説明

媒体供給装置及び画像形成装置

【課題】簡易な構成でロール紙のサイズや残量に応じてバックテンションの強さを制御して付与することが可能であり、且つ、ロール紙に弛みが生じるのを防ぐことができる媒体供給装置を提供すること。
【解決手段】ロール状に巻き回された長尺のロール状媒体と、前記ロール状媒体を搬送する搬送手段と、回転駆動する駆動手段と、一方向クラッチとトルクリミッタとを備え、前記駆動手段と前記ロール状媒体の回転軸との間で回転を伝達する回転伝達機構と、前記駆動手段を正転、逆転又は無給電状態に制御する制御手段と、を有し、搬送される前記ロール状媒体に搬送方向に対して逆方向のバックテンションを付与する媒体供給装置であって、前記駆動手段が無給電状態で前記ロール状媒体の搬送を開始した後、前記制御手段が前記駆動手段を正転又は逆転させ、前記ロール状媒体の搬送中に前記バックテンションの強さを変更することで、ロール紙が斜行してシワが生じるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を供給する媒体供給装置及びこれを備える画像形成装置に関し、特に供給されるロール状媒体にバックテンションを付与する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式やインクジェット方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、内部に収納されている用紙を搬送し、画像形成部においてトナーやインク等を用いて用紙上に画像を形成して機外に排出する。
【0003】
この様な画像形成装置において、A0版やA1版といった大サイズの用紙に印刷を行う場合には、用紙の取り扱いが簡便であり、用紙サイズに対して装置を小型化することができることから、ロール状に巻かれた長尺のロール状媒体(以下、ロール紙という)を用いることが多い。
【0004】
ロール紙を用いる場合には、例えば2つの搬送ローラ対でロール紙を挟持して搬送する搬送手段を設け、ロール紙の収容部から画像形成部までの給紙搬送を行う。
【0005】
ここで、ロール紙が搬送ローラに対して平行に装着されていないと、搬送ローラがロール紙に伝達する力の方向とロール紙の繰り出し方向とが異なることで、ロール紙が斜行して搬送される場合がある。
【0006】
この様な斜行は、上記したロール紙の装着状態だけでなく、搬送手段の停止時にロール紙が慣性で回転することによって生じる弛みによっても発生し、この斜行が悪化するとロール紙の繰り出しや巻き戻し等の搬送時にシワや捩れが生じる。
【0007】
そこで、ロール紙の斜行によるシワ等の発生を防止するために、ロール紙の端部若しくは表面部に摩擦材を押圧したり、回転して繰り出されるロール紙の軸芯にトルクリミッタ等により負荷を与える方法が知られている。
【0008】
摩擦材やトルクリミッタ等を用いて負荷を与えることで、ロール紙の搬送方向とは逆方向のバックテンションを付与すると、搬送ロールによる搬送力とバックテンションとによってロール紙の斜行が矯正され、シワの発生を防止することができる。
【0009】
ここで、図18を用いて、バックテンションを付与することでロール紙の斜行を矯正する原理について説明する。図18においてロール紙Rの下側端部領域は、挟持搬送用の搬送ローラAとロール紙Rとの間で一定の張力を有する張り側で、上側端部領域は弛み側の状態にある。この状態でロール紙Rの搬送方向とは逆方向にバックテンションを付与すると、図中搬送負荷分布で示す様に、ロール紙Aには弛み側で小さく、張り側で大きくなる様に負荷がかかる。
【0010】
レジストローラAによるロール紙Rの搬送力は軸方向で均一であり、ロール紙Rに実際に有効に作用する有効搬送力は、搬送力とバックテンションとの差として、図中に有効搬送負荷分布と表示した状態になる。
【0011】
バックテンションを付与すると、有効搬送力をロール紙Rの弛み側で大きく、張り側で小さくした状態でロール紙Rを搬送することとなり、斜行を矯正することができる。
【0012】
しかしながら、ロール紙のサイズや残量等によってバックテンションの適正な強さが異なるため、ロール紙の回転軸に常に一定のバックテンションを付与するだけでは十分に斜行を矯正できない場合がある。
【0013】
