説明

孔径の異なる複数領域を有する多孔性膜

結晶性ポリマーを含む第1の領域、及び第1の平均孔径を有する第1の領域内の第1の濃度を有する第1の核剤と、結晶性ポリマーを含む第2の領域、及び第2の平均孔径を有する第2の領域内の第2の濃度を有する第2の核剤と、を含む多孔性膜であって、第1の領域及び第2の領域内の結晶性ポリマーが同じであり、第1の平均孔径が第2の平均孔径と同じではなく、第1の核剤及び第2の核剤が同じであるか又は異なり、第1の濃度及び第2の濃度の剤が同じであるか又は異なり、ただし、第1の核剤及び第1の濃度が、第2の核剤及び第2の濃度と同じではない、多孔性膜。膜の製造方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平均孔径の異なる少なくとも2つの領域を有する多孔性膜に関する。
【背景技術】
【0002】
高価なポリエーテルスルホン膜の安価な代替品を提供する、比較的高い流量及び負荷能力を有する多孔性膜の必要性が、当該技術分野において存在する。このような多孔性膜の重要な用途は、沈殿物の量が多い水の濾過である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ここに開示するのは、結晶性ポリオレフィンポリマーを含む第1の領域、及び第1の平均孔径を有する第1の領域内の第1の濃度を有する第1の核剤と、結晶性ポリオレフィンポリマーを含む第2の領域、及び第2の平均孔径を有する第2の領域内の第2の濃度を有する第2の核剤と、を含む多孔性膜であって、第1の領域及び第2の領域内の結晶性ポリマーは同じであり、第1の平均孔径は第2の平均孔径と同じではなく、第1の核剤及び第2の核剤は同じであるか又は異なり、第1の濃度及び第2の濃度の剤は同じであるか又は異なり、ただし、第1の核剤及び第1の濃度は、第2の核剤及び第2の濃度と同じではない、多孔性膜である。
【0004】
更に開示されるのは、結晶性ポリマーを含む第1の領域、及び第1の平均孔径を有する第1の領域内の第1の濃度を有する第1の溶解性核剤と、結晶性ポリマーを含む第2の領域、及び第2の平均孔径を有する第2の領域内の第2の濃度を有する第2の溶解性核剤と、を含む多孔性膜であって、第1の領域及び第2の領域内の結晶性ポリマーは同じであり、第1の平均孔径は第2の平均孔径と同じではなく、第1の核剤及び第2の核剤は同じであるか又は異なり、第1の濃度及び第2の濃度の剤は同じであるか又は異なり、ただし、第1の核剤及び第1の濃度は、第2の核剤及び第2の濃度と同じではない、多孔性膜である。
【0005】
更に開示されるのは、多孔性膜の製造方法であって、この製造方法は、第1の結晶性ポリマーと、第1の核剤と、希釈剤とを含み、第1の核剤の第1の濃度を有する、第1の組成物を、第1の比エネルギー入力で操作される第1の押出成形機の中で形成することと、第2の結晶性ポリマーと、希釈剤とを含む第2の組成物を、第2の比エネルギー入力で操作される第2の押出成形機の中で形成することと、第1の組成物及び第2の組成物を共押し出しして、多層物品を形成することと、結晶性ポリマーから希釈剤を相分離させて多孔性膜を形成するために、多層物品を冷却することと、を含み、第1の比エネルギー入力は第2の比エネルギー入力と同じではない。
【0006】
更に開示されるのは、多孔性膜の製造方法であって、この製造方法は、第1の結晶性ポリオレフィンポリマーと、第1の核剤と、希釈剤とを含み、第1の核剤の第1の濃度を有する、第1の組成物を、第1の押出成形機の中で形成することと、第2の結晶性ポリオレフィンポリマーと、第2の核剤と、希釈剤とを含み、第2の核剤の第2の濃度を有する、第2の組成物を、第2の押出成形機の中で形成することと、第1の組成物及び第2の組成物を共押し出しして、多層物品を形成することと、結晶性ポリマーから希釈剤を相分離させて多孔性膜を形成するために、多層物品を冷却することと、を含み、第1の結晶性ポリオレフィンポリマーは第2の結晶性ポリオレフィンポリマーと同じであり、第1の核剤及び第2の核剤は同じであるか又は異なり、第1の濃度及び第2の濃度の剤は同じであるか又は異なり、ただし、第1の核剤及び第1の濃度は、第2の核剤及び第2の濃度と同じではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の様々な実施形態についての以下の詳細説明を添付の図面と共に検討することで、本開示はより完全に理解され得る。
【0008】
図面は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図中で用いられる類似の数字は、類似の構成要素を示す。しかし、所与の図中の構成要素を意味する数字の使用は、同一数字でラベル付けされた別の図中の構成要素を制約するものではないことは理解されよう。
【図1】本明細書に開示される例示的な方法。
【図2】本明細書で利用可能な例示的な押出成形機システム。
【図3】2つの押出成形機を利用する別の例示的な押出成形機システム構成。
【図4】2つの押出成形機を利用する別の例示的な押出成形機システム構成。
【図5】本明細書に開示の例示的な2つの領域を有する多孔性膜。
【図6】本明細書に開示の例示的な3つの領域を有する多孔性膜。
【図7】本明細書に開示の別の例示的な3つの領域を有する多孔性膜。
【図8A】実施例1で調製された多孔性膜の断面の走査電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真。
【図8B】実施例1で調製された多孔性膜の第1の領域の走査電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真。
【図8C】実施例1で調製された多孔性膜の第2の領域の走査電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真。
【図9A】実施例3で調製された多孔性膜の断面の走査電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真。
【図9B】実施例3で調製された多孔性膜の第1の領域の走査電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真。
【図9C】実施例3で調製された多孔性膜の第2の領域の走査電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真。
【図9D】実施例3の膜の3つの領域のそれぞれの表面で撮影された一連の表面SEM顕微鏡写真。
【図10】実施例4で調製された多孔性膜の断面のSEM顕微鏡写真(倍率400X)。
【図11】実施例4で説明した多種多様な膜の上流圧力の関数としての処理量のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の記述において、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照し、いくつかの特定の実施形態を例として示す。本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が検討され、作製され得ることを理解されたい。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0010】
本発明で使用する全ての科学用語及び専門用語は、特に指示がない限り、当該技術分野において一般的に使用される意味を有する。本明細書にて提供される定義は、本明細書でしばしば使用される特定の用語の理解を促進しようとするものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0011】
他に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴の大きさ、量、物理特性を表わす数字はすべて、どの場合においても用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。それ故に、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。
【0012】
終点による数の範囲の記述は、その範囲内(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲に包含される全ての数を含む。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容が特に明確に指示しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、用語「又は」は、その内容が特に明確に指示しない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0014】
多孔性膜及び多孔性膜の製造方法が本明細書において開示される。本明細書に開示の多孔性膜の製造方法は、熱誘導相分離(TIPS)プロセスを利用する。TIPS法は一般に、ポリマー又はポリマーブレンドを希釈剤及び核剤と溶融混合することを伴い、ここで希釈剤はポリマー又はポリマーブレンドと、ポリマー又はポリマーブレンドの溶融温度にて混和性であるが、ポリマー又はポリマーブレンドの相分離温度未満で冷却すると、相が分離する。(i)ポリマー又はポリマーブレンドと、(ii)希釈剤との間の相分離は、液−固である。TIPSプロセスの説明は、米国特許第5,976,686号、同第4,726,989号及び同第4,539,256号、並びに米国特許出願第2005/0058821号(その主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)内に見出すことができる。
【0015】
例示的な方法が図1に示されている。図1に示される方法は、第1の組成物を形成する工程110と、第2の組成物を形成する工程120とを含む。第1及び第2の組成物は、一般に、溶融ブレンド、又はより詳細には第1及び第2の溶融ブレンドと呼ばれる。一般に、第1の組成物及び第2の組成物は、ポリマーと、核剤と、希釈剤とを含む。
【0016】
