説明

媒体処理装置、媒体処理方法、及び非接触通信媒体

【課題】カード情報取得までの処理時間の短縮化に優れた媒体処理方法を提供すること。
【解決手段】媒体処理方法は、非接触通信媒体に対して初期応答コマンド(REQB)を送信し、前記非接触通信媒体から前記初期応答コマンドに対応した第1のレスポンス(ATQB)を受信し、前記非接触通信媒体を選択するための媒体選択コマンド(ATTRIB)を送信し、前記非接触通信媒体から前記媒体選択コマンドに対応した第2のレスポンス(Answer to ATTRIB)を受信する期間(アンチコリジョンシーケンス)において、前記非接触通信媒体の媒体情報を取得し、前記媒体情報に応じた処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROMなどの制御素子を有するIC(Integrated Circuit)チップを内蔵するICカードと称される非接触通信媒体に関する。また本発明は、このような非接触通信媒体を処理する媒体処理装置及び媒体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な機能を備えたICカードが登場している。例えば、金属端子等により構成される接触インターフェースと電波を送受信するためのアンテナ等により構成される非接触インターフェースを備えたICカードが登場している(特許文献1参照)。
【0003】
これらICカードの登場によりICカードの用途は広がり、例えば、ICカードは、クレジットカード、定期券、旅券、免許証、その他の商取引の決済に使われるだけでなく、社員証、会員証、保険証などのIDカードとしても様々な分野で使われるようになっている。
【0004】
例えば、ISO/IEC14443TypeB準拠の非接触ICカードが知られており、非接触ICカードリーダ/ライタは、アンチコリジョン(anti-collision)シーケンスの後に、非接触ICカードからカード情報を取得するようになっている。つまり、非接触ICカードリーダ/ライタは、非接触ICカードに対してREQBコマンドを送信し非接触ICカードからのレスポンスを受信し、さらに非接触ICカードに対してATTRIBコマンドを送信し非接触ICカードからのレスポンスを受信してから、非接触ICカードからカード情報を取得するようになっている。
【0005】
具体的には、非接触ICカードリーダ/ライタは、アンチコリジョンシーケンスの後に、非接触ICカードに対してセレクトコマンド及びリードコマンドを送信し、非接触ICカードからカード情報を取得する。このセレクトコマンドは、非接触ICカードのカード情報を格納したファイルを選択するためのコマンドである。非接触ICカードは、セレクトコマンドを受信すると、セレクトコマンドにより選択指示されたファイルを選択し、リードコマンドを受信すると、非接触ICカードリーダ/ライタに対して選択ファイルを送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−216234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、非接触ICカードリーダ/ライタは、アンチコリジョンシーケンス後に、セレクトコマンド及びリードコマンドにより、ISO/IEC14443TypeB準拠の非接触ICカードからカード情報を読み出している。このため、カード情報を取得するまでに多くの処理時間が費やされる。
【0008】
例えば、アンチコリジョンシーケンス期間内、又はリードコマンド送信までの間に、非接触ICカードへの電力供給が途絶える、又は外乱ノイズ等の影響により通信異常が発生するケースを想定する。このようなケースでは、コマンドリトライ又はアンチコリジョンシーケンスのやり直しが必要となり、より多くの処理時間が費やされることになる。
【0009】
本発明の目的は、カード情報取得までの処理時間の短縮化に優れた媒体処理装置(非接触ICカードリーダ/ライタ)、媒体処理方法、非接触通信媒体(非接触ICカード)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る媒体処理装置(非接触ICカードリーダ/ライタ)は、非接触通信媒体(非接触ICカード)と通信する通信手段と、前記通信手段を介して、前記非接触通信媒体に対して初期応答コマンド(REQB)を送信し、前記非接触通信媒体から前記初期応答コマンドに対応した第1のレスポンス(ATQB)を受信し、前記非接触通信媒体を選択するための媒体選択コマンド(ATTRIB)を送信し、前記非接触通信媒体から前記媒体選択コマンドに対応した第2のレスポンス(Answer to ATTRIB)を受信する期間(アンチコリジョンシーケンス)において、前記非接触通信媒体の媒体情報を取得し、前記媒体情報に応じた処理を実行する実行手段と、を備えている。
