説明

媒体収容装置、および記録装置

【課題】送り出しの途中で詰まった状態となった被搬送媒体を装置構成の複雑化を招くことなく装置外へ容易に取り出すことが可能な媒体収容装置を提供することを主な目的とする。
【解決手段】装置ケース14に形成された開口部49の内奥に設けられ、搬送される用紙Pを収容した給紙カセット21が開口部49を介して挿抜される収容空間46と、開口部49とは別に増設ユニット30のユニットケース38に形成された開口部39の内奥で収容空間46と上下方向で隣接する位置に設けられ、搬送される用紙Pを収容した給紙カセット31が開口部39を介して挿抜される収容空間36と、収容空間46と収容空間36とを連通し、収容空間36から開口部49に向けた用紙Pの通過を許容する開口孔37と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体収容装置、および媒体収容装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、装置内に設けられた搬送経路に沿って搬送される用紙などの媒体に記録部において液体を噴射して文字や図形を含む画像を記録する記録装置が実用化されている。この種の記録装置には、搬送される媒体を収容容器に収容し、媒体を搬送経路に送り出すことによって、媒体を記録部へ供給するための媒体収容装置が設けられている。すなわち、媒体収容装置は、搬送される媒体としての用紙が積層されて収容された収容容器としての給紙カセットを着脱可能に備えている。そして、収容された用紙を給紙ローラーなどの送り出し機構によって一枚ずつ搬送経路に送り出すようになっている。
【0003】
このような媒体収容装置では、用紙が給紙カセットから送り出される途中で搬送経路において詰まった状態(「ジャム状態」とも呼ぶ)になって、用紙を記録部へ供給することができなくなってしまう場合がある。このような場合、作業者は、給紙カセットを媒体収容装置から抜き出し、この抜き出しによって形成される媒体収容装置の開口部から装置内の空間に手を挿入して、搬送経路への送り出し途中において詰まった用紙を掴んで引き抜くことによって、用紙を装置外に取り出すことが行われる。
【0004】
このため、ジャム状態になった用紙が、媒体収容装置内の空間において開口部から離れた内奥部に位置する場合、作業者は用紙を取り出すために開口部から空間の内奥部まで手を差し込む必要があり、作業者には大きな負担となっている。また、給紙カセットの抜き出しによって形成される媒体収容装置の開口部が狭く、そのような狭い開口部から作業者が空間の内奥部まで手を差し込むことができないときは、例えば、装置内の空間の奥に詰まった用紙を除去可能とするための新たな開口部を装置本体に別途形成する必要があり、このため、媒体収容装置が複雑化してしまう。
【0005】
あるいは、媒体収容装置の装置本体と別体で構成され、装置本体に装着される所謂増設ユニットに給紙カセットが着脱可能とされた媒体収容装置もある。このような媒体収容装置では、給紙カセットから送り出されずにジャム状態になった用紙を取り出すために、装置本体に装着された状態にある増設ユニットを装置本体から離脱させる必要があり、作業者には大きな負担となっている。
【0006】
そこで、媒体収容装置において詰まった媒体を容易に取り出すための構成が特許文献1に提案されている。すなわち、特許文献1には、装置本体の底面に開口が形成されており、装置本体を立てることにより搬送経路でジャム状態になっている媒体(記録紙)を、装置本体の底面に形成された開口から引き出して取り出せるようにした構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−89631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載された技術では、開口から媒体を引き出す際、開口を露出させるために作業者は底面が見えるように装置本体を立てる(回転させる)必要がある。このため、例えば画像読取装置が一体となった複合機などの記録装置では、装置の重量が重いため装置本体を立てることが容易でない。また、底面に別途開口部を設ける必要もあるため、装置の構成が少なからず複雑化する。このため、媒体を取り出すための開口部を装置において別途設けることなく、詰まった媒体を容易に除去することができる構成が望まれていた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、送り出しの途中で詰まった状態となった媒体を装置構成の複雑化を招くことなく装置外へ容易に取り出すことが可能な媒体収容装置を提供することを主な目的とする。