第1及び第2の組成物はポリマーを含む。本明細書で使用するとき、ポリマーという用語は、ホモポリマー及びコポリマーを含む。本明細書では、1種又は2種以上のポリマー(即ちポリマーブレンド)を使用することができる。一実施形態では、ポリマーは結晶性ポリマーであることができ、これは結晶性ポリマー相を形成することができる。本明細書で使用するとき、ポリマー成分に関する用語「結晶性」は、少なくとも一部が結晶性であるポリマーを含む。一実施形態では、結晶性ポリマーは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定した場合に、20重量%を超える結晶化度を有することができる。使用するのに好適な結晶性ポリマーは周知であり、容易に商業的に入手可能である。有用なポリマーは、従来の加工条件下で溶融加工可能である。即ち、加熱すると、ポリマーは容易に軟化及び/又は融解して、物品を形成するために押出成形機などの従来の機器で加工することができる。制御された条件下で結晶性ポリマーを含む溶融ブレンドを冷却すると、幾何学的に規則正しくかつ規則的な化学構造体が自然発生的に生じる。一実施形態では、使用することができる結晶性ポリマーは、高度の結晶化度を有する。
【0017】
利用可能な例示的な結晶性ポリマーとしては、結晶性オレフィンポリマーが挙げられるが、これに限定されない。1種又は2種以上のオレフィンポリマーを、溶融ブレンドで使用することができる。
【0018】
市販の好適な結晶性ポリオレフィンの例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、重合されて結晶性及び非晶質セグメントを含むことができる2つ以上のこれらオレフィンのコポリマー、並びにこのようなポリマーの立体特異性改質の混合物、例えば、アイソタクチックポリプロピレン及びアタクチックポリプロピレンの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明者らは、PVDF TIPS膜製造システムへの同様の取り組みを以前に開示している。一実施形態において、結晶性ポリマーはポリオレフィンポリマーである。一実施形態において、ポリオレフィンポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、重合されて結晶性及び非晶質セグメントを含むことができる2つ以上のこれらオレフィンのコポリマー、並びにこのようなポリマーの立体特異性改質の混合物、例えば、アイソタクチックポリプロピレン及びアタクチックポリプロピレンの混合物から選択される。一実施形態では、結晶性ポリオレフィンポリマーはポリプロピレンである。
【0019】
一実施形態では、ポリマーは、溶融ブレンドの総重量を基準として、少なくとも約20%の割合を占めることができる。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量の、約20重量%〜約70重量%のポリマーを含むことができる。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量の、約25重量%〜約50重量%のポリマーを含むことができる。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量の、約28重量%〜約32重量%のポリマーを含むことができる。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量の、約30重量%のポリマーを含むことができる。
【0020】
第1及び第2の組成物、又は溶融ブレンドは更に、1つ以上の核剤を含んでもよい。核剤は、液体状態からポリマーの結晶化を誘発させ、かつ、ポリマーの結晶化を促進するためにポリマー結晶化部位の開始を強化するよう機能する。したがって、使用する核剤は、ポリマーの結晶化温度でポリマー全体に均一に分散する、離散固体又は液体ゲルでなければならない。核剤は、ポリマーの結晶化速度を増加させる働きをするので、得られたポリマー粒子又は球粒(用語「球粒」は、一般に、多孔性膜内の部分的に結晶性のポリマーのドメインを指す)のサイズは、核剤を含むことによって小さくなり得る。核剤はこのように機能するので、多孔性膜の2つ以上の領域内の孔径は、共に含まれる核剤の量又は核剤の種類のいずれかを制御することによって制御され得る。
【0021】
核剤は、溶解性核剤又は不溶性核剤のいずれかであり得る。溶解性核剤は、溶融ブレンドのブレンド中に溶解するが、ポリマーが混合物から分離して結晶化する前に再結晶化する核剤である。例示的な溶解性核剤としては、アリールアルカン酸化合物、安息香酸化合物、ジカルボン酸化合物、及びソルビトールアセタール化合物が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な例示的溶解性核剤としては、ジベンジリジンソルビトール、アジピン酸、安息香酸、及び商品名「MILLAD(登録商標)」で販売されているソルビトールアセタール化合物、例えば、1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール核剤(MILLAD(登録商標)3988、Milliken Chemical(Spartanburg,SC)から入手可能)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
不溶性の核剤は、溶融ブレンドのブレンド中に溶解しない核剤である。一般に、物質が離散粒子として溶融ブレンドの中に均一に分散することができ、かつポリマー成分の不均質な核形成部位としての機能を果たすことができる場合、この物質は不溶性の核剤として有用であり得る。例示的な不溶性の核剤としては、例えば、無機物質及び顔料が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な例示的無機物質としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、二ナトリウム塩(Milliken & Company(Spartanburg,SC)から商品名HYPERFORM(登録商標)HPN−68Lで入手可能)、TiO、タルク、ポリテトラフルオロエチレンなどのポリマー材料の金属微粒子又は微粒子が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な顔料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー又はグリーン顔料、及びD&Cレッド6(二ナトリウム塩)が挙げられるが、これらに限定されない。使用する特定の核剤は、使用するポリマー、多孔性膜の特定領域内の所望の孔径、本明細書で論じられない他の要因、又はこれらの組み合わせに基づいて選択され得る。
【0023】
一実施形態では、溶解性核剤を単独で使用することができる。一実施形態では、不溶性の核剤を単独で使用することができる。一実施形態では、溶解性核剤を不溶性の核剤と組み合わせて使用することができる。
【0024】
核剤は、好適な多孔性膜を形成する又は好適な多孔性膜に形成され得る(例えば、膜を適応させることにより)ポリマー球粒マトリックスを生成するのに十分な核形成部位でポリマーの結晶化を開始するのに十分な量で、溶融ブレンド中に存在し得る。使用する核剤の量は、少なくともある程度、使用する特定のポリマー、所望の多孔性及び孔径、使用する特定の核剤、本明細書で論じられない他の要因、又はこれらの組み合わせに応じて決定される。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量を基準として5%未満の核剤を含むことができる。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量を基準として、約100パーツ・パー・ミリオン(ppm)〜約5%の核剤を含むことができる。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量を基準として2%未満の核剤を含むことができる。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量を基準として、約200ppm〜約2%の核剤を含むことができる。
【0025】
第1及び第2の組成物又は溶融ブレンドは更に、1つ又は2つ以上の希釈剤を含む。本発明で使用するとき、用語「希釈剤」は、固体及び液体希釈剤の両方を包含するものとする。好適な希釈剤は、室温で結晶性ポリマー用の溶媒ではない物質である。希釈剤は、ポリマーの溶融温度より高い温度でポリマーと混和性であるが、ポリマーの結晶化温度未満に冷却されるとポリマーから相分離する物質であると記載することもできる。しかしながら、結晶性ポリマーの溶融温度で、希釈剤はポリマー用の良溶媒になり、ポリマーを溶解して均質溶液を形成する。均質溶液は、例えば、フィルムダイを通して押し出され、結晶性ポリマーの結晶化温度まで又は結晶化温度未満に冷却すると、溶液は相分離して相分離フィルムを形成する。一実施形態では、好適な希釈剤は、大気圧で、ポリマーの溶融温度と少なくとも同程度に高い沸点を有する。しかしながら、化合物の沸点をポリマーの溶融温度と少なくとも同程度に高い温度に上げるために超大気圧を用いる場合には、より低い沸点を有する希釈剤を使用してもよい。一般に、好適な希釈剤は、ポリマーの溶解度パラメータ及び水素結合パラメータの値の数単位以内である溶解度パラメータ及び水素結合パラメータを有する。
【0026】
例示的な希釈剤としては、例えば、鉱油、パラフィン油、ワセリン、ワックス及び石油スピリットが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーと希釈剤との組み合わせのいくつかの例としては、ポリプロピレンと鉱油、ワセリン、ワックス又は石油スピリット;ポリプロピレン−ポリエチレンコポリマーと鉱油;ポリエチレンと鉱油又は石油スピリット;並びにこれらの混合物及びブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
