説明

姿勢矯正具及び衣類

【課題】姿勢矯正効果を発揮し得る割りには着用しても腕、肩、背などの人体部分の動作自由度が大きく、長時間使用しても疲れにくく、腋の下の痛みのような苦痛を伴わない姿勢矯正具及び該矯正具を有する衣類を提供する。
【解決手段】左右の上腕骨頭部aと、左右鎖骨の腕側端部bと、上腕骨頭部a及び鎖骨の腕側端部bが連接された左右の肩甲骨の部分cとを骨組みとする人体部分100を周囲から囲み包むための左右の袖状部1と、左右の袖状部1を連結する伸縮性バンド部2とを含んでいる姿勢矯正具A1及びこれを含むシャツ、ブラジャー等の衣類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、猫背等の姿勢の矯正又は猫背等になることを抑制するための姿勢矯正具及び衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
猫背等の矯正又は猫背等になることを抑制するための姿勢矯正具は、これまで様々のタイプのものが提案されてきた。例えば、意匠登録第1148763号公報に記載の矯正具や、図8に示す矯正具等である。
【0003】
意匠登録第1148763号公報に記載の矯正具は、網目構造の可撓性背当て板状部を人体の背中に当てがい、左右肩掛けベルトを左右の肩に掛け、下部ベルトを背から腹側へまわして、人体正面側で連結して姿勢矯正に用いるものである。
【0004】
図8の矯正具は、背中側でX字状(或いは十文字状)を呈する部分91の左右それぞれの上下端部に肩掛けベルト部92を連設してなる矯正具9である。矯正具9によると、図8(A)に示すように左右肩掛けベルト部92を左右の肩に掛けることで、図8(B)に示すように背中側で、伸縮性X字状部分91を伸張させ、それによりX字状に互いに背中中央部へ向かう弾性収縮復元力が生じさせ、それにより左右肩甲骨を背中の中央部側へ引き寄せて猫背等の矯正又は猫背等になることを抑制しようとするものである。
【0005】
このように従来の姿勢矯正具は、肩甲骨を背中の中央部側へ引き寄せることで背筋を伸ばし、猫背等を矯正したり、猫背等になることを防止しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】意匠登録第1148763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肩甲骨を背中の中央部側へ引き寄せることで背筋を伸ばし、猫背等を矯正したり、猫背等になることを抑制しようとする上記従来の考え方は一般的に認められているものである。しかしながら、この考え方を反映させた、例えば意匠登録第1148763号公報に記載されるような、また、図8に示されるような、従来の姿勢矯正具によると、実際の使用において、背中が全体的に拘束されるような感じがあって疲れやすく、その割りには矯正効果が顕著であるとは認めがたい。また、腋の下に肩掛けベルトが食い込むような状態となって苦痛を伴うこともある。
【0008】
そこで本発明は、猫背等の矯正や猫背等になることの抑制などの姿勢矯正に供することができる姿勢矯正具であって、肩掛けベルト部をランドセルの肩掛けベルト様に両肩に掛けて使用する従来タイプの姿勢矯正具と比べると、それに劣らない姿勢矯正効果があり、その割りには着用しても腕、肩、背などの人体部分の動作自由度が大きくて疲れにくく、また、腋の下の痛みのような苦痛が抑制される状態で着用できる姿勢矯正具を提供することを第1の課題とする。
【0009】
また本発明は、猫背等の矯正や猫背等になることの抑制などの姿勢矯正機能を併せ有する便利な衣類であって、肩掛けベルト部をランドセルの肩掛けベルト様に両肩に掛けて使用する従来タイプの姿勢矯正具と比べると、それに劣らない姿勢矯正効果があり、その割りには着用しても腕、肩、背などの人体部分の動作自由度が大きくて疲れにくく、また、腋の下の痛みのような苦痛が抑制される状態で着用できる衣類を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記第1の課題を解決するため、
