媒体繰出し機構
【課題】媒体繰出し時の衝突音を低減し、繰出し部材の磨耗を軽減させる。
【解決手段】移動部材2のピッカローラ4との対向面に、ピッカローラ4の両側に位置する突起12を設け、移動部材2の移動により突起12で媒体1をピッカローラ4に押付けることにより、移動部材2と媒体1との間に空隙を生じさせ、移動部材2上の媒体1が少なくなった場合でもピッカローラ4の繰出し部材9が移動部材2を叩かないようにした。
【解決手段】移動部材2のピッカローラ4との対向面に、ピッカローラ4の両側に位置する突起12を設け、移動部材2の移動により突起12で媒体1をピッカローラ4に押付けることにより、移動部材2と媒体1との間に空隙を生じさせ、移動部材2上の媒体1が少なくなった場合でもピッカローラ4の繰出し部材9が移動部材2を叩かないようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体収納部に収納された紙葉状の媒体をピッカローラによりフィードローラとゲートローラのゲートに送り、このゲートで媒体を1枚ずつ分離して繰出す媒体繰出し機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の媒体繰出し機構として、例えば自動取引装置の一機能として紙幣の入出金処理等を行う紙幣処理機に組み込まれたものが知られている。
図10はこのような紙幣処理機における媒体繰出し機構の従来例を示す側面図、図11はこの従来例におけるゲートの正面図である。
図に示したように従来の媒体繰出し機構は、媒体(紙幣)1を上下移動可能な移動部材2上に集積させて収納する媒体収納部3と、移動部材2の上方に配置されたピッカローラ4と、媒体収納部3の上部に設けられた繰出し口の上側に配置されたフィードローラ5と、その繰出し口の下側に配置されたゲートローラ6と、このフィードローラ5及びゲートローラ6により形成されるゲートを通過した媒体1を搬送する搬送路7と、この搬送路を通過する紙幣を検知するセンサ8を備えている。
【0003】
ピッカローラ4は外周の一部に繰出し部材9が装着されており、この繰出し部材9は媒体1に対してピッカローラ4の外周面より摩擦係数の高いゴム等により形成されている。
ピッカローラ4の中心軸はアーム10の一端に回転自在に支持され、アーム10の他端はフィードローラ1の中心軸に回転自在に取り付けられており、そしてフィードローラ5の中心軸とピッカローラ4の中心軸にはそれぞれプーリが設けられていて、両プーリに駆動ベルト11が巻きかけられており、フィードローラ1が図示しないモータ(駆動源)からの駆動力を受けて図10に矢印で示したように例えば時計回り方向に回転すると、その回転力がプーリ及び駆動ベルト11を介してピッカローラ4に伝達され、フィードローラ5と同期してピッカローラ4も時計回り方向に回転するものとなっている。
【0004】
フィードローラ5とゲートローラ6は、図11に示したように溝付きローラで、互いの溝により外周面同士がわずかにオーバラップさせて配置してある。
尚、ゲートローラ6は媒体繰出し時には回転せず、ゲートに媒体1が2枚以上進入してきた場合、フィードローラ5と接触する媒体1以外の媒体1に制動をかけて、媒体1が2枚以上同時に繰出さないように分離する働きをするものとなっている。
【0005】
このような構成による媒体繰出し機構は、媒体収納部3の移動部材2上に集積された媒体1を繰出す場合、図示しない上下動機構により移動部材2を上方に移動させて、移動部材2上の最上位の媒体1をピッカローラ4に押付け、そしてピッカローラ4をフィードローラ5と同期して回転させる。
このピッカローラ4の回転により媒体1が移動部材2上から繰出されてフィードローラ5とゲートローラ6により形成されるゲートに送り込まれ、フィードローラ5の回転により媒体1をフィードローラ5とゲートローラ6の間を通過させることで1枚ずつ分離する。
【0006】
分離された媒体1は搬送路7により所定の処理部等へ搬送されるが、その際媒体1はセンサ8により検知され、その検知信号に基づいて媒体1の繰出しが行われたことを図示しない制御部が認識する(例えば、特許文献1参照)。