希釈剤の量は、少なくともある程度、特定の希釈剤、特定のポリマー、ポリマー及び核剤の量、調製される領域の所望の多孔性及び孔径、本明細書で論じられない他の要因、又はこれらの組み合わせによって決まる。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量を基準として80%未満の希釈剤を含むことができる。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量を基準として75%未満の希釈剤を含むことができる。一実施形態では、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの総重量を基準として少なくとも約30%の希釈剤を含むことができる。
【0028】
第1及び第2の組成物又は溶融ブレンドは、他の材料を含むことも可能である。このような材料は、溶融ブレンドに加えられてもよく、キャスト後に材料に加えられてもよく、又は材料の任意の適応後に材料に加えられてもよく、以下この点について説明する。一実施形態において、任意成分は、ポリマー及び希釈剤と共に、溶解物添加剤として溶融ブレンドに添加される。このような溶解物添加剤としては、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、芳香剤、可塑剤、抗微生物剤、難燃剤、防汚化合物、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
各任意成分は、一般に、核生成又は相分離プロセスを妨げない量で含まれる。一実施形態では、各任意成分の量は、溶融ブレンドの総重量を基準として約15%以下である。一実施形態では、各任意成分の量は、一般に、溶融ブレンドの総重量を基準として約5%以下である。
【0030】
一般に、第1及び第2の組成物は、同じポリマー又はポリマーブレンドを含む。しかしながら、2つの組成物中のポリマー又はポリマーブレンドの量は同じである必要はないことに留意されたい。一実施形態では、第1の溶融ブレンド(即ち第1の組成物)及び第2の溶融ブレンド(即ち第2の組成物)は、異なる核剤を有することができる。一実施形態では、第1の溶融ブレンド及び第2の領域のための溶融ブレンドは、異なる量の同じ核剤を有することができる。一実施形態では、第1の溶融ブレンドは核剤を含有することができる一方、第2の溶融ブレンドは核剤を含有しない。一実施形態では、第1の溶融ブレンド及び第2の領域のための溶融ブレンドは、異なる量の異なる核剤を有することができる。異なる量、異なる核剤、又はその両方は、孔径が異なる領域(第1の溶融ブレンド及び第2の溶融ブレンドを使用する場合には2つの領域)を有する最終物品をもたらす。
【0031】
更なる組成物、即ち第1及び第2の組成物を超える組成物を形成することができる。一実施形態では、2つの領域からなる(zoned)物品は、第1及び第2の組成物で形成され得る。一実施形態では、3つの領域からなる物品は、第1及び第2の組成物で形成され得るか、又は3つの領域からなる物品は、第1、第2、及び第3の組成物で形成され得る。3つを超える領域を有する物品もまた、2つ以上の組成物で形成され得る。
【0032】
第1及び第2の組成物の形成方法は、本明細書を読んだ当業者には既知であろう。一実施形態では、第1及び第2の組成物は、単に組成物の成分の全てを混合することによって形成され得る。一実施形態では、組成物は、少なくとも部分的に押出成形機の中で形成され得る。押出成形機内における組成物の形成は、組成物の構成成分の全てを、押出成形機に個別に加えることによって達成され得る。押出成形機内における組成物の形成はまた、組成物の2つの構成成分を押出成形機の外で混合することと、この2つの構成成分からなる混合物を押出成形機に加えることと、残りの構成成分を押出成形機に加えることと、を含むことができる。
【0033】
例示的な押出成形機システム200が図2に示されている。このような例示的な押出成形機システム200は、2つの押出成形機装置10a及び10bを含むことができる。押出成形機装置10a及び10bの様々な構成要素は、表記法「a」及び「b」を別として同じ参照番号が付されている。2つの押出成形機10a及び10bの構成要素は同じであり得るが、同じである必要はない。説明は両方に等しく適用され得る(即ち、「10a」及び「10b」に言及し得る)という了解の下で、各構成要素について一般的に説明する(即ち「10」を指す)。押出成形機装置10は、ホッパー12と、様々な領域14〜16とを有する。押出成形装置10のホッパー12にポリマーを導入する。ホッパー12と押出成形機出口17との間の押出成形機の壁にあるポート11を通して、押出成形機10内へ希釈剤13を供給する。他の実施形態では、ポート11はホッパー12近傍に配置されてもよい。更に、核剤は、希釈剤と共に予混合されて、装置13に取り込まれてもよく、又はポリマー/核剤マスターバッチとしてホッパー12へ供給されてもよい。上述は、組成物を押出成形機の中でどのように形成することができるかの例である。一実施形態では、第1の組成物を第1の押出成形機10aの中で形成することができ、第2の組成物を第2の押出成形機10bの中で形成することができる。
【0034】
一実施形態では、構成成分の全てを組み合わせる前に、溶融ブレンドの構成成分の1つ又は2つ以上を、別の構成成分と混合することができる。このような予混合は、最終組成物をより均質にすることができ、これはより均一な物品をもたらすことができる。予混合は、利用する場合、高剪断混合器又はビードミルなどを含むがこれに限定されない既知の方法を用いて達成され得る。このような装置の例としては、ULTRA TURRAX(登録商標)T−25ベーシック高剪断混合器(IKA Works,Inc.(Wilmington,NC))又はMiniZETA(商標)ビードミル(NETZSCH USA(Exton,PA))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
一実施形態では、例えば、残りの成分を添加する前に、核剤を希釈剤又はポリマーと予混合することができる。このような予混合工程を行う場合、例えば核剤が希釈剤全体に均一に分散するのに十分な期間、核剤を希釈剤と予混合することができる。混合時間は通常、希釈剤/核剤ブレンドの体積に応じて約2〜約10分の範囲であるが、約1リットルのバッチに対する適切な混合時間は2分であり得、5リットルのバッチに対しては10分が適切な混合時間であり得る。
【0036】
構成成分の一部の予混合は、溶融ブレンド(及び最終生成物)内で核剤を均一分散するために必須ではない。例えば、押出成形機アセンブリが適切な混合を提供して、押出成形中のポリマー/希釈剤の溶融物ストリーム内の核剤を均一に分布するのであれば(例えば、二軸押し出し機上の高剪断攪拌機要素を使用して)、予混合工程を省略することができる。一実施形態では、予混合工程を用いることができる。希釈剤又はポリマーマスターバッチ内にて、核剤の均一予備分散体を調製することにより、唯一の混合装置として最終押出成形プロセスに依存する必要性をなくすことができる。
【0037】
例示的な方法の第2の工程は、第1及び第2の組成物を共押し出しする工程130である。図2に示される押出成形機システム200を使用して、共押し出し工程を行うことができる。押出成形機10は、少なくとも3つの領域14、15及び16を有することができ、これら領域は、それぞれ、押出成形機出口17に向かって上昇する、下降する、又は同じ温度で加熱され得る。約25〜約2000マイクロメートルのスリットギャップを有するスロットダイ19が、押出成形機10の後ろに配置され得る。静的ミキサー18などの好適な混合装置を、押出成形機出口17とスロットダイ19との間に配置して、組成物の混合を促進することができる。あるいは、押出成形機出口17とスロットダイ19との間に溶解ポンプを配置してもよい。押出成形機10を通過する間に、溶融ブレンドは、溶融ブレンドの溶融温度まで又はそれよりも少なくとも約5℃高い温度(ただし、ポリマーの熱分解温度よりは低い)まで加熱される。この混合物を混合して溶融ブレンドを形成し、この溶融ブレンドを、スロットダイ19を通して層25としてキャスティングホイール20の上に押し出す。
【0038】
図3は、押出成形機システムの別の例示的な構成を示す。この例示的な押出成形機システムは、2つの押出成形機と共に使用することができるフィードブロック押出成形機システム300とも呼ぶことができる。図3のフィードブロック押出成形機システム300は、第1の押出成形機310と第2の押出成形機320とを含む。両方の押出成形機は、例えば、図2に例示されたものと同様であり得る。フィードブロック押出成形機システム300はまた、第1の溶解ポンプ315と第2の溶解ポンプ325とを含む。第1及び第2の溶解ポンプ315及び325は、それぞれ、押出成形機を出て行く押出品に、より高度な制御を提供する働きをする。このことは、結果として、ダイにかかる背圧、及び最終的にはキャストフィルムの厚さをより正確に制御する働きをすることができる。フィードブロック押出成形機システム300はまた、二重層フィードブロック330を含む。二重層フィードブロック330は、2つの流入量を取り込み、ダイ340に対して1つの流入量を形成する働きをする。第1の組成物は、第1の押出成形機310を出て、第1の溶解ポンプ315を経由し、二重層フィードブロック330の中に第1の液体層318を形成し、第2の組成物は、第2の押出成形機320を出て、第2の溶解ポンプ325を経由し、二重層フィードブロック330の中に第2の液体層328を形成する。第1の液体層318及び第2の液体層328は共に、二重層フィードブロック330を出て、単一オリフィスダイ340の入口341に入り、キャスティングホイール350の上に押し出されて、多孔性膜360を形成する。
【0039】