左右の上腕骨頭部と、左右鎖骨の腕側端部と、上腕骨頭部及び鎖骨の腕側端部が連接された左右の肩甲骨の部分とを骨組みとする人体部分を周囲から囲み包むための左右の袖状部と、該左右の袖状部を連結する伸縮性バンド部とを含んでおり、該伸縮性バンド部は、該左右袖状部が人体に被着された状態で該人体の背中側の左右肩甲骨の上部背後で該左右の袖状部を連結するとともに該左右の袖状部を互いに弾力的に引き寄せる力を付与するためのバンド部である姿勢矯正具を提供する。
【0011】
また本発明は前記第2の課題を解決するため、
本発明に係る姿勢矯正具を含む上半身用衣類を提供する。
ここで、「上半身用衣類」とは、シャツ(下着シャツ、ポロシャツ、Tシャツ、各種補整用下着、スポーツシャツ、ワイシャツ、ブラウス、下半身用衣類と一体的に形成されたコンビネーションタイプの各種シャツ等)、上半身用寝衣(パジャマの上半身用部、下半身用部と一体的に形成されたパジャマの上半身用部、ネグリジエ、ナイトガウン、寝巻き等)、上半身用上着(セーター、カーディガン、ジャケット、ジャンパー、下半身用部と一体的に形成された所謂つなぎ着の上半身用部分等)、ブラジャーなどであり、本発明に係る姿勢矯正具が後付けにより取り付けられていても、本発明に係る姿勢矯正具が一体的に組み込み形成されたものでもよい。
【0012】
本発明に係る姿勢矯正具や衣類によると、例えば袖付きシャツを着るときのように姿勢矯正具の左右袖状部に左右の腕をそれぞれ通して、且つ、姿勢矯正具の伸縮性バンド部が背中側に位置するようにして、該左右の袖状部で左右の上腕骨頭部と、左右鎖骨の腕側端部と、上腕骨頭部及び鎖骨の腕側端部が連接された左右の肩甲骨の部分とを骨組みとする人体部分をそれぞれ周囲から囲み包んで着用できる。
【0013】
このように左右の袖状部が人体に被着された状態では、伸縮性バンド部が人体の背中側の左右肩甲骨の上部背後に位置して該左右の袖状部を連結しているとともに伸張されている。この伸縮性バンド部は弾性復元力で当初の状態へ収縮しようとする。そのため、左右の袖状部に対してこれら袖状部を互いに弾力的に引き寄せる力が生じている。それにより、袖状部を介して左右の肩甲骨の、上腕骨頭部及び鎖骨の腕側端部が連接された部分にそれらを互いに背中の中央部側へ引き寄せる力が加えられる。
【0014】
このとき、伸縮性バンド部は、単に左右の肩甲骨の上部を互いに背中の中央部側へ引き寄せようとするだけでなく、左右の袖状部を介して左右の各腕の付け根及びその辺りを人体の後ろ側へ引っ張りつつ左右の肩甲骨の上部を互いに背中の中央部側へ引き寄せようとする。
【0015】
そのため、単に左右の肩甲骨を互いに背中の中央部側へ引き寄せようとするだけの場合と比べると、肩甲骨の後ろ側への後退がより強く促され、それにより左右の肩甲骨がより円滑に背中の中央部側へ引き寄せられ、或いは引き寄せられようとして、猫背等の矯正や、猫背等になることを抑制するための姿勢矯正がそれだけ円滑、確実に実現される。
【0016】
しかも、左右の袖状部は、左右の上腕骨頭部と、左右鎖骨の腕側端部と、上腕骨頭部及び鎖骨の腕側端部が連接された左右の肩甲骨の部分とを骨組みとする人体部分を周囲から囲み包む袖状に形成されていて左右の腕がこれらに通されることで、左右上腕骨頭部と、左右鎖骨の腕側端部と、上腕骨頭部及び鎖骨の腕側端部が連接された左右の肩甲骨の部分とを骨組みとする人体部分のそれぞれが該袖状部により周囲から確実に囲み包まれるので、着用者が腕を回す等の動作をしても、該袖状部が着用者から外れたり、位置ずれすることは抑制される。この点でも、姿勢矯正がそれだけ確実に実現される。
【0017】
また、左右の袖状部を連結している伸縮性ベルト部は、人体の背中に全面的に配置される必要はなく、肩甲骨上部の背後に位置できればよいから、本発明に係る矯正具や衣類は、それだけ、着用しても着用者の動作の自由度が大きく、短時間着用する場合は勿論のこと、長時間着用しても疲れにくいものとすることができ、また、従来矯正具における肩掛けベルトのように着用者の腋の下に食い込んで着用者に苦痛を与えるというようなことは抑制される。
