説明

子宮頸部HPVの新たな検出方法

本発明は、14のヒトパピローマウイルス型(すなわち、子宮頸癌の原因に関して(おそらく)高リスクとして分類されるHPV16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66および68)、および候補hrHPV型(HPV67)の、これらのhrHPV型のE7オープンリーディングフレームの約(215)〜(245)塩基対のフラグメントを協働して増幅する、6の重複するフォワードプライマーおよび9の重複するバックワードプライマーのセットを用いた一斉検出のための、コンセンサスPCRベースの方法を記載する。反応産物の検出のために、EIAフォーマットが、例示される型特異的オリゴプローブのカクテルの援助により、使用可能である。さらに、発明者らは、検出方法と適合し得るこれら(15)のHPVの効率的な分類方法を開発した。このRLB分類システムは、固定された型特異的オリゴプローブによるPCR産物のハイブリダイゼーションに関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮頸癌におけるヒトパピローマウイルス(HPV)の検出、より詳細には、高リスク子宮頸部HPVのヌクレオチド配列に基づく検出に関する。
【背景技術】
【0002】
高リスクヒトパピローマウイルス(hrHPV)感染と子宮頸癌との因果関係が、疫学的研究および機能的研究から明らかとなってきた(Zur Hausen, 2002年, Nat. Rev. Cancer 2:342−350; Bosch et al., 2002年, J. Clin. Pathol. 55:144−265)。HPVゲノムは、8kb環状二本鎖DNAであって、同じ鎖上にすべてコードされる8遺伝子を含むDNAである。ヒトにおいて、200もの異なるHPV型が識別されている(Burd, E. M. 2003年, Clin Microbiol Rev.16:1−17);これらのおおよそ40の型が、生殖管に感染することができるとわかっている。広い世界規模のケースコントロール研究のプールされた分析に基づいて、hrHPV型の疫学的分類がなされ、15のHPV型(HPV16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68,73および82)を高リスクであるとして分類し、別の3型(HPV26,53および66)をおそらく高リスクであるとして分類することができることが示されている(Munoz et al., 2003年, N. Eng. J. Med. 348:518−527)。hrHPVは、子宮頸部扁平上皮細胞癌(SCC)の99.7%において(Walboomers et al., 1999年, J. Pathol. 189:12−19)、および子宮頸部腺癌および腺扁平上皮癌の少なくとも94%で(Zielinsky et al., 2003年, J. Pathol. 201:535−543)、検出されている。
【0003】
子宮頸癌は、すべての女性の癌のほぼ10%の割合を占め、発展途上国の女性の癌の主因である(Franco, E. L. et al., 2001年, Can Med Assoc J 164:1017−25)。この病気の最も高い発生率を有する地域は、一般に、最も高い死亡率を有する地域であり、中央アメリカ、アフリカ、およびカリブ海諸島を含む(Ferlay, J. et al., 1998年. IARC CancerBase no. 3. Lyon:IARC Press.)。ヨーロッパおよび北アメリカでの発生は、おそらく、パパニコロ(Pap)スミア試験(Franco et al., ibidにレビューされる)によるルーチンスクリーニングの出現によって、過去50年にわたって急激に下降した。子宮頸癌は、生存率が診断時の病気の段階に直接関連する、最も予防可能な癌の1つである。5年生存率は、遠隔的な病気と診断された女性の13%とは反対に、局所的な病気と初期診断された女性について、88%である(Report of the Gynecologic Cancers Progress Review Group, November 2001年, National Cancer Institute)。米国において子宮頸癌と診断された女性の50%以上は、過去3年にPapスミアを受けていなかった(Wright, T. C. et al., 2000年, JAMA 283:81−6)。
【0004】
Papスクリーニングは依然として、癌および前癌子宮頸部病変を検出する有力な方法であり、5千万以上の女性が、米国において、毎年、Papスクリーニングを経験している(Wright, T. C. et al., 2002年, JAMA 287:2120−29)。その広範囲に及ぶ使用にも関わらず、Papスミア試験は、部分的に効果的であるだけで、実質的な程度の偽陰性および偽陽性の双方の試験結果を示しており、いくつかの推定に基づけば、従来のPapスミア試験の感度は、50〜60%(Lorincz, A. T. and Richart, R. M., 2003年, Arch Pathol Lab Med 127:959−68; Nanda, K. et al., 2000年. Ann Intern Med 132:810.; Fahey MT, et al. 1995年, Am J
Epidemiol.141:680−9; Myers ER, McCrory DC, Subramanian S, et al. 2000年, Obstet Gynecol 96:645−52.)から70〜80%(Clavel, C. et al., 2001年, Br J Cancer 84:1616)にまで変動する。液体ベースの試験などの、細胞学的スクリーニングおよびサンプリングにおける最近の革新は、これらの方法の感度を75〜95%に改善した(Lorincz, A. T. et al. ibid ; Nanda, K. et al., ibid. ;
Hutchinson ML, Zahniser DJ, Sherman ME, et al. 1999年 Cancer.87:48−55)。それにも関わらず、これらの改善された方法でさえ、異常な、そしてしばしば前癌の細胞のかなりの部分を検出しない。hrHPV DNA試験のPap試験への付加が、特に子宮頸癌および最も近い前癌病変(すなわち、病変CIN3)についての高い陰性予測値のために、子宮頸部スクリーニングプログラムの有効性を改善しそうである。さらに、いくつかの機関が、従来の細胞学的方法との併用における、またはある場合ではその代用における、HPV DNAスクリーニングの使用を標榜している(Wright, T. C. and Schiffman, M., 2003年, N. Engl. J. Med. 348:489−90)。
【0005】
