説明

媒体取扱装置、媒体の返却方法

【課題】入金上限値を超えて紙幣が投入された場合に紙幣を返却する媒体取扱装置において、利用者の利便性の向上を目的とする。
【解決手段】投入された紙幣の総枚数と、上限枚数とに基づいて、投入された紙幣の一部のみを返却(受入不可分返却)か、投入された紙幣の全てを返却する(一括返却)か、を判定する。返却判定部17は、判定条件200を参照して、上限枚数に対して投入紙幣の超過枚数が所定の枚数未満の場合には、返却方法を「受入不可分返却」と判定し、上限枚数に対して投入紙幣の超過枚数が所定の枚数以上の場合には、返却方法を「一括返却」と判定する。こうすることにより、利用者は投入紙幣が一括返却されたのか、返却紙幣のみが返却されたのかを、投入紙幣と返却された紙幣の枚数に基づいて容易に判断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体取扱装置に関し、特に、紙幣の受け入れ時に返却処理がなされた場合の誤操作を防止する媒体取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体取扱装置において、取引媒体の取り出し口に利用者が取り忘れることを防止する方法として、取引媒体の返却時に、取引媒体の所在を画面に案内する方法、取り出し口に設けられているランプを点灯する方法、音声案内を行う方法などが知られている。また、例えば、返却された取引媒体を振動させる振動手段を備え、取引媒体が存在する各部の振動手段を駆動して、振動音を発生する媒体取扱装置も知られている(例えば、特許文献1)。また、例えば、取引媒体が取り出し口から受け取られていない状態で利用者が装置から一定以上の距離離れたと判定すると、音声によって取引媒体の取り忘れを報知するメッセージを出力する媒体取扱装置も利用されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−35124号公報
【特許文献2】特開平2006−134071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
媒体取扱装置は、一般的に、入金紙幣の枚数、金額に上限値が設定されているが、利用者は、上限値以上の枚数、金額を紙幣の入出金口に投入した場合、上限を超えたために返却された紙幣のみを持ち帰り、紙幣取扱装置内に残された紙幣を受け取り忘れることがあった。具体的には、例えば、入金紙幣の上限枚数が20枚、上限金額が20万円の両替機に、利用者が1万円紙幣を100枚(100万円)投入すると、上限を超えた80枚が最初に返却されるが、利用者は、返却された80枚の紙幣を、100枚全て返却されたものと勘違いして持ち帰り、紙幣取扱装置内に残存する20万円分の紙幣を取り忘れることがある。一方、入金上限値を超えて紙幣が投入され、投入された全ての紙幣が返却される場合、利用者は、返却された理由がわかりにくいという問題があった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、入金上限値を超えて紙幣が投入された場合に紙幣を返却する媒体取扱装置において、利用者の利便性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
媒体取扱装置であって、媒体を投入するための媒体投入手段と、前記媒体投入手段に投入された媒体である投入媒体に、返却すべき媒体である返却媒体が含まれるかを判断する判断手段と、前記返却媒体が含まれる場合に、前記投入媒体の量に対する前記返却媒体の量、および、予め規定された受入限度量に対する前記投入媒体の超過量の少なくとも一方に基づいて、前記返却媒体のみを返却するか、前記投入媒体の全てを返却するかを判定する返却判定手段と、前記判定結果に基づいて、前記媒体の返却を行う返却処理手段と、
を備える媒体取扱装置。
【0008】
適用例1の媒体取扱装置によれば、投入媒体の量に対する返却媒体の量、および、予め規定された受入限度量に対する前記投入媒体の量の超過分である超過量の少なくとも一方に基づいて、返却媒体のみを返却するか、投入媒体の全てを返却するかを判定する返却判定手段が備えられている。従って、利用者が投入した投入媒体に返却媒体が含まれる場合に、返却媒体のみを返却するか投入媒体の全てを一括返却するかを、投入媒体の量に対する返却媒体の量、および、投入媒体の量に対する受入限度量の少なくとも一方に基づいて選択し、返却処理を行うことができる。よって、利用者は投入媒体が一括返却されたのか、返却媒体のみが返却されたのかを容易に判断でき、利用者の利便性を向上できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1の媒体取扱装置であって、前記投入媒体の量は、前記投入媒体の枚数を含み、前記受入限度量は、前記投入媒体の上限枚数を含み、前記返却判定手段は、前記投入媒体の超過枚数が前記上限枚数に対して所定の枚数未満の場合には前記返却媒体のみを返却し、前記投入媒体の超過枚数が前記上限枚数に対して所定の枚数以上の場合には前記投入媒体の全てを返却すると判定する。適用例2の媒体取扱装置によれば、投入媒体の枚数が上限枚数より所定の枚数未満の場合には返却媒体のみが返却され、投入媒体の枚数が上限枚数以上の場合には投入媒体の全てが返却される。従って、利用者は投入媒体が一括返却されたのか、返却媒体のみが返却されたのかを、投入媒体と返却された媒体の枚数に基づいて容易に判断できる。
【0010】
[適用例3]