図4は、押出成形機システムの別の例示的な構成であるマニホールド押出成形機システム400を示している。マニホールド押出成形機システム400は、第1の押出成形機410、第2の押出成形機420、第1の溶解ポンプ415、第2の溶解ポンプ425、及びキャスティングホイール450といった、フィードブロック押出成形機システム300に関して上述した多くの構成要素を含んでいる。マニホールド押出成形機システム400は、フィードブロック押出成形機システム300の二重層フィードブロック330及び単一オリフィスダイ340を、二重マニホールドダイ470に置き換えている。単一オリフィスダイ340が1つの入口341のみを含んでいたのに対して、二重マニホールドダイ470は、第1の入口471と第2の入口472とを含む。二重マニホールドダイ470は2つの入口を有するので、二重層フィードブロックは必要ない。第1の押出成形機410で形成された第1の組成物は、第1の溶解ポンプ415から二重マニホールドダイ470の第1の入口471の中にポンピングされて、第1の液体層417を形成し、第2の押出成形機420で形成された第2の組成物は、第2の溶解ポンプ425から二重マニホールドダイ470の第2の入口472の中にポンピングされて、第2の液体層427を形成する。第1の液体層417及び第2の液体層427は、キャスティングホイール450の上に押し出されて、多孔性膜460を形成する。
【0040】
二層膜を作製するときに二重マニホールドダイ(又は、x個の層を有する膜を作製するときにx個の入口を有するマニホールドダイ)を使用することにより、可溶性で高移動性の核剤が、共押し出しされたフィルムの1つの層から共押し出しされたフィルムの別の層へと移動することから生じ得る、ある種の欠点を低減又は緩和することができる。そのような移動は、これら2つの層が相互に接触して設置された後であるが、核剤の溶液からの相分離を生じさせるのに十分なほど融解物の温度が降下する前に生じる。この移動の影響は、得られたマルチゾーン膜の隣接領域の孔径の差異を低減させる傾向がある。この問題を最小限に抑えるための1つの方法は、2つの溶融物ストリームが高温である間に(この温度では、核形成促進剤(nucleator)が溶解しておりかつ高度に移動性である)この2つの溶融物ストリームが接触する時間を最小限にすることである。これは、2つの層を高温で比較的(comparably)長い期間相互に接触させる二重フィードブロックではなく、二重マニホールドダイを使用する場合に、より容易に達成され得る。
【0041】
図1に示される例示的な方法における次の工程は、物品を冷却する工程140である。この工程の目的は、溶融ブレンドからポリマーを結晶化するために、溶融ブレンドの温度を結晶化温度を下回るまで低下させることである。用語「結晶化温度」とは、ポリマーが希釈剤と共にブレンド内に存在する場合、ポリマーが結晶化する温度を意味する。
【0042】
多くの方法を用いて物品を冷却することができる。一実施形態では、キャスティングホイール(図3及び図4のキャスティングホイール350及び450、並びに図2のキャスティングホイール20で例示されている)を、ポリマーの結晶化温度を下回る温度に維持することによって、物品を冷却することができる。一実施形態では、適切な温度の急冷浴を用いて、物品を冷却することができる。一実施形態では、気体流(例えば、室温の空気流)を用いて、物品を冷却することができる。一実施形態では、特定温度に保たれたキャスティングホイールの上に物品をキャストすることによって、物品を冷却することができる。物品を冷却するために選択される具体的な方法は、少なくともある程度、組成物の構成成分、最終物品の所望の特性、溶融ブレンド及び急冷媒体(例えば、ホイール、空気又は水など)の温度、本明細書で論じられない他の要因、又はこれらの組み合わせによって決定される。物品を冷却するためにキャスティングホイールを利用する実施形態において、キャスティングホイールは、滑らかであってもパターン化されていてもよい。
【0043】
図1に示される例示的な方法は、2つの任意の工程、即ち、希釈剤を除去する工程150と、物品を適応させる工程160とを含む。一実施形態では、これら工程のどちらも実施しない、これら工程の一方だけが実施される、又はこれら工程の両方が実施される。更に別の実施形態では、これら工程の両方が実施されるが、順番が逆である(即ち、物品が適応され、その後続いて希釈剤が除去される)。これら工程の両方又は一方は、ポリマー領域に隣接する空気の領域を更に形成する、即ち、物品を多孔性又はより多孔性にする働きをする。
【0044】
上述のように、物品から希釈剤を除去する任意の工程150は必要ではないが、行ってもよい。一実施形態では、希釈剤は、少なくとも部分的に除去され得る。DuPontから入手可能なVertrel(商標)HCFC−123などの揮発性溶媒を使用して、物品から実質的に全ての希釈剤を抽出することによって、希釈剤を除去(又は部分的に除去)することができる。次に、希釈剤が存在していた場所に空気空洞を残して溶媒を蒸発させる。図2に例示されるような押出成形機システムを使用する実施形態では、冷却されたフィルムは、キャスティングホイール20から希釈剤除去装置21に除去されて、希釈剤を除去することができる溶媒27に層25を曝露することができる。
【0045】
膜の更なる形成方法としては、パターン化された表面を有する実質的に均一な厚みの膜を提供するために、押出溶解物を(冷却されている又はされていない)パターン化されたロール上へキャストして、ブレンドがロールと接触しない領域を提供することであって、パターン化された表面が高多孔性の実質的にスキンレス領域及び低多孔性のスキン領域を提供するものが挙げられる。このような方法は、米国特許第5,120,594号に記載されており、その主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。次に、必要に応じて、膜材料を適応させることができる。
【0046】
物品を適応させる任意の工程160もやはり必要ではないが、行ってもよく、一般にこの工程は、空気空洞の体積を増加させて、それにより物品の多孔性を高める働きをする。本明細書で使用する場合、「適応」とは、物品に永久歪又は伸びをもたらし、典型的には少なくとも長さの増大が約10%又は比で表した場合に約1.1:1.0となるように、弾性限度を超えて延伸させること意味する。延伸により、ポリマー/核剤球粒及び凝集体は引き離され、連続領域内のポリマーが恒久的に細くされ、これにより、フィブリルが形成され、コーティングされた球粒と凝集体との間に微小な空洞が形成され、かつ相互接続した微細孔の網状組織が生成され得る。
【0047】
典型的には、約10%〜約300%又はそれ以上の伸びを1つ又は2つの方向で得るように延伸させる。延伸の実量は、フィルムの組成及び所望の多孔性の程度(例えば、平均孔径)に依存するであろう。一実施形態では、物品を少なくとも1方向に延伸することができ、一実施形態では、物品を1つを超える方向に、例えば、ダウンウェブ方向(長手方向又は機械方向とも呼ばれる)及び横断方向(クロスウェブ方向とも呼ばれる)の両方に延伸することができる。
【0048】
延伸は、少なくとも1方向で延伸を提供可能な、並びに、例えば、機械方向及び横断方向の両方など1方向を超える延伸を提供可能な、任意の好適な装置により提供され得る。延伸は、両方向にて、逐次的に又は同時に行ってもよい。例えば、フィルムは、機械方向に続いて横断方向に逐次的に適応させてもよく、又は機械方向及び横断方向の両方へ同時に適応させてもよい。均一かつ制御された多孔性を得るように延伸を行うことができる。
【0049】
図2に例示されるような押出成形機システムを使用する実施形態では、冷却されたフィルムは、機械方向延伸装置22及び逐次的に整列した横断方向延伸装置23へとそのまま進み、続いてロール28に捲回するための巻き取りローラー24へと進んでもよい。更に、機械方向延伸装置22及び横断方向延伸装置23の代わりに、単一二軸延伸ユニット(図示せず)での同時二軸延伸を行ってもよい。更に、希釈剤除去装置21又は他の希釈剤除去装置を横断方向延伸装置23と巻き取りローラー24との間に配置して、1つ以上の延伸工程後に、希釈剤を除去することができる。
【0050】
このように永続的に細くなることは、典型的には、物品を恒久的に半透明にする。また、適応させる際に希釈剤が除去されない場合には、希釈剤は、得られたポリマー/核剤粒子又は球粒の表面を、少なくとも部分的にコーティングした又は取り囲んだままとなる。一実施形態では、適応されたフィルムを熱安定温度に抑制しつつ加熱するという従来の周知の技術に従って、多孔質物品を寸法的に安定化させることができる。これはアニーリングとも呼ばれる。
【0051】
本明細書に開示の方法はまた、第1及び第2の押出成形機に導入される比エネルギーを異なって制御する任意の工程を含む。例えば、一実施形態では、第1の押出成形機への比エネルギー入力は、第2の押出成形機への比エネルギー入力と異なる。このような示差的な比エネルギー入力を、第1の組成物と第2の組成物で異なる核剤、異なる核剤濃度(又は両方)と組み合すことも可能である。一実施形態において、本明細書に開示の方法は、少なくとも第1及び第2の押出成形機への比エネルギー入力を異ならせて制御することと同時に、(i)第2の核剤と異なる第1の核剤、又は(ii)第2の核形成促進剤濃度と異なる第1の核形成促進剤濃度、のいずれかを有する第1及び第2の組成物を使用すること、を含む。
【0052】
押出成形機に入力される比エネルギーを変更する方法は多く存在する。代表的な方法としては、スクリュー速度を変更すること、押出成形機の温度を変更すること、押出成形機の処理量を変更すること、スクリュー設計の能動性を変更すること、押出成形機の長さ/直径(L/D)比を変更すること、及び押出成形機の圧力を変更すること、が挙げられるが、これらに限定されない。スクリュー速度を速くすることで、押出成形機への比エネルギー入力を増大させる(例えば、毎分回転数(rpm)の増加)。押出成形機の温度を高くすることで、押出成形機への比エネルギー入力を増大させる。押出成形機の処理量(例えば、ポンド/時間)を増加させることで、押出成形機への比エネルギー入力を減少させる。スクリューの設計の能動性を高めることで(例えば、より高いkwh/kg定格を有するスクリュー設計を選択することで)、押出成形機への比エネルギー入力を増大させる。押出成形機の長さ/直径比を大きくすることで、押出成形機への比エネルギー入力を増大させる。押出成形機の圧力(例えばpsi)を増大させることで、押出成形機への比エネルギー入力を増大させる。