【0018】
さらに、本発明に係る姿勢矯正具や衣類は、着用者の胸部や胴部に回し掛ける部分を設けてもよいが、そのような部分を設けないで済ませる場合は、着用者の動作の自由度がそれだけ大きくなる。
【0019】
しかし、姿勢矯正具が使用中に人体動作等によって上方へずりあがる等により位置ずれするようなことを抑制して、人体上での位置をより安定させるために、前記左右の袖状部を連結する背中側補助伸縮性バンド部をさらに設けてもよい。該背中側補助伸縮性バンド部は、左右袖状部が人体に被着された状態で該人体の背中側で、前記伸縮性バンド部より下方、且つ、該人体の腋の下より下方に位置して、該左右の袖状部を連結するとともに該左右の袖状部を互いに弾力的に引き寄せる力を付与するためのものである場合を例示できる。
【0020】
また、姿勢矯正具が使用中に人体動作等によって上方へずりあがる等により位置ずれするようなことを抑制して、人体上での位置をより安定させるために、前記左右の袖状部を連結する胸部側補助バンド部を設けてもよい。該胸部側補助バンド部は、例えば、該左右袖状部が人体に被着された状態で該人体の胸部側で、前記伸縮性バンド部より下方、且つ、該人体の腋の下より下方に位置して、該左右の袖状部を連結するものとすることができる。
この胸部側補助バンド部は、乳房を持ち上げて見せるための所謂バストアップ用バンド部を兼ねていてもよい。
【0021】
上記のような背中側の伸縮性補助バンド部と胸部側補助バンド部とを共に設けてもよく、その場合、両補助バンド部を互いに1連に形成してもよい。
いずれにしても、胸部側補助バンド部は左右の袖状部を互いに弾力的に引き寄せる伸縮性を有するものでもよい。また、胸部側補助バンド部は、その途中で分離したり再連結したりできる分離連結可能の部分を有していてもよい。また、長さ調節可能のバンド部であってもよい。
【0022】
前記左右の袖状部のそれぞれは、姿勢矯正具が矯正効果を発揮できるのであれば伸縮性である必要はないが、矯正具が矯正効果をより確実に発揮できるように、袖状部を装着する上腕骨頭部及び鎖骨の腕側端部が連接された肩甲骨の部分とを骨組みとする人体部分に対して緩みなく装着できるもの(全く緩みのない場合だけでなく、厳密には部分的或いは全体的に若干の緩みが認められるとしても全体としては実際上緩み無く装着できるものとみてよい場合も含まれる)とすることができる。
【0023】
各袖状部は、矯正具の矯正効果を一層確実なものとするために、前記人体部分をより安定、確実に周囲から確実に囲み包めるように、しかし人体への装着を格別困難にしないように、前記人体部分に対して緩みなく装着できる伸縮性を有する袖状部としてもよい。
【0024】
この場合、左右の袖状部とこれらを連結する前記伸縮性バンド部は一体的に形成してもよい。既述のように背中側及び(又は)胸部側補助バンド部を設ける場合には、それも一体的に形成してもよい。これらの一体的形成は、編み立て等により行える。
なお、左右の袖状部と、伸縮性バンド部や補助バンド部は、別々に形成して、後で縫い合わせるなどして互いに連結してもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によると、猫背等の矯正や猫背等になることの抑制などの姿勢矯正に供することができる姿勢矯正具であって、肩掛けベルト部をランドセルの肩掛けベルト様に両肩に掛けて使用する従来タイプの姿勢矯正具と比べると、それに劣らない姿勢矯正効果があり、その割りには着用しても腕、肩、背などの人体部分の動作自由度が大きくて疲れにくく、また、腋の下の痛みのような苦痛が抑制される状態で着用できる姿勢矯正具を提供することができる。
【0026】