現在最も幅広く利用されているHPV試験は、2つの原理に基づいている。1つ目は、FDA承認のハイブリッドキャプチャ2(hc2)アッセイにおいて使用されるように、HPV標的DNAの、全長HPV型特異的RNAのカクテルとのハイブリダイゼーションに続き、固体相にDNA/RNAハイブリッドを捕獲することを含む。続いて、シグナル増幅が、特異的にDNA/RNAハイブリッドを認識する複数の結合抗体とのハイブリッドの結合によって、達成される。2つ目の原理は、すべての関連する生殖系のhrHPV遺伝子型のE1またはL1オープンリーディングフレーム内で高度に保存される領域に結合する、いわゆるコンセンサスプライマーまたはジェネラルプライマーによって向けられる、HPV標的DNAのPCR増幅を含む。種々の読出しシステムが後者のアッセイのために記載されてきたが、個々に、もしくはカクテルのいずれかで、型特異的オリゴプローブを用いる(Jacobs et al., 1997年, J Clin Microbiol 35:791−795;
Kleter et al., 1998年, Am J Pathol: 153:1731−1739)酵素免疫アッセイ(たとえばEIA、DEIA)、またはリバースラインブロットアッセイ(たとえばLiPA、RLB(van den Brule et al., 2002年, J Clin Microbiol 40:779−787; Kleter et al., 1999年, J Clin Microbiol; 37:2508−2517; Gravitt et al., 1998年, J Clin Microbiol 36:3020−3027))が、今日最も普通に使用されている。HPVコンセンサスPCRシステムのうち、MY11/09−PCRプライマーから再設計されたL1ベースのPGMY−PCR(Gravitt et al., 2000年, J Clin Microbiol 38:357−361)、GP5+/6+−PCR(van den Brule et al., 2002年, J Clin Microbiol 40:779−787)およびSPF10−LiPA(Kleter et al., 1999年, J Clin Microbiol 37:2508−2517)が、現在最も頻繁に利用されている。より最近、新規のL1ベースのコンセンサスPCRシステムである、Roche AMPLICOR(登録商標)HPV Testが発売され、これは、13のhrHPV型を検出することができる。
【0006】
現在すべての利用可能なhrHPV試験システムは、アッセイまたは読出し条件を適合させても容易に解決され得ないいくつかの固有の欠点を有する。特に、hrHPV陽性の症例にリフレックス細胞学が適用されるhrHPV試験が一次スクリーニング手段として考察される場合、これらの欠点は、高いグレードの前癌性子宮頸部病変および子宮頸癌の試験の陽性または陰性のいずれかの予測値について、実質的に陰性の結果を有するかもしれない。このことは、自己採取された膣材料がスクリーニング目的のために使用される場合に、特に関連がある。この材料は、信頼できる細胞学的評価に適していないが、子宮頸部のhrHPV状態を高度に表す。
【0007】
A.hc2法は、プローブ混合物においては表されない、低リスクHPV型を含むHPV型とのある程度の交差反応を示す(Castle et al., Cancer Epidemiol Biomarkers
Prev. 2002年: 11:1394−1399)。これは、子宮頸癌のリスク評価についてのこのアッセイの特異性に負の影響を及ぼす。
【0008】
B.一方、種々のPCRベースのシステムは、hrHPVに対して異なる分析感受性を示し、これは実際、高いグレードの前癌性子宮頸部病変および子宮頸癌に対して異なる特異性を引き起こす。後者は、多くのhrHPV感染、特に低いウイルス負荷を有するhrHPV感染が、臨床的に関連のない一過性感染を反映する一方で、高いグレードの子宮頸部の病変に関連する感染は概して、増大したウイルス負荷によって特徴付けられるという事実によっている(Snijders et al., J Pathol. 2003年: 201:1−6; van
Duin et al., Int J Cancer 2002年: 98:590−595; Schlecht et al Int J cancer 2003年: 103:519−524)。ゆえに、分析試験の感度(すなわち、hrHPVを検出する感度)は、臨床実施およびスクリーニング実施における使用にとって充分な要件ではない。hrHPVを検出するのに感度のよ過ぎる試験は、高いグレードの子宮頸部病変についての特異性の低下を被る。というのも、一過性のhrHPV感染の検出の増大が、低いウイルス負荷によって特徴付けられるからである。結果として、ほとんどのコンセンサスhrHPV DNAアッセイは、高いグレードの前癌性子宮頸部病変および子宮頸癌について類似の感度を示す一方で、特異性値は著しく変動し得る。現在、GP5+/6+PCRおよびhc2アッセイは、高いグレードの前癌性子宮頸部病変および子宮頸癌について、感受性と特異性との間で最適な均衡を示すただ2つの試験であり、したがって臨床的に確証されていると考えることができる(Lorincz and Richart, Arch
Pathol Lab Med 2003年: 127:959−968; Bulk et al. Int J Cancer 2007年: 121:361−367)。これらのアッセイは、CIN2病変の検出のために使用される場合、類似の感受性および特異性を有する(Hesselink et al. J Clin
Microbiol 2006年: 44:3680−3685)。
【0009】
C.特に、高いグレードの前癌性子宮頸部病変および子宮頸癌において、hrHPVゲノムはしばしば宿主細胞のゲノム内に組込まれる。この現象はしばしば、E1からL1までのオープンリーディングフレームに広がり得る領域でのウイルスゲノムの中断を伴うので、この現象は、これらの領域におけるウイルスDNAのPCR媒介増幅の結果をもたらし得る。実際、組込みが、約4%の子宮頸部SCC(Walboomers et al., 1999年, J Pathol 189:12−19)、5%の全HSIL、6%の子宮頸部腺扁平上皮癌のin situの病変、および10%の子宮頸部腺扁平上皮癌(Zielinski et al., 2003年, J Pathol 201:535−543)における、E1および/またはL1ベースのPCRアッセイによるウイルスDNAの検出を妨げるという指摘がある。E1およびL1ベースのPCR法の、子宮頸癌および高いグレードの前駆性病変に対するこれらの偽陰性スコアは、hrHPV陽性の症例にリフレックス細胞学が適用されるhrHPV試験が一次スクリーニング手段として考察される場合、受け入れられないほど高い。
ゆえに、hrHPVの改良された検出システムの必要性が今なお存在する。
【発明の概要】
【0010】
これらの困難を克服するために、発明者らは、高いグレードの子宮頸部病変に対してGP5+/6+−PCRとよく似た特異性を示すが、ウイルスDNAの組込みによって影響されない、14のhrHPV型(すなわち、HPV型16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66および68)、および候補hrHPV型(HPV67)の、一斉検出の方法を今回発見した。さらに、本発明のさらなる態様において、発明者らは、検出方法と適合し得る前述のhrHPV型に属するHPV型についての効率的な分類システムの方法を発見した。
【0011】
