説明

嫌気処理装置及び嫌気処理方法

【課題】効率的に有機物を分解し得る嫌気処理装置を提供する。
【解決手段】酸生成菌及びメタン生成菌を含有するグラニュールが充填されたグラニュール充填層21aを有するグラニュール槽21が設けられてなり、該グラニュール槽の下部から有機物含有廃水が供給され、前記グラニュール槽の上部からグラニュール槽外へ処理水が排出されるように構成されてなる嫌気処理装置1であって、前記グラニュール槽の上下方向に沿って延びる回転軸22aを有し、該回転軸の周方向に前記グラニュール充填層の下部の水を撹拌する撹拌装置22が備えられてなり、前記グラニュール充填層の下部には、該撹拌装置による撹拌によって水が前記周方向に撹拌される撹拌領域23が形成され、該撹拌領域において前記グラニュール槽内に前記有機物含有廃水が供給され、該撹拌領域の上方には、上向流領域24が形成されるように構成される嫌気処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気処理装置及び嫌気処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機物含有廃水(例えば、し尿廃水、下水、工場廃水(食品工場、化学工場、電子産業工場、パルプ工場等の工場からの廃水)等)の浄化処理においては、嫌気性微生物(例えば、酸生成菌、メタン生成菌等)を含有するグラニュール状の汚泥(以下、「グラニュール」ともいう。)を有するグラニュール槽内で有機物含有廃水を嫌気性微生物によって嫌気処理することにより、有機物含有廃水から有機物を除去することが行われている。嫌気処理においては、例えば、有機物含有廃水中の有機物(例えば、たんぱく質や多糖類等)が、加水分解による低分子化および酸生成菌による有機酸(例えば、酢酸等)の生成を経てメタン生成菌によりガス(例えば、メタンガス、炭酸ガス等)に分解されることにより、有機物含有廃水から有機物が除去される。
【0003】
嫌気処理装置としては、例えば、図3に示すように、グラニュールが充填されたグラニュール充填層102aを有するグラニュール槽102と、該グラニュール充填層102a全体を撹拌する撹拌装置103とが設けられてなり、前記グラニュール槽102の下部から該グラニュール槽102内に有機物含有廃水100Aが供給され、前記グラニュール槽102内において嫌気性微生物により有機物含有廃水100Aを嫌気処理して嫌気処理水100Bが得られ、前記グラニュール槽102の上部から該グラニュール槽102外へ前記嫌気処理水100Bが排出されるように構成されてなり、嫌気処理により生じたガス100Cである気泡が付着することによってグラニュール槽102の水中で浮力により上昇したグラニュールから、ガス100Cが取り除かれることにより、グラニュールを沈降させるガスドーム104が備えられてなる嫌気処理装置101が知られている(例えば、特許文献1)。
この嫌気処理装置101は、前記撹拌装置103によって前記グラニュール充填層102a全体を撹拌することにより、有機物及び嫌気性微生物の接触効率が高められて嫌気処理を促進する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2952304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、斯かる嫌気処理装置では、有機物含有廃水から有機物を十分に効率良く除去することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、有機物含有廃水から有機物を十分に効率良く除去することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、酸生成菌及びメタン生成菌を含有するグラニュールが充填されたグラニュール充填層を有するグラニュール槽が設けられてなり、該グラニュール槽の下部から該グラニュール槽内に有機物含有廃水が供給され、前記グラニュール槽内において酸生成菌及びメタン生成菌により有機物含有廃水を嫌気処理して嫌気処理水が得られ、前記グラニュール槽の上部からグラニュール槽外へ前記嫌気処理水が排出されるように構成されてなる嫌気処理装置であって、
