説明

媒体印字装置

【課題】印字媒体に印字文字と異なる圧痕が発生することを防止する。
【解決手段】印字ヘッド1と印字媒体Pとの間に所定の印字ギャップAを形成する印字ギャップ調整機構において、印字ヘッド1より印字媒体Pの厚み方向に第1のギャップB分突出する補助ローラ13が設けられ、更に、プラテン12は円筒状に形成され、円筒状中央のプラテン部分12−1と、円筒状両端のローラ部分12−2とからなり、ローラ部分12−2はプラテン部分12−1に対し半径方向に第2のギャップC分突出しており、ローラ部分12−2と補助ローラ13とで印字媒体Pを挟持することにより、第1のギャップBと第2のギャップCを合わせた分の印字ギャップAが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関に設置されオペレータがセットした通帳及び伝票に所定の印字処理を行う通帳伝票プリンタ等の媒体印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通帳伝票プリンタ等の媒体印字装置は、取引金額の印字等に使用されるため、正確かつ明瞭な印字を行う必要がある。また、通帳のように印字するページにより厚みの異なる印字媒体を扱うため、印字媒体の厚みに応じて印字ヘッドと印字媒体との間の印字ギャップを調整する機構が設けられている。印字ギャップ調整機構としては、印字を行う印字媒体の厚さを自動検出し、プラテンが上下移動することにより適正ギャップを確保するオートギャップ方式が広く採用されている。
【0003】
以下、図面により従来のオートギャップ方式の印字ギャップ調整機構を説明する。図11は従来の印字ギャップ調整機構の動作を示す説明図である。印字ヘッド51は通帳又は伝票からなる印字媒体Pへ印字を行う。印字ヘッド51はワイヤドットヘッドであり、複数のドットピンが印字媒体Pに向かって繰り出し可能に設けられる。プラテン52は印字ヘッド51に対向して設けられ、印字媒体Pへの印字の際、印字媒体Pを支持する。そして、プラテン52は図示しない機構により印字ヘッド51に対し上下移動可能に設けられる。インクリボン53はインクが塗布されたリボンであり同図には横断面のみ示す。
【0004】
印字ヘッド51の複数のドットピンが選択的に繰り出すと、インクリボン53のインクが印字媒体Pに転写されることにより印字が行われる。印字ヘッド51は、図中矢印D方向より搬送された印字媒体Pに対し、図示しないキャリッジに搭載され、搬送方向に垂直な方向、即ち印字媒体Pの幅方向としての図中手前から奥又はその逆方向に移動することにより印字媒体Pに印字を行う。インクリボン53は印字ヘッド51の移動に同期して図示しない巻取り機構により巻き取られる。リボンプロテクタ54はインクリボン53の巻取りを円滑にするとともに、印字媒体Pにインクリボン53が擦れて印字媒体Pが汚れるのを防ぐために設けられる。印字ヘッド51とリボンプロテクタ54は印字媒体Pの搬送方向に垂直な方向、即ち印字媒体Pの幅方向に一体となって移動するよう図示しないキャリッジにより結合されている。プラテン52と印字ヘッド51の距離は、印字ヘッド51が印字媒体Pの幅方向に移動しても一定の距離が保たれる構造となっている。
【0005】
次に、従来の印字ギャップ調整機構の動作を説明する。まず同図(a)に示すように、印字媒体Pの吸入時にジャムを防止するため、プラテン52を矢印E方向に最も低い位置まで降下させる。そして、印字媒体Pを搬送し、印字を行う位置で停止させる。
【0006】
次に同図(b)に示すように、プラテン52が矢印F方向としての印字ヘッド51に向けて上昇するように移動し、搬送停止している印字媒体Pをリボンプロテクタ54及び印字ヘッド51へ押し付ける。その後、図示しない機構により印字ヘッド51が押し付けられたことを検出すると、プラテン52の上昇を停止させる。
【0007】
更に同図(c)に示すように、プラテン52を停止した位置から、プラテン52を矢印E方向に一定量下降するように移動させる。これにより、リボンプロテクタ54と印字媒体Pとの間に隙間、即ち印字ギャップAが形成される。印字ギャップAは印字ヘッド51のドットピンが選択的に繰り出して印字する際、最適な印字となるための隙間である。なお、印字ギャップAは印字ヘッド51と印字媒体Pとの間の隙間であってもよい。
【0008】
