加えて、胆管の上皮細胞(胆管細胞)および門脈管と中心管との間の領域である内皮細胞は、伊東細胞およびクップファー細胞のような他の細胞型を含む。これらは、肝臓の病状、とりわけ炎症および線維症において顕著な役割を果たすが、正常な器官の主要な恒常性機能に対する直接的な寄与は明らかに小さい。
【0006】
2. ヒト肝臓の発生
肝臓は、後部前腸および横中隔(内臓間葉の一部)から形成される憩室の集合の結果として発生する。肝細胞の形成は、内胚葉性の上皮が心臓性中胚葉と、おそらく線維芽細胞成長因子を介して相互作用した後に開始する。次いで、特定の肝細胞が増殖し、索状構造様の様式で横中隔の間葉に突き通り、肝臓の原基を形成する。直接的な上皮−間葉相互作用は、これらの初期の肝臓の発生段階において決定的であり、肝実質細胞または胆管細胞、および有窓内皮になる細胞をそれぞれ指示する。間葉特異的遺伝子hlxおよびjumonjiの変異は肝発生をブロックし、これは、この組織からの寄与の重要性を示す。その発生の初期において、肝臓は、基底膜を欠く連続的な内皮に接する近位肝幹細胞のクラスターおよび豊富な造血細胞からなる。内皮が不連続的な有窓内皮になるように変化するのにつれて、脈管系(とりわけ、門脈の脈管系)は基底膜の産生を伴ってより発達する。門脈間隙は胆管の発生のための引き金を提供し得、そしてそれが門脈細静脈、肝細動脈、および胆管を取り囲んで、門脈三管が形成される。近位肝幹細胞は迅速に増殖し、そして、おそらくC-CAM 105、Agp110、E-カドヘリン、およびコネキシンのような組織を組織化する分子の量および分布の変化に応答して、大部分ではあるがすべてではない造血細胞の骨髄への再配置と同時に、実質板(parenchymal plate)が形成される。最近の研究により、いくつかの造血前駆細胞が成体静止状態げっ歯類肝臓(adult quiescent rodent liver)に存続すること、および造血幹細胞が成体ヒトおよびマウスの両方の肝臓から単離されたことが示唆されている(Crosbie, O. M. ら、1999. Hepatology. 29: 1193-8)。
【0007】
ラット肝臓は、胚の生命のうちで、約10日目に形成され、これは「胚10日目」またはE10と呼ばれる。これは、胚の中腸領域に位置している内胚葉による心臓性間葉の陥入によるものである(Zaret, K. 1998. Current Opinion in Genetics & Development. 8: 526-31)。胚における肝細胞の最も初期の認識は、αフェトプロテイン(AFP)をコードするmRNAについてのインサイチューハイブリダイゼーション研究を用いて達成された(Zaret, K. 1998. Current Opinion in Genetics & Development. 8: 526-31; Zaret, K. 1999. Developmental Biology (Orlando). 209: 1-10)。AFP発現細胞は、アッセイされたすべてのラットおよびマウスの肝臓において、9〜10日齢で心臓を形成する間葉の近傍の胚の中腸領域において観察される。肝臓はE12までに肉眼で見えるようになり、E13までに直径約1mmとなる。
【0008】
並行して造血が起こり、最初に同定可能な造血細胞は、げっ歯類ではE15〜E16までに、ヒトでは3〜4ヶ月目までに出現し、そして赤血球生成(赤血球系細胞または赤血球の形成)のピークは、げっ歯類ではE18までに、ヒトでは5〜6ヶ月目までに起こる。赤血球形成のピークにおいて、肝臓でこれらの赤血球の数が支配的となり、肝臓における細胞数の70%を超える数を占める。妊娠期間の終わりはげっ歯類では21日目、ヒトでは9ヶ月目である。誕生の数時間以内に造血細胞の数は劇的に低下し、げっ歯類では出生後2日までに、ヒトでは1週間または2週間以内に、造血細胞の大部分が骨髄に移動して消失する。造血細胞の移動の原因は誰にもわからない。しかし2つの有力な仮説が存在する。
【0009】
第1に、造血前駆細胞は比較的嫌気的条件を好み、そしてそれらの大部分は、肺の活性化に伴う肝臓における酸素レベルの上昇によって骨髄(これは比較的嫌気性である)に移動する。さらに、妊娠ホルモンの損失が移動の因子であり得るという仮説が存在する。出生後に、肝臓における造血前駆細胞の損失は、肝前駆細胞の数の劇的な減少、ならびに肝実質細胞および胆管細胞の数および成熟度の並行した増加と相関する。肝臓の十分な成熟は、出生後2〜3週間(げっ歯類)および数ヶ月以内(ヒト)までに完了する。それまでに、残りの肝前駆細胞はヘーリング管の領域に局在化し、これらのほとんどは各肝腺房周囲の門脈三管に存在する(Thieseら、Crawfordら)。
【0010】
その後、肝腺房の古典的構造は、6セットの門脈三管(各々が、胆管、肝動脈、および肝静脈を有し、中心に大静脈に接続する中心静脈を有する)によって周囲が規定された各腺房によって確立される。肝細胞の板は、車輪のスポークのように、末梢から中心に延びている。慣例上、板は3つのゾーンに分けられる:ゾーン1は門脈三管の近傍;ゾーン2は腺房中央;およびゾーン3は中心静脈の近傍である。肝臓の二倍体細胞のみがゾーン1にある;四倍体細胞はゾーン2にある;そして四倍体、八倍体、および多核性細胞がゾーン3にある。このパターンは、アポトーシスプロセスで終結する成熟系列を強く示唆している(Sigal, S. H. S.ら、1995. Differentiation. 59: 35-42)。
【0011】
3. 肝臓疾患
米国においては、毎年約250,000人が肝不全のために入院している。肝移植はいくつかの型の肝不全に治療効果があり、およそ4100例の移植が米国で1年に行われている。肝移植における1つの限定要因は、とりわけ臓器移植のためのドナー肝臓は心停止でなく脳死を経た患者に由来しなくてはならないという制約を考慮すると、ドナー肝臓の利用可能性である。死体のドナーを使うための最近の努力により、肝臓が死から1時間以内に入手される場合それらを使用する可能性があることが支持されているが、このようなドナーからの肝臓では成功していない。
【0012】
肝臓への細胞移植は、大部分の肝臓疾患にとって魅力的な代替的治療である。細胞移植のための外科的手順は、臓器全体の移植のために必要とされるものと比較して少なく、従って種々の外科的リスク(例えば、年齢または虚弱質)を有する患者のために使用され得る。ヒト肝臓細胞の使用は、他の哺乳動物に由来する肝細胞よりも優れている。なぜなら、潜在的な病原体は(もしあれば)、ヒト起源であり、患者によってより良好に耐性であり得、そして使用前に容易にスクリーニングされ得るからである。
【0013】
肝細胞移植を行う試みは、分画していない成熟肝細胞を利用し、効力のいくつかの尺度を示してきた(Fox, I. J.ら、1998. New England Journal of Medicine. 338: 1422-1426)。しかし、これら細胞はインビボで増殖しないため、成功には多数の細胞(2×1010)の注射を必要とする。さらに、大きな成熟肝細胞(平均細胞直径30〜50μm)を多数導入することは、注射の際に大きな凝集物を形成する傾向によって複雑化され、致死的でありうる塞栓を生じる。さらに、これらの細胞は顕著な免疫学的拒絶反応を誘発し、患者は残りの生活を免疫抑制剤に継続して頼らざるを得なくなる。最後に、成熟肝細胞は首尾よく凍結保存されず、適切な肝臓組織の利用可能性、細胞懸濁物の調製、および臨床的治療のための細胞の迅速な送達を調整するために、複雑な物流管理が必要とされる。
【0014】
4. 分化全能性幹細胞
幹細胞は、肝臓疾患のための代替的な細胞に基づく治療である。分化全能性幹細胞は、自己複製可能な始原細胞であり、多能性である(すなわち、1つより多くの発生運命を有する娘細胞を産生する)。これは、広範に拡張し得、1つまたは複数の組織を再構築し得る決定された幹細胞(determined stem cell)を生じ得る。幹細胞に関する文献の大部分は、胚に関する文献から、または造血組織、表皮組織、もしくは腸組織に関する文献のいずれかから派生する。
【0015】
より最近では、特定のクラスの幹細胞を認めるために定義が改変された。生殖細胞を含むすべての細胞型の発生に関与する能力を有する幹細胞は、分化全能性幹細胞といわれ、接合体および8細胞段階(桑実胚)までの正常な胚細胞を含む。胚性幹細胞(「ES」細胞とも呼ばれる)は、胚盤胞における分化全能性の正常細胞から派生した永続的な細胞集団からなり、これは1980年代初期に初めて報告された。ES細胞株は分化全能性を維持してインビトロで培養できる。ES細胞が正常胚盤胞に注射して戻された場合、これらは胚発生を再開し、正常であるがキメラであるマウスの形成に関与する。ES細胞株が多くの種(マウス、ラット、ブタなど)から樹立されているが、マウスの系のみが、培養物からの改変されたES細胞を胚盤胞に合体させ、次いでその胚盤胞を偽妊娠宿主に移植することによって新規な表現型(ノックアウト、トランスジェニック)を有する動物を生成するために日常的に使用されている。胚性生殖(EG)細胞株(ES細胞の特徴の多くを示す)は、始原生殖細胞集団からインビトロで直接単離され得る。ES細胞と共に、胚盤胞に注射された場合EG細胞は生殖細胞を含むキメラに寄与した。
【0016】
最近、よく公開された実験により、ヒトES細胞培養がヒト胚から樹立され得ることが報告された。これらのヒトES細胞は、損傷した器官および組織を再構築することができることを期待して組織に注射され得ることが示唆されている。しかし、ES細胞およびEG細胞は、子宮内以外のいかなる部位においても免疫無防備状態の宿主に導入された場合には腫瘍形成性であり、奇形癌腫を形成する。それゆえに、ヒトES細胞を患者に接種する計画は非現実的であり、患者において腫瘍を引き起こす可能性が大きい。この難局を克服するために、いくつかのグループが、限定された微小環境条件下で、決定された幹細胞になり、次いでその幹細胞を患者に安全に接種できるような、ES細胞を分化させる計画を追求している。例えば、造血前駆細胞の生成において多少成功が収められている。しかし、培養物が患者に接種された場合に、培養物中に残存しているES細胞が腫瘍形成のリスクを有し得るという懸念が残る。要約すれば、発生生物学における研究が、胚形成の間に細胞の運命を決定付ける無数の制御を明らかにするまでは、ES細胞は、細胞治療または遺伝子治療における臨床プログラムのためにはほとんど希望が持てない実験ツールのままである。細胞治療および遺伝子治療における臨床プログラムのための唯一の現実的な選択肢は、遺伝的潜在能力が限られた数の細胞型に制限される決定された幹細胞を使用することである。
【0017】
5. 決定された幹細胞
決定された幹細胞は、その遺伝的潜在能力を限られた数の細胞型についてのそれに制限され、かつ広範な増殖潜在能力を有する多能性細胞である。増加しつつある証拠(例えば、テロメラーゼの分野における証拠)により、決定された幹細胞は厳密な意味で自己複製しない、すなわちそれらの子孫は親よりも低い成長潜在能力を有し得ることが示唆されている。決定された幹細胞は、それらの遺伝的潜在能力を単一の運命(例えば、肝実質細胞、この細胞の関連づけられた前駆細胞(committed progenitor)は肝実質細胞関連前駆細胞といわれる)に制限することによって多能性を失う娘細胞である、関連づけられた前駆細胞を生じる。肝細胞系列には、肝実質細胞関連前駆細胞(肝実質細胞を生じる)および胆管関連前駆細胞(胆管を生じる)がある。
【0018】
幹細胞から成体細胞への移行は段階的なプロセスで起こり、細胞サイズ、形態学、成長潜在能力、および遺伝子発現がその系列に束縛される成熟系列を産生する。加齢で例えることが、このプロセスを規定する際には有用である。「若い」細胞は初期遺伝子発現および最も高い成長潜在能力を有し;系列の中で後の細胞は「遅い」遺伝子発現を有し、通常それらの成長は制限されるかまたは全く成長しない。後期の細胞は「古い」、または生物学的用語においてアポトーシス性と見なすことができ、最終的には除去される。成熟系列プロセスは、組織の天然の代謝回転を生じ、傷害の後の再生を許容する。組織は成熟プロセスの反応速度論が異なる。腸の成熟系列は、1週間未満で生じる完全なサイクルを持ち、かなり迅速である;肝臓のそれはゆっくりと起こり、そしてラット肝臓においては約1年である。
【0019】
未成熟前駆細胞集団は、肝臓疾患を処置する際に強い影響力を持ちうるゆえに、肝臓からこのような細胞を単離および同定することに強い臨床的および商業的な関心が存在する。細胞治療および遺伝子治療における肝前駆細胞の使用は、上記の成熟肝細胞の使用に付随する欠点の多くを克服し得る。これら細胞は小さく(7〜15μm)、大きな塞栓の形成は最低限に抑えられる。また、これら細胞は広範な成長潜在能力を有し、これは、より少数の細胞が患者において肝臓組織の再構成に必要とされることを意味する。最後に、この前駆細胞は、免疫学的拒絶を誘発し得る最小限の抗原性マーカーを有し、免疫抑制剤がほとんど必要とされない、または全く必要とされないかもしれないという希望を与える。
【0020】
6. 肝前駆細胞の単離
肝臓からの肝前駆細胞の単離は、肝細胞を陽性選択するマーカーの不足が原因で、極度に困難な作業であることが知られている。肝前駆細胞の候補のための唯一の利用可能な抗体は、肝前駆細胞の亜集団(腫瘍形成性傷害にさらされた宿主から単離された場合、卵円細胞(oval cell)と呼ばれる)に対して調製されるモノクローナル抗体である。しかし、これらの抗体は造血細胞に存在する抗原と交差反応する。
【0021】
用語卵円細胞は、発癌および腫瘍形成の分野における無数の研究に由来する。発癌物質または他の腫瘍形成性傷害にさらされた動物は、成熟肝細胞の劇的な損失を受け(種々の傷害により死亡する)、そして二次的に、卵円形の核を有し、かつ肝臓抗原と造血抗原の両方を含むマーカーを有する小さな細胞(直径7〜15μm)が広がる(GrishamおよびThorgeirrson, 1998)。卵円細胞の研究は、これらが、腫瘍形成性傷害の条件下では拡張が誘導され、適切な条件では腫瘍細胞となるように進み得る肝前駆細胞であるという仮説をもたらした。卵円細胞の表現型は、腫瘍形成性傷害に依存して微妙におよび明らかに異なる。さらに、これらは、特別な支持細胞(feeder)または培地条件なしで容易に培養中に樹立されることが知られている(J. GrishamおよびS. Thorgeirrson, 1998, Hepatic Stem Cells, Stem Cells, C Potten編、Academic Press, NY)。これらの知見に基づいて、および腫瘍形成処理に由来する細胞株のいくつかを特徴付けする研究に基づいて、肝腫瘍は悪性形質転換した前駆細胞であること、そして卵円細胞は部分的または完全に形質転換した前駆細胞であることがわかった(Zvibel I, Fiorino A, Brill S, およびReid LM. Phenotypic characterization of rat hepatoma cell lines and lineage-specific regulation of gene expression by differentiation agents. Differentiation 63: 215-223, 1999)。
【0022】
肝臓の細胞治療および遺伝子治療のための最も多用途な細胞集団であると示唆されている肝前駆細胞集団を得るための試みが、過去になされてきた。米国特許第5,576,207号および同第5,789,246号(Reidら)は、細胞表面マーカーおよび側方散乱(side scatter)フローサイトメトリーを利用して、肝臓中の規定された亜集団を提供している。ラット肝細胞の亜集団は、系統関連細胞の除去、続いてOC.3陽性(卵円細胞抗原性マーカー)、AFP陽性、アルブミン陽性、およびCK19陰性(サイトケラチン19)の細胞マーカーを有する無顆粒細胞として検出された未成熟肝前駆細胞の選択によって単離されている。前述のラット肝臓亜集団は、げっ歯類の肝臓からの富化された肝前駆細胞の単離および同定において重要な特定の特性を実証する。
【0023】
このように、肝臓疾患または肝機能不全を有する患者を処置するために使用され得るヒト肝前駆細胞を単離する方法を開発する必要が存在する。本発明は、この必要性を満たし、また処置方法も提供する。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、近位肝幹細胞、肝実質細胞、または胆管の前駆細胞に対する前駆細胞であるヒト始原(primitive)肝幹細胞を含む組成物に関する。本発明のヒト始原肝幹細胞は、ep-CAM、AC133、およびアルブミンを発現する。
【0025】
本発明の別の実施態様は、肝実質細胞または胆管の前駆細胞に対する前駆細胞であるヒト近位肝幹細胞を含む組成物である。本発明のヒト近位肝幹細胞は、α-フェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する。
【0026】
本発明の別の実施態様は、ep-CAMおよびAC133を発現する細胞を同定する工程を含むヒト肝前駆細胞を単離するための方法である。本発明の方法によって単離されるヒト肝前駆細胞は、好ましくはアルブミンを発現する。本発明の好ましい実施態様において、単離されたヒト肝前駆細胞は幹細胞であり、好ましくは始原肝幹細胞または近位肝幹細胞である。
【0027】
本発明の別の実施態様は、ヒト始原肝幹細胞を単離するための方法であって、この方法は、炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地で肝幹細胞を選択する条件下で、表面上においてヒト肝臓組織に由来する細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程を含む。本発明の好ましい実施態様において、単離されたヒト始原肝幹細胞は、ep-CAM、AC133、およびアルブミンを発現し、好ましくはサイトケラチン8/18およびサイトケラチン19をさらに発現する。
【0028】
本発明の別の実施態様は、ヒト近位肝幹細胞を単離するための方法であって、この方法は、炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地で肝幹細胞を選択する条件下で、表面上においてヒト肝臓組織に由来する細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程、ならびに発生因子(developmental factor)を用いてコロニーから細胞を培養する工程を含む。本発明の好ましい実施態様において、単離されたヒト近位肝幹細胞は、αフェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する。本発明の好ましい実施態様において、発生因子は、二次的な細胞、好ましくは支持細胞、好ましくはSTO支持細胞、内皮細胞、または間質細胞によって供給される。
【0029】
本発明の別の実施態様は、ヒト近位肝幹細胞を単離するための方法であって、この方法は、炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地で肝幹細胞を選択する条件下で、ヒト肝臓組織に由来する細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程、ならびに発生因子を用いてコロニーから細胞を培養する工程を含む。本発明の好ましい実施態様において、単離されたヒト近位肝幹細胞は、αフェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する。本発明の好ましい実施態様において、発生因子は、二次的な細胞、好ましくは支持細胞、好ましくはSTO支持細胞、内皮細胞、または間質細胞によって供給される。
【0030】
本発明の別の実施態様は、単離された始原肝幹細胞である。本発明のさらに別の実施態様は、単離されたヒト近位肝幹細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】1日目(上のパネル)および5日目(下のパネル)のプラスチック培養で富化された胎児の実質細胞からのプラスチック培養上のコロニー形成を示す。
【図2】5日目から14日目までのプラスチック培養でのコロニー形成を示す。
【図3】プラスチック培養でのコロニーのふるまいを示す。
【図4】アルブミン(1列目)、CK19(2列目)、ep-CAM(3列目)、およびNCAM(4列目)について、プラスチック上でのコロニー細胞の染色を示す。
【図5】CD146およびCD133(上)、ならびにAC133(下)について、プラスチック上で培養したコロニーの染色を示す。
【図6】アルブミン(1列目)、αフェトプロテイン(2列目)、およびCK19(3列目)についての、STO支持細胞層染色の7日後の近位幹細胞の初代培養を示す。
【図7】プラスチック培養から除去され、STO支持細胞層にプレーティングされたコロニー細胞の発生を示す。
【図8】STO支持細胞層上のコロニーからの細胞の発生を示す。
【図9】STO支持細胞層上のコロニーからの細胞の発生を示す。
【図10】STO支持細胞層上のコロニーからの細胞の発生を示す。
【図11】STO支持細胞層上のコロニーからの細胞の発生を示す。
【図12】ヒト肝臓細胞におけるAFP発現細胞の富化を示す。
【図13】ヒト肝臓細胞におけるAFP発現細胞の富化を示す。
【図14】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図15】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図16】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図17A】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図17B】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図17C】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図17D】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図17E】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図18】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図19】3週間にわたってプラスチック上で培養された3つの肝臓からの9個の幹細胞コロニーの増殖曲線を示す。増殖の測定は、培養の12日後に開始した。この曲線は、細胞が5.2日の倍加時間で増殖することを示す。
【図20】新たに単離した胎児肝細胞における、およびプラスチック基層上での引き続く培養の間の、アルブミン(ALB、上のグループ)およびαフェトプロテイン(AFP、下のグループ)の発現のウェスタンブロットを示す。左側のグループにおいて、2つの細胞画分(PおよびI)がフィコールを介した遠心分離に基づいて示される。フィコール中でペレット化する細胞をPと名付け、水溶性媒体とフィコールの間の界面に層となる細胞をIと名付ける。単一の中央のブロットは、3週間プラスチック上で培養された、精製されたコロニー細胞(始原肝幹細胞)中でのアルブミンおよびAFP発現を示す。右側のパネルは対照レーンを示し、ここではタンパク質を含まない(ブランク)か、アルブミン(ALB)またはαフェトプロテイン(AFP)標準のいずれかが存在した。10μgのタンパク質が各レーンにロードされた。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
1. 定義
以下の記載において、多数の用語が本発明を記載するために広範に使用される。このような用語に与えられる範囲を含む、明細書および特許請求の範囲の明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0033】
CD:「分化のクラスター(cluster of differentiation)」または「一般的決定基(common determinant)」は、本明細書中で使用される場合、モノクローナル抗体によって認識される細胞表面分子をいう。いくつかのCDの発現は、特定の系列または成熟経路の細胞に特異的であり、他の発現は、同じ細胞の活性化、位置、または分化の状態に従って変化する。
【0034】
細胞治療:本明細書中で使用される場合、用語「細胞治療」は、自系または同種異系の物質として使用され、かつ患者の特定の標的細胞に移植されるか、またはその近傍に移植される、規定された細胞集団のインビボまたはエキソビボの移動をいう。細胞は、任意の適切な培地、キャリア、もしくは希釈剤中で、または任意の型の薬物送達系(マイクロキャリア、ビーズ、ミクロソーム、ミクロスフェア、ベシクルなどを含む)中で移植され得る。これらは、決定的な機能を提供するバイオリアクターにおいて、および肝機能障害を有する患者のための補助デバイスとして使用されるバイオリアクターにおいてもまた使用され得る。
【0035】
関連前駆細胞:1つのみの細胞運命の娘細胞を生じる高度に増殖性の細胞。「胆管関連前駆細胞」は胆管を生じ、サイトケラチン19の発現によって抗原的に認識され得るが、AFBの発現によってはされ得ない。「肝実質細胞関連前駆細胞」は肝実質細胞を生じ、AFPおよびアルブミンの発現によって抗原的に認識され得るが、サイトケラチン19の発現によってはされ得ない。関連付けプロセスは分子レベルでは理解されていない。むしろ、細胞の運命が祖先の細胞のものより狭められた場合に起こることとして経験的にのみ認識される。
【0036】