【0053】
第1及び第2の押出成形機に異なる比エネルギー入力を利用することは、本明細書に開示の通りに形成された多孔質物品の、第1の領域と第2の領域との間の孔径のコントラストを強化する働きをし得る。異なる比エネルギー入力を利用することにより、1つの領域から別の領域への核剤移動の影響を低減又は緩和することも可能である。異なる比エネルギー入力(例えば異なるスクリュー速度)は、ポリマーが融解物から結晶化したときにポリマーが視覚的に区別可能及び異なるモルホロジーを形成する状態にポリマーを剪断(又は加工)する働きをする。即ち、ある溶融ブレンドへの比エネルギー入力を増大させることで、当該溶融ブレンド中のポリマーの分解が進み、その結果、結晶化能力が低下する。したがって、全ての他のパラメータが等しい場合、より高い比エネルギー入力に曝露された溶融ブレンドから形成される多層膜の層は、冷却される際に低い結晶化速度を有し、その結果として平均孔径が大きくなる。溶融ブレンドのポリマー成分の拡散速度は、溶解した小分子核形成促進剤の拡散速度よりもかなり遅いので、2つの層が高温でかなりの期間相互に接触していたとしても、ポリマー成分の層間相互拡散は、極めて僅かな程度でのみ生じる。第1の層の希釈剤及び核剤は、隣接する層に又は隣接する層から移動することによって、隣接する層の核剤と均衡になろうとする可能性があるので、明確な境界を有するはっきりと区別できる領域を形成するのは困難であり得るという理由から、このことは、異なる核剤のみを使用すること、異なる核剤濃度を使用すること、又はその両方を使用することに優る利点を提供することができる。このことは、膜の厚さにわたって視覚的に区別可能でない材料に、均一でなくかつ所望の結果よりも厚い大孔領域/小孔領域を形成し得る界面混合をもたらす可能性がある。更に、核形成促進剤のこの界面拡散は、非常に薄くて小孔径の層を有する膜を形成する能力を低減させる可能性がある(小孔径の非常に薄い層は、液体濾過用途において有利であり得、薄い小孔径の層は、液体濾過速度を最大限にした状態で小粒子の保持をもたらす働きをする)。隣接領域と比べて低濃度の核剤を含有する領域内で、より高い比エネルギー入力(例えばより速いスクリュー速度)を追加的に用いることによって、少ない核形成促進剤を含有する領域内のポリマーをわずかに分解させて、その結晶化温度をより高濃度の核剤を含有する隣接領域と比べて低下させることが可能である。可溶性で低分子量の核形成促進剤とは異なり、各層の高分子量のポリマーは、隣接層の中にほんの微々たる距離だけ拡散することができる。
【0054】
一実施形態では、2つの押出成形機で異なるスクリュー速度を利用することによって、2つの押出成形機の比エネルギー入力を異ならせる。スクリュー速度を変化させるのは簡単である上、2つの領域に有意かつ有効な差異をもたらすことができる。一実施形態では、スクリュー速度における約50%以下の相対的差異(例えば、一方のスクリュー速度は250rpm、第2のスクリュー速度は125rpmなど)を用いることができる。
【0055】
得られた多孔性膜(又はフィルム若しくはその他の成形物品)は、任意に種々の材料に含浸させて、様々な特定の機能のいずれかを提供してもよい。多孔性膜(又はフィルム若しくはその他の成形物品)は、希釈剤を除去した後に含浸させてもよく、あるいは、希釈剤は、含浸プロセス前に多孔性膜(又はフィルム若しくはその他の成形物品)内に残されてもよい。多孔性膜(又はフィルム若しくはその他の成形物品)を含浸させる方法としては、マルチディッピング(multiple dipping)、長時間浸漬(long soak)、真空、液圧プレス及び蒸発を含むがこれらに限定されない、いくつかの方法が知られている。本明細書に開示の多孔性膜の孔の一部を少なくとも部分的に充填するために用いることが可能な含浸材料の例としては、薬剤、芳香剤、抗微生物剤、帯電防止剤、界面活性剤、殺虫剤、クロマトグラフィー機能化学品及び固体粒子材料が挙げられるが、これらに限定されない。帯電防止剤又は界面活性剤などの特定の材料は、希釈剤を予め除去することなしに含浸させてもよい。
【0056】
多孔性膜(又はフィルム若しくはその他の成形物品)は、希釈剤が除去される前又は後のいずれかにて、様々な既知のコーティング又は堆積技術のいずれかを用いて、その上に様々な組成物のいずれかを堆積することによって、更に改質されてもよい。例えば、蒸着又はスパッタリング技術により、多孔性膜(又はフィルム若しくはその他の成形物品)に金属をコーティングしてもよく、あるいは、接着剤、水性又は溶媒系コーティング組成物又は染料をコーティングしてもよい。ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティングなどの従来技術、又は任意のその他のコーティング技術によって、コーティングを実施してもよい。図2の代表的装置200には図示されていないが、例えば、横断方向延伸装置23と巻き取りローラー24との間にインラインコーティングステーション及び/又は乾燥オーブンを更に配置して、延伸させた膜の外側表面の一方又は両方の上にコーティングすることができる。
【0057】
多孔性膜(又はフィルム若しくはその他の成形物品)は、その他のシート材料(例えば、その他の多孔性膜、布地層(例えば、織物、不織布、編み物、又はメッシュ生地)、ポリマーフィルム層、金属箔層、発泡体層、又はこれらの任意の組み合わせ)などの様々なその他の構造体のいずれかに積層されて、複合構造体にしてもよい。積層は、接着剤結合、スポット溶接などの従来技術によって、又は多孔性を破壊したりそれを阻害したり、望ましくない多孔性又は穿孔を生成したりしないその他の技術によって、実施することができる。
【0058】
先で開示した方法を利用して、多孔質物品又は多孔性膜を形成することができる。本明細書に開示の多孔性膜は、一般に、少なくとも2つの領域を含む。図5は、第1の領域510と第2の領域520とを含む例示的な多孔性膜を示している。第1の領域510は第2の領域520に隣接することができ、一実施形態では、第2の領域520に直接的に隣接することができる。図5に示されるもののような一実施形態では、第1の領域510を第2の領域520の上に配置することができる。別の実施形態では(例示されず)、第2の領域520を第1の領域510の上に配置することができる。
【0059】
図5に描かれる実施形態では、第1の領域510及び第2の領域520内のポリマーは同一である。第1の領域510は第1の平均孔径を有し、第2の領域520は第2の平均孔径を有する。第1の領域510はまた、第1の領域内に第1の濃度を有する第1の核剤を含む。第2の領域520はまた、第2の濃度を有する第2の核剤を含む。一実施形態では、第1の領域内の第1の核剤の量、及び第2の領域内の第2の核剤の量は、特定領域の総重量を基準として、約0.1重量%〜約5.0重量%の範囲内である。
【0060】
一実施形態では、第1の核剤は第2の核剤と同じである。一実施形態では、第1の核剤は第2の核剤と同じであり、第1の濃度は第2の濃度と同じではない。一実施形態では、第1の核剤は第2の核剤と同じではなく、第1の濃度は第2の濃度と同じではない。
【0061】
第1の領域510と第2の領域520との間の核剤の種類、核剤の濃度、又はその両方の違いは、第1の領域510の第1の平均孔径と、第2の領域520の第2の平均孔径との違いをもたらす。少なくとも第1の濃度が第2の濃度と異なり、かつ第1の領域及び第2の領域の核剤の種類が同じである実施形態では、2つの領域の相対濃度は、少なくともある程度、2つの領域の相対孔径を決定し得る。例えば、第1の濃度が第2の濃度未満である場合、第1の平均孔径は一般に、第2の平均孔径を超える。反対に、第1の濃度が第2の濃度を超える場合、第1の平均孔径は一般に、第2の平均孔径未満である。
【0062】
本明細書に開示の多孔性膜はまた、2つを超える領域を含むことができる。図6に示される例示的な実施形態は、第1の領域610、第2の領域620、及び第3の領域630の3つの領域を含んでいる。3つの領域全てのポリマーは同じである。第1の領域610は第2の領域620に隣接することができ、一実施形態では、第2の領域620に直接的に隣接することができる。第2の領域620は第3の領域630に隣接することができ、一実施形態では、第3の領域630に直接的に隣接することができる。図6に描かれるもののような実施形態では、第1の領域610を第2の領域620の上に配置することができ、第2の領域を第3の領域630の上に配置することができる。
【0063】
図6に示される実施形態では、第1の領域610、第2の領域620、及び第3の領域630内のポリマーは同じである。第1の領域610は第1の平均孔径を有し、第2の領域620は第2の平均孔径を有し、第3の領域630は第3の平均孔径を有する。第1の領域610はまた、第1の領域内の第1の濃度を有する第1の核剤を含む。第2の領域620はまた、第2の領域内の第2の濃度を有する第2の核剤を含む。第3の領域630はまた、第3の領域内の第3の濃度を有する第3の核剤を含む。一実施形態では、第1の核剤は第2の核剤又は第3の核剤と同じであり、第2の核剤は第3の核剤と同じであるが、第1、第2、及び第3の核剤の量は異なる。一実施形態では、第1の濃度は第2の濃度又は第3の濃度と同じではなく、第2の濃度は第3の濃度と同じではない。一実施形態では、第1の核剤は第2の核剤又は第3の核剤と同じではなく、第2の核剤は第3の核剤と同じではなく、第1の濃度は第2の濃度又は第3の濃度と同じではなく、第2の濃度は第3の濃度と同じではない。
【0064】