特開平6−1014号公報(特許文献1)には、接触センサを不要とし、ギャップ確保動作を行うことのないプラテンギャップ調整機構が記載されている。特許文献1によれば、プラテンの前後に設けられた検知ローラが検知ローラブラケットに支持されて印字媒体の厚み方向に移動する。プラテンは検知ローラブラケットに乗せられており、検知ローラと検知用搬送ローラとの間に印字媒体を挟持するために検知ローラブラケットが上昇する。そして検知ローラブラケットはソレノイドにより駆動される。これにより印字ヘッドとプラテンとの間にギャップが形成されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−1014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図11に示した従来の技術によれば、プラテン52を上昇させとき、印字媒体Pをリボンプロテクタ54及び印字ヘッド51に押し付けている。その際、印字媒体Pが複写式である場合、印字媒体Pの複写紙に塗布された薬品が反応して、印字媒体Pに印字文字と異なる圧痕が発生するおそれがある。印字媒体Pに生じる圧痕は印字品位を低下させる要因の一つとなっているという問題がある。
【0011】
一方、特許文献1記載のプラテンギャップ調整機構ではプラテンが長方形であるため、印字媒体Pの搬送時には摩擦により搬送抵抗が生じるおそれがある。また、特許文献1記載のプラテンギャップ調整機構ではプラテンの上下移動のための機構が複雑であるという問題がある。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、印字媒体に圧痕を発生させることなく、また、印字媒体の円滑な搬送と、構造簡単なプラテンギャップ調整機構を有する媒体印字装置を提供することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に関する媒体印字装置は、印字媒体に印字する印字ヘッドと、前記印字ヘッドに対向して配置され、前記印字媒体の厚み方向に移動可能に設けられるプラテンを有し、前記印字ヘッドと前記印字媒体との間に所定の印字ギャップを形成する印字ギャップ調整機構を備えた媒体印字装置において、前記印字ヘッドより前記印字媒体の厚み方向に第1のギャップ分突出する補助ローラが設けられ、更に、前記プラテンは円筒状に形成され、円筒状中央のプラテン部分と、円筒状両端のローラ部分とからなり、前記ローラ部分は前記プラテン部分に対し半径方向に第2のギャップ分突出しており、前記ローラ部分と前記補助ローラとで前記印字媒体を挟持することにより、前記第1のギャップと第2のギャップを合わせた分の前記印字ギャップが形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明によれば、プラテンの円筒状両端のローラ部分と、補助ローラとで印字媒体を挟持することにより、第1のギャップと第2のギャップを合わせた分に印字ギャップが形成されるようにしたので、印字媒体に圧痕を発生させることがなく、かつ印字媒体の円滑な搬送と、構造簡単なプラテンギャップ調整機構を有する媒体印字装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構の概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に関する通帳伝票プリンタの外観斜視図である。
【図3】第1の実施の形態に関する通帳伝票プリンタの概略構成図である。
【図4】第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構のプラテン兼用ローラを示す斜視図である。
【図5】第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構の制御部を示すブロック図である。
【図6】第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構における印字媒体を扱う動作を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構における薄い印字媒体を扱う動作を示す説明図である。
【図8】第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構における厚い印字媒体を扱う動作を示す説明図である。
【図9】第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構の動作を示す説明図である。
【図10】第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構のプラテン兼用ローラの変形例を示す斜視図である。