遺伝子治療:本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子治療」は、患者の特定の標的細胞への規定された遺伝的物質のインビボまたはエキソビボの移動をいい、それによって遺伝子型を変化させ、大部分の状況においては特定の疾患状態を予防または変化させるという最終的な目的のために標的細胞の表現型を変化させる。これは、標的細胞をエキソビボで修飾すること、および患者に細胞を導入することを含み得る。代替的には、ベクターを、外因性遺伝的物質を送達し祖先細胞に形質移入するために、インビボの肝前駆細胞へと標的化できる。さらに、遺伝子操作した前駆細胞は、患者の治療として、または生物学的産物の供給源としてのバイオリアクターにおいて使用され得る。この定義が言及するように、根底にある前提は、これらの治療的遺伝学的手順が究極的には顕性または潜在性の病理学的な状態を予防、治療、または変化させるために設計されるということである。大部分の状況において、遺伝子治療手順の究極の治療目的は、特定の標的細胞集団の表現型を変化させることである。
【0037】
肝細胞:肝実質細胞および胆管細胞を含む肝臓細胞の亜集団。
【0038】
肝前駆細胞:幹細胞の亜集団であり、これらの細胞は究極的には成熟実質細胞(肝実質細胞および胆管細胞を含む)を生じる。肝前駆細胞は、以下の2つの亜集団を含む:(a)肝幹細胞および(b)関連前駆細胞。
【0039】
肝幹細胞:「始原肝幹細胞」および「近位肝幹細胞」を含む、肝前駆細胞の亜集団。
【0040】
前駆細胞:本明細書中で記載される場合、用語「前駆細胞」とは、第2の細胞型を生じる第1の細胞型をいう。前駆細胞は、第2の細胞型を直接的に生じ得る。前駆細胞はまた、1つまたはそれ以上の他の中間の細胞型を通して第2の細胞型を生じ得る。
【0041】
始原肝幹細胞:本明細書中で使用される場合、用語「始原肝幹細胞」とは、近位肝幹細胞を生じる肝幹細胞をいう。
【0042】
近位肝幹細胞:本明細書中で使用される場合、用語「近位肝幹細胞」とは、肝実質細胞および胆管上皮細胞を生じる肝幹細胞をいう。
【0043】
肝臓細胞:本明細書中で使用される場合、用語「肝臓細胞」とは、それらの起源または細胞運命に関わらず、正常肝臓において存在するすべての型の細胞をいう。
【0044】
幹細胞:本明細書中で使用される場合、用語「幹細胞」とは、1つより多くの細胞運命を有する(すなわち多能性である)娘細胞を生じ得る増殖性の高い細胞をいう。全能幹細胞(例えば、胚性幹細胞(ES細胞)または哺乳動物胚の8細胞段階までの胚細胞)は、自己複製(自己維持)能力を有し、幹細胞はそれ自体と同一な娘細胞を産生する。対照的に、決定された幹細胞(例えば、造血性幹細胞、神経細胞性幹細胞、皮膚性幹細胞、または肝幹細胞)は多能性であり、広範な増殖能力を有するが、自己複製能力を有することについては疑問である。全能幹細胞の場合においては、いくつかの娘細胞は親と同一であり、いくつかは、特定の運命に「関連」し、それらの遺伝的潜在能力を親のものよりも少なく制限する。決定された幹細胞の場合においては、いくつかの娘細胞は多能性を保持し、いくつかはそれを喪失して単一の特定の運命に関連している。
【0045】
用語「1つ(one)」、「a」、または「an」が本開示において使用される場合、それらは他に示されない限り、「少なくとも1つ」または「1つまたはそれ以上」を意味する。
【0046】
2. 肝細胞系列についての診断マーカー
αフェトプロテイン(AFP)およびアルブミンは共に細胞質タンパク質であり、タンパク質としてアッセイされる場合、肝細胞系列についての特に信頼できるマーカーである。これらのタンパク質の変異体型をコードするメッセンジャーRNAは、造血前駆細胞において発現されるが翻訳されない;例えば、AFP mRNAの変異体型は、エキソン1コード配列が、代替的なエキソン1または2つのエキソンのいずれかで置換され、肝細胞におけるものと異なっている(Kubota、Storm、およびReid、投稿中;また特許出願中)。それゆえに、これらの2つのタンパク質の発現は、肝臓における他の細胞型からの肝亜集団の同定のための基礎である。肝臓の発生において、AFPおよびアルブミンの存在は、肝前駆細胞の強力な陽性指標として認められている。肝臓発生の最も初期の段階において、これらの細胞は、胆管系列および肝実質細胞系列の両方に入る子孫を産生し得る。これらの娘細胞が胆管系列に関連する場合、AFP発現は停止する。しかし、AFP発現は肝実質細胞系列においては周産期に抑制されるまで持続し、アルブミン発現は成体肝実質細胞の主要な特徴の1つとしてそのまま留まる。
【0047】
3. ヒト肝臓前駆細胞のプロセシング
肝臓細胞の単離は通常、組織の単一細胞懸濁物への酵素的および機械的解離、続いて密度勾配遠心分離、遠心分離的精製、ディファレンシャル酵素消化のプロトコールを用いる分画を含み(すなわち肝星細胞)、および/または細胞培養を使用する選択を伴う(Freshney、「Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique」1983, Alan R Liss, Inc. NYに概説されている)。肝臓組織は、胎児、新生児、乳児(誕生から1歳まで)、小児(1歳から思春期まで)、または成人(思春期過ぎ)から得られる。密度勾配遠心分離が、異なる細胞集団(例えば、肝芽細胞)を分画および単離するために好ましく使用される。
【0048】
4. 近位肝幹細胞および他の前駆細胞の培養
近位肝幹細胞および肝関連前駆細胞は、胚性肝間質支持細胞と、規定のホルモンおよび成長因子の混合物を添加した無血清培地とを必要とする[1-6]。近位肝幹細胞、関連前駆細胞、および二倍体成体肝細胞の、クローン原性の拡張および鍵となるマーカーの維持の延長は、胚性肝間質支持細胞が、インスリン、トランスフェリン/Fe、および好ましくはヒドロコルチゾンを添加した無血清のホルモン的に規定された培地と組み合わせて、STO支持細胞と置き換えられた場合に起こり得る[7]。これらの条件が胎児組織からの多様な範囲の前駆細胞および二倍体成体細胞のコロニー形成さえも支持するならば[7]、異なる条件が始原肝幹細胞を選択するために必要である。
【0049】
5. 始原肝幹細胞の単離
本発明は、ヒト肝臓組織から始原肝幹細胞を単離する方法を包含し、この方法は、肝臓組織に由来する細胞懸濁液、好ましくは実質細胞について富化されたものをプラスチック表面に適用する工程と、成熟肝細胞、近位肝幹細胞、および関連前駆細胞を除去するストリンジェントな培養条件に細胞を供する工程とを含む。ストリンジェントな培養条件には、炭水化物代謝のレギュレーター、鉄の供給源、膜産生因子、および好ましくは抗酸化剤を補充した無血清培地の使用が含まれる。
【0050】
好ましい炭水化物代謝のレギュレーターはインスリンである。好ましい鉄の供給源はトランスフェリンである。好ましい膜産生因子は、1種またはそれ以上の脂質、最も好ましくは遊離脂肪酸を含む組成物である。好ましい抗酸化剤はセレンである。無血清培地は、好ましくはヒドロコルチゾンでさらに補充される。肝臓組織は、好ましくは胎児、新生児、乳児、小児、児童、または成人から、最も好ましくは胎児から得られる。
【0051】
始原肝幹細胞は、低い細胞密度(例えば、1000〜2000細胞/cm2)でプラスチック表面上で肝臓に由来する細胞懸濁物を培養することによって単離される。ストリンジェントな培養条件により、ヒト肝臓から、近位肝幹細胞の前駆細胞である始原肝幹細胞が出現する。ヒト肝臓由来のこれら始原肝幹細胞は、Ep-CAM、AC133、CK8/18、CK19、およびアルブミンを同時発現し、それらの亜集団は、N-CAM、CAM5.2、およびc-kitを発現する。
【0052】
当業者は、本発明が他の組織型から始原細胞を単離するために使用され得ることを認識する。
【0053】
6. 近位肝幹細胞の単離
ヒト近位肝幹細胞は、肝実質細胞もしくは胆管上皮、またはその組み合わせを生じる。ヒト近位肝幹細胞は、Ep-CAM、CK8/18、サイトケラチン19、αフェトプロテイン、およびアルブミンを同時発現し、亜集団はAC133を発現する。ヒト近位肝幹細胞は種々の方法によって単離され得、これらには(i)EP-CAMを同時発現する細胞の免疫選択、(ii)好ましくは実質細胞について富化した肝臓由来の細胞懸濁物を、発生誘導因子を用いて培養すること、または(iii)ヒト始原肝幹細胞を発生誘導因子を用いて培養することが含まれる。発生誘導因子は好ましくは二次的な細胞によって供給される。好ましい二次的な細胞には、STO支持細胞、胚肝間質細胞、または内皮細胞が含まれる。
【0054】
7. 免疫選択による肝前駆細胞の単離
本発明はまた、肝前駆細胞に特異的な細胞表面マーカーを免疫選択することに基づく肝臓由来の細胞懸濁物から肝前駆細胞を単離する方法を含む。肝前駆細胞は、ep-CAMを発現する細胞を選択することによって本発明に従って単離され得る。好ましくはこれらの細胞はAC133をさらに発現する。本発明の免疫選択された肝前駆細胞は、好ましくはさらにアルブミンを発現し、より好ましくはさらにサイトケラチン19を発現する。好ましくは、免疫選択された肝前駆細胞は幹細胞である。
【0055】
本発明の1つの実施態様において、単離された肝前駆細胞は始原肝幹細胞である。本発明の別の実施態様において、単離された肝前駆細胞は近位肝幹細胞である。
【0056】
8. 肝前駆細胞の産生
本発明はまた、始原肝幹細胞から近位肝幹細胞および関連前駆細胞を産生する方法を包含し、この方法は、STO支持細胞層上およびHDM中に直接的にプレーティングする工程、または、培養プラスチック上のコロニーからSTO支持細胞層に始原肝幹細胞を移す工程のいずれかの工程と、始原肝幹細胞のコロニーから近位肝幹細胞が出現することを可能にする工程とを含む。
【0057】
近位肝幹細胞および関連前駆細胞はまた、ペトリ皿(好ましくは、電荷を帯びていないポリスチレン表面)、組織培養プラスチック(好ましくは、イオン化ガスにさらしたポリスチレン表面であって、ポリスチレンが、細胞が結合する側に向かって好ましい方向の負電荷(または正電荷)で分極している)、マイクロキャリア(好ましくは、細胞が結合し得る培養ビーズ)、繊維材料(好ましくは、ナイロン、コットン、ポリエステル)、合成骨格材料(好ましくは、ポリアクチド、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(オルトエステル)、もしくは他の合成材料から作られたもの)、またはスポンジ(好ましくは、天然もしくは合成のスポンジ)を含む、コートされていない表面上で培養することによって始原肝幹細胞から産生され得る。
【0058】
近位肝幹細胞および関連前駆細胞はまた、生物学的表面上で培養することによって始原肝幹細胞から産生され得る。生物学的表面は、上記のカテゴリーの表面上にコートされ得るかまたは調製され得る。従って、例えば、ペトリ皿、組織培養プラスチック、マイクロキャリア、または繊維材料に、細胞外マトリックスコーティングをコートし得る。本発明において使用される生物学的表面には以下が含まれる:(i)細胞外マトリックス(細胞によって産生されるタンパク質および炭水化物の複雑な混合物であり、細胞の外側および細胞間に局在し、コラーゲン、接着タンパク質、プロテオグリカン、および他のタンパク質を含む)、(ii)細胞外マトリックス成分(フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン(20ファミリーより多くのコラーゲンがあり、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン(これらの3種は細胞培養において現在最も一般的に使用されている)を含む)、細胞接着分子すなわち「CAM」(カルシウム依存性のものもそうでないものもある)、およびプロテオグリカン(1つまたはそれ以上のグリコサミノグリカン鎖(グルクロン酸またはイズロン酸+アミノ糖のダイマー単位のポリマー)を結合するコアタンパク質からなる分子であり、これらは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、デルマタン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ヘパリンプロテオグリカンを含む)を含む、細胞接着、増殖、および/または組織特異的機能の発現の最適化のために単独でまたは組み合わせて使用される個々の精製したマトリックス成分)、(iii)細胞外マトリックスが富化された組織抽出物(Matrigel(グループIにおいて示された任意の表面にコートされ得る、移植可能なマウス胚癌腫の尿素抽出物)、ECM(希釈アルカリ、希釈界面活性剤、高塩濃度抽出物、尿素などを使用し、表面(グループIに記載のいずれか)をコートする細胞外マトリックス成分が富化された滲出物を残した、培養細胞の抽出物)、羊膜マトリックス(希釈アルカリ、希釈界面活性剤、高塩濃度抽出物、尿素などを使用し、羊膜に存在するマトリックス成分を残した、羊膜の抽出物)、およびバイオマトリックス(高塩濃度(例えば、>3M NaCl)およびヌクレアーゼを用いて、すべての組織コラーゲンおよび接着タンパク質のような任意の付随する成分を残した、組織の抽出物)を含む)、(iv)血清コーティング(ペトリ皿または組織培養ディッシュを血清でコートする場合、血清中に高レベルで存在する接着タンパク質(とりわけフィブロネクチン)を添加する)、ならびに(v)ポリリジンまたはポリロイシン(これらの正に荷電したアミノ酸を用いるコーティングは、上皮細胞を優先的に結合するために使用される)。
【0059】
近位肝幹細胞および関連前駆細胞はまた、Anthony AtalaおよびRobert P. Lanza編、Methods of Tissue Engineering, Academic Press, New York 2002(参照として本明細書に組み入れられる)において記載される条件下で培養することによって始原肝幹細胞から産生され得る。本発明によって産生される肝前駆細胞には、始原肝幹細胞、近位肝幹細胞、肝実質細胞関連前駆細胞、および胆管関連前駆細胞が含まれる。
【0060】
9. 治療的アプローチ
本発明の単離された前駆細胞は、肝臓に方向付けられた細胞および/もしくは遺伝子治療のために、またはワクチンを生成するためのウイルス産生(例えば、C型肝炎ウイルス)のための宿主となる細胞として、使用され得る。また、本発明の前駆細胞は、肝臓生検(例えば、パンチ生検)からエキソビボで拡張され得、拡張された細胞は、自系もしくは同種異系の細胞、または遺伝子治療のために使用されるか、あるいは臨床的にまたは学問的な研究のために使用され得る生体人工肝臓を作製するためにバイオリアクターに播種するために使用される。このことにより、患者の肝臓の主要な侵襲的外科的切除の必要性が排除される。
【0061】
前駆細胞が培養中に確立されれば、多数の遺伝子送達ベクター系のいずれかを使用して遺伝子移入を実行できる。本発明の前駆細胞の増殖特性により、十分な遺伝子の挿入および発現のための細胞増殖を必要とする一定の遺伝子送達ベクター(すなわち、レトロウイルスベクター)を使用するエキソビボ遺伝子移入における使用が可能となる。
【0062】
遺伝子治療のための代替的なアプローチは、特異的に前駆細胞を標的化するベクターを設計すること、次いで、関心対象の遺伝子とともに、そのベクターを患者に直接的に注入することである。このベクターは、内因性の前駆細胞集団を標的化および修飾する。
【0063】
本発明の前駆細胞は、自系もしくは同種異系の、肝臓に方向付けられた細胞または遺伝子治療において使用され得る。自系肝前駆細胞の使用により、移植細胞の拒絶に関する大きな懸念が排除されることが明らかである。本発明の前駆細胞は、同種異系の細胞導入に関して特に魅力的である。なぜなら、それらの抗原性プロフィールは最小の免疫学的拒絶現象を示すからである。
【0064】
一旦自系もしくは同種異系の前駆細胞が単離、精製、および培養されると、それらは、遺伝的に改変されるかまたはインタクトなままで残し得、インビトロで拡張され得、次いで宿主に移植して戻され得る。遺伝的改変が所望される場合、遺伝的改変の後および移植の前に、これらの遺伝的に改変された細胞は拡張され得、および/または優勢な選択マーカーの取り込みおよび発現に基づいて選択され得る。移植物は、肝臓の区画または異所的部位または異所性部位に戻され得る。肝臓の区画への移植のために、門脈注入または脾臓内注射が使用され得る。脾臓内注射は選択的投与経路であり得る。なぜなら、脾臓内注射を介して移植された肝前駆細胞は肝臓の区画に移動するからである。
【0065】
さらなる医学的手順は、移植された肝前駆細胞の肝移植の効果を補助し得る。動物モデルにより、部分的肝切除術において、血管新生因子および他の成長因子の投与により、移植および移植された肝実質細胞の生存度が促進されることが示されている。代替的なアプローチは、異所的部位に、遺伝的に改変した前駆細胞を移植することである。
【0066】
これまで、細胞の調達、細胞を凍結保存できないこと、塞栓形成、および免疫学的拒絶などを含む、肝細胞治療アプローチに関連する問題が存在していた。現在の肝細胞治療アプローチに伴う問題は、使用されるドナー細胞が主として成体肝臓細胞であり、単離および再注入の後の寿命が短いということによるものであると考えられる。さらに、成体細胞の使用により強力な免疫学的拒絶を生じる。本発明の前駆細胞は、免疫学的拒絶現象を誘発するそれらの能力が限定されていること、凍結保存されるそれらの能力、それゆえにそれらの組織型に機会を与えること(それによってドナー細胞をレシピエントに合致させること)、ならびに「規格品」製品を与える能力のために、そしてそれらの広範な再生能力のために、より高い効力を与える。
【0067】
遺伝子治療に関して、進行中の試みは「標的化された注射可能なベクター」、すなわち発生下での臨床治療のための最もポピュラーな経路を利用する。これらのアプローチは、免疫学的な問題およびベクターの一過性発現の両方に起因して、限られた効力を有する。有利な価値のあることが証明された遺伝子治療のための唯一の経路はエキソビボ遺伝子治療であり、造血前駆細胞によってほぼ独占的に行われている。本発明者らは、ベクターは精製された前駆細胞にエキソビボで導入され得;改変された細胞が選択されてインビボで再導入されるので、前駆細胞を用いるエキソビボ遺伝子治療(またはこれらの前駆細胞に何らかの方法で標的化した注射可能なベクターの使用)が有効であることが証明されると予測している。前駆細胞の利点は、それらの膨大な拡張能力、それらの(あるとしても)最小限の免疫学的反応の誘導、または組織型になる能力、そしてそれゆえに、レシピエントの免疫学的表現型に合致する能力、および肝実質細胞と胆管細胞の両方を産生するように分化するそれらの能力である。
【0068】
10. 他の用途
ヒト肝臓の始原肝幹細胞および近位肝幹細胞についての用途は多く、多様である。それらには以下が含まれる:1)ヒト細胞上での研究;2)ワクチンまたは抗ウイルス剤の産生;3)毒物学的研究;4)薬物開発;5)タンパク質製造(種々のヒト特異的因子の製造のための宿主として細胞を使用する);6)肝細胞治療;7)肝臓遺伝子治療;および8)研究、毒物学的および抗微生物学的研究、タンパク質製造、または臨床的に肝臓補助系として使用され得る生体人工肝臓。始原肝幹細胞および近位肝幹細胞が肝実質細胞および胆管細胞に分化する能力を考慮すると、本発明の細胞は、それらが置かれる微小環境に依存して肝臓および胆管の両方の細胞運命のために使用され得る。
【0069】
ヒト肝前駆細胞(4つすべてのカテゴリー)の利用可能性は、ヒト細胞上でのはるかにより広範な研究を可能にし、肝臓細胞および遺伝子治療の首尾よい形態の開発を容易にし、研究における、および臨床補助デバイスとしての両方での使用のためのヒト生体人工肝臓の開発を可能にするはずである。現在、健常なヒト組織の限られた供給は、肝臓細胞治療またはヒト生体人工肝臓における臨床プログラムを不可能にしている。前駆細胞集団は、その限られた供給を克服するか、または少なくとも大いに緩和する、十分な拡張能力を有するはずである。さらに、これらの細胞およびそれらの直接の系統的子孫は、成熟肝細胞で観察されるのと比較して、寒い場合と暖かい場合の両方で、虚血に対して優先的な生存を示す。これは、肝臓移植のためにまたは健常成熟肝細胞を産生するために使用することができない肝臓が、前駆細胞の供給源であることを意味する。
【0070】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって例証される。
【実施例】
【0071】
実施例1
胎児組織からの肝細胞懸濁物の調製
肝臓組織を、妊娠の選択的終止によって得られた妊娠18〜22週齢の間の胎児から得た。肝臓組織試料を、10%胎仔ウシ血清を補充したRPMI 1640中に一晩浸した。
【0072】
細胞バッファー(ウシ血清アルブミン(BSA Fraction V, 0.1%, Sigma, St. Louis, Mo.)を補充したRPMI)、亜セレン酸(300pM)、および抗微生物剤混合物、AAS(Gibco BRL/Invitrogen Corporation, Carlsbad, California)中での調製洗浄後に、組織体積は2〜12mlの範囲であった。肝臓組織を必要に応じて、IV型コラゲナーゼおよびデオキシリボヌクレアーゼ(Sigma, St Louis, Mo.; 両方とも6mg/mL)を含む25mlの細胞バッファー中で、消化のために3mL以下のフラグメントに細分した。インキュベーションを、32℃で15〜20分間、頻繁に攪拌しながら行い、細胞凝集物の均質な懸濁物を得た。次いで、懸濁物を40ゲージのふるいを通し、5分間1200RPMで遠心した。その後、EGTA(0.2mM, Sigma)、Hepes(20mM, Boehringer Mannheim)、BSA(0.1% Sigma)、DNase(0.01% Sigma)を補充し、HBSS modと呼ばれるHanks緩衝化塩溶液のカルシウムを含まない溶液中で再懸濁した。
【0073】
この酵素的に消化された懸濁物は、造血亜集団および肝亜集団を含む。酵素的消化懸濁物の抗原性プロフィールを表1に示す。AFP発現細胞はもともとの細胞懸濁物の6〜9%であり(図12)、アルブミン発現細胞もそれに匹敵するパーセンテージであり、造血細胞がかなり夾雑していた(表1におけるCD45およびグリコホリンA発現細胞のパーセンテージを参照されたい)。もともとの細胞懸濁物が凍結保存される場合、赤血球細胞のようないくつかの細胞は喪失し、アルブミンおよびAFPを発現する細胞が15〜20%まで富化される(表1)。しかし、最も顕著な富化は、コラゲナーゼを用いる部分的酵素消化で起こり、実質細胞の凝集を起こし、次いでこれを以下に記載するように低速遠心分離を繰り返して非実質(浮遊)細胞から分離し、80%より多くがアルブミンおよびAFPを発現する細胞である細胞懸濁物を生じる(表1)。
【0074】
次いで、造血細胞(大部分が赤血球および赤芽球)および浮遊している非実質細胞を、HBSS mod中で5分間、30g(300RPM)で低速遠心分離を反復することによって実質細胞画分から分離した。ペレットを40mlのHBSS modに再懸濁し、色が最小限の赤血球細胞の夾雑を示すまで再遠心分離した。通常、他の研究者によって報告されているように、これは4または5回の遠心分離および再懸濁のサイクルを必要とした[14, 15]。凝集塊形成を、新たなコラゲナーゼ溶液中での2回目の酵素的消化、続いて50μmナイロンメッシュを通してふるいかけ、およびカルシウムを含まないバッファーに細胞を戻すことによって最小限に抑えた。
【0075】
得られる細胞懸濁液を2回洗浄し、次いで5mLアリコート(各々約2×107細胞を含む)を、50mL Falconチューブ中の5mL Ficoll Hypaque(Amersham Pharmacia, Piscataway, NJ)上に重層し、3000RPMで20分間遠心分離した。界面およびペレットからの細胞を別々にプレーティング培地(補充したRPMI)に再懸濁し、血球計を用いる計数および生存度評価のために各々のアリコートをトリパンブルーで染色した。細胞の生存度は決まりきったように95%より高かった。実質細胞の富化のための低速遠心分離法により造血構成物が排除され、約80%がAFP発現細胞である細胞懸濁物が残った。細胞が、AFP、アルブミン、およびCK19を発現し、造血マーカーを発現しないならば、AFP発現細胞の大部分は近位肝幹細胞である(表1)。
【0076】
(表1)新たに単離された胎児肝細胞のフローサイトメトリー分析
OCS=もともとの細胞懸濁物;C-OCS=もともとの細胞懸濁物を専用のバッファー中で凍結保存した。後に細胞を融解し、次いでマーカーの発現について分析した。多くの細胞(特に赤血球細胞)(除核された亜集団)は凍結保存で生存しない。実質調製物=低速回転で遠心分離を繰り返すことによる赤血球細胞および他の浮遊非実質細胞の除去後;n.d.=行っていない。
【0077】
実施例2
成人組織からの肝細胞懸濁物の調製
ヒト肝臓を認可された臓器調達機関から入手した。ドナーは脳死した13歳の女性であった。肝臓を臓器全体灌流技術を使用して消化した。次いで、単一細胞懸濁物を、2ステップOptiprep勾配(9-12.5%)を使用して、Cobe 2991セルウォッシャー上で分画して生存可能な細胞を得た。次いで、Cobe 2991上でのさらなる分画のために、等量の9%分画細胞(バンド1)および12.5%分画細胞(バンド2)を25% Optiprepと個々に混合することにより、生きている細胞を残った死細胞から分離した。前方(forward)および側方の散乱パラメーターのフローサイトメトリー分析に基づき、バンド1およびバンド2の細胞組成は同様であると思われた。細胞を凍結保存した。
【0078】
実施例3
成体ヒト肝細胞からのコロニー形成