ところで、上記媒体繰出し機構において媒体1に対する繰出し性能を高めるために、ピッカローラ4に装着する繰出し部材9をピッカローラ4の外周面より突出させた構造のものが提案されている。
【0007】
図12はこのような構造を持つピッカローラ4の拡大側面図で、この図に示したようにピッカローラ4に装着する繰出し部材9を、ピッカローラ4の外周面より高さhだけ突出させ、ピッカローラ4の回転により繰出し部材9で媒体1を繰出すようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2008−63075
【特許文献2】特開2008−63090
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の技術においては、以下の問題がある。
図13は従来技術の問題点を示す正面図、図14は図13のB−B線断面図である。
これらの図に示したように移動部材2上の媒体1が少なくなった状態で、ピッカローラ4の回転により媒体1の繰出しを行う場合、ピッカローラ4の外周面より突出している繰出し部材9が媒体1を介して移動部材2を叩くため、その際の衝突音が顕著になると共に、繰出し部材9への負荷が増加して磨耗が促進されてしまうとことになる。
【0009】
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明は、外周面の一部に該外周面より突出する繰出し部材を設けたピッカローラを媒体収納部に配置し、該媒体収納部に収納された媒体を移動部材の移動により前記ピッカローラに押付け、前記ピッカローラを回転させて前記繰出し部材により前記媒体を繰出す媒体繰出し機構において、前記移動部材の前記ピッカローラとの対向面に、前記ピッカローラの両側に位置する突起を設け、前記移動部材の移動により前記突起で前記媒体をピッカローラに押付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このようにした本発明は、各ピッカローラの両側に位置するように移動部材に突起を設けることで、移動部材と媒体との間に空隙が生じ、移動部材上の媒体が少なくなった場合でもピッカローラの繰出し部材が移動部材を叩くことがなくなるので、衝突音を低減することができ、かつ繰出し部材に負荷がかかることもなくなるので、繰出し部材の磨耗を軽減することができるという効果が得られる。
【0012】
また、移動部材上の媒体が少なくなった状態で、媒体の繰出しを行う場合、媒体は突起間で撓みが生じるため、媒体同士の摩擦が小さくなって分離性が高まり、そのためピッカローラの回転により媒体を繰出す際に複数枚の同時繰出しを抑制することができるという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明による媒体繰出し機構の実施例を説明する。
【実施例】
【0014】
図1は第1の実施例を示す要部正面図、図2は同側面図である。
この図1及び図2に示したように本実施例は、移動部材2の媒体集積面である上面つまりピッカローラ4との対向面に媒体繰出し方向に沿うように複数の突起12を設けたものである。
この突起12は図1に示したように中心軸13に複数(図では4個)設けられたピッカローラ4に対して、各ピッカローラ4の両側に位置するように配置され、また各突起12は正面から見た形状が台形で、側面から見ると媒体繰出し方向に沿って所定の長さを有するように形成されていて、各ピッカローラ4の側面とそれに対応する突起14の上面端部との間には所定の隙間aができるように設定されている。
【0015】
この他の構成は図7〜図9で説明した従来のものと同様である
上述した構成の作用について説明する。
図3は実施例の作用を示す一部分正面図、図4は図3のA−A線断面図、図5と図6は媒体1同士の摩擦の低下を説明するための説明図である。
本実施例において媒体1は突起12上に集積され、移動部材2の上面から浮き上がった状態となっている。
【0016】
この媒体1の繰り出しを行う場合、従来と同様に移動部材2を上方に移動させ、突起12を介して最上位の媒体1をピッカローラ4に押付ける。