【図11】従来の印字ギャップ調整機構の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。図2は第1の実施の形態に関する通帳伝票プリンタ10の外観斜視図である。通帳伝票プリンタ10は、その正面側に種類の異なる印字媒体Pを受け入れるための2段のステージ21、22が設けてある。ここでは、上段が印字媒体Pとしての伝票を受け入れるための伝票ステージ21であり、下段が印字媒体Pとしての通帳を受け入れるための通帳ステージ22である。操作部23はオペレータが操作をするためにボタンが設けられている。
【0017】
図3は第1の実施の形態に関する通帳伝票プリンタ10の概略構成図である。通帳伝票プリンタ10は、インサータユニット25、印字ユニット26及びオートターンページ(ATP)ユニット27からなる。インサータユニット25は通帳伝票プリンタ10内の正面側に実装される。インサータユニット25は、オペレータによる通帳や伝票等の印字媒体Pのセットを受け、セットされた印字媒体Pを取り込むとともに、印字処理の終了した印字媒体Pを排出する機能を備える。印字ユニット26はインサータユニット25に続いてインサータユニット25の後ろ側に実装される。印字ユニット26は、印字媒体Pへの印字機能、及び印字のための印字済行の検出機能を備える。ATPユニット27は印字ユニット26に続いて印字ユニット26の後ろ側に実装される。ATPユニット27は、印字媒体Pが通帳の場合、通帳のページめくりを行う。
【0018】
インサータユニット25において、伝票ステージ21及び通帳ステージ22の搬送経路では、まず幅寄せフィードローラ33a及び幅寄せプレッシャローラ33bによって取り込んだ印字媒体Pの傾きを補正するために、印字媒体Pを搬送経路における図示しない基準面に突き当てる。そして、搬送フィードローラ32a及び搬送プレッシャローラ32bによって印字媒体Pを印字ユニット26へ搬送する。なお、34は伝票ステージ21による搬送経路と通帳ステージ22による搬送経路の合流点に設けられたブレードであり、搬送する印字媒体Pに応じて印字媒体Pの搬送方向を切り換える。
【0019】
印字ユニット26において、印字媒体Pの搬送路35は、印字媒体Pをガイドする上下のガイド部35aと、印字媒体Pを搬送する複数の搬送フィードローラ36aと、これら搬送フィードローラ36aに印字媒体Pを押しつける搬送プレッシャローラ36b等から構成される。読取部37は搬送路35に取り込んだ印字媒体Pとしての通帳のページマークや印字済行又は伝票の印字行を読み取る。後述する印字ヘッド1は、プラテン兼用ローラ12上に搬送された印字媒体Pに対して印字を行う。
【0020】
ATPユニット27において、印字媒体Pの搬送路38は、印字媒体Pをガイドする上下のガイド部38aと、印字媒体Pを搬送する搬送フィードローラ39aと、搬送フィードローラ39aに印字媒体を押しつける搬送プレッシャローラ39b等から構成される。ページめくりが必要と判断された通帳がガイド部38aから送り込まれ、ページめくりが行われた後、通帳を印字ユニット26に送り返す。
【0021】
図1は第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構の概略構成図であり、同図(a)は側面図、同図(b)は正面図である。印字ヘッド1は通帳又は伝票からなる印字媒体Pへ印字を行う。印字媒体Pは複数の搬送フィードローラ36a及び搬送プレッシャローラ36bによって、矢印D方向から搬送される。印字ヘッド1はワイヤドットヘッドであり、複数のドットピンが印字媒体Pに向かって繰り出し可能に設けられる。
【0022】
プラテン兼用ローラ12は印字ヘッド1に対向して設けられ、印字媒体Pへの印字の際、印字媒体Pを支持する。そして、プラテン兼用ローラ12はプラテン駆動ローラ14により印字ヘッド1に対し印字媒体Pの厚み方向に上下移動可能に設けられる。更に、プラテン兼用ローラ12は後述する媒体搬送用補助ローラ13とともに印字媒体Pの非印字領域を挟持し印字媒体Pを搬送する。インクリボン3はインクが塗布されたリボンであり、同図(a)にはインクリボン3の横断面を示し、同図(b)にはインクリボン3の縦断面を示す。なお、同図(b)にはインクリボン3の巻取り機構は図示を省略してある。
【0023】
印字ヘッド1の複数のドットピンが選択的に繰り出されると、インクリボン3のインクが印字媒体Pに転写されることにより印字が行われる。印字ヘッド1は、図示しないキャリッジに搭載され、同図(a)の矢印D方向より搬送された印字媒体Pに対し、印字媒体Pの搬送方向に垂直な方向、即ち、印字媒体Pの幅方向(同図(b)のG方向)に移動することにより印字媒体Pに印字を行う。インクリボン3は印字ヘッド1の移動に同期して図示しない巻取り機構により巻き取られる。リボンプロテクタ4はインクリボン3の巻取りを円滑にするとともに、印字媒体Pにインクリボン3が擦れて印字媒体Pが汚れるのを防ぐために設けられる。印字ヘッド1とリボンプロテクタ4は印字媒体Pの搬送方向に垂直な方向、即ち印字媒体Pの幅方向に一体となって移動するよう図示しないキャリッジにより結合されている。プラテン兼用ローラ12と印字ヘッド1の距離は、印字ヘッド1が印字媒体Pの幅方向に移動しても一定の距離が保たれる構造となっている。
