媒体処理装置
【課題】媒体の鑑別の精度を向上させる媒体処理装置を提案する。
【解決手段】媒体から鑑別用データを取得し、前記取得した鑑別用データに基づいて前記媒体を鑑別する鑑別装置と、前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体の鑑別用データを記憶する記憶部と、前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体を集積するリジェクト集積部と、を備え、前記鑑別装置は、前記リジェクト集積部に搬送された媒体の再鑑別を、前記記憶部に記憶した鑑別用データに基づいて行う、媒体処理装置。
【解決手段】媒体から鑑別用データを取得し、前記取得した鑑別用データに基づいて前記媒体を鑑別する鑑別装置と、前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体の鑑別用データを記憶する記憶部と、前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体を集積するリジェクト集積部と、を備え、前記鑑別装置は、前記リジェクト集積部に搬送された媒体の再鑑別を、前記記憶部に記憶した鑑別用データに基づいて行う、媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、金融機関のATM(Automated teller machine)に代表される自動取引装置は、銀行、駅構内およびコンビニエンスストアなど、多様な場所に設置されている。顧客は、この自動取引装置に表示される表示画面において各種操作を行うことにより、入金、出金および残高照会などの取引を行うことができる。
【0003】
このような自動取引装置は、運用開始前や運用中に、装置内に存在する紙幣の有高を管理する。そして自動取引装置は、運用終了時に装置内に存在する紙幣の有高に基づいて精査を行う。
【0004】
ここで、自動取引装置は、入金、出金、回収等の取引を行う際に、鑑別装置により紙幣の金種、真偽、正損、走行状態を鑑別する。鑑別装置により走行異常等で金種を確定することができない紙幣は、異常券であると鑑別され、自動取引装置はこのような紙幣をリジェクトする。しかしながら、自動取引装置内にリジェクトされた紙幣が含まれると、装置内に存在する紙幣の有高を正確に管理することができない。
【0005】
これに対し、下記特許文献1では、金種不明と鑑別された紙幣が繰り出された金種別カセットの金種を、かかる紙幣の金種に割り当てる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−291142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、紙幣の搬送先の振り分けを行うための鑑別処理は、規定の距離および時間内で行わなければならない。このため、紙幣の走行状態によっては紙幣の枚数を正確に特定できない場合もあるので、当該紙幣の金種を上記特許文献1の方法によって推定したとしても、有高の補正を正確に行なうことが困難であった。
【0008】
また、上記特許文献1の方法では、紙幣の繰り出し元が金種カセット以外の場合には、リジェクトした紙幣の金種枚数を確定することができない。また、金種カセットにオペレータが直接紙幣を装填する場合、金種カセットに誤った金種の紙幣を装填してしまうと、リジェクトした紙幣に誤った金種を割り当ててしまう問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、媒体の鑑別の精度を向上させることが可能な、新規かつ改良された媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、媒体から鑑別用データを取得し、前記取得した鑑別用データに基づいて前記媒体を鑑別する鑑別装置と、前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体の鑑別用データを記憶する記憶部と、前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体を集積するリジェクト集積部と、を備え、前記鑑別装置は、前記リジェクト集積部に搬送された媒体の再鑑別を、前記記憶部に記憶した鑑別用データに基づいて行う媒体処理装置が提案される。
【0011】
また、前記媒体は紙幣であって、前記媒体処理装置は、前記鑑別装置による鑑別結果に基づいて、前記媒体処理装置内に存在する紙幣の有高を算出する算出部を備え、前記算出部は、前記紙幣の有高から金種不明の紙幣を減算し、前記鑑別装置による再鑑別結果を加算してもよい。
【0012】
また、前記媒体は紙幣であって、前記媒体処理装置は、前記紙幣を金種別に集積する紙幣集積部を備え、前記算出部は、前記鑑別装置による再鑑別結果が金種不明だった場合、金種不明の紙幣が分離された紙幣集積部を示す分離元情報に基づいて、前記再鑑別結果を補正してもよい。
【0013】
また、前記媒体は紙幣であって、前記媒体処理装置は、補充する紙幣を集積する補充集積部を備え、前記紙幣集積部に集積される紙幣は、前記補充集積部から分離され、前記鑑別装置によって鑑別された紙幣であってもよい。
【0014】
また、前記鑑別装置は、取引に応じた前記媒体の搬送が終了した後に前記再鑑別を行ってもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、媒体の鑑別の精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である自動取引システムの構成を示した説明図である。
【図2】本実施形態による自動取引装置の内部構成を示した説明図である。
【図3】集積処理において異常と鑑別された場合の紙幣搬送の流れについて説明するための図である。
【図4】出金取引において異常と鑑別された場合の紙幣搬送の流れについて説明するための図である。
【図5】紙幣補充動作において異常と鑑別された場合の紙幣搬送の流れについて説明するための図である。
【図6】第1の実施形態による出金/回収における再鑑別処理を示すフローチャートである。
【図7】比較例による鑑別と、第1の実施形態による鑑別を説明するための図である。
【図8】鑑別装置2の鑑別結果に応じた有高を説明するための図である。
【図9】再鑑別結果を利用した有高の補正を説明するための図である。
【図10】第2の実施形態による自動取引装置の鑑別処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態による自動取引装置の鑑別処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.自動取引システムの概要>
まず、図1を参照し、本発明の実施形態による自動取引システムの概要を説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態である自動取引システムの構成を示した説明図である。図1に示したように、自動取引システムは、複数の自動取引装置10と、専用網12と、金融機関ホスト20と、を含む。
【0020】
自動取引装置(媒体処理装置)10は、金融機関の顧客による操作に基づいて金銭の取引を実行する顧客操作型端末である。この自動取引装置10は、金融機関の営業店、コンビニエンスストア、駅構内、ホテル、病院、アミューズメントパーク、飲食店、オフィスビルディングなどの多様な施設に設置される。
【0021】
また、自動取引装置10は、顧客操作表示部14と、通帳挿入口16と、カード挿入口18と、を備える。顧客操作表示部14は、顧客による操作の誘導画面を表示する表示部および顧客操作を検出する顧客操作部としての機能を包含する。表示部としての機能は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置により実現される。また、顧客操作部としての機能は例えばタッチパネルにより実現される。なお、図1においては表示部および顧客操作部の機能が自動取引装置10において一体的に構成される例を示しているが、表示部および顧客操作部の機能は分離して構成されてもよい。
【0022】
通帳挿入口16は顧客の通帳の挿入および排出を行い、カード挿入口18は顧客のキャッシュカードの挿入および排出を行う。また、接客口19は、顧客による紙幣の入金口、および顧客への紙幣の出金口としての機能を有する。
【0023】
専用網12は、金融機関のネットワークであり、例えばIP−VPN(Internet Protocol−Virtual Private Network)により構成される。金融機関ホスト20は、この専用網12を介して自動取引装置10と通信することができる。