そこで、例えば特許文献1には、ロール紙を回転自在に支持するスプールにトルクリミッタを設け、ロール紙を繰り出す時に回転負荷を与えると共に、ロール紙の搬送力を変更する電磁クラッチからなる搬送力可変手段を設けることにより、検知されたロール紙の幅に基づいて電磁クラッチへの印加電圧を無段階で設定してバックテンションを制御し、きめ細かい斜行矯正を行う技術が開示されている。
【0014】
また、特許文献2には、ロール紙のフランジに噛合ってバックテンションを付与するパウダークラッチを有し、ロール紙の残量検出手段の出力に基づいてパウダークラッチに供給する電力を制御し、ロール紙に与えるバックテンションの強さを可変制御する方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に開示されている技術では、パウダークラッチ等の電磁クラッチを必要とするためコストが上昇し、バックテンションを付与する構成及び制御が複雑化するおそれがある。また、搬送手段による搬送停止後に、ロール紙が慣性で回転することにより生じる弛みを原因とする斜行を防止できない場合がある。
【0016】
そこで、本発明では、簡易な構成でロール紙のサイズや残量に応じてバックテンションの強さを可変に制御することが可能であり、ロール紙に弛みが生じるのを防止できる媒体供給装置及びこれを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題に鑑み、ロール状に巻き回された長尺のロール状媒体と、前記ロール状媒体を搬送する搬送手段と、回転駆動する駆動手段と、一方向クラッチとトルクリミッタとを備え、前記駆動手段と前記ロール状媒体の回転軸との間で回転を伝達する回転伝達機構と、前記駆動手段を正転、逆転又は無給電状態に制御する制御手段と、を有し、搬送される前記ロール状媒体に搬送方向に対して逆方向のバックテンションを付与する媒体供給装置であって、前記駆動手段が無給電状態で前記ロール状媒体の搬送を開始した後、前記制御手段が前記駆動手段を正転又は逆転させ、前記ロール状媒体の搬送中に前記バックテンションの強さを変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態によれば、簡易な構成でロール紙のサイズや残量に応じてバックテンションの強さを可変制御し、ロール紙に弛みが生じるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成例を示す図である。
【図2】実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す断面概略図である。
【図3】実施形態に係る媒体供給装置の要部拡大図である。
【図4】実施形態に係る回転伝達機構のバックテンション[中]における回転状態を説明する平面概略図である。
【図5】実施形態に係る回転伝達機構のバックテンション[中]における回転状態を説明する側面概略図である。
【図6】実施形態に係る回転伝達機構のバックテンション[弱]における回転状態を説明する平面概略図である。
【図7】実施形態に係る回転伝達機構のバックテンション[弱]における回転状態を説明する側面概略図である。
【図8】実施形態に係る回転伝達機構のバックテンション[強]における回転状態を説明する平面概略図である。
【図9】実施形態に係る回転伝達機構のバックテンション[強]における回転状態を説明する側面概略図である。
【図10】実施形態に係る回転伝達機構によりロール紙を巻き戻す場合の回転状態を説明する平面概略図である。
【図11】実施形態に係る回転伝達機構によりロール紙を巻き戻す場合の回転状態を説明する側面概略図である。
【図12】実施形態に係る媒体供給装置における制御部の構成例を示すブロック図である。
【図13】実施形態に係る制御部による駆動モータの制御例を示す図である。
【図14】実施形態に係る制御部による駆動モータの他の制御例を示す図である。
【図15】実施形態に係る制御部のメモリに記憶されるバックテンション[弱]から[中]の起動Delay時間及び停止Delay時間の制御テーブルの例を示す図である。
【図16】実施形態に係る制御部のメモリに記憶されるバックテンション[中]から[強]の起動Delay時間及び停止Delay時間の制御テーブルの例を示す図である。
【図17】実施形態に係る媒体供給装置におけるロール紙搬送開始後の処理例を示すフローチャートである。
【図18】バックテンション付与によるロール紙の斜行矯正について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下「実施形態」という)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