また本発明によると、猫背等の矯正や猫背等になることの抑制などの姿勢矯正機能を併せ有する便利な衣類であって、肩掛けベルト部をランドセルの肩掛けベルト様に両肩に掛けて使用する従来タイプの姿勢矯正具と比べると、それに劣らない姿勢矯正効果があり、その割りには着用しても腕、肩、背などの人体部分の動作自由度が大きくて疲れにくく、また、腋の下の痛みのような苦痛が抑制される状態で着用できる衣類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図(A)は本発明に係る姿勢矯正具の1例の、着用者とともに示す正面図であり、図(B)は同矯正具の背面図であり、図(C)は背中側の伸縮性バンド部が上下方向にも伸縮性を有する場合の例を示す図である。
【図2】図(A)は本発明に係る姿勢矯正具の他の例の、着用者とともに示す正面図であり、図(B)は同矯正具の背面図であり、図(C)は背中側の伸縮性バンド部や伸縮性補助バンド部が上下方向にも伸縮性を有する場合の例を示す図である。
【図3】図(A)は本発明に係る姿勢矯正具のさらに他の例の、着用者とともに示す正面図であり、図(B)は同矯正具の背面図であり、図(C)は図(A)及び(B)の姿勢矯正具において着用者の乳房を覆うカップ部を設けた矯正具例(換言すれば本発明に係る姿勢矯正具を含む上半身用衣類の例)の正面図である。
【図4】図(A)は本発明に係る姿勢矯正具のさらに他の例の、着用者とともに示す正面図であり、図(B)は同矯正具の背面図であり、図(C)は同矯正具の変形例の背面図である。
【図5】図(A)は図1に示す矯正具の変形例の、着用者とともに示す正面図であり、図(B)は同矯正具の背面図である。
【図6】図(A)は図2に示す矯正具の変形例の、着用者とともに示す正面図であり、図(B)は同矯正具の背面図であり、図(C)はさらに変形例の背面図である。
【図7】図(A)は本発明に係る衣類の1例であるシャツの、着用者とともに示す正面図であり、図(B)は同シャツの背面図である。
【図8】図(A)は従来矯正具例の、着用者とともに示す正面図であり、図(B)は同矯正具の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明に係る姿勢矯正具や衣類の例について図面を参照して説明する。
図1(A)は本発明に係る姿勢矯正具の1例の、着用者とともに示す正面図であり、図1(B)は同矯正具の背面図である。
【0029】
図1(A)及び(B)に示す姿勢矯正具A1は、左右の袖状部1、1と、これらを連結しているバンド部2とを含むものである。
各袖状部1は、着用者10の上腕骨頭部aと、鎖骨の腕側端部bと、該上腕骨頭部及び鎖骨端部が連接された肩甲骨の部分cとを骨組みとする人体部分100を周囲から囲み包むものである。
【0030】
さらに言えば、本例では、各袖状部1は、その外側リング縁部11が着用者10の上腕を囲繞するとともに、内側リング縁部12が着用者10のほぼ腋下辺りから胸部側を通って肩部へ至り、さらにそこから背中側を通って前記のほぼ腋下辺りに達するように形成されており、全体として、着用者人体部分100を周囲からほぼ緩みなく囲い包めるように全体的に言わば筒形状様に形成されている。
【0031】
バンド部2は伸縮性を有するバンド部であり、本例では、左右の袖状部1、1と一体的に形成されている。
このバンド部2は、左右袖状部1、1が人体に被着された状態で該人体の背中側の左右肩甲骨の上部背後で該左右の袖状部を連結するとともに左右袖状部1、1を互いに左右方向に弾力的に引き寄せる力を付与するためのものである。
【0032】
なお、図1(C)は、姿勢矯正具A1において、背中側で左右の袖上部1、1を互いに左右方向に引き寄せる伸縮性バンド部2が上下方向にも伸縮性を有している場合の例である。
【0033】
図5(A)は図1に示す矯正具A1の変形例A1’の、着用者とともに示す正面図であり、図(B)は同矯正具の背面図である。
【0034】
矯正具A1’も矯正具A1と同様に左右の袖状部1、1およびそれらを連結するバンド部2を含んでいる。しかし、矯正具A1’では、各袖状部1の外側リング縁部11は矯正具A1と同様に着用者10の上腕を囲繞しているが、袖状部1の内側リング縁部12は着用者10の腋下よりさらに若干下方から胸部側を通って肩部へ至り、さらにそこから背中側を通って前記腋下よりさらに若干下方へ達するように形成されている。従って、この袖状部1は腋下も覆うものである。そして、全体として、着用者人体部分100を周囲からほぼ緩みなく囲い包めるように全体的に言わば筒形状様に形成されている。