【0024】
金融機関ホスト20は、専用網12を介して自動取引装置10と通信することにより、各種取引を制御する。例えば、金融機関ホスト20は、自動取引装置10を操作する顧客の認証を行ったり、自動取引装置10において顧客により指示された入金や振込などの金銭取引(勘定の取引処理)を実行したりする。また、金融機関ホスト20は、口座番号、暗証番号、氏名、住所、年齢、生年月日、電話番号、職業、家族構成、年収、預金残高などの顧客情報(口座の元帳)を管理する。
【0025】
本発明の実施形態は、上述した自動取引システムに含まれる自動取引装置10に関し、特に、自動取引装置(媒体処理装置)10における紙幣(媒体)の鑑別に関する。以下、自動取引装置10の構成および基本動作を説明した後に、本発明の各実施形態について詳細に説明する。
【0026】
<2.自動取引装置10の構成および基本動作>
図2は、自動取引装置10の内部構成を示した説明図である。図2に示したように、自動取引装置10は、紙幣処理機構13、制御部(算出部)15および記憶部17を備える。さらに、紙幣処理機構13は、接客口19を含む接客部1、鑑別装置2、一時保留部4、紙幣カセット5a〜5d、リジェクトカセット6a〜6b、補充回収カセット7〜7a、取り忘れ集積カセット8、搬送路3a〜3gおよびブレード9a〜9cを備える。
【0027】
接客部1は、入金取引時に顧客により入金された紙幣を分離したり、出金取引時に顧客に出金する紙幣を集積したりするための構成である。
【0028】
鑑別装置2は、顧客の入金した紙幣、または顧客に出金する紙幣の鑑別を行う。具体的には、鑑別装置2は、搬送路3を通って搬送された紙幣から取得した鑑別情報(鑑別用のデータ)に基づいて、金種、真偽、正損および走行状態などを鑑別する。また、鑑別装置2は記憶部2aを有し、異常と判断した紙幣の鑑別情報を保存する。記憶部2aに保存する鑑別情報については、図7を参照して後述する。そして、鑑別装置2は、鑑別結果を制御部15に出力する。
【0029】
一時保留部4は、入金取引時に接客部1で分離されて鑑別装置2により正常と鑑別された紙幣を一時的に集積する。一時保留部4に集積された紙幣は、入金した紙幣の口座計上などが確定したなど、取引が成立した場合に鑑別装置2を経て紙幣カセット5a〜5dなどに搬送される。
【0030】
紙幣カセット5a〜5dは、顧客の入金した紙幣、出金するための紙幣、および他の紙幣カセット5や補充回収カセット7から分離された紙幣などを集積する紙幣集積部である。紙幣カセット5a〜5dは、同一金種のための複数の紙幣カセットを含んでもよい。例えば、紙幣カセット5aおよび5bが一万円札用の紙幣カセットであり、紙幣カセット5cおよび5dが千円札用の紙幣カセットであってもよい。なお、紙幣カセット5a〜5dは、紙幣処理機構13に対して着脱可能な構造にしてもよい。この場合、紙幣カセット5a〜5dを個別に交換することで紙幣カセット5a〜5dに紙幣を装填することができる。
【0031】
また、本実施形態による紙幣カセット5a〜5dは、紙幣を分離するための分離機構を備える(不図示)。かかる分離機構は、1枚ずつ分離する紙幣から個別情報を取得するセンサを備える。該センサは、分離する紙幣の個別情報として、どの紙幣カセットから分離されたかを示す分離元情報を取得する。かかる分離元情報は、分離機構により制御部15に出力され、制御部15により記憶部17に保存される。
【0032】
リジェクトカセット6a〜6bは、出金取引時または入金取引時等に鑑別装置2によって金種不明と鑑別された支払不可の紙幣を集積する。
【0033】
補充回収カセット7は、紙幣カセット5a〜5dに紙幣を補充、および紙幣カセット5a〜5dから紙幣を回収するための紙幣集積部である。また、補充回収カセット7はリジェクトカセット7aを有する。リジェクトカセット7aは、紙幣補充動作時に鑑別装置2によって異常と鑑別された紙幣を集積するための紙幣集積部である。なお、補充回収カセット7は、紙幣処理機構13に対して着脱可能な構造になっており、交換することで紙幣を補充/回収する。
【0034】
また、補充回収カセット7に集積される紙幣の精査は、制御部15によって次のように行われる。まず、補充回収カセット7から1枚ずつ紙幣が繰り出され、搬送路3eおよび3cを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2により正常と鑑別された紙幣は、経路3bおよび3gを経て補充回収カセット7に戻り、有高が確定する。一方、鑑別装置2により異常と鑑別された紙幣は、経路3bおよび3gを経てリジェクトカセット7aに搬送される。
【0035】
取り忘れ集積カセット8は、接客口19において顧客が取り忘れた紙幣を集積する紙幣集積部である。
【0036】
搬送路3a〜3gは、紙幣を搬送するための構成である。各搬送路3a〜3gは、制御部15による制御に従ってDCサーボモータまたはパルスモータなどが回転することにより、紙幣を目的の搬送先に搬送することが可能である。
【0037】
なお、搬送路3a、3b、3d〜3fは入金/集積経路を構成し、搬送路3e、3c、および3bは補充/回収経路を構成し、搬送路3b、3c、3e、および3fは出金経路を構成する。また、搬送路3gは、リジェクト経路を構成する。
【0038】
また、本実施形態による搬送路3には、1枚ずつ搬送する紙幣から個別情報を取得するセンサが設けられる(不図示)。該センサは、紙幣の個別情報として、紙幣の走行状態などを監視する。該センサが取得した紙幣の走行状態などの情報は、制御部15に出力され、制御部15により記憶部17に保存される。
【0039】
ブレード9a〜9cは、鑑別装置2の鑑別結果に応じて紙幣の搬送先を切り替える機構である。例えば、ブレード9aは、入金取引時に鑑別装置2により異常と鑑別された紙幣を接客部1に搬送するよう切り替える。また、ブレード9aは、入金取引時に鑑別装置2により正常と鑑別された紙幣を一時保留部4に搬送するよう切り替える。
【0040】
ブレード9bは紙幣カセット5a〜5dの集積経路にそれぞれ設けられ、鑑別装置2により鑑別された金種に応じて適切な紙幣カセット5a〜5dに紙幣を搬送するよう切り替える。
【0041】
ブレード9cは、出金取引時に鑑別装置2により正常(支払可能)と鑑別された紙幣を接客部1に搬送するよう切り替える。また、ブレード9cは、出金取引時に鑑別装置2により異常と鑑別された紙幣はリジェクトカセット6a〜6bに搬送するよう切り替える。
【0042】
制御部15は、顧客やオペレータによる操作に応じて、上記の搬送路3a〜3gを制御することにより、入金、補充/回収、および出金などの基本動作を制御する。制御部15が制御する基本動作については、後述の「基本動作」において説明する。
【0043】
また、本実施形態による制御部(算出部)15は、紙幣処理機構13内の各センサから出力された紙幣の個別情報を用いて、自動取引装置10内に存在する紙幣の有高を管理する。具体的には、制御部15は、紙幣補充動作において金種に応じて紙幣カセット5a〜5dに補充される際に、どの金種の枚数が何枚補充されたかをカウントすることで、運用開始時の紙幣の有高を確定する。
【0044】
また、制御部15は、入金取引において入金された紙幣が金種に応じて紙幣カセット5a〜5dに集積される際に、どの金種の紙幣が何枚入金されたかをカウントすることで、入金取引の紙幣の有高を確定する。
【0045】
また、制御部15は、出金取引において出金される紙幣が金種に応じて紙幣カセット5a〜5dから繰り出される際に、どの金種の紙幣が何枚出金されたかをカウントすることで、出金取引の紙幣の有高を確定する。
【0046】
また、制御部15は、回収動作において回収される紙幣が金種に応じて紙幣カセット5a〜5dから繰り出される際に、どの金種の紙幣が何枚回収されたかをカウントすることで、回収動作の紙幣の有高を確定する。
【0047】
記憶部17は、紙幣処理機構13内の各センサから出力された紙幣の個別情報を保存する。個別情報は、鑑別装置2から出力される紙幣の鑑別結果、搬送路3や鑑別装置2に設けられる紙幣の走行状態等を監視するセンサから出力される情報、および紙幣が分離された場所を示す分離元情報を含む。ここで、鑑別結果は、金種、枚数、紙幣の表裏上下等の向きなどの情報であり、走行状態等が悪く金種不明だった旨の情報も含まれる。
【0048】
(基本動作)
以上、自動取引装置10の構成を説明した。続いて、上述した自動取引装置10による入金取引、集積処理、出金取引および紙幣補充などの基本動作を説明する。
【0049】