<画像形成装置の構成>
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成例を示す図である。また、図2は画像形成装置1の断面概略図である。
【0022】
本発明の実施形態の一態様である画像形成装置1は、画像データに対応してインク滴を吐出することで印字を行うインクジェットプリンタであるが、本発明は用紙を搬送して印刷を行う電子写真方式等の複写機や印刷機等に適用することも可能である。
【0023】
画像形成装置1の内部には、画像形成部2、用紙吸引搬送部3、ロール紙30を収納する収納部4等が設けられている。
【0024】
画像形成部2は、図示しない両側板にガイドロッド13及びガイドレール14が掛け渡され、これらのガイドロッド13及びガイドレール14にキャリッジ15が図中矢印A方向に移動可能に保持されている。
【0025】
キャリッジ15は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッドが搭載されている。各記録ヘッドには、インクを供給する不図示のサブタンクが一体的に備えられている。
【0026】
キャリッジ15を移動走査する主走査機構は、主走査方向の一方側に配置される駆動モータ21と、駆動モータ21によって回転駆動される駆動プーリ22と、駆動プーリ22に連動可能な従動プーリ23と、駆動プーリ22と従動プーリ23との間に掛け回されたベルト部材23とで構成されている。なお、従動プーリ23は、図示しないテンションスプリングによって外方(駆動プーリ22に対して離れる方向)にテンションがかけられている。
【0027】
ベルト部材24は、キャリッジ15の背面側に設けられているベルト固定部に一部分が保持されて主走査方向(矢印A方向)にキャリッジ15を牽引する。キャリッジ15の主走査方向の位置は、キャリッジ15に設けられている不図示のエンコーダによって検知される。
【0028】
キャリッジ15の記録領域では、ロール紙30が用紙吸引搬送部3によってキャリッジ15の主走査方向と直交する方向(副走査方向:矢印B方向)に間欠的に搬送される。
【0029】
また、主走査領域のうち一方の端部側領域には、記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構18が配置されている。さらに、主走査方向のキャリッジ移動領域外、または、上記主走査領域のうち他方の端部側領域には、記録ヘッドのサブタンクに供給する各色のインクを収容するメインカートリッジ19が画像形成装置1に対して着脱自在に装着されている。
【0030】
ロール紙収容部4には、ロール紙(用紙)30をセットすることができ、幅方向(矢印A方向)のサイズが異なるロール紙をセットすることも可能である。
【0031】
ロール紙30は、その紙軸に両側からフランジ31及びスプール軸32が装着され、図示しないスプール軸受け部に載置される。ロール紙30は、搬送手段であるローラ対33、レジストローラ34及び加圧ローラ35によって、ロール紙収容部4から、画像形成装置1本体の後方を通過して前方に向けて搬送される。
【0032】
ローラ対33は、ロール紙30を挟持してレジストローラ34及び加圧ローラ35に向けて搬送した後に挟持状態を解除し、レジストローラ34及び加圧ローラ35がロール紙30を挟持して記録領域に搬送する。
【0033】
レジストローラ34及び加圧ローラ35は、ロール紙30をロール紙収容部4から繰り出す方向及びロール紙収容部4に向けて戻す方向にそれぞれロール紙30を挟持した状態で回転して搬送することができる。ここで、ロール紙30が記録領域を繰り出し方向に搬送されている状態では、レジストローラ34からロール紙収容部4においてロール紙30には所定の張力が作用している。
【0034】
記録領域では、レジストローラ34及び加圧ローラ35はロール紙30を間欠的に搬送し、キャリッジ15が主走査方向に移動して記録ヘッドを画像情報に応じて駆動させて液滴を吐出させることによって、ロール紙30上に画像が形成される。
【0035】
また、画像が形成されたロール紙30は、図示しない切断手段により所定の長さにカットされ、画像形成装置1の正面側に設けられる排紙トレイに排出される。
【0036】
<媒体供給装置のバックテンション付与機構>