【0011】
本発明の一実施形態に係る媒体処理方法は、非接触通信媒体(非接触ICカード)に対して初期応答コマンド(REQB)を送信し、前記非接触通信媒体から前記初期応答コマンドに対応した第1のレスポンス(ATQB)を受信し、前記非接触通信媒体を選択するための媒体選択コマンド(ATTRIB)を送信し、前記非接触通信媒体から前記媒体選択コマンドに対応した第2のレスポンス(Answer to ATTRIB)を受信する期間(アンチコリジョンシーケンス)において、前記非接触通信媒体の媒体情報を取得し、前記媒体情報に応じた処理を実行する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る非接触通信媒体(非接触ICカード)は、媒体処理装置(非接触ICカードリーダ/ライタ)と通信する通信手段と、前記通信手段を介して、前記媒体処理装置からの初期応答コマンド(REQB)を受信し、前記媒体処理装置に対して前記初期応答コマンドに対応した第1のレスポンス(ATQB)を送信し、前記媒体処理装置からの媒体選択コマンド(ATTRIB)を受信し、前記媒体処理装置に対して前記媒体選択コマンドに対応した第2のレスポンス(Answer to ATTRIB)を送信する期間(アンチコリジョンシーケンス)において、媒体情報を送信し、前記媒体処理装置からの前記媒体情報に応じた処理の実行に応答する応答手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カード情報取得までの処理時間の短縮化に優れた媒体処理装置(非接触ICカードリーダ/ライタ)、媒体処理方法、非接触通信媒体(非接触ICカード)を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る非接触ICカードシステム(別称、スマートカードシステム)の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る非接触カードリーダ/ライタの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る非接触ICカードの概略構成を示すブロック図である。
【図4】カード情報を取得するための第1の取得処理の一例を示すための図である。
【図5】カード情報を取得するための第2の取得処理の一例を示すための図である。
【図6】ATTRIBコマンドフォーマットの一例を示す図である。
【図7】Answer To ATTRIBレスポンスフォーマットの一例を示す図である。
【図8】REQBコマンドフォーマットの一例を示す図である。
【図9】Extended ATQBのサポートに対応したATQBレスポンスフォーマットの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
例えば、ISO/IEC14443TypeB準拠の非接触ICカードと非接触ICカードリーダ/ライタについて説明する。非接触ICカードリーダ/ライタは、非接触ICカードへコマンドデータを送信し、非接触ICカードは、コマンドデータを受信した後、処理を実行し非接触ICカードリーダ/ライタへ処理結果をレスポンスデータとして送信する。このような通信プロトコルにより、非接触ICカードリーダ/ライタは、非接触ICカードからカード特徴情報を読み出す。
【0017】
本発明では、非接触ICカードリーダ/ライタは、アンチコリジョンシーケンスにおいて、非接触ICカードからカード特徴情報を読み出す。例えば、非接触ICカードリーダ/ライタは、非接触ICカードへ送信する初期化コマンド又は衝突防止コマンドのオプション機能を使用し、非接触ICカードからカード特徴情報を読み出す。これにより、カード特徴情報を取得するまでの処理時間を大幅に削減することが可能である。
【0018】
アンチコリジョンシーケンスとは、上記した初期化コマンド又は衝突防止コマンド等を使用し、非接触ICカードリーダ/ライタと複数の非接触ICカードとの間の電波干渉トラブルを防止するためのシーケンスである。接触ICカードリーダ/ライタ及び接触ICカードは1対1で通信するため、アンチコリジョンシーケンスは不要となる。ところが、非接触ICカードリーダ/ライタの通信範囲に複数の非接触ICカードが存在する場合、これら非接触ICカードからの通信が衝突を起こすことがある。上記アンチコリジョンシーケンスとは、このような衝突を避けるためのシーケンスである。