入金取引においては、まず、接客部1から紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路3aを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は搬送路3b、3eおよび3fを経てブレード9aにより一時保留部4に搬送され、集積される。一方、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は搬送路3b、3eおよび3fを経てブレード9aにより接客部1に搬送され、集積される。その後、顧客により入金金額の確認操作が行われると、集積処理に移行する。
【0050】
集積処理においては、まず、一時保留部4から紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路3dを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は、搬送路3bを経て各紙幣カセット5の集積経路に設けられたブレード9bにより、鑑別された金種に対応する紙幣カセット5a〜5dに搬送され、集積される。
【0051】
一方、一万円札および千円札の汚損券、折れ紙幣、二千円札、五千円札、スキュー紙幣などの走行異常紙幣のように、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった場合の集積処理の流れについて図3を参照して説明する。図3に示すように、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった紙幣は、搬送路3bおよび3gを経てリジェクトカセット6a〜6bに集積される。
【0052】
続いて、出金取引の流れを説明する。出金取引においては、まず、顧客により指定された金額に応じて紙幣カセット5a〜5dから紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路3bを経て鑑別装置2に搬送される。
【0053】
そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は、搬送路3c、3eおよび3fを経てブレード9aにより接客部1に搬送され、集積される。
【0054】
一方、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった場合の出金取引の流れについて図4を参照して説明する。図4に示すように、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった紙幣、すなわち、顧客に支払いできない紙幣は、搬送路3cを経てブレード9cによりリジェクト経路を構成する3gに搬送され、リジェクトカセット6a〜6bに集積される。
【0055】
続いて、紙幣補充の動作について説明する。紙幣補充動作においては、まず、補充回収カセット7から紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路3eおよび3cを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は、搬送路3bを経て各紙幣カセット5の集積経路に設けられたブレード9bにより、鑑別された金種に対応する紙幣カセット5a〜5dに搬送され、集積される。
【0056】
次に、鑑別装置2により異常と鑑別された場合の紙幣補充動作について図5を参照して説明する。図5に示すように、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった紙幣は、搬送路3bおよび3gを経てリジェクトカセット7a、6a、6bに集積される。
【0057】
(通常の紙幣の鑑別処理の課題)
しかし、通常の各種取引における紙幣の鑑別処理では、本来は正常な紙幣であっても、紙幣の走行状態(搬送状態)が悪い場合などは鑑別に時間がかかり、鑑別時間の制限から異常券と鑑別される場合があった。
【0058】
通常、鑑別装置は、紙幣走行中に限られた時間内で鑑別を行い、制御部に鑑別結果(金種、正損、真偽、走行状態、枚数などの紙幣の個別情報)を出力しなければならない。このため、鑑別処理に時間がかかる場合は鑑別処理が途中で終了せざるを得ず、正常な紙幣であっても金種不明の異常券と鑑別されるという問題があった。
【0059】
また、走行状態が悪く複数の紙幣が連鎖する場合でも、通常、鑑別装置は規定値以上の鑑別情報(画像などの各種センサ情報)を取得しないので、規定値以降の連鎖する紙幣については鑑別せず、正確な枚数が把握できないという問題があった。
【0060】
そこで、上記事情を一着眼点にして本発明の各実施形態による自動取引装置10を創作するに至った。本発明の各実施形態による自動取引装置10は、自動取引装置10内の紙幣の有高をより正確に管理することが可能である。以下、このような本発明の各実施形態について詳細に説明する。
【0061】
<3.第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態では、出金/回収時に、鑑別装置2により異常と鑑別された紙幣の鑑別情報に基づいて、鑑別装置2が再鑑別を行うことにより鑑別の精度を向上させる自動取引装置10を提案する。自動取引装置10は、時間をかけて再鑑別を行うことにより、鑑別の精度の向上を実現する。
【0062】
図6は、第1の実施形態による出金/回収における再鑑別処理を示すフローチャートである。図6に示すように、まず、顧客が顧客操作表示部14を操作して出金金額を指定すると(S100)、自動取引装置10は、紙幣カセット5a〜5bから紙幣を分離し(S102)、分離した紙幣を鑑別装置2に搬送する。
【0063】
次に、鑑別装置2は搬送された紙幣から取得した鑑別情報に基づいて鑑別を行う(S104)。鑑別装置2における金種判別が出来なかった場合(S106/No)、制御部15は金種不明紙幣があったことを記憶部17に保存し、鑑別装置2は紙幣から取得した鑑別情報を記憶部2aに保存する(S108)。
【0064】
ここで、記憶部2aに保存する鑑別情報について図7を参照して説明する。図7は、比較例による鑑別と、本実施形態による鑑別を説明するための図である。
【0065】
まず、比較例による鑑別について図7を参照して説明する。図7の左に示すように、走行状態が悪く紙幣42〜46が連鎖して搬送された場合でも、図7の中央に示すように、比較例による鑑別では、規定(幅A)以上の鑑別情報(画像データなど)は取得しない。
【0066】
そして、比較例による鑑別装置は、幅Aの鑑別情報に基づいて鑑別を行うが、紙幣連鎖のため鑑別が失敗し、異常と鑑別する。その後、比較例による鑑別装置は、センサで紙幣を検知しなくなるまで、すなわち紙幣の連鎖が終わるまで、鑑別情報を取得しないので、幅Bに含まれる紙幣46の鑑別もできない。
【0067】
このように、比較例による鑑別では、紙幣42〜46は異常と鑑別され、リジェクトされる。次に、本実施形態による鑑別について図7を参照して説明する。
【0068】
本実施形態にかかる鑑別装置2は、図7の右に示すように、まず規定(幅A)の鑑別情報に基づいて鑑別し、紙幣42が連鎖していると判断すると、図7の幅Cで示すように、紙幣の連鎖が切れるまで鑑別情報を取得する。そして、鑑別装置2は、紙幣42〜46を異常と鑑別し、幅Cの鑑別情報を記憶部2aに保存すると共に、制御部15に金種不明紙幣があったことを通知する。本実施形態では、このように異常と鑑別した紙幣の鑑別情報を記憶部2aに保存しておき、後述する再鑑別に利用する。
【0069】
続いて、図6のフローチャートに戻り、本実施形態の鑑別処理の説明を行う。制御部15、鑑別結果などの個別情報に基づいて、紙幣が正常か否かを判断する(S110)。そして、制御部15は、異常と鑑別された紙幣を、リジェクトカセット6a〜6bに搬送する(S114)。
【0070】
一方、制御部15は、正常と鑑別された紙幣を、出金取引においては接客口1、回収動作においては補充回収カセット7に搬送する(S114)。
【0071】
そして、制御部15は、顧客が指定した出金金額に応じた紙幣の繰り出しが終了するまでS104〜S116を繰り返す。紙幣の繰り出しが終了すると(S116/Yes)、制御部15は、記憶部17に金種不明紙幣があったことが保存されているか否か確認する(S118)。金種不明紙幣があった場合(S118)、制御部15は、鑑別装置2にリジェクト紙幣(異常と鑑別された紙幣)の再鑑別を指示する。
【0072】
次いで、鑑別装置2は、記憶部2aに保存したリジェクト紙幣の鑑別情報に基づいて再鑑別を行い、再鑑別結果を鑑別装置2に出力する(S120)。