【0035】
姿勢矯正具A1’のその他の点は矯正具A1と実質上同じである。矯正具A1’の矯正具A1における部分、部品等と実質上同じ部分、部品等には矯正具A1と同じ参照符号を付してある。
【0036】
図2(A)は本発明に係る姿勢矯正具の他の例A2の、着用者とともに示す正面図であり、図2(B)は同矯正具の背面図である。
【0037】
図2(A)及び(B)に示す姿勢矯正具A2は、図2(A)に示すように、図1(A)及び(B)に示す矯正具A1において、左右それぞれの袖状部1に、着用者の胸部側で若干下方へ延在する伸縮性部分13を一体的に連設するとともに、図2(B)に示すように、左右の該部分13、13を着用者10の背中側で連結する伸縮性補助バンド部3を設けたものである。
【0038】
伸縮性補助バンド部3は、左右袖状部1、1が人体に被着された状態で、該人体の背中側で、バンド部2より下方、且つ、該人体の腋の下より下方に位置して、前記の下方へ延在する伸縮性部分13、13を介して左右の袖状部1、1を連結するとともに該袖状部1、1を互いに弾力的に引き寄せる力を付与する。また、下方へ向け延在する伸縮性部分13、13は下端部が補助バンド部3に保持された状態で袖状部1、1を下方へ引っ張り、該袖状部1、1の上方へのずり上がりをそれだけ確実に抑制する。これらにより、袖状部1、1の位置がそれだけ安定し、それだけ確実に姿勢矯正を行える。
【0039】
姿勢矯正具A2のその他の点は矯正具A1と実質上同じである。矯正具A2の矯正具A1における部分、部品等と実質上同じ部分、部品等には矯正具A1と同じ参照符号を付してある。
【0040】
なお、図2(C)は、姿勢矯正具A2における、背中側で左右の袖上部1、1を互いに左右方向に引き寄せる伸縮性バンド部2及び伸縮性補助バンド部3のそれぞれが上下方向にも伸縮性を有している場合の例である。
【0041】
図6(A)は図2に示す矯正具A2の変形例A2’の、着用者とともに示す正面図であり、図(B)は同矯正具の背面図である。
【0042】
矯正具A2’も矯正具A2と同様に左右の袖状部1、1およびそれらを連結するバンド部2及びバンド部3を含んでいる。しかし、矯正具A2’では、各袖状部1の外側リング縁部11は矯正具A2と同様に着用者10の上腕を囲繞しているが、袖状部1の内側リング縁部12は着用者10の腋下よりさらに若干下方から胸部側を通って肩部へ至り、さらにそこから背中側を通って前記腋下よりさらに若干下方へ達するように形成されている。従って、この袖状部1は腋下も覆うものである。そして、全体として、着用者人体部分100を周囲からほぼ緩みなく囲い包めるように全体的に言わば筒形状様に形成されている。
【0043】
姿勢矯正具A2’のその他の点は矯正具A2と実質上同じである。矯正具A2’の矯正具A2における部分、部品等と実質上同じ部分、部品等には矯正具A2と同じ参照符号を付してある。
【0044】
なお、図6(C)は、姿勢矯正具A2’における背中側の伸縮性バンド部2及び補助バンド部3のそれぞれが、背中の中央部辺りで上下につなげられている例を示すものである。
【0045】
図3(A)は本発明に係る姿勢矯正具の他の例A3の、着用者とともに示す正面図であり、図3(B)は同矯正具の背面図である。
図3に示す姿勢矯正具A3は、図3に示すように、図1(A)及び(B)に示す矯正具A1と同様に、左右の人体部分100を周囲から囲み包む左右の袖状部1、1と、これらを連結するバンド部2とを含むものである。
【0046】
しかし本例では、各袖状部1の外側リング縁部11は矯正具A1と同様に着用者10の上腕を囲繞しているが、袖状部1の内側リング縁部12は着用者10の腋下よりさらに若干下方から胸部側を通って肩部へ至り、さらにそこから背中側を通って前記腋下よりさらに若干下方へ達するように形成されている。従って、この袖状部1は腋下も覆う下端部14を含んでいる。そして、全体として、着用者人体部分100を周囲からほぼ緩みなく囲い包めるように全体的に言わば筒形状様に形成されている。