本発明に従うhrHPVの検出方法は、hrHPVを有する疑いのあるサンプルを提供し、前記hrHPVのDNAに集合的に、実質的に相補的な複数のフォワードおよびバックワードプライマーを提供し、前記複数のプライマーを用いて前記サンプルに由来するDNAを増幅させる反応を実行し、DNA増幅反応の反応産物を、複数の特異的hrHPVプローブにハイブリダイズさせることによって、hrHPV型由来のDNA増幅産物を検出する工程を含む。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、hrHPVの分類方法であって、複数のフォワードおよびバックワードプライマーを用いてhrHPVのDNAを増幅することによってDNA増幅産物を提供し、前記増幅産物を、すべてではないが少なくとも1つのhrHPV型のDNAに実質的に相補的な少なくとも1つの特異的hrHPVプローブにハイブリダイズさせることによって、1以上のhrHPV型からのDNA増幅産物を検出する工程を含む方法を提供する。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、hrHPV−DNAの増幅用の、フォワードおよびバックワード増幅用プライマーのセットを提供する。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、個々のhrHPV型の、型特異的検出または型選択的検出のための、型特異的オリゴヌクレオチドプローブを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】hrHPV由来HRE7のPCR増幅に用いられるフォワードおよびバックワードプライマーのセットを示す。
【図2】HRE7−PCR産物の検出用EIAプローブの配列を示す。
【図3】HRE7−PCR産物の分類用RLBプローブの配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「相補体」または「相補配列」は、ワトソン−クリックの塩基対合法則に従って、別のヌクレオチド配列と水素結合二量体を形成するヌクレオチド配列である。たとえば、5’−AAGGCT−3’の相補塩基配列は、3’−TTCCGA−5’である。
【0017】
「発現」は、遺伝子の、構造的RNA(rRNA、tRNA)またはメッセンジャRNA(mRNA)への転写、および適用可能な場合には、続くタンパクへの翻訳、を表す。
【0018】
ポリヌクレオチドは、同じ生物において一斉に自然発生しない場合、互いに「非相同」である。ポリヌクレオチドは、生物において特定の型および配置で自然発生しない場合、その生物に非相同である。
【0019】
ポリヌクレオチドは、2つの配列におけるヌクレオチド配列が、ここに記載されるように、最大一致でアライメントされた場合に同じであるのならば、「相同の」配列を有する。2以上のポリヌクレオチド間の配列比較は、概して、配列類似性の局所領域を識別および比較するために、比較ウインドウの全体にわたって2つの配列の部分を比較することによって、実行される。比較ウインドウは、概して、約20〜200の連続ヌクレオチドである。ポリヌクレオチドの、50,60,70,80,90,95,98,99または100パーセントの配列ホモロジなどの「配列ホモロジのパーセンテージ」は、比較ウインドウの全体にわたって最適にアライメントされた2つの配列を比較することによって決定することができ、比較ウインドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントの参照配列(付加または欠損(すなわちギャップ)を含まない)と比較して、付加または欠損を含み得る。パーセンテージは、(a)同じ核酸塩基が双方の配列において生じる位置の数を決定して、一致位置の数を算出し、(b)一致位置の数を、比較ウインドウにおける位置の総数で割り、(c)結果に100を掛けて、配列ホモロジのパーセンテージを算出することによって、計算される。比較のための配列の最適のアライメントは、周知のアルゴリズムのコンピュータ実施によって、または検査によって、行われてよい。容易に利用可能な配列比較およびマルチプル配列アライメントアルゴリズムはそれぞれ、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul, S.F. et al. 1990年. J. Mol. Biol. 215:403; Altschul, S.F. et al. 1997年.
Nucleic Acid Res. 25:3389−3402)およびClustalWプログラムであり、双方ともインターネット上で入手可能である。他の適当なプログラムは、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group(GCG),米国、ウィスコンシン州、マディソン)のGAP、BESTFITおよびFASTAを含む。
【0020】
本明細書で使用するように、「実質的に相補的な」は、2つの核酸配列が相互に、少なくとも約90%、好ましくは約93%、より好ましくは約95%、最も好ましくは約98%の配列相補性を有することを意味する。このことは、プライマーおよびプローブがそれらの鋳型および標的核酸に対する十分な相補性をそれぞれ示して、厳密条件下においてハイブリダイズしなければならないことを意味する。したがって、本明細書に開示されたプライマー配列は、鋳型上の結合領域の正確な配列を反映する必要はなく、縮重プライマーが用いられてもよい。実質的に相補的なプライマー配列は、増幅用鋳型に対して十分な配列相補性を有してプライマー結合および第二鎖合成を結果として生じるものである。
【0021】
用語「ハイブリッド」は、相補的ヌクレオチド間の水素結合によって形成される二本鎖核酸分子、すなわち二量体を意味する。用語「ハイブリダイズ」または「アニール」は、一本鎖の核酸配列が相補的なヌクレオチド間の水素結合によって二重らせん部分を形成するプロセスを意味する。
【0022】
用語「オリゴヌクレオチド」は、リン結合(たとえばホスホジエステル、リン酸アルキルおよびアリール、ホスホロチオエート)、または非リン結合(たとえばペプチド、サルファミン酸塩およびその他)によって結合された短配列のヌクレオチドモノマー(通常、6〜100個のヌクレオチド)を意味する。オリゴヌクレオチドは、修飾された塩基(たとえば5−メチルシトシン)と、修飾された糖類(たとえば2’−O−メチルリボシル、2’−O−メトキシエチルリボシル、2’−フルオロリボシル、2’−アミノリボシルなど)とを有する修飾されたヌクレオチドを含んでもよい。オリゴヌクレオチドは、環状、分岐または直線状であって、任意に安定した二次構造(たとえばステム−ループ構造およびループ−ステム−ループ構造)を形成することができるドメインを含む、二本鎖および一本鎖DNAならびに二本鎖および一本鎖RNAの自然発生または合成分子であってもよい。
【0023】
本明細書で使用される用語「プライマー」は、DNAポリメラーゼを付着させることを可能にする増幅用標的にアニーリングすることができ、これによって核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下にあるときに、すなわちヌクレオチドとDNAモリメラーゼなどのポリメリゼーションのための薬剤との存在下および適切な温度およびpHでのDNA合成の開始点として機能する、オリゴヌクレオチドを意味する。この(増幅用)プライマーは、増幅における最大効率のために一本鎖とされることが好ましい。好ましくは、プライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、ポリメリゼーションのための薬剤の存在下で伸長産物の合成をプライミングするのに十分に長くなければならない。プライマーの正確な長さは、プライマー温度およびプライマー源を含む多くの因子に依存するであろう。本明細書で使用される「一対の二方向プライマー」は、PCR増幅におけるDNA増幅の技術において一般的に使用される1つのフォワードプライマーおよび1つのリバースプライマーを意味する。