【0073】
次に、制御部15は、鑑別装置2から取得した再鑑別結果に基づいて、有高の補正を行なう。具体的には、制御部15は、有高から金種不明枚数を減算し(S122)、再鑑別結果を有高に加算する(S124)。ここで、制御部15が行う再鑑別結果を利用した有高の補正について図8および図9を参照して説明する。
【0074】
図8は、鑑別装置2の鑑別結果に応じた有高を説明するための図である。図8の左側に、鑑別装置2が紙幣40をそれぞれ鑑別した鑑別結果を示す。紙幣42〜46は、図7を参照して説明した場合と同様に、紙幣連鎖により異常と鑑別され、金種・枚数は不明である。そして、図8の右側に、かかる鑑別結果に基づいて自動取引装置10が把握する有高を示す。具体的には、自動取引装置10は、千券3枚、万券1枚、および金種不明1枚といった有高を把握する。しかし、金種不明のリジェクト紙幣が含まれることで、自動取引装置10は装置内に存在する紙幣の有高を正確に管理することができない。
【0075】
図9は、再鑑別結果を利用した有高の補正を説明するための図である。図9の左側に示すように、制御部15は、まず有高から金種不明枚数(リジェクト紙幣の枚数)を減算する。そして、制御部15は、図9の中央に示す再鑑別結果を、図9の右側に示すように、金種不明枚数を減算した有高に加算する。
【0076】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態による自動取引装置10は、出金取引などによる紙幣の繰り出しが全て終了してから再鑑別を行うので、時間をかけて鑑別情報を鑑別することができる。これにより、鑑別の精度が向上し、自動取引装置10は、自装置内の紙幣の有高をより正確に管理することができる。
【0077】
また、本発明の第1の実施形態による自動取引装置10は、保存していた鑑別情報に基づいて再鑑別を行うので、リジェクト紙幣を鑑別装置2に再搬送する必要がない。これにより、再搬送中のトラブルを防ぐとともに、再鑑別の時間を効率化できる。
【0078】
<4.第2の実施形態>
上述した第1の実施形態では、鑑別装置2の再鑑別によりリジェクト紙幣の金種および枚数を鑑別したが、時間をかけて再鑑別を行ってリジェクト紙幣の枚数は特定できても、金種が鑑別できない場合がある。
【0079】
そこで、第2の実施形態による自動取引装置10は、再鑑別によっても金種が鑑別できなかった場合、分離元情報に基づいて金種を補正する。
【0080】
ここで、本実施形態においては、紙幣カセット5a〜5dへの補充は補充回収カセット7から行われる。紙幣補充動作は、上述したように、補充回収カセット7から1枚ずつ紙幣を繰り出し、鑑別装置2で鑑別した後に紙幣カセット5a〜5dに各紙幣を補充する。ここで、上述した特許文献1では、金種カセットにオペレータが直接紙幣を装填するので、誤った金種の紙幣が装填される恐れがあった。しかし、本実施形態では、紙幣補充動作によって紙幣カセット5a〜5dに紙幣を補充するので、誤った紙幣が装填される恐れがない。以上を前提として、次に図10および図11を参照して動作処理を説明する。
【0081】
図10および図11は、第2の実施形態による自動取引装置10の鑑別処理を示すフローチャートである。図10および図11に示す各ステップのうち、S200〜S222は、図6に示すS100〜S122と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0082】
本実施形態においては、鑑別装置2による再鑑別(S220)によっても金種が不明の場合に(S224/Yes)、制御部15は、分離元情報に基づいて再鑑別結果を補正する(S226)。ここで、分離元情報とは、搬送路3および紙幣カセット5a〜5dの分離機構に設けられたセンサから出力され、紙幣が分離された場所を示す情報である。
【0083】
制御部15は、分離元情報から判明する、金種不明紙幣の分離元の紙幣カセット5a〜5dの情報に基づき、紙幣カセット5a〜5dに割り当てられた金種を、再鑑別結果の金種不明紙幣の金種とする補正を行なう(S226)。
【0084】
そして、制御部15は、上記第1の実施形態と同様に、補正した再鑑別結果を、金種不明枚数を減算した有高に加算する(S228)。
【0085】
このような本発明の第2の実施形態による自動取引装置10は、再鑑別結果においても金種が不明だった場合に、金種不明紙幣の分離元情報に基づいて再鑑別結果を補正することで、自装置内の紙幣の有高をより正確に管理することができる。
【0086】
また、本発明の第2の実施形態において、紙幣の分離元となる紙幣カセット5a〜5dは、補充回収カセット7から紙幣補充されるので、誤った紙幣が装填される恐れがない。これにより、本発明の第2の実施形態による自動取引装置10は、自装置内の紙幣の有高をより正確に管理することができる。
【0087】
<5.まとめ>
以上説明したように、本発明の第1の実施形態による自動取引装置10は、出金取引などによる紙幣の繰り出しが全て終了してから再鑑別を行うので、時間をかけて鑑別情報を鑑別することができる。これにより、鑑別の精度が向上し、自動取引装置10は、自装置内の紙幣の有高をより正確に管理することができる。また、本発明の第1の実施形態による自動取引装置10は、保存していた鑑別情報に基づいて再鑑別を行うので、リジェクト紙幣を鑑別装置2に再搬送する必要がない。これにより、再搬送中のトラブルを防ぐとともに、再鑑別の時間を効率化できる。
【0088】
また、本発明の第2の実施形態による自動取引装置10は、再鑑別結果においても金種が不明だった場合に、金種不明紙幣の分離元情報に基づいて再鑑別結果を補正することで、自装置内の紙幣の有高をより正確に管理することができる。
【0089】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば、本明細書の自動取引装置10の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、自動取引装置10の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0091】
また、本明細書では、紙幣は媒体の一例であって、本発明の媒体処理装置は、自動取引装置10に限られない。例えば、小切手などの媒体を鑑別して各種取引を行う媒体処理装置により実現してもよい。
【0092】
また、自動取引装置10に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した自動取引装置10の制御部15と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0093】
1 接客部
2 鑑別装置
3a〜3b 搬送路
4 一時保留部
5a〜5b 紙幣カセット
6a〜6b、7a リジェクトカセット
7 補充回収カセット
8 取り忘れ集積カセット
9a〜9c ブレード
10 自動取引装置
12 専用網
13 紙幣処理機構
15 制御部
17 記憶部
19 接客口
20 金融機関ホスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、金融機関のATM(Automated teller machine)に代表される自動取引装置は、銀行、駅構内およびコンビニエンスストアなど、多様な場所に設置されている。顧客は、この自動取引装置に表示される表示画面において各種操作を行うことにより、入金、出金および残高照会などの取引を行うことができる。
【0003】
このような自動取引装置は、運用開始前や運用中に、装置内に存在する紙幣の有高を管理する。そして自動取引装置は、運用終了時に装置内に存在する紙幣の有高に基づいて精査を行う。
【0004】
ここで、自動取引装置は、入金、出金、回収等の取引を行う際に、鑑別装置により紙幣の金種、真偽、正損、走行状態を鑑別する。鑑別装置により走行異常等で金種を確定することができない紙幣は、異常券であると鑑別され、自動取引装置はこのような紙幣をリジェクトする。しかしながら、自動取引装置内にリジェクトされた紙幣が含まれると、装置内に存在する紙幣の有高を正確に管理することができない。
【0005】
これに対し、下記特許文献1では、金種不明と鑑別された紙幣が繰り出された金種別カセットの金種を、かかる紙幣の金種に割り当てる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−291142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、紙幣の搬送先の振り分けを行うための鑑別処理は、規定の距離および時間内で行わなければならない。このため、紙幣の走行状態によっては紙幣の枚数を正確に特定できない場合もあるので、当該紙幣の金種を上記特許文献1の方法によって推定したとしても、有高の補正を正確に行なうことが困難であった。