適用例2の媒体取扱装置であって、前記所定の枚数は、前記上限枚数の所定の割合である。適用例3の媒体取扱装置によれば、返却媒体の枚数が上限枚数の所定の割合(例えば1割)未満である場合には返却媒体のみが返却され、返却媒体の枚数が上限枚数の所定の割合以上である場合には投入媒体の全てが返却される。返却枚数が上限枚数の所定の割合以上である場合、利用者が上限枚数を誤って認識しており、返却媒体のみを返却した場合に利用者が投入媒体の全てが返却されたと誤判断して、残りの媒体を受け取り忘れてしまう虞がある。よって、上記構成とすることにより、利用者が上限枚数を誤って認識した状態のまま取引が続行され、媒体を受け取り忘れてしまうことを抑制できる。
【0011】
[適用例4]
適用例1の媒体取扱装置であって、前記投入媒体の量は、前記投入媒体の合計金額を含み、前記受入限度量は、前記投入媒体の上限金額を含み、前記返却判定手段は、前記投入媒体の超過金額が前記上限金額に対して所定の金額未満の場合には前記返却媒体のみを返却し、前記投入媒体の超過金額が前記上限金額に対して所定の金額以上の場合には前記投入媒体の全てを返却すると判定する。適用例4の媒体取扱装置によれば、投入媒体の金額が上限枚数を所定の金額超えない場合には返却媒体のみが返却され、投入媒体の金額が上限金額を超える場合には投入媒体の全てが返却される。従って、利用者は投入媒体が一括返却されたのか、返却媒体のみが返却されたのかを、投入媒体と返却された媒体の金額に基づいて容易に判断できる。
【0012】
[適用例5]
適用例4の媒体取扱装置であって、前記所定の金額は、前記上限金額の所定の割合(例えば1割)である。適用例5の媒体取扱装置によれば、返却媒体の金額が上限金額を所定の割合超えない場合には返却媒体のみが返却され、返却媒体の金額が上限金額を所定の割合以上超える場合には投入媒体の全てが返却される。返却媒体の金額が上限金額を所定の割合以上超える場合、利用者が上限金額を誤って認識しており、返却媒体のみを返却した場合に利用者が投入媒体の全てが返却されたと誤判断して、残りの媒体を受け取り忘れてしまう虞がある。よって、上記構成とすることにより、利用者が上限金額を誤って認識した状態のまま取引が続行され、媒体を受け取り忘れてしまうことを抑制できる。
【0013】
[適用例6]
適用例1の媒体取扱装置であって、前記投入媒体の量は、前記投入媒体の枚数を含み、前記返却媒体の量は、前記返却媒体の枚数を含み、前記返却判定手段は、前記返却媒体の枚数が前記投入媒体の枚数に対して所定の割合未満の場合には前記返却媒体のみを返却し、前記返却媒体の枚数が前記投入媒体の枚数に対して所定の割合以上の場合には前記投入媒体の全てを返却すると判定する。適用例6の媒体取扱装置によれば、返却媒体の枚数が投入媒体の枚数に対して所定の割合未満の場合には返却媒体のみが返却され、返却媒体の枚数が投入媒体の枚数に対して所定の割合以上の場合には投入媒体の全てが返却される。返却媒体の枚数が投入媒体の枚数に対して所定の割合未満の場合には、返却媒体のみを返却したとしても媒体取扱装置に受け入れられた残りの媒体を利用者が忘れてしまう可能性は低く、返却媒体の枚数が投入媒体の枚数に対して所定の割合以上の場合には、返却媒体のみを返却すると、利用者は媒体取扱装置に受け入れられた残りの媒体を忘れてしまう可能性が高くなる。よって、上記構成とすることにより、利用者が誤って媒体を受け取り忘れてしまうことを抑制できる。
【0014】
[適用例7]
適用例1の媒体取扱装置であって、前記投入媒体の量は、前記投入媒体の金額を含み、前記返却媒体の量は、前記返却媒体の金額を含み、前記返却判定手段は、前記返却媒体の合計金額が前記投入媒体の合計金額に対して所定の割合未満の場合には前記返却媒体のみを返却し、前記返却媒体の合計金額が前記投入媒体の合計金額に対して所定の割合以上の場合には前記投入媒体の全てを返却すると判定する。適用例7の媒体取扱装置によれば、返却媒体の合計金額が投入媒体の合計金額に対して所定の割合未満の場合には返却媒体のみが返却され、返却媒体の合計金額が投入媒体の合計金額に対して所定の割合以上の場合には投入媒体の全てが返却される。返却媒体の合計金額が投入媒体の合計金額に対して所定の割合未満の場合には、返却媒体のみを返却したとしても媒体取扱装置に受け入れられた残りの媒体を利用者が忘れてしまう可能性は低く、返却媒体の合計金額が投入媒体の合計金額に対して所定の割合以上の場合には、返却媒体のみを返却すると、利用者は媒体取扱装置に受け入れられた残りの媒体を忘れてしまう可能性が高くなる。よって、上記構成とすることにより、利用者が誤って媒体を受け取り忘れてしまうことを抑制できる。
【0015】
[適用例8]
適用例1ないし適用例7いずれかの媒体取扱装置であって、前記返却媒体は、前記受入限度量の超過分の媒体を含む。適用例8の媒体取扱装置によれば、受入限度量の超過分の媒体が返却媒体と判断される。従って、返却媒体の有無を簡易に判断できる。
【0016】
[適用例9]
適用例1ないし適用例8いずれかの媒体取扱装置であって、更に、前記投入媒体の真偽を鑑別する媒体鑑別手段を備え、前記返却媒体は、前記媒体鑑別手段により、偽物であると鑑別された媒体である偽券、および、真偽不明と鑑別された媒体である不明券を含む。適用例9の媒体取扱装置によれば、受入限度量超過分の媒体および、偽券、不明券が返却媒体と判断される。従って、偽券や不明券が取引に利用されることを抑制できる。
【0017】
[適用例10]
適用例1ないし適用例9いずれかの媒体取扱装置であって、前記媒体は、貨幣および有価証券の少なくとも一方を含む。適用例10の媒体取扱装置によれば、媒体として、貨幣および有価証券の少なくとも一方が適用される。よって、貨幣や有価証券を取り扱う装置(例えば、ATMや両替機などの紙幣取扱装置)に適用することができる。
【0018】
本発明において、上述した種々の態様は、適宜、組み合わせたり、一部を省略したりして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施例における媒体取扱装置としての自動両替装置1を例示する概観図。