図3に、本実施形態に係る媒体供給装置の要部拡大図を示す。
【0037】
ロール紙30のスプール軸32には、駆動モータDMに接続する回転伝達機構5が設けられている。回転伝達機構5は、制御手段である制御部100が駆動モータDMの回転状態を制御することで、ロール紙30のスプール軸32に負荷を与え、搬送されるロール紙30にバックテンションを付与する。
【0038】
ロール紙30の巻芯軸に装着されたスプール軸32には、スプール軸32に従動回転する従動ギヤ32Aが設けられている。従動ギヤ32Aは、アイドルギヤ55,56を介して、ギヤ53Aを有する一方向クラッチ53に接続している。
【0039】
一方向クラッチ53と同一の回転軸52には、ギヤ54Aと共にトルクリミッタ54が設けられている。また、回転軸52は、回転量を検知してロール紙30の残量を検知する残量検知手段としての残量センサS2を有している。
【0040】
ギヤ54Aは伝達ギヤ51に接続し、伝達ギヤ51の回転軸51Aに設けられたアイドルギヤ50を介して回転駆動する駆動手段である駆動モータDMの駆動ギヤ42に接続している。また、回転軸51Aには、駆動モータDMの回転数を検知するための回転数センサS1が設けられている。
【0041】
制御部100は、電力供給を制御することで駆動モータDMの駆動状態を正転、逆転又は無給電状態から選択することで、バックテンションを強、中、弱の3段階に制御することができる。
【0042】
[バックテンション:中]
図4及び図5は、バックテンション[中]における回転伝達機構5の回転状態を説明する図である。図中に示す矢印は、ギヤ等の回転方向を表している。
【0043】
ロール紙30が繰り出し方向に搬送されると、スプール軸32が図中矢印32AR方向に回転し、アイドルギヤ55,56を介して一方向クラッチ53のギヤ53Aが矢印53AR方向に回転する。一方向クラッチ53は、矢印53AR方向に回転する場合にその駆動力を回転軸52に伝達し、回転軸52が矢印52R方向に回転する。
【0044】
回転軸52が矢印52R方向に回転すると、トルクリミッタ54によってトルクが制限された状態でギヤ54Aが回転し、伝達ギヤ51等を介して駆動モータDMの駆動ギヤ42を矢印42R方向に回転させる。
【0045】
ロール紙30が搬送される間、駆動モータDMを無給電(非励磁)状態に制御すると、ロール紙30のスプール軸32に回転伝達機構5から駆動モータDMまでを従動回転させるための負荷が生じ、これがロール紙30へのバックテンションとなる。
【0046】
なお、本実施形態では、駆動モータDMの無給電状態において、駆動ギヤ42の回転を可能にするために、駆動モータDMの空転トルクがトルクリミッタ54の制限以下になる様に設定している。この様に設定することで、ギヤ54Aの回転によって駆動モータDMの駆動ギヤ42が従動して回転することになる。
【0047】
[バックテンション:弱]
図6及び図7にバックテンション[弱]における回転伝達機構5の回転状態を説明する図を示す。図中矢印はギヤ等の回転方向を示している。
【0048】
ロール紙30が繰り出されることによってスプール軸32が回転すると、アイドルギヤ55,56を介して一方向クラッチ53のギヤ53Aが矢印53AR方向に回転する。一方向クラッチ53は、矢印53AR方向に回転する場合にはその駆動力を回転軸52に伝達し、回転軸52が矢印52R方向に回転する。
【0049】
ここで、駆動モータDMを矢印42R方向に回転(以下、「正転」という)させることでも、アイドルギヤ50、伝達ギヤ51及びギヤ54Aを介して回転軸52を矢印52R方向に回転させることができる。
【0050】
そこで、ギヤ54Aが一方向クラッチ53のギヤ53Aよりも速く回転する様に駆動モータDMを正転させると、回転軸52はギヤ54A及びトルクリミッタ54等によって回転し、一方向クラッチ53のギヤ53Aは回転軸52に対して空転する状態になる。
【0051】
この様に駆動モータDMを一定速度以上で正転させると、ロール紙30のスプール軸32には、アイドルギヤ55,56を介して一方向クラッチ53のギヤ53Aを回転させるための負荷はかかるが、駆動モータDMの非励磁状態時に比べて弱いバックテンションがロール紙30に付与される。
【0052】
[バックテンション:強]
次に、図8及び図9にバックテンション[強]における回転伝達機構5の回転状態を説明する図を示す。図中矢印はギヤ等の回転方向を表し、図4から図7と回転方向が異なる場合には「´」を付した符号を表示している。