【0008】
また、上記特許文献1の方法では、紙幣の繰り出し元が金種カセット以外の場合には、リジェクトした紙幣の金種枚数を確定することができない。また、金種カセットにオペレータが直接紙幣を装填する場合、金種カセットに誤った金種の紙幣を装填してしまうと、リジェクトした紙幣に誤った金種を割り当ててしまう問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、媒体の鑑別の精度を向上させることが可能な、新規かつ改良された媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、媒体から鑑別用データを取得し、前記取得した鑑別用データに基づいて前記媒体を鑑別する鑑別装置と、前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体の鑑別用データを記憶する記憶部と、前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体を集積するリジェクト集積部と、を備え、前記鑑別装置は、前記リジェクト集積部に搬送された媒体の再鑑別を、前記記憶部に記憶した鑑別用データに基づいて行う媒体処理装置が提案される。
【0011】
また、前記媒体は紙幣であって、前記媒体処理装置は、前記鑑別装置による鑑別結果に基づいて、前記媒体処理装置内に存在する紙幣の有高を算出する算出部を備え、前記算出部は、前記紙幣の有高から金種不明の紙幣を減算し、前記鑑別装置による再鑑別結果を加算してもよい。
【0012】
また、前記媒体は紙幣であって、前記媒体処理装置は、前記紙幣を金種別に集積する紙幣集積部を備え、前記算出部は、前記鑑別装置による再鑑別結果が金種不明だった場合、金種不明の紙幣が分離された紙幣集積部を示す分離元情報に基づいて、前記再鑑別結果を補正してもよい。
【0013】
また、前記媒体は紙幣であって、前記媒体処理装置は、補充する紙幣を集積する補充集積部を備え、前記紙幣集積部に集積される紙幣は、前記補充集積部から分離され、前記鑑別装置によって鑑別された紙幣であってもよい。
【0014】
また、前記鑑別装置は、取引に応じた前記媒体の搬送が終了した後に前記再鑑別を行ってもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、媒体の鑑別の精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である自動取引システムの構成を示した説明図である。
【図2】本実施形態による自動取引装置の内部構成を示した説明図である。
【図3】集積処理において異常と鑑別された場合の紙幣搬送の流れについて説明するための図である。
【図4】出金取引において異常と鑑別された場合の紙幣搬送の流れについて説明するための図である。
【図5】紙幣補充動作において異常と鑑別された場合の紙幣搬送の流れについて説明するための図である。
【図6】第1の実施形態による出金/回収における再鑑別処理を示すフローチャートである。
【図7】比較例による鑑別と、第1の実施形態による鑑別を説明するための図である。
【図8】鑑別装置2の鑑別結果に応じた有高を説明するための図である。
【図9】再鑑別結果を利用した有高の補正を説明するための図である。
【図10】第2の実施形態による自動取引装置の鑑別処理を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態による自動取引装置の鑑別処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.自動取引システムの概要>
まず、図1を参照し、本発明の実施形態による自動取引システムの概要を説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態である自動取引システムの構成を示した説明図である。図1に示したように、自動取引システムは、複数の自動取引装置10と、専用網12と、金融機関ホスト20と、を含む。
【0020】
自動取引装置(媒体処理装置)10は、金融機関の顧客による操作に基づいて金銭の取引を実行する顧客操作型端末である。この自動取引装置10は、金融機関の営業店、コンビニエンスストア、駅構内、ホテル、病院、アミューズメントパーク、飲食店、オフィスビルディングなどの多様な施設に設置される。
【0021】
また、自動取引装置10は、顧客操作表示部14と、通帳挿入口16と、カード挿入口18と、を備える。顧客操作表示部14は、顧客による操作の誘導画面を表示する表示部および顧客操作を検出する顧客操作部としての機能を包含する。表示部としての機能は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置により実現される。また、顧客操作部としての機能は例えばタッチパネルにより実現される。なお、図1においては表示部および顧客操作部の機能が自動取引装置10において一体的に構成される例を示しているが、表示部および顧客操作部の機能は分離して構成されてもよい。
【0022】
通帳挿入口16は顧客の通帳の挿入および排出を行い、カード挿入口18は顧客のキャッシュカードの挿入および排出を行う。また、接客口19は、顧客による紙幣の入金口、および顧客への紙幣の出金口としての機能を有する。
【0023】
専用網12は、金融機関のネットワークであり、例えばIP−VPN(Internet Protocol−Virtual Private Network)により構成される。金融機関ホスト20は、この専用網12を介して自動取引装置10と通信することができる。
【0024】
金融機関ホスト20は、専用網12を介して自動取引装置10と通信することにより、各種取引を制御する。例えば、金融機関ホスト20は、自動取引装置10を操作する顧客の認証を行ったり、自動取引装置10において顧客により指示された入金や振込などの金銭取引(勘定の取引処理)を実行したりする。また、金融機関ホスト20は、口座番号、暗証番号、氏名、住所、年齢、生年月日、電話番号、職業、家族構成、年収、預金残高などの顧客情報(口座の元帳)を管理する。
【0025】
本発明の実施形態は、上述した自動取引システムに含まれる自動取引装置10に関し、特に、自動取引装置(媒体処理装置)10における紙幣(媒体)の鑑別に関する。以下、自動取引装置10の構成および基本動作を説明した後に、本発明の各実施形態について詳細に説明する。
【0026】
<2.自動取引装置10の構成および基本動作>
図2は、自動取引装置10の内部構成を示した説明図である。図2に示したように、自動取引装置10は、紙幣処理機構13、制御部(算出部)15および記憶部17を備える。さらに、紙幣処理機構13は、接客口19を含む接客部1、鑑別装置2、一時保留部4、紙幣カセット5a〜5d、リジェクトカセット6a〜6b、補充回収カセット7〜7a、取り忘れ集積カセット8、搬送路3a〜3gおよびブレード9a〜9cを備える。
【0027】
接客部1は、入金取引時に顧客により入金された紙幣を分離したり、出金取引時に顧客に出金する紙幣を集積したりするための構成である。
【0028】
鑑別装置2は、顧客の入金した紙幣、または顧客に出金する紙幣の鑑別を行う。具体的には、鑑別装置2は、搬送路3を通って搬送された紙幣から取得した鑑別情報(鑑別用のデータ)に基づいて、金種、真偽、正損および走行状態などを鑑別する。また、鑑別装置2は記憶部2aを有し、異常と判断した紙幣の鑑別情報を保存する。記憶部2aに保存する鑑別情報については、図7を参照して後述する。そして、鑑別装置2は、鑑別結果を制御部15に出力する。
【0029】
一時保留部4は、入金取引時に接客部1で分離されて鑑別装置2により正常と鑑別された紙幣を一時的に集積する。一時保留部4に集積された紙幣は、入金した紙幣の口座計上などが確定したなど、取引が成立した場合に鑑別装置2を経て紙幣カセット5a〜5dなどに搬送される。
【0030】
紙幣カセット5a〜5dは、顧客の入金した紙幣、出金するための紙幣、および他の紙幣カセット5や補充回収カセット7から分離された紙幣などを集積する紙幣集積部である。紙幣カセット5a〜5dは、同一金種のための複数の紙幣カセットを含んでもよい。例えば、紙幣カセット5aおよび5bが一万円札用の紙幣カセットであり、紙幣カセット5cおよび5dが千円札用の紙幣カセットであってもよい。なお、紙幣カセット5a〜5dは、紙幣処理機構13に対して着脱可能な構造にしてもよい。この場合、紙幣カセット5a〜5dを個別に交換することで紙幣カセット5a〜5dに紙幣を装填することができる。