【0024】
用語「プローブ」は、水素結合二量体を標的核酸配列分析物またはそのcDNA誘導体において相補的な配列で識別し形成するであろう一本鎖オリゴヌクレオチド配列を意味する。
【0025】
用語「ストリンジェンシー」または「厳密なハイブリダイゼーション条件」は、たとえば温度、塩濃度、pH、ホルムアミド濃度などのハイブリッドの安定性に影響を与えるハイブリダイゼーション条件を意味する。これらの条件は、プライマーまたはプローブのその標的核酸配列への特異的な結合を最大にし、非特異的な結合を最小にするために経験的に最適化される。使用されるこれらの用語は、プローブまたはプライマーがその標的配列に、他の配列よりも検出可能に大きな程度(たとえばバックグラウンドの少なくとも2倍)ハイブリダイズするであろう条件への参照を含む。厳密条件は、配列に依存し、異なる状況では異なるであろう。一般的に、厳密条件は、規定されたイオン強度およびpHにおける特定の配列に対して、解離温度(T)よりも約5℃低くなるように選ばれる。Tは、相補的な標的配列の50%が完全に適合したプローブまたはプライマーにハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度およびpHの下)である。典型的には、厳密条件は、pH7.0〜8.3で、塩濃度が、1.0M Naイオン以下、典型的には、約0.01〜1.0M Naイオン濃度(または他の塩)であり、温度が短いプローブまたはプライマー(たとえば10〜50個のヌクレオチド)に対して少なくとも約30℃、長いプローブまたはプライマー(たとえば50個よりも多いヌクレオチド)に対して少なくとも約60℃である、というものである。厳密条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって達成されてもよい。模範的な低い厳密条件、すなわち「ストリンジェンシーを下げた条件」は、30%ホルムアミド、1MのNaClおよび1%SDSのバッファー溶液による37℃におけるハイブリダイゼーションと、2xSSC内での40℃における洗浄とを含む。模範的な高い厳密条件は、50%ホルムアミド、1MのNaClおよび1%SDS内での37℃におけるハイブリダイゼーションと、0.1xSSC内での60℃における洗浄とを含む。ハイブリダイゼーション手順は、当該技術において周知であり、たとえば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley &
Sons Inc., 1994年に記載されている。
【0026】
本発明の方法は、高リスクヒトパピローマウイルス(hrHPV)によって引き起こされる子宮頸癌および他の肛門性器癌におけるhrHPVの亜群に属するヒトパピローマウイルスの検出、同定および診断を可能にする。
【0027】
hrHPVの検出
本発明に従う、14のhrHPV型(すなわち、HPV型16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66および68)および候補hrHPV型(HPV67)(以降hrHPVと示す)の検出方法は、ヒト臨床サンプルに実行されてよい。好ましくは、本発明の方法における使用のためのサンプルは、子宮頸癌のリスクを評価するための、女性の子宮頸部スメアサンプルを含む。
【0028】
本発明の方法における使用のためのこのようなサンプルを獲得および調製する方法は、当業者に周知であるか、本開示から明らかとなろう。DNAの分析および操作に関する一般的な方法については、たとえばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 第1~3巻, Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989年)またはCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al., Greene Publishing and
Wiley-Interscience, ニューヨーク(1987年)およびその定期的なアップデートを参照されたい。
【0029】
好ましくは、本発明に従う方法は、14のhrHPV型(すなわち、HPV型16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66および68)および候補hrHPV型(HPV67)の検出のために、使用される。
【0030】
本発明の有利な態様は、まだ試験されていないか、発見されていないhrHPVのサブグループのメンバが、本発明の方法を用いることによって、適切に検出され得ることである。
【0031】
本発明のhrHPVの検出方法において、6のフォワードプライマーおよび9のバックワードプライマーのセットであって、いくつかが重複し、HPV型に応じて、E7オープンリーディングフレームの約215〜245塩基対のフラグメントを協働して増幅するセットを用いる、コンセンサスPCRベースの方法が記載される。
【0032】
ウイルス腫瘍形成遺伝子E7は、hrHPVによって仲介される形質転換表現型の開始および維持の双方にとって、重要である。事実、これは、E7オープンリーディングフレームが常に子宮頸癌およびその前駆段階において維持されることを意味する(先のZur
Hausen)。加えて、驚いたことに、E7領域は、他のHPV型と交差反応しないプライマーおよびプローブの組合せを選択するためには充分に、異なるHPV型間で非相同であることが明らかとなった。
【0033】
前述のフォワードおよびバックワードプライマーは、HPV型16ゲノム(GenBank系統番号NC 001526)のそれぞれヌクレオチド位置622〜644間、および828〜847間の領域、ならびに他のhrHPV遺伝子型のゲノム内の同等の位置の領域に、一致する。カクテルにおける最も一致するプライマーは、各HPV型の標的配列と最大で2の不一致を有する。
【0034】
この発見に基づいて、本発明は、個々のプライマーが各々、1以上のhrHPV型のE7領域にアニーリングすることができる、フォワードおよびバックワードプライマーのセットを提供する。6フォワードプライマーおよび9バックワードプライマーの完全セットは、一斉に用いた場合、言及されるあらゆるhrHPVのE7 DNAにアニーリングすることができ、HPV16の622〜644の位置と、828〜847の位置との間で規定されるDNA配列、およびこれらの位置に隣接するDNA配列、ならびに他のhrHPV型のゲノム内の同等の位置のDNA配列、を増幅することができる複数のプライマーを提供する。
【0035】