この状態で、ピッカローラ4を回転することにより行われるが、図3、図4に示したように移動部材2上の媒体1が少なくなった状態で繰出しを行う場合、ピッカローラ4の回転により外周面より突出している繰出し部材9は媒体1と衝突する。
【0017】
この場合、媒体1のピッカローラ4が衝突する部分の両側は、図3に示したように突起に12により支持された状態にあるため、繰出し部材9が媒体1と衝突したときでも、移動部材2の上面と最下位の媒体1に間に空隙gが確保され、この空隙gの緩衝作用により繰出し部材9が媒体1を介して移動部材2を叩くことがなくなり、繰出し部材9に大きな負荷がかかることもなくなる。
【0018】
また、このように移動部材2上の媒体1が少なくなった状態で、媒体1の繰出しを行う場合、移動部材2を上方に移動させてピッカローラ4に媒体1を押付けたとき、媒体1は図3、図4に示したように突起12間で撓みが生じることになる。
突起12がない移動部材上の媒体1同士は図5に示したように紙面全体が密着するが、突起12間で媒体1に撓みが生じると、図6に示したように媒体1同士に微小なずれbが発生する。
【0019】
媒体1の撓みはピッカローラ4の回転により繰出し部材9が媒体1と衝突することで大きくなり、それに従って媒体1同士のずれbも大きくなるため、繰出し部材9の媒体1への衝突が繰返されることで媒体1の撓みが周期的に変化すると共に媒体1同士の微小なずれも周期的に変化して、媒体1間にずれ速度が発生する。
摩擦力は一般に静止摩擦の方が動摩擦より大きいという「静止摩擦>動摩擦」の関係にあるため、ずれ速度により媒体1同士の摩擦が小さくなり、それにより媒体1の分離性が高まるので、ピッカローラ4の回転により媒体1を繰出す際に複数枚の同時繰出しを抑制することができる。
【0020】
尚、空隙gの緩衝作用によりピッカローラ4の繰出し部材9が移動部材2を叩かないようにするための突起12の高さは、繰出す媒体1の腰の強さや、移動部材2によるピッカローラ4への媒体1の押付け力等を考慮して、実験的に求めるようにするとよい。
また、ピッカローラ4の側面とそれに対応する突起14との間の隙間aも実験的に求めて設定するとよい。
【0021】
以上説明したように、第1の実施例では、各ピッカローラの両側に位置するように移動部材に突起を設けることで、移動部材と媒体との間に空隙が生じ、移動部材上の媒体が少なくなった場合でもピッカローラの繰出し部材が移動部材を叩くことがなくなるので、騒音を低減することができ、かつ繰出し部材に負荷がかかることもなくなるので、繰出し部材の磨耗を軽減することができるという効果が得られる。
【0022】
また、移動部材上の媒体が少なくなった状態で、媒体の繰出しを行う場合、媒体は突起間で撓みが生じるため、媒体同士の摩擦が小さくなって分離性が高まり、そのためピッカローラの回転により媒体を繰出す際に複数枚の同時繰出しを抑制することができるという効果も得られる。
図7は本発明の第2の実施例を示す要部側面図である。
【0023】
この実施例は媒体収納部3の底部に設けた繰出し口から媒体を分離して繰出すタイプの媒体繰出し機構であり、ピッカローラ4は外周の一部が媒体収納部3の底板3aに設けた穴(またはスリット)から媒体収納部3内に入り込み、媒体収納部3内に収納された媒体1は、媒体収納部3内に設けられた上下移動可能な移動部材14の下方への移動によりピッカローラ4に押付けるものとなっていて、この移動部材14の下面つまりピッカローラ4との対向面に複数の突起15が図1、図2に示した第1の実施例と同様に設けられている。
【0024】
また、媒体収納部3の繰出し口の下側に配置されたフィードローラ5と、その繰出し口の上側に配置されたゲートローラ6と、このフィードローラ5及びゲートローラ6により形成されるゲートを通過した媒体1を搬送する搬送路と、この搬送路を通過する紙幣を検知するセンサ8を備えている。
尚、ピッカローラ4は図10で説明した従来のものと同様にフィードローラ5と同期して回転するようになっている。
【0025】
このような構成を有する第2の実施例において媒体1の繰り出しは、移動部材2を下方に移動させ、最下位の媒体1をピッカローラ4に押付けた状態で、ピッカローラ4を回転することにより行うが、移動部材14に第1の実施例と同様に突起15を設けているため、第1の実施例と同様の作用、効果が得られる。