【0024】
図4は第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構のプラテン兼用ローラ12を示す斜視図である。同図には印字媒体Pは図示を省略してある。プラテン兼用ローラ12は円筒状に形成され、円筒状中央に設けられたプラテン部分12−1と、円筒状両端に設けられたローラ部分12−2からなる。円筒状中央のプラテン部分12−1は、印字ヘッド1に対向するプラテンとして機能する。従って、プラテン部分12−1の長さは、印字媒体Pの印字幅をカバーするのに十分な長さである。一方、円筒状両端のローラ部分12−2は、左右に設けた媒体搬送用補助ローラ13とともに印字媒体Pを挟持し印字媒体Pを搬送するローラとして機能する。左右の媒体搬送用補助ローラ13はそれぞれ左右に設けた支持軸13−1によって支持される。
【0025】
媒体搬送用補助ローラ13の下端13−2は、リボンプロテクタ4の先端4−1より印字媒体Pの厚み方向にギャップB分突出して設けられる。更に、プラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2はプラテン部分12−1に対し半径方向にギャップC分突出している。即ち、ローラ部分12−2はプラテン部分12−1に対しギャップC分半径が大きい。ギャップCは僅か(数mm)でよく、図面では分かりやすくするため誇張して示してある。
【0026】
プラテン駆動ローラ14は通帳伝票プリンタ10に回転可能に固定されており、左右にアーム14−1を有する。プラテン兼用ローラ12はプラテン駆動ローラ14の左右のアーム14−1により支持されている。プラテン兼用ローラ12は、プラテン駆動ローラ14の回転駆動により左右のアーム14−1を介して、印字ヘッド1に向けて印字媒体Pの厚さ方向に上下動する。ここで、プラテン兼用ローラ12が矢印F方向に上昇すると、プラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2は、印字媒体Pを挟んで媒体搬送用補助ローラ13の下端13−2に押圧することになる。
【0027】
図5は第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構の制御部を示すブロック図である。制御部40はキャリッジ用モータ駆動回路41に接続される。キャリッジ用モータ駆動回路41は印字ヘッド1及びリボンプロテクタ4を搭載したキャリッジ43を移動させるためのキャリッジ用パルスモータ42を駆動する。
【0028】
また、制御部40は搬送用モータ駆動回路44に接続される。搬送用モータ駆動回路44は印字媒体Pを搬送する搬送フィードローラ36aを回転させるための搬送用パルスモータ45を駆動する。
【0029】
更に、制御部40はプラテン駆動用モータ駆動回路46に接続される。プラテン駆動用モータ駆動回路46はプラテン兼用ローラ12を上下動するプラテン駆動ローラ14を回転するためのプラテン駆動用パルスモータ47を駆動する。
【0030】
更にまた、制御部40は補助ローラ圧力センサ48に接続される。補助ローラ圧力センサ48は媒体搬送用補助ローラ13がプラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2により押圧されたことを感知する。そして、制御部40は読取部37に接続される。読取部37は搬送路35に取り込んだ印字媒体Pとしての通帳のページマークや印字済行又は伝票の印字行等を読み取る。制御部40はこれら各部の動作を制御する。
【0031】
図6は第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構における印字媒体Pを扱う動作を示すフローチャートである。図7は第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構における薄い印字媒体Pを扱う動作を示す説明図であり、同図(a)は印字媒体Pを吸入した状態を示し、同図(b) は印字媒体Pを印字している状態を示す。なお、同図(a)(b)にはインクリボン3は図示を省略してある。
【0032】
S101:制御部40は、読取部37に対し、搬送路35に取り込んだ印字媒体Pとしての通帳のページマークや印字済行又は伝票の印字行等を読み取るよう指示する。
【0033】