コロニー形成による肝幹細胞の存在を評価するために、実施例2からの細胞を融解し、12,500生細胞/ウェルの密度で、6ウェルプレート上、三つ組で、STO-5支持細胞層上にプレーティングした。使用した組織培養培地は、ペニシリン/ストレプトマイシン(50U/ml/50μg/ml)、ウシ血清アルブミン(0.2% w/v)、トランスフェリン(10μg/ml)、遊離脂肪酸(7.6μEq/L)、ニコチンアミド(nicotinomide)(4.4mM)、セレン(3×10(-8)M)、銅(1×10(-6)M)、2-メルカプトエタノール(5×10(-5)M)、L-グルタミン(2mM)、インスリン(5μg/ml)、ヒドロコルチゾン(10(-7)M)を含み、上皮成長因子の添加あり(+EGF)または添加なし(-EGF)の、DMEM F12であった。
【0079】
細胞を5日間培養し、固定し、そして光学顕微鏡によって可視化することによってコロニーを計数した。分画していないいずれのウェルにおいてもコロニーは観察されなかった。このことは、死んでいるかもしくは死につつある細胞、またはOptiprep勾配上での遠心分離の前の何らかの他の細胞調製物の成分の阻害効果に起因する可能性がある。しかし、コロニーは、バンド1とバンド2の両方の細胞画分から観察された。バンド1からの細胞を含む3ウェルにおいて、総計8のコロニーが観察され(+EGF培地から4個、-EGF培地から4個)、バンド2からの3ウェルにおいて、総計13のコロニーが観察された(+EGF培地から11個、-EGF培地から2個)。この実験から計算されたコロニー形成細胞の全体の頻度は0.03%であった。
【0080】
実施例4
成体ヒト肝細胞の亜集団におけるアルブミン、CD133、およびEp-CAMの同時発現
細胞を、本質的に実施例2に記載されるようにドナーの肝臓から単離した。CD45細胞表面抗原、または白血球共通抗原(白血球(leukocyte)上で広範に発現するチロシンホスファターゼ)を発現する細胞の存在を、抗CD45モノクローナル抗体を使用する蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって評価した。約17%の細胞がCD45陽性であった(図14A)。CD45陽性細胞を、抗CD45モノクローナル抗体を使用する磁気セルソーティングならびにsuper-paramagnetic MACS MicroBeadsおよびautoMACS(自動化卓上磁気セルソーター)によって取り除いた。磁気ビーズ標識抗体および機器は共に、Miltenyi Biotecによって供給された。CD45陽性細胞はまた、「パニング」、蛍光活性化セルソーティング、または他の陰性免疫選択の形態によって除くことができる。除去後、肝細胞調製物に残存しているCD45陽性細胞の画分は、約1%まで減少した(図14B)。CD45陽性細胞の除去は、肝実質細胞および肝前駆細胞および幹細胞上の抗原のさらなる分析を容易にする。これはまた、これらの細胞の富化された集団の単離を容易にするはずである。
【0081】
a. アルブミン
CD45陽性細胞の除去後、肝細胞の試料をヒト血清アルブミンの発現について分析した。細胞を、パラホルムアルデヒドで固定し、0.2% Triton X-100界面活性剤処理によって透過化し、そしてヒトアルブミンに対するマウスIgG1モノクローナル抗体、および蛍光色素A647で標識したマウス免疫グロブリンG1(IgG1)に対するアフィニティー精製したヤギ抗体との連続的インキュベーションによって染色した。バックグラウンド染色および細胞の自己蛍光を、抗アルブミンモノクローナル抗体の代わりに、ヒト抗原に対する特異的結合活性を有しない、精製したマウスミエローマタンパク質(IgG1も)を使用することによって測定した。細胞の約97.5%がアルブミン陽性であった(図15A)。陽性染色のゲーティング(赤色の輪郭)は、マウスミエローマタンパク質対照(示さず)に対する比較によって決定した。
【0082】
前方光散乱および側方光散乱のFACSによる測定は、細胞集団を特徴付けするために使用され得る。前方および側方の散乱は、主として、それぞれ細胞サイズおよび細胞内構造の複雑さの関数である。図15Bに示されるように、成体ヒト肝臓からのアルブミン陽性細胞集団は、比較的高度の前方(FSC)および側方の散乱(SSC)を有する主要なクラスの細胞を含む。サイズおよび形態の分析、ならびに生化学的および抗原性マーカー(示さず)は、これらの細胞が、成熟した、小さな肝実質細胞(平均サイズ、直径約18〜22μm)と一致する特性を有することを示す。正常成体ヒト肝臓からの最も大きな肝実質細胞(直径約>30μm)は、明らかに本発明者らの調製物において下方に表され、これはおそらく臓器の収集と灌流との間の期間で死滅可能性が高いこと、および/または単離手順の間に非常に損傷を受けやすいことのためである。しかし、図15Bはまた、成熟した小さな肝実質細胞に加えて、より低い前方および側方の散乱によって特徴付けられる多くの細胞もまた、アルブミンを発現することを示す。調製物中のわずかな(約2.5%)アルブミン陰性細胞が、ほとんど独占的に非常に低い前方および側方散乱を示す(図15C)。これらは死滅した細胞または非常に小さな細胞(例えば、赤血球の後期前駆細胞)であり得る。
【0083】
b. CD133
抗原CD133(AC133)は、5つの膜貫通ドメインを有する120キロダルトンの細胞表面糖タンパク質である。このタンパク質は、マウスタンパク質プロミニンに類似かまたはオルトロガス(orthologous)なものである。ヒトCD133抗原はもともと、初期前駆細胞(これには、血液形成(造血)細胞の系列における幹細胞が含まれる)のサブセット上で同定された。特定の他の未成熟細胞はCD133を発現し、これには、ヒト胚(5週齢)において発生している上皮、内皮細胞前駆細胞、および神経細胞前駆細胞、または幹細胞が含まれる。CD133の発現はまた、あるヒト腫瘍および腫瘍由来細胞株(例えば、網膜芽細胞腫および結腸癌腫CaCo-2)について報告されている。このタンパク質は、原形質膜に豊富なもの(例えば、微小絨毛)において優先的に濃縮されて見い出される。上皮細胞で見い出される場合、これは、先端に優先的に局在するが、膜表面の底側面には局在しない。特に免疫組織化学による以前の研究は、多くのヒト組織(成人肝臓を含む)においてそのタンパク質についての検出可能なメッセンジャーRNAが存在するにも関わらず、成体ヒト上皮組織においてCD133タンパク質発現を実証することに失敗してきた。
【0084】
本発明者らは、本発明者らのCD45除去成体ヒト肝臓細胞調製物において、CD133抗原を発現する細胞を探索するために、蛍光標識モノクローナル抗体を用いる染色およびFACSによる分析を使用した。以前のネガティブな報告を考慮すると、驚くべきことに、本発明者らは、CD45除去肝臓細胞の大部分が(図14Bを参照されたい)、CD133について陽性染色を示すことを観察した。図16Aは、児童(2歳)個体の肝臓からの調製物中の約58%のCD133陽性細胞を示す。CD133陽性細胞(小さなサイズの成熟肝実質細胞を含む)のかなりの集団の存在は、成人を含むさらなる個体からの細胞調製物において観察された。CD133陽性集団(図16Aの上のボックス)は、側方光散乱(図16A)および前方光散乱(示さず)に基づいて成熟(小さな)肝実質細胞として同定された調製物中、細胞のほぼ半分を占める。これはまた、光散乱から判断して、成熟肝実質細胞よりも小さく形態学的に区別される多くの細胞を含む。
【0085】
磁気セルソーティングを用いて、CD133を発現する肝臓細胞を陽性選択することができる。図16Bは、autoMACS装置(Miltenyi Biotec)を利用する磁気ソーティング1サイクル後の、回収された細胞の約75%までのCD133陽性細胞の富化を示す。より多い量の抗体結合MACS MicroBeadsの使用およびソーティング条件の調整[効果に対する言葉を挿入−「当業者」には簡単であるはずである??]は、ほぼ定量的な収量でより高度に富化されたCD133陽性細胞集団の単離を可能にするはずである。(他の陽性免疫選択の方法を使用してCD133陽性細胞を富化できることにも注意のこと)。側方散乱(図16B)および前方散乱(示さず)から判断すると、富化されたCD133陽性細胞は、CD45除去肝細胞調製物において同定されたCD133亜集団のすべてを占める。
【0086】
c. Ep-CAM
上皮細胞接着分子(Ep-CAM(GA733-2、CO17-1A、EGP40、KS1-4、およびKSAとしても知られる))は、同種親和性の、カルシウムイオン非依存性の細胞−細胞接着に関与する糖タンパク質である。このタンパク質は、多くのヒト上皮組織において発現され、増殖している上皮細胞(腫瘍細胞を含む)において実質的にアップレギュレートされるようである。C. J. de Boerおよび共同研究者らは、8週齢胚ヒト肝臓において、大部分の肝実質細胞が検出可能なEp-CAMタンパク質を発現することを報告した[de Boer CJ, van Krieken JH, Janssen-van Rhijn CM, Litvinov SV (1999). 「Expression of Ep-CAM in normal, regenerating, metaplastic, and neoplastic liver」, Journal of Pathology 188: 201-6]。対照的に、正常ヒト成体肝臓において、彼らは、肝実質細胞においてEp-CAM発現を検出できず、そして胆管上皮細胞のみがこの抗原に対して陽性に染まると報告した。最後に、この抗原は、肝臓の再生および修復が胆汁性肝硬変によって誘導される状況において、ならびに特定の肝臓の腫瘍(特に胆管癌)の細胞において、肝前駆細胞として同定された細胞中で検出された。
【0087】
FACS分析によって、本発明者らは、児童と成人の両方から、分画していないヒト肝臓細胞調製物中で、Ep-CAM陽性細胞のマイナーな集団を一貫して検出している。Ep-CAM陽性集団は、約0.4〜2.5%の細胞を占める。図17に示されるように、Ep-CAM陽性細胞はまた、CD45陽性細胞の>95%の除去の後に、肝細胞集団において観察され得る。図17Bは、1つのこのようなヒト肝臓調製物からのEp-CAM陽性細胞を示す(任意の公知のヒト抗原を染色しない対照抗体についての同じゲーティング領域における0.15%と比較して(図17A)、赤い輪郭によって示されるようにゲーティングされたプロット領域中の0.57%;従って、約0.57-0.15=0.42%の細胞がEp-CAM陽性である)。二重標識分析(データ示さず)により、CD45除去集団におけるEp-CAM陽性細胞の大多数は予測どおりCD45陰性であることが実証される。しかし、本発明者らのヒト肝調製物中におけるいくつかの(大体1%)のCD45陽性細胞もまたEp-CAMを発現するようである(データ示さず)。
【0088】
d. Ep-CAM、CD133、およびアルブミンの同時発現
本発明者らは、成体ヒト肝臓から、Ep-CAMとCD133の両方を発現する肝臓細胞を探索した。細胞を、各々異なる蛍光色素と直接結合体化したEp-CAMおよびCD133に対するモノクローナル抗体とともにインキュベートした。図17Cに示されるように、この特定のCD45除去成体ヒト肝臓細胞調製物における細胞の約42%が、CD133について検出可能に染色された。(図16Aに示される実験よりもいくぶん低めのここでのCD133染色の程度は、異なるドナーからの肝臓細胞調製物間の実際の違いから、年齢もしくは他の変数の結果として、または同定されていない実験的技術のバリエーションから生じる可能性がある)。Ep-CAMについて強力に染色された集団中の細胞の間で(図17Bの赤い境界内に示される)、約70%がまたCD133について陽性染色された(図17D)。このように、この特定の肝臓調製物において、全体のCD45陰性細胞の約0.3%がEp-CAMおよびCD133を同時発現した。
【0089】
図17に示される実験のために使用される細胞調製物は、図14および15において示されるアルブミン発現の分析において使用されたものと同一であった。上記のように、CD45除去細胞集団における細胞の約97.5%がアルブミンについて陽性染色され、そしてわずかなアルブミン陰性細胞が低い前方散乱および側方散乱の特有のパターンを示した。図17Eに示されるように、Ep-CAMおよびCD133を同時発現することが見い出された実質的にすべて(約99.5%)の細胞が、アルブミン陽性細胞に特徴的な前方散乱および側方光散乱を示した;これらは、アルブミン陰性細胞のすべてを含む前方散乱対側方散乱のプロットの境界を付けた領域の完全に外側にある(図15Cを参照されたい)。このように、Ep-CAMおよびCD133を同時発現する出生後のヒト肝臓細胞はまた、ヒト血清アルブミンを発現する。
【0090】
e. CD133発現細胞およびEp-CAM発現細胞の同時富化
図16Bに示されるように、磁気セルソーティングのような陽性免疫選択は、ヒト肝臓細胞調製物からのCD133陽性細胞の富化を可能にする。本発明者らは、Ep-CAMの発現のために、開始集団(すでにCD45除去されている)およびCD133富化調製物における細胞を評価した。図17Aは、開始集団の少なくとも1.1%(慎重に厳しくゲーティングされた)がEp-CAMを発現した。CD133陽性細胞の富化後、得られる集団(図5B)は、少なくとも4.5%のEp-CAM陽性細胞を含む。このことは、成体ヒト肝臓からの細胞の亜集団におけるCD133およびEp-CAMの同時発現を確証し、そしてこれらの細胞が陽性免疫選択によって富化され得ることを実証する。これら2種の表面抗原を同時発現する細胞による前方および側方散乱分析(図17の実験におけるように)は、やはりほぼ100%のこれらの細胞がまた、アルブミン陽性であるに違いないことを示す。
【0091】
上記の成体ヒト肝臓細胞は、CD133またはEp-CAMのいずれかと一緒に、肝実質細胞系列のプロトタイプマーカーであるアルブミンを同時発現し、それゆえに、本明細書中に記載されるヒト胎児肝臓からの特定の肝幹細胞の同じ表現型プロフィールを有する。さらに、本明細書中に記載される成体ヒト肝細胞は、成熟肝実質細胞よりも(18〜22ミクロン直径の「小さな肝実質細胞」でさえも)小さなサイズの肝臓細胞である。成体ヒト肝臓が、操作的に肝幹細胞を規定する条件下で(すなわち、無血清培地中で、STO支持細胞を用いて)コロニーを形成し得る細胞を含むという知見とともにまとめると、アルブミン、Ep-CAM、およびCD133の同時発現は、成人肝臓中でのこのような幹細胞の存在を示す。本明細書中に記載される陽性免疫選択の方法は、ヒト肝臓(小児または成人に由来する組織を含む)からの肝幹細胞の高度に富化された集団を入手するために、2種の表面マーカー、Ep-CAMおよびCD133を同時に発現する細胞を単離するために使用され得る。
【0092】
実施例5
STO支持細胞層上での近位肝幹細胞の初代培養
大部分の肝臓前駆細胞は、始原肝幹細胞を例外として、胚性肝臓間質支持細胞とともに同時培養した場合に長くは生存しない;新生児肝臓、成体肝臓、または多様な成体組織からの支持細胞が成功しなかった(Sigalら、1994;Brillら、1995;Sigalら、1995;Brill S, Zvibel I, およびReid LM. Expansion conditions for early hepatic progenitor cells from embryonal and neonatal rat livers. Digestive Diseases and Sciences 44: 364-371, 1999)。胚性肝臓間質支持細胞は、胚性間質細胞株であるSTO細胞によって置き換えることができ、胚性幹細胞のための日常的な支持細胞として使用され、そして新たに単離された正常なげっ歯類の肝幹細胞および二倍体成体ラット肝臓細胞のクローン原性拡張を支持することが見い出されている(KubotaおよびReid、2000)。これらの条件は、支持細胞ありおよびなしで拡張する(Mossら、投稿中)始原肝幹細胞を例外として、ヒト胎児肝臓からの前駆細胞すべてについてもまた必須であることが見い出された。STO支持細胞はまた、新生児および成体のヒト肝臓からの肝前駆細胞について成功することが証明された(Ludlowら、投稿準備中)。胚性間質支持細胞によって供給され、前駆細胞のために必須である因子は知られていない。
【0093】
ATCCに由来するSTO支持細胞を、10%ウシ胎仔血清FBS(Hyclone, Logan, UT)および1% DMSO(Sigma, St. Louis, MO)を補充したDMEM/F12(Gibco/BRL/InVitrogen Corporation, Carlsbad, California)中、75cmフラスコにおいてストック細胞から拡張させた。3回継代して9個のコンフルエントなフラスコを得、細胞を10μg/mL マイトマイシンC(Sigma, St. Louis, MO;また、Biomol, Plymouth Meeting, PA)で2時間処理して細胞サイクルの停止を誘導し、そして培養培地で2回洗浄した。細胞をトリプシン処理し、凍結保存培地(50% DMEM/F12, 40% FBS, 10% DMSO)中に再懸濁し、その後5×106細胞の1mLアリコートで凍結し、そして-80℃で保存した。支持細胞を、0.1%ゼラチン(Sigma, St. Louis, MO)でプレコートした培養プレート上に6×104融解細胞/cm2を播種することによって調製した。[16]に記載されている詳細なプロトコールは参照として本明細書に組み入れられる。
【0094】
STO細胞上で継代された細胞を、0.2%ウシ血清アルブミン(Fraction V 脂肪酸フリー、Sigma, St. Louis)、インスリン(5μg/ml)、トランスフェリン/Fe(10μg/ml)、セレン(3×10-8M)、2-メルカプトエタノール(5×10-5M)、遊離脂肪酸の複合物(7.6μEq;[16,17])、ヒドロコルチゾン(10-7M)、グルタミン(2mM)、ニコチンアミド(4mM)、およびAAS(ペニシリン 1000μg/mL、ストレプトマイシン 100μg/mL、およびアンホテリシンB 250ng/mL、Sigma)を補充したRPMI1640(GIBCO/BRL/Invitrogen Corporation, Carlsbad, California)を含む無血清ホルモン規定培地(HDM)中で培養した。好ましくは、サイトカイン、古典的な肝成長因子(例えば、上皮成長因子EGF、肝実質細胞成長因子HGF、インスリン様成長因子IGFIおよびIGFII)のいずれも使用しなかった。
【0095】
実施例1からの分散させ富化させた実質細胞の初代培養物をSTO支持細胞層にプレーティングし、アルブミン、AFB、およびCK19を発現する近位肝幹細胞の安定な凝集物を生成させた。アルブミン、AFP、およびCK19について染まる典型的な細胞を図6a〜6cに示す。これらの細胞は、CK8/18についてもまた陽性であった。実施例6に記載されたプラスチック基層上で培養した細胞とは異なり、STO支持細胞に播種された近位肝幹細胞は一貫した形態を保持し、かつ数週間AFP発現を維持した。これらの条件は、近位肝幹細胞と、より分化した細胞(二倍体成体肝細胞を含む)の両方を支持するので([7])、STO支持細胞を用いる同時培養は、真に始原的なコロニー形成細胞の選択のためには適していないことが証明された。
【0096】
実施例6
始原肝幹細胞の選択
実施例1の富化された実質細胞懸濁物を、2000〜5000細胞/cm2の密度で、組織培養プラスチック上で、脂質、インスリン、およびトランスフェリン/Fe(HDM)を補充した無血清培地中でプレーティングした。プレーティング後最初の12時間、培地は、細胞接着を促進するために10% FBSを含み、その後、培養は無血清で維持した。培地の交換を3日の間隔で行った。
【0097】
接着の直後、培養中に存在する優勢な細胞は、近位肝幹細胞および関連前駆細胞、古典的実質細胞の形態を有する細胞の凝集物であって、アルブミン、AFP、および/またはCK19の発現を伴った;近位肝幹細胞はアルブミン、AFP、およびCK19を示す(図2a)。数日後、近位肝幹細胞および関連前駆細胞はAFPを発現することを停止し、ディッシュに分散した筋線維芽細胞のような外見を有する単独運動性の細胞型に置き換わった。近位肝幹細胞に加えて、いくつかの他の細胞型が培養中に存在した。いくつかは単独で、いくつかは広範なコンフルエントな単層を形成したのに対して、他のものは分離した円形細胞群を形成した。これらの細胞型の間で、アルブミンについての陽性染色は、近位肝幹細胞、関連前駆細胞、そして培養中に近位肝幹細胞および関連前駆細胞の漸次的な消滅と同時に現れた円形の強く凝集したコロニー(始原肝幹細胞)においてのみ観察された。
【0098】
コロニー形成は、予測可能な事象の結果を示した。コロニーの第一波は培養の最初の数日以内に現れ、先に存在していた細胞の凝集から生じたようであった(図1b)。しかし、5〜7日後、新しいコロニー形成の波が、培養ディッシュ全体に分散した単独の細胞から開始した。これらのコロニーは最初、周囲に狭い連続した縁を形成するラメリポディウムを有する、小さい暗色の固く詰まった4〜8個の細胞の群として認識可能であった(図2a)。これらのコロニーは、固く凝集した円形の直径8〜10μmの細胞の広範な群に拡張した(図2b〜2e)。これらの後期に形成したコロニーの全体的外見は、培養の初期に形成したコロニー(これは、より大きな細胞から構成され、胎児肝臓において主要な実質細胞を構成する近位肝幹細胞の初期の凝集物に由来する)とは別物である。
【0099】
始原肝幹細胞はHDM中で組織培養プラスチック上で良好に増殖し、数週間の培養後1cmまでの直径を達成した。多数のコロニーを選択除去し、トリプシン処理によって分散し、直径3mmのコロニーについて1000細胞から直径1cmの大きなコロニーでの15,000〜20,000までの範囲のコロニーあたりの平均細胞数を得た。
【0100】
典型的には、コロニーの最も外側の細胞は、コロニーから分離して培養ディッシュの全体にわたって分散した単独の大きな直径の細胞を形成するようになる、平板化した表現型に転換した(図3a)。他のコロニーにおいて、おそらく固く結合した間葉細胞であろう周界の細胞は、最初はコロニーの周囲を取り囲んで密接に包み込まれた長い線維芽細胞の外見を呈した(図3b)。これらの細胞はまた、単離された紡錘状の細胞としてコロニーから離れて移動した。これらの分散した細胞は、高度に増殖性のままであり、しばしば培養中に優勢な細胞型になり、ディッシュ全体にわたって拡張した固く詰まった層を形成した。コロニーは、この細胞層に囲まれたが、この細胞層によって大きくなり過ぎることはなかった。しかし、二種類の細胞型が点在するようになった各コロニーの境界に、移行ゾーンが形成した(図3c)。
【0101】
実施例7
プラスチック培養中におけるコロニー形成細胞の抗原性プロフィール
実施例6において培養された細胞の抗原性特性を、肝器官発生に関連するマーカーについて免疫細胞化学的染色を用いて調べた。細胞培養物を、メタノールおよびアセトンの50/50(v/v)混合物を用いて、2分間室温で固定した。いくつかの染色領域を、PAPマーカーペン(Research Products International Corp, Mt. Prospect, Illinois)を用いて、各ディッシュの表面に作製し、同じ培養物中で複数の抗体の組み合わせを可能にした。非特異的結合部位を、PBS中の10%ヤギ血清溶液(GIBCO/BRL/Invitrogen, Carlsbad, California)とともに、30分間室温でインキュベーションすることによってブロックした。PBSで2回すすいだ後、一次モノクローナル抗体を各々の染色領域に適用し(通常、領域あたり0.1〜0.3mL)、一晩インキュベートした。4℃で一晩インキュベーションした後、細胞をPBSで2回洗浄し、次いでAlexa 488(1:750)またはAlexa 594(1:1250)(Molecular Probes, Eugene OR)のいずれかに結合体化された二次抗体とともにインキュベートした。いくつかの場合において、FITCまたはPEのいずれかに結合体化された一次モノクローナル抗体が利用可能であり、結合体化していない一次抗体を用いる標識プロトコールの完了後に、この抗体を用いるインキュベーションによる二重標識のための手段を提供した。
【0102】
抗原性プロフィールを表2に要約する。コロニーは、アルブミン(図4a)、CK19(図4b)、epCAM(図4c)、NCAM(CD56、図4d)を含む肝細胞型に以前に関連された多数のマーカーについて陽性に染色したが、PECAM(CD31;データ示さず)については染まらなかった。c-kit染色は、コロニーの境界の狭いセグメントに全体的に局在しているいくつかのコロニーにおいて見られた(図5a)。また、コロニーは、推定幹細胞マーカーCD133(AC133、図5c)について陽性であった。興味深いことに、コロニーの周囲の移行ゾーンの細胞は、最近記載された内皮マーカーCD146(M-CAM、図5c)について陽性に染まり、コロニーの近傍にある間、このタンパク質について陽性のままであり、おそらく密接に関連する間葉細胞型(おそらく内皮前駆細胞)を同定する。コロニーとして出現した始原肝幹細胞はAFPについて陰性であった。このことは、始原肝幹細胞が近位肝幹細胞の前駆細胞であり、そして次には肝実質細胞の前駆細胞および胆管前駆細胞の前駆細胞であることを示す。
【0103】
(表2)培養細胞の表現型
【0104】
実施例8
プラスチック基層からSTO支持細胞へのコロニー細胞の継代
STO支持細胞を使用して、プラスチック基層からの選択的継代の後で始原肝幹細胞の運命を評価した。培養1〜2週間後、実施例6からのプラスチック基層上のコロニーを、双眼拡大鏡の下で吸引によってプラスチック基層から100μLピペットに物理的に拾い上げた。50コロニーまでをHBSS mod中に収集し、次いで20分間までコラゲナーゼ溶液中で攪拌しながら消化して、細胞を懸濁物に分散させた。