尚、上述した第1の実施例において突起12は正面から見た形状が台形とし、第2の実施例における突起15も同様の形状としたが、これに限られるものではなく、また突起12や15を設ける代わりに移動部材2を別の形状に変えてピッカローラ4の繰出し部材9が移動部材2を叩かない構造とすることも可能である。
【0026】
図8は突起12を別の形状とした例を示す正面図、図9は移動部材2を別の形状とした例を示す斜視図である。
図8は突起12(または15)の正面から見た形状を所定の曲面を有する波形(山形)としたものであるが、この他にも矩形、三角形等が考えられる。各突起12の配置等は第1、第2の実施例と同じである。
【0027】
このようにしてもピッカローラ4の繰出し部材9が移動部材2を叩くことがなく、また媒体1を撓ませることができるので、第1、第2の実施例と同様の効果が得られる。
図9は移動部材2の各ピッカローラ4と対向する位置にそれぞれスリット16を設けたもので、これらのスリット16に代えて長孔等を設けてもよい。
各スリット16は媒体繰出し方向に沿って所定の長さを有するように形成されていて、各スリット16の幅は各ピッカローラ4の厚さより大きい寸法に形成されている。
【0028】
このようにした移動部材2では、移動部材2の移動により媒体1をピッカローラ4に押付けたとき、ピッカローラ4がスリット16(または長孔)の幅内で媒体1に接触するので、ピッカローラ4を回転させたとき繰出し部材9が移動部材2を叩くことがなく、また媒体1を撓ませることもできるので、第1、第2の実施例と同様の効果が得られる。
また、上述した第1、第2の実施例では、媒体1を水平方向に繰出す媒体繰出し機構について説明したが、媒体収納部に立位状態で集積された媒体を移動部材によりピッカローラに押付け、ピッカローラの回転により媒体を上方または下方に繰り出すタイプの媒体繰出し機構に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施例を示す要部正面図
【図2】第1の実施例を示す要部側面図
【図3】実施例の作用を示す一部分正面図
【図4】図3のA−A線断面図
【図5】媒体1同士の摩擦の低下を説明するための説明図
【図6】媒体1同士の摩擦の低下を説明するための説明図
【図7】第2の実施例を示す要部側面図
【図8】突起を別の形状とした例を示す正面図
【図9】移動部材を別の形状とした例を示す斜視図
【図10】従来例を示す側面図
【図11】従来例におけるゲートの正面図
【図12】ピッカローラ4の拡大側面図
【図13】従来技術の問題点を示す正面図
【図14】図13のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 媒体
2 移動部材
3 媒体収納部
4 ピッカローラ
5 フィードローラ
6 ゲートローラ
7 搬送路
8 センサ
9 繰出し部材
10 アーム
11 駆動ベルト
12 突起
13 中心軸
14 移動部材
15 突起
16 スリット
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体収納部に収納された紙葉状の媒体をピッカローラによりフィードローラとゲートローラのゲートに送り、このゲートで媒体を1枚ずつ分離して繰出す媒体繰出し機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の媒体繰出し機構として、例えば自動取引装置の一機能として紙幣の入出金処理等を行う紙幣処理機に組み込まれたものが知られている。
図10はこのような紙幣処理機における媒体繰出し機構の従来例を示す側面図、図11はこの従来例におけるゲートの正面図である。
図に示したように従来の媒体繰出し機構は、媒体(紙幣)1を上下移動可能な移動部材2上に集積させて収納する媒体収納部3と、移動部材2の上方に配置されたピッカローラ4と、媒体収納部3の上部に設けられた繰出し口の上側に配置されたフィードローラ5と、その繰出し口の下側に配置されたゲートローラ6と、このフィードローラ5及びゲートローラ6により形成されるゲートを通過した媒体1を搬送する搬送路7と、この搬送路を通過する紙幣を検知するセンサ8を備えている。