図7によって例示される例示的な多孔性膜もまた、3つの領域を含んでいる。この多孔性膜は、第1の領域710と、第2の領域720と、第3の領域730とを含む。この特定の実施形態はサンドイッチ構造を有しており、同じである2つの領域(第1の領域710及び第3の領域730)が異なる領域(第2の領域720)を挟んでいる。3つの領域全てのポリマーは同じである。第1の領域710は第1の平均孔径を有し、第2の領域720は第2の平均孔径を有し、第3の領域730は第3の平均孔径を有する。第1の領域710はまた、第1の領域内の第1の濃度を有する第1の核剤を含む。第2の領域720はまた、第2の領域内の第2の濃度を有する第2の核剤を含む。第3の領域730はまた、第3の領域内の第3の濃度を有する第3の核剤を含む。一実施形態では、第1の核剤及び第3の核剤は同じであるが、これらは第2の核剤と同じではない。一実施形態では、第1の濃度及び第3の濃度は同じであるが、これらは第2の濃度と同じではない。一実施形態では、第1の核剤は第3の核剤と同じであるが、これらは第2の核剤と同じではなく、第1の濃度は第3の濃度と同じであるが、これらは第2の濃度と同じではない。
【0065】
3つを超える領域を有する多孔性膜もまた本開示により企図される。本明細書に開示の多孔性膜は、その使用目的に応じて様々である平均層厚さを有することができる。典型的には、各多孔性膜層は、平均厚さが約5マイクロメートル〜約500マイクロメートルの範囲である。
【0066】
本明細書に開示の多孔性膜は、その使用目的、プロセス条件、及び使用する材料に応じて変化し得る、その中を通る流体流に対する抵抗度を有することができる。多孔性膜を通る流体流を測定する1つの方法は、ASTM D726−58、方法A(本明細書では、「ガーレイ多孔度(the Gurley porosity)」又は「ガーレイ通気抵抗(the Gurley resistance to air flow)」とも呼ばれる)に記載されているような標準条件下で、所与の体積の気体が多孔性膜の標準領域を通過するために必要な時間として表される、多孔性膜を通る気体流に対する抵抗を測定することである。ガーレイ通気抵抗は、50立法センチメートル(cc)の空気、又は別の特定体積の空気が、124mm水圧にて6.35cm(1平方インチ)の多孔性膜を通過するための秒単位での時間である。
【0067】
本明細書に開示の多孔性膜の多孔性は、次式を使用して、(i)延伸フィルムの測定されたバルク密度(dsf)及び(ii)(a)延伸前の純粋ポリマーの測定されたバルク密度(dpp)又は(ii)(b)延伸前の、純粋ポリマーに希釈剤を加えたものについての測定されたバルク複合材料密度(dcd)に基づいて計算された多孔性値(Pcal)で表わされることができる。
【0068】
cal=[1−(dsf/(dpp)又は(dcd))]×100%
本明細書に開示の多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含む物品)は、シート又はフィルムの形態であることができるが、その他の物品形状も考えられ、これを形成することができる。例えば、物品は、シート、チューブ、フィラメント、又は中空繊維の形態であってよい。本明細書に開示の微多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含む物品)は、自立型フィルム(又はその他成形物品)であってもよく、あるいは、ラミネーションなどの用途に応じて、ポリマー、金属、セルロース、セラミック、又はこれらの任意の組み合わせである材料から製造された構造体などの基材に固定されてもよい。
【0069】
本明細書に開示の多孔性膜はまた、有利な処理量を提供することができる。本明細書で使用するとき、処理量は、フィルタ(膜)が、限界膜間差圧に達する前に、目標一定流速で処理する流体の体積を指す。処理量は、単位フィルタ面積当たりの流体の体積の単位を有することができる。膜の処理量は、好適なハウジングの中に膜のサンプルを取り付けて、例えば、蠕動ポンプを使用して、試験流体を膜の片側に一定流速で供給することによって、容易に測定することができる。次に、膜の上流の圧力を、圧力トランスデューサ又は圧力計を使用して測定することができ、膜を通して処理される試験流体の量を、マスバランスで連続的にモニタしてもよい。膜の上流の圧力が規定圧力まで増加した時点で、試験流体を膜に供給するのを中止し、膜を通って処理された試験流体の全質量又は体積を処理量として、通常は単位膜面積当たりの体積又は質量の単位で記録する。マルチゾーン膜の処理量を、同じバブルポイント孔径を有する対称的な、又は単一領域の膜の処理量と比較することによって、マルチゾーン膜の処理量の向上を評価することができる。一実施形態では、マルチゾーン膜の処理量は、同じバブルポイント孔径を有する対称膜の処理量より少なくとも50%多い。一実施形態では、マルチゾーン膜の処理量は、同じバブルポイント孔径を有する対称膜の処理量より少なくとも2倍多い。一実施形態では、マルチゾーン膜の処理量は、同じバブルポイント孔径を有する対称膜の処理量より少なくとも3倍多い。一実施形態では、マルチゾーン膜の処理量は、同じバブルポイント孔径を有する対称膜の処理量より少なくとも4倍多い。
【0070】
場合によっては、異なる平均孔径の隣接領域の間、即ち、第1の領域と第2の領域との間に、はっきりした明確な境界が存在するような方法で、マルチゾーン膜を調製するのが有利な場合がある。これは、例えば、小粒子を保持するための小さい平均孔径の非常に薄くて境界明瞭な領域と、高流量を促進するための大きな平均孔径を有する膜の残りの領域とによって、流体中に小粒子を保持すると同時に高流量を呈する膜を調製する際に、有利であり得る。別の場合では、平均孔径が異なる隣接領域の間の界面が拡散しており、かつ孔径勾配によって特徴付けられ、孔径が、第1の領域のその特徴と、隣接する第2の領域のその特徴との間で徐々に変化するように、マルチゾーン膜を調製するのが有利であり得る。これは、例えば、サイズ分布を有する粒子を含有する特定の流体に対する粒子負荷能力、又は処理量を有する膜を調製する際に、有利であり得る。明確な境界が望ましい場合には、図4に概略的に示されるマニホールドダイ共押出成形手法、及び/又は領域の少なくとも1つに不溶性の核剤を用いるのが有利であり得る。拡散境界が望ましい場合には、図3に概略的に示される多層フィードブロック共押出成形手法、及び/又は隣接する溶融物ストリームがダイの中にある間にそれらの間で可溶性の核形成促進剤が相互拡散できるようにすることによって、領域間の孔径の変わり目の拡散を円滑にするために、領域の少なくとも1つに溶解する核形成促進剤を用いるのが有利であり得る。
【0071】
本明細書に開示の多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含む物品)を、種々の用途で使用することが可能であり、この用途には、例えば生物医薬品、食品及び飲料、又はエレクトロニクス産業における流体ストリームを精製、滅菌、又はその両方をするためのフィルタ;水又は廃水の精製濾過用フィルタ;ゲル製剤及び機能性コーティングを保持するための基材;並びに抽出装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
更に、本明細書に開示の多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含む物品)は、より小孔径の膜を形成するのに有用であり得、その場合、粒子及び/又はコーティングは、本明細書に開示の多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含む物品)の多孔質構造体に導入されて、本明細書に開示の多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含む物品)の外側表面及び/又は隙間表面に機能性を付与する。例えば、局所コーティング、外側表面及び/又は隙間表面処理、あるいはゲルを、本明細書に開示の多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含む物品)に導入して、本明細書に開示の多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含む物品)に機能性(例えば、親水性、選択的低結合特性、又は選択的高結合特性)を付与してもよい。大孔径膜から始めることによって、本明細書に開示の多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含有する物品)は、適切なコーティング/隙間充填材料を有する種々の特殊な、官能化多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含有する物品)を製造するための処理に柔軟性を持たせることができ、更には、多孔性膜(及び少なくとも1つの多孔性膜を含有する物品)を通る流体流量を許容可能なものとすることができる。本明細書に開示の多孔性膜に官能化表面を提供するための代表的技術及び材料は、米国特許公報第20070154703号(Wallerら)に記載されており、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
図4に図示されたものと同様の装置を使用して、共押し出しされた2つの領域を有する膜を調製した。膜は、2つの領域で異なる核剤濃度及び異なるスクリュー速度を有していた。
【0074】
溶融ブレンド番号1を以下の通りに処理した。ポリプロピレン(PP)ポリマーペレット(Sunoco Chemicals(Philadelphia,PA)のF008F)を、スクリュー速度225rpmで、40mm共回転二軸押し出し機のホッパーに導入した。核剤(Milliken Chemical(Spartanburg,SC)のMILLAD(登録商標)3988核剤)を、ULTRA TURRAX(登録商標)T−25ベーシック高剪断混合器(IKA Works,Inc.、Wilmington,NC)を用いて、各4リットルのバッチ当たり約5分間、鉱油希釈剤(Mineral Oil Superla White 31 Amoco Lubricants)と予混合した。PPポリマー/希釈剤/核剤の重量比は、それぞれ29.72/70.2/0.08であった。総押し出し速度は、毎時約13.6キログラム(kg/時間)であった。押出成形機は8つの領域を有し、温度プロフィールは、混合領域で260℃及び押出成形機出口で177℃に設定されていた。
