説明

姿形可変翼付き攪拌機

【課題】 狭い受入口を通過させ、広い区画の液に攪拌翼が展開できる攪拌機を提供する。
【解決手段】 電動機駆動軸に接続する攪拌翼回転軸2aの翼取付部4と、翼取付部取り付けの翼部5aを複数組み合わせて一組と成す翼ユニット5を一対に形成して翼取付部4に接続し、両部接続部に関節機能を付与し、装置の受入口挿入時には回転軸に添って垂れ下がる翼部ユニットを通過させ、、攪拌回転時には回転運動で生じる遠心作用で翼ユニットを広く展開させ、回転軸2a以下部分を固定筒7と可動筒8による収納機能を付加可能にし、固定筒7下端にポンプ翼11の付加機能を加えることで、ポンプ翼の設置位置上部からの液吸入と、底層液へ吐出液流を生じさせる機能を併設できる攪拌機を形成した。

【発明の詳細な説明】
【発明が属する技術分野】
【0001】
本発明は、本体を挿入する受入口が狭い槽や容器へ繰り返し装着して液攪拌操作を行うに容易な翼回転式攪拌機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
翼回転式攪拌機は、槽や容器の液混合に挿入して手軽に用いられている。槽や箱形容器では攪拌機は常時設置されるもので、取り外し、装着が繰り返されることはない。その攪拌機構造において、電動機駆動軸に接続する回転軸にプロペラ形翼部が固定され、回転攪拌操作によって生じる強い勢力の液流が、その他の液部分に対流を起こし、全体として攪拌され、一定時間後にはほぼ均等化されて、実用上十分であった。
【0003】
しかし時々は攪拌したいので常時攪拌機を装着したいが、特定工程には邪魔になる液貯槽や、容器外配置の電磁場で攪拌ができない特種溶液などを納めた液容器や、野外採取の沈殿質含有液を現地で攪拌操作したい場合などには、回転軸固定式のプロペラ形は使用に適する場合なのに、見掛け上かさばる形状に、使い難いという欠点があった。
【0004】
実際に槽や容器の大きさに適合する攪拌機があっても、装着する槽の架台口が狭かったり、容器の注液口が細首であったりすれば、攪拌操作の実施には大きな障害となる。具体的には、出先で液収納装置の攪拌操作をの必要性が判っている場合でも、事前に攪拌機装着条件が判る、例えば攪拌機受入口に障害があるなどとは限らない。狭い受入口からの攪拌機挿入ができても、攪拌機が小さくて局部的な攪拌流しか起こせない、対象液質量に適合する攪拌力が発揮できないなど、現場で即応できない問題があった。
【0005】
これらの改善策として、容器挿入時に、攪拌直径をほぼ半分に畳んで翼形をコの字状にし、その半折れ翼を小口フラスコ容器に挿入し、その後に畳んだ翼を拡げて攪拌を始める横たたみ式のもの(特許文献1)、二翼一対で攪拌する翼部を軸線方向に直線状に拡げて攪拌操作を始め、出し入れの際には回転軸回りに二翼を水平回動し、両軸線を平行に変えて占有面積を狭く変えて容器に装着する横変形式のもの(特許文献2)、二翼を上方に折り曲げて回転軸に添わせてから薬液タンク内に装着する上下操作式(特許文献3)などの提案がある。
しかしながら前記した横たたみ式や横変形式では細首式容器には挿入できない。一方、上下操作式では攪拌翼の羽根体が棒、角柱、平板であって攪拌力を充分に得られない。
【特許文献1】特許2889130号公報
【特許文献2】実開昭60−171544号公報
【特許文献3】実開昭61−175237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題は、液槽や液容器への装着容易性や翼攪拌力が不充分であり、液粘性や必要攪拌力に対応する攪拌翼が得られない、広い攪拌区域をカバーする構造が選択できない点である。、
【0007】
そして攪拌機未使用時の攪拌翼保護機能がない点である。
【0008】
また攪拌機操作時に生じさせる攪拌流に攪拌補助流を付加できない点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明装置は、関節機能と翼ユニットとを組み合わせた一対構造と、回転駆動力に応じた姿形変形可能の翼部を構成したことを最も主要な特徴とする。
【0010】
そして本発明装置の翼部が、外表面または内部を孔加工したルアー状または付加的重錘を一体化できるように膜状に形成したことを主要な特徴とする。