【0019】
上記したアンチコリジョンシーケンスにより、1台の非接触ICカードリーダ/ライタと1枚の非接触ICカードとの通信を確立させることができる。このような通信の確立後に、非接触ICカードの情報が非接触ICカードリーダ/ライタへ伝達される。つまり、接触タイプの通信方式では、アンチコリジョンシーケンスは適用されずに、比較的早くカード情報を伝達することができる。これに対して、非接触タイプの通信方式では、アンチコリジョンシーケンスが適用されるため、比較的早くカード情報を伝達することができない。
【0020】
また、ISO/IEC14443TypeAで規定されたファイル構造は、ISO/IEC14443TypeBで規定されたファイル構造よりも簡略化されている。このため、ISO/IEC14443TypeAに準拠したICカードシステムでは、ISO/IEC14443TypeBに準拠したICカードシステムよりも、比較的早いシーケンスでカード情報を取得することができる。
【0021】
上記したように、ISO/IEC14443TypeB準拠のICカードシステムでは、カード情報を取得するまでに時間がかかる。このような不具合を解消するために、本発明では、非接触ICカードリーダ/ライタが、アンチコリジョンシーケンスにおいて、非接触ICカードからカード特徴情報を読み出す。その詳細は、以下に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る非接触ICカードシステム(別称、スマートカードシステム)の概略構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、非接触ICカードシステムは、端末1及び非接触ICカード2(非接触通信媒体)により構成される。端末1は、本体(上位装置)11、ディスプレイ12、キーボード13、非接触カードリーダ/ライタ14を備えている。端末1は非接触ICカード2と通信可能に構成されており、端末1は非接触ICカード2に対してデータを送信したり、非接触ICカード2からのデータを受信したりする。
【0024】
本体11は、複数の通信方式(ISO/IEC 14443 Type-A/B、FeliCaなど)及び複数のアプリケーションを選択的に実行することができる。ディスプレイ12は、非接触ICカード2との通信結果及び認証結果等を表示する。キーボード13は、本体11に対して文字や数字等を入力する。非接触カードリーダ/ライタ14は、非接触ICカード2と通信する。
【0025】
なお、本実施形態では、非接触ICカード2が、非接触式のカードであるケースについて説明するが、非接触ICカード2は、非接触式及び接触式の両者をサポートするコンビ型のカードであってもよい。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係る非接触カードリーダ/ライタ14の概略構成を示すブロック図である。
【0027】
図2に示すように、非接触カードリーダ/ライタ14は、アンテナ141、通信I/F142、CPU143、データメモリ144、RAM145、ROM146を備えている。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態に係る非接触ICカードの概略構成を示すブロック図である。
【0029】
図3に示すように、非接触ICカード2は、例えばプラスチックカードであり、ICチップ20(ICモジュール)を備え、ICチップ20は、変調/復調部201、CPU202、コプロセッサ(co-processor)203、メモリ204、電力生成部205を備えている。さらに、図3に示すように、非接触ICカード2は、アンテナ21を備えている。
【0030】
非接触カードリーダ/ライタ14のアンテナ141は、非接触ICカード2のアンテナ21と非接触で通信し、非接触カードリーダ/ライタ14と非接触ICカード2との間でデータを送受信する。通信I/F142は、非接触ICカード2へ送信するデータ、非接触ICカード2から受信したデータの入出力を制御する。また、CPU143は、非接触ICカード2との通信を制御する。
【0031】
データメモリ144は、EEPROM、FRAMなどの不揮発性メモリである。RAM145は、例えば非接触ICカード2から送信されるデータを一時的に記憶するワークメモリである。ROM146は、制御プログラム等を記憶するメモリである。