【0105】
プラスチックからSTO支持細胞への継代後のコロニー形成効率は低く、500または50細胞/cm2の密度で継代した細胞について0.5〜1%の間の範囲であった。継代したコロニー形成細胞の最初の接着は、プレーティング培地中のEGF(20ng/mL)の存在によって改善された。低いコロニー形成効率は、部分的には、単一細胞懸濁液を達成するための長い(20分間まで)コラゲナーゼ消化に細胞を供する必要性に起因した可能性がある。
【0106】
STO支持細胞上への継代後、始原前駆細胞がSTO細胞層に融合し、4〜5日間の培養後に小さな細胞の固く詰まったコロニーとして再び出現した(図6a)。新しいコロニーは、次の数週間にわたって大きくなり、固く凝集した円状の群を産生し、しばしば周囲がわずかに厚くなっていた(図6c)。いくつかのコロニーにおいて、第2の増殖段階が起こり、ここでは、細胞の出現がコロニーの端の点で起こり、STO層を超えて広がり、しばしばもとのコロニーを取り囲んだ(図6c)。
【0107】
STO細胞上に形成されたコロニーの免疫細胞化学特性は、プラスチック基層上でコロニー形成する細胞について上記したものと同じであった。これは、アルブミン、CK19、CK18、およびCD133についての陽性染色を含む。プラスチック上で生じた最初のコロニーにおけるように、CD146およびNCAMのようなマーカーが、STO細胞上で形成されたコロニーの周辺で最も明確に発現された。この境界の発現パターンは、コロニーが、一次コロニーから増殖した細胞によって取り囲まれた場合に、さらに顕著になった。これは、図9においてNCAMについて明確に示されており、継代された細胞から形成されたもともとのコロニーと、二次的な増殖との界面が、強陽性であるNCAM発現を有する細胞のバンドによって強調されている。このパターンは、汎サイトケラチンマーカーCAM5.2の発現についてもまた見られ、そしてNCAMおよびCAM5.2についての二重標識は、これらの2つのマーカーが境界細胞の同じ領域で高レベルに発現することを示した(図9)。
【0108】
最後に、出現する細胞型の特性は、関心対象のものであった。なぜなら、これらは、明確な細胞間空間を有する線状に配列された細胞の分枝パターンに拡張される細胞の並行した列からなる別個の配列にあるコロニーから出現したものであったからである(図8)。これらの細胞がもともとの細胞コロニーの周囲の広範なシートに拡張された場合、これらは、出現の時点で明白であった線状の組織を喪失したようであった。しかし、アルブミンについての染色は、細胞の列への組織化が細胞塊中で維持されることを明らかにし(図10a)、そしてCD146についての同時染色は、このマーカーもまた増殖している細胞群中で高レベルで発現されていることを示した(図10b)。おそらく、これらの細胞において最も重要なことは、出現する細胞の周囲でのAFPについての染色の出現である(図11)。これは、AFP発現が最初のコロニー形成細胞の系統的子孫に関連付けられ得るという、本明細書中で記載されるエキソビボ操作における最初のポイントを表す。これらのデータは、実施例6において単離された始原肝幹細胞が肝関連前駆細胞を産生するために使用され得ることを示す。
【0109】
実施例9
新生児ドナーからの肝臓における始原肝幹細胞および近位肝幹細胞の存在
肝臓を、妊娠後約28週で生まれ、1日しか生存しなかったドナーから入手した。心停止と、ドナー器官の収集および洗浄との間の温暖虚血(warm ischemia)の期間は、6時間から7時間であった。その後、器官を約12時間氷上に維持した。器官全体(湿重量約100グラム)を灌流に供し、Liberaseを用いて消化し、そして細胞懸濁物を、ヒト小児または成人から得られる肝臓についてと本質的に同様にして調製した。生きていない細胞および多くの赤血球を、Optiprepを使用する調製遠心分離によって除去した。しかし、最終調製物中の生きている非赤血球細胞の実際の収量およびパーセンテージを決定することは困難であった。
【0110】
回収した細胞の一部を、胎児肝細胞について記載されたものと本質的に同様に、ディファレンシャル遠心分離によって赤血球細胞をさらに除去し、次いで始原肝幹細胞の存在を決定するために適切な条件下で培養に播種した(すなわち、無血清のホルモン的に規定された培地中で、組織培養プラスチック基層上でのプレーティング)。細胞の他の部分はさらなる精製なしで、近位肝幹細胞についてアッセイするための条件下でプレーティングした(すなわち、無血清の規定された培地中で、STO支持細胞を用いてのプレーティング)。細胞のさらなる部分を、I型コラーゲンでコートされた組織培養プラスチック上、5ng/mLの補充的な上皮成長因子(EGF)を含むかまたは欠く、無血清の規定された培地中で播種した。
【0111】
適切な期間のインキュベーション後、肝コロニーの増殖をすべての試験条件で観察した。始原肝幹細胞および近位肝幹細胞についてのそれぞれのアッセイにおいて、コロニーの形態および増殖の速度は、同じ条件下で培養された、ヒト胎児肝臓(一般的に妊娠の<22週間後に得られた)から培養された細胞について観察されたものと同様であった。代表的なコロニーを、ヒトアルブミンの発現について免疫蛍光染色によって試験したところ、このマーカーについてすべて陽性であった。
【0112】
明らかに上皮性(推定的には肝性)形態のコロニーが、EGFの存在下でコラーゲンコートしたプレート上に現れた。より十分に規定されてない形態のさらなる細胞がまた、これらの培養中で迅速に増殖したが、まだ詳細に特徴付けされていない。
【0113】
上皮細胞と推定されるコロニーがまた、補充的なEGFの非存在下でコラーゲンコートしたプレート上に現れた。これらのコロニーのいくつかを、手動ピペッティングデバイスを使用して各々拾い上げ、そして96ウェルプレート中の新鮮な培地に移した。特定のコロニーからの細胞は、このような培養中で継続して増殖させ、細胞株として継代される。これらが潜在的にクローン性の増殖可能な肝前駆細胞(おそらく幹細胞)株である可能性は高いと思われる。CD133、Ep-CAM、アルブミン、AFP、およびCK19を含む抗原の発現のさらなる特徴付けにより、これらの推定的肝幹細胞株の分化の相対的状態が決定されるであろう。
【0114】
実施例10
フローサイトメトリーソーティングおよびフローサイトメトリー分析(FACscan)
細胞質抗原(例えば、アルブミン、AFP)のFACscanを、抗血清を用いる染色の前に3%パラホルムアルデヒドを用いて固定および透過化処理した細胞を用いて行った。細胞を、関連する蛍光プローブを用いて直接的に標識した抗体を使用する以外は免疫蛍光について示されたのと同様に染色した(表3および4を参照されたい)。フローサイトメトリーを、Cytomation「MoFlow」フローサイトメーター(Fort Collins, Colorado)(Larry Arnold博士によって管理されるFACS設備)で実行した。覆い液は改変していないHBSSであった。MoFlowサイトメーターは、40,000細胞/秒の分析またはソーティングが可能であり、このとき12までのパラメーターを並行して(前方散乱および/または側方散乱と組み合わせて6「色」)、99%を超える正確さを有する。大部分のソートのために、4Wのアルゴンレーザーを、60mWの電源および100μmのノズルとともに使用した。488nm励起での蛍光発光を、FITCのための530/30nmバンドパスフィルターを通して収集した。蛍光を、対数増幅によって測定した。蛍光が陰性対照細胞の95%より高い場合、細胞を陽性と見なした。E-1の検出器値を、前方散乱(FSC)のために、中程度の範囲の増幅とともに使用し、検出器を、側方散乱(SSC)のために中程度の範囲で、1の増幅とともに使用した。SSCゲーティングを、線状増幅によって、パラメーターの分割を256の任意単位にして行った。染色していない細胞、関連のない抗体および同じ蛍光プローブで染色した細胞、または同じ抗体を用いるが蛍光プローブを用いない細胞を、陰性対照として使用した。各々の試料において、30,000〜50,000細胞をアッセイした。陽性細胞(陰性対照よりも高い蛍光を有するもの)を、粒度、サイズ、および蛍光の程度についてさらに評価した。ソーティングの前後での細胞を、10%血清を付加したHDM中4℃で維持した。
【0115】
(表3) モノクローナル抗体
【0116】
(表4) 蛍光プローブ
【0117】
細胞質抗原(例えば、アルブミン、AFP)のフローサイトメトリー分析のために、細胞を、抗血清を用いる染色の前に、3%パラホルムアルデヒドを用いて固定および透過化処理した。細胞を、免疫蛍光について示されたのと同様に染色した。2種のマーカーを使用する分析のために、別個であって、波長が重複していない蛍光プローブで標識した第2の抗体を使用する。分析を、Becton Dickenson FACscanを使用して実行した。第2の抗体でのみ染色された細胞を、陰性対照として使用した。各々の試料において、30,000〜50,000細胞をアッセイした。陽性細胞(陰性対照よりも高い蛍光を有するもの)を、粒度、サイズ、および蛍光の程度についてさらに評価した。
【0118】
実施例11
胎児組織から得られた肝細胞懸濁物中のアルブミンおよびαフェトプロテインの発現の決定
この実験において、近位肝幹細胞および始原肝幹細胞におけるアルブミンおよびαフェトプロテインの発現を試験した。ペレット画分が肝芽細胞で富化されている(近位肝幹細胞)のに対して、界面はコロニー形成細胞で富化されている(始原肝幹細胞)ことが最初に決定された。
【0119】
アルブミン発現は、共に新たに単離された細胞中で10日間培養された後の界面の細胞とペレットの細胞との間で同等である。しかし、その発現は培養中に減少する。これは、アルブミン陰性の非実質細胞の、より低い発現または増殖に起因する可能性がある。培養についての観察は、両方がこのパターンに寄与することを示す(図20)。
【0120】
AFPは、新たに単離されたペレット画分中で強力に発現され、界面細胞中では弱く発現される。このことは、AFPがコロニー細胞において発現されないという観察と一致する。培養10日後、AFPはペレットまたは界面の細胞において検出できない。培養中のコロニー細胞は、アルブミンを発現するがAFPを発現しない。このことは、すべての細胞においてAFP発現の抑制をもたらす条件(プラスチック培養)に起因したのかもしれない。しかし、界面細胞における低いAFP発現は、AFPがこれらの細胞中で決して強くは発現されないことを示唆する(図20)。また、コロニー細胞が、ペレット細胞におけるAFP発現の延長を支持する条件において培養される場合(STO同時培養)、それらはなお、AFP発現について陰性である。アルブミンまたはαフェトプロテインに結合する抗体の間では交差反応性が存在せず、空のレーンではシグナルは観察されなかった。
【0121】
従って、これらの実験の結果は、AFPが新たに単離されたペレット画分中で強力に発現され、界面細胞中では弱くのみ発現されることを示す。このことは、AFPがコロニー細胞中で発現されないという観察と一致する。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、成熟肝細胞を生じる多能性細胞であるヒト肝幹細胞に関する。これらは、2つの幹細胞集団を含む:近位(proximal)肝幹細胞を生じる非常に始原的な前駆細胞である導管板(ductal plate)幹細胞、肝実質細胞および胆管細胞を生じる近位幹細胞。本発明はまた、ヒト肝導管板幹細胞を単離する方法、ならびに近位肝幹細胞および肝実質細胞関連(committed)前駆細胞および胆管関連前駆細胞を単離することに関する。本発明の細胞を含む組成物は、細胞治療および遺伝子治療のため、ならびに生体人工器官の確立のために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1. ヒト肝臓の解剖学
成熟肝の主要な構造的および機能的単位は腺房であり、これは、横断面において2つの別個の血管床の周りに車輪様に組織化されている:末梢に3〜7セットの門脈三管(各々が門脈細静脈、肝細動脈、および胆管を有する)があり、中央部に中心静脈を有する。肝細胞は、有窓内皮の両側に並ぶ細胞板として組織化され、これは、門脈および中心の脈管系と連続する一連の肝洞様毛細血管を規定する。最近のデータにより、ヘーリング管(各々の門脈三管の周りに位置する細管)が、ボトルブラシと同様のパターンを形成するゾーン1の全体にわたって伸長し肝板(liver plate)に接合する小管を産生することが示された(Theise, N. 1999 Hepatology. 30: 1425-1433)。
【0003】
狭い腔隙であるディッセ腔は、肝洞様毛細血管に沿って肝実質細胞から内皮を分離する。この組織化の結果、肝実質細胞は、各々が肝洞様毛細血管に面する2つの基底ドメイン、および隣接する肝実質細胞間の接触領域によって規定される先端ドメインを有する。基底ドメインは、血液と接触し、血漿成分の吸収および分泌に関与するのに対して、先端ドメインは、胆汁酸塩の分泌に特化された胆小管を形成し、相互連絡ネットワークを通して胆管と連係する。血液は、門脈細静脈および肝細動脈から、肝洞様毛細血管を通して末端の肝細静脈および中心静脈に流れる。
【0004】
この微小循環のパターンに基づいて、腺房は3つのゾーンに分けられる:ゾーン1、門脈周囲領域;ゾーン2、腺房中央領域;およびゾーン3、中心周囲領域。増殖能力、形態学的判断基準、倍数性、および大部分の肝臓特異的遺伝子は、ゾーンの位置に相関する(Gebhardt, R.ら、1988. FEBS Lett. 241: 89-93; Gumucio, J. J. 1989, 第19巻. Springer International, Madrid; Traber, P.ら、1988. Gastroenterology. 95: 1130-43)。腺房を横切った、酸素を含む血液成分の濃度勾配と、引き続く門脈三管から中心静脈への血流の方向は、このゾーン化の一部の原因である(例えば、解糖および糖新生の相互区画化)。しかし、2つだけ例を挙げると、ギャップジャンクションタンパク質コネキシン26の門脈周囲領域ゾーンへの存在、およびグルタミンシンテターゼの中心周囲領域ゾーンへの存在は、このような勾配に感受性がなく、大部分の組織特異的遺伝子により代表的なものであり、そして細胞、または微小環境における血流以外の変数に固有の因子によって決定されるようである。
【0005】
肝実質細胞に加えて、胆管の上皮細胞(胆管細胞)および門脈管と中心管との間の領域である内皮細胞は、伊東細胞およびクップファー細胞のような他の細胞型を含む。これらは、肝臓の病状、とりわけ炎症および線維症において顕著な役割を果たすが、正常な器官の主要な恒常性機能に対する直接的な寄与は明らかに小さい。
【0006】
2. ヒト肝臓の発生
肝臓は、後部前腸および横中隔(内臓間葉の一部)から形成される憩室の集合の結果として発生する。肝細胞の形成は、内胚葉性の上皮が心臓性中胚葉と、おそらく線維芽細胞成長因子を介して相互作用した後に開始する。次いで、特定の肝細胞が増殖し、索状構造様の様式で横中隔の間葉に突き通り、肝臓の原基を形成する。直接的な上皮−間葉相互作用は、これらの初期の肝臓の発生段階において決定的であり、肝実質細胞または胆管細胞、および有窓内皮になる細胞をそれぞれ指示する。間葉特異的遺伝子hlxおよびjumonjiの変異は肝発生をブロックし、これは、この組織からの寄与の重要性を示す。その発生の初期において、肝臓は、基底膜を欠く連続的な内皮に接する近位肝幹細胞のクラスターおよび豊富な造血細胞からなる。内皮が不連続的な有窓内皮になるように変化するのにつれて、脈管系(とりわけ、門脈の脈管系)は基底膜の産生を伴ってより発達する。門脈間隙は胆管の発生のための引き金を提供し得、そしてそれが門脈細静脈、肝細動脈、および胆管を取り囲んで、門脈三管が形成される。近位肝幹細胞は迅速に増殖し、そして、おそらくC-CAM 105、Agp110、E-カドヘリン、およびコネキシンのような組織を組織化する分子の量および分布の変化に応答して、大部分ではあるがすべてではない造血細胞の骨髄への再配置と同時に、実質板(parenchymal plate)が形成される。最近の研究により、いくつかの造血前駆細胞が成体静止状態げっ歯類肝臓(adult quiescent rodent liver)に存続すること、および造血幹細胞が成体ヒトおよびマウスの両方の肝臓から単離されたことが示唆されている(Crosbie, O. M. ら、1999. Hepatology. 29: 1193-8)。
【0007】
ラット肝臓は、胚の生命のうちで、約10日目に形成され、これは「胚10日目」またはE10と呼ばれる。これは、胚の中腸領域に位置している内胚葉による心臓性間葉の陥入によるものである(Zaret, K. 1998. Current Opinion in Genetics & Development. 8: 526-31)。胚における肝細胞の最も初期の認識は、αフェトプロテイン(AFP)をコードするmRNAについてのインサイチューハイブリダイゼーション研究を用いて達成された(Zaret, K. 1998. Current Opinion in Genetics & Development. 8: 526-31; Zaret, K. 1999. Developmental Biology (Orlando). 209: 1-10)。AFP発現細胞は、アッセイされたすべてのラットおよびマウスの肝臓において、9〜10日齢で心臓を形成する間葉の近傍の胚の中腸領域において観察される。肝臓はE12までに肉眼で見えるようになり、E13までに直径約1mmとなる。
【0008】
並行して造血が起こり、最初に同定可能な造血細胞は、げっ歯類ではE15〜E16までに、ヒトでは3〜4ヶ月目までに出現し、そして赤血球生成(赤血球系細胞または赤血球の形成)のピークは、げっ歯類ではE18までに、ヒトでは5〜6ヶ月目までに起こる。赤血球形成のピークにおいて、肝臓でこれらの赤血球の数が支配的となり、肝臓における細胞数の70%を超える数を占める。妊娠期間の終わりはげっ歯類では21日目、ヒトでは9ヶ月目である。誕生の数時間以内に造血細胞の数は劇的に低下し、げっ歯類では出生後2日までに、ヒトでは1週間または2週間以内に、造血細胞の大部分が骨髄に移動して消失する。造血細胞の移動の原因は誰にもわからない。しかし2つの有力な仮説が存在する。
【0009】
第1に、造血前駆細胞は比較的嫌気的条件を好み、そしてそれらの大部分は、肺の活性化に伴う肝臓における酸素レベルの上昇によって骨髄(これは比較的嫌気性である)に移動する。さらに、妊娠ホルモンの損失が移動の因子であり得るという仮説が存在する。出生後に、肝臓における造血前駆細胞の損失は、肝前駆細胞の数の劇的な減少、ならびに肝実質細胞および胆管細胞の数および成熟度の並行した増加と相関する。肝臓の十分な成熟は、出生後2〜3週間(げっ歯類)および数ヶ月以内(ヒト)までに完了する。それまでに、残りの肝前駆細胞はヘーリング管の領域に局在化し、これらのほとんどは各肝腺房周囲の門脈三管に存在する(Thieseら、Crawfordら)。
【0010】
その後、肝腺房の古典的構造は、6セットの門脈三管(各々が、胆管、肝動脈、および肝静脈を有し、中心に大静脈に接続する中心静脈を有する)によって周囲が規定された各腺房によって確立される。肝細胞の板は、車輪のスポークのように、末梢から中心に延びている。慣例上、板は3つのゾーンに分けられる:ゾーン1は門脈三管の近傍;ゾーン2は腺房中央;およびゾーン3は中心静脈の近傍である。肝臓の二倍体細胞のみがゾーン1にある;四倍体細胞はゾーン2にある;そして四倍体、八倍体、および多核性細胞がゾーン3にある。このパターンは、アポトーシスプロセスで終結する成熟系列を強く示唆している(Sigal, S. H. S.ら、1995. Differentiation. 59: 35-42)。
【0011】
3. 肝臓疾患
米国においては、毎年約250,000人が肝不全のために入院している。肝移植はいくつかの型の肝不全に治療効果があり、およそ4100例の移植が米国で1年に行われている。肝移植における1つの限定要因は、とりわけ臓器移植のためのドナー肝臓は心停止でなく脳死を経た患者に由来しなくてはならないという制約を考慮すると、ドナー肝臓の利用可能性である。死体のドナーを使うための最近の努力により、肝臓が死から1時間以内に入手される場合それらを使用する可能性があることが支持されているが、このようなドナーからの肝臓では成功していない。
【0012】
肝臓への細胞移植は、大部分の肝臓疾患にとって魅力的な代替的治療である。細胞移植のための外科的手順は、臓器全体の移植のために必要とされるものと比較して少なく、従って種々の外科的リスク(例えば、年齢または虚弱質)を有する患者のために使用され得る。ヒト肝臓細胞の使用は、他の哺乳動物に由来する肝細胞よりも優れている。なぜなら、潜在的な病原体は(もしあれば)、ヒト起源であり、患者によってより良好に耐性であり得、そして使用前に容易にスクリーニングされ得るからである。
【0013】
肝細胞移植を行う試みは、分画していない成熟肝細胞を利用し、効力のいくつかの尺度を示してきた(Fox, I. J.ら、1998. New England Journal of Medicine. 338: 1422-1426)。しかし、これら細胞はインビボで増殖しないため、成功には多数の細胞(2×1010)の注射を必要とする。さらに、大きな成熟肝細胞(平均細胞直径30〜50μm)を多数導入することは、注射の際に大きな凝集物を形成する傾向によって複雑化され、致死的でありうる塞栓を生じる。さらに、これらの細胞は顕著な免疫学的拒絶反応を誘発し、患者は残りの生活を免疫抑制剤に継続して頼らざるを得なくなる。最後に、成熟肝細胞は首尾よく凍結保存されず、適切な肝臓組織の利用可能性、細胞懸濁物の調製、および臨床的治療のための細胞の迅速な送達を調整するために、複雑な物流管理が必要とされる。
【0014】
4. 分化全能性幹細胞
幹細胞は、肝臓疾患のための代替的な細胞に基づく治療である。分化全能性幹細胞は、自己複製可能な始原細胞であり、多能性である(すなわち、1つより多くの発生運命を有する娘細胞を産生する)。これは、広範に拡張し得、1つまたは複数の組織を再構築し得る決定された幹細胞(determined stem cell)を生じ得る。幹細胞に関する文献の大部分は、胚に関する文献から、または造血組織、表皮組織、もしくは腸組織に関する文献のいずれかから派生する。
【0015】
より最近では、特定のクラスの幹細胞を認めるために定義が改変された。生殖細胞を含むすべての細胞型の発生に関与する能力を有する幹細胞は、分化全能性幹細胞といわれ、接合体および8細胞段階(桑実胚)までの正常な胚細胞を含む。胚性幹細胞(「ES」細胞とも呼ばれる)は、胚盤胞における分化全能性の正常細胞から派生した永続的な細胞集団からなり、これは1980年代初期に初めて報告された。ES細胞株は分化全能性を維持してインビトロで培養できる。ES細胞が正常胚盤胞に注射して戻された場合、これらは胚発生を再開し、正常であるがキメラであるマウスの形成に関与する。ES細胞株が多くの種(マウス、ラット、ブタなど)から樹立されているが、マウスの系のみが、培養物からの改変されたES細胞を胚盤胞に合体させ、次いでその胚盤胞を偽妊娠宿主に移植することによって新規な表現型(ノックアウト、トランスジェニック)を有する動物を生成するために日常的に使用されている。胚性生殖(EG)細胞株(ES細胞の特徴の多くを示す)は、始原生殖細胞集団からインビトロで直接単離され得る。ES細胞と共に、胚盤胞に注射された場合EG細胞は生殖細胞を含むキメラに寄与した。
【0016】
最近、よく公開された実験により、ヒトES細胞培養がヒト胚から樹立され得ることが報告された。これらのヒトES細胞は、損傷した器官および組織を再構築することができることを期待して組織に注射され得ることが示唆されている。しかし、ES細胞およびEG細胞は、子宮内以外のいかなる部位においても免疫無防備状態の宿主に導入された場合には腫瘍形成性であり、奇形癌腫を形成する。それゆえに、ヒトES細胞を患者に接種する計画は非現実的であり、患者において腫瘍を引き起こす可能性が大きい。この難局を克服するために、いくつかのグループが、限定された微小環境条件下で、決定された幹細胞になり、次いでその幹細胞を患者に安全に接種できるような、ES細胞を分化させる計画を追求している。例えば、造血前駆細胞の生成において多少成功が収められている。しかし、培養物が患者に接種された場合に、培養物中に残存しているES細胞が腫瘍形成のリスクを有し得るという懸念が残る。要約すれば、発生生物学における研究が、胚形成の間に細胞の運命を決定付ける無数の制御を明らかにするまでは、ES細胞は、細胞治療または遺伝子治療における臨床プログラムのためにはほとんど希望が持てない実験ツールのままである。細胞治療および遺伝子治療における臨床プログラムのための唯一の現実的な選択肢は、遺伝的潜在能力が限られた数の細胞型に制限される決定された幹細胞を使用することである。
【0017】
5. 決定された幹細胞
決定された幹細胞は、その遺伝的潜在能力を限られた数の細胞型についてのそれに制限され、かつ広範な増殖潜在能力を有する多能性細胞である。増加しつつある証拠(例えば、テロメラーゼの分野における証拠)により、決定された幹細胞は厳密な意味で自己複製しない、すなわちそれらの子孫は親よりも低い成長潜在能力を有し得ることが示唆されている。決定された幹細胞は、それらの遺伝的潜在能力を単一の運命(例えば、肝実質細胞、この細胞の関連づけられた前駆細胞(committed progenitor)は肝実質細胞関連前駆細胞といわれる)に制限することによって多能性を失う娘細胞である、関連づけられた前駆細胞を生じる。肝細胞系列には、肝実質細胞関連前駆細胞(肝実質細胞を生じる)および胆管関連前駆細胞(胆管を生じる)がある。