【0053】
ロール紙30が繰り出されることによりスプール軸32が矢印32AR方向に回転すると、アイドルギヤ55,56を介して一方向クラッチ53のギヤ53Aが矢印53AR方向に回転する。一方向クラッチ53は、矢印53AR方向に回転する場合には、駆動を伝達するため回転軸52をロックし、回転軸52を矢印52R方向に回転させる。
【0054】
ここで、駆動モータDMを矢印42R´方向に回転(以下、「逆転」という)させると、アイドルギヤ50等を介してギヤ54Aが矢印54AR´方向に回転する。
【0055】
この状態では、回転軸52とギヤ54Aとの回転方向が逆になることで、トルクリミッタ54の制限を超える過大なトルクが発生してトルクの伝達が遮断され、トルクリミッタ54内で回転軸52が滑りながら回転することとなる。
【0056】
この様に駆動モータDMを逆転させると、回転軸52がトルクリミッタ54内で滑ることにより受ける抵抗力がスプール軸32の回転に対する負荷となり、ロール紙30に強いバックテンションが付与される。
【0057】
以上の様に、本実施形態に係る媒体供給装置では、回転伝達機構5において駆動モータDMの駆動状態を正転、無給電(非励磁)、逆転に制御することで、ロール紙30に付与するバックテンションをそれぞれ[弱]、[中]、[強]の3段階に制御することができる。
【0058】
[ロール紙の巻き戻し]
また、ロール紙30の搬送停止後に、駆動モータDMを逆転させることで、スプール軸32を回転させてロール紙30を巻き戻すことができる。
【0059】
図10及び図11に、ロール紙30を巻き戻す場合の回転伝達機構5の回転状態を説明する図を示す。図中矢印はギヤ等の回転方向を表し、図4から図7と回転方向が異なる場合には「´」を付した符号を表示している。
【0060】
ロール紙30の搬送が停止されても、ロール紙30が繰り出されていたことによる慣性で、一定程度スプール軸32が回転してロール紙30に弛みが生じる。そこで、搬送手段によるロール紙30の搬送が停止された状態で、駆動モータDMを矢印42R´方向に逆転させる。
【0061】
駆動モータDMが逆転すると、アイドルギヤ50及び伝達ギヤ51を介してギヤ54Aが矢印54AR´方向に回転し、トルクリミッタ54の制限範囲内で回転軸52が矢印52R´方向に回転する。
【0062】
回転軸52が回転すると、一方向クラッチ53がロックしてギヤ53Aが矢印53AR´方向に回転し、アイドルギヤ55,56を介して駆動力が伝達されてギヤ32Aが矢印32AR方向に回転し、スプール軸32がロール紙30を巻き戻す方向に回転する。
【0063】
この様にロール紙30の搬送停止後に、制御部100が駆動モータDMを逆転させることで、スプール軸32を回転させてロール紙30を巻き戻し、ロール紙30に生じた弛みを除去することができる。
【0064】
<バックテンションの制御>
図12は、本実施形態に係る媒体供給装置における制御部の構成例を示すブロック図である。
【0065】
制御部100は、メモリ101内に保持された後述する駆動モータDMの制御テーブルに基づいて、駆動モータDMの回転状態を制御する。
【0066】
制御部100の入力側には、キャリッジセンサCS,残量センサS2,ロール紙のサイズ及び種類を入力可能な操作パネル102が接続され、出力側には駆動モータDMの駆動部103が接続されている。
【0067】
キャリッジセンサCSは、キャリッジ15の主走査方向の位置を検知するセンサであり、残量センサS2は、前述した様に回転伝達機構5において回転軸52の回転量からロール紙30の残量を検知する。
【0068】
本実施形態に係る媒体供給装置では、上記した様にロール紙30にバックテンションを[弱]、[中]、[強]の3段階で付与することができるが、制御部100によりロール紙30の幅や残量に応じてロール紙30の搬送中にバックテンションの強さを変更することで、ロール紙30に与えるバックテンションをさらに細かく制御することができる。
【0069】
図13は、本実施形態に係る媒体供給装置の制御部100による駆動モータDMの制御例を示す図である。図13の上段はロール紙30の搬送手段であるレジストローラ34の駆動状態を示し、下段は制御部100による駆動モータDMの制御状態を示している。
【0070】
図示した例では、ロール紙30の搬送が行われていない間は駆動モータDMは無給電(非励磁)状態に制御し、ロール紙30の搬送が時間t1にて開始された後、予め設定された所定時間が経過した時間t2にて駆動モータDMが逆転する様に制御している。