【0047】
矯正具A3は、背中側の伸縮性バンド部2に加え、さらに、左右それぞれの袖状部1の内側リング縁部12の下端部14を着用者10の胸部側で連結する伸縮性の補助バンド部4を有している。
【0048】
補助バンド部4は、左右それぞれの袖状部1の内側リング縁部12の下端部14から若干下方へ延びたのち左右方向へ延びるバンドであり、左右袖状部1、1が人体に被着された状態で、該人体の胸部側で、バンド部2より下方、且つ、該人体の腋の下より下方に位置して袖状部1、1の上方へのずり上がりを抑制する。これにより、袖状部1、1の位置がそれだけ安定し、それだけ確実に姿勢矯正を行える。
【0049】
図3に示す例では、補助バンド部4は、この矯正具A3を例えば女性が着用したとすると、その乳房を持ち上げて見せる所謂バストアップ機能を有するバンドでもある。
補助バンド部4はその途中で左右に分離したり、再連結できる分離連結可能部分40を有していてもよく、また、バンド4は長さ調節可能なものでもよい。
【0050】
姿勢矯正具A3のその他の点は矯正具A1と実質上同じである。矯正具A3の矯正具A1における部分、部品等と実質上同じ部分、部品等には矯正具A1と同じ参照符号を付してある。
【0051】
例えば矯正具A3においては、袖状部1の内側リング縁部12及び胸部側の補助バンド部4等の胸部側の適当な部分に一体的に、又はそれら部分に縫着等により連結して着用者の乳房を覆うカップ部を設け、ブラジャーを兼ねる姿勢矯正具、換言すれば姿勢矯正具を含むブラジャーとすることもできる。
図3(C)は、そのようなブラジャーを兼ねる姿勢矯正具、換言すれば姿勢矯正具を含むブラジャーの例A3’を示している。このブラジャーA3’では、胸部側バンド部4が中央部の分離連結部400で左右に分離したり再連結したりできるようになっている。そして、左右の袖状部1の内側リング縁部12及びバンド部4の部分に一体的に着用者の乳房を覆うカップ部15が設けられている。
【0052】
また、例えば、矯正具A1において矯正具A2における背中側の補助バンド部3及び矯正具A3における胸部側の補助バンド部4を共に採用して、袖状部1、1等の上方へのずり上がり等の位置ずれを抑制した矯正具も本発明に係る矯正具の例として挙げることができる。
図4はそのような矯正具A4の1例を示している。図4(A)は矯正具A4の正面図であり、図4(B)は矯正具A4の背面図である。
図4(A)及び(B)に示す例では、バンド部3、4は連続的に形成されている。
なお、図4(C)に示すように、背中側において、バンド部2とバンド部3とを、例えば背中中央辺りで、上下に連続させておいてもよい。
図4に示す矯正具A4においても、着用者の乳房を覆うカップ部を設けてブラジャーを兼ねる姿勢矯正具、換言すれば、姿勢矯正具を含むブラジャーとすることができる。
【0053】
図7(A)は本発明に係る衣類の1例Cの、着用者とともに示す正面図であり、図7(B)は同衣類の背面図である。
【0054】
図7に示す衣類Cは下着シャツとしても利用できるTシャツである。本発明に係る衣類はさきに説明した姿勢矯正具A1(図1)、A1’(図5)、A2(図2)、A2’(図6)、A3(図3)、A4(図4)等の本発明に係る姿勢矯正具を縫着等にて取り付けたものでもよいが、シャツCは、図5に示す矯正具A1’に相当する部分を一体的に形成してなるシャツである。
【0055】
図7においては、図5の姿勢矯正具A1’に相当する部分を符号A1”で示し、矯正具A1”と称することにする。シャツCの矯正具A1”は実質上矯正具A1’と同構成である。シャツC全体としては、その袖C1が矯正具A1”の袖状部1より若干長く形成されている。さらに長く、長袖としてもよい。シャツCの矯正具A1”の前記矯正具A1’における部分、部品等と実質上同じ部分、部品等には矯正具A1’と同じ参照符号を付してある。
【0056】