【0032】
一方、非接触ICカード2のアンテナ21は、非接触カードリーダ/ライタ14のアンテナ141と非接触で通信し、非接触ICカード2と非接触カードリーダ/ライタ14との間でデータを送受信する。変調/復調部201は、アンテナ21と接続され、非接触カードリーダ/ライタ14へ送信するデータを変調したり、非接触カードリーダ/ライタ14から受信したデータを復調したりする。
【0033】
CPU202は、非接触カードリーダ/ライタ14からの各種コマンドに基づき、各種処理を実行する。コプロセッサ203は、各種データを暗号化する。メモリ204は、EEPROM、FRAMなどの不揮発性メモリであり、各種データを記憶する。電力生成部205は、受信した電力波を整流回路にて整流、平滑することにより安定化された直流電圧を生成して各部に動作電圧として供給する。
【0034】
次に、ISO/IEC14443TypeBの通信プロトコルについて説明する。非接触ICカード2は、非接触ICカードリーダ/ライタ14の放射する動作磁界領域に進入した場合、5ms以内に活性化されてアイドル状態となる。
【0035】
非接触ICカードリーダ/ライタ14は、初期応答を要求するためのREQB(Request Command TypeB)又はWUPB(Wake Up command TypeB)を送信する。非接触ICカード2は、REQB又はWUPB(Wake Up command TypeB)を正常に受信すると、ATQB(Answer To Request command TypeB)を非接触ICカードリーダ/ライタ14へ送信する。REQB 及びWUPBは、動作磁界内にISO/IEC14443TypeBの非接触ICカード2が存在するかどうかを検出するために使用される。
【0036】
次に、非接触ICカードリーダ/ライタ14は、非接触ICカード2を選択するためにATTRIBコマンドを送信する。非接触ICカード2は、ATTRIBコマンドを正常に受信すると、Answer To ATTRIBをレスポンスとして非接触ICカードリーダ/ライタ14へ送信する。このあと、各コマンド処理へ移行する。
【0037】
非接触ICカードリーダ/ライタ14は、搬送波(13.56MHz)の振幅を10%程度変調し、NRZ符号化されたデータを非接触ICカード2へ送信する。非接触ICカード2は、搬送波の1/16に相当するに副搬送波(847.5KHz)を用いて位相を変調し、NRZ符号化されたレスポンスを非接触ICカードリーダ/ライタに対して送信する。
【0038】
次に非接触ICカード2に格納されたカード特徴情報(以下、カード情報)の取得について説明する。
【0039】
最初に、ISO/IEC7816に準拠した接触ICカードのカード情報の取得について説明する。ISO/IEC7816に準拠した接触ICカードのカード情報は、ATR(Answer to reset)に含まれる。例えば、ATRフレーム内のヒストリカルキャラクタ内にカード情報が格納される。カードリーダ/ライタは、受信したATRに含まれたカード情報を取得する。つまり、カードリーダ/ライタは、初期応答期間でカード情報を取得することが可能となる。接触ICカードを処理する場合、カードリーダ/ライタと接触ICカードとが接触して通信を行う。このため、接触ICカードから送信されるカード情報は盗み難い。このため、接触ICカードは、ATRによりカード情報をカードリーダ/ライタへ送信することができる。
【0040】
続いて、ISO/IEC14443TypeAに準拠した非接触ICカードのカード情報の取得について説明する。カードリーダ/ライタは、アンチコリジョンシーケンス後、RATS(Request for Answer To Select)コマンドをICカードに対して送信し、ATS(Answer To Select)内のヒストリカルキャラクタ内にカード情報を格納するように指定する。RATSコマンドを受信したICカードは、カード情報を格納したATSをカードリーダ/ライタへ送信する。カードリーダ/ライタは、ATSを受信し、ATSに含まれたカード情報を取得する。
【0041】