前記グラニュール槽の上下方向に沿って延びる回転軸を有し、該回転軸の周方向に前記グラニュール充填層の下部の水を撹拌する撹拌装置が備えられてなり、前記グラニュール充填層の下部には、該撹拌装置による撹拌によって水が前記周方向に撹拌される撹拌領域が形成され、該撹拌領域において前記グラニュール槽内に前記有機物含有廃水が供給され、該撹拌領域の上方には、水が上向流で流れる上向流領域が形成されるように構成されてなることを特徴とする嫌気処理装置にある。
【0008】
斯かる嫌気処理装置によれば、前記撹拌装置による撹拌により、前記グラニュール充填層の下部(撹拌領域)では、有機物(例えば、たんぱく質や多糖類等)と酸生成菌とが接触されやすくなり、酸生成菌が優先種となり、有機酸の生成が良好に行われる条件にできる。また、前記グラニュール充填層全体を均一には撹拌しないため、上向流領域には、前記グラニュール充填層の下部で生成した有機酸が順次供給され、メタン発酵が良好に行われる条件にできる。よって、反応効率が向上する。さらに、アルカリ等のpH調整薬剤の使用量も削減できる。
従って、斯かる嫌気処理装置によれば、まず前記撹拌領域では前記上向流領域に比して有機酸の生成が活発に行われ、一方前記上向流領域ではメタンの生成が活発に行われるため、有機物含有廃水から有機物を十分に効率良く除去し得る。また、有機物を十分に効率良く除去し得るため、グラニュール槽をコンパクト化し得るという利点もある。
【0009】
これに対して、特許文献1の如く、撹拌装置によりグラニュール充填層全体を撹拌する嫌気処理装置では、撹拌装置によりグラニュールが存在する領域全体の撹拌によって、グラニュール充填層が有機酸の生成が活発に行われる領域と、メタンの生成が活発に行われる領域とに分かれ難くなる。従って、斯かる嫌気処理装置では、有機物含有廃水から有機物を効率良く除去することができない。
また、撹拌装置が設けられていない嫌気処理装置では、グラニュール槽内のうち、有機物含有廃水が供給された部分付近に於いて、有機物の濃度が高まり酸生成菌により有機酸が生成されやすくなり、その結果、局所的にpHが低下して、局所的にpHが低下した部分のメタン生成菌の活性が低下してしまう。さらに、有機物と嫌気性微生物との接触効率が低い。従って、斯かる嫌気処理装置では、有機物含有廃水から有機物を効率良く除去することができない。
【0010】
また、本発明に係る嫌気処理装置においては、好ましくは、前記グラニュール槽より排出された嫌気処理水を、該嫌気処理水よりもグラニュールの含有率が低い固液分離処理水と、該嫌気処理水よりもグラニュールの含有率が高い濃縮水とに固液分離する固液分離部が備えられ、前記撹拌領域を介さずに前記上向流領域に前記濃縮水を返送するように構成されてなる。
【0011】
前記グラニュール槽より排出された処理水中のグラニュールは、撹拌領域に比して、酸生成菌の量に対するメタン生成菌の量の比が大きいものであるため、斯かる嫌気処理装置によれば、前記上向流領域に於いて、メタン生成菌の濃度が高まり、有機酸や単糖類がメタン生成菌に接触されやすくなりメタンガスや、炭酸ガスにまで分解され、その結果、有機物含有廃水から有機物をより一層効率よく除去し得るという利点がある。
【0012】
また、本発明は、前記嫌気処理装置を用いて、有機物含有廃水から有機物を除去することを特徴とする嫌気処理方法にある。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、有機物含有廃水から有機物を十分に効率良く除去し得るという効果が奏される。
【0014】