【0018】
幹細胞から成体細胞への移行は段階的なプロセスで起こり、細胞サイズ、形態学、成長潜在能力、および遺伝子発現がその系列に束縛される成熟系列を産生する。加齢で例えることが、このプロセスを規定する際には有用である。「若い」細胞は初期遺伝子発現および最も高い成長潜在能力を有し;系列の中で後の細胞は「遅い」遺伝子発現を有し、通常それらの成長は制限されるかまたは全く成長しない。後期の細胞は「古い」、または生物学的用語においてアポトーシス性と見なすことができ、最終的には除去される。成熟系列プロセスは、組織の天然の代謝回転を生じ、傷害の後の再生を許容する。組織は成熟プロセスの反応速度論が異なる。腸の成熟系列は、1週間未満で生じる完全なサイクルを持ち、かなり迅速である;肝臓のそれはゆっくりと起こり、そしてラット肝臓においては約1年である。
【0019】
未成熟前駆細胞集団は、肝臓疾患を処置する際に強い影響力を持ちうるゆえに、肝臓からこのような細胞を単離および同定することに強い臨床的および商業的な関心が存在する。細胞治療および遺伝子治療における肝前駆細胞の使用は、上記の成熟肝細胞の使用に付随する欠点の多くを克服し得る。これら細胞は小さく(7〜15μm)、大きな塞栓の形成は最低限に抑えられる。また、これら細胞は広範な成長潜在能力を有し、これは、より少数の細胞が患者において肝臓組織の再構成に必要とされることを意味する。最後に、この前駆細胞は、免疫学的拒絶を誘発し得る最小限の抗原性マーカーを有し、免疫抑制剤がほとんど必要とされない、または全く必要とされないかもしれないという希望を与える。
【0020】
6. 肝前駆細胞の単離
肝臓からの肝前駆細胞の単離は、肝細胞を陽性選択するマーカーの不足が原因で、極度に困難な作業であることが知られている。肝前駆細胞の候補のための唯一の利用可能な抗体は、肝前駆細胞の亜集団(腫瘍形成性傷害にさらされた宿主から単離された場合、卵円細胞(oval cell)と呼ばれる)に対して調製されるモノクローナル抗体である。しかし、これらの抗体は造血細胞に存在する抗原と交差反応する。
【0021】
用語卵円細胞は、発癌および腫瘍形成の分野における無数の研究に由来する。発癌物質または他の腫瘍形成性傷害にさらされた動物は、成熟肝細胞の劇的な損失を受け(種々の傷害により死亡する)、そして二次的に、卵円形の核を有し、かつ肝臓抗原と造血抗原の両方を含むマーカーを有する小さな細胞(直径7〜15μm)が広がる(GrishamおよびThorgeirrson, 1998)。卵円細胞の研究は、これらが、腫瘍形成性傷害の条件下では拡張が誘導され、適切な条件では腫瘍細胞となるように進み得る肝前駆細胞であるという仮説をもたらした。卵円細胞の表現型は、腫瘍形成性傷害に依存して微妙におよび明らかに異なる。さらに、これらは、特別な支持細胞(feeder)または培地条件なしで容易に培養中に樹立されることが知られている(J. GrishamおよびS. Thorgeirrson, 1998, Hepatic Stem Cells, Stem Cells, C Potten編、Academic Press, NY)。これらの知見に基づいて、および腫瘍形成処理に由来する細胞株のいくつかを特徴付けする研究に基づいて、肝腫瘍は悪性形質転換した前駆細胞であること、そして卵円細胞は部分的または完全に形質転換した前駆細胞であることがわかった(Zvibel I, Fiorino A, Brill S, およびReid LM. Phenotypic characterization of rat hepatoma cell lines and lineage-specific regulation of gene expression by differentiation agents. Differentiation 63: 215-223, 1999)。
【0022】
肝臓の細胞治療および遺伝子治療のための最も多用途な細胞集団であると示唆されている肝前駆細胞集団を得るための試みが、過去になされてきた。米国特許第5,576,207号および同第5,789,246号(Reidら)は、細胞表面マーカーおよび側方散乱(side scatter)フローサイトメトリーを利用して、肝臓中の規定された亜集団を提供している。ラット肝細胞の亜集団は、系統関連細胞の除去、続いてOC.3陽性(卵円細胞抗原性マーカー)、AFP陽性、アルブミン陽性、およびCK19陰性(サイトケラチン19)の細胞マーカーを有する無顆粒細胞として検出された未成熟肝前駆細胞の選択によって単離されている。前述のラット肝臓亜集団は、げっ歯類の肝臓からの富化された肝前駆細胞の単離および同定において重要な特定の特性を実証する。
【0023】
このように、肝臓疾患または肝機能不全を有する患者を処置するために使用され得るヒト肝前駆細胞を単離する方法を開発する必要が存在する。本発明は、この必要性を満たし、また処置方法も提供する。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、近位肝幹細胞、肝実質細胞、または胆管の前駆細胞に対する前駆細胞であるヒト始原(primitive)肝幹細胞を含む組成物に関する。本発明のヒト始原肝幹細胞は、ep-CAM、AC133、およびアルブミンを発現する。
【0025】
本発明の別の実施態様は、肝実質細胞または胆管の前駆細胞に対する前駆細胞であるヒト近位肝幹細胞を含む組成物である。本発明のヒト近位肝幹細胞は、α-フェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する。
【0026】
本発明の別の実施態様は、ep-CAMおよびAC133を発現する細胞を同定する工程を含むヒト肝前駆細胞を単離するための方法である。本発明の方法によって単離されるヒト肝前駆細胞は、好ましくはアルブミンを発現する。本発明の好ましい実施態様において、単離されたヒト肝前駆細胞は幹細胞であり、好ましくは始原肝幹細胞または近位肝幹細胞である。
【0027】
本発明の別の実施態様は、ヒト始原肝幹細胞を単離するための方法であって、この方法は、炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地で肝幹細胞を選択する条件下で、表面上においてヒト肝臓組織に由来する細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程を含む。本発明の好ましい実施態様において、単離されたヒト始原肝幹細胞は、ep-CAM、AC133、およびアルブミンを発現し、好ましくはサイトケラチン8/18およびサイトケラチン19をさらに発現する。
【0028】
本発明の別の実施態様は、ヒト近位肝幹細胞を単離するための方法であって、この方法は、炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地で肝幹細胞を選択する条件下で、表面上においてヒト肝臓組織に由来する細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程、ならびに発生因子(developmental factor)を用いてコロニーから細胞を培養する工程を含む。本発明の好ましい実施態様において、単離されたヒト近位肝幹細胞は、αフェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する。本発明の好ましい実施態様において、発生因子は、二次的な細胞、好ましくは支持細胞、好ましくはSTO支持細胞、内皮細胞、または間質細胞によって供給される。
【0029】
本発明の別の実施態様は、ヒト近位肝幹細胞を単離するための方法であって、この方法は、炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地で肝幹細胞を選択する条件下で、ヒト肝臓組織に由来する細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程、ならびに発生因子を用いてコロニーから細胞を培養する工程を含む。本発明の好ましい実施態様において、単離されたヒト近位肝幹細胞は、αフェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する。本発明の好ましい実施態様において、発生因子は、二次的な細胞、好ましくは支持細胞、好ましくはSTO支持細胞、内皮細胞、または間質細胞によって供給される。
【0030】
本発明の別の実施態様は、単離された始原肝幹細胞である。本発明のさらに別の実施態様は、単離されたヒト近位肝幹細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】1日目(上のパネル)および5日目(下のパネル)のプラスチック培養で富化された胎児の実質細胞からのプラスチック培養上のコロニー形成を示す。
【図2】5日目から14日目までのプラスチック培養でのコロニー形成を示す。
【図3】プラスチック培養でのコロニーのふるまいを示す。
【図4】アルブミン(1列目)、CK19(2列目)、ep-CAM(3列目)、およびNCAM(4列目)について、プラスチック上でのコロニー細胞の染色を示す。
【図5】CD146およびCD133(上)、ならびにAC133(下)について、プラスチック上で培養したコロニーの染色を示す。
【図6】アルブミン(1列目)、αフェトプロテイン(2列目)、およびCK19(3列目)についての、STO支持細胞層染色の7日後の近位幹細胞の初代培養を示す。
【図7】プラスチック培養から除去され、STO支持細胞層にプレーティングされたコロニー細胞の発生を示す。
【図8】STO支持細胞層上のコロニーからの細胞の発生を示す。
【図9】STO支持細胞層上のコロニーからの細胞の発生を示す。
【図10】STO支持細胞層上のコロニーからの細胞の発生を示す。
【図11】STO支持細胞層上のコロニーからの細胞の発生を示す。
【図12】ヒト肝臓細胞におけるAFP発現細胞の富化を示す。
【図13】ヒト肝臓細胞におけるAFP発現細胞の富化を示す。
【図14】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図15】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図16】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図17A】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図17B】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図17C】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図17D】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図17E】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図18】アルブミン、CD133、およびEp-CAMを同時発現する成体ヒト肝細胞の亜集団の単離を示す。
【図19】3週間にわたってプラスチック上で培養された3つの肝臓からの9個の幹細胞コロニーの増殖曲線を示す。増殖の測定は、培養の12日後に開始した。この曲線は、細胞が5.2日の倍加時間で増殖することを示す。
【図20】新たに単離した胎児肝細胞における、およびプラスチック基層上での引き続く培養の間の、アルブミン(ALB、上のグループ)およびαフェトプロテイン(AFP、下のグループ)の発現のウェスタンブロットを示す。左側のグループにおいて、2つの細胞画分(PおよびI)がフィコールを介した遠心分離に基づいて示される。フィコール中でペレット化する細胞をPと名付け、水溶性媒体とフィコールの間の界面に層となる細胞をIと名付ける。単一の中央のブロットは、3週間プラスチック上で培養された、精製されたコロニー細胞(始原肝幹細胞)中でのアルブミンおよびAFP発現を示す。右側のパネルは対照レーンを示し、ここではタンパク質を含まない(ブランク)か、アルブミン(ALB)またはαフェトプロテイン(AFP)標準のいずれかが存在した。10μgのタンパク質が各レーンにロードされた。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
1. 定義
以下の記載において、多数の用語が本発明を記載するために広範に使用される。このような用語に与えられる範囲を含む、明細書および特許請求の範囲の明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0033】
CD:「分化のクラスター(cluster of differentiation)」または「一般的決定基(common determinant)」は、本明細書中で使用される場合、モノクローナル抗体によって認識される細胞表面分子をいう。いくつかのCDの発現は、特定の系列または成熟経路の細胞に特異的であり、他の発現は、同じ細胞の活性化、位置、または分化の状態に従って変化する。
【0034】
細胞治療:本明細書中で使用される場合、用語「細胞治療」は、自系または同種異系の物質として使用され、かつ患者の特定の標的細胞に移植されるか、またはその近傍に移植される、規定された細胞集団のインビボまたはエキソビボの移動をいう。細胞は、任意の適切な培地、キャリア、もしくは希釈剤中で、または任意の型の薬物送達系(マイクロキャリア、ビーズ、ミクロソーム、ミクロスフェア、ベシクルなどを含む)中で移植され得る。これらは、決定的な機能を提供するバイオリアクターにおいて、および肝機能障害を有する患者のための補助デバイスとして使用されるバイオリアクターにおいてもまた使用され得る。
【0035】
関連前駆細胞:1つのみの細胞運命の娘細胞を生じる高度に増殖性の細胞。「胆管関連前駆細胞」は胆管を生じ、サイトケラチン19の発現によって抗原的に認識され得るが、AFBの発現によってはされ得ない。「肝実質細胞関連前駆細胞」は肝実質細胞を生じ、AFPおよびアルブミンの発現によって抗原的に認識され得るが、サイトケラチン19の発現によってはされ得ない。関連付けプロセスは分子レベルでは理解されていない。むしろ、細胞の運命が祖先の細胞のものより狭められた場合に起こることとして経験的にのみ認識される。
【0036】
遺伝子治療:本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子治療」は、患者の特定の標的細胞への規定された遺伝的物質のインビボまたはエキソビボの移動をいい、それによって遺伝子型を変化させ、大部分の状況においては特定の疾患状態を予防または変化させるという最終的な目的のために標的細胞の表現型を変化させる。これは、標的細胞をエキソビボで修飾すること、および患者に細胞を導入することを含み得る。代替的には、ベクターを、外因性遺伝的物質を送達し祖先細胞に形質移入するために、インビボの肝前駆細胞へと標的化できる。さらに、遺伝子操作した前駆細胞は、患者の治療として、または生物学的産物の供給源としてのバイオリアクターにおいて使用され得る。この定義が言及するように、根底にある前提は、これらの治療的遺伝学的手順が究極的には顕性または潜在性の病理学的な状態を予防、治療、または変化させるために設計されるということである。大部分の状況において、遺伝子治療手順の究極の治療目的は、特定の標的細胞集団の表現型を変化させることである。
【0037】
肝細胞:肝実質細胞および胆管細胞を含む肝臓細胞の亜集団。
【0038】
肝前駆細胞:幹細胞の亜集団であり、これらの細胞は究極的には成熟実質細胞(肝実質細胞および胆管細胞を含む)を生じる。肝前駆細胞は、以下の2つの亜集団を含む:(a)肝幹細胞および(b)関連前駆細胞。
【0039】
肝幹細胞:「始原肝幹細胞」および「近位肝幹細胞」を含む、肝前駆細胞の亜集団。
【0040】
前駆細胞:本明細書中で記載される場合、用語「前駆細胞」とは、第2の細胞型を生じる第1の細胞型をいう。前駆細胞は、第2の細胞型を直接的に生じ得る。前駆細胞はまた、1つまたはそれ以上の他の中間の細胞型を通して第2の細胞型を生じ得る。
【0041】
始原肝幹細胞:本明細書中で使用される場合、用語「始原肝幹細胞」とは、近位肝幹細胞を生じる肝幹細胞をいう。
【0042】
近位肝幹細胞:本明細書中で使用される場合、用語「近位肝幹細胞」とは、肝実質細胞および胆管上皮細胞を生じる肝幹細胞をいう。
【0043】
肝臓細胞:本明細書中で使用される場合、用語「肝臓細胞」とは、それらの起源または細胞運命に関わらず、正常肝臓において存在するすべての型の細胞をいう。
【0044】
幹細胞:本明細書中で使用される場合、用語「幹細胞」とは、1つより多くの細胞運命を有する(すなわち多能性である)娘細胞を生じ得る増殖性の高い細胞をいう。全能幹細胞(例えば、胚性幹細胞(ES細胞)または哺乳動物胚の8細胞段階までの胚細胞)は、自己複製(自己維持)能力を有し、幹細胞はそれ自体と同一な娘細胞を産生する。対照的に、決定された幹細胞(例えば、造血性幹細胞、神経細胞性幹細胞、皮膚性幹細胞、または肝幹細胞)は多能性であり、広範な増殖能力を有するが、自己複製能力を有することについては疑問である。全能幹細胞の場合においては、いくつかの娘細胞は親と同一であり、いくつかは、特定の運命に「関連」し、それらの遺伝的潜在能力を親のものよりも少なく制限する。決定された幹細胞の場合においては、いくつかの娘細胞は多能性を保持し、いくつかはそれを喪失して単一の特定の運命に関連している。
【0045】
用語「1つ(one)」、「a」、または「an」が本開示において使用される場合、それらは他に示されない限り、「少なくとも1つ」または「1つまたはそれ以上」を意味する。
【0046】
2. 肝細胞系列についての診断マーカー
αフェトプロテイン(AFP)およびアルブミンは共に細胞質タンパク質であり、タンパク質としてアッセイされる場合、肝細胞系列についての特に信頼できるマーカーである。これらのタンパク質の変異体型をコードするメッセンジャーRNAは、造血前駆細胞において発現されるが翻訳されない;例えば、AFP mRNAの変異体型は、エキソン1コード配列が、代替的なエキソン1または2つのエキソンのいずれかで置換され、肝細胞におけるものと異なっている(Kubota、Storm、およびReid、投稿中;また特許出願中)。それゆえに、これらの2つのタンパク質の発現は、肝臓における他の細胞型からの肝亜集団の同定のための基礎である。肝臓の発生において、AFPおよびアルブミンの存在は、肝前駆細胞の強力な陽性指標として認められている。肝臓発生の最も初期の段階において、これらの細胞は、胆管系列および肝実質細胞系列の両方に入る子孫を産生し得る。これらの娘細胞が胆管系列に関連する場合、AFP発現は停止する。しかし、AFP発現は肝実質細胞系列においては周産期に抑制されるまで持続し、アルブミン発現は成体肝実質細胞の主要な特徴の1つとしてそのまま留まる。
【0047】
3. ヒト肝臓前駆細胞のプロセシング
肝臓細胞の単離は通常、組織の単一細胞懸濁物への酵素的および機械的解離、続いて密度勾配遠心分離、遠心分離的精製、ディファレンシャル酵素消化のプロトコールを用いる分画を含み(すなわち肝星細胞)、および/または細胞培養を使用する選択を伴う(Freshney、「Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique」1983, Alan R Liss, Inc. NYに概説されている)。肝臓組織は、胎児、新生児、乳児(誕生から1歳まで)、小児(1歳から思春期まで)、または成人(思春期過ぎ)から得られる。密度勾配遠心分離が、異なる細胞集団(例えば、肝芽細胞)を分画および単離するために好ましく使用される。
【0048】
4. 近位肝幹細胞および他の前駆細胞の培養
近位肝幹細胞および肝関連前駆細胞は、胚性肝間質支持細胞と、規定のホルモンおよび成長因子の混合物を添加した無血清培地とを必要とする[1-6]。近位肝幹細胞、関連前駆細胞、および二倍体成体肝細胞の、クローン原性の拡張および鍵となるマーカーの維持の延長は、胚性肝間質支持細胞が、インスリン、トランスフェリン/Fe、および好ましくはヒドロコルチゾンを添加した無血清のホルモン的に規定された培地と組み合わせて、STO支持細胞と置き換えられた場合に起こり得る[7]。これらの条件が胎児組織からの多様な範囲の前駆細胞および二倍体成体細胞のコロニー形成さえも支持するならば[7]、異なる条件が始原肝幹細胞を選択するために必要である。
【0049】
5. 始原肝幹細胞の単離
本発明は、ヒト肝臓組織から始原肝幹細胞を単離する方法を包含し、この方法は、肝臓組織に由来する細胞懸濁液、好ましくは実質細胞について富化されたものをプラスチック表面に適用する工程と、成熟肝細胞、近位肝幹細胞、および関連前駆細胞を除去するストリンジェントな培養条件に細胞を供する工程とを含む。ストリンジェントな培養条件には、炭水化物代謝のレギュレーター、鉄の供給源、膜産生因子、および好ましくは抗酸化剤を補充した無血清培地の使用が含まれる。
【0050】
好ましい炭水化物代謝のレギュレーターはインスリンである。好ましい鉄の供給源はトランスフェリンである。好ましい膜産生因子は、1種またはそれ以上の脂質、最も好ましくは遊離脂肪酸を含む組成物である。好ましい抗酸化剤はセレンである。無血清培地は、好ましくはヒドロコルチゾンでさらに補充される。肝臓組織は、好ましくは胎児、新生児、乳児、小児、児童、または成人から、最も好ましくは胎児から得られる。
【0051】
始原肝幹細胞は、低い細胞密度(例えば、1000〜2000細胞/cm2)でプラスチック表面上で肝臓に由来する細胞懸濁物を培養することによって単離される。ストリンジェントな培養条件により、ヒト肝臓から、近位肝幹細胞の前駆細胞である始原肝幹細胞が出現する。ヒト肝臓由来のこれら始原肝幹細胞は、Ep-CAM、AC133、CK8/18、CK19、およびアルブミンを同時発現し、それらの亜集団は、N-CAM、CAM5.2、およびc-kitを発現する。
【0052】
当業者は、本発明が他の組織型から始原細胞を単離するために使用され得ることを認識する。
【0053】
6. 近位肝幹細胞の単離
ヒト近位肝幹細胞は、肝実質細胞もしくは胆管上皮、またはその組み合わせを生じる。ヒト近位肝幹細胞は、Ep-CAM、CK8/18、サイトケラチン19、αフェトプロテイン、およびアルブミンを同時発現し、亜集団はAC133を発現する。ヒト近位肝幹細胞は種々の方法によって単離され得、これらには(i)EP-CAMを同時発現する細胞の免疫選択、(ii)好ましくは実質細胞について富化した肝臓由来の細胞懸濁物を、発生誘導因子を用いて培養すること、または(iii)ヒト始原肝幹細胞を発生誘導因子を用いて培養することが含まれる。発生誘導因子は好ましくは二次的な細胞によって供給される。好ましい二次的な細胞には、STO支持細胞、胚肝間質細胞、または内皮細胞が含まれる。
【0054】
7. 免疫選択による肝前駆細胞の単離
本発明はまた、肝前駆細胞に特異的な細胞表面マーカーを免疫選択することに基づく肝臓由来の細胞懸濁物から肝前駆細胞を単離する方法を含む。肝前駆細胞は、ep-CAMを発現する細胞を選択することによって本発明に従って単離され得る。好ましくはこれらの細胞はAC133をさらに発現する。本発明の免疫選択された肝前駆細胞は、好ましくはさらにアルブミンを発現し、より好ましくはさらにサイトケラチン19を発現する。好ましくは、免疫選択された肝前駆細胞は幹細胞である。
【0055】
本発明の1つの実施態様において、単離された肝前駆細胞は始原肝幹細胞である。本発明の別の実施態様において、単離された肝前駆細胞は近位肝幹細胞である。
【0056】
8. 肝前駆細胞の産生
本発明はまた、始原肝幹細胞から近位肝幹細胞および関連前駆細胞を産生する方法を包含し、この方法は、STO支持細胞層上およびHDM中に直接的にプレーティングする工程、または、培養プラスチック上のコロニーからSTO支持細胞層に始原肝幹細胞を移す工程のいずれかの工程と、始原肝幹細胞のコロニーから近位肝幹細胞が出現することを可能にする工程とを含む。
【0057】
近位肝幹細胞および関連前駆細胞はまた、ペトリ皿(好ましくは、電荷を帯びていないポリスチレン表面)、組織培養プラスチック(好ましくは、イオン化ガスにさらしたポリスチレン表面であって、ポリスチレンが、細胞が結合する側に向かって好ましい方向の負電荷(または正電荷)で分極している)、マイクロキャリア(好ましくは、細胞が結合し得る培養ビーズ)、繊維材料(好ましくは、ナイロン、コットン、ポリエステル)、合成骨格材料(好ましくは、ポリアクチド、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(オルトエステル)、もしくは他の合成材料から作られたもの)、またはスポンジ(好ましくは、天然もしくは合成のスポンジ)を含む、コートされていない表面上で培養することによって始原肝幹細胞から産生され得る。
【0058】