このプライマーのセットの強みは、最適な感度を維持しながら、hrHPV型に対して広い特異性を有することである。感度は、真のhrHPV感染を検出することができるほど充分に高いと同時に、サンプルにおけるhrHPVの一時的で臨床的に関連のない量として特徴付けられる、非常に低いウイルス負荷によっては誘発されないほど充分に低いので、最適である。この注目すべき組合せは、ほとんどの場合、標的ウイルス配列に100%相補的でなく、1または2の不一致を含むプライマーを選択することによって、達成される。たとえば国際公開第03/020976号に開示されるプライマーセットなどの先行技術のプライマーセットは、hrHPVに対して高い分析感度を有し、その結果、CIN2またはCIN3病変に対してより低い特異性を有する(Snijders, P. et al., 2003年, J. Pathol. 201:1−6)。
【0036】
前記領域を増幅するためのフォワードおよびバックワードプライマーのセットは、図1に表される。幾分短い、または幾分長いプライマーを使用することもできる。この図1のプライマーのセットにおいて、プライマーミックスのTmを等しくするために、バックワードプライマーはフォワードプライマーよりも意図的に短い。
【0037】
本発明の方法は、原則的に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR; Mullis 1987年, 米国特許第4683195号、米国特許第4683202号、および米国特許第4800159号)などの何らかの核酸増幅方法を用いることによって、またはリガーゼ連鎖反応(LCR; Barany 1991年, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189−193; 欧州特許第320308号)、Self-Sustained Sequence Replication(3SR; Guatelli et al., 1990年, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874−1878)、Strand
Displacement Amplification(SDA; 米国特許第5270184号、および米国特許第5455166号)、Transcriptional Amplification System(TAS; Kwoh et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173−1177)、Q-Beta Replicase(
Lizardi et al., 1988年, Bio/Technology 6:1197)、Rolling Circle
Amplification(RCA; 米国特許第5871921号)、Nucleic Acid Sequence Based Amplification(NASBA)、Cleavage Fragment Length Polymorphism(米国特許第5719028号)、Isothermal and Chimeric Primer-initiated Amplification of
Nucleic Acid(ICAN)、Ramification-extension Amplification Method(RAM; 米国特許第5719028号および米国特許第5942391号)もしくは他の適切なDNAの増幅方法などの増幅反応を用いることによって、実行することができる。
【0038】
本発明に従う好ましい実施形態は、図1の6フォワードプライマーおよび9バックワード(すなわちリバース)プライマーのセットによるhrHPV−DNAのプライマー開始増幅を含むPCR法を用いる。
【0039】
1以上の増幅プライマーとの少数の不一致のあるHPV型のDNAを増幅するために、増幅反応は、ストリンジェンシーを下げた条件下で実行してもよい(たとえば、アニーリング温度を38°Cにまで下げた、または3.5mMにまでMgClを高めた、PCR増幅)。当業者は、適当なストリンジェンシーの条件を選択することができる。
【0040】
増幅産物の検出は、原則的に、当該技術において知られているあらゆる適切な方法によって、達成することができる。検出フラグメントは、放射性ラベル、抗体、発光染料、蛍光染料、または酵素試薬で直接的に染色または標識されてもよい。直接的なDNA染色は、たとえば、アクリジンオレンジ、エチジウムブロマイド、エチジウムモノアジドまたはHoechst dyeなどのインターカレーション染料を含む。好ましくは、EIAフォーマットが、図2に例示されるような型特異的オリゴプローブのカクテルの援助により、使用可能である。別の好ましい実施形態において、固定された型特異的オリゴプローブ(図3)によるハイブリダイゼーションによって、検出が行われる。
【0041】
代わりに、DNAフラグメントは、合成DNAフラグメント内への標識dNTP塩基の組込みによって、検出されてもよい。ヌクレオチド塩基に関連し得る検出標識は、たとえば、フルオレセイン、シアニン染料またはBrdUrdを含む。
【0042】
本発明は、好ましくは、反応産物を1以上の特異的hrHPVプローブにハイブリダイズさせることによる、hrHPV DNAでの前述したDNA増幅反応によって得られる反応産物の検出、を含む。
【0043】
プローブベースの検出システムを用いる場合、本発明における使用に適切な検出手順は、たとえば、酵素免疫アッセイ(EIA)フォーマットを含んでもよい(Jacobs et al., 1997年, J. Clin. Microbiol. 35, 791−795)。EIA手順による方法で検出を実行するために、増幅反応に用いられるフォワードプライマーまたはリバースプライマーのいずれかは、後のhrHPV単位複製配列のEIA検出用の、たとえばストレプトアビジン被覆マイクロタイタプレートウェルへのhrHPV DNA PCR単位複製配列の固定のための、ビオチン基などの捕獲基を含んでもよい(下記参照)。当業者は、EIAフォーマットにおけるhrHPV−DNA PCR単位複製配列の固定のために、他の基が用いられてもよいことを理解するであろう。
【0044】
hrHPVの分類
さらに、E7領域は、他のHPV型と交差反応しないプライマーおよびプローブ組合せを選択するのに足りるほど、異なるHPV型間で充分に非相同であることが明らかとなった。
【0045】
したがって、本発明の別の態様において、上で列挙したhrHPV型に属する種々のHPV型は、1つの特異的な高リスク型のHPVの単位複製配列にのみ、個々に結合する複数の型特異的hrHPV検出プローブを用いることによって、検出されてもよい。ゆえに、ここで規定される2つのコンセンサス領域間でDNA配列領域を増幅し、続いて個々のHPV型の独特な配列にプロービングすることによる、種々の高リスクHPVの分類方法が提供される。
【0046】
ここに開示されるE7領域の型特異的検出に有用なプローブは、EIA検出のために図2に、およびリバースラインブロット(RLB)による検出のために図3に、例示される。これらの型特異的プローブは好ましくは、hrHPVの群に属する単一のHPV型の2つのコンセンサス領域間で増幅されたDNA配列領域の少なくとも一部にのみ、結合する。また、図3に列挙される相補配列は、このような相補鎖が、利用される増幅反応において増幅されることを条件に、本発明の方法における型特異的検出プローブとして好適に使用され得る。
【0047】