【図2】第1実施例における自動両替装置1の機能ブロックを例示する説明図。
【図3】第1実施例における両替処理について説明するフローチャート。
【図4】第1実施例における紙幣受入処理について説明するフローチャート。
【図5】第1実施例における紙幣受入処理について説明するフローチャート。
【図6】第1実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図。
【図7】第1実施例における紙幣返却処理時にタッチパネル2に表示される案内画面例を例示する説明図。
【図8】第2実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図。
【図9】第3実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図。
【図10】第4実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図。
【図11】第5実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図。
【図12】第6実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図。
【図13】変形例(1)における返却方法の判定条件を例示する説明図。
【図14】変形例(2)における返却方法の判定条件を例示する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施例:
A1.装置概略構成:
図1は、第1実施例における媒体取扱装置としての自動両替装置1を例示する概観図である。自動両替装置1は、タッチパネル2、紙幣入出金口3、硬貨取出口4、包装硬貨取出口5、カード挿入口6、明細票取出口7、取扱状態表示部8および紙幣処理装置11を備える。タッチパネル2は操作部と表示部とを兼ねており、利用者はこのタッチパネル2において両替する金種を指定する。紙幣入出金口3は、両替する紙幣が投入されるとともに、両替された紙幣が放出される。硬貨取出口4は、両替された硬貨が放出される。包装硬貨取出口5は、両替された包装硬貨が放出される。カード挿入口6は、両替時に利用者によりカードが挿入されるとともに、利用者にカードが返却される。明細票取出口7は、両替取引の内容等が印字された明細票が放出される。取扱状態表示部8は、自動両替装置1が取扱中か、取扱中止状態であるかを表示する。第1実施例において、「紙幣」、「返却紙幣」は、特許請求の範囲の「媒体」、「返却媒体」に当たる。
【0021】
A2.機能ブロック:
図2は、第1実施例における自動両替装置1の機能ブロックを例示する説明図である。なお、本図では、硬貨、カード、明細票の処理を行うブロックについては、説明を省略する。自動両替装置1は、主制御部12と、紙幣処理装置11とを備える。主制御部12は、各種データを保存する読出しおよび書込み可能なメモリであるRAM13、各機能ブロックを動作させるプログラムが格納されたROM14およびCPU15を備える。CPU15は、ROM14に記憶されているモジュールを読み込んで実行し、タッチパネル2、紙幣処理装置11に対して処理命令を行う。図2に示すように、CPU15では、判断部16、返却判定部17および返却処理部18の3つのモジュールが読み込まれ実行されている。
【0022】
判断部16は、紙幣入出金口3に受け入れられた紙幣である投入紙幣に、利用者に返却すべき紙幣である返却紙幣が含まれるかを判断する。返却判定部17は、返却紙幣が含まれる場合に、投入紙幣の量に対する返却紙幣の量、および、予め規定された受入限度量に対する投入紙幣の超過量の少なくとも一方に基づいて、返却紙幣のみを返却するか、投入紙幣の全てを返却するかを判定する。第1実施例において、受入限度量とは、紙幣入出金口3に受け入れることができる上限枚数および一度に両替を行うことができる上限金額の少なくとも一方を含む。なお、「紙幣入出金口3に受け入れることができる上限枚数」とは、物理的な紙幣入出金口3のサイズにより規定される枚数、および、物理的な紙幣入出金口3のサイズに関わらず、任意に規定される枚数のいずれの意味も含む。返却処理部18は、返却判定部17による判定結果に基づいて、紙幣の返却を行う。
【0023】
紙幣処理装置11は、自動両替装置1の主制御部12から指令を受付け、指令にしたがって動作を実行し実行結果を返送する制御部21、紙幣処理装置を動作させるプログラムが格納されたROM22、各種データを保存する読出しおよび書込み可能なメモリであるRAM23、紙幣搬送群24、および、紙幣収納群25を備える。
【0024】
紙幣搬送群24は、紙幣の真偽を鑑別する鑑別部26、紙幣を一時的に保留する一時保留部27、利用者に返却する返却紙幣を保留する返却保留部28を備える。また、紙幣収納群25は、利用者が要望する両替金を出金するために準備された出金用紙幣を収納した第1カセットC1、第2カセットC2、第3カセットC3、第4カセットC4、入金・回収カセットC5から構成される。このうち、第1〜第4カセットC1〜C4は単一の紙幣の集積機能および繰出し機能を備えて、一万円、五千円、二千円、千円の4金種を単一金種または複数金種を金種別にまとめて収納する。さらに、入金・回収カセットC5は、鑑別部26によって正常に鑑別できなかった鑑別不良紙幣を収納する不良紙幣収納部29、利用者が投入した投入紙幣を収納する入金紙幣収納部30から構成される。なお、本実施例において、鑑別不良紙幣とは、真券でないと判断された紙幣である偽券および真偽不明と鑑別された紙幣である不明券を意味する。
【0025】