続いて、ISO/IEC14443TypeBに準拠した非接触ICカードのカード情報の第1の取得処理について説明する。例えば、カードリーダ/ライタは、アンチコリジョンシーケンス後、セレクトコマンドをICカードに対して送信する。このセレクトコマンドは、ICカードのカード情報を格納したファイルの選択命令を含む。セレクトコマンドを受信したICカードは、カード情報を格納したファイルを選択する。さらに、カードリーダ/ライタは、リードコマンドをICカードに対して送信する。このリードコマンドを受信したICカードは、選択したファイル内のカード情報をカードリーダ/ライタに対して送信する。これにより、カードリーダ/ライタは、リードコマンドの送信に対応して、カード情報を受信することができる。このように、第1の取得処理では、アンチコリジョンシーケンス後、セレクトコマンドを送信し、さらにリードコマンドを送信して、カード情報を取得しているので、カード情報の取得までに多くの処理時間が費やされる。
【0042】
例えば、アンチコリジョンシーケンス期間内、又はリードコマンド送信までの間に、非接触ICカードへの電力供給が途絶える、又は外乱ノイズ等の影響により通信異常が発生するケースを想定する。このようなケースでは、コマンドリトライ又はアンチコリジョンシーケンスのやり直しが必要となり、より多くの処理時間が費やされることになる。
【0043】
続いて、ISO/IEC14443TypeBに準拠した非接触ICカードのカード情報の第2の取得処理について説明する。この第2の取得処理により、カード情報を取得するまでの時間の短縮化を図ることができる。第2の取得処理では、非接触ICカードリーダ/ライタ14のCPU143が、アンチコリジョンシーケンスの期間に非接触ICカード2へ送信されるATTRIBコマンドを利用し、カード情報を取得する。
【0044】
例えば、図4に示すように、非接触ICカードリーダ/ライタ14(CPU143)は、非接触ICカード2へREQBを送信する(ST11)。REQBは、動作磁界内にISO/IEC14443TypeBの非接触ICカード2が存在するかどうかを検出するために使用される。非接触ICカード2(CPU202)は、REQBを受信し(ST12)、非接触ICカードリーダ/ライタ14に対してATQBレスポンスを送信する(ST13)。ATQBレスポンスは、固有識別子、サポート通信速度、最大フレームサイズなどのプロトコル情報を含む。
【0045】
続いて、非接触ICカードリーダ/ライタ14(CPU143)は、ATQBレスポンスを受信し(ST14)、非接触ICカード2を選択するためにATTRIBコマンドを送信する(ST15)。ATTRIBコマンドは、REQBコマンドによって検出されたカードを選択するためのコマンドであり、このATTRIBコマンドのオプション機能を使用し、非接触ICカード2からカード情報を読み出す。図6は、ATTRIBコマンドフォーマットの一例を示す図である。図6に示すように、ATTRIBコマンドは、オプション設定として、Higher Layer INF 部を追加することができる。このHigher Layer INF 部により、非接触ICカード2のカード情報を格納したファイルIDを指定する。つまり、非接触ICカードリーダ/ライタ14は、ファイルID指定情報を含むHigher Layer INF 部が追加されたATTRIBコマンドを送信する。
【0046】
非接触ICカード2(CPU202)は、ATTRIBコマンドを受信し(ST16)、非接触ICカードリーダ/ライタ14に対してAnswer To ATTRIBレスポンスを送信する(ST17)。図7は、Answer To ATTRIBレスポンスフォーマットの一例を示す図である。非接触ICカード2は、ATTRIBコマンドに追加されたHigher Layer INF 部に含まれたファイルID指定情報に従い、カード情報を格納したファイルを選択し、選択ファイルに格納されたカード情報を含むAnswer To ATTRIBレスポンスを送信する。図7に示すように、Answer To ATTRIBレスポンスのHigher Layer Response部が、カード情報を含む。
【0047】
非接触ICカードリーダ/ライタ14(CPU143)は、Answer To ATTRIBレスポンスを受信し(ST18)、Answer To ATTRIBレスポンスに含まれたカード情報を取得し(ST19)、カード情報に応じた各種処理へ移行する。非接触ICカード2は、この各種処理の実行に応答する。
【0048】
以上により、非接触ICカードリーダ/ライタ14(CPU143)は、アンチコリジョンシーケンスの期間中に、非接触ICカード2からカード情報を取得することが可能となる。
【0049】
続いて、ISO/IEC14443TypeBに準拠した非接触ICカードのカード情報の第3の取得処理について説明する。この第3の取得処理により、カード情報を取得するまでの時間の短縮化を図ることができる。第3の取得処理では、非接触ICカードリーダ/ライタ14のCPU143が、アンチコリジョンシーケンスの期間に非接触ICカード2へ送信されるREQBコマンドを利用し、カード情報を取得する。