本発明に従う分類方法で使用されるプローブは、ある1つのまたは複数のHPV型の単位複製配列に選択的に結合するが、ストリンジェンシーが非常に低いハイブリダイゼーション条件下では、他のHPV型の単位複製配列に結合しないか、弱く結合するだけである。したがって、1つの実施形態において、本発明は、患者に感染しているHPVの型を決定するのに用いることができる。これは、悪性疾病への進行(従って臨床予後)がHPV型に強く依存しているため、非常に意義深い。したがって、分類の態様において、本発明は、患者におけるHPV感染の型を決定する方法を提供する。
【0048】
本発明のhrHPV分類方法の好ましい実施形態において、15の異なるhrHPVに由来し得る単位複製配列中の型特異的配列にハイブリダイズする、15の異なるプローブ(図3)またはそれらの相補配列のセットが、使用される。
【0049】
本発明の分類態様における使用のための好適な検出手順は、たとえば、単位複製配列の固定およびそのDNA配列の、たとえばサザンブロッティングによる、プロービングを含む。他のフォーマットは、前述のEIAフォーマットを含む(その場合、好ましくは図2のプローブが使用される)。結合の検出を容易にするために、型特異的hrHPVは、増幅反応の反応産物へのプローブの結合の監視を容易にする、蛍光団、発色団、酵素または放射性標識などの標識部分を含み得る。そのような標識は、当業者に周知であり、たとえば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、β−ガラクトシデース、セイヨウワサビペルオキシデース、ストレプトアビジン、ビオチン、ジゴキシゲニン、35Sまたは125Iが含まれる。他の例は当業者にとって明白であろう。
【0050】
他の方法を採用してもよいが、本発明に従う分類方法は、好ましくは、PCR産物を、ビーズ、または、最近論文に記載された、たとえばL1ベースのコンセンサスHPV PCR法(van den Brule et al.,2002年,J. Clin. Microbiol. 40,779 787)のためなどの、RLBフィルタに固定した型特異的プローブに、ハイブリダイゼーションさせることによって行う。このために、好ましくは、たとえばカルボキシル被覆ナイロン膜への、後に行う固定のための5’アミノ基を有するRLBプローブが合成される。このようなフォーマットの利点は、システムの容易さとその速度であり、サンプル処理の高いスループットが可能になる。
【0051】
本発明に従うhrHPVの分類方法は、前述のように、採取直後のサンプル材料に対して行うことができる(そのようなサンプルが充分なウイルスDNAを提供する場合に限られる)。これに代えて、本発明に従うhrHPVの分類は、前述のDNA増幅反応を使用することによって得られる、単位複製配列またはDNA増幅反応産物に対して直接行うこともできる。
【0052】
プライマーおよびプローブ
さらなる態様において、本発明は、本発明の方法における使用のための、hrHPV DNAの増幅用のフォワードおよびバックワード増幅用プライマーのセットを提供する。これらのプライマーは、約8〜約35、好ましくは約15〜約30、より好ましくは約18〜約25ヌクレオチドの配列長を有する、オリゴヌクレオチドプライマーであることが好ましい。最も好ましい実施形態において、フォワードプライマーは約22〜23のヌクレオチドを含み、一方、リバースプライマーは約19〜21のヌクレオチドを含む。好ましくは、プライマーの1つは、二本鎖hrHPV単位複製配列の1つの鎖の固定または染色を容易にする基で標識される。
【0053】
本発明のフォワードおよびバックワードプライマーのヌクレオチド配列は、プライマーと、ここで規定するhrHPV遺伝子のE7領域における2つのコンセンサス領域のうちの一方の位置の標的DANとの間に、安定なハイブリッドを形成することを可能にするように設計されるべきである。そのために、フォワードプライマーのヌクレオチド配列は、好ましくは、図1に示したフォワードプライマーの群から選択される。同様に、バックワードすなわちリバースプライマーは、好ましくは、図1に示したバックワードプライマーの群から選択される。一斉に使用されるとき、図1のプライマーは、ここで規定するすべてのhrHPVの遺伝子における対応領域のDNAを増幅する。
【0054】
プライマーは、増幅すべき各特異的配列の異なる鎖に存在するコンセンサス領域に対して、「実質的に」相補的であるように選択されている。図1のプライマーの配列と比べて、幾分短いまたは幾分長いプライマーを使用することも可能である。
【0055】
単位複製配列は、種々のhrHPV間での、独特の配列のみならず、共通のモチーフによって特徴づけられる領域を含んでいる。
【0056】
他の態様において、本発明は、個々のHPV型またはhrHPV型に属するサブセット型の型特異的検出または型選択的検出のための、オリゴヌクレオチドプローブを提供する。好ましい実施形態において、各HPV型のために1つのプローブが提供され、それらのプローブは、したがって、型特異的である。本発明は、図2および図3に示した特異的hrHPVの型特異的検出のための、2セットの15の好適な型特異的プローブ配列を開示する。いくつかの不一致は許容されるが、分類プローブはそれらの個々の標的配列に対して完全に相補的であることが好ましい。これまでに概説したように、図2および図3に示した配列の相補配列は、増幅反応が相補DNAフラグメントの増幅を可能にするという条件で、本発明の方法における型特異的プローブとして使用し得る。したがって、図2および図3のプローブに言及するときには、それらの相補配列をも含むことが意図されている。
【0057】
型特異的検出プローブまたは型選択的検出プローブは、種々の分類手順において使用することができる。好適な手順はプローブの標的が固定される手順を含むが、プローブが固定される手順も使用してよい。後者の例として、バイオチップ型フォーマットおよびビーズフォーマットの両方に加えて、RLBまたはラインプローブアッセイなどのリバースラインブロットフォーマットを使用することができる。固定用の基質および選択された表面化学に応じて、当業者は、基質固定のためにオリゴヌクレオチドを標識する好適な基を選択することが可能である。好ましい実施形態において、この基は、プローブの5’末端に導入されるアミノ基である。
【0058】
型特異的検出プローブは、好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブであって、約8〜約35の配列長、好ましくは約15〜約35の配列長を有するものである。EIAアッセイの場合、一般にはより長いプローブ、すなわち約25〜約35のヌクレオチド、好ましくは約26〜31のヌクレオチドが好ましい。RLBアッセイの場合、一般には、より短いプローブ、約15〜約22のヌクレオチド、より好ましくは約18〜約20のヌクレオチドのプローブで十分であろう。当業者であれば、一回のハイブリッド形成反応において使用されるプローブのセット内の各プローブのアニーリング温度が、G+C成分とプローブ長との間に均衡を付与することによって適切に調整可能であることを知っている。
【0059】
一つの実施形態において、本発明は、本発明の方法を行うためのプライマーとプローブとを含むキットを提供する。かかるキットの好ましい実施形態は、図1に開示された増幅用プライマーと、図2および図3の一方または双方に開示された型特異的プローブとの両方を有する。
【0060】
これらに制限される訳ではないが、以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を示す。