以上説明した姿勢矯正具A1(図1)、A1’(図5)、A2(図2)、A2’(図6)、A3(図3)、A3’(図3)、A4(図4)やシャツC(図7)は、通常の袖付きシャツを着るときのように姿勢矯正具A1、A1’、A2、A2’A3、A3’、A4、A1”の左右袖状部1、1に左右の腕をそれぞれ通して、且つ、矯正具の伸縮性バンド部2が背中側に位置するようにして、各袖状部1で上腕骨頭部aと、鎖骨の腕側端部bと、上腕骨頭部a及び鎖骨端部bが連接された肩甲骨の部分cとを骨組みとする左右それぞれの人体部分100、100を周囲から実質上緩みなく囲み包んで着用できる。
【0057】
このように左右袖状部1、1が人体に被着された状態では、伸縮性バンド部2が着用者の背中側の左右肩甲骨の上部背後に位置して該左右の袖状部を連結しているとともに伸張されている。伸縮性バンド部2は弾性復元力で当初の状態へ収縮しようとする。そのため、左右の袖状部1、1に対してこれら袖状部を互いに弾力的に引き寄せる力が生じている。
【0058】
それにより、袖状部1、1を介して左右の肩甲骨の上腕骨頭部a及び鎖骨端部bが連接された部分cに、ひいては肩甲骨に全体的に、それらを互いに背中の中央部側へ引き寄せる力が加えられる。
【0059】
このとき、伸縮性バンド部2は、単に左右の肩甲骨の上部を互いに背中の中央部側へ引き寄せようとするだけでなく、前記人体部100を囲繞する左右の袖状部1、1を介して左右の各腕の付け根及びその辺りを着用者10の後ろ側へ引っ張りつつ左右の肩甲骨の上部を、ひいては左右肩甲骨を全体的に互いに背中の中央部側へ引き寄せようとする。
【0060】
そのため、単に左右の肩甲骨を互いに背中の中央部側へ引き寄せようとするだけの場合と比べると、肩甲骨の後ろ側への後退がより強く促され、それにより左右の肩甲骨がより円滑に背中の中央部側へ引き寄せられ、或いは引き寄せられようとして、猫背等の矯正や、猫背等になることを抑制するための姿勢矯正がそれだけ円滑、確実に実現される。
【0061】
しかも、左右の袖状部1、1は袖状に形成されていて、左右の腕がこれらに通されることで、左右それぞれの上腕骨頭部aと、鎖骨端部bと、それらが連接された左右の肩甲骨部分cとを骨組みとする人体部分100が該袖状部により周囲から確実に囲み包まれているので、着用者100が腕を回す等の動作をしても、該袖状部が着用者から外れたり、位置ずれすることは抑制される。この点でも、姿勢矯正がそれだけ確実に実現される。
【0062】
また、左右の袖状部1、1を連結している伸縮性ベルト部2は、着用者10の背中に全面的に配置されておらず、肩甲骨上部の背後に位置しているだけであるから、着用しても着用者10の動作の自由度が大きく、長時間着用しても疲れにくく、また、着用したまま睡眠することもできぬことはない。また、従来矯正具における肩掛けベルトのように着用者の腋の下に食い込んで着用者10に苦痛を与えることもない。
【0063】
矯正具A2、A2’、A4では、背中側の伸縮性補助バンド部3が設けられており、これが着用者10の背中側で左右の袖状部1、1を補助的に弾力的に互いに引き寄せるとともに袖状部1、1のずり上がりを抑制するので、また、矯正具A3、A3’、A4では、胸部側の補助バンド部4が設けられており、これが着用者10の胸部側で左右の袖状部1、1のずり上がりを抑制するので、姿勢矯正具A2、A2’、A3、A3’、A4の人体上での位置をより安定させることができる。
【0064】
しかも、該補助バンド部3や4は伸縮性バンド部2より下方、且つ、腋の下より下方に位置するので、この補助バンド部3や4のために着用者10の腕回し等の動作の自由度が低下させられたり、従来の矯正具の肩掛けベルトが腋の下に食い込むような苦痛が生じるようなことはない。
【0065】
シャツCは、シャツCとして着用できるとともに同時に矯正具A1”により姿勢矯正に供することができるので便利である。前記のブラジャーA3’もブラジャーとして着用できると同時に姿勢矯正具部分により姿勢矯正に供することができるので便利である。
なお、以上の説明では本発明に係る衣類としてシャツC及びブラジャーA3’を示したが、本発明に係る衣類はこれに限定されるものではなく、既述した各種衣類に本発明を適用できる。
【0066】