第1実施例において、紙幣入出金口3は特許請求の範囲の「紙幣投入手段」に当たり、判断部16は、特許請求の範囲の「判断手段」に当たり、返却判定部17は、特許請求の範囲の「返却判定手段」に当たり、返却処理部18、紙幣処理装置11は、特許請求の範囲の「返却処理手段」に当たる。また、鑑別部26は、特許請求の範囲の「紙幣鑑別手段」に当たる。
【0026】
A3.両替処理:
図3は、第1実施例における両替処理について説明するフローチャートである。両替処理は、主制御部12が各機能ブロックを制御することにより実行される。利用者が両替を開始すると、主制御部12は、まず紙幣受入処理を実行する(ステップS10)。紙幣受入処理については、後に詳述する。主制御部12は、受け入れ紙幣が無ければ(ステップS12:NO)、両替処理を終了する。主制御部12は、受け入れ紙幣があれば(ステップS12:YES)、利用者が希望する両替内容を受け付け(ステップS14)、両替内容に従って両替金を出金する(ステップS16)。次に、主制御部12は、紙幣入出金口3を介して両替金を利用者に受け渡し(ステップS18)、入金紙幣を収納し(ステップS20)、両替処理を終了する。以上説明のように、両替処理が実行される。
【0027】
A4.紙幣受入処理:
図4〜6を参照して、第1実施例における紙幣受入処理について説明する。図4および図5は、第1実施例における紙幣受入処理について説明するフローチャートである。図6は、第1実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図である。図6に示す判定条件は、図5のステップS52において利用される。
【0028】
主制御部12は、紙幣受入処理を開始すると、紙幣処理装置11を制御し、紙幣入出金口3の紙幣を1枚ずつ繰出して鑑別部26で鑑別し(ステップS30)、投入された枚数カウンタを+1する(ステップS32)。なお、枚数カウンタは、紙幣処理装置11のRAM23上に構成されている。主制御部12は、真券と鑑別できなかった場合(ステップS34:NO)、該紙幣を返却保留部28へ搬送する(ステップS38)。主制御部12は、正常な紙幣と鑑別できた場合(ステップS34:YES)、一時保留部27に受入限度まで受入済かどうかをチェックする(ステップS36)。主制御部12は、受入限度まで受入済でなければ(ステップS36:NO)、該紙幣を一時保留部27に搬送して(ステップS40)、受入枚数カウンタを+1する(ステップS42)。受入枚数カウンタは、RAM23上に構成されている。主制御部12は、受入限度まで受入済の場合は(ステップS36:YES)、該紙幣を返却保留部28へ搬送し(ステップS44)、受入限度オーバーが発生したことをRAM23に記憶する(ステップS46)。
【0029】
次に、主制御部12は、紙幣入出金口3の紙幣をすべて繰出して鑑別し終わったかどうかをチェックし、終了していなければ(ステップS48:NO)、ステップS30に戻る。終了した場合は(ステップS48:YES)、返却保留部28へ返却された紙幣があるかどうかをチェックし(ステップS50)、返却された紙幣がない場合は(ステップS50:NO)紙幣受入処理を終了する。主制御部12は、返却された紙幣がある場合は(ステップS50:YES)、返却方法を判定する(ステップS52)。
【0030】
返却方法判定処理について、図6を参照して説明する。図6に示す判定条件200は、「条件」と「返却方法」の2項目から構成されている。判定条件200は、どのような条件のときに、返却紙幣のみを返却し(以降、実施例では、「受入不可分返却」と言う)、どのような条件のときに、投入紙幣の全てを返却する(以降、実施例では、「一括返却」と言う)か、を判断するためのテーブルである。第1実施例では、投入された紙幣の総枚数と、上限枚数とに基づいて返却方法を判定する。具体的には、返却判定部17は、判定条件200を参照して、上限枚数に対して投入紙幣の超過枚数が所定の枚数未満の場合には、返却方法を「受入不可分返却」と判定し、上限枚数に対して投入紙幣の超過枚数が所定の枚数以上の場合には、返却方法を「一括返却」と判定する。なお、第1実施例において、上限枚数は「20枚」であり、「所定の枚数」とは、20枚の1割に当たる「2枚」である。
【0031】
一般的に、上限よりも数枚多く誤って投入された場合は、利用者は上限枚数を正しく認識しているものの、投入する枚数を誤って多く投入してしまったと考えられる。この場合、上限枚数を超過した分の紙幣のみを返却紙幣として返却しても、利用者は上限枚数超過分の紙幣が返却され、受け入れられた紙幣は取引処理が継続されると理解できる。一方、「20枚」という上限枚数に対して2枚以上(1割以上)多く投入された場合は、利用者が上限枚数を誤って認識していると考えられる。この場合、上限枚数を超過した分の紙幣のみを返却紙幣として返却すると、返却される枚数によっては、利用者は、投入した紙幣全てが返却されたものと誤認識し、自動両替装置1に受け入れられ、取引処理(第1実施例では、両替取引)が行われる紙幣を受け取り忘れて自動両替装置1から離れてしまうという虞がある。
【0032】
ここで、一部の紙幣のみ返却されたにも関わらず、利用者が、全ての紙幣が返却されたと誤認識してしまう理由について説明する。投入紙幣の量(枚数や金額を含む)に対して大部分(例えば8〜9割)返却される場合(例えば、20枚投入して18枚返却される場合)、人間の感覚(例えば一見した紙幣の枚数や、手に紙幣をつかんだ感覚)によって確認される投入紙幣と返却紙幣の厚みには大きな差異はない。そのため、利用者は、一部しか返却されていないにも関わらず、全ての紙幣が返却されたものと誤認識してしまい、受け入れられた紙幣(例えば、20枚投入して19枚返却され、2枚受け入れられた場合)の取引終了前に装置から離れてしまい、取引終了後に放出される紙幣を受け取り忘れてしまう可能性がある。これに対して、投入紙幣の量(枚数や金額を含む)に対して一部分(例えば1割未満)返却される場合(例えば、20枚投入して1枚返却される場合)、人間の感覚によって確認される投入紙幣と返却紙幣の厚みには大きな差異がある。そのため、利用者は、一部のみ返却されたことを容易に認識でき、受け入れられた残りの紙幣を受け取り忘れるという可能性は低い。