また、このような媒体収容装置を備えた記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の媒体収容装置は、装置本体の筐体に形成された第1開口部の内奥に設けられ、搬送される媒体を収容した第1収容容器が前記第1開口部を介して挿抜される、前記装置本体に設けられる第1収容空室と、前記第1開口部とは別に前記筐体に形成された第2開口部の内奥で前記第1収容室と上下方向で隣接する位置に設けられ、搬送される前記媒体を収容した第2収容容器が前記第2開口部を介して挿抜される、前記装置本体に設けられる第2収容室と、前記第1収容室と前記第2収容室とを連通し、前記第2収容室から前記第1開口部に向けた前記媒体の通過を許容する連通部と、を備えた。
【0011】
上記構成によれば、例えば、第2収容室に挿入される第2収容容器において媒体が搬送されず詰まった状態になった場合には、第1収容室に挿入されている第1収容容器を抜き出す。こうすることにより、第2収容容器から第1開口部に向けた媒体の通過を許容する連通部を、第1開口部から第1収容室を介して作業者は視認可能となる。そして、第1開口部から手を差し入れることにより、作業者は、連通部を介して第2収容容器内において詰まった状態にある媒体を筐体外へ取り出すことができるようになる。したがって、例えば装置本体内に設けられた搬送経路の途中で詰まり、第2収容容器内で搬送が停止した状態となった媒体を、装置構成の複雑化を招くことなく筐体外つまり装置外へ容易に取り出すことが可能となる。
【0012】
本発明の媒体収容装置において、前記連通部は、前記媒体の搬送方向と直交する幅方向における開口幅寸法が前記媒体の幅方向寸法よりも大きい。
上記構成によれば、媒体を搬送方向と反対方向に引き抜いて取り出す際に、連通部と媒体とが幅方向において係合することが抑制される。従って、円滑に媒体を装置外へ取り出すことができる。
【0013】
本発明の媒体収容装置において、前記第1収容室は前記第2収容室の上側に設けられ、前記第1収容室の前記第1開口部側における上下方向の室寸法は、前記第2収容室の前記第2開口部側における上下方向の室寸法よりも大きい。
【0014】
上記構成によれば、第2収容容器の上側に上下方向が広い第1収容室が形成されるので、第2収容容器において送り出せない状態になった媒体を、作業者は広い空間領域から見下ろすように視認することができる。この結果、作業者は、楽な姿勢で作業できるとともに、媒体を取り除く作業を容易に行うことができる。
【0015】
本発明の媒体収容装置において、前記第2開口部が形成される筐体は、前記第2収容室が一体となって前記第1開口部が形成される筐体と分離可能に構成される。
上記構成によれば、例えば第2収容容器を備えた装置本体から分離可能な増設ユニットを、装置本体から離脱させることなく装着された状態を維持したままで、第2収容容器に収容された媒体を、第1収容空間を介して第1開口部から装置外へ容易に取り出すことができる。
【0016】
また、上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、上記構成の媒体収容装置と、前記媒体収容装置より搬送される媒体に対して記録を施す記録部と、を備える。
上記構成によれば、第2収容容器に収容された媒体を、第1収容容器を装置から抜き出すことによって形成される第1開口部を通して装置外へ容易に取り出すことができる記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態であるプリンターを前方から見た正面図。
【図2】実施形態のプリンターを左右方向と交差する面で切断した構造断面図。
【図3】プリンターから給紙カセットを抜き出した状態を示すプリンターの部分外観斜視図。
【図4】(a)(b)は、増設ユニットの筐体に設けられた開口孔を示す平面図。
【図5】給紙カセットを備えた増設ユニットが装置本体に装着されたプリンターを、左右方向と交差する面で切断した状態で示した部分断面図。
【図6】給紙カセットをそれぞれ備えた各増設ユニットが装置本体に積層されて装着されたプリンターを、左右方向と交差する面で切断した状態で示した部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を、画像を読み取る画像読取装置と、液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置とが一体化した複合機であって、媒体に液体を噴射して画像を記録する記録装置において具体化した実施形態について、図を参照して説明する。なお、以降の説明を容易にするため、図1に示したように、鉛直方向における重力方向を下方向、反重力方向を上方向とする。また、これと交差する方向であって、媒体の一種である用紙Pが画像の記録時において搬送される搬送方向を前方向、搬送方向と反対方向を後方向とする。さらに鉛直方向および搬送方向の双方と交差する方向であって液体噴射ヘッド25が往復移動する方向すなわち走査方向を、前方から見て、それぞれ右方向、左方向と呼ぶことにする。