【実施例】
【0061】
実施例1:純粋ウイルスDNAのアッセイ
100ngヒト胎盤DNAのバックグラウンドにおいて、hrHPV型16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66,67および68、ならびにHPV6,11,26,34,40,42,43,44,53,54,55,57および61を含む種々のHPV型のプラスミドDNAの連続希釈物について、最初にHRE7−PCRアッセイを行った。50μlのPCR反応混合物は、1.5mMのMgClと、200μMの各dNTPと、20pmolの各プライマーと、1ユニットのAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Perkin-Elmer,フォスターシティー,カリフォルニア州)と、10μlの標的DNAとをTaq Goldバッファー中に含有した。40のPCRサイクルがPE9700サーモサイクラー(Perkin-Elmer,フォスターシティー,カリフォルニア州)を用いて行われた。各PCR反応は、94℃で6分間の予熱工程によって開始された後、変性工程(94℃で30秒)とプライマーアニーリング工程(60℃で60秒)と伸長工程(72℃で60秒)とから成る40サイクルが続いた。ランピング時間は、上述の通りであった(van den Brule et al.,2002年, J. Clin. Microbiol. 40, 779−787)。最後の伸長工程は、4分間に延長された。
【0062】
すべての15のhrHPVクローンがEIA読出しによって決定されるように明瞭な増幅信号を明らかにしたが、ヒトDNA、またはHPV6,11,26,34,40,42,43,44,53,54,55,57および66などの他のHPV型との交差反応は観察されなかった。ヒト胎盤DNAと混合されたクローンHPV16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,67および68の希釈ラインが、試験当たり200〜2000のウイルスコピーに対応する、10fg〜100fgのプラスミドDNAの範囲にある分析感度を明らかにした。これは、試験当たり約10のウイルスコピーを検出することによってはるかに感度がよかった、E7領域を標的とする公開されたhrHPV多重PCRアッセイの実績に矛盾する(Gheit et al., J Clin Microbiol.
2006年:44:2025−2031)。結果として、後者のアッセイは、GP5+/6+−PCR(Gheit et al., J Clin Microbiol. 2006年:44:2025−2031)よりも、多重感染を含む高いhrHPV感染数を検出した。また、RLB分類は、交差反応なしで特異的信号を明らかにし、その感度はEIAのものと同じ範囲にあった。
【0063】
実施例2:組織サンプルの予備的研究
パイロット実験において、HRE7−PCRアッセイの適用は、GP5+/6+−PCRによって早期に試験された扁平上皮および腺癌組織型の両方の一連の子宮頸癌標本について開始された。これらは、L1ベースのGP5+/6+−PCRによって陰性に判定されたが、1以上のhrHPV型に対するE6/E7型特異的PCRによって陽性に判定されたサンプルを含む(Walboomers et al., J Pathol 1999年:189:12−19;Zielinski et al., J Pathol 2003年:201:535−543)。後者の研究結果は、GP5+およびGP6+プライマー結合配列が存するL1領域の中断を伴うウイルスDNA組込みを示唆している。HRE7−PCRアッセイは、今までのところ、GP5+/6+−PCRによって得られる陽性を確認しただけではなく、GP5+/6+−PCRでは陰性であるがE6/E7型特異的PCRでは陽性であった25のサンプルを陽性に判定した。これらのパイロットデータに基づいて、E1またはL1ベースのPCRアッセイと比較して、HRE7−PCRが少なくとも5%以上子宮頸癌を検出できることを予想することができる。
【0064】
実施例3:コホート調査における子宮頸部切屑の分析
子宮頸部切屑のHRE7−PCRアッセイの実績の分析について、本発明者らは、POBASCAM(Bulkmans et al., Int J Cancer 2004年:110:94−101)試験などの、種々の母集団に基づく子宮頸部スクリーニング試験の経過中に収集した子宮頸部切屑のより大きな系を調査した。この子宮頸部切屑は、合計で、CIN3の女性の56の切屑と、POBASCAM試験に参加した5年ごとの反復正常細胞診での300の女性とを含んだ。さらなる分析は、種々のコホートにおけるprevalent/incident CIN3の約1500の女性から選ばれたCIN3の女性の粗細胞抽出物について行われた標準GP5+/6+−PCRによって陰性であった一連の35の子宮頸部切屑に関連した。HRE7 PCRは、単離されたDNAについて行われたが、GP5+/6+−PCRは、粗細胞抽出物(古典的GP5+/6+−PCR法;GP5+/6+−PCR(粗細胞))と単離されたDNA(GP5+/6+−PCR(単離))との両方について行われた。
【0065】
GP5+/6+−PCR(粗細胞)、GP5+/6+−PCR(単離)およびHRE7−PCRは、POBASCAMのCIN3の女性の56(100%)の子宮頸部切屑のすべてに対して陽性の試験結果を明らかにした。正常サンプルに対する陽性率は、GP5+/6+−PCR(粗細胞)が11/300(3.7%、95%CI:1.6〜5.9)であったのに対して、HRE7−PCRが19/300(6.3%、95%CI:3.5〜9.1)であった。GP5+/6+−PCR(単離)は、HRE7−PCR(P=0.5)と同様の数の正常切屑を陽性と判定した(すなわち17/300、5.6%、95%CI:3.0〜8.2)。さらに、HRE7−PCRは、25/35(71%、95%CI:56〜86)のGP5+/6+−PCR(粗細胞)陰性のCIN3の女性の切屑に対して陽性であった。GP5+/6+−PCR(単離)は35の切屑のうちの14(40%、95%CI:24〜56)に対して同様に陽性であったが、この陽性率は、HRE7 PCRの陽性率よりも依然として低かった(P<0.001)。HRE7−PCRを陽性と判定するが、GP5+/6+−PCRを陰性と判定するこれらの場合に対して、ウイルス組込みがAPOTアッセイ(Klaes et al., Cancer Res. 1999年,15;59:6132〜6136)によって実証されるであろう。
【0066】
実施例4:リバースラインブロットを用いたHRE7 PCRおよびGP5+/6+−PCRによって遺伝子型決定する高リスクHPVの比較
HRE7−PCRおよびGP5+/6+−PCRの両方において陽性であった実施例3に詳述したサンプルの全PCR産物は、両PCRアッセイに関連したRLB法を用いる遺伝子型決定を受けた。これらの場合に対して、両アッセイによって検出可能な15のhrHPV型のうちの1以上を遺伝子型決定するための一致は、100%(Kappa=1.0)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HPV型16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66,67および68から成る群から選ばれる、1以上のhrHPV型の存在の検出のための方法であって、