【0075】
溶融ブレンド番号2を以下の通りに処理した。ポリプロピレン(PP)ポリマーペレット(Sunoco Chemicals(Philadelphia,PA)のF008F)を、スクリュー速度100rpmで、25mm共回転二軸押し出し機のホッパーに導入した。核剤(Milliken Chemical(Spartanburg,SC)のMILLAD(登録商標)3988核剤)を、ULTRA TURRAX(登録商標)T−25ベーシック高剪断混合器(IKA Works,Inc.、Wilmington,NC)を用いて、各4リットルのバッチ当たり約5分間、鉱油希釈剤(Mineral Oil Superla White 31 Amoco Lubricants)と予混合した。PPポリマー/希釈剤/核剤の重量比は、それぞれ29.78/70.2/0.2であった。総押し出し速度は、毎時約2.72キログラム(kg/時間)であった。押出成形機は8つの領域を有し、温度プロフィールは177℃に設定されていた。
【0076】
デュアルゾーン溶融物ストリームが、幅25.4cmのオリフィスを有するマルチマニホールドダイから単一シートとして出てきて、続いてこれを、21℃に維持されたピラミッド100パターン化キャスティングホイールの上に、4.6メートル/分(m/分)でキャストした。フィルムを溶媒洗浄プロセスに送り込み、そこでVertrel HCFC 123(DuPont)を使用して鉱油を除去した。次に、フィルムを周囲条件で乾燥して溶媒を除去した。乾燥後、フィルムの長さ及び幅を132℃で1.7×3.125に延伸した。
【0077】
断面及び両面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を撮り、これらは図8A〜図8Cに見ることができる。図8Aは、膜全体を倍率11.7mm×600で示し、図8Bは、大孔径を有する領域を倍率11.8mm×2500で示し、図8Cは、小孔径を有する領域を倍率11.8mm×2500で示している。小孔径の層は大孔径の層とは際立って対照的であり、厚さの約18%である。小孔径の層は、押出成形機に入る材料の質量に基づいて約17重量%であり、これは実厚さとの優れた相関であり、各層の制御を示している。
【0078】
膜全体の厚さを測定した。前方流バルポイント圧力装置(forward flow bubble point pressure apparatus)を使用してバブルポイント孔径を測定した。各膜のディスクを、60重量%のイソプロピルアルコール及び40重量%の水の混合物で飽和し、領域Aを上流側にして直径90mmの膜ホルダーに取り付けた。圧力制御装置(型式640、MKS Instruments,Inc.より入手可能)で膜の上流側への窒素ガスの供給を調節した。質量流量計(Mass−Flo(商標)メーター、型番179A12CS3BM、MKS Instruments,Inc.より入手可能)を使用して、膜の下流の気体の質量流量を測定した。試験の最初に、窒素ガスを10.3kPa(1.5psi)の圧力で膜の上流側に供給した。次に、圧力を0.2秒毎に1.38kPa(0.2psi)の増分で上昇させた。これにより、最初は、膜の液体充填された孔を通る窒素の拡散流の量を表す値でほぼ一定であり、続いて、領域Aの大孔から液体を移動させると測定質量流量が一時的に上昇し、その後、領域Bの液体充填された孔を通る窒素の拡散流の量を表す低い質量流量に戻り、次に、領域Bの孔から液体を移動させると測定質量流量が単調増加するといった、膜の下流の測定質量流量が生じた。領域Aのバブルポイント圧力を、測定質量流量の第1の上昇の始まりの時点に加えられた窒素圧として記録した。領域Bのバブルポイント圧力を、測定質量流量の第2の上昇の始まりの時点に加えられた窒素圧として記録した。膜、又は膜の領域のバブルポイント圧力は、ラプラスの方程式にしたがって孔径分布の中の最大孔径に反比例することは、当業者には周知である。
【0079】
【表1】

【0080】
(実施例2)
図3に示されるものと同様の装置を使用して、2つの領域を有する5つの膜を作製した。膜は、2つの領域で異なる核剤濃度及び異なるスクリュー速度を有していた。
【0081】
70.2重量%の鉱油(CitgoからDuoprime Oil 300として入手可能)、29.8重量%のポリプロピレン(Sunoco ChemicalからF008Fとして入手可能)と1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール核剤(Millad(商標)3988、Milliken Chemicalから入手可能)とのブレンドを用いて、溶融物ストリームのそれぞれを調製した。膜のそれぞれの領域A及びBを調製するのに用いたMillad(商標)核形成促進剤濃度及び押出成形機スクリュー速度が表2に示されている。
【0082】
各膜に関し、溶融物ストリームAを溶融混合し、溶融混合部の271℃から押出成形機出口の177℃まで温度が下降する8つの温度領域を有する40mm二軸押し出し機の中に送った。溶融物ストリームBを溶融混合し、溶融混合部の260℃から押出成形機出口の177℃まで温度が下降する6つの温度領域を有する25mm二軸押し出し機の中に送った。各押出成形機のダイ出口の間に溶解ポンプを配置し、各押出成形機からフィードブロックまでの材料の流れをフィードブロックで調節し、溶融物ストリームA及びBの押出成形機出力速度を、それぞれ10.9kg/時間及び3.6kg/時間とした。フィードブロックの中で溶融物ストリームA及びBを組み合わせ、ダイに送り込んで、それぞれ領域A及びBを含むフィルムを形成した。フィードブロック及びダイの温度は177℃であった。2つの領域を有するフィルムを、領域Bが冷却ロールの表面と接触するように、60℃に保たれた冷却ロールの上にドロップキャストした。次に、キャストフィルムを抽出溶媒(DuPontから入手可能なVertrel(商標)HCFC−123)で洗浄して鉱油を除去し、フィルムを長さオリエンターで1.6x及びテンターで2.5xに適応させて、2つの領域を有する膜を形成した。
【0083】
前方流バブルポイント圧力装置を使用して、各膜の領域A及び領域Bのバブルポイント圧を測定した。各膜のディスクを、60重量%のイソプロピルアルコール及び40重量%の水の混合物で飽和し、領域Aを上流側にして直径90mmの膜ホルダーに取り付けた。圧力制御装置(型式640、MKS Instruments,Inc.より入手可能)で膜の上流側への窒素ガスの供給を調節した。質量流量計(Mass−Flo(商標)メーター、型番179A12CS3BM、MKS Instruments,Inc.より入手可能)を使用して、膜の下流の気体の質量流量を測定した。
【0084】
試験の最初に、窒素ガスを10.3kPa(1.5psi)の圧力で膜の上流側に供給した。次に、圧力を0.2秒毎に1.38kPa(0.2psi)の増分で上昇させた。これにより、最初は、膜の液体充填孔を通る窒素の拡散流の量を表す値でほぼ一定であり、続いて、領域Aの大孔から液体を移動させると測定質量流量が一時的に上昇し、その後、領域Bの液体充填孔を通る窒素の拡散流の量を表す低い質量流量に戻り、次に、領域Bの孔から液体を移動させると測定質量流量が単調増加するといった、膜の下流の測定質量流量が生じた。領域Aのバブルポイント圧力を、測定質量流量の第1の上昇の始まりの時点に加えられた窒素圧として記録した。領域Bのバブルポイント圧力を、測定質量流量の第2の上昇の始まりの時点に加えられた窒素圧として記録した。膜、又は膜の領域のバブルポイント圧力は、ラプラスの方程式にしたがって孔径分布の中の最大孔径に反比例することは、当業者には周知である。
【0085】
【表2】

【0086】
表2は、膜のそれぞれに関する領域A及び領域Bの核剤濃度及び押出成形機のスクリュー速度、並びに領域A及び領域Bの測定されたバブルポイント圧力を示している。実施例3Aは、領域A及びBに関して同一の可溶性核形成促進剤の濃度及びスクリュー速度を用いて調製され、その結果、測定された領域A及びBの孔径に差はなかった。実施例3B及び3Cは、領域A及びBで異なる核形成促進剤濃度を用いて調製された。これらの膜に関し、核形成促進剤を多く含有する領域Bは、領域Aの孔径よりもやや小さい孔径を有していた。実施例3Eは、領域Bでより高濃度の核形成促進剤を有し、更に領域Aのスクリュー速度を速くして調製された。これは、領域A及びBの孔径の間に極めて大きなコントラストを生じさせた。実施例3Dは、領域A及びBの核形成促進剤濃度は同一であるが、領域Aのスクリュー速度を速くして調製され、その結果、測定された2つの領域の孔径に差はなかった。
【0087】
この実施例は、異なる孔径の領域を有するマルチゾーン膜は、異なる濃度の可溶性核形成促進剤を有する溶融物ストリームを共押し出しすることによって調製され得ることを示している。しかしながら、低い核形成促進剤濃度の領域において、より速いスクリュー速度を追加的に採用することによって、これら領域内の孔径の間のコントラストをかなり高めることができる。
【0088】
(実施例3)
69.0重量%の鉱油(Penrecoより入手可能なDrakeol 32)、30.9重量%のポリプロピレン(F008FとしてSunoco Chemicalから入手可能)、及び0.1重量%の1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール核剤(Milliken Chemicalから入手可能なMillad(商標)3988)を含有する混合物を溶融混合し、40mm二軸押し出し機に送ることにより、第1の溶融物ストリームAを調製した。40mm二軸押し出し機は、溶融混合部の271℃から押出成形機出口の177℃まで温度が下降する8つの温度領域を有していた。40mm二軸押し出し機の押出成形速度は14.5kg/時間であった。
【0089】