【0019】
図1に示すように、記録装置11は、装置本体12と、記録装置11において装置本体12に対する増設ビンとして用意された増設ユニット30と、によって構成されている。そして増設ユニット30は、本実施形態では装置本体12の下側に積層されるとともに、装置本体12に対して着脱可能に構成されている。
【0020】
装置本体12には、液体噴射装置の一例としてのインクジェット式プリンター(単に「プリンター」とも呼ぶ)として機能する記録部20と、装置本体12の上部に配設され画像読取装置として機能する画像読取部13と、が備えられている。そして、複数の部材で構成された筐体としての装置ケース14によってこれらが内装されて一体に組み合わされている。
【0021】
この装置ケース14において、その前面側の上部側には、記録部20及び画像読取部13を操作するための操作パネル15が配置されている。操作パネル15はメニュー画面等を表示するための表示部16(例えば液晶ディスプレイ)と、表示部16の左右両側に設けられた操作部17とを備えている。
【0022】
また、装置ケース14において、操作パネル15の下方には前面カバー18が開閉可能に取り付けられている。なお、前面カバー18には、前面カバー18を開閉するときにユーザーが手をかけるための把持部18aが凹設されている。また、装置ケース14において、前面カバー18の下方には、記録部20から排出される媒体としての用紙Pを、装置本体12外へ排出する排紙口19が開口している。
【0023】
プリンターとして機能する記録部20は、用紙Pに対して液体を噴射して画像を記録するように構成されている。すなわち、装置ケース14内において、主走査方向(本実施形態では左右方向)に沿って延びるガイド軸23が架設されている。また、ガイド軸23には主走査方向に沿って移動可能な状態でキャリッジ24が支持されている。
【0024】
キャリッジ24は、図示しないキャリッジモーターの駆動に伴って、主走査方向に沿って往復移動するようになっている。また、キャリッジ24の下面側には、用紙Pに対して液体の一例としてのインクを噴射して記録(印刷)を施す液体噴射ヘッド25が支持されている。
【0025】
キャリッジ24の主走査方向に沿う移動領域の端部(本実施形態では左側の端部)には、インクを液体噴射ヘッド25に供給するための液体供給機構26が配置されている。液体供給機構26は、インクを収容した複数(本実施形態では4つ)のインクカートリッジ27を着脱可能に装着するためのカートリッジホルダ28と、カートリッジホルダ28側からキャリッジ24側に向けてインクを供給するためのインク供給チューブ29と、を備えている。そして、装置ケース14の前面カバー18を開いた状態でカートリッジホルダ28に対してインクカートリッジ27を着脱するようになっている。
【0026】
さて、記録装置11では、このように構成された記録部20に対して、記録が施される媒体が供給されるようになっている。例えば、装置本体12において、装置ケース14の後側に、媒体となる用紙P(P1)を一枚ずつ給紙する図示しない手差し挿入部が設けられている。
【0027】
さらに、本実施形態の記録装置11では、用紙Pを積層収容した収容容器を備え、その収容容器から用紙Pを一枚ずつ送り出すように給紙する給紙装置KKSが、記録部20へ搬送される用紙Pを収容する媒体収容装置として記録装置11の下部に備えられている。
【0028】
すなわち、装置ケース14において、排紙口19の下方には、第1開口部としての開口部49(図2参照)が設けられ、用紙P(P2)を積層状態で複数収容可能な第1収容容器としての給紙カセット21が、開口部49から装置本体12に挿入されて装着されている。従って、装置ケース14は給紙装置KKSの筐体ともなっている。
【0029】
なお、給紙カセット21は、開口部49から装置本体12外へ抜き出し可能に設けられ、その前面側に給紙カセット21を抜き出す際に作業者が手をかけるための庇状の把持部21aが形成されることによって、装置本体12から前方への抜き出しが容易になっている。
【0030】