また、通常のグラニュール槽を用いる嫌気性処理装置では、底部のグラニュールや有機物の濃度を均一化させるべく、グラニュール槽内に原水を均等に流入させるための分配機構を設置することが多いが、本発明によれば、分配機構を簡素化した場合であっても撹拌装置により底部のグラニュールや有機物の濃度を均一化し得るという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る嫌気処理装置の概略図。
【図2】一実施形態に係る嫌気処理装置における嫌気処理部の概略図。
【図3】従来の嫌気処理装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の嫌気処理装置1は、酸生成菌及びメタン生成菌が含有されたグラニュールが充填されたグラニュール充填層21aを有するグラニュール槽21が設けられ、該グラニュール槽21内において酸生成菌及びメタン生成菌により有機物含有廃水Aが嫌気処理されて嫌気処理水及びバイオガスDを得る嫌気処理部2が備えられてなる。一方で、前記グラニュール槽21には、ガスドーム、即ち、気固液分離手段が備えられていない。
前記嫌気処理は、酸素を介さずに、前記有機物含有廃水Aに含まれる有機物を酸生成菌及びメタン生成菌で分解する処理を意味し、嫌気処理では、前記バイオガスDとしてメタン、炭酸ガス等を含有するガスが生成される。
【0018】
また、本実施形態の嫌気処理装置1は、前記グラニュール槽21より排出された嫌気処理水を、該嫌気処理水よりもグラニュールの含有率が低い固液分離処理水B、及び該嫌気処理水よりもグラニュールの含有率が高い濃縮水Cに固液分離する固液分離部3が備えられてなる。
【0019】
さらに、本実施形態の嫌気処理装置1は、前記グラニュール槽21の下部から該グラニュール槽21内に有機物含有廃水Aが供給されるように構成されてなる。
また、本実施形態の嫌気処理装置1は、前記グラニュール槽21の上部からグラニュール槽21外へ前記嫌気処理水が排出されるように構成されてなる。具体的には、嫌気処理水中のグラニュールからガスを取り除く処理がグラニュール槽21内で意図的には行われずに、前記グラニュール槽21の上部からグラニュール槽21外へ前記嫌気処理水が排出されるように構成されてなる。
【0020】
また、本実施形態の嫌気処理装置1は、前記グラニュール槽21から排出された嫌気処理水が固液分離部3に移送され、固液分離処理水Bが固液分離処理水貯留槽(図示せず)に移送され、濃縮水Cが濃縮水貯留槽(図示せず)及びグラニュール槽21に移送され、バイオガスDがバイオガス貯留槽(図示せず)に移送されるように構成されてなる。
【0021】
さらに、本実施形態の嫌気処理装置1は、有機物含有廃水Aをグラニュール槽21に移送する廃水移送経路4aと、嫌気処理水を固液分離部3に移送する嫌気処理水移送経路4bと、固液分離処理水Bを固液分離処理水貯留槽(図示せず)に移送する固液分離処理水移送経路4cと、濃縮水Cを濃縮水貯留槽(図示せず)に移送する濃縮水移送経路4dと、濃縮水Cを嫌気処理部2に移送(返送)する濃縮水返送経路4eと、バイオガスDをバイオガス貯留槽(図示せず)に移送するバイオガス移送経路4fとを備えてなる。
【0022】
前記有機物含有廃水Aは、前記嫌気性微生物により生物分解され得る有機物等を含有する廃水であれば、特に限定されるものではないが、該有機物含有廃水Aとしては、例えば、し尿廃水、下水、工場廃水(食品工場、化学工場、電子産業工場、パルプ工場等の工場からの廃水)等が挙げられる。前記グラニュール槽21入口(有機物含有廃水Aのグラニュール槽内への流入口)における前記有機物含有廃水AのBOD濃度は、例えば、10〜10000mg/L以下であり、より具体的には20〜2000mg/Lである。また、前記グラニュール槽21入口における前記有機物含有廃水AのCODcr濃度は、20〜20000mg/L以下であり、より具体的には40〜4000mg/Lである。
【0023】
前記嫌気処理部2は、前記グラニュール槽21に於いて、グラニュールが、好ましくは、運転時(廃水供給時)に、底部から水面の高さの3/4以上充填され、より好ましくは槽内の略全体に充填されるように構成されてなる。