【0031】
また、本実施形態による紙幣カセット5a〜5dは、紙幣を分離するための分離機構を備える(不図示)。かかる分離機構は、1枚ずつ分離する紙幣から個別情報を取得するセンサを備える。該センサは、分離する紙幣の個別情報として、どの紙幣カセットから分離されたかを示す分離元情報を取得する。かかる分離元情報は、分離機構により制御部15に出力され、制御部15により記憶部17に保存される。
【0032】
リジェクトカセット6a〜6bは、出金取引時または入金取引時等に鑑別装置2によって金種不明と鑑別された支払不可の紙幣を集積する。
【0033】
補充回収カセット7は、紙幣カセット5a〜5dに紙幣を補充、および紙幣カセット5a〜5dから紙幣を回収するための紙幣集積部である。また、補充回収カセット7はリジェクトカセット7aを有する。リジェクトカセット7aは、紙幣補充動作時に鑑別装置2によって異常と鑑別された紙幣を集積するための紙幣集積部である。なお、補充回収カセット7は、紙幣処理機構13に対して着脱可能な構造になっており、交換することで紙幣を補充/回収する。
【0034】
また、補充回収カセット7に集積される紙幣の精査は、制御部15によって次のように行われる。まず、補充回収カセット7から1枚ずつ紙幣が繰り出され、搬送路3eおよび3cを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2により正常と鑑別された紙幣は、経路3bおよび3gを経て補充回収カセット7に戻り、有高が確定する。一方、鑑別装置2により異常と鑑別された紙幣は、経路3bおよび3gを経てリジェクトカセット7aに搬送される。
【0035】
取り忘れ集積カセット8は、接客口19において顧客が取り忘れた紙幣を集積する紙幣集積部である。
【0036】
搬送路3a〜3gは、紙幣を搬送するための構成である。各搬送路3a〜3gは、制御部15による制御に従ってDCサーボモータまたはパルスモータなどが回転することにより、紙幣を目的の搬送先に搬送することが可能である。
【0037】
なお、搬送路3a、3b、3d〜3fは入金/集積経路を構成し、搬送路3e、3c、および3bは補充/回収経路を構成し、搬送路3b、3c、3e、および3fは出金経路を構成する。また、搬送路3gは、リジェクト経路を構成する。
【0038】
また、本実施形態による搬送路3には、1枚ずつ搬送する紙幣から個別情報を取得するセンサが設けられる(不図示)。該センサは、紙幣の個別情報として、紙幣の走行状態などを監視する。該センサが取得した紙幣の走行状態などの情報は、制御部15に出力され、制御部15により記憶部17に保存される。
【0039】
ブレード9a〜9cは、鑑別装置2の鑑別結果に応じて紙幣の搬送先を切り替える機構である。例えば、ブレード9aは、入金取引時に鑑別装置2により異常と鑑別された紙幣を接客部1に搬送するよう切り替える。また、ブレード9aは、入金取引時に鑑別装置2により正常と鑑別された紙幣を一時保留部4に搬送するよう切り替える。
【0040】
ブレード9bは紙幣カセット5a〜5dの集積経路にそれぞれ設けられ、鑑別装置2により鑑別された金種に応じて適切な紙幣カセット5a〜5dに紙幣を搬送するよう切り替える。
【0041】
ブレード9cは、出金取引時に鑑別装置2により正常(支払可能)と鑑別された紙幣を接客部1に搬送するよう切り替える。また、ブレード9cは、出金取引時に鑑別装置2により異常と鑑別された紙幣はリジェクトカセット6a〜6bに搬送するよう切り替える。
【0042】
制御部15は、顧客やオペレータによる操作に応じて、上記の搬送路3a〜3gを制御することにより、入金、補充/回収、および出金などの基本動作を制御する。制御部15が制御する基本動作については、後述の「基本動作」において説明する。
【0043】
また、本実施形態による制御部(算出部)15は、紙幣処理機構13内の各センサから出力された紙幣の個別情報を用いて、自動取引装置10内に存在する紙幣の有高を管理する。具体的には、制御部15は、紙幣補充動作において金種に応じて紙幣カセット5a〜5dに補充される際に、どの金種の枚数が何枚補充されたかをカウントすることで、運用開始時の紙幣の有高を確定する。
【0044】
また、制御部15は、入金取引において入金された紙幣が金種に応じて紙幣カセット5a〜5dに集積される際に、どの金種の紙幣が何枚入金されたかをカウントすることで、入金取引の紙幣の有高を確定する。
【0045】
また、制御部15は、出金取引において出金される紙幣が金種に応じて紙幣カセット5a〜5dから繰り出される際に、どの金種の紙幣が何枚出金されたかをカウントすることで、出金取引の紙幣の有高を確定する。
【0046】
また、制御部15は、回収動作において回収される紙幣が金種に応じて紙幣カセット5a〜5dから繰り出される際に、どの金種の紙幣が何枚回収されたかをカウントすることで、回収動作の紙幣の有高を確定する。
【0047】
記憶部17は、紙幣処理機構13内の各センサから出力された紙幣の個別情報を保存する。個別情報は、鑑別装置2から出力される紙幣の鑑別結果、搬送路3や鑑別装置2に設けられる紙幣の走行状態等を監視するセンサから出力される情報、および紙幣が分離された場所を示す分離元情報を含む。ここで、鑑別結果は、金種、枚数、紙幣の表裏上下等の向きなどの情報であり、走行状態等が悪く金種不明だった旨の情報も含まれる。
【0048】
(基本動作)
以上、自動取引装置10の構成を説明した。続いて、上述した自動取引装置10による入金取引、集積処理、出金取引および紙幣補充などの基本動作を説明する。
【0049】
入金取引においては、まず、接客部1から紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路3aを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は搬送路3b、3eおよび3fを経てブレード9aにより一時保留部4に搬送され、集積される。一方、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は搬送路3b、3eおよび3fを経てブレード9aにより接客部1に搬送され、集積される。その後、顧客により入金金額の確認操作が行われると、集積処理に移行する。
【0050】
集積処理においては、まず、一時保留部4から紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路3dを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は、搬送路3bを経て各紙幣カセット5の集積経路に設けられたブレード9bにより、鑑別された金種に対応する紙幣カセット5a〜5dに搬送され、集積される。
【0051】
一方、一万円札および千円札の汚損券、折れ紙幣、二千円札、五千円札、スキュー紙幣などの走行異常紙幣のように、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった場合の集積処理の流れについて図3を参照して説明する。図3に示すように、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった紙幣は、搬送路3bおよび3gを経てリジェクトカセット6a〜6bに集積される。
【0052】
続いて、出金取引の流れを説明する。出金取引においては、まず、顧客により指定された金額に応じて紙幣カセット5a〜5dから紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路3bを経て鑑別装置2に搬送される。
【0053】
そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は、搬送路3c、3eおよび3fを経てブレード9aにより接客部1に搬送され、集積される。
【0054】
一方、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった場合の出金取引の流れについて図4を参照して説明する。図4に示すように、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった紙幣、すなわち、顧客に支払いできない紙幣は、搬送路3cを経てブレード9cによりリジェクト経路を構成する3gに搬送され、リジェクトカセット6a〜6bに集積される。
【0055】