【0033】
従って、図6に示す判定条件200で判定することにより、上限枚数に対して投入枚数の超過枚数が所定の枚数未満の場合は受入不可分のみ返却して他の紙幣の処理を続行し、上限枚数に対して投入枚数の超過枚数が所定の枚数以上の場合は利用者が上限枚数を誤って認識していると判断し、該利用者が誤って装置内に紙幣を忘れてしまう可能性があるとして投入したすべての紙幣を該利用者に返却する。
【0034】
図5に戻り、説明を続ける。主制御部12は、返却方法判定処理において、受入不可分を返却すると判定された場合は(ステップS54:YES)、返却保留部28の紙幣を紙幣入出金口3に搬送し(ステップS56)、図7(a)に示す受入不可分返却の案内画面300を表示し(ステップS58)、紙幣入出金口3を開けて返却紙幣を利用者に受け渡す(ステップS60)。次に、主制御部12は、紙幣の再投入を待ち(ステップS62)、再投入があれば(ステップS62:YES)、ステップS30に戻り、再度紙幣の繰出し、鑑別を開始する。紙幣の再投入がなければ(ステップS62:NO)紙幣受入処理を終了する。
【0035】
主制御部12は、返却方法判定処理において、一括返却すると判定された場合は(ステップS54:NO)、返却保留部28の紙幣を紙幣入出金口3に搬送し(ステップS64)、続いて一時保留部27の紙幣を紙幣入出金口3に搬送する(ステップS66)。次に、図7(b)に示す一括返却の案内画面310を表示し(ステップS68)、紙幣入出金口3を開けて返却紙幣、即ち利用者が投入した紙幣すべてを利用者に受け渡す(ステップS70)。以上説明のとおり、紙幣受入処理が実行される。
【0036】
A5.案内画面例:
図7は、第1実施例における紙幣返却処理時にタッチパネル2に表示される案内画面例を例示する説明図である。図7(a)は、返却方法として「受入不可分返却」が選択された場合(図5のステップS58)に、タッチパネル2に表示される案内画面300であり、図7(b)は、返却方法として、「一括返却」が選択された場合(図5のステップS68)に、タッチパネル2に表示される案内画面310である。返却方法として「受入不可分返却」が選択された場には、案内画面300に示すように、「投入できる紙幣は20枚までです。上限枚数を超過しているので、上限分のみ取引します」と、取引が続行されていることを明示する案内メッセージを表示する。返却方法として「一括返却」が選択された場合には、310に示すように、「投入できる紙幣は20枚までです。紙幣をご確認のうえ取引をやり直してください」案内メッセージを表示し、利用者に、上限枚数および投入紙幣の枚数が上限枚数を超過していることを報知する。
【0037】
以上説明した第1実施例の自動両替装置1によれば、投入紙幣の量に対する返却紙幣の量、および、予め規定された受入限度量に対する投入紙幣の超過量の少なくとも一方に基づいて、返却紙幣のみを返却するか、投入紙幣の全てを返却するかを判定する返却判定部17が備えられている。従って、利用者が投入した投入紙幣に返却紙幣が含まれる場合に、返却紙幣のみを返却するか投入紙幣の全てを一括返却するかを、投入紙幣の量に対する返却紙幣の量、および、受入限度量に対する投入紙幣の超過量の少なくとも一方に基づいて判定し、返却処理を行うことができる。よって、利用者は投入紙幣が一括返却されたのか、返却紙幣のみが返却されたのかを容易に判断でき、利用者の利便性を向上できる。
【0038】
第1実施例の自動両替装置1によれば、投入紙幣の超過枚数が上限枚数に対して所定の枚数未満の場合には返却紙幣のみが返却され、投入紙幣の枚数が上限枚数に対して所定の枚数以上の場合には投入紙幣の全てが返却される。従って、利用者は投入紙幣が一括返却されたのか、返却紙幣のみが返却されたのかを、投入紙幣と返却された紙幣の枚数に基づいて容易に判断できる。
【0039】
また、第1実施例の自動両替装置1では、返却紙幣の枚数が上限枚数を1割超えない場合には返却紙幣のみが返却され、返却紙幣の枚数が上限枚数の1割を超える場合には投入紙幣の全てが返却される。返却枚数が上限枚数の一割を超える場合、利用者が上限枚数を誤って認識しており、返却紙幣のみを返却した場合に利用者が投入紙幣の全てが返却されたと誤判断して、残りの紙幣を受け取り忘れてしまう虞がある。よって、上記構成とすることにより、利用者が上限枚数を誤って認識した状態のまま取引が続行され、紙幣を受け取り忘れてしまうことを抑制できる。
【0040】
B.第2実施例:
第2実施例では、判定条件として、予め規定されている受入上限金額に対する投入合計金額の超過金額とに基づいて、返却紙幣の返却方法を判定する。なお、第2実施例において、返却方法の判定時に利用される判定条件以外は、第1実施例と同様の構成、処理が行われる。
【0041】
図8は、第2実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図である。第2実施例では、返却判定部17は、判定条件210を参照して、投入紙幣の合計金額が上限金額に対して所定の金額未満の場合には、返却方法を「受入不可分返却」と判定し、投入紙幣の合計金額が上限金額に対して所定の金額以上の場合には、返却方法を「一括返却」と判定する。なお、第2実施例において、入金限度金額は「20万円」であり、「所定の金額」とは、20万円の1割に当たる「2万円」である。