【0050】
例えば、図5に示すように、非接触ICカードリーダ/ライタ14(CPU143)は、非接触ICカード2へREQBコマンドを送信する(ST21)。REQBは、動作磁界内にISO/IEC14443TypeBの非接触ICカード2が存在するかどうかを検出するために使用される。図8は、REQBコマンドフォーマットの一例を示す図である。図8に示すように、REQBコマンドはPARAMを含み、PARAMはExtended ATQBのサポート状態を示すビットを含む。このビットをHに設定することにより、Extended ATQBのサポートが示され、このビットをLに設定することにより、Extended ATQBの非サポートが示される。
【0051】
非接触ICカード2(CPU202)は、Extended ATQB のサポートを示すREQBコマンド(カード情報を要求するための情報を含むREQBコマンド)を受信し(ST22)、非接触ICカードリーダ/ライタ14に対してATQBレスポンスを送信する(ST23)。ATQBレスポンスは、固有識別子、サポート通信速度、最大フレームサイズなどのプロトコル情報を含む。非接触ICカード2(CPU202)は、受信したREQBコマンドからExtended ATQB がサポートされていることを検知すると、Extended ATQBのサポートに対応したATQBレスポンスを送信する。図9は、Extended ATQBのサポートに対応したATQBレスポンスフォーマットの一例を示す図である。図9に示すように、ATQBレスポンスは、Protocol info フィールドを含み、Protocol info フィールドは、4バイト目にExtended ATQBの応答を含む。このExtended ATQBのRFU部が、カード情報を格納する。
【0052】
非接触ICカードリーダ/ライタ14(CPU143)は、ATQBレスポンスを受信し(ST24)、ATQBレスポンスのRFU部に格納されたカード情報を取得する(ST25)。続いて、非接触ICカードリーダ/ライタ14(CPU143)は、非接触ICカード2を選択するためにATTRIBコマンドを送信する(ST26)。非接触ICカード2(CPU202)は、ATTRIBコマンドを受信し(ST27)、非接触ICカードリーダ/ライタ14に対してAnswer To ATTRIBレスポンスを送信する(ST28)。非接触ICカードリーダ/ライタ14(CPU143)は、Answer To ATTRIBレスポンスを受信し(ST29)、取得したカード情報に応じた各種処理へ移行する。非接触ICカード2は、この各種処理の実行に応答する。
【0053】
以上により、非接触ICカードリーダ/ライタ14(CPU143)は、アンチコリジョンシーケンスの期間中に、非接触ICカード2からカード情報を取得することが可能となる。
【0054】
なお上記説明では、非接触ICカード2が、非接触ICカードリーダ/ライタ14に対してカード情報を含むATQBレスポンスを送信するケースについて説明したが、ATQBレスポンスの後にカード情報を付加して送信してもよい。
【0055】
以上説明したように、非接触ICカードリーダ/ライタ14は、アンチコリジョンシーケンス期間に、ATTRIBコマンドのオプションを使用し、ICカード2からカード情報を取得する。又は、非接触ICカードリーダ/ライタ14は、アンチコリジョンシーケンス期間に、Extended ATQB のサポートを示すREQBコマンドを使用し、ICカード2からカード情報を取得する。これにより、カード情報を取得するまでの処理時間を大幅に削減することが可能である。
【0056】
非接触ICカードリーダ/ライタ14と非接触ICカード2との間の通信は非接触であるため、安易な通信によりカード情報が盗まれないようにする必要がある。つまり、安易に、非接触ICカード2が、非接触ICカードリーダ/ライタ14に対してカード情報を送信してしまうと、カード情報が盗まれてしまうかもしれない。そこで、上記したような手法を採用することにより、アンチコリジョンシーケンス期間においてカード情報を送信する。
【0057】