【0011】
また本発明装置の翼ユニットが、未装着時に隠蔽され、槽や容器への装着時には完全露出が行える可動筒を、固定筒と共に構成したことを特徴とする。
【0012】
さらに本発明装置の回転軸が、翼ユニットの攪拌機能と併用するポンプ翼とそのサクション口付き固定筒を設けた構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の、姿形可変翼付き攪拌機は、槽や容器に挿入する攪拌部分を装置受入口以下の側断面大きさに形成できる他、貯液部断面積大きさに対応した翼ユニットの拡幅が回転調節に応じて行え、また攪拌面大きさに適した予備の翼部と差し替えて取り付け、所要攪拌面積の変更や内容液の粘性や含有沈殿物などの物性の条件に即応できるという利点がある。
【0014】
本発明の姿形可変翼は、装着直前まで可動筒内に保護でき、装着中には露出でき操作に支障無く、それら変更には特別な専用操作不要の自動操作性を有するとの利点がある。
【0015】
本発明の、回転軸付加のポンプ翼は、攪拌区域中央部の滞留域が生じ易い区域に上下流を生じさせ、特に初期に沈殿性傾向が現れる液混合化操作では溶液化を早める利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
広域な貯液の攪拌が行える攪拌機を、容器等の狭い装置受入口から挿入するという目的を、回転軸下端の関節機能と展開性翼部から成る翼ユニットの高操作性を得て実現した。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明装置の1実施例であって、(A)は基本形を示す側面図、(B)と(C)はそれぞれ翼の実施例を示す平面図であり、2aは回転軸、4は、5はシートを張って液圧を受ける膜(5d)状の翼部を複数一対に組合せて形成する翼ユニットである。5′は操作時に実線矢印方向へ攪拌運動する翼ユニットを示す。
【0018】
翼部5aは、扇形膜のかなめ部に中央に開口するリング状の翼側取付具12を固設し、扇形の展開膜端を自由端として、その両端間の1側側面に硬質線6aを填め込み骨組みとし硬質線以外の部分は折り畳み可能の可撓性があり、その膜面には複数の付加重錘6cを填め込んである。前記扇形膜は、布、樹脂製シートを、硬質線6aと取付具12には鋼や硬質樹脂を、重錘6cは釣りおもりを、等々攪拌液物性に対応して各々の材質を選ぶ。
翼部5bは、翼部5aと同形同構成の他の実施例を示し、相違点は扇の展開膜端に張る弾性帯5b、扇形かなめ端との開の両側面端とその間の中央部に張設する鋼線6aである。
ここに、2は、ベース2bをボルト類2cによって液槽側の架台10に固定した電動機、17は該架台の攪拌液側に開口する攪拌機の受入口である。
なお他の実施例として、図示の取付口(4a)付き翼取付部と翼側取付具12のリングと孔の結合式に代えて、ここに図示しないが一方側の端部に凹型、他方側に凸型を成形して両者接合部が自由回転可能の嵌合接合式の関節構造を、一段ないし二段の関節を続けて接合したものを設けて関節機能を構成する。
【0019】
なお、前記した翼部5は、粘性小の溶液には適用できるが、ここに図示しないが、液状性を欠く泥状液に、薬剤を加えて流動化を高める溶液に変える場合には、翼部5を釣り用具のルアー針から針無しのルアー形翼として攪拌用具に用い、翼取付口4aに差し替える。
そのルアー形翼を用いる場合、流動性小状態の溶液にはその外表面が平滑なルアーを用い、流動性向上に応じて、外表面にエンボス加工した翼部に代え、次いでルアー内部に流動液を通過させる貫通孔を設けて、外表面積に内部露出表面積を付加、増加して、順次、液軟化性作用を高めていける翼部との着脱交換作業を進めることができる。
【0020】
図2は、容器に装着する攪拌機の実施例であって、(A)は装着時の構造を示す部分側断面図、(B)は容器脱着後の翼収納状態の構造を示す側断面図、図3は、図2(B)に示す矢視図を説明するものである。
3は、瓶形容器20の首口大きさに対応して下面側をキャップ形に形成した電動機取付具である。その中央部に設ける貫通孔には駆動軸を挿通して取り付ける電動機2をその上面壁にボルト類2cで固定し、その挿通先下部の該駆動軸に回転軸2aを接続した後に、前記電動機取付具の下面壁に該回転軸に外挿する固定筒7を取り付けている。