【0042】
一般的に、上限枚数よりも少額多く誤って投入された場合は、利用者は上限金額を正しく認識しているものの、投入する金額を誤って多く投入してしまったと考えられる。この場合、上限金額を超過した分の紙幣のみを返却紙幣として返却しても、利用者は上限金額超過分の紙幣が返却され、受け入れられた紙幣は取引処理が継続されると理解できる。一方、上限枚数は「20万円」に対して3万円以上多く投入された場合は、利用者が上限金額を誤って認識していると考えられる。この場合、上限金額を超過した分の紙幣のみを返却紙幣として返却すると、返却される枚数によっては、利用者は、投入した紙幣全てが返却されたものと誤認識し、自動両替装置1に受け入れられ、取引処理(例えば、両替取引)が行われる紙幣を受け取り忘れて自動両替装置1から離れてしまうという虞がある。
【0043】
従って、図8に示す判定条件210で判定することにより、上限金額に対して投入金額の超過金額が所定の金額未満の場合は受入不可分のみ返却して残りの紙幣の処理を続行可能とし、上限金額に対して投入金額の超過金額が所定の金額以上の場合は利用者が上限金額を誤って認識していると判断し、利用者が誤って自動両替装置1内に紙幣を忘れてしまう可能性があるとして投入したすべての紙幣を利用者に返却する。
【0044】
以上説明した第2実施例の自動両替装置によれば、投入紙幣の超過金額が上限枚数に対して所定の金額未満の場合には返却紙幣のみが返却され、投入紙幣の金額が上限金額に対して所定の金額以上の場合には投入紙幣の全てが返却される。従って、利用者は投入紙幣が一括返却されたのか、返却紙幣のみが返却されたのかを、投入紙幣と返却された紙幣の金額に基づいて容易に判断できる。
【0045】
また、第2実施例によれば、返却紙幣の超過金額が上限金額に対して1割未満の場合には返却紙幣のみが返却され、返却紙幣の超過金額が上限金額に対して1割以上の場合には投入紙幣の全てが返却される。返却紙幣の超過金額が上限金額に対して1割以上の場合、利用者が上限金額を誤って認識しており、返却紙幣のみを返却した場合に利用者が投入紙幣の全てが返却されたと誤判断して、残りの紙幣を受け取り忘れてしまう虞がある。よって、上記構成とすることにより、利用者が上限金額を誤って認識した状態のまま取引が続行され、紙幣を受け取り忘れてしまうことを抑制できる。
【0046】
C.第3実施例:
第3実施例では、判定条件として、利用者により投入された紙幣の枚数および金額と、予め規定されている上限枚数および金額とに基づいて、返却紙幣の返却方法を判定する。なお、第3実施例において、返却方法の判定時に利用される判定条件以外は、第1実施例と同様の構成、処理が行われる。
【0047】
図9は、第3実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図である。第3実施例では、返却判定部17は、判定条件220を参照して、「受入限度オーバー返却あり」の場合、すなわち、投入紙幣の枚数が上限枚数より多い場合もしくは投入紙幣の合計金額が上限金額より多い場合には、返却方法を「一括返却」と判定し、「受入限度オーバー返却なし」の場合、すなわち、投入紙幣の枚数が上限枚数以下かつ投入紙幣の合計金額が上限金額以下の場合には、返却方法を「受入不可分返却」と判定する。この場合、受入不可分返却として返却される紙幣は、鑑別部26により偽券、不明券と判別された紙幣である。
【0048】
従って、図9に示す判定条件220で判定することにより、上限枚数を超えて投入された場合もしくは入金限度金額を超えて紙幣が入金された場合には、利用者が上限枚数もしくは上限金額を誤って認識しており、一部の紙幣のみ返却すると、全ての紙幣が返却されたと利用者が誤認識し、自動両替装置1内に受け入れられた紙幣を忘れてしまう可能性があるとして投入したすべての紙幣が利用者に返却される。また、投入紙幣の枚数が上限枚数以下かつ投入紙幣の合計金額が上限金額以下の場合には、利用者は上限枚数および上限金額を正しく認識していると判断し、受入不可分の紙幣のみ返却される。
【0049】
以上説明した第3実施例の自動両替装置によれば、受入限度量の超過分の紙幣が返却紙幣と判断される。従って、返却紙幣の有無を簡易に判断でき、返却方法の選択を容易に行うことができる。よって、自動両替装置の処理負荷を軽減できる。
【0050】
D.第4実施例:
第4実施例では、返却紙幣の枚数に基づいて返却紙幣の返却方法を判定する。なお、第4実施例において、返却方法の判定時に利用される判定条件以外は、第1実施例と同様の構成、処理が行われる。
【0051】
図10は、第4実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図である。第4実施例では、返却判定部17は、判定条件230を参照して、返却紙幣の枚数が5枚以上の場合には、返却方法を「一括返却」と判定し、返却紙幣の枚数が5枚未満の場合には、返却方法を「受入不可分返却」と判定する。
【0052】
従って、判定条件230で判定することにより、上限枚数を超えて投入された紙幣、または、偽券、不明券など返却対象の紙幣が5枚以上存在する場合には、一部の紙幣のみ返却すると、全ての紙幣が返却されたと利用者が誤認識し、自動両替装置1内に受け入れられた紙幣を忘れてしまう可能性があるとして投入したすべての紙幣が利用者に返却される。また、上限枚数を超えて投入された紙幣、または、偽券、不明券など返却対象の紙幣が5枚未満存在する場合には、一部の紙幣のみ返却されても、利用者は全ての紙幣が返却されたとは誤認識せず、自動両替装置1内に受け入れられた紙幣を忘れてしまう可能性が低いとして、受入不可分のみが利用者に返却される。
【0053】