さらに、装置本体12の下側に装着された増設ユニット30に、増設ユニット30に対して挿抜可能であって、用紙P(P3)を積層状態で複数収容可能な第2収容容器としての給紙カセット31が設けられている。すなわち、増設ユニット30は、上側のカバー部材32と下側の箱状部材33とによって構成されたユニットケース38を、増設ユニット30の筐体として有している。なお本実施形態では、ユニットケース38は略直方体形状の外形形状を有し、その前面側に第2開口部としての開口部39(図2参照)が設けられている。この開口部39を介して、給紙カセット31が増設ユニット30に対して挿抜できるようになっている。なお、給紙カセット31は、その前面側に給紙カセット31を増設ユニット30から抜き出す際にユーザーが手をかけるための庇状の把持部31aが形成され、増設ユニット30から前方への抜き出しが容易になっている。
【0031】
また、増設ユニット30には上方に突出する連結凸部35が設けられる一方、装置本体12の下面には連結凸部35と対応する連結凹部35aが設けられている。そして、増設ユニット30は、装置本体12の連結凹部35aに連結凸部35を挿入させることにより装置本体12と一体化するようになっている。また、装置本体12に増設ユニット30が一体化した状態において、給紙カセット21と給紙カセット31は、上下方向において隣接した状態になるとともに、給紙カセット21が上側に位置し、給紙カセット31が下側に位置する積層状態になっている。なお、本実施形態の給紙装置KKSは、装置ケース14とユニットケース38とが、それぞれの外周端部において上下方向に重なることで、その形状も外観的に一体化するように造形されている。
【0032】
従って、本実施形態では、記録装置11において、装置本体12における下部側と、増設ユニット30とが、給紙装置KKSとして構成されている。そして、装置ケース14に設けられた開口部49を介して装置本体12に対して挿抜される給紙カセット21と、ユニットケース38に設けられた開口部39を介して増設ユニット30に対して挿抜される給紙カセット31とが、搬送される用紙Pを収容する収容容器として備えられている。
【0033】
次に、給紙装置KKSの構成について、図2を参照して説明する。
本実施形態の給紙装置KKSは、記録装置11が有する搬送経路40に用紙Pを送り出す。搬送経路40は、図2に示すように、搬送経路形成部材43などによって装置ケース14内に用紙Pを記録部20へ搬送するように形成されている。この搬送経路40には、用紙Pを液体噴射ヘッド25側へ給送するための搬送ローラー41が備えられている。また、搬送経路40には、用紙Pを液体噴射ヘッド25側から排出するための排紙ローラー42も備えられている。
【0034】
また、搬送経路40はここでは反転搬送路になっている。つまり、給紙カセット21から送り出された用紙P2および給紙カセット31から送り出された用紙P3は、一旦、各給紙カセット21,31の後方に設けられた案内壁14a,14bに沿って搬送された後、湾曲形状をなす搬送経路40によって装置本体12の後方において反転される。その後、記録部20に向けて前方へ搬送されるようになっている。
【0035】
従って、給紙装置KKSでは、記録装置11の後端部つまり開口部49,39の後側の内奥部において、給紙カセット21および給紙カセット31から搬送経路40に用紙Pを送り出すように構成されている。すなわち、給紙装置KKSは、給紙カセット21に収容され、載置面21bに積層して載置された用紙P(P2)を、給紙ローラー44によって一枚ずつ搬送経路40に送り出すようになっている。また、給紙カセット31に収容され載置面31bに積層して載置された用紙P(P3)を、給紙ローラー34によって一枚ずつ搬送経路40に送り出すようになっている。
【0036】
なお、給紙ローラー44は搬送経路形成部材43に揺動自在に軸支され、積層方向の最上位の用紙P2を搬送経路40に対して送り出すようになっている。また、給紙ローラー34はカバー部材32に揺動自在に軸支され、積層方向の最上位の用紙P3を搬送経路40に対して送り出すようになっている。また、本実施形態の記録装置11では、搬送経路40に対して、装置本体12の後側の手差し挿入部から供給される用紙P(P1)を給紙ローラー45によって送り出すようにもなっている。
【0037】
さて、このように構成された本実施形態の給紙装置KKSにおいて、増設ユニット30に設けられた給紙カセット31から搬送経路40に送り出される用紙P3が、記録部20に供給されないで搬送経路40において詰まったジャム状態になる場合がある。そして、ジャム状態となった用紙P3は給紙カセット31内に一部を残して搬送が停止した状態になっている。本実施形態の給紙装置KKSでは、増設ユニット30を装置本体12から離脱せず装着したままで、ジャム状態になった用紙P3を装置本体12外へ容易に取り出すことができるようになっている。この構成について、図2および図3を参照して説明する。