【0024】
前記嫌気処理部2は、前記グラニュール槽21の上下方向に伸びる回転軸22aを有し、該回転軸の周方向に前記グラニュール充填層21aの下部の水が撹拌されて撹拌領域23を形成する撹拌装置22が備えられてなる。前記回転軸22aは、軸回転するように構成されてなる。
【0025】
前記グラニュール槽21は、円筒状に形成されてなる。
【0026】
前記嫌気処理部2は、前記回転軸22aと、円筒状のグラニュール槽21における仮想軸とが略同軸となるように形成されてなる。
【0027】
さらに、前記嫌気処理部2は、前記グラニュール充填層21aの下部に、該撹拌装置22による撹拌によって水が前記周方向に撹拌される撹拌領域23が形成され、該撹拌領域23において前記グラニュール槽21内に前記有機物含有排水Aが供給され、該撹拌領域23の上方に、水が上向流で流れる上向流領域24を形成するように構成されてなる。前記嫌気処理部2は、斯かる構成を有することにより、前記撹拌領域23におけるメタン生成菌の量に対する酸生成菌の量の比が前記上向流領域24における比に対して相対的に大きい酸生成菌層を前記撹拌領域23に形成し、且つ前記上向流領域24における酸生成菌量に対するメタン生成菌の量の比が前記撹拌領域23における比に対して相対的に大きいメタン生成菌層を前記上向流領域24に形成し得る。
前記グラニュール充填層21aにおいて、前記撹拌領域23および前記上向流領域24のグラニュールの濃度は、好ましくは20000〜100000mg-SS/L、より好ましくは30000〜100000mg-SS/Lである。
【0028】
また、前記嫌気処理部2は、必要に応じて、撹拌領域23の原水供給部付近、撹拌領域23と上向流領域24との境目付近、上向流領域24の処理水流出部付近のpHを測定するpH計(図示せず)がそれぞれ設けられ、pHを測定するように構成されてなる。また、前記嫌気処理部2は、撹拌領域23、及び上向流領域24にpH調整用の薬剤を添加するpH調整薬剤添加機構(図示せず)を備えてなることが好ましい。pH調整用の薬剤添加口の位置は、撹拌領域23及び上向流領域24に設けて各領域毎に調整するのが好ましい。pHの範囲は、上向流領域24では6〜8に調整するが、撹拌領域23では6以下となっても問題はない。
【0029】
前記撹拌装置22は、パドル状の羽根板が、面が垂直方向となるように設置された撹拌翼22bを備えてなる。該羽根板は、前記回転軸22aの軸回転により、該回転軸22aの周方向に水を押し出すように構成されてなる。
【0030】
また、前記嫌気処理部2は、好ましくは前記グラニュール槽21の槽内側底面部から水面高さLの1/3の高さ、より好ましくは1/4の高さまでの範囲内に、前記撹拌翼22b全体が収まるように構成されてなる(寸法の符号は図2に示す。)。
【0031】
さらに、前記嫌気処理部2は、前記グラニュール槽21の水深(槽内側底面部から水面までの高さ)Lに対する、前記撹拌翼22bの翼高(撹拌翼22bの上辺と下辺との距離)hの比が、好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.15〜0.2である。
本実施形態の嫌気処理装置1は、L/hが0.1以上であることにより、前記グラニュール槽21の水を収容しうる部分に対して撹拌翼22bを大きくすることができるため、前記グラニュール槽21内の下部の水を十分に撹拌することができるという利点がある。
また、本実施形態の嫌気処理装置1は、L/hが0.4以下であることにより、前記グラニュール槽21内の上部の水が撹拌され難くなるため、グラニュール槽21の水の上下方向の混合が生じ難くなり、メタン生成菌の量に対する酸生成菌の量の比に関して、酸生成菌層とメタン生成菌層との差を大きくすることができるという利点がある。また、前記グラニュール槽21の槽内側底面部に撹拌翼22bが接触し難くなり、グラニュールの破壊を極力抑制できるという利点がある。
【0032】