以上説明した第4実施例の自動両替装置によれば、返却紙幣の枚数に基づいて返却方法が判定される。よって、簡易に返却方法を判定できるので、自動両替装置の処理負荷を軽減できる。
【0054】
E.第5実施例:
第5実施例では、返却紙幣の金額に基づいて返却紙幣の返却方法を判定する。なお、第5実施例において、返却方法の判定時に利用される判定条件以外は、第1実施例と同様の構成、処理が行われる。
【0055】
図11は、第5実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図である。第5実施例では、返却判定部17は、判定条件240を参照して、返却紙幣の金額が5万円以上の場合には、返却方法を「一括返却」と判定し、返却紙幣の枚数が5万円未満の場合には、返却方法を「受入不可分返却」と判定する。
【0056】
従って、判定条件240で判定することにより、返却対象の紙幣の合計金額が5万円以上の場合には、一部の紙幣のみ返却すると、全ての紙幣が返却されたと利用者が誤認識し、自動両替装置1内に受け入れられた紙幣を忘れてしまう可能性があるとして投入したすべての紙幣が利用者に返却される。また、返却対象の紙幣が5万円未満存在する場合には、一部の紙幣のみ返却されても、利用者は全ての紙幣が返却されたとは誤認識せず、自動両替装置1内に受け入れられた紙幣を忘れてしまう可能性が低いとして、受入不可分のみが利用者に返却される。
【0057】
以上説明した第5実施例の自動両替装置によれば、返却紙幣の合計金額に基づいて返却方法が判定される。よって、簡易に返却方法を判定できるので、自動両替装置の処理負荷を軽減できる。
【0058】
F.第6実施例:
第6実施例では、投入枚数に対する返却枚数の比率に基づいて返却紙幣の返却方法を判定する。なお、第6実施例において、返却方法の判定時に利用される判定条件以外は、第1実施例と同様の構成、処理が行われる。
【0059】
図12は、第6実施例における返却方法の判定条件を例示する説明図である。第6実施例では、返却判定部17は、判定条件250を参照して、投入枚数に対する返却枚数の比率に基づいて返却方法を判定する。具体的には、返却枚数が投入枚数の50%以上である場合には、返却方法を「一括返却」と判定し、返却枚数が投入枚数の50%未満である場合には、返却方法を「受入不可分返却」と判定する。
【0060】
判定条件250を参照して判定することにより、返却紙幣の枚数が投入紙幣に対して50%以上である場合(例えば、紙幣が20枚投入され、返却紙幣が12枚の場合)には、一部の紙幣のみ返却すると、全ての紙幣が返却されたと利用者が誤認識し、自動両替装置1内に受け入れられた紙幣を忘れてしまう可能性があると判断され、投入したすべての紙幣が利用者に返却される(一括返却)。また、返却紙幣の枚数が投入紙幣に対して50%未満である場合(例えば、紙幣が20枚投入され、返却紙幣が5枚の場合)には、一部の紙幣のみ返却されても、利用者は全ての紙幣が返却されたとは誤認識せず、自動両替装置1内に受け入れられた紙幣を忘れてしまう可能性が低いとして、受入不可分のみが利用者に返却される(受入不可分返却)。
【0061】
以上説明した第6実施例の自動両替装置によれば、投入枚数に対する返却枚数の比率に基づいて返却紙幣の返却方法が判定される。従って、受入限度量を超えて投入された場合に限らず、投入された紙幣が受入限度いないの場合であても、多くの紙幣が識別不良(偽券、不明券)と鑑別されて返却される際に、利用者の誤解による取り忘れを抑制できる。
【0062】
G.変形例:
(1)上述の各実施例の判定条件を適宜組み合わせても良い。図13は、変形例(1)における返却方法の判定条件を例示する説明図である。本変形例では、判定条件260に示すように、「返却枚数」および「投入枚数に対する返却枚数の比率」に基づいて返却方法が判定される。具体的には、返却枚数が5枚以上、または、返却枚数が投入枚数の50%以上である場合には、返却方法を「一括返却」と判定し、この条件以外の場合には、返却方法を「受入不可分返却」と判定する。
【0063】
変形例(1)によれば、「返却枚数」および「投入枚数に対する返却枚数の比率」に基づいて返却方法が判定される。従って、利用者が投入した枚数と返却される枚数とに応じて最適な返却方法を選択できる。
【0064】
(2)図14は、変形例(2)における返却方法の判定条件を例示する説明図である。本変形例では、返却判定部17は、判定条件270を参照して、「受入限度オーバー発生」の有無により判定条件が変更する。具体的には、「受入限度オーバー発生あり」の場合には、「返却枚数」に基づいて返却方法が判定される。本変形例では、「受入限度オーバー発生あり」と判定された場合において、返却枚数が3枚以上の場合には返却方法は「一括返却」と判定され、返却枚数が3枚未満の場合には「受入不可分返却」と判定される。「受入限度オーバー返却なし」の場合には、「投入枚数に対する返却枚数の比率」に基づいて返却方法が判定される。本変形例では、「受入限度オーバー返却なし」と判定された場合において、投入枚数に対する返却紙幣の比率が80%以上の場合には、返却方法は「一括返却」と判定され、投入枚数に対する返却紙幣の比率が80%未満の場合には、返却方法は「受入不可分返却」と判定される。
【0065】
変形例(2)によれば、受入限度オーバーの発生有無に基づいて、返却方法の判定条件が変更される。従って、最適な返却方法を柔軟に選択できる。
【0066】
(3)上記各実施例では、媒体取扱装置として自動両替装置1を例示しているが、例えば、自動取引装置(ATM)や、外貨の両替機、券売機や飲食物の自動販売機等の販売装置、物品販売店に設置されているレジスタなど、貨幣および有価証券を受け付ける媒体取扱装置にも適用可能である。更に、貨幣や有価証券のみならず、媒体を鑑別、計数して受け入れる種々の装置全般にも適用可能である。