【0003】
ピッカローラ4は外周の一部に繰出し部材9が装着されており、この繰出し部材9は媒体1に対してピッカローラ4の外周面より摩擦係数の高いゴム等により形成されている。
ピッカローラ4の中心軸はアーム10の一端に回転自在に支持され、アーム10の他端はフィードローラ1の中心軸に回転自在に取り付けられており、そしてフィードローラ5の中心軸とピッカローラ4の中心軸にはそれぞれプーリが設けられていて、両プーリに駆動ベルト11が巻きかけられており、フィードローラ1が図示しないモータ(駆動源)からの駆動力を受けて図10に矢印で示したように例えば時計回り方向に回転すると、その回転力がプーリ及び駆動ベルト11を介してピッカローラ4に伝達され、フィードローラ5と同期してピッカローラ4も時計回り方向に回転するものとなっている。
【0004】
フィードローラ5とゲートローラ6は、図11に示したように溝付きローラで、互いの溝により外周面同士がわずかにオーバラップさせて配置してある。
尚、ゲートローラ6は媒体繰出し時には回転せず、ゲートに媒体1が2枚以上進入してきた場合、フィードローラ5と接触する媒体1以外の媒体1に制動をかけて、媒体1が2枚以上同時に繰出さないように分離する働きをするものとなっている。
【0005】
このような構成による媒体繰出し機構は、媒体収納部3の移動部材2上に集積された媒体1を繰出す場合、図示しない上下動機構により移動部材2を上方に移動させて、移動部材2上の最上位の媒体1をピッカローラ4に押付け、そしてピッカローラ4をフィードローラ5と同期して回転させる。
このピッカローラ4の回転により媒体1が移動部材2上から繰出されてフィードローラ5とゲートローラ6により形成されるゲートに送り込まれ、フィードローラ5の回転により媒体1をフィードローラ5とゲートローラ6の間を通過させることで1枚ずつ分離する。
【0006】
分離された媒体1は搬送路7により所定の処理部等へ搬送されるが、その際媒体1はセンサ8により検知され、その検知信号に基づいて媒体1の繰出しが行われたことを図示しない制御部が認識する(例えば、特許文献1参照)。
ところで、上記媒体繰出し機構において媒体1に対する繰出し性能を高めるために、ピッカローラ4に装着する繰出し部材9をピッカローラ4の外周面より突出させた構造のものが提案されている。
【0007】
図12はこのような構造を持つピッカローラ4の拡大側面図で、この図に示したようにピッカローラ4に装着する繰出し部材9を、ピッカローラ4の外周面より高さhだけ突出させ、ピッカローラ4の回転により繰出し部材9で媒体1を繰出すようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2008−63075
【特許文献2】特開2008−63090
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の技術においては、以下の問題がある。
図13は従来技術の問題点を示す正面図、図14は図13のB−B線断面図である。
これらの図に示したように移動部材2上の媒体1が少なくなった状態で、ピッカローラ4の回転により媒体1の繰出しを行う場合、ピッカローラ4の外周面より突出している繰出し部材9が媒体1を介して移動部材2を叩くため、その際の衝突音が顕著になると共に、繰出し部材9への負荷が増加して磨耗が促進されてしまうとことになる。
【0009】
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明は、外周面の一部に該外周面より突出する繰出し部材を設けたピッカローラを媒体収納部に配置し、該媒体収納部に収納された媒体を移動部材の移動により前記ピッカローラに押付け、前記ピッカローラを回転させて前記繰出し部材により前記媒体を繰出す媒体繰出し機構において、前記移動部材の前記ピッカローラとの対向面に、前記ピッカローラの両側に位置する突起を設け、前記移動部材の移動により前記突起で前記媒体をピッカローラに押付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このようにした本発明は、各ピッカローラの両側に位置するように移動部材に突起を設けることで、移動部材と媒体との間に空隙が生じ、移動部材上の媒体が少なくなった場合でもピッカローラの繰出し部材が移動部材を叩くことがなくなるので、衝突音を低減することができ、かつ繰出し部材に負荷がかかることもなくなるので、繰出し部材の磨耗を軽減することができるという効果が得られる。