【0038】
図2および図3に示すように、装置本体12には、開口部49の後側となる内奥に、開口部49を介して給紙カセット21を挿抜可能とする第1収容室としての収容空間46が形成されている。一方、装置本体12の下側に装着された増設ユニット30には、開口部39の後側となる内奥に、開口部39を介して給紙カセット31を挿抜可能とする第2収容室としての収容空間36が形成されている。従って、収容空間46と収容空間36とは上下方向で隣接する位置に設けられる。また、給紙カセット31の載置面31bと反対側に、増設ユニット30のカバー部材32が配設され、給紙カセット31を覆うことによって、互いに隣接する収容空間46と収容空間36とを区画している。従って、給紙装置KKSでは、開口部39が形成されるユニットケース38は、収容空間36が一体となって開口部49が形成される装置ケース14と分離可能に構成される。
【0039】
本実施形態では、このカバー部材32に、収容空間46と収容空間36とを連通する連通部となる開口孔37が形成されている。すなわち、開口孔37は、載置面31bと反対側の上側に形成され、装置本体12に挿入された給紙カセット21が、装置本体12内に占める収容空間46と、給紙カセット31が増設ユニット30内に占める収容空間36と、を連通させるようになっている。この結果、装置本体12の下側に積層された増設ユニット30において、その上側のカバー部材32に開口孔37を設けたことによって、図2において二点鎖線の矢印で示したように、開口部49から収容空間46および開口孔37を介して収容空間36に通ずる一連の空間領域が形成される。
【0040】
次に、このように構成された給紙装置KKSにおいて、給紙カセット31に収容された用紙P3がジャム状態になった際の用紙P3の取り出し処理(作用)について説明する。なお、本実施形態では、給紙カセット31を増設ユニット30から抜き出すことなく、ジャム状態になった用紙P3を装置本体12外へ取り出すものとして説明する。
【0041】
図3に示すように、まず、作業者は、給紙装置KKS(記録装置11)の装置本体12から給紙カセット21を抜き出す。すると、給紙カセット21が抜き出されることによって装置本体12の前面に開口部49が露出するとともに、この開口部49と連続してその内奥となる後方側に、装置本体12において給紙カセット21が収容されていた収容空間46が露出する。
【0042】
このとき露出する収容空間46は、少なくとも作業者の手が開口孔37まで挿入可能な空間となっている。換言すれば、給紙カセット21が抜き出された状態で少なくとも作業者の手が開口孔37まで挿入できる空間領域が装置本体12内に形成されるように、収容空間46は、その上下左右および前後方向の空間寸法つまり第1収容室の室寸法が定められている。
【0043】
次に作業者は、開口部49から収容空間46および開口孔37に通ずる一連の空間領域に手を挿入する。そして、挿入した手によって、収容空間36に挿入された給紙カセット31内においてジャム状態となった用紙P3を掴んで、給紙カセット31から開口孔37および収容空間46を経由して開口部49から装置外に取り出す。
【0044】
なお、本実施形態では、開口孔37は、図4(a)に示すように、左右方向の開口幅37wが、給紙カセット31に収容され載置状態にある用紙P3の左右方向の用紙幅Pwよりも大きい寸法で形成されている。あるいは、図4(b)に示すように、開口孔37は、図4(a)に示した開口孔37において前側に形成されたカバー部材32の部材部分が取り除かれ、前端部において開口するように開口幅37wの開口部が延設された所謂切り欠き状の開口孔37aのように形成されていてもよい。
【0045】
また、開口孔37(開口孔37a)の開口後端部37eの位置は、カバー部材32において給紙ローラー34を揺動可能に軸支するために要する部材部分を残して、開口孔37(開口孔37a)の開口領域面積が最大になる位置となっている。
【0046】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)収容空間36に挿入される給紙カセット31において用紙P3が搬送されず詰まった状態になった場合には、収容空間46に挿入されている給紙カセット21を抜き出す。こうすることにより、給紙カセット31から開口部49に向けた用紙P3の通過を許容する開口孔37を、開口部49から収容空間46を介して作業者は視認可能となる。そして、開口部49から手を差し入れることにより、作業者は、開口孔37を介して給紙カセット31内において詰まった状態にある用紙P3を筐体外へ取り出すことができるようになる。したがって、例えば装置本体12内に設けられた搬送経路40の途中で詰まり、給紙カセット31内で搬送が停止した状態となった用紙P3を、装置構成の複雑化を招くことなく筐体外つまり装置外へ容易に取り出すことが可能となる。