【0067】
(4)上記各実施例において記載されている上限枚数、上限金額、割合、比率は一例であり、設置環境、紙幣入出金口3のサイズなどの媒体取扱装置の構造、実験的に推測される利用者の感覚等により、適宜、最適な値を設定してもよい。
【0068】
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成をとることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…自動両替装置
2…タッチパネル
3…紙幣入出金口
4…硬貨取出口
5…包装硬貨取出口
6…カード挿入口
7…明細票取出口
8…取扱状態表示部
11…紙幣処理装置
12…主制御部
15…CPU
16…判断部
17…返却判定部
18…返却処理部
20…主制御部
21…制御部
24…紙幣搬送群
25…紙幣収納群
26…鑑別部
27…一時保留部
28…返却保留部
29…不良紙幣収納部
30…入金紙幣収納部
200…、210、220、230、40、250、260、270…判定条件
300、310…案内画面
C1…第1カセット
C2…第2カセット
C3…第3カセット
C4…第4カセット
C5…回収カセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体取扱装置であって、
媒体を投入するための媒体投入手段と、
前記媒体投入手段に投入された媒体である投入媒体に、返却すべき媒体である返却媒体が含まれるかを判断する判断手段と、
前記返却媒体が含まれる場合に、前記返却媒体の量、および、予め規定された受入限度量に対して前記投入媒体の量の超過分である超過量の少なくとも一方に基づいて、前記返却媒体のみを返却するか、前記投入媒体の全てを返却するかを判定する返却判定手段と、
前記判定結果に基づいて、前記媒体の返却を行う返却処理手段と、
を備える媒体取扱装置。
【請求項2】
請求項1記載の媒体取扱装置であって、
前記投入媒体の量は、前記投入媒体の枚数を含み、
前記受入限度量は、前記投入媒体の上限枚数を含み、
前記返却判定手段は、前記投入媒体の超過枚数が前記上限枚数に対して所定の枚数未満の場合には前記返却媒体のみを返却し、前記投入媒体の超過枚数が前記上限枚数に対して所定の枚数以上の場合には前記投入媒体の全てを返却すると判定する、
媒体取扱装置。
【請求項3】
請求項2記載の媒体取扱装置であって、
前記所定の枚数は、前記上限枚数の所定の割合である、
媒体取扱装置。
【請求項4】
請求項1記載の媒体取扱装置であって、
前記投入媒体の量は、前記投入媒体の合計金額を含み、
前記受入限度量は、前記投入媒体の上限金額を含み、
前記返却判定手段は、前記投入媒体の超過金額が前記上限金額に対して所定の金額未満の場合には前記返却媒体のみを返却し、前記投入媒体の超過金額が前記上限金額に対して所定の金額以上の場合には前記投入媒体の全てを返却すると判定する、
媒体取扱装置。
【請求項5】
請求項4記載の媒体取扱装置であって、
前記所定の金額は、前記上限金額の所定の割合である、
媒体取扱装置。
【請求項6】
請求項1記載の媒体取扱装置であって、
前記投入媒体の量は、前記投入媒体の枚数を含み、
前記返却媒体の量は、前記返却媒体の枚数を含み、 前記返却判定手段は、前記返却媒体の枚数が前記投入媒体の枚数に対して所定の割合未満の場合には前記返却媒体のみを返却し、前記返却媒体の枚数が前記投入媒体の枚数に対して所定の割合以上の場合には前記投入媒体の全てを返却すると判定する、
媒体取扱装置。
【請求項7】
請求項1記載の媒体取扱装置であって、
前記投入媒体の量は、前記投入媒体の金額を含み、
前記返却媒体の量は、前記返却媒体の金額を含み、
前記返却判定手段は、前記返却媒体の合計金額が前記投入媒体の合計金額に対して所定の割合未満の場合には前記返却媒体のみを返却し、前記返却媒体の合計金額が前記投入媒体の合計金額に対して所定の割合以上の場合には前記投入媒体の全てを返却すると判定する、
媒体取扱装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7いずれか記載の媒体取扱装置であって、
前記返却媒体は、前記受入限度量の超過分の媒体を含む、
媒体取扱装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8いずれか記載の媒体取扱装置であって、更に、
前記投入媒体の真偽を鑑別する媒体鑑別手段を備え、
前記返却媒体は、前記媒体鑑別手段により、偽物であると鑑別された媒体である偽券、および、真偽不明と鑑別された媒体である不明券を含む、
媒体取扱装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9いずれか記載の媒体取扱装置であって、
前記媒体は、貨幣および有価証券の少なくとも一方を含む、
媒体取扱装置。
【請求項11】
媒体を投入するための媒体投入手段を備える媒体取扱装置において、返却すべき媒体である返却媒体の返却方法であって、
前記媒体投入手段に投入された媒体である投入媒体に、前記返却媒体が含まれるかを判断し、
前記返却媒体が含まれる場合に、前記投入媒体の量に対する前記返却媒体の量、および、予め規定された受入限度量に対する前記投入媒体の超過量の少なくとも一方に基づいて、前記返却媒体のみを返却するか、前記投入媒体の全てを返却するかを判定し、
前記判定結果に基づいて、前記媒体の返却を行う、
返却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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