近位肝幹細胞および関連前駆細胞はまた、生物学的表面上で培養することによって始原肝幹細胞から産生され得る。生物学的表面は、上記のカテゴリーの表面上にコートされ得るかまたは調製され得る。従って、例えば、ペトリ皿、組織培養プラスチック、マイクロキャリア、または繊維材料に、細胞外マトリックスコーティングをコートし得る。本発明において使用される生物学的表面には以下が含まれる:(i)細胞外マトリックス(細胞によって産生されるタンパク質および炭水化物の複雑な混合物であり、細胞の外側および細胞間に局在し、コラーゲン、接着タンパク質、プロテオグリカン、および他のタンパク質を含む)、(ii)細胞外マトリックス成分(フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン(20ファミリーより多くのコラーゲンがあり、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン(これらの3種は細胞培養において現在最も一般的に使用されている)を含む)、細胞接着分子すなわち「CAM」(カルシウム依存性のものもそうでないものもある)、およびプロテオグリカン(1つまたはそれ以上のグリコサミノグリカン鎖(グルクロン酸またはイズロン酸+アミノ糖のダイマー単位のポリマー)を結合するコアタンパク質からなる分子であり、これらは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、デルマタン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ヘパリンプロテオグリカンを含む)を含む、細胞接着、増殖、および/または組織特異的機能の発現の最適化のために単独でまたは組み合わせて使用される個々の精製したマトリックス成分)、(iii)細胞外マトリックスが富化された組織抽出物(Matrigel(グループIにおいて示された任意の表面にコートされ得る、移植可能なマウス胚癌腫の尿素抽出物)、ECM(希釈アルカリ、希釈界面活性剤、高塩濃度抽出物、尿素などを使用し、表面(グループIに記載のいずれか)をコートする細胞外マトリックス成分が富化された滲出物を残した、培養細胞の抽出物)、羊膜マトリックス(希釈アルカリ、希釈界面活性剤、高塩濃度抽出物、尿素などを使用し、羊膜に存在するマトリックス成分を残した、羊膜の抽出物)、およびバイオマトリックス(高塩濃度(例えば、>3M NaCl)およびヌクレアーゼを用いて、すべての組織コラーゲンおよび接着タンパク質のような任意の付随する成分を残した、組織の抽出物)を含む)、(iv)血清コーティング(ペトリ皿または組織培養ディッシュを血清でコートする場合、血清中に高レベルで存在する接着タンパク質(とりわけフィブロネクチン)を添加する)、ならびに(v)ポリリジンまたはポリロイシン(これらの正に荷電したアミノ酸を用いるコーティングは、上皮細胞を優先的に結合するために使用される)。
【0059】
近位肝幹細胞および関連前駆細胞はまた、Anthony AtalaおよびRobert P. Lanza編、Methods of Tissue Engineering, Academic Press, New York 2002(参照として本明細書に組み入れられる)において記載される条件下で培養することによって始原肝幹細胞から産生され得る。本発明によって産生される肝前駆細胞には、始原肝幹細胞、近位肝幹細胞、肝実質細胞関連前駆細胞、および胆管関連前駆細胞が含まれる。
【0060】
9. 治療的アプローチ
本発明の単離された前駆細胞は、肝臓に方向付けられた細胞および/もしくは遺伝子治療のために、またはワクチンを生成するためのウイルス産生(例えば、C型肝炎ウイルス)のための宿主となる細胞として、使用され得る。また、本発明の前駆細胞は、肝臓生検(例えば、パンチ生検)からエキソビボで拡張され得、拡張された細胞は、自系もしくは同種異系の細胞、または遺伝子治療のために使用されるか、あるいは臨床的にまたは学問的な研究のために使用され得る生体人工肝臓を作製するためにバイオリアクターに播種するために使用される。このことにより、患者の肝臓の主要な侵襲的外科的切除の必要性が排除される。
【0061】
前駆細胞が培養中に確立されれば、多数の遺伝子送達ベクター系のいずれかを使用して遺伝子移入を実行できる。本発明の前駆細胞の増殖特性により、十分な遺伝子の挿入および発現のための細胞増殖を必要とする一定の遺伝子送達ベクター(すなわち、レトロウイルスベクター)を使用するエキソビボ遺伝子移入における使用が可能となる。
【0062】
遺伝子治療のための代替的なアプローチは、特異的に前駆細胞を標的化するベクターを設計すること、次いで、関心対象の遺伝子とともに、そのベクターを患者に直接的に注入することである。このベクターは、内因性の前駆細胞集団を標的化および修飾する。
【0063】
本発明の前駆細胞は、自系もしくは同種異系の、肝臓に方向付けられた細胞または遺伝子治療において使用され得る。自系肝前駆細胞の使用により、移植細胞の拒絶に関する大きな懸念が排除されることが明らかである。本発明の前駆細胞は、同種異系の細胞導入に関して特に魅力的である。なぜなら、それらの抗原性プロフィールは最小の免疫学的拒絶現象を示すからである。
【0064】
一旦自系もしくは同種異系の前駆細胞が単離、精製、および培養されると、それらは、遺伝的に改変されるかまたはインタクトなままで残し得、インビトロで拡張され得、次いで宿主に移植して戻され得る。遺伝的改変が所望される場合、遺伝的改変の後および移植の前に、これらの遺伝的に改変された細胞は拡張され得、および/または優勢な選択マーカーの取り込みおよび発現に基づいて選択され得る。移植物は、肝臓の区画または異所的部位または異所性部位に戻され得る。肝臓の区画への移植のために、門脈注入または脾臓内注射が使用され得る。脾臓内注射は選択的投与経路であり得る。なぜなら、脾臓内注射を介して移植された肝前駆細胞は肝臓の区画に移動するからである。
【0065】
さらなる医学的手順は、移植された肝前駆細胞の肝移植の効果を補助し得る。動物モデルにより、部分的肝切除術において、血管新生因子および他の成長因子の投与により、移植および移植された肝実質細胞の生存度が促進されることが示されている。代替的なアプローチは、異所的部位に、遺伝的に改変した前駆細胞を移植することである。
【0066】
これまで、細胞の調達、細胞を凍結保存できないこと、塞栓形成、および免疫学的拒絶などを含む、肝細胞治療アプローチに関連する問題が存在していた。現在の肝細胞治療アプローチに伴う問題は、使用されるドナー細胞が主として成体肝臓細胞であり、単離および再注入の後の寿命が短いということによるものであると考えられる。さらに、成体細胞の使用により強力な免疫学的拒絶を生じる。本発明の前駆細胞は、免疫学的拒絶現象を誘発するそれらの能力が限定されていること、凍結保存されるそれらの能力、それゆえにそれらの組織型に機会を与えること(それによってドナー細胞をレシピエントに合致させること)、ならびに「規格品」製品を与える能力のために、そしてそれらの広範な再生能力のために、より高い効力を与える。
【0067】
遺伝子治療に関して、進行中の試みは「標的化された注射可能なベクター」、すなわち発生下での臨床治療のための最もポピュラーな経路を利用する。これらのアプローチは、免疫学的な問題およびベクターの一過性発現の両方に起因して、限られた効力を有する。有利な価値のあることが証明された遺伝子治療のための唯一の経路はエキソビボ遺伝子治療であり、造血前駆細胞によってほぼ独占的に行われている。本発明者らは、ベクターは精製された前駆細胞にエキソビボで導入され得;改変された細胞が選択されてインビボで再導入されるので、前駆細胞を用いるエキソビボ遺伝子治療(またはこれらの前駆細胞に何らかの方法で標的化した注射可能なベクターの使用)が有効であることが証明されると予測している。前駆細胞の利点は、それらの膨大な拡張能力、それらの(あるとしても)最小限の免疫学的反応の誘導、または組織型になる能力、そしてそれゆえに、レシピエントの免疫学的表現型に合致する能力、および肝実質細胞と胆管細胞の両方を産生するように分化するそれらの能力である。
【0068】
10. 他の用途
ヒト肝臓の始原肝幹細胞および近位肝幹細胞についての用途は多く、多様である。それらには以下が含まれる:1)ヒト細胞上での研究;2)ワクチンまたは抗ウイルス剤の産生;3)毒物学的研究;4)薬物開発;5)タンパク質製造(種々のヒト特異的因子の製造のための宿主として細胞を使用する);6)肝細胞治療;7)肝臓遺伝子治療;および8)研究、毒物学的および抗微生物学的研究、タンパク質製造、または臨床的に肝臓補助系として使用され得る生体人工肝臓。始原肝幹細胞および近位肝幹細胞が肝実質細胞および胆管細胞に分化する能力を考慮すると、本発明の細胞は、それらが置かれる微小環境に依存して肝臓および胆管の両方の細胞運命のために使用され得る。
【0069】
ヒト肝前駆細胞(4つすべてのカテゴリー)の利用可能性は、ヒト細胞上でのはるかにより広範な研究を可能にし、肝臓細胞および遺伝子治療の首尾よい形態の開発を容易にし、研究における、および臨床補助デバイスとしての両方での使用のためのヒト生体人工肝臓の開発を可能にするはずである。現在、健常なヒト組織の限られた供給は、肝臓細胞治療またはヒト生体人工肝臓における臨床プログラムを不可能にしている。前駆細胞集団は、その限られた供給を克服するか、または少なくとも大いに緩和する、十分な拡張能力を有するはずである。さらに、これらの細胞およびそれらの直接の系統的子孫は、成熟肝細胞で観察されるのと比較して、寒い場合と暖かい場合の両方で、虚血に対して優先的な生存を示す。これは、肝臓移植のためにまたは健常成熟肝細胞を産生するために使用することができない肝臓が、前駆細胞の供給源であることを意味する。
【0070】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって例証される。
【実施例】
【0071】
実施例1
胎児組織からの肝細胞懸濁物の調製
肝臓組織を、妊娠の選択的終止によって得られた妊娠18〜22週齢の間の胎児から得た。肝臓組織試料を、10%胎仔ウシ血清を補充したRPMI 1640中に一晩浸した。
【0072】
細胞バッファー(ウシ血清アルブミン(BSA Fraction V, 0.1%, Sigma, St. Louis, Mo.)を補充したRPMI)、亜セレン酸(300pM)、および抗微生物剤混合物、AAS(Gibco BRL/Invitrogen Corporation, Carlsbad, California)中での調製洗浄後に、組織体積は2〜12mlの範囲であった。肝臓組織を必要に応じて、IV型コラゲナーゼおよびデオキシリボヌクレアーゼ(Sigma, St Louis, Mo.; 両方とも6mg/mL)を含む25mlの細胞バッファー中で、消化のために3mL以下のフラグメントに細分した。インキュベーションを、32℃で15〜20分間、頻繁に攪拌しながら行い、細胞凝集物の均質な懸濁物を得た。次いで、懸濁物を40ゲージのふるいを通し、5分間1200RPMで遠心した。その後、EGTA(0.2mM, Sigma)、Hepes(20mM, Boehringer Mannheim)、BSA(0.1% Sigma)、DNase(0.01% Sigma)を補充し、HBSS modと呼ばれるHanks緩衝化塩溶液のカルシウムを含まない溶液中で再懸濁した。
【0073】
この酵素的に消化された懸濁物は、造血亜集団および肝亜集団を含む。酵素的消化懸濁物の抗原性プロフィールを表1に示す。AFP発現細胞はもともとの細胞懸濁物の6〜9%であり(図12)、アルブミン発現細胞もそれに匹敵するパーセンテージであり、造血細胞がかなり夾雑していた(表1におけるCD45およびグリコホリンA発現細胞のパーセンテージを参照されたい)。もともとの細胞懸濁物が凍結保存される場合、赤血球細胞のようないくつかの細胞は喪失し、アルブミンおよびAFPを発現する細胞が15〜20%まで富化される(表1)。しかし、最も顕著な富化は、コラゲナーゼを用いる部分的酵素消化で起こり、実質細胞の凝集を起こし、次いでこれを以下に記載するように低速遠心分離を繰り返して非実質(浮遊)細胞から分離し、80%より多くがアルブミンおよびAFPを発現する細胞である細胞懸濁物を生じる(表1)。
【0074】
次いで、造血細胞(大部分が赤血球および赤芽球)および浮遊している非実質細胞を、HBSS mod中で5分間、30g(300RPM)で低速遠心分離を反復することによって実質細胞画分から分離した。ペレットを40mlのHBSS modに再懸濁し、色が最小限の赤血球細胞の夾雑を示すまで再遠心分離した。通常、他の研究者によって報告されているように、これは4または5回の遠心分離および再懸濁のサイクルを必要とした[14, 15]。凝集塊形成を、新たなコラゲナーゼ溶液中での2回目の酵素的消化、続いて50μmナイロンメッシュを通してふるいかけ、およびカルシウムを含まないバッファーに細胞を戻すことによって最小限に抑えた。
【0075】
得られる細胞懸濁液を2回洗浄し、次いで5mLアリコート(各々約2×107細胞を含む)を、50mL Falconチューブ中の5mL Ficoll Hypaque(Amersham Pharmacia, Piscataway, NJ)上に重層し、3000RPMで20分間遠心分離した。界面およびペレットからの細胞を別々にプレーティング培地(補充したRPMI)に再懸濁し、血球計を用いる計数および生存度評価のために各々のアリコートをトリパンブルーで染色した。細胞の生存度は決まりきったように95%より高かった。実質細胞の富化のための低速遠心分離法により造血構成物が排除され、約80%がAFP発現細胞である細胞懸濁物が残った。細胞が、AFP、アルブミン、およびCK19を発現し、造血マーカーを発現しないならば、AFP発現細胞の大部分は近位肝幹細胞である(表1)。
【0076】
(表1)新たに単離された胎児肝細胞のフローサイトメトリー分析
OCS=もともとの細胞懸濁物;C-OCS=もともとの細胞懸濁物を専用のバッファー中で凍結保存した。後に細胞を融解し、次いでマーカーの発現について分析した。多くの細胞(特に赤血球細胞)(除核された亜集団)は凍結保存で生存しない。実質調製物=低速回転で遠心分離を繰り返すことによる赤血球細胞および他の浮遊非実質細胞の除去後;n.d.=行っていない。
【0077】
実施例2
成人組織からの肝細胞懸濁物の調製
ヒト肝臓を認可された臓器調達機関から入手した。ドナーは脳死した13歳の女性であった。肝臓を臓器全体灌流技術を使用して消化した。次いで、単一細胞懸濁物を、2ステップOptiprep勾配(9-12.5%)を使用して、Cobe 2991セルウォッシャー上で分画して生存可能な細胞を得た。次いで、Cobe 2991上でのさらなる分画のために、等量の9%分画細胞(バンド1)および12.5%分画細胞(バンド2)を25% Optiprepと個々に混合することにより、生きている細胞を残った死細胞から分離した。前方(forward)および側方の散乱パラメーターのフローサイトメトリー分析に基づき、バンド1およびバンド2の細胞組成は同様であると思われた。細胞を凍結保存した。
【0078】
実施例3
成体ヒト肝細胞からのコロニー形成
コロニー形成による肝幹細胞の存在を評価するために、実施例2からの細胞を融解し、12,500生細胞/ウェルの密度で、6ウェルプレート上、三つ組で、STO-5支持細胞層上にプレーティングした。使用した組織培養培地は、ペニシリン/ストレプトマイシン(50U/ml/50μg/ml)、ウシ血清アルブミン(0.2% w/v)、トランスフェリン(10μg/ml)、遊離脂肪酸(7.6μEq/L)、ニコチンアミド(nicotinomide)(4.4mM)、セレン(3×10(-8)M)、銅(1×10(-6)M)、2-メルカプトエタノール(5×10(-5)M)、L-グルタミン(2mM)、インスリン(5μg/ml)、ヒドロコルチゾン(10(-7)M)を含み、上皮成長因子の添加あり(+EGF)または添加なし(-EGF)の、DMEM F12であった。
【0079】
細胞を5日間培養し、固定し、そして光学顕微鏡によって可視化することによってコロニーを計数した。分画していないいずれのウェルにおいてもコロニーは観察されなかった。このことは、死んでいるかもしくは死につつある細胞、またはOptiprep勾配上での遠心分離の前の何らかの他の細胞調製物の成分の阻害効果に起因する可能性がある。しかし、コロニーは、バンド1とバンド2の両方の細胞画分から観察された。バンド1からの細胞を含む3ウェルにおいて、総計8のコロニーが観察され(+EGF培地から4個、-EGF培地から4個)、バンド2からの3ウェルにおいて、総計13のコロニーが観察された(+EGF培地から11個、-EGF培地から2個)。この実験から計算されたコロニー形成細胞の全体の頻度は0.03%であった。
【0080】
実施例4
成体ヒト肝細胞の亜集団におけるアルブミン、CD133、およびEp-CAMの同時発現
細胞を、本質的に実施例2に記載されるようにドナーの肝臓から単離した。CD45細胞表面抗原、または白血球共通抗原(白血球(leukocyte)上で広範に発現するチロシンホスファターゼ)を発現する細胞の存在を、抗CD45モノクローナル抗体を使用する蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって評価した。約17%の細胞がCD45陽性であった(図14A)。CD45陽性細胞を、抗CD45モノクローナル抗体を使用する磁気セルソーティングならびにsuper-paramagnetic MACS MicroBeadsおよびautoMACS(自動化卓上磁気セルソーター)によって取り除いた。磁気ビーズ標識抗体および機器は共に、Miltenyi Biotecによって供給された。CD45陽性細胞はまた、「パニング」、蛍光活性化セルソーティング、または他の陰性免疫選択の形態によって除くことができる。除去後、肝細胞調製物に残存しているCD45陽性細胞の画分は、約1%まで減少した(図14B)。CD45陽性細胞の除去は、肝実質細胞および肝前駆細胞および幹細胞上の抗原のさらなる分析を容易にする。これはまた、これらの細胞の富化された集団の単離を容易にするはずである。
【0081】
a. アルブミン
CD45陽性細胞の除去後、肝細胞の試料をヒト血清アルブミンの発現について分析した。細胞を、パラホルムアルデヒドで固定し、0.2% Triton X-100界面活性剤処理によって透過化し、そしてヒトアルブミンに対するマウスIgG1モノクローナル抗体、および蛍光色素A647で標識したマウス免疫グロブリンG1(IgG1)に対するアフィニティー精製したヤギ抗体との連続的インキュベーションによって染色した。バックグラウンド染色および細胞の自己蛍光を、抗アルブミンモノクローナル抗体の代わりに、ヒト抗原に対する特異的結合活性を有しない、精製したマウスミエローマタンパク質(IgG1も)を使用することによって測定した。細胞の約97.5%がアルブミン陽性であった(図15A)。陽性染色のゲーティング(赤色の輪郭)は、マウスミエローマタンパク質対照(示さず)に対する比較によって決定した。
【0082】
前方光散乱および側方光散乱のFACSによる測定は、細胞集団を特徴付けするために使用され得る。前方および側方の散乱は、主として、それぞれ細胞サイズおよび細胞内構造の複雑さの関数である。図15Bに示されるように、成体ヒト肝臓からのアルブミン陽性細胞集団は、比較的高度の前方(FSC)および側方の散乱(SSC)を有する主要なクラスの細胞を含む。サイズおよび形態の分析、ならびに生化学的および抗原性マーカー(示さず)は、これらの細胞が、成熟した、小さな肝実質細胞(平均サイズ、直径約18〜22μm)と一致する特性を有することを示す。正常成体ヒト肝臓からの最も大きな肝実質細胞(直径約>30μm)は、明らかに本発明者らの調製物において下方に表され、これはおそらく臓器の収集と灌流との間の期間で死滅可能性が高いこと、および/または単離手順の間に非常に損傷を受けやすいことのためである。しかし、図15Bはまた、成熟した小さな肝実質細胞に加えて、より低い前方および側方の散乱によって特徴付けられる多くの細胞もまた、アルブミンを発現することを示す。調製物中のわずかな(約2.5%)アルブミン陰性細胞が、ほとんど独占的に非常に低い前方および側方散乱を示す(図15C)。これらは死滅した細胞または非常に小さな細胞(例えば、赤血球の後期前駆細胞)であり得る。
【0083】
b. CD133
抗原CD133(AC133)は、5つの膜貫通ドメインを有する120キロダルトンの細胞表面糖タンパク質である。このタンパク質は、マウスタンパク質プロミニンに類似かまたはオルトロガス(orthologous)なものである。ヒトCD133抗原はもともと、初期前駆細胞(これには、血液形成(造血)細胞の系列における幹細胞が含まれる)のサブセット上で同定された。特定の他の未成熟細胞はCD133を発現し、これには、ヒト胚(5週齢)において発生している上皮、内皮細胞前駆細胞、および神経細胞前駆細胞、または幹細胞が含まれる。CD133の発現はまた、あるヒト腫瘍および腫瘍由来細胞株(例えば、網膜芽細胞腫および結腸癌腫CaCo-2)について報告されている。このタンパク質は、原形質膜に豊富なもの(例えば、微小絨毛)において優先的に濃縮されて見い出される。上皮細胞で見い出される場合、これは、先端に優先的に局在するが、膜表面の底側面には局在しない。特に免疫組織化学による以前の研究は、多くのヒト組織(成人肝臓を含む)においてそのタンパク質についての検出可能なメッセンジャーRNAが存在するにも関わらず、成体ヒト上皮組織においてCD133タンパク質発現を実証することに失敗してきた。
【0084】
本発明者らは、本発明者らのCD45除去成体ヒト肝臓細胞調製物において、CD133抗原を発現する細胞を探索するために、蛍光標識モノクローナル抗体を用いる染色およびFACSによる分析を使用した。以前のネガティブな報告を考慮すると、驚くべきことに、本発明者らは、CD45除去肝臓細胞の大部分が(図14Bを参照されたい)、CD133について陽性染色を示すことを観察した。図16Aは、児童(2歳)個体の肝臓からの調製物中の約58%のCD133陽性細胞を示す。CD133陽性細胞(小さなサイズの成熟肝実質細胞を含む)のかなりの集団の存在は、成人を含むさらなる個体からの細胞調製物において観察された。CD133陽性集団(図16Aの上のボックス)は、側方光散乱(図16A)および前方光散乱(示さず)に基づいて成熟(小さな)肝実質細胞として同定された調製物中、細胞のほぼ半分を占める。これはまた、光散乱から判断して、成熟肝実質細胞よりも小さく形態学的に区別される多くの細胞を含む。
【0085】
磁気セルソーティングを用いて、CD133を発現する肝臓細胞を陽性選択することができる。図16Bは、autoMACS装置(Miltenyi Biotec)を利用する磁気ソーティング1サイクル後の、回収された細胞の約75%までのCD133陽性細胞の富化を示す。より多い量の抗体結合MACS MicroBeadsの使用およびソーティング条件の調整[効果に対する言葉を挿入−「当業者」には簡単であるはずである??]は、ほぼ定量的な収量でより高度に富化されたCD133陽性細胞集団の単離を可能にするはずである。(他の陽性免疫選択の方法を使用してCD133陽性細胞を富化できることにも注意のこと)。側方散乱(図16B)および前方散乱(示さず)から判断すると、富化されたCD133陽性細胞は、CD45除去肝細胞調製物において同定されたCD133亜集団のすべてを占める。
【0086】
c. Ep-CAM
上皮細胞接着分子(Ep-CAM(GA733-2、CO17-1A、EGP40、KS1-4、およびKSAとしても知られる))は、同種親和性の、カルシウムイオン非依存性の細胞−細胞接着に関与する糖タンパク質である。このタンパク質は、多くのヒト上皮組織において発現され、増殖している上皮細胞(腫瘍細胞を含む)において実質的にアップレギュレートされるようである。C. J. de Boerおよび共同研究者らは、8週齢胚ヒト肝臓において、大部分の肝実質細胞が検出可能なEp-CAMタンパク質を発現することを報告した[de Boer CJ, van Krieken JH, Janssen-van Rhijn CM, Litvinov SV (1999). 「Expression of Ep-CAM in normal, regenerating, metaplastic, and neoplastic liver」, Journal of Pathology 188: 201-6]。対照的に、正常ヒト成体肝臓において、彼らは、肝実質細胞においてEp-CAM発現を検出できず、そして胆管上皮細胞のみがこの抗原に対して陽性に染まると報告した。最後に、この抗原は、肝臓の再生および修復が胆汁性肝硬変によって誘導される状況において、ならびに特定の肝臓の腫瘍(特に胆管癌)の細胞において、肝前駆細胞として同定された細胞中で検出された。
【0087】
FACS分析によって、本発明者らは、児童と成人の両方から、分画していないヒト肝臓細胞調製物中で、Ep-CAM陽性細胞のマイナーな集団を一貫して検出している。Ep-CAM陽性集団は、約0.4〜2.5%の細胞を占める。図17に示されるように、Ep-CAM陽性細胞はまた、CD45陽性細胞の>95%の除去の後に、肝細胞集団において観察され得る。図17Bは、1つのこのようなヒト肝臓調製物からのEp-CAM陽性細胞を示す(任意の公知のヒト抗原を染色しない対照抗体についての同じゲーティング領域における0.15%と比較して(図17A)、赤い輪郭によって示されるようにゲーティングされたプロット領域中の0.57%;従って、約0.57-0.15=0.42%の細胞がEp-CAM陽性である)。二重標識分析(データ示さず)により、CD45除去集団におけるEp-CAM陽性細胞の大多数は予測どおりCD45陰性であることが実証される。しかし、本発明者らのヒト肝調製物中におけるいくつかの(大体1%)のCD45陽性細胞もまたEp-CAMを発現するようである(データ示さず)。
【0088】
d. Ep-CAM、CD133、およびアルブミンの同時発現