S102:制御部40は、プラテン駆動用モータ駆動回路46に対し、プラテン兼用ローラ12を下降させるためにプラテン駆動用パルスモータ47を駆動してプラテン駆動ローラ14を回転するよう指示する。
【0034】
S103:制御部40は、搬送用モータ駆動回路44に対し、搬送用パルスモータ45を駆動して搬送フィードローラ36aを回転するよう指示する。
【0035】
S104:制御部40は、プラテン駆動用モータ駆動回路46に対し、プラテン兼用ローラ12を上昇させるためにプラテン駆動用パルスモータ47を駆動してプラテン駆動ローラ14を回転するよう指示する。
【0036】
S105:制御部40は、補助ローラ圧力センサ48に対し、媒体搬送用補助ローラ13がプラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2により押圧されたことを感知したかどうかを通知するよう指示する。こうして、図7(a)に示すように印字ヘッド1の印字位置に印字媒体Pを吸入する。
【0037】
図7(a)において、印字媒体Pはプラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2と媒体搬送用補助ローラ13とで挟持される。リボンプロテクタ4の先端4−1より媒体搬送用補助ローラ13の下端13−2の間はギャップBである。また、プラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2とプラテン部分12−1の差がギャップCである。印字媒体Pの印字領域はローラ部分12−2との間にギャップCが形成される。
【0038】
S106:制御部40は、キャリッジ用モータ駆動回路41に対し、キャリッジ用パルスモータ42を駆動してキャリッジ43を往復動させるよう指示する。こうして印字ヘッド1は往復動して印字動作を行う。
【0039】
図7(b)において、 印字媒体Pを印字しているとき、印字ヘッド1は印字媒体Pの幅方向である矢印G方向に移動し印字を行う。そのときプラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2と媒体搬送用補助ローラ13とは、印字媒体Pの非印字領域を挟持している。印字媒体Pの印字領域は印字ヘッド1によって押され、印字媒体Pは撓むことになる。その結果、リボンプロテクタ4の先端4−1と印字媒体Pの上面との間は、ギャップB+ギャップCとなる。ギャップB+ギャップC=印字ギャップAであり、最適な印字ギャップAとなるように、ギャップB及びギャップCを設定する。なお、印字媒体Pは厚さX1で示してある。
【0040】
図8は第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構における厚い印字媒体Pを扱う動作を示す説明図であり、同図(a)は印字媒体Pを吸入した状態を示し、同図(b) は印字媒体Pを印字している状態を示す。印字媒体Pは厚さX2(X2>X1)で示してある。同図(a)において、前述と同様に、印字媒体Pはプラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2と媒体搬送用補助ローラ13とで挟持されて吸入される。リボンプロテクタ4の先端4−1より媒体搬送用補助ローラ13の下端13−2の間はギャップBである。また、前述と同様に、プラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2とプラテン部分12−1の差がギャップCである。印字媒体Pの印字領域はローラ部分12−2との間にギャップCが形成される。
【0041】
同図(b)において、前述と同様に、印字媒体Pを印字しているとき、印字ヘッド1は印字媒体Pの幅方向である矢印G方向に移動し印字を行う。そのときプラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2と媒体搬送用補助ローラ13とは、印字媒体Pの非印字領域を挟持している。印字媒体Pの印字領域は印字ヘッド1によって押され、印字媒体Pは撓むことになる。その結果、前述と同様に、リボンプロテクタ4の先端4−1と印字媒体Pの上面との間は、ギャップB+ギャップCとなる。ギャップB+ギャップC=印字ギャップAであり、最適な印字ギャップAとなるように、ギャップB及びギャップCを設定する。厚さX2の厚い印字媒体Pであっても、同様に、印字ギャップAを設定することができる。
【0042】
図9は第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構の動作を示す説明図である。同図は、図1(b)のY方向から見た簡略図である。同図(a)は印字媒体Pの厚さをほぼ0に想定した場合を示し、同図(b)は厚さX2の厚い印字媒体Pを想定した場合を示す。