続いて、紙幣補充の動作について説明する。紙幣補充動作においては、まず、補充回収カセット7から紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路3eおよび3cを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は、搬送路3bを経て各紙幣カセット5の集積経路に設けられたブレード9bにより、鑑別された金種に対応する紙幣カセット5a〜5dに搬送され、集積される。
【0056】
次に、鑑別装置2により異常と鑑別された場合の紙幣補充動作について図5を参照して説明する。図5に示すように、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった紙幣は、搬送路3bおよび3gを経てリジェクトカセット7a、6a、6bに集積される。
【0057】
(通常の紙幣の鑑別処理の課題)
しかし、通常の各種取引における紙幣の鑑別処理では、本来は正常な紙幣であっても、紙幣の走行状態(搬送状態)が悪い場合などは鑑別に時間がかかり、鑑別時間の制限から異常券と鑑別される場合があった。
【0058】
通常、鑑別装置は、紙幣走行中に限られた時間内で鑑別を行い、制御部に鑑別結果(金種、正損、真偽、走行状態、枚数などの紙幣の個別情報)を出力しなければならない。このため、鑑別処理に時間がかかる場合は鑑別処理が途中で終了せざるを得ず、正常な紙幣であっても金種不明の異常券と鑑別されるという問題があった。
【0059】
また、走行状態が悪く複数の紙幣が連鎖する場合でも、通常、鑑別装置は規定値以上の鑑別情報(画像などの各種センサ情報)を取得しないので、規定値以降の連鎖する紙幣については鑑別せず、正確な枚数が把握できないという問題があった。
【0060】
そこで、上記事情を一着眼点にして本発明の各実施形態による自動取引装置10を創作するに至った。本発明の各実施形態による自動取引装置10は、自動取引装置10内の紙幣の有高をより正確に管理することが可能である。以下、このような本発明の各実施形態について詳細に説明する。
【0061】
<3.第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態では、出金/回収時に、鑑別装置2により異常と鑑別された紙幣の鑑別情報に基づいて、鑑別装置2が再鑑別を行うことにより鑑別の精度を向上させる自動取引装置10を提案する。自動取引装置10は、時間をかけて再鑑別を行うことにより、鑑別の精度の向上を実現する。
【0062】
図6は、第1の実施形態による出金/回収における再鑑別処理を示すフローチャートである。図6に示すように、まず、顧客が顧客操作表示部14を操作して出金金額を指定すると(S100)、自動取引装置10は、紙幣カセット5a〜5bから紙幣を分離し(S102)、分離した紙幣を鑑別装置2に搬送する。
【0063】
次に、鑑別装置2は搬送された紙幣から取得した鑑別情報に基づいて鑑別を行う(S104)。鑑別装置2における金種判別が出来なかった場合(S106/No)、制御部15は金種不明紙幣があったことを記憶部17に保存し、鑑別装置2は紙幣から取得した鑑別情報を記憶部2aに保存する(S108)。
【0064】
ここで、記憶部2aに保存する鑑別情報について図7を参照して説明する。図7は、比較例による鑑別と、本実施形態による鑑別を説明するための図である。
【0065】
まず、比較例による鑑別について図7を参照して説明する。図7の左に示すように、走行状態が悪く紙幣42〜46が連鎖して搬送された場合でも、図7の中央に示すように、比較例による鑑別では、規定(幅A)以上の鑑別情報(画像データなど)は取得しない。
【0066】
そして、比較例による鑑別装置は、幅Aの鑑別情報に基づいて鑑別を行うが、紙幣連鎖のため鑑別が失敗し、異常と鑑別する。その後、比較例による鑑別装置は、センサで紙幣を検知しなくなるまで、すなわち紙幣の連鎖が終わるまで、鑑別情報を取得しないので、幅Bに含まれる紙幣46の鑑別もできない。
【0067】
このように、比較例による鑑別では、紙幣42〜46は異常と鑑別され、リジェクトされる。次に、本実施形態による鑑別について図7を参照して説明する。
【0068】
本実施形態にかかる鑑別装置2は、図7の右に示すように、まず規定(幅A)の鑑別情報に基づいて鑑別し、紙幣42が連鎖していると判断すると、図7の幅Cで示すように、紙幣の連鎖が切れるまで鑑別情報を取得する。そして、鑑別装置2は、紙幣42〜46を異常と鑑別し、幅Cの鑑別情報を記憶部2aに保存すると共に、制御部15に金種不明紙幣があったことを通知する。本実施形態では、このように異常と鑑別した紙幣の鑑別情報を記憶部2aに保存しておき、後述する再鑑別に利用する。
【0069】
続いて、図6のフローチャートに戻り、本実施形態の鑑別処理の説明を行う。制御部15、鑑別結果などの個別情報に基づいて、紙幣が正常か否かを判断する(S110)。そして、制御部15は、異常と鑑別された紙幣を、リジェクトカセット6a〜6bに搬送する(S114)。
【0070】
一方、制御部15は、正常と鑑別された紙幣を、出金取引においては接客口1、回収動作においては補充回収カセット7に搬送する(S114)。
【0071】
そして、制御部15は、顧客が指定した出金金額に応じた紙幣の繰り出しが終了するまでS104〜S116を繰り返す。紙幣の繰り出しが終了すると(S116/Yes)、制御部15は、記憶部17に金種不明紙幣があったことが保存されているか否か確認する(S118)。金種不明紙幣があった場合(S118)、制御部15は、鑑別装置2にリジェクト紙幣(異常と鑑別された紙幣)の再鑑別を指示する。
【0072】
次いで、鑑別装置2は、記憶部2aに保存したリジェクト紙幣の鑑別情報に基づいて再鑑別を行い、再鑑別結果を鑑別装置2に出力する(S120)。
【0073】
次に、制御部15は、鑑別装置2から取得した再鑑別結果に基づいて、有高の補正を行なう。具体的には、制御部15は、有高から金種不明枚数を減算し(S122)、再鑑別結果を有高に加算する(S124)。ここで、制御部15が行う再鑑別結果を利用した有高の補正について図8および図9を参照して説明する。
【0074】
図8は、鑑別装置2の鑑別結果に応じた有高を説明するための図である。図8の左側に、鑑別装置2が紙幣40をそれぞれ鑑別した鑑別結果を示す。紙幣42〜46は、図7を参照して説明した場合と同様に、紙幣連鎖により異常と鑑別され、金種・枚数は不明である。そして、図8の右側に、かかる鑑別結果に基づいて自動取引装置10が把握する有高を示す。具体的には、自動取引装置10は、千券3枚、万券1枚、および金種不明1枚といった有高を把握する。しかし、金種不明のリジェクト紙幣が含まれることで、自動取引装置10は装置内に存在する紙幣の有高を正確に管理することができない。
【0075】
図9は、再鑑別結果を利用した有高の補正を説明するための図である。図9の左側に示すように、制御部15は、まず有高から金種不明枚数(リジェクト紙幣の枚数)を減算する。そして、制御部15は、図9の中央に示す再鑑別結果を、図9の右側に示すように、金種不明枚数を減算した有高に加算する。
【0076】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態による自動取引装置10は、出金取引などによる紙幣の繰り出しが全て終了してから再鑑別を行うので、時間をかけて鑑別情報を鑑別することができる。これにより、鑑別の精度が向上し、自動取引装置10は、自装置内の紙幣の有高をより正確に管理することができる。
【0077】
また、本発明の第1の実施形態による自動取引装置10は、保存していた鑑別情報に基づいて再鑑別を行うので、リジェクト紙幣を鑑別装置2に再搬送する必要がない。これにより、再搬送中のトラブルを防ぐとともに、再鑑別の時間を効率化できる。
【0078】
<4.第2の実施形態>
上述した第1の実施形態では、鑑別装置2の再鑑別によりリジェクト紙幣の金種および枚数を鑑別したが、時間をかけて再鑑別を行ってリジェクト紙幣の枚数は特定できても、金種が鑑別できない場合がある。
【0079】
そこで、第2の実施形態による自動取引装置10は、再鑑別によっても金種が鑑別できなかった場合、分離元情報に基づいて金種を補正する。
【0080】
ここで、本実施形態においては、紙幣カセット5a〜5dへの補充は補充回収カセット7から行われる。紙幣補充動作は、上述したように、補充回収カセット7から1枚ずつ紙幣を繰り出し、鑑別装置2で鑑別した後に紙幣カセット5a〜5dに各紙幣を補充する。ここで、上述した特許文献1では、金種カセットにオペレータが直接紙幣を装填するので、誤った金種の紙幣が装填される恐れがあった。しかし、本実施形態では、紙幣補充動作によって紙幣カセット5a〜5dに紙幣を補充するので、誤った紙幣が装填される恐れがない。以上を前提として、次に図10および図11を参照して動作処理を説明する。