【0071】
引き続きロール紙30が搬送されている間にも駆動モータDMを逆転させ、時間t3にてロール紙30の搬送が停止した後に、予め設定された所定時間が経過した時間t4にて駆動モータDMを再び無給電(非励磁)状態に制御している。
【0072】
この様に、ロール紙30の搬送開始(時間t1)から駆動モータDMの逆転開始(時間t2)までの起動Delay時間を設けることで、ロール紙30の搬送中にバックテンションを[中]から[強]に変更することができる。したがって、起動Delay時間を適宜変更することで、搬送されるロール紙30に付与するバックテンションを[中](時間t1−t2)から[強](時間t2−t3)の間の任意の強さに設定することができる。
【0073】
また、ロール紙30の搬送停止(時間t3)から逆転させている駆動モータDMを停止(時間t4)するまでに停止Delay時間を設け、逆転する駆動モータDMが慣性で回転しようとするロール紙30を巻き戻すことで、ロール紙30に弛みが生じるのを防止している。
【0074】
この様に、制御部100が、起動Delay時間及び停止Delay時間を設けて駆動モータDMを制御することで、ロール紙30にバックテンションを[中]から[強]の間の適切な強さで付与すると共に、ロール紙の弛みを除去することが可能である。
【0075】
図14は、本実施形態に係る媒体供給装置における駆動モータDMの他の制御例を示す図である。図14の上段はロール紙30の搬送手段であるレジストローラ34の駆動状態を示し、下段は制御部100による駆動モータDMの制御状態を示している。
【0076】
図に示す例では、ロール紙30が時間t1にて搬送手段であるレジストローラ34により搬送開始され、予め設定される起動Delay時間経過後の時間t2にて、制御部100が駆動モータDMを無給電(非励磁)状態から正転させる様に制御している。また、時間t3にてロール紙30の搬送が停止されるのと同時に、駆動モータDMも無給電(非励磁)状態に制御している。
【0077】
この様に、ロール紙30の搬送中に駆動モータDMを無給電(非励磁)状態から正転させることで、ロール紙30にかかるバックテンションを[中](時間t1−t2)から[弱](時間t2−t3)に変更することができる。したがって、起動Delay時間を適宜設定することにより、搬送されるロール紙にバックテンションを[弱]から[中]の間の任意の強さで付与することが可能である。
【0078】
また、図14に示す例において、ロール紙30の搬送停止後に駆動モータDMを逆転させる様に停止Delay時間を設けることで、ロール紙30に弛みが生じるのを防止する様に制御することも可能である。あるいは、ロール紙30の搬送中にはバックテンションの強さを変更せず、搬送停止後に駆動モータDMを一定時間逆回転させて弛み除去する様に制御することもできる。
【0079】
ロール紙30に付与するバックテンションの強さは、ロール紙30の紙種、紙幅及び残量に応じて適宜変更する必要がある。
【0080】
例えば厚紙や、紙幅が大きいロール紙30を用いる場合や、紙幅が小さくても残量が多い場合には、ロール紙30が搬送されることによる慣性の影響が大きく、斜行や弛みが生じ易くなるために強いバックテンションを付与する必要がある。
【0081】
また、例えば薄紙や、紙幅が小さいロール紙30を用いる場合や、紙幅が大きくても残量が少ない場合にはロール紙30が受ける慣性の影響は小さく、バックテンションを弱くしても斜行や弛みを抑制することが可能である。
【0082】
そこで、制御部100は内部に設けられたメモリ101に、ロール紙30に適切なバックテンションを付与すると共に弛みを除去するために、ロール紙30の紙幅及び残量に対応する起動Delay時間及び停止Delay時間の制御テーブルが記憶されている。
【0083】
本実施形態では制御部100が、まず紙種でロール紙30に付与するバックテンションの強さを[弱]から[中]の間、[中]若しくは[中]から[強]の間に設定するかを判断する。
【0084】
図15に、バックテンション[弱〜中]の起動Delay時間及び停止Delay時間の制御テーブル例を示す。
【0085】
バックテンションを[弱〜中]の間に制御する場合には、図14に示す様に、ロール紙30の搬送開始から起動Delay時間経過後に、駆動モータDMを無給電(非励磁)状態から正転させる様に制御する。