【0012】
また、移動部材上の媒体が少なくなった状態で、媒体の繰出しを行う場合、媒体は突起間で撓みが生じるため、媒体同士の摩擦が小さくなって分離性が高まり、そのためピッカローラの回転により媒体を繰出す際に複数枚の同時繰出しを抑制することができるという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明による媒体繰出し機構の実施例を説明する。
【実施例】
【0014】
図1は第1の実施例を示す要部正面図、図2は同側面図である。
この図1及び図2に示したように本実施例は、移動部材2の媒体集積面である上面つまりピッカローラ4との対向面に媒体繰出し方向に沿うように複数の突起12を設けたものである。
この突起12は図1に示したように中心軸13に複数(図では4個)設けられたピッカローラ4に対して、各ピッカローラ4の両側に位置するように配置され、また各突起12は正面から見た形状が台形で、側面から見ると媒体繰出し方向に沿って所定の長さを有するように形成されていて、各ピッカローラ4の側面とそれに対応する突起14の上面端部との間には所定の隙間aができるように設定されている。
【0015】
この他の構成は図7〜図9で説明した従来のものと同様である
上述した構成の作用について説明する。
図3は実施例の作用を示す一部分正面図、図4は図3のA−A線断面図、図5と図6は媒体1同士の摩擦の低下を説明するための説明図である。
本実施例において媒体1は突起12上に集積され、移動部材2の上面から浮き上がった状態となっている。
【0016】
この媒体1の繰り出しを行う場合、従来と同様に移動部材2を上方に移動させ、突起12を介して最上位の媒体1をピッカローラ4に押付ける。
この状態で、ピッカローラ4を回転することにより行われるが、図3、図4に示したように移動部材2上の媒体1が少なくなった状態で繰出しを行う場合、ピッカローラ4の回転により外周面より突出している繰出し部材9は媒体1と衝突する。
【0017】
この場合、媒体1のピッカローラ4が衝突する部分の両側は、図3に示したように突起に12により支持された状態にあるため、繰出し部材9が媒体1と衝突したときでも、移動部材2の上面と最下位の媒体1に間に空隙gが確保され、この空隙gの緩衝作用により繰出し部材9が媒体1を介して移動部材2を叩くことがなくなり、繰出し部材9に大きな負荷がかかることもなくなる。
【0018】
また、このように移動部材2上の媒体1が少なくなった状態で、媒体1の繰出しを行う場合、移動部材2を上方に移動させてピッカローラ4に媒体1を押付けたとき、媒体1は図3、図4に示したように突起12間で撓みが生じることになる。
突起12がない移動部材上の媒体1同士は図5に示したように紙面全体が密着するが、突起12間で媒体1に撓みが生じると、図6に示したように媒体1同士に微小なずれbが発生する。
【0019】
媒体1の撓みはピッカローラ4の回転により繰出し部材9が媒体1と衝突することで大きくなり、それに従って媒体1同士のずれbも大きくなるため、繰出し部材9の媒体1への衝突が繰返されることで媒体1の撓みが周期的に変化すると共に媒体1同士の微小なずれも周期的に変化して、媒体1間にずれ速度が発生する。
摩擦力は一般に静止摩擦の方が動摩擦より大きいという「静止摩擦>動摩擦」の関係にあるため、ずれ速度により媒体1同士の摩擦が小さくなり、それにより媒体1の分離性が高まるので、ピッカローラ4の回転により媒体1を繰出す際に複数枚の同時繰出しを抑制することができる。
【0020】