(a)前記hrHPVを有する疑いのあるサンプルを提供する工程と、
(b)すべての前記hrHPVのDNAに集合的に、実質的に相補的な複数のフォワードおよびバックワードプライマーを提供する工程と、
(c)前記複数のプライマーを用いて前記サンプルに由来するDNAを増幅させる反応を実行する工程と、
(d)前記サンプル由来の1以上の前記hrHPVからのDNA増幅産物を検出する工程とを含み、
好ましくは、前記工程(d)は、DNA増幅反応の反応産物を、複数のhrHPVプローブにハイブリダイズさせることによって実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記複数のフォワードおよびバックワードプライマーは、すべての前記hrHPVのDNAにおける第1のコンセンサス領域に集合的に、実質的に相補的なプライマーを含むとともに、すべての前記hrHPVのDNAにおける第2のコンセンサス領域に集合的に、実質的に相補的なプライマーをさらに含み、好ましくは、前記第1および第2のコンセンサス領域が、hrHPVのE7領域内にあり、より好ましくは、前記複数のプライマーが、図1のプライマーを含み、最も好ましくは、前記複数のプライマーのすべてのフォワードプライマーまたはすべてのバックワードプライマーがビオチン標識を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記DNAを増幅する反応は、ストリンジェシーを下げた条件下で実行されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記複数のhrHPVプローブは、すべてのhrHPVからの前記DNA増幅産物の核酸配列に実質的に相補的であり、好ましくは、前記hrHPVプローブは図2のプローブを含み、より好ましくは、前記プローブはDIG標識を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
HPV型16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66,67および68から成る群から選ばれる、1以上のhrHPV型の分類のための方法であって、
(a)複数のフォワードおよびバックワードプライマーを用いてhrHPVのDNAを増幅することによってDNA増幅産物を提供する工程と、
(b)前記増幅産物を、少なくとも1つではあるがすべてではない前記hrHPV型のDNAに実質的に相補的な少なくとも1つのhrHPVプローブにハイブリダイズさせることによって1以上の前記hrHPV型からのDNA増幅産物を検出する工程とを含み、
好ましくは、前記複数のフォワードおよびバックワードプライマーは、すべての前記hrHPVのDNAにおける第1のコンセンサス領域に集合的に、実質的に相補的なプライマーを含むとともに、すべての前記hrHPVのDNAにおける第2のコンセンサス領域に集合的に、実質的に相補的なプライマーをさらに含み、より好ましくは、前記第1および第2のコンセンサス領域が、hrHPVのE7領域内にあり、最も好ましくは、前記複数の二方向プライマーが、図1のプライマーを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記複数のプライマーのすべてのフォワードプライマーまたはすべてのバックワードプライマーは、ビオチン標識を含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプローブは、hrHPVの正確に1つの型のDNAに実質的に相補的であり、好ましくは、前記少なくとも1つのプローブは、図2または図3のいずれかのプローブから選ばれることを特徴とする請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記検出は、リバースラインブロットの使用を含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において使用されるフォワードプライマーであって、HPV型16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66,67および68から成る群から選ばれる、すべてのhrHPV型のE7領域内の第1のコンセンサス領域に集合的に、実質的に相補的なプライマーであり、より好ましくは、図1に示されるフォワードプライマーの群から選ばれるフォワードプライマーであることを特徴とするフォワードプライマー。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において使用されるバックワードプライマーであって、HPV型16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66,67および68から成る群から選ばれる、すべてのhrHPV型のE7領域内の第2のコンセンサス領域に集合的に、実質的に相補的なプライマーであり、より好ましくは、図1に示されるバックワードプライマーの群から選ばれるバックワードプライマーであることを特徴とするバックワードプライマー。
【請求項11】
図1に記載されたすべてのフォワードおよびバックワードプライマーを含むことを特徴とするプライマーのセット。
【請求項12】
HPV型16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66,67および68から成る群から選ばれる、1以上のhrHPVの検出のための検出プローブであって、HPV16のヌクレオチド位置622〜847間の、少なくとも1つではあるがすべてではないhrHPV型のE7領域内の領域と、他のhrHPV型の対応する領域とに実質的に相補的なプローブであることを特徴とする検出プローブ。
【請求項13】
HPV型16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,66,67および68から成る群から選ばれる、1つのhrHPVの検出のための型特異的検出プローブであって、HPV16のヌクレオチド位置622〜847間の、正確に1つの型のhrHPV型のE7領域内の領域と、他のhrHPV型の対応する領域とに実質的に相補的なプローブであり、好ましくは、図2および図3に記載されたプローブから成る群から選ばれる型特異的検出プローブであることを特徴とする型特異的検出プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−502477(P2011−502477A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531974(P2010−531974)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050526
【国際公開番号】WO2009/057993
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510048602)
【住所又は居所原語表記】De Boelelaan 1105,Amsterdam The Netherlands
【Fターム(参考)】