【0086】
起動Delay時間を短く設定するとバックテンションは[弱]に近くなり、起動Delay時間を長く設定するとバックテンションは[中]に近い強さになる。
【0087】
そこで、ロール紙30の紙幅が小さく、残量が少ない程起動Delay時間を短くし、紙幅が大きく、残量が多い程起動Delay時間が長くなる様に設定する。図示した例では、起動Delay時間がTa1からTa5(Ta1<Ta2<Ta3<Ta4<Ta5)で、ロール紙30の紙幅及び残量に応じたテーブルが設けられている。
【0088】
本実施形態におけるバックテンション[弱〜中]の設定では、図14に示した様に停止Delay時間を設けていないが、ロール紙30の搬送停止時における慣性の影響によって弛みが発生する場合には、ロール紙30の搬送停止後に駆動モータDMを逆転させる停止Delay時間を設けることもできる。
【0089】
また、図16に、バックテンション[中〜強]の起動Delay時間及び停止Delay時間の制御テーブル例を示す。
【0090】
バックテンションを[中〜強]の間に制御する場合には、図13に示した様に、ロール紙30の搬送開始から起動Delay時間経過後に、駆動モータDMを無給電(非励磁)状態から逆転させる様に制御する。
【0091】
起動Delay時間を短く設定するとバックテンションは[強]に近くなり、起動Delay時間を長く設定するとバックテンションは[中]に近い強さになる。
【0092】
そこで、ロール紙30の紙幅が小さく、残量が少ない程起動Delay時間を長くし、紙幅が大きく、残量が多い程起動Delay時間が短くなる様に設定する。図示した例では、起動Delay時間がTa11からTa55(Ta11<Ta22<Ta33<Ta44<Ta55)で、ロール紙30の紙幅及び残量に応じたテーブルが設けられている。
【0093】
また、ロール紙30の紙幅が大きく、残量が多い程ロール紙30が慣性の影響で繰り出し方向に回転して弛みが生じ易くなる。そこで、弛みを除去する停止Delay時間がTb11からTb55(Tb11<Tb22<Tb33<Tb44<Tb55)まで、ロール紙30の紙幅及び残量に応じて設定されている。
【0094】
図15及び図16に示す制御部100のメモリ101に記憶される制御テーブルには、例えばレジストローラ34一周分のロール紙30の搬送量に対応する起動Delay時間及び停止Delay時間を設定する。ロール紙30へのバックテンション付与時には、実際のロール紙30の搬送量に応じて起動Delay時間及び停止Delay時間を増減させて制御する。
【0095】
図17に、本実施形態に係る媒体供給装置におけるロール紙30搬送開始後の処理のフローチャートの例を示す。
【0096】
ロール紙30の搬送が開始されると、まずステップS1にて、制御部100が駆動モータDMを無給電(非励磁)状態に維持する。次に、ステップS2にて、ロール紙30の紙種情報を取得した後、ステップS3で紙種情報に基づき、バックテンションの設定を[弱〜中]、[中]、[中〜強]の中から選択する。次にステップS4では、残量センサS2により、ロール紙30の残量を検出する。
【0097】
バックテンションの設定が[弱〜中]の場合には(ステップS5)、メモリ101の図15に示すテーブルから、ステップS4で検出したロール紙30の紙幅及び残量に対応する起動Delay時間Tを取得し、ロール紙30の搬送量に応じて必要であれば補正を行う。
【0098】
次に、ロール紙30の搬送開始から起動Delay時間Taが経過した時点で(ステップS7)、駆動モータDMを所定の回転数で正転させることで、ロール紙30に付与するバックテンションを[中]から[弱]に変更する(ステップS8)。
【0099】
ステップS9にてロール紙30の搬送が停止されると、ステップS10にて制御部100が駆動モータDMを無給電(非励磁)状態に制御して処理を終了する。
【0100】
バックテンションの設定が[中〜強]の場合には(ステップS11)、図16に示すテーブルから、ステップS4で検出したロール紙30の紙幅及び残量に対応する起動Delay時間T及び停止Delay時間Tを取得する(ステップS12)。ここで、ロール紙30の搬送量に応じて必要であれば起動Delay時間T及び停止Delay時間Tを補正する。
【0101】
次に、ロール紙30の搬送開始から起動Delay時間Tが経過した時点で(ステップS13)、制御部100が駆動モータDMを逆転させる(ステップS14)。