固定筒7は、上部を加工した平鍔18を固定リング3aによって覆設し、前記下面壁に着脱自在に固定される。
固定リング3aは、ワッシャ状リングの外縁に直立する立て板を付設し、その立て板自由端に中心方向に曲げた短長のフック3bを加工して形成する。前記下面壁には、そのフック付き立て板を挿着できる中心振り分けで開口する環状孔と、該フック受け入れ用の鍵穴2dと、そのロック用横穴が加工されている。固定リング3aは、固定筒7に挿通して前記平鍔を挟んで電動機取付具3下面壁の環状孔と鍵穴に嵌合、挿入して回動すると、フック3bが鍵穴から該横穴に移動し、固定筒と共に該固定リングが係止、固定される。
【0021】
電動機取付具3下面壁には、固定リング3a外側のキャップ区域に軟質でクッション性のある素材、望ましくは発泡性のパッキング3cを貼着する。更に電動機取付具3の側壁外表面にはマニュピレータ15保持のためにエンボス状の形状加工を行うのが望ましい。パッキング3cは、可動筒8のフランジ19を押し込むと、パッキング自由端側に膨らみが生じ、それによって容器との密着性を高める。容器からの装置脱着には、バネ9の復元機能が脱着を補助する。なお、16は攪拌機の挿着、脱着を補助する容器保持具である。
なお電動機取付具3は、規格化された瓶形容器口の種類に応じた形式とここに図示しない電動機取付具にボルト孔付き外フランジを付設した種類を予め取り揃えておけば、汎用用途に対応できる。また回転軸2aを、ここに図示しないソケットを用いた継ぎ足し接続手段をもちいて延設すれば、固定筒7からベアリング付き振れ止めを併用して深槽液の攪拌操作を簡便な交換作業を行うことによって、通常遭遇する攪拌目的に対応できる。
【0022】
8は、電動機取付具3に固定した固定筒7にバネ9を挟んで、付設するフランジ側を先に該固定筒に外挿して垂設可能に配置する可動筒である。該可動筒は、並列時に下端が揃うように固定筒7とほぼ同長に形成する。前記両筒の並列状態で両者を装着した場合に予め挿着したバネ9が圧縮を最大にする位置に可動筒側のバネ係止用のリング状のストッパ8aを固定する。そして可動筒8を固定筒7に挿着した後に、該可動筒がバネ復元によって翼ユニット5が収納できる位置まで移動し、その移動停止端を決めるリング状のストッパ7aを、固定筒の自由端外壁面に固定する。前記両ストッパは、ゴム様の弾性帯かシリコンなどの樹脂製を材質に用いる。
【0023】
図4は、瓶形容器に装着した攪拌機の回転軸にポンプ翼を付加構成した1実施例であって、11は、固定筒7にサクション口13を液中に併設した、該固定筒下端口に位置する回転軸2aに取り付けて駆動するポンプ翼である。14は、液面下に開口して、液上層流から液抜きないし吐出を行うための予備開孔部を閉塞するシールである。固定筒7の電動機取付具3との固定接続を含むその他の構造は前記実施例と同様であり、説明を省く。
この実施例の攪拌操作では、図示点線矢印A方向の液流が生じる以外に、実線矢印S方向の吐出流が付加されるので、粘性や沈殿性の異なる混合液の攪拌時に生じる攪拌取り残しを避けることが出来、液混合時間の短縮に寄与する。またサクション口13を塞ぎ、シール14個所の予備開孔部をデリベリ口とすると、液流が図示点線矢印b方向に対する沈殿性の高い液の吐出動作が生じるので、対象液の攪拌流軌跡の延長が計れて、混和効果が高まる。前記予備開孔部をサクション口に用途換えを行うと、上澄み性の液を液深部に強制誘引でき、他種の液との接触、それらの混和反応効果を高めることが出来る。
【0024】
このように翼部ユニットと関節構造を一対構造に構成したので、自重利用による翼ユニット5の占有容積縮小が、攪拌回転運動による攪拌面積拡大作用を、少しも損なわずに操作できる。一方、対象溶液の物性に応じて、重量のある翼部、乱流を起こし易い付加物や加工を加えて液接触面を増やした翼部や吐出流を作り出すポンプ翼の差し替え部品をキット化してそれらのセット製作ができるので、フィールド作業で必要となる液攪拌操作時に、翼部交換により異なる攪拌条件に簡便に即応できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