矯正具A1、A1’、A2、A2’、A3、A3’、A4、A1”における伸縮性を有する袖状部1やバンド部2、或いはさらにバンド部3、或いはさらにバンド部4は、それには限定されないが、例えば、ポリエステル糸と、ポリウレタン糸にポリアミド糸(ナイロン糸)を巻いて強度と伸縮性を持たせた糸とを用いて交互に編み立てし、且つ、適宜編み変えして伸縮性に強弱を付けて編み立てして形成することができる。また、矯正具は、その全体が同じように編成されているのではなく、袖状部1、1及び伸縮性バンド部2の部分については伸縮性の強い所謂リブ編みとし、他の部分はそれより伸縮性の弱いメッシュ編みとする例を挙げることができる。また、強い伸縮性が求められる袖状部1、1及び伸縮性バンド部2の部分等については、伸縮性布を複数枚重ねで形成し、他の部分はそれより少ない枚数(例えば1枚)で形成するなどしてもよい。さらに、袖状部1やバンド部2等のそれぞれにおいても、伸縮性がより強い部分とより弱い部分とがあってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は猫背等の矯正や猫背等になることを抑制する姿勢矯正具を提供することに利用できる。
【符号の説明】
【0068】
A1、A1’、A2、A2’、A3、A3’、A4 姿勢矯正具
1 袖状部
11 袖状部の外側のリング縁部
12 袖状部の内側のリング縁部
13 袖状部の延在部分
14 袖状部の下端部
2 伸縮性バンド部
3 背中側の補助バンド部
4 胸部側の補助バンド部
C シャツ
C1 シャツの袖
A1” 姿勢矯正具
10 着用者
a 上腕骨頭部
b 鎖骨の腕側端部
c 肩甲骨の、上腕骨頭部及び鎖骨端部が連接された部分 100 人体部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の上腕骨頭部と、左右鎖骨の腕側端部と、上腕骨頭部及び鎖骨の腕側端部が連接された左右の肩甲骨の部分とを骨組みとする人体部分を周囲から囲み包むための左右の袖状部と、該左右の袖状部を連結する伸縮性バンド部とを含んでおり、該伸縮性バンド部は、該左右袖状部が人体に被着された状態で該人体の背中側の左右肩甲骨の上部背後で該左右の袖状部を連結するとともに該左右の袖状部を互いに弾力的に引き寄せる力を付与するためのバンド部であることを特徴とする姿勢矯正具。
【請求項2】
前記左右の袖状部のそれぞれは、前記上腕骨頭部と、鎖骨の腕側端部と、上腕骨頭部及び鎖骨の腕側端部が連接された肩甲骨の部分とを骨組みとする人体部分に対して緩みなく装着できる伸縮性を有する袖状部である請求項1記載の姿勢矯正具。
【請求項3】
前記左右の袖状部を連結する背中側補助伸縮性バンド部をさらに含んでおり、該背中側補助伸縮性バンド部は、該左右袖状部が人体に被着された状態で該人体の背中側で、前記伸縮性バンド部より下方、且つ、該人体の腋の下より下方の位置で、該左右の袖状部を連結するとともに該左右の袖状部を互いに弾力的に引き寄せる力を付与するためのものである請求項1又は2記載の姿勢矯正具。
【請求項4】
前記左右の袖状部を連結する胸部側補助バンド部をさらに含んでおり、該胸部側補助バンド部は、該左右袖状部が人体に被着された状態で該人体の胸部側で、前記伸縮性バンド部より下方、且つ、該人体の腋の下より下方の位置で、該左右の袖状部を連結するためのものである請求項1、2又は3記載の姿勢矯正具。
【請求項5】
前記胸部側補助バンド部はバストアップバンド部を兼ねている請求項4記載の姿勢矯正具。
【請求項6】
前記胸部側バンド部は連結分離可能部分を含んでいる請求項4又は5記載の姿勢矯正具。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の姿勢矯正具を含む上半身用衣類。
【請求項8】
前記姿勢矯正具が一体的に形成されている請求項7記載の上半身用衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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