【0047】
(2)用紙P3を搬送方向と反対方向に引き抜いて取り出す際に、開口孔37と用紙P3とが幅方向において係合することが抑制される。従って、円滑に用紙Pを装置外へ取り出すことができる。
【0048】
(3)給紙カセット31を備えた装置本体12と分離可能な増設ユニット30を装置本体12から離脱させることなく装着された状態を維持したままで、第2給紙カセットに収容された用紙P3を、収容空間46を介して開口部49から装置外へ容易に取り出すことができる。
【0049】
(4)給紙カセット31に収容された用紙P3を、給紙カセット21を装置本体12から抜き出すことによって形成される開口部49を通して装置外へ容易に取り出すことができる記録装置11を提供することができる。
【0050】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、給紙カセット21が装置本体12において占有する収容空間46の上下方向の空間寸法は、給紙カセット31が増設ユニット30において占有する収容空間36の上下方向の空間寸法つまり第2収容室の室寸法よりも大きな寸法であってもよい。
【0051】
すなわち、図5に示すように、開口部49から挿入される給紙カセット21に対して装置本体12内に設けられた収容空間46の上下方向の空間寸法をD2とする。この空間寸法D2を、開口部39から挿入される給紙カセット31に対して増設ユニット30内に設けられた収容空間36の上下方向の空間寸法D3よりも大きい寸法とするのである。
【0052】
例えば、記録装置11を小型化するため、記録装置11に備えられた給紙装置KKSにおいて、給紙カセット21と給紙カセット31とを配設するための上下方向における寸法D1が制限されている場合がある。このような場合、上段側の給紙カセット21が有する収容空間46の上下方向の空間寸法を、下段側の給紙カセット31が占有する収容空間36の上下方向の空間寸法に対して大きくすることが好ましい。なお、収容空間の上下方向に空間寸法が大きくなるのに伴って、その収容空間に対応する開口部の上下方向の開口寸法も大きくなることは勿論である。
【0053】
本変形例によれば、上記実施形態における効果(1)〜(4)に加えて、次の効果を奏する。
(5)給紙カセット31の上側に上下方向が広い収容空間46が形成されるので、給紙カセット31において送り出せない状態になった用紙P3を、作業者は広い空間領域から見下ろすように視認することができる。この結果、作業者は、楽な姿勢で作業できるとともに、用紙P3を取り除く作業を容易に行うことができる。
【0054】
・上記実施形態において、給紙装置KKSは、装置本体12に対して増設ユニットが複数装着された構成としてもよい。例えば、図6に示すように、装置本体12の下側に装着した増設ユニット30に加えて、更にその下側に給紙カセット51を備えた増設ユニット50が積層されて装着された給紙装置KKSとしてもよい。このように給紙カセット51が更に下方向において積層された場合においても、上記実施形態と同様に、給紙カセット51においてジャム状態となった用紙Pを、装置外に取り出すことが可能である。
【0055】
すなわち、図6に示すように、増設ユニット50には、筐体の前面側に設けられた開口部59から後側の内奥部において、給紙カセットが挿抜可能な収容空間56が形成されている。従って、収容空間56は、給紙カセット31の収容空間36に対して隣接する下側の位置に形成される。
【0056】
そして、増設ユニット30と同様に、増設ユニット50は、給紙カセット51に設けられた載置面51bに載置された用紙P(不図示)に対して載置面51bと反対側に筐体を構成するカバー部材52が配設されている。カバー部材52は、給紙カセット51を覆うことによって給紙カセット51の収容空間56と、増設ユニット30内において占有する給紙カセット31の収容空間36と、を区画する。さらに、このカバー部材52には、用紙Pを搬送経路に送り出すために後方に備えられた給紙ローラー54を揺動自在に軸支する部材部分から前方に開口するように開口孔57が形成されている。開口孔57は、給紙カセット31の収容空間36と給紙カセット51の収容空間56とを連通する連通部となっている。なお、増設ユニット50には、給紙カセット51を増設ユニット50内に挿入する際の開口部59が設けられている。