本発明者らは、成体ヒト肝臓から、Ep-CAMとCD133の両方を発現する肝臓細胞を探索した。細胞を、各々異なる蛍光色素と直接結合体化したEp-CAMおよびCD133に対するモノクローナル抗体とともにインキュベートした。図17Cに示されるように、この特定のCD45除去成体ヒト肝臓細胞調製物における細胞の約42%が、CD133について検出可能に染色された。(図16Aに示される実験よりもいくぶん低めのここでのCD133染色の程度は、異なるドナーからの肝臓細胞調製物間の実際の違いから、年齢もしくは他の変数の結果として、または同定されていない実験的技術のバリエーションから生じる可能性がある)。Ep-CAMについて強力に染色された集団中の細胞の間で(図17Bの赤い境界内に示される)、約70%がまたCD133について陽性染色された(図17D)。このように、この特定の肝臓調製物において、全体のCD45陰性細胞の約0.3%がEp-CAMおよびCD133を同時発現した。
【0089】
図17に示される実験のために使用される細胞調製物は、図14および15において示されるアルブミン発現の分析において使用されたものと同一であった。上記のように、CD45除去細胞集団における細胞の約97.5%がアルブミンについて陽性染色され、そしてわずかなアルブミン陰性細胞が低い前方散乱および側方散乱の特有のパターンを示した。図17Eに示されるように、Ep-CAMおよびCD133を同時発現することが見い出された実質的にすべて(約99.5%)の細胞が、アルブミン陽性細胞に特徴的な前方散乱および側方光散乱を示した;これらは、アルブミン陰性細胞のすべてを含む前方散乱対側方散乱のプロットの境界を付けた領域の完全に外側にある(図15Cを参照されたい)。このように、Ep-CAMおよびCD133を同時発現する出生後のヒト肝臓細胞はまた、ヒト血清アルブミンを発現する。
【0090】
e. CD133発現細胞およびEp-CAM発現細胞の同時富化
図16Bに示されるように、磁気セルソーティングのような陽性免疫選択は、ヒト肝臓細胞調製物からのCD133陽性細胞の富化を可能にする。本発明者らは、Ep-CAMの発現のために、開始集団(すでにCD45除去されている)およびCD133富化調製物における細胞を評価した。図17Aは、開始集団の少なくとも1.1%(慎重に厳しくゲーティングされた)がEp-CAMを発現した。CD133陽性細胞の富化後、得られる集団(図5B)は、少なくとも4.5%のEp-CAM陽性細胞を含む。このことは、成体ヒト肝臓からの細胞の亜集団におけるCD133およびEp-CAMの同時発現を確証し、そしてこれらの細胞が陽性免疫選択によって富化され得ることを実証する。これら2種の表面抗原を同時発現する細胞による前方および側方散乱分析(図17の実験におけるように)は、やはりほぼ100%のこれらの細胞がまた、アルブミン陽性であるに違いないことを示す。
【0091】
上記の成体ヒト肝臓細胞は、CD133またはEp-CAMのいずれかと一緒に、肝実質細胞系列のプロトタイプマーカーであるアルブミンを同時発現し、それゆえに、本明細書中に記載されるヒト胎児肝臓からの特定の肝幹細胞の同じ表現型プロフィールを有する。さらに、本明細書中に記載される成体ヒト肝細胞は、成熟肝実質細胞よりも(18〜22ミクロン直径の「小さな肝実質細胞」でさえも)小さなサイズの肝臓細胞である。成体ヒト肝臓が、操作的に肝幹細胞を規定する条件下で(すなわち、無血清培地中で、STO支持細胞を用いて)コロニーを形成し得る細胞を含むという知見とともにまとめると、アルブミン、Ep-CAM、およびCD133の同時発現は、成人肝臓中でのこのような幹細胞の存在を示す。本明細書中に記載される陽性免疫選択の方法は、ヒト肝臓(小児または成人に由来する組織を含む)からの肝幹細胞の高度に富化された集団を入手するために、2種の表面マーカー、Ep-CAMおよびCD133を同時に発現する細胞を単離するために使用され得る。
【0092】
実施例5
STO支持細胞層上での近位肝幹細胞の初代培養
大部分の肝臓前駆細胞は、始原肝幹細胞を例外として、胚性肝臓間質支持細胞とともに同時培養した場合に長くは生存しない;新生児肝臓、成体肝臓、または多様な成体組織からの支持細胞が成功しなかった(Sigalら、1994;Brillら、1995;Sigalら、1995;Brill S, Zvibel I, およびReid LM. Expansion conditions for early hepatic progenitor cells from embryonal and neonatal rat livers. Digestive Diseases and Sciences 44: 364-371, 1999)。胚性肝臓間質支持細胞は、胚性間質細胞株であるSTO細胞によって置き換えることができ、胚性幹細胞のための日常的な支持細胞として使用され、そして新たに単離された正常なげっ歯類の肝幹細胞および二倍体成体ラット肝臓細胞のクローン原性拡張を支持することが見い出されている(KubotaおよびReid、2000)。これらの条件は、支持細胞ありおよびなしで拡張する(Mossら、投稿中)始原肝幹細胞を例外として、ヒト胎児肝臓からの前駆細胞すべてについてもまた必須であることが見い出された。STO支持細胞はまた、新生児および成体のヒト肝臓からの肝前駆細胞について成功することが証明された(Ludlowら、投稿準備中)。胚性間質支持細胞によって供給され、前駆細胞のために必須である因子は知られていない。
【0093】
ATCCに由来するSTO支持細胞を、10%ウシ胎仔血清FBS(Hyclone, Logan, UT)および1% DMSO(Sigma, St. Louis, MO)を補充したDMEM/F12(Gibco/BRL/InVitrogen Corporation, Carlsbad, California)中、75cmフラスコにおいてストック細胞から拡張させた。3回継代して9個のコンフルエントなフラスコを得、細胞を10μg/mL マイトマイシンC(Sigma, St. Louis, MO;また、Biomol, Plymouth Meeting, PA)で2時間処理して細胞サイクルの停止を誘導し、そして培養培地で2回洗浄した。細胞をトリプシン処理し、凍結保存培地(50% DMEM/F12, 40% FBS, 10% DMSO)中に再懸濁し、その後5×106細胞の1mLアリコートで凍結し、そして-80℃で保存した。支持細胞を、0.1%ゼラチン(Sigma, St. Louis, MO)でプレコートした培養プレート上に6×104融解細胞/cm2を播種することによって調製した。[16]に記載されている詳細なプロトコールは参照として本明細書に組み入れられる。
【0094】
STO細胞上で継代された細胞を、0.2%ウシ血清アルブミン(Fraction V 脂肪酸フリー、Sigma, St. Louis)、インスリン(5μg/ml)、トランスフェリン/Fe(10μg/ml)、セレン(3×10-8M)、2-メルカプトエタノール(5×10-5M)、遊離脂肪酸の複合物(7.6μEq;[16,17])、ヒドロコルチゾン(10-7M)、グルタミン(2mM)、ニコチンアミド(4mM)、およびAAS(ペニシリン 1000μg/mL、ストレプトマイシン 100μg/mL、およびアンホテリシンB 250ng/mL、Sigma)を補充したRPMI1640(GIBCO/BRL/Invitrogen Corporation, Carlsbad, California)を含む無血清ホルモン規定培地(HDM)中で培養した。好ましくは、サイトカイン、古典的な肝成長因子(例えば、上皮成長因子EGF、肝実質細胞成長因子HGF、インスリン様成長因子IGFIおよびIGFII)のいずれも使用しなかった。
【0095】
実施例1からの分散させ富化させた実質細胞の初代培養物をSTO支持細胞層にプレーティングし、アルブミン、AFB、およびCK19を発現する近位肝幹細胞の安定な凝集物を生成させた。アルブミン、AFP、およびCK19について染まる典型的な細胞を図6a〜6cに示す。これらの細胞は、CK8/18についてもまた陽性であった。実施例6に記載されたプラスチック基層上で培養した細胞とは異なり、STO支持細胞に播種された近位肝幹細胞は一貫した形態を保持し、かつ数週間AFP発現を維持した。これらの条件は、近位肝幹細胞と、より分化した細胞(二倍体成体肝細胞を含む)の両方を支持するので([7])、STO支持細胞を用いる同時培養は、真に始原的なコロニー形成細胞の選択のためには適していないことが証明された。
【0096】
実施例6
始原肝幹細胞の選択
実施例1の富化された実質細胞懸濁物を、2000〜5000細胞/cm2の密度で、組織培養プラスチック上で、脂質、インスリン、およびトランスフェリン/Fe(HDM)を補充した無血清培地中でプレーティングした。プレーティング後最初の12時間、培地は、細胞接着を促進するために10% FBSを含み、その後、培養は無血清で維持した。培地の交換を3日の間隔で行った。
【0097】
接着の直後、培養中に存在する優勢な細胞は、近位肝幹細胞および関連前駆細胞、古典的実質細胞の形態を有する細胞の凝集物であって、アルブミン、AFP、および/またはCK19の発現を伴った;近位肝幹細胞はアルブミン、AFP、およびCK19を示す(図2a)。数日後、近位肝幹細胞および関連前駆細胞はAFPを発現することを停止し、ディッシュに分散した筋線維芽細胞のような外見を有する単独運動性の細胞型に置き換わった。近位肝幹細胞に加えて、いくつかの他の細胞型が培養中に存在した。いくつかは単独で、いくつかは広範なコンフルエントな単層を形成したのに対して、他のものは分離した円形細胞群を形成した。これらの細胞型の間で、アルブミンについての陽性染色は、近位肝幹細胞、関連前駆細胞、そして培養中に近位肝幹細胞および関連前駆細胞の漸次的な消滅と同時に現れた円形の強く凝集したコロニー(始原肝幹細胞)においてのみ観察された。
【0098】
コロニー形成は、予測可能な事象の結果を示した。コロニーの第一波は培養の最初の数日以内に現れ、先に存在していた細胞の凝集から生じたようであった(図1b)。しかし、5〜7日後、新しいコロニー形成の波が、培養ディッシュ全体に分散した単独の細胞から開始した。これらのコロニーは最初、周囲に狭い連続した縁を形成するラメリポディウムを有する、小さい暗色の固く詰まった4〜8個の細胞の群として認識可能であった(図2a)。これらのコロニーは、固く凝集した円形の直径8〜10μmの細胞の広範な群に拡張した(図2b〜2e)。これらの後期に形成したコロニーの全体的外見は、培養の初期に形成したコロニー(これは、より大きな細胞から構成され、胎児肝臓において主要な実質細胞を構成する近位肝幹細胞の初期の凝集物に由来する)とは別物である。
【0099】
始原肝幹細胞はHDM中で組織培養プラスチック上で良好に増殖し、数週間の培養後1cmまでの直径を達成した。多数のコロニーを選択除去し、トリプシン処理によって分散し、直径3mmのコロニーについて1000細胞から直径1cmの大きなコロニーでの15,000〜20,000までの範囲のコロニーあたりの平均細胞数を得た。
【0100】
典型的には、コロニーの最も外側の細胞は、コロニーから分離して培養ディッシュの全体にわたって分散した単独の大きな直径の細胞を形成するようになる、平板化した表現型に転換した(図3a)。他のコロニーにおいて、おそらく固く結合した間葉細胞であろう周界の細胞は、最初はコロニーの周囲を取り囲んで密接に包み込まれた長い線維芽細胞の外見を呈した(図3b)。これらの細胞はまた、単離された紡錘状の細胞としてコロニーから離れて移動した。これらの分散した細胞は、高度に増殖性のままであり、しばしば培養中に優勢な細胞型になり、ディッシュ全体にわたって拡張した固く詰まった層を形成した。コロニーは、この細胞層に囲まれたが、この細胞層によって大きくなり過ぎることはなかった。しかし、二種類の細胞型が点在するようになった各コロニーの境界に、移行ゾーンが形成した(図3c)。
【0101】
実施例7
プラスチック培養中におけるコロニー形成細胞の抗原性プロフィール
実施例6において培養された細胞の抗原性特性を、肝器官発生に関連するマーカーについて免疫細胞化学的染色を用いて調べた。細胞培養物を、メタノールおよびアセトンの50/50(v/v)混合物を用いて、2分間室温で固定した。いくつかの染色領域を、PAPマーカーペン(Research Products International Corp, Mt. Prospect, Illinois)を用いて、各ディッシュの表面に作製し、同じ培養物中で複数の抗体の組み合わせを可能にした。非特異的結合部位を、PBS中の10%ヤギ血清溶液(GIBCO/BRL/Invitrogen, Carlsbad, California)とともに、30分間室温でインキュベーションすることによってブロックした。PBSで2回すすいだ後、一次モノクローナル抗体を各々の染色領域に適用し(通常、領域あたり0.1〜0.3mL)、一晩インキュベートした。4℃で一晩インキュベーションした後、細胞をPBSで2回洗浄し、次いでAlexa 488(1:750)またはAlexa 594(1:1250)(Molecular Probes, Eugene OR)のいずれかに結合体化された二次抗体とともにインキュベートした。いくつかの場合において、FITCまたはPEのいずれかに結合体化された一次モノクローナル抗体が利用可能であり、結合体化していない一次抗体を用いる標識プロトコールの完了後に、この抗体を用いるインキュベーションによる二重標識のための手段を提供した。
【0102】
抗原性プロフィールを表2に要約する。コロニーは、アルブミン(図4a)、CK19(図4b)、epCAM(図4c)、NCAM(CD56、図4d)を含む肝細胞型に以前に関連された多数のマーカーについて陽性に染色したが、PECAM(CD31;データ示さず)については染まらなかった。c-kit染色は、コロニーの境界の狭いセグメントに全体的に局在しているいくつかのコロニーにおいて見られた(図5a)。また、コロニーは、推定幹細胞マーカーCD133(AC133、図5c)について陽性であった。興味深いことに、コロニーの周囲の移行ゾーンの細胞は、最近記載された内皮マーカーCD146(M-CAM、図5c)について陽性に染まり、コロニーの近傍にある間、このタンパク質について陽性のままであり、おそらく密接に関連する間葉細胞型(おそらく内皮前駆細胞)を同定する。コロニーとして出現した始原肝幹細胞はAFPについて陰性であった。このことは、始原肝幹細胞が近位肝幹細胞の前駆細胞であり、そして次には肝実質細胞の前駆細胞および胆管前駆細胞の前駆細胞であることを示す。
【0103】
(表2)培養細胞の表現型
【0104】
実施例8
プラスチック基層からSTO支持細胞へのコロニー細胞の継代
STO支持細胞を使用して、プラスチック基層からの選択的継代の後で始原肝幹細胞の運命を評価した。培養1〜2週間後、実施例6からのプラスチック基層上のコロニーを、双眼拡大鏡の下で吸引によってプラスチック基層から100μLピペットに物理的に拾い上げた。50コロニーまでをHBSS mod中に収集し、次いで20分間までコラゲナーゼ溶液中で攪拌しながら消化して、細胞を懸濁物に分散させた。
【0105】
プラスチックからSTO支持細胞への継代後のコロニー形成効率は低く、500または50細胞/cm2の密度で継代した細胞について0.5〜1%の間の範囲であった。継代したコロニー形成細胞の最初の接着は、プレーティング培地中のEGF(20ng/mL)の存在によって改善された。低いコロニー形成効率は、部分的には、単一細胞懸濁液を達成するための長い(20分間まで)コラゲナーゼ消化に細胞を供する必要性に起因した可能性がある。
【0106】
STO支持細胞上への継代後、始原前駆細胞がSTO細胞層に融合し、4〜5日間の培養後に小さな細胞の固く詰まったコロニーとして再び出現した(図6a)。新しいコロニーは、次の数週間にわたって大きくなり、固く凝集した円状の群を産生し、しばしば周囲がわずかに厚くなっていた(図6c)。いくつかのコロニーにおいて、第2の増殖段階が起こり、ここでは、細胞の出現がコロニーの端の点で起こり、STO層を超えて広がり、しばしばもとのコロニーを取り囲んだ(図6c)。
【0107】
STO細胞上に形成されたコロニーの免疫細胞化学特性は、プラスチック基層上でコロニー形成する細胞について上記したものと同じであった。これは、アルブミン、CK19、CK18、およびCD133についての陽性染色を含む。プラスチック上で生じた最初のコロニーにおけるように、CD146およびNCAMのようなマーカーが、STO細胞上で形成されたコロニーの周辺で最も明確に発現された。この境界の発現パターンは、コロニーが、一次コロニーから増殖した細胞によって取り囲まれた場合に、さらに顕著になった。これは、図9においてNCAMについて明確に示されており、継代された細胞から形成されたもともとのコロニーと、二次的な増殖との界面が、強陽性であるNCAM発現を有する細胞のバンドによって強調されている。このパターンは、汎サイトケラチンマーカーCAM5.2の発現についてもまた見られ、そしてNCAMおよびCAM5.2についての二重標識は、これらの2つのマーカーが境界細胞の同じ領域で高レベルに発現することを示した(図9)。
【0108】
最後に、出現する細胞型の特性は、関心対象のものであった。なぜなら、これらは、明確な細胞間空間を有する線状に配列された細胞の分枝パターンに拡張される細胞の並行した列からなる別個の配列にあるコロニーから出現したものであったからである(図8)。これらの細胞がもともとの細胞コロニーの周囲の広範なシートに拡張された場合、これらは、出現の時点で明白であった線状の組織を喪失したようであった。しかし、アルブミンについての染色は、細胞の列への組織化が細胞塊中で維持されることを明らかにし(図10a)、そしてCD146についての同時染色は、このマーカーもまた増殖している細胞群中で高レベルで発現されていることを示した(図10b)。おそらく、これらの細胞において最も重要なことは、出現する細胞の周囲でのAFPについての染色の出現である(図11)。これは、AFP発現が最初のコロニー形成細胞の系統的子孫に関連付けられ得るという、本明細書中で記載されるエキソビボ操作における最初のポイントを表す。これらのデータは、実施例6において単離された始原肝幹細胞が肝関連前駆細胞を産生するために使用され得ることを示す。
【0109】
実施例9
新生児ドナーからの肝臓における始原肝幹細胞および近位肝幹細胞の存在
肝臓を、妊娠後約28週で生まれ、1日しか生存しなかったドナーから入手した。心停止と、ドナー器官の収集および洗浄との間の温暖虚血(warm ischemia)の期間は、6時間から7時間であった。その後、器官を約12時間氷上に維持した。器官全体(湿重量約100グラム)を灌流に供し、Liberaseを用いて消化し、そして細胞懸濁物を、ヒト小児または成人から得られる肝臓についてと本質的に同様にして調製した。生きていない細胞および多くの赤血球を、Optiprepを使用する調製遠心分離によって除去した。しかし、最終調製物中の生きている非赤血球細胞の実際の収量およびパーセンテージを決定することは困難であった。
【0110】
回収した細胞の一部を、胎児肝細胞について記載されたものと本質的に同様に、ディファレンシャル遠心分離によって赤血球細胞をさらに除去し、次いで始原肝幹細胞の存在を決定するために適切な条件下で培養に播種した(すなわち、無血清のホルモン的に規定された培地中で、組織培養プラスチック基層上でのプレーティング)。細胞の他の部分はさらなる精製なしで、近位肝幹細胞についてアッセイするための条件下でプレーティングした(すなわち、無血清の規定された培地中で、STO支持細胞を用いてのプレーティング)。細胞のさらなる部分を、I型コラーゲンでコートされた組織培養プラスチック上、5ng/mLの補充的な上皮成長因子(EGF)を含むかまたは欠く、無血清の規定された培地中で播種した。
【0111】
適切な期間のインキュベーション後、肝コロニーの増殖をすべての試験条件で観察した。始原肝幹細胞および近位肝幹細胞についてのそれぞれのアッセイにおいて、コロニーの形態および増殖の速度は、同じ条件下で培養された、ヒト胎児肝臓(一般的に妊娠の<22週間後に得られた)から培養された細胞について観察されたものと同様であった。代表的なコロニーを、ヒトアルブミンの発現について免疫蛍光染色によって試験したところ、このマーカーについてすべて陽性であった。
【0112】
明らかに上皮性(推定的には肝性)形態のコロニーが、EGFの存在下でコラーゲンコートしたプレート上に現れた。より十分に規定されてない形態のさらなる細胞がまた、これらの培養中で迅速に増殖したが、まだ詳細に特徴付けされていない。
【0113】
上皮細胞と推定されるコロニーがまた、補充的なEGFの非存在下でコラーゲンコートしたプレート上に現れた。これらのコロニーのいくつかを、手動ピペッティングデバイスを使用して各々拾い上げ、そして96ウェルプレート中の新鮮な培地に移した。特定のコロニーからの細胞は、このような培養中で継続して増殖させ、細胞株として継代される。これらが潜在的にクローン性の増殖可能な肝前駆細胞(おそらく幹細胞)株である可能性は高いと思われる。CD133、Ep-CAM、アルブミン、AFP、およびCK19を含む抗原の発現のさらなる特徴付けにより、これらの推定的肝幹細胞株の分化の相対的状態が決定されるであろう。
【0114】
実施例10
フローサイトメトリーソーティングおよびフローサイトメトリー分析(FACscan)
細胞質抗原(例えば、アルブミン、AFP)のFACscanを、抗血清を用いる染色の前に3%パラホルムアルデヒドを用いて固定および透過化処理した細胞を用いて行った。細胞を、関連する蛍光プローブを用いて直接的に標識した抗体を使用する以外は免疫蛍光について示されたのと同様に染色した(表3および4を参照されたい)。フローサイトメトリーを、Cytomation「MoFlow」フローサイトメーター(Fort Collins, Colorado)(Larry Arnold博士によって管理されるFACS設備)で実行した。覆い液は改変していないHBSSであった。MoFlowサイトメーターは、40,000細胞/秒の分析またはソーティングが可能であり、このとき12までのパラメーターを並行して(前方散乱および/または側方散乱と組み合わせて6「色」)、99%を超える正確さを有する。大部分のソートのために、4Wのアルゴンレーザーを、60mWの電源および100μmのノズルとともに使用した。488nm励起での蛍光発光を、FITCのための530/30nmバンドパスフィルターを通して収集した。蛍光を、対数増幅によって測定した。蛍光が陰性対照細胞の95%より高い場合、細胞を陽性と見なした。E-1の検出器値を、前方散乱(FSC)のために、中程度の範囲の増幅とともに使用し、検出器を、側方散乱(SSC)のために中程度の範囲で、1の増幅とともに使用した。SSCゲーティングを、線状増幅によって、パラメーターの分割を256の任意単位にして行った。染色していない細胞、関連のない抗体および同じ蛍光プローブで染色した細胞、または同じ抗体を用いるが蛍光プローブを用いない細胞を、陰性対照として使用した。各々の試料において、30,000〜50,000細胞をアッセイした。陽性細胞(陰性対照よりも高い蛍光を有するもの)を、粒度、サイズ、および蛍光の程度についてさらに評価した。ソーティングの前後での細胞を、10%血清を付加したHDM中4℃で維持した。
【0115】
(表3) モノクローナル抗体
【0116】
(表4) 蛍光プローブ
【0117】
細胞質抗原(例えば、アルブミン、AFP)のフローサイトメトリー分析のために、細胞を、抗血清を用いる染色の前に、3%パラホルムアルデヒドを用いて固定および透過化処理した。細胞を、免疫蛍光について示されたのと同様に染色した。2種のマーカーを使用する分析のために、別個であって、波長が重複していない蛍光プローブで標識した第2の抗体を使用する。分析を、Becton Dickenson FACscanを使用して実行した。第2の抗体でのみ染色された細胞を、陰性対照として使用した。各々の試料において、30,000〜50,000細胞をアッセイした。陽性細胞(陰性対照よりも高い蛍光を有するもの)を、粒度、サイズ、および蛍光の程度についてさらに評価した。
【0118】
実施例11
胎児組織から得られた肝細胞懸濁物中のアルブミンおよびαフェトプロテインの発現の決定
この実験において、近位肝幹細胞および始原肝幹細胞におけるアルブミンおよびαフェトプロテインの発現を試験した。ペレット画分が肝芽細胞で富化されている(近位肝幹細胞)のに対して、界面はコロニー形成細胞で富化されている(始原肝幹細胞)ことが最初に決定された。
【0119】
アルブミン発現は、共に新たに単離された細胞中で10日間培養された後の界面の細胞とペレットの細胞との間で同等である。しかし、その発現は培養中に減少する。これは、アルブミン陰性の非実質細胞の、より低い発現または増殖に起因する可能性がある。培養についての観察は、両方がこのパターンに寄与することを示す(図20)。
【0120】
AFPは、新たに単離されたペレット画分中で強力に発現され、界面細胞中では弱く発現される。このことは、AFPがコロニー細胞において発現されないという観察と一致する。培養10日後、AFPはペレットまたは界面の細胞において検出できない。培養中のコロニー細胞は、アルブミンを発現するがAFPを発現しない。このことは、すべての細胞においてAFP発現の抑制をもたらす条件(プラスチック培養)に起因したのかもしれない。しかし、界面細胞における低いAFP発現は、AFPがこれらの細胞中で決して強くは発現されないことを示唆する(図20)。また、コロニー細胞が、ペレット細胞におけるAFP発現の延長を支持する条件において培養される場合(STO同時培養)、それらはなお、AFP発現について陰性である。アルブミンまたはαフェトプロテインに結合する抗体の間では交差反応性が存在せず、空のレーンではシグナルは観察されなかった。
【0121】
従って、これらの実験の結果は、AFPが新たに単離されたペレット画分中で強力に発現され、界面細胞中では弱くのみ発現されることを示す。このことは、AFPがコロニー細胞中で発現されないという観察と一致する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト始原肝幹細胞を含む組成物であって、該始原肝幹細胞が、近位肝幹細胞、肝実質細胞の前駆細胞、または胆管の前駆細胞に対する前駆細胞である、組成物。