【0081】
図10および図11は、第2の実施形態による自動取引装置10の鑑別処理を示すフローチャートである。図10および図11に示す各ステップのうち、S200〜S222は、図6に示すS100〜S122と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0082】
本実施形態においては、鑑別装置2による再鑑別(S220)によっても金種が不明の場合に(S224/Yes)、制御部15は、分離元情報に基づいて再鑑別結果を補正する(S226)。ここで、分離元情報とは、搬送路3および紙幣カセット5a〜5dの分離機構に設けられたセンサから出力され、紙幣が分離された場所を示す情報である。
【0083】
制御部15は、分離元情報から判明する、金種不明紙幣の分離元の紙幣カセット5a〜5dの情報に基づき、紙幣カセット5a〜5dに割り当てられた金種を、再鑑別結果の金種不明紙幣の金種とする補正を行なう(S226)。
【0084】
そして、制御部15は、上記第1の実施形態と同様に、補正した再鑑別結果を、金種不明枚数を減算した有高に加算する(S228)。
【0085】
このような本発明の第2の実施形態による自動取引装置10は、再鑑別結果においても金種が不明だった場合に、金種不明紙幣の分離元情報に基づいて再鑑別結果を補正することで、自装置内の紙幣の有高をより正確に管理することができる。
【0086】
また、本発明の第2の実施形態において、紙幣の分離元となる紙幣カセット5a〜5dは、補充回収カセット7から紙幣補充されるので、誤った紙幣が装填される恐れがない。これにより、本発明の第2の実施形態による自動取引装置10は、自装置内の紙幣の有高をより正確に管理することができる。
【0087】
<5.まとめ>
以上説明したように、本発明の第1の実施形態による自動取引装置10は、出金取引などによる紙幣の繰り出しが全て終了してから再鑑別を行うので、時間をかけて鑑別情報を鑑別することができる。これにより、鑑別の精度が向上し、自動取引装置10は、自装置内の紙幣の有高をより正確に管理することができる。また、本発明の第1の実施形態による自動取引装置10は、保存していた鑑別情報に基づいて再鑑別を行うので、リジェクト紙幣を鑑別装置2に再搬送する必要がない。これにより、再搬送中のトラブルを防ぐとともに、再鑑別の時間を効率化できる。
【0088】
また、本発明の第2の実施形態による自動取引装置10は、再鑑別結果においても金種が不明だった場合に、金種不明紙幣の分離元情報に基づいて再鑑別結果を補正することで、自装置内の紙幣の有高をより正確に管理することができる。
【0089】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば、本明細書の自動取引装置10の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、自動取引装置10の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0091】
また、本明細書では、紙幣は媒体の一例であって、本発明の媒体処理装置は、自動取引装置10に限られない。例えば、小切手などの媒体を鑑別して各種取引を行う媒体処理装置により実現してもよい。
【0092】
また、自動取引装置10に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した自動取引装置10の制御部15と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0093】
1 接客部
2 鑑別装置
3a〜3b 搬送路
4 一時保留部
5a〜5b 紙幣カセット
6a〜6b、7a リジェクトカセット
7 補充回収カセット
8 取り忘れ集積カセット
9a〜9c ブレード
10 自動取引装置
12 専用網
13 紙幣処理機構
15 制御部
17 記憶部
19 接客口
20 金融機関ホスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体から鑑別用データを取得し、前記取得した鑑別用データに基づいて前記媒体を鑑別する鑑別装置と、
前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体の鑑別用データを記憶する記憶部と、
前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体を集積するリジェクト集積部と、を備え、
前記鑑別装置は、前記リジェクト集積部に搬送された媒体の再鑑別を、前記記憶部に記憶した鑑別用データに基づいて行う、媒体処理装置。
【請求項2】
前記媒体は紙幣であって、
前記媒体処理装置は、
前記鑑別装置による鑑別結果に基づいて、前記媒体処理装置内に存在する紙幣の有高を算出する算出部を備え、
前記算出部は、前記紙幣の有高から金種不明の紙幣を減算し、前記鑑別装置による再鑑別結果を加算する、請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記媒体は紙幣であって、
前記媒体処理装置は、
前記紙幣を金種別に集積する紙幣集積部を備え、
前記算出部は、前記鑑別装置による再鑑別結果が金種不明だった場合、金種不明の紙幣が分離された紙幣集積部を示す分離元情報に基づいて、前記再鑑別結果を補正する、請求項1または2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記媒体は紙幣であって、
前記媒体処理装置は、
補充する紙幣を集積する補充集積部を備え、
前記紙幣集積部に集積される紙幣は、前記補充集積部から分離され、前記鑑別装置によって鑑別された紙幣である、請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記鑑別装置は、取引に応じた前記媒体の搬送が終了した後に前記再鑑別を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の媒体処理装置。
【請求項1】
媒体から鑑別用データを取得し、前記取得した鑑別用データに基づいて前記媒体を鑑別する鑑別装置と、
前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体の鑑別用データを記憶する記憶部と、
前記鑑別装置により異常と鑑別された媒体を集積するリジェクト集積部と、を備え、
前記鑑別装置は、前記リジェクト集積部に搬送された媒体の再鑑別を、前記記憶部に記憶した鑑別用データに基づいて行う、媒体処理装置。
【請求項2】
前記媒体は紙幣であって、
前記媒体処理装置は、
前記鑑別装置による鑑別結果に基づいて、前記媒体処理装置内に存在する紙幣の有高を算出する算出部を備え、
前記算出部は、前記紙幣の有高から金種不明の紙幣を減算し、前記鑑別装置による再鑑別結果を加算する、請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記媒体は紙幣であって、
前記媒体処理装置は、
前記紙幣を金種別に集積する紙幣集積部を備え、
前記算出部は、前記鑑別装置による再鑑別結果が金種不明だった場合、金種不明の紙幣が分離された紙幣集積部を示す分離元情報に基づいて、前記再鑑別結果を補正する、請求項1または2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記媒体は紙幣であって、
前記媒体処理装置は、
補充する紙幣を集積する補充集積部を備え、
前記紙幣集積部に集積される紙幣は、前記補充集積部から分離され、前記鑑別装置によって鑑別された紙幣である、請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記鑑別装置は、取引に応じた前記媒体の搬送が終了した後に前記再鑑別を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の媒体処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−20476(P2013−20476A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153683(P2011−153683)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]