また、前記嫌気処理部2は、前記グラニュール槽21の内径Dに対する、前記撹拌翼22bの翼径(回転軸22aの軸から撹拌翼22bの先端までの距離)dの比(d/D)が、好ましくは0.6〜0.9、より好ましくは0.7〜0.8である。
本実施形態の嫌気処理装置1は、d/Dが0.6以上であることにより、前記グラニュール槽21の水を収容しうる部分に対して撹拌翼22bを大きくすることができるため、前記グラニュール槽21内の下部の水を十分に撹拌することができるという利点がある。また、d/Dが0.9以下であることにより、グラニュール槽21の内周壁面に撹拌翼22bが接触し難くなり、グラニュールの破壊を極力抑制できるという利点がある。
【0033】
前記撹拌翼22bの回転数は、好ましくは1〜30rpm、より好ましくは2〜20rpmである。
本実施形態の嫌気処理装置1は、該回転数が1rpm以上であることにより、前記グラニュール槽21内の下部の水を十分に撹拌することができるという利点がある。
また、本実施形態の嫌気処理装置1は、該回転数が30rpm以下であることにより、撹拌翼21bがグラニュールに衝突することにより生じる衝撃力が抑制されるため、グラニュールが潰れ難くなるという利点がある。また、グラニュール槽21の撹拌翼の上部の水の上下方向の混合が生じ難くなり、メタン生成菌の量に対する酸生成菌の量の比に関して、酸生成菌層とメタン生成菌層との差を大きくすることができるという利点がある。
【0034】
前記固液分離部3は、グラニュールの重力沈降により、嫌気処理水から固液分離処理水Bと濃縮水Cとを生成する重力沈降槽31が備えられてなる。
【0035】
本実施形態の嫌気処理装置1は、前記重力沈降槽31に移送されたグラニュールに付着しており且つ重力沈降槽31内で分離されたバイオガスDと、前記重力沈降槽31内での嫌気処理により生じたバイオガスDとが、バイオガス貯留槽(図示せず)に移送されるように構成されてなる。
【0036】
また、本実施形態の嫌気処理装置1は、撹拌領域23を介さずに、上向流領域24に濃縮水Cを返送するように構成されてなる。具体的には、濃縮水Cを撹拌翼の上端部より高い位置に返送するように構成されている。
【0037】
本実施形態の嫌気処理装置は、上記の如く構成されてなるが、次ぎに、本実施形態の嫌気処理方法について説明する。
【0038】
本実施形態の嫌気処理方法では、本実施形態の固液分離装置1を用いて、有機物含有廃水Aから有機物を除去する。
具体的には、本実施形態の嫌気処理方法では、前記グラニュール槽21の下部から該グラニュール槽21内に有機物含有廃水Aを供給する。次に、前記撹拌装置22による撹拌によって、前記グラニュール槽21の下部に、該撹拌装置22による撹拌によって水が前記周方向に撹拌される撹拌領域23を形成し、該撹拌領域23の上方に、水が上向流で流れる上向流領域24を形成しながら、酸生成菌及びメタン生成菌により有機物含有廃水Aを嫌気処理して嫌気処理水を得る。
【0039】
本実施形態の嫌気処理装置及び嫌気処理方法は、上記のように構成されているので、撹拌領域23と上向流領域24との機能分担による処理の効率化に加えて、以下の利点を有するものである。
【0040】
即ち、本実施形態の嫌気処理装置1は、前記嫌気処理水中のグラニュールからガスを取り除く処理が前記グラニュール槽内で意図的には行われずに、前記グラニュール槽21の上部からグラニュール槽21外へ前記嫌気処理水が排出されるように構成されてなることにより、即ち、気固液分離手段が備えられないことにより、最大でグラニュール槽21の水面直下までグラニュールを充填することができ、反応領域が拡大する結果、前記グラニュール槽21の単位容積当りの処理量を大きくすることができる。
これに対して、グラニュール槽内に気固液分離手段が備えられてなる嫌気処理装置では、グラニュールが存在せず有機物の分解に寄与しない領域の比率が大きい分、単位容積当りの処理量は小さくなる。
従って、本実施形態の嫌気処理装置では、有機物含有廃水から有機物を効率良く除去することができる。
【0041】