関節機能の構造を有し、翼ユニットの占有容積縮小と攪拌面積拡大を両立させ、その上に攪拌溶液の物性に対応できる仕組みを付加し、さらに翼部をキット化できるので、溶液の数種添加作業に伴う流れ作業や、複数の溶液製品を混成する流れ工程で機械攪拌が必要な工場で、マニュピレータの補助を受けて、挿着、脱着を繰り返す攪拌操作を必要とする生産工程に大いに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る姿形可変翼付き攪拌機を説明するもので、(A)はその基本形を示す側面図、(B)は翼の1実施例を示す平面図、(C)は同じく別の実施例を示す平面図である。
【図2】同じく攪拌機の1実施例を説明するもので、(A)は攪拌状態の構造を示す部分側断面図、(B)は翼収納状態の構造を示す側断面図である。
【図3】同じく本発明の装置構造を説明するもので、(A)は図2(B)のA〜A′矢視図、(B)は図2(B)のB〜B′矢視図である。
【図4】同じく攪拌機の他の1実施例を説明するもので、その攪拌状態時の構造を示す部分側断面図を含む側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 攪拌機
3 電動機取付具
3c パッキング
4 翼付設部
5 翼ユニット
5a、5b 翼部
6c 付加重錘
7 固定筒
8 可動筒
9 コイルバネ
11 ポンプ翼
12 翼側取付具
17 攪拌液側受入口
19 フランジ(可動筒の)
A 攪拌水流(翼部)
B 吐出水流(ポンプ翼)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌機(1)回転軸(2a)の翼付設部(4)と翼側の取付具(12)とが着脱自在に接合するリング接合、嵌合構造を含む関節機能を形成する一対構造と、該取付具を設ける翼部分が静止時に垂れ下がり、攪拌回転操作を受けると水平方向へ展開して上下動する複数翼から成る翼ユニット(5)を回転軸(2a)下端に付設、構成することを特徴とする姿形可変翼付き攪拌機。
【請求項2】
翼ユニット(5)の翼部(4)が、ルアー状の翼体から成る翼部であって、該翼部は外表面が平滑仕上げ、凹凸模様、内部に貫通孔または中空部などを選択的に付与、構成する請求項1記載の姿形可変翼付き攪拌機。
【請求項3】
翼ユニット(5)の翼部(4)が、膜状から成るシート翼(5a、5b)であって、該シート翼が鋼線、弾性帯、おもりなどを選択的に均分、付加して構成する請求項1記載の姿形可変翼付き攪拌機。
【請求項4】
静止時の翼ユニット(5)を隠蔽する、固定筒(7)とその外側に設ける可動筒(8)とを一対に形成するものであって、該固定筒上部に設ける平鍔(18)を電動機(2)取付具(3)に固設し、可動筒(8)には上部にフランジ(19)を、筒内側の下部にバネ係止用のストッパ(7a)を設け、そのフランジとストッパ間に配設するバネ(9)を介して可動筒(8)を上下動自在に構成し、攪拌機挿入時に攪拌液側受入口(17)と前記平鍔の間に前記フランジを挟んで行う可動筒(8)の引き上げ操作によって翼ユニット(5)を露出し、前記液側受入口からの攪拌機脱着時に該翼ユニットを隠蔽する機能を有するように構成した請求項1、2および3記載の姿形可変翼付き攪拌機。
【請求項5】
請求項(1)記載の回転軸(2a)が、翼ユニット(5)とともに翼付設部(4)上方にポンプ翼(11)を併設し、該ポンプ翼を電動機取付のベース(2b)より垂設する固定筒(7)内に収納して構成し、該固定筒の、設定液面位置以下に選択的にサクション口(13ないし14)を配設可能にしたことを特徴とする姿形可変翼付き攪拌機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−173621(P2008−173621A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38511(P2007−38511)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(593208603)株式会社アコ−ドシステム (6)
【出願人】(390002967)有限会社ナツ・コープ (9)
【Fターム(参考)】