【0102】
次に、ステップS15にてロール紙30の搬送が停止し、搬送停止から停止Delay時間Tが経過した時点で(ステップS16)、駆動モータDMを無給電(非励磁)状態に制御して処理を終了する。
【0103】
バックテンションの設定が[弱〜中]及び[中〜強]でない場合(ステップS5,S11)、バックテンションの設定は[中]であり、駆動モータDMを無給電(非励磁)に制御した状態のままで、ステップS18にてロール紙30の搬送が停止して処理が終了する。
【0104】
以上の処理により、ロール紙30の紙種、紙幅及び残量に応じて最適なバックテンションを付与すると共に、ロール紙30の搬送停止後には弛みが生じるのを防止することが可能である。
【0105】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0106】
1 画像形成装置
5 回転伝達機構
30 ロール紙
33 ローラ対(搬送手段)
34 レジストローラ(搬送手段)
35 加圧ローラ(搬送手段)
53 1方向クラッチ
54 トルクリミッタ
100 制御部(制御手段)
DM 駆動モータ(駆動手段)
S2 残量センサ(残量検知手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特開2009−256061号公報
【特許文献2】特開平9−164737号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻き回された長尺のロール状媒体と、
前記ロール状媒体を搬送する搬送手段と、
回転駆動する駆動手段と、
一方向クラッチとトルクリミッタとを備え、前記駆動手段と前記ロール状媒体の回転軸との間で回転を伝達する回転伝達機構と、
前記駆動手段を正転、逆転又は無給電状態に制御する制御手段と、
を有し、搬送される前記ロール状媒体に搬送方向に対して逆方向のバックテンションを付与する媒体供給装置であって、
前記駆動手段が無給電状態で前記ロール状媒体の搬送を開始した後、前記制御手段が前記駆動手段を正転又は逆転させ、前記ロール状媒体の搬送中に前記バックテンションの強さを変更する
ことを特徴とする媒体供給装置。
【請求項2】
前記ロール状媒体の搬送停止後に、前記制御手段が前記駆動手段を前記ロール状媒体の巻き戻し方向に回転させ、前記ロール状媒体の弛みを除去する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体供給装置。
【請求項3】
前記ロール状媒体の残量を検出する残量検出手段を有し、
前記ロール状媒体の搬送開始から、前記制御手段が前記駆動手段を正転又は逆転させるまでの時間は、前記ロール状媒体の紙種、幅及び前記残量検出手段によって検出される前記ロール状媒体の残量に基づいて設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体供給装置。
【請求項4】
前記搬送手段による前記ロール状媒体の搬送量に基づいて、前記ロール状媒体の搬送開始から、前記制御手段が前記駆動手段を正転又は逆転させるまでの時間を補正する
ことを特徴とする請求項3に記載の媒体供給装置。
【請求項5】
前記ロール状媒体の搬送停止後に、前記制御手段が前記駆動手段を前記ロール状媒体の巻き戻し方向に回転させる時間は、前記ロール状媒体の紙種、幅及び前記残量検出手段によって検出される前記ロール状媒体の残量に基づいて設定する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の媒体供給装置。
【請求項6】
前記搬送手段による前記ロール状媒体の搬送量に基づいて、前記ロール状媒体の搬送停止後に、前記制御手段が前記駆動手段を前記ロール状媒体の巻き戻し方向に回転させる時間を補正する
ことを特徴とする請求項5に記載の媒体供給装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の媒体供給装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−107719(P2013−107719A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251951(P2011−251951)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】