例えば、非接触ICカードリーダ/ライタ14が、ATTRIBコマンドによるカード情報の取得(第1の取得処理)、及びREQBコマンドによるカード情報の取得(第2の取得処理)を選択的に実行することにより、カード情報はより盗難され難くなる。単に、ATTRIBコマンドによるカード情報の取得(第1の取得処理)、及びREQBコマンドによるカード情報の取得を交互に選択するのではなく、不規則にATTRIBコマンドによるカード情報の取得(第1の取得処理)、及びREQBコマンドによるカード情報の取得を選択することにより、カード情報はより盗難され難くなる。
【0058】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0059】
1…端末、2…ICカード、11…本体、12…ディスプレイ、13…キーボード、14…カードリーダ/ライタ、20…ICチップ、21…アンテナ、141…アンテナ、142…通信I/F、143…CPU、144…データメモリ、145…RAM、146…ROM、201…変調/復調部、202…CPU、203…コプロセッサ、204…メモリ、205…電力生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触通信媒体と通信する通信手段と、
前記通信手段を介して、前記非接触通信媒体に対して初期応答コマンドを送信し、前記非接触通信媒体から前記初期応答コマンドに対応した第1のレスポンスを受信し、前記非接触通信媒体を選択するための媒体選択コマンドを送信し、前記非接触通信媒体から前記媒体選択コマンドに対応した第2のレスポンスを受信する期間において、前記非接触通信媒体の媒体情報を取得し、前記媒体情報に応じた処理を実行する実行手段と、
を備えた媒体処理装置。
【請求項2】
前記媒体選択コマンドは、前記非接触通信媒体の媒体情報を格納したファイルを指定するためのファイル指定情報を含み、
前記第2のレスポンスは、前記ファイル指定情報により指定された前記ファイルに格納された前記媒体情報を含み、
前記実行手段は、前記第2のレスポンスから前記媒体情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記初期応答コマンドは、前記媒体情報を要求するための情報を含み、
前記第1のレスポンスは、前記媒体情報を含み、
前記実行手段は、前記第1のレスポンスから前記媒体情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記実行手段は、前記第1のレスポンスに対して付加された前記媒体情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
非接触通信媒体に対して初期応答コマンドを送信し、前記非接触通信媒体から前記初期応答コマンドに対応した第1のレスポンスを受信し、前記非接触通信媒体を選択するための媒体選択コマンドを送信し、前記非接触通信媒体から前記媒体選択コマンドに対応した第2のレスポンスを受信する期間において、前記非接触通信媒体の媒体情報を取得し、前記媒体情報に応じた処理を実行する媒体処理方法。
【請求項6】
媒体処理装置と通信する通信手段と、
前記通信手段を介して、前記媒体処理装置からの初期応答コマンドを受信し、前記媒体処理装置に対して前記初期応答コマンドに対応した第1のレスポンスを送信し、前記媒体処理装置からの媒体選択コマンドを受信し、前記媒体処理装置に対して前記媒体選択コマンドに対応した第2のレスポンスを送信する期間において、媒体情報を送信し、前記媒体処理装置からの前記媒体情報に応じた処理の実行に応答する応答手段と、
を備えた非接触通信媒体。
【請求項7】
前記媒体選択コマンドは、前記非接触通信媒体の媒体情報を格納したファイルを指定するためのファイル指定情報を含み、
前記応答手段は、前記ファイル指定情報により指定された前記ファイルに格納された前記媒体情報を含む前記第2のレスポンスを送信する、
ことを特徴とする請求項6に記載の非接触通信媒体。
【請求項8】
前記初期応答コマンドは、前記媒体情報を要求するための情報を含み、
前記応答手段は、前記媒体情報を含む前記第1のレスポンスを送信する
ことを特徴とする請求項6に記載の非接触通信媒体。
【請求項9】
前記応答手段は、前記第1のレスポンスに対して前記媒体情報を付加して送信することを特徴とする請求項6に記載の非接触通信媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−238080(P2010−238080A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86811(P2009−86811)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】