【0057】
このように、増設ユニット30の下側に積層された増設ユニット50において、その上側のカバー部材52に開口孔57を設けたことによって、図6において二点鎖線の矢印で示したように、開口部39から収容空間36および開口孔57を介して収容空間56に通ずる一連の空間領域が形成される。
【0058】
従って、給紙カセット51に収容された用紙Pを、開口孔57および収容空間36を介して、開口部39から給紙装置KKS(増設ユニット30)の装置外(筐体外)へ容易に取り出すことができる。この結果、増設ユニット30が装着された状態にある装置本体12が重い場合において増設ユニット50を離脱させるために上方に持ち上げる作業が不要であり、給紙カセット51においてジャム状態にある用紙Pを取り出す際の作業負荷が軽減する。なお、本変形例の場合は、給紙カセット31が上記実施形態における第1収容容器に相当し、給紙カセット51が上記実施形態における第2収容容器に相当する。
【0059】
・上記実施形態における給紙装置KKSにおいて、給紙カセット31は別体の増設ユニット30ではなく、装置本体12において既に備えられている給紙カセットであってもよい。すなわち、装置本体12において、給紙カセット21の下段に給紙カセット31が予め配設されていることとしてもよい。このような給紙装置KKSにおいても、上記実施形態と同様に、給紙カセット31においてジャム状態になった用紙Pを、上段の給紙カセット21を引き抜いて形成される一連の空間領域を介して、装置外に取り出すことができる。
【0060】
・上記実施形態において、上側の給紙カセット21を装置本体12から抜き出すと同時に、給紙カセット31も増設ユニット30から抜き出して、収容空間36内にジャム状態になっている用紙P3が残留した状態としてもよい。こうすれば、作業者は、開口部49からジャム状態になった用紙P3を視認しながら、開口部39から手を挿入して用紙P3を容易に掴んで開口部39から取り出すことが可能である。
【0061】
・上記実施形態において、第1収容容器が給紙カセット31であって、第2収容容器が給紙カセット21であってもよい。すなわち、上側の給紙カセット21において用紙P2がジャム状態になった場合は、下側の給紙カセット31を増設ユニット30から抜き出すことによって、給紙カセット21においてジャム状態になった用紙P2を装置外に取り出す。この場合は、給紙カセット31に加えて給紙カセット21も装置本体12から同時に抜き出して、収容空間46内に残留するジャム状態になっている用紙P2を、開口部39側から収容空間36および開口孔37を介して視認できるようにする。
【0062】
こうすることで、作業者は、開口部39からジャム状態になった用紙P2を取り出すことができる。あるいは、作業者は、開口部39からジャム状態になった用紙P2を視認しながら、開口部49から手を挿入して用紙P2を容易に掴んで開口部49から取り出すことが可能である。
【0063】
・上記実施形態において、給紙装置KKSは、給紙カセット21と給紙カセット31とが必ずしも鉛直方向に積層された状態になっていなくてもよい。例えば水平方向において積層されていてもよい。一例として、用紙Pを立てた状態で搬送経路に送り出すように構成された記録装置においては、用紙Pは水平方向に積層されて収容される。従って、このような場合は水平方向に積層された給紙カセットのうち、開口孔37側に積層された給紙カセット21が上側のカセットに相当する。そして、この上側に相当する給紙カセット21を抜き出すことによって、収容空間36と収容空間46とが開口孔37を介して連通し、収容空間36においてジャム状態になった用紙Pを、給紙カセット31から記録装置外へ容易に取り出すことができる。
【0064】
・上記実施形態において、給紙カセット31に設けられた開口孔37(開口孔37a)の開口幅37wは、必ずしも給紙カセット31に収容され載置状態にある用紙P3の左右方向の用紙幅Pwよりも大きい寸法で形成されていなくてもよい。要は、ジャム状態にある用紙P3が取り出せる幅寸法であればよい。
【0065】
・上記実施形態において、給紙カセット31に設けられた開口孔37は、必ずしも用紙Pに対して載置面31bと反対側に形成されていなくてもよい。例えば、給紙カセット31の載置面31bが鉛直方向に沿う面となっている場合は、上側に積層された給紙カセット21の収容空間46は載置面31bに沿った鉛直方向、すなわち用紙Pの紙面に沿った方向に形成される。従って、収容空間46と連通する開口孔37は、載置面31bの反対側となる紙面と交差する水平方向でなく、用紙Pの紙面に沿った方向つまり鉛直方向側に設けることが好ましい。