尚、空隙gの緩衝作用によりピッカローラ4の繰出し部材9が移動部材2を叩かないようにするための突起12の高さは、繰出す媒体1の腰の強さや、移動部材2によるピッカローラ4への媒体1の押付け力等を考慮して、実験的に求めるようにするとよい。
また、ピッカローラ4の側面とそれに対応する突起14との間の隙間aも実験的に求めて設定するとよい。
【0021】
以上説明したように、第1の実施例では、各ピッカローラの両側に位置するように移動部材に突起を設けることで、移動部材と媒体との間に空隙が生じ、移動部材上の媒体が少なくなった場合でもピッカローラの繰出し部材が移動部材を叩くことがなくなるので、騒音を低減することができ、かつ繰出し部材に負荷がかかることもなくなるので、繰出し部材の磨耗を軽減することができるという効果が得られる。
【0022】
また、移動部材上の媒体が少なくなった状態で、媒体の繰出しを行う場合、媒体は突起間で撓みが生じるため、媒体同士の摩擦が小さくなって分離性が高まり、そのためピッカローラの回転により媒体を繰出す際に複数枚の同時繰出しを抑制することができるという効果も得られる。
図7は本発明の第2の実施例を示す要部側面図である。
【0023】
この実施例は媒体収納部3の底部に設けた繰出し口から媒体を分離して繰出すタイプの媒体繰出し機構であり、ピッカローラ4は外周の一部が媒体収納部3の底板3aに設けた穴(またはスリット)から媒体収納部3内に入り込み、媒体収納部3内に収納された媒体1は、媒体収納部3内に設けられた上下移動可能な移動部材14の下方への移動によりピッカローラ4に押付けるものとなっていて、この移動部材14の下面つまりピッカローラ4との対向面に複数の突起15が図1、図2に示した第1の実施例と同様に設けられている。
【0024】
また、媒体収納部3の繰出し口の下側に配置されたフィードローラ5と、その繰出し口の上側に配置されたゲートローラ6と、このフィードローラ5及びゲートローラ6により形成されるゲートを通過した媒体1を搬送する搬送路と、この搬送路を通過する紙幣を検知するセンサ8を備えている。
尚、ピッカローラ4は図10で説明した従来のものと同様にフィードローラ5と同期して回転するようになっている。
【0025】
このような構成を有する第2の実施例において媒体1の繰り出しは、移動部材2を下方に移動させ、最下位の媒体1をピッカローラ4に押付けた状態で、ピッカローラ4を回転することにより行うが、移動部材14に第1の実施例と同様に突起15を設けているため、第1の実施例と同様の作用、効果が得られる。
尚、上述した第1の実施例において突起12は正面から見た形状が台形とし、第2の実施例における突起15も同様の形状としたが、これに限られるものではなく、また突起12や15を設ける代わりに移動部材2を別の形状に変えてピッカローラ4の繰出し部材9が移動部材2を叩かない構造とすることも可能である。
【0026】
図8は突起12を別の形状とした例を示す正面図、図9は移動部材2を別の形状とした例を示す斜視図である。
図8は突起12(または15)の正面から見た形状を所定の曲面を有する波形(山形)としたものであるが、この他にも矩形、三角形等が考えられる。各突起12の配置等は第1、第2の実施例と同じである。
【0027】
このようにしてもピッカローラ4の繰出し部材9が移動部材2を叩くことがなく、また媒体1を撓ませることができるので、第1、第2の実施例と同様の効果が得られる。
図9は移動部材2の各ピッカローラ4と対向する位置にそれぞれスリット16を設けたもので、これらのスリット16に代えて長孔等を設けてもよい。
各スリット16は媒体繰出し方向に沿って所定の長さを有するように形成されていて、各スリット16の幅は各ピッカローラ4の厚さより大きい寸法に形成されている。
【0028】
このようにした移動部材2では、移動部材2の移動により媒体1をピッカローラ4に押付けたとき、ピッカローラ4がスリット16(または長孔)の幅内で媒体1に接触するので、ピッカローラ4を回転させたとき繰出し部材9が移動部材2を叩くことがなく、また媒体1を撓ませることもできるので、第1、第2の実施例と同様の効果が得られる。