【請求項2】
始原肝幹細胞が、Ep-CAM、AC133、およびアルブミンを発現する、請求項1記載の始原肝幹細胞。
【請求項3】
始原肝幹細胞が、サイトケラチン8/18、サイトケラチン19、またはその組み合わせをさらに発現する、請求項2記載の始原肝幹細胞。
【請求項4】
始原肝幹細胞が、N-CAM、CAM5.2、c-kit、CD146、またはその組み合わせをさらに発現する、請求項3記載の始原肝幹細胞。
【請求項5】
始原肝幹細胞が近位肝幹細胞の前駆細胞である、請求項1記載の始原肝幹細胞。
【請求項6】
始原肝幹細胞が肝実質細胞の前駆細胞の前駆細胞である、請求項1記載の始原肝幹細胞。
【請求項7】
始原肝幹細胞が胆管前駆細胞の前駆細胞である、請求項1記載の始原肝幹細胞。
【請求項8】
近位肝幹細胞が、α-フェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する、請求項5記載の始原肝幹細胞。
【請求項9】
近位肝幹細胞が、Ep-CAM、AC133、サイトケラチン8/18、またはその組み合わせをさらに発現する、請求項8記載の始原肝幹細胞。
【請求項10】
近位肝幹細胞が肝実質細胞の前駆細胞または胆管前駆細胞に対する前駆細胞である、ヒト近位肝幹細胞を含む組成物。
【請求項11】
近位肝幹細胞が、α-フェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する、請求項10記載の近位肝幹細胞。
【請求項12】
近位肝幹細胞が、Ep-CAM、AC133、サイトケラチン8/18、またはその組み合わせをさらに発現する、請求項11記載の近位肝幹細胞。
【請求項13】
Ep-CAMおよびAC133を発現する細胞を同定する工程を含む、ヒト肝組織由来のヒト肝前駆細胞を単離する方法。
【請求項14】
前駆細胞がアルブミンをさらに発現する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前駆細胞がサイトケラチン19をさらに発現する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前駆細胞が幹細胞である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前駆細胞が幹細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
CD45を発現する細胞を除去する工程をさらに含む、請求項13、14、または15記載の方法。
【請求項19】
肝組織が胎児または新生児から得られる、請求項13、14、または15記載の方法。
【請求項20】
肝組織が小児または成人から得られる、請求項13、14、または15記載の方法。
【請求項21】
始原肝幹細胞である、請求項19または20記載の方法によって単離されたヒト肝前駆細胞。
【請求項22】
N-CAM、CAM5.2、c-kit、CD146、またはその組み合わせをさらに発現する始原肝幹細胞である、請求項19または20記載の方法によって単離されたヒト肝前駆細胞。
【請求項23】
近位肝幹細胞である、請求項19または20記載の方法によって単離されたヒト肝前駆細胞。
【請求項24】
αフェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19をさらに発現する近位肝幹細胞である、請求項19または20記載の方法によって単離されたヒト肝前駆細胞。
【請求項25】
Ep-CAMを発現する細胞を同定する工程を含む、ヒト肝組織由来のヒト肝前駆細胞を単離する方法。
【請求項26】
CD45を発現する細胞を除去する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前駆細胞がさらにアルブミンを発現する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
肝組織が成人から得られる、請求項25記載の方法。
【請求項29】
肝前駆細胞が始原肝幹細胞である、請求項25または27記載の方法。
【請求項30】
肝前駆細胞が近位肝幹細胞である、請求項25または27記載の方法。
【請求項31】
前駆細胞がAC133をさらに発現する、請求項25または27記載の方法。
【請求項32】
近位肝幹細胞である、請求項28記載の方法によって単離されたヒト肝幹細胞。
【請求項33】
AC133をさらに発現する近位肝幹細胞である、請求項28の方法によって単離されたヒト肝幹細胞。
【請求項34】
以下の工程を含む、ヒト始原肝幹細胞を単離する方法:
(a)ヒト肝組織に由来する細胞の混合物を提供する工程;および
(b)炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地を含む、ヒト始原肝幹細胞を選択する条件下で表面上において該細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程。
【請求項35】
肝組織が、胎児、新生児、乳児、小児、または成人から得られる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
細胞の混合物が、実質細胞を豊富に含むヒト肝組織に由来する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
表面がコートされていない、請求項34記載の方法。
【請求項38】
コートされていない表面がプラスチック表面である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
プラスチック表面が荷電している、請求項38記載の方法。
【請求項40】
荷電しているプラスチック表面が組織培養プラスチックである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
炭水化物代謝のレギュレーターがインスリンである、請求項34記載の方法。
【請求項42】
鉄キャリアがトランスフェリンである、請求項34記載の方法。
【請求項43】
膜産生因子が、1つまたはそれ以上の脂質を含む組成物である、請求項34記載の方法。
【請求項44】
脂質が遊離脂肪酸である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
無血清培地がヒドロコルチゾンをさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項46】
無血清培地が抗酸化剤をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項47】
抗酸化剤がセレンである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
始原肝幹細胞が、近位肝幹細胞、肝実質細胞の前駆細胞、または胆管前駆細胞に対する前駆細胞である、請求項34記載の方法。
【請求項49】
請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞。
【請求項50】
Ep-CAM、AC133、およびアルブミンを発現する、請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞。
【請求項51】
Ep-CAM、AC133、アルブミン、サイトケラチン8/18、およびサイトケラチン19を発現する、請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞。
【請求項52】
以下のものをさらに発現する、請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞:(i)Ep-CAM、AC133、アルブミン、サイトケラチン8/18、およびサイトケラチン19、ならびに(ii)N-CAM、CAM5.2、c-kit、CD146、またはその組み合わせ。
【請求項53】
近位肝幹細胞の前駆細胞である、請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞。
【請求項54】
請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞であって、始原肝幹細胞は、系統的子孫の肝幹細胞の前駆細胞であり、系統的子孫の肝幹細胞は、α-フェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する、細胞。
【請求項55】
以下の工程を含む、ヒト近位肝幹細胞を単離する方法:
(a)ヒト肝組織に由来する細胞の混合物を提供する工程;
(b)炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地を含むヒト始原肝幹細胞を選択する条件下で、プラスチック表面上において該細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程;ならびに
(c)少なくとも1種の発生因子を含む培地中で該コロニーからの細胞を培養し、それによってヒト近位肝幹細胞を含む細胞が産生される工程。
【請求項56】
以下の工程を含む、ヒト近位肝幹細胞を単離する方法:
(a)ヒト肝組織に由来する細胞の混合物を提供する工程;
(b)炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地を含むヒト始原肝幹細胞を選択する条件下で、該細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程;ならびに
(c)少なくとも1種の発生因子を含む培地中で該コロニーからの細胞を培養し、それによって近位肝幹細胞を含む細胞が産生される工程。
【請求項57】
発生因子が二次的な細胞によって供給される、請求項55〜56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
二次的な細胞が支持細胞である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
支持細胞がSTO支持細胞である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
支持細胞が内皮細胞である、請求項58記載の方法。
【請求項61】
支持細胞が間質細胞である、請求項58記載の方法。
【請求項62】
間質細胞が胚性細胞である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
胚性細胞が胚性肝間質細胞である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
近位肝幹細胞が、肝実質細胞の前駆細胞または胆管前駆細胞に対する前駆細胞である、請求項55〜56のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
請求項55または56記載の方法によって単離されたヒト近位肝幹細胞。
【請求項66】
αフェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する、請求項55または56記載の方法によって単離されたヒト近位肝幹細胞。
【請求項67】
ヒト始原肝幹細胞が外因性核酸を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項68】
ヒト近位肝幹細胞が外因性核酸を含む、請求項10〜11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項69】
請求項1〜8、49〜54、または67のいずれか一項記載のヒト始原肝幹細胞の有効量を被験体に投与する工程を含む、肝機能不全または肝疾患を処置する方法。
【請求項70】
請求項10〜11、65〜66、または68のいずれか一項記載のヒト近位肝幹細胞の有効量を被験体に投与する工程を含む、肝機能不全または肝疾患を処置する方法。
【請求項71】
単離されたヒト始原肝幹細胞。
【請求項72】
単離されたヒト近位肝幹細胞。
【請求項1】
ヒト始原肝幹細胞を含む組成物であって、該始原肝幹細胞が、近位肝幹細胞、肝実質細胞の前駆細胞、または胆管の前駆細胞に対する前駆細胞である、組成物。
【請求項2】
始原肝幹細胞が、Ep-CAM、AC133、およびアルブミンを発現する、請求項1記載の始原肝幹細胞。
【請求項3】
始原肝幹細胞が、サイトケラチン8/18、サイトケラチン19、またはその組み合わせをさらに発現する、請求項2記載の始原肝幹細胞。
【請求項4】
始原肝幹細胞が、N-CAM、CAM5.2、c-kit、CD146、またはその組み合わせをさらに発現する、請求項3記載の始原肝幹細胞。
【請求項5】
始原肝幹細胞が近位肝幹細胞の前駆細胞である、請求項1記載の始原肝幹細胞。
【請求項6】
始原肝幹細胞が肝実質細胞の前駆細胞の前駆細胞である、請求項1記載の始原肝幹細胞。
【請求項7】
始原肝幹細胞が胆管前駆細胞の前駆細胞である、請求項1記載の始原肝幹細胞。
【請求項8】
近位肝幹細胞が、α-フェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する、請求項5記載の始原肝幹細胞。
【請求項9】
近位肝幹細胞が、Ep-CAM、AC133、サイトケラチン8/18、またはその組み合わせをさらに発現する、請求項8記載の始原肝幹細胞。
【請求項10】
近位肝幹細胞が肝実質細胞の前駆細胞または胆管前駆細胞に対する前駆細胞である、ヒト近位肝幹細胞を含む組成物。
【請求項11】
近位肝幹細胞が、α-フェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する、請求項10記載の近位肝幹細胞。
【請求項12】
近位肝幹細胞が、Ep-CAM、AC133、サイトケラチン8/18、またはその組み合わせをさらに発現する、請求項11記載の近位肝幹細胞。
【請求項13】
Ep-CAMおよびAC133を発現する細胞を同定する工程を含む、ヒト肝組織由来のヒト肝前駆細胞を単離する方法。
【請求項14】
前駆細胞がアルブミンをさらに発現する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前駆細胞がサイトケラチン19をさらに発現する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前駆細胞が幹細胞である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前駆細胞が幹細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
CD45を発現する細胞を除去する工程をさらに含む、請求項13、14、または15記載の方法。
【請求項19】
肝組織が胎児または新生児から得られる、請求項13、14、または15記載の方法。
【請求項20】
肝組織が小児または成人から得られる、請求項13、14、または15記載の方法。
【請求項21】
始原肝幹細胞である、請求項19または20記載の方法によって単離されたヒト肝前駆細胞。
【請求項22】
N-CAM、CAM5.2、c-kit、CD146、またはその組み合わせをさらに発現する始原肝幹細胞である、請求項19または20記載の方法によって単離されたヒト肝前駆細胞。
【請求項23】
近位肝幹細胞である、請求項19または20記載の方法によって単離されたヒト肝前駆細胞。
【請求項24】
αフェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19をさらに発現する近位肝幹細胞である、請求項19または20記載の方法によって単離されたヒト肝前駆細胞。
【請求項25】
Ep-CAMを発現する細胞を同定する工程を含む、ヒト肝組織由来のヒト肝前駆細胞を単離する方法。
【請求項26】
CD45を発現する細胞を除去する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前駆細胞がさらにアルブミンを発現する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
肝組織が成人から得られる、請求項25記載の方法。
【請求項29】
肝前駆細胞が始原肝幹細胞である、請求項25または27記載の方法。
【請求項30】
肝前駆細胞が近位肝幹細胞である、請求項25または27記載の方法。
【請求項31】
前駆細胞がAC133をさらに発現する、請求項25または27記載の方法。
【請求項32】
近位肝幹細胞である、請求項28記載の方法によって単離されたヒト肝幹細胞。
【請求項33】
AC133をさらに発現する近位肝幹細胞である、請求項28の方法によって単離されたヒト肝幹細胞。
【請求項34】
以下の工程を含む、ヒト始原肝幹細胞を単離する方法:
(a)ヒト肝組織に由来する細胞の混合物を提供する工程;および
(b)炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地を含む、ヒト始原肝幹細胞を選択する条件下で表面上において該細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程。
【請求項35】
肝組織が、胎児、新生児、乳児、小児、または成人から得られる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
細胞の混合物が、実質細胞を豊富に含むヒト肝組織に由来する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
表面がコートされていない、請求項34記載の方法。
【請求項38】
コートされていない表面がプラスチック表面である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
プラスチック表面が荷電している、請求項38記載の方法。
【請求項40】
荷電しているプラスチック表面が組織培養プラスチックである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
炭水化物代謝のレギュレーターがインスリンである、請求項34記載の方法。
【請求項42】
鉄キャリアがトランスフェリンである、請求項34記載の方法。
【請求項43】
膜産生因子が、1つまたはそれ以上の脂質を含む組成物である、請求項34記載の方法。
【請求項44】
脂質が遊離脂肪酸である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
無血清培地がヒドロコルチゾンをさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項46】
無血清培地が抗酸化剤をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項47】
抗酸化剤がセレンである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
始原肝幹細胞が、近位肝幹細胞、肝実質細胞の前駆細胞、または胆管前駆細胞に対する前駆細胞である、請求項34記載の方法。
【請求項49】
請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞。
【請求項50】
Ep-CAM、AC133、およびアルブミンを発現する、請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞。
【請求項51】
Ep-CAM、AC133、アルブミン、サイトケラチン8/18、およびサイトケラチン19を発現する、請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞。
【請求項52】
以下のものをさらに発現する、請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞:(i)Ep-CAM、AC133、アルブミン、サイトケラチン8/18、およびサイトケラチン19、ならびに(ii)N-CAM、CAM5.2、c-kit、CD146、またはその組み合わせ。
【請求項53】
近位肝幹細胞の前駆細胞である、請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞。
【請求項54】
請求項34記載の方法によって単離されたヒト始原肝幹細胞であって、始原肝幹細胞は、系統的子孫の肝幹細胞の前駆細胞であり、系統的子孫の肝幹細胞は、α-フェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する、細胞。
【請求項55】
以下の工程を含む、ヒト近位肝幹細胞を単離する方法:
(a)ヒト肝組織に由来する細胞の混合物を提供する工程;
(b)炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地を含むヒト始原肝幹細胞を選択する条件下で、プラスチック表面上において該細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程;ならびに
(c)少なくとも1種の発生因子を含む培地中で該コロニーからの細胞を培養し、それによってヒト近位肝幹細胞を含む細胞が産生される工程。
【請求項56】
以下の工程を含む、ヒト近位肝幹細胞を単離する方法:
(a)ヒト肝組織に由来する細胞の混合物を提供する工程;
(b)炭水化物代謝のレギュレーター、鉄キャリア、および膜産生因子を含有する無血清培地を含むヒト始原肝幹細胞を選択する条件下で、該細胞の混合物を培養し、それによってヒト始原肝幹細胞を含むコロニーを形成させる工程;ならびに
(c)少なくとも1種の発生因子を含む培地中で該コロニーからの細胞を培養し、それによって近位肝幹細胞を含む細胞が産生される工程。
【請求項57】
発生因子が二次的な細胞によって供給される、請求項55〜56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
二次的な細胞が支持細胞である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
支持細胞がSTO支持細胞である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
支持細胞が内皮細胞である、請求項58記載の方法。
【請求項61】
支持細胞が間質細胞である、請求項58記載の方法。
【請求項62】
間質細胞が胚性細胞である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
胚性細胞が胚性肝間質細胞である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
近位肝幹細胞が、肝実質細胞の前駆細胞または胆管前駆細胞に対する前駆細胞である、請求項55〜56のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
請求項55または56記載の方法によって単離されたヒト近位肝幹細胞。
【請求項66】
αフェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチン19を発現する、請求項55または56記載の方法によって単離されたヒト近位肝幹細胞。
【請求項67】
ヒト始原肝幹細胞が外因性核酸を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項68】
ヒト近位肝幹細胞が外因性核酸を含む、請求項10〜11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項69】
請求項1〜8、49〜54、または67のいずれか一項記載のヒト始原肝幹細胞の有効量を被験体に投与する工程を含む、肝機能不全または肝疾患を処置する方法。
【請求項70】
請求項10〜11、65〜66、または68のいずれか一項記載のヒト近位肝幹細胞の有効量を被験体に投与する工程を含む、肝機能不全または肝疾患を処置する方法。
【請求項71】
単離されたヒト始原肝幹細胞。
【請求項72】
単離されたヒト近位肝幹細胞。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−87591(P2011−87591A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270893(P2010−270893)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2003−576582(P2003−576582)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(501288237)ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (1)
【出願人】(504349700)インカラ セル テクノロジーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2003−576582(P2003−576582)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(501288237)ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (1)
【出願人】(504349700)インカラ セル テクノロジーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]