尚、本実施形態の嫌気処理装置及び嫌気処理方法は、上記構成を有するものであったが、本発明の嫌気処理装置及び嫌気処理方法は、上記構成に限定されず、適宜設計変更可能である。
例えば、前記撹拌翼22bは、1段の垂直パドル翼に限らず、2段交差パドル翼、格子翼、門型翼、傾斜パドル翼、プロペラ翼、三枚後退翼であってもよい。
【0042】
また、本実施形態の嫌気処理装置1は、撹拌領域23と上向流領域24とをより確実に分けるために、撹拌領域23と上向流領域24との間に水の上下方向の流れを抑制する部材(邪魔板、棒状部材等)が設けられても良い。
【0043】
さらに、本実施形態の嫌気処理装置1は、前記嫌気処理水中のグラニュールからガスを取り除く処理が前記グラニュール槽21内で意図的には行われないように構成されてなるが、本発明の嫌気処理装置1は、前記嫌気処理水中のグラニュールからガスを取り除く処理が前記グラニュール槽21内で意図的に行われるように構成されてもよい。即ち、本発明の嫌気処理装置1は、グラニュールからガスを取り除く気固液分離手段が前記グラニュール槽21内に備えられてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1:嫌気処理装置、2:嫌気処理部、3:固液分離部、4a:廃水移送経路、4b:嫌気処理水移送経路、4c:固液分離処理水移送経路、4d:濃縮水移送経路、4e:濃縮水返送経路、4f:バイオガス移送経路、21:グラニュール槽、21a:グラニュール充填層、22:撹拌装置、22a:回転軸、22b:撹拌翼、23:撹拌領域、24:上向流領域、31:重力沈降槽、A:有機物含有廃水、B:固液分離処理水、C:濃縮水、D:バイオガス、101:嫌気処理装置、102:グラニュール槽、102a:グラニュール充填層、103:撹拌装置、104:ガスドーム、100A:有機物含有廃水、100B:嫌気処理水、100C:ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸生成菌及びメタン生成菌を含有するグラニュールが充填されたグラニュール充填層を有するグラニュール槽が設けられてなり、該グラニュール槽の下部から該グラニュール槽内に有機物含有廃水が供給され、前記グラニュール槽内において酸生成菌及びメタン生成菌により有機物含有廃水を嫌気処理して嫌気処理水が得られ、前記グラニュール槽の上部からグラニュール槽外へ前記嫌気処理水が排出されるように構成されてなる嫌気処理装置であって、
前記グラニュール槽の上下方向に沿って延びる回転軸を有し、該回転軸の周方向に前記グラニュール充填層の下部の水を撹拌する撹拌装置が備えられてなり、前記グラニュール充填層の下部には、該撹拌装置による撹拌によって水が前記周方向に撹拌される撹拌領域が形成され、該撹拌領域において前記グラニュール槽内に前記有機物含有廃水が供給され、該撹拌領域の上方には、水が上向流で流れる上向流領域が形成されるように構成されてなることを特徴とする嫌気処理装置。
【請求項2】
前記グラニュール槽より排出された嫌気処理水を、該嫌気処理水よりもグラニュールの含有率が低い固液分離処理水と、該嫌気処理水よりもグラニュールの含有率が高い濃縮水とに固液分離する固液分離部が備えられ、前記撹拌領域を介さずに前記上向流領域に前記濃縮水を返送するように構成されてなる請求項1記載の嫌気処理装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2記載の嫌気処理装置を用いて、有機物含有廃水から有機物を除去することを特徴とする嫌気処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−35194(P2012−35194A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177485(P2010−177485)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】