また、上述した第1、第2の実施例では、媒体1を水平方向に繰出す媒体繰出し機構について説明したが、媒体収納部に立位状態で集積された媒体を移動部材によりピッカローラに押付け、ピッカローラの回転により媒体を上方または下方に繰り出すタイプの媒体繰出し機構に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施例を示す要部正面図
【図2】第1の実施例を示す要部側面図
【図3】実施例の作用を示す一部分正面図
【図4】図3のA−A線断面図
【図5】媒体1同士の摩擦の低下を説明するための説明図
【図6】媒体1同士の摩擦の低下を説明するための説明図
【図7】第2の実施例を示す要部側面図
【図8】突起を別の形状とした例を示す正面図
【図9】移動部材を別の形状とした例を示す斜視図
【図10】従来例を示す側面図
【図11】従来例におけるゲートの正面図
【図12】ピッカローラ4の拡大側面図
【図13】従来技術の問題点を示す正面図
【図14】図13のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 媒体
2 移動部材
3 媒体収納部
4 ピッカローラ
5 フィードローラ
6 ゲートローラ
7 搬送路
8 センサ
9 繰出し部材
10 アーム
11 駆動ベルト
12 突起
13 中心軸
14 移動部材
15 突起
16 スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面の一部に該外周面より突出する繰出し部材を設けたピッカローラを媒体収納部に配置し、該媒体収納部に収納された媒体を移動部材の移動により前記ピッカローラに押付け、前記ピッカローラを回転させて前記繰出し部材により前記媒体を繰出す媒体繰出し機構において、
前記移動部材の前記ピッカローラとの対向面に、前記ピッカローラの両側に位置する突起を設け、前記移動部材の移動により前記突起で前記媒体をピッカローラに押付けることを特徴とする媒体繰出し機構。
【請求項2】
外周面の一部に該外周面より突出する繰出し部材を設けたピッカローラを媒体収納部に配置し、該媒体収納部に収納された媒体を移動部材の移動により前記ピッカローラに押付け、前記ピッカローラを回転させて前記繰出し部材により前記媒体を繰出す媒体繰出し機構において、
前記移動部材の前記ピッカローラと対向する位置に、前記ピッカローラの厚さより大きい幅のスリットまたは孔を設け、前記移動部材の移動により前記媒体をピッカローラに押付けたとき、前記ピッカローラは前記スリットまたは孔の幅内で前記媒体に接触することを特徴とする媒体繰出し機構。
【請求項1】
外周面の一部に該外周面より突出する繰出し部材を設けたピッカローラを媒体収納部に配置し、該媒体収納部に収納された媒体を移動部材の移動により前記ピッカローラに押付け、前記ピッカローラを回転させて前記繰出し部材により前記媒体を繰出す媒体繰出し機構において、
前記移動部材の前記ピッカローラとの対向面に、前記ピッカローラの両側に位置する突起を設け、前記移動部材の移動により前記突起で前記媒体をピッカローラに押付けることを特徴とする媒体繰出し機構。
【請求項2】
外周面の一部に該外周面より突出する繰出し部材を設けたピッカローラを媒体収納部に配置し、該媒体収納部に収納された媒体を移動部材の移動により前記ピッカローラに押付け、前記ピッカローラを回転させて前記繰出し部材により前記媒体を繰出す媒体繰出し機構において、
前記移動部材の前記ピッカローラと対向する位置に、前記ピッカローラの厚さより大きい幅のスリットまたは孔を設け、前記移動部材の移動により前記媒体をピッカローラに押付けたとき、前記ピッカローラは前記スリットまたは孔の幅内で前記媒体に接触することを特徴とする媒体繰出し機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−58870(P2010−58870A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224057(P2008−224057)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
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