【0043】
同図(a)において、プラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2と媒体搬送用補助ローラ13とが印字媒体Pの非印字領域を挟持している。リボンプロテクタ4の先端4−1より媒体搬送用補助ローラ13の下端13−2の間がギャップBである。プラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2とプラテン部分12−1の差がギャップCである。ギャップB+ギャップC=印字ギャップAである。
【0044】
同図(b)において、プラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2と媒体搬送用補助ローラ13とが印字媒体Pの非印字領域を挟持している。リボンプロテクタ4の先端4−1より媒体搬送用補助ローラ13の下端13−2の間がギャップBである。プラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2とプラテン部分12−1の差がギャップCである。ギャップB+ギャップC=印字ギャップAである。厚さX2の厚い印字媒体Pであっても、同様に、印字ギャップAを設定することができる。
【0045】
(変形例)
第1の実施の形態で説明したプラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2はプラテン部分12−1に対し半径方向にギャップC分突出していることを説明した。しかし、これに限ることはなく、以下に説明するように、ギャップCが0である場合でもよい。
【0046】
図10は第1の実施の形態に関する印字ギャップ調整機構のプラテン兼用ローラ12の変形例を示す斜視図である。第1の実施の形態と同様に、プラテン兼用ローラ12は円筒状に形成され、円筒状中央に設けられたプラテン部分12−1と、円筒状両端に設けられたローラ部分12−2からなる。円筒状中央のプラテン部分12−1は、印字ヘッド1に対向するプラテンとして機能する。従って、プラテン部分12−1の長さは、印字媒体Pの印字幅をカバーするのに十分な長さである。一方、円筒状両端のローラ部分12−2は、媒体搬送用補助ローラ13とともに印字媒体Pを挟持し印字媒体Pを搬送するローラとして機能する。媒体搬送用補助ローラ13は支持軸13−1によって支持される。
【0047】
媒体搬送用補助ローラ13の下端13−2は、第1の実施の形態と同様に、リボンプロテクタ4の先端4−1より印字媒体Pの厚み方向にギャップB分突出して設けられる。また、プラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2はプラテン部分12−1と同じ半径である。即ちギャップCは0である。更に、第1の実施の形態と同様に、プラテン兼用ローラ12はプラテン駆動ローラ14の左右のアーム14−1により支持されている。プラテン兼用ローラ12は、プラテン駆動ローラ14の回転駆動により左右のアーム14−1を介して、印字ヘッド1に向けて上下動する。ここで、プラテン兼用ローラ12が上昇すると、プラテン兼用ローラ12のローラ部分12−2は、印字媒体Pを挟んで媒体搬送用補助ローラ13の下端13−2に押圧することになる。
【0048】
第1の実施の形態におけるギャップBについて、リボンプロテクタ4の先端4−1より印字媒体Pの厚み方向に突出して媒体搬送用補助ローラ13の下端13−2までとして説明したが、これに限らない。即ち、印字ヘッド1の下端より、印字媒体Pの厚み方向に突出して媒体搬送用補助ローラ13の下端13−2までとしても同様である。
【0049】
また、第1の実施の形態における印字ヘッド1について、ワイヤドットヘッドを例に説明したがこれに限らない。最適な印字品質とするために印字ヘッド1と印字媒体Pとの間に所定の印字ギャップAを形成する印字ヘッドであれば本発明が適用される。
【0050】
また、媒体搬送用補助ローラ13がプラテン兼用ローラ12により押圧されたことを感知するのに、補助ローラ圧力センサ48を使用することを説明したが、これに限らない。即ち、プラテン兼用ローラ12を上昇させるのにプラテン駆動用パルスモータ47を駆動してプラテン駆動ローラ14を回転させるが、プラテン兼用ローラ12が媒体搬送用補助ローラ13に押圧されることにより、プラテン駆動用パルスモータ47に掛かる負荷を感知することにしてもよい。
【0051】