【0066】
・上記実施形態において、媒体は用紙Pに限るものでなく、金属板、樹脂板、布などを材料とする板状部材であってもよい。すなわち、搬送可能であって、搬送時に搬送経路において詰まったジャム状態を呈する部材であれば、媒体として採用できる。
【0067】
・上記実施形態において、記録部20は、インクカートリッジ27がキャリッジ24上に搭載されるオンキャリッジタイプであってもよい。あるいは、キャリッジ24が主走査方向に移動するシリアル式のプリンターに限らず、液体噴射ヘッド25を固定したままでも用紙最大幅範囲の印字が可能なラインヘッド式やラテラル式のプリンターであってもよい。
【0068】
・上記実施形態において、記録装置11は画像読取部13を備えない装置であってもよいし、記録部20とともにFAX装置やコピー装置などの機能を備えた複合機であってもよい。
【0069】
・上記実施形態では、記録装置11において記録部20を、液体としてのインクを噴射するインクジェット式のプリンターとして機能する液体噴射装置として具体化したが、記録部20をインク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置として具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置を流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。あるいは、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
11…記録装置、12…装置本体、14…筐体としての装置ケース、20…記録部、21b,31b,51b…載置面、30,50…増設ユニット、36…第2収容室としての収容空間,46…第1収容室としての収容空間,56…収容空間、37,37a,57…連通部としての開口孔、38…筐体としてのユニットケース、39,49,59…開口部、40…搬送経路、D1…寸法、D2,D3…空間寸法、P,P1,P2,P3…媒体としての用紙、KKS…媒体収容装置としての給紙装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の筐体に形成された第1開口部の内奥に設けられ、搬送される媒体を収容した第1収容容器が前記第1開口部を介して挿抜される、前記装置本体に設けられる第1収容室と、
前記第1開口部とは別に前記筐体に形成された第2開口部の内奥で前記第1収容室と上下方向で隣接する位置に設けられ、搬送される前記媒体を収容した第2収容容器が前記第2開口部を介して挿抜される、前記装置本体に設けられる第2収容室と、
前記第1収容室と前記第2収容室とを連通し、前記第2収容室から前記第1開口部に向けた前記媒体の通過を許容する連通部と、
を備えたことを特徴とする媒体収容装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体収容装置において、
前記連通部は、前記媒体の搬送方向と直交する幅方向における開口幅寸法が前記媒体の前記幅方向の寸法よりも大きいことを特徴とする媒体収容装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の媒体収容装置において、
前記第1収容室は前記第2収容室の上側に設けられ、
前記第1収容室の前記第1開口部側における上下方向の室寸法は、前記第2収容室の前記第2開口部側における上下方向の室寸法よりも大きいことを特徴とする媒体収容装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の媒体収容装置において、
前記第2開口部が形成される筐体は、前記第2収容室が一体となって前記第1開口部が形成される筐体と分離可能に構成されることを特徴とする媒体収容装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の媒体収容装置と、
前記媒体収容装置より搬送される媒体に対して記録を施す記録部と、
を備えることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240784(P2012−240784A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112116(P2011−112116)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】