また、プラテン兼用ローラ12を上下動するのに、プラテン駆動ローラ14の回転駆動により左右のアーム14−1を介して、行うことを説明したがこれに限らない。ラックピニオン機構を利用しるものでもよい。即ち、プラテン駆動用パルスモータ47にピニオンを結合し、ラックにプラテン兼用ローラ12を結合することにより、プラテン駆動用パルスモータ47の回転をプラテン兼用ローラ12の上下動に変換することができる。
【0052】
以上説明したように第1の実施の形態は、印字ギャップ調整機構においてプラテン兼用ローラ12の上昇時に、図11に示すような、印字媒体Pをリボンプロテクタ54及び印字ヘッド51に押し付ける構造を有しない。印字ヘッド1から印字媒体Pの厚み方向にギャップB分突出する補助ローラ13を設けたので、プラテン兼用ローラ12を上昇させギャップCを有するローラ部分12−2を補助ローラ13に押し付ければ、印字ギャップ(B+C=)Aを確保することができる。その際、印字媒体Pが複写式である場合、印字媒体Pの複写紙に塗布された薬品が反応して、印字媒体Pに印字文字と異なる圧痕が発生することを防ぐことができる。従って、印字品位を低下させることのない媒体印字装置を提供することが可能となる。なお、ローラ部分12−2を補助ローラ13に押し付ける際、印字媒体Pを介して押し付けるが、印字媒体Pの非印字領域を押し付けるので圧痕発生のおそれは少ない。また、ローラ部分12−2及び補助ローラ13はゴム等の弾性部材で形成すれば、押し付けによる圧痕の発生は少ない。
【符号の説明】
【0053】
1 印字ヘッド
3 インクリボン
4 リボンプロテクタ
4−1 リボンプロテクタの先端
12 プラテン兼用ローラ
12−1 プラテン兼用ローラのプラテン部分
12−2 プラテン兼用ローラのローラ部分
13 媒体搬送用補助ローラ
13−2 媒体搬送用補助ローラの下端
14 プラテン駆動ローラ
36a 搬送フィードローラ
36b 搬送プレッシャローラ
P 印字媒体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに対向して配置され、前記印字媒体の厚み方向に移動可能に設けられるプラテンを有し、前記印字ヘッドと前記印字媒体との間に所定の印字ギャップを形成する印字ギャップ調整機構を備えた媒体印字装置において、
前記印字ヘッドより前記印字媒体の厚み方向に第1のギャップ分突出する補助ローラが設けられ、
更に、前記プラテンは円筒状に形成され、円筒状中央のプラテン部分と、円筒状両端のローラ部分とからなり、前記ローラ部分は前記プラテン部分に対し半径方向に第2のギャップ分突出しており、
前記ローラ部分と前記補助ローラとで前記印字媒体を挟持することにより、前記第1のギャップと前記第2のギャップを合わせた分の前記印字ギャップが形成されることを特徴とする媒体印字装置。
【請求項2】
印字媒体に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに対向して配置され、前記印字媒体の厚み方向に移動可能に設けられるプラテンを有し、前記印字ヘッドと前記印字媒体との間に所定の印字ギャップを形成する印字ギャップ調整機構を備えた媒体印字装置において、
前記印字ヘッドより前記印字媒体の厚み方向に第1のギャップ分突出する補助ローラが設けられ、
更に、前記プラテンは円筒状に形成され、円筒状中央のプラテン部分と、円筒状両端のローラ部分とからなり、前記ローラ部分は前記プラテン部分に対し半径方向に第2のギャップ分突出しており、
更に、前記プラテンを前記印字ヘッドに対し接近移動させ、前記ローラ部分と前記補助ローラとで前記印字媒体を挟持させることにより、前記第1のギャップと前記第2のギャップを合わせた分の前記印字ギャップを形成するよう制御する制御部を有することを特徴とする媒体印字装置。
【請求項3】
前記ローラ部分と前記補助ローラとで前記印字媒体を挟持させることにより、前記補助ローラに所定の圧力が生じることを検知する圧力センサを設けたことを特徴とする請求項2記載の媒体印字装置。
【請求項4】
前記ローラ部分と前記補助ローラとで前記印字媒体の非印字領域を挟持するものであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一記載の媒体印字装置。
【請求項5】
前記第2のギャップは0であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一記載の媒体印字装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−39722(P2013−39722A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177875(P2011−177875)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】