69.0重量%の鉱油(Penrecoより入手可能なDrakeol 32)、28.4重量%のポリプロピレン(F008FとしてSunoco Chemicalから入手可能)、0.1重量%の1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール核剤(Milliken Chemicalから入手可能なMillad(商標)3988)、及び20重量%の銅フタロシアニンブルー顔料(Tokyo Printing Inkから入手可能なマスターバッチ)を含有する2.5重量%のポリプロピレン−ポリエチレンコポリマーマスターバッチを含有する混合物を溶融混合して、25mm二軸押し出し機に送ることにより、第2の溶融物ストリームBを調製した。25mm二軸押し出し機は、溶融混合部の260℃から押出成形機出口の177℃まで温度が下降する6つの温度領域を有していた。25mm二軸押し出し機の押出成形速度は1.8kg/時間であった。
【0090】
溶融物ストリームAを3層フィードブロックの外側の層に送り込み、溶融物ストリームBをフィードブロックの中間層に送り込んだ。3つの層をフィードブロックの中で組み合わせ、単一オリフィスフィルムダイに送り込んで、共押し出しされたA−B−Aの3つの領域からなるフィルムを形成した。フィードブロック及びダイの温度は177℃であった。3つの領域を有するフィルムを、領域Bが冷却ロールの表面と接触するように、60℃に保たれた冷却ロールの上にドロップキャストした。次に、キャストフィルムを抽出溶媒(DuPontから入手可能なVertrel(商標)HCFC−123)で洗浄して鉱油を除去し、フィルムを長さオリエンターで2.0x及びテンターで3.0xに適応させて、3つの領域を有する膜を形成した。
【0091】
図9Aは、得られた3つの領域を有する膜の光学顕微鏡写真であり、色が青でありかつ2つの外側領域とのシャープな界面を呈している、はっきりした中央厚さ方向領域を明確に示している。中央領域の青色は、この領域に銅フタロシアニンブルー顔料が存在することに起因する。
【0092】
図9B及び図9Cは、3つの領域を有する膜の2つの異なる倍率での断面SEM顕微鏡写真である(図9Bの倍率は1500であり、図9Cの倍率は3000である)。これらの顕微鏡写真では、小さい孔径の2つの領域の間に大孔径の領域があることがはっきり見てわかる。
【0093】
3つの領域を有する膜の3つの領域を剥がすことが可能であることが判明した。図9Dは、3つの領域のそれぞれの表面で撮影した表面SEM顕微鏡写真を含んでいる。この場合もやはり、中央領域の孔径が、外側の2つの領域のどちらの孔径よりも有意に大きいことがはっきり見てわかる。
【0094】
それ自体がポリプロピレンの核形成促進剤として作用する不溶性の銅フタロシアニンブルーが、膜の中央領域の可溶性Millad(商標)核形成促進剤の作用を変更したので、大孔径がもたらされたと考えられる。青の不溶性が、共押出成形プロセスの間に中央の層から2つの外側層のどちらかへ移動する能力を強く低減させ、その結果、膜領域の間に非常にはっきりした変わり目が生じた。
【0095】
(実施例4)
図3に示されるものと同様の装置を使用して、2つの領域を有するポリプロピレン膜を調製した。2つの別個の溶融物ストリームを2層フィードブロックの中に共押し出して、このフィードブロックが2つのストリームを組み合わせ、単一オリフィスフィルムダイに送り込んだ。
【0096】
70.7重量%の鉱油(Citgoより入手可能なDuoprime Oil 300)、29.25重量%のポリプロピレン(F008FとしてSunoco Chemicalから入手可能)、及び0.05重量%の1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール核剤(Milliken Chemicalから入手可能なMillad(商標)3988)を含有する混合物を溶融混合して、40mm二軸押し出し機に送ることによって、第1の溶融物ストリームAを調製した。40mm二軸押し出し機は、溶融混合部の271℃から押出成形機出口の177℃まで温度が下降する8つの温度領域を有していた。
【0097】
70.7重量%の鉱油(Citgoより入手可能なDuoprime Oil 300)、28.0重量%のポリプロピレン(F008FとしてSunoco Chemicalから入手可能)、及び1.3重量%の1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール核剤(Milliken Chemicalから入手可能なMillad(商標)3988)を含有する混合物を溶融混合して、25mm二軸押し出し機に送ることによって、第2の溶融物ストリームBを調製した。25mm二軸押し出し機は、溶融混合部の260℃から押出成形機出口の177℃まで温度が下降する6つの温度領域を有していた。各押出成形機のダイ出口の間に溶解ポンプを配置し、各押出成形機からフィードブロックまでの材料の流れをフィードブロックで調節し、溶融物ストリームA及びBの押出成形機出力速度を、それぞれ15.0kg/時間及び3.2kg/時間とした。
【0098】
フィードブロックの中で溶融物ストリームA及びBを組み合わせ、ダイに送り込んで、それぞれ領域A及びBを含むフィルムを形成した。フィードブロック及びダイの温度は177℃であった。2つの領域を有するフィルムを、領域Bが冷却ロールの表面と接触するように、60℃に保たれた冷却ロールの上にドロップキャストした。次に、キャストフィルムを抽出溶媒(DuPontから入手可能なVertrel(商標)HCFC−123)で洗浄して鉱油を除去し、フィルムを長さオリエンターで1.8x及びテンターで2.5xに適応させて、2つの領域を有する膜を形成し、これをサンプル番号1847−45と標識した。SEMで膜1847−45の断面を撮像し、図10に示す。
【0099】
実施例1及び3で記載された前方流バブルポイント圧力装置を使用して、4つの膜サンプルのそれぞれのバブルポイント圧力を測定した。膜サンプルは、2つの領域を有するポリプロピレン膜、対称的なポリプロピレン膜F100(製品番号70−0708−1241−1、3M Companyより入手可能)、対称的なポリプロピレン膜F101(製品番号70−0708−1241−0、3M Companyより入手可能)、及び厚さ方向孔傾斜モルホロジーを有するポリエーテルスルホン膜(TM600、Membranaより入手可能)であった。ラプラスの方程式を用いてこの膜のバブルポイント孔径を推定し、図11に示す。
【0100】
各膜のサンプルディスクを47mm膜ホルダーの中に設置した。糖蜜(Grandma’s Robust、B&G Foods,Inc.(Roseland,NJ)より入手可能)を1g/Lの濃度で脱イオン水の中に懸濁させて試験用汚染溶液を調製した。試験用汚染溶液を40mL/分の一定の送り速度で膜を通して濾過し、圧力トランスデューサを使用して膜の上流の圧力をモニタした。試験用汚染溶液中の物質による膜の孔の閉塞が原因で、圧力は試験の間中、単調に増加した。膜の上流の圧力が172.4kPa(25psig)の値に達した時点で試験を終了した。
【0101】
図11は、膜のそれぞれの2個の複製物を通る試験溶液の処理量、即ち累積流量を、上流圧力の関数として示している。本開示の2つの領域を有するポリプロピレン膜は、サンプルの最小バブルポイント孔径を有するが、2つの対称的なポリプロピレン膜のいずれかの処理量よりも実質的に多くかつ傾斜細孔ポリエーテルスルホンベンチマーク膜の処理量とほぼ等価である処理量を呈する。
【0102】
上述のように、孔径の異なる複数領域を有する多孔性膜の実施形態が開示される。本開示が、開示されたもの以外の実施形態で実施され得ることは当業者には理解されよう。開示された実施形態は、説明の目的のために示され、制限のために示されてはおらず、本開示は以下の「特許請求の範囲」によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリオレフィンポリマーを含む第1の領域、及び第1の平均孔径を有する該第1の領域内の第1の濃度を有する第1の核剤と、
結晶性ポリオレフィンポリマーを含む第2の領域、及び第2の平均孔径を有する該第2の領域内の第2の濃度を有する第2の核剤と、
を含む多孔性膜であって、
前記第1の領域及び第2の領域内の前記結晶性ポリマーが同じであり、
前記第1の平均孔径が前記第2の平均孔径と同じではなく、
前記第1の核剤及び前記第2の核剤が同じであるか又は異なり、
前記第1の濃度及び前記第2の濃度の剤が同じであるか又は異なり、
ただし、前記第1の核剤及び前記第1の濃度が、前記第2の核剤及び前記第2の濃度と同じではない、多孔性膜。
【請求項2】
前記第1の核剤及び第2の核剤が、独立して、溶解性核剤又は非溶解性核剤である、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記結晶性ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレン又はそのコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
前記第1の濃度が前記第2の濃度未満であり、前記第1の平均孔径が前記第2の平均孔径を超える、請求項1に記載の膜。
【請求項5】
前記第1の核剤が前記第2の核剤と同じである、請求項1に記載の膜。
【請求項6】
前記第1の核剤が前記第2の核剤と異なる、請求項1に記載の膜。
【請求項7】
前記第1の核剤の前記第1の濃度、及び前記第2の核剤の前記第2の濃度が、前記膜の総重量を基準として約0.1重量%〜約5.0重量%である、請求項1に記載の膜。
【請求項8】
結晶性ポリマーを含む第1の領域、及び第1の平均孔径を有する該第1の領域内の第1の濃度を有する第1の溶解性核剤と、
結晶性ポリマーを含む第2の領域、及び第2の平均孔径を有する該第2の領域内の第2の濃度を有する第2の溶解性核剤と、
を含む多孔性膜であって、
前記第1の領域及び第2の領域内の前記結晶性ポリマーが同じであり、
前記第1の平均孔径が前記第2の平均孔径と同じではなく、
前記第1の核剤及び前記第2の核剤が同じであるか又は異なり、
前記第1の濃度及び前記第2の濃度の剤が同じであるか又は異なり、
ただし、前記第1の核剤及び前記第1の濃度が、前記第2の核剤及び前記第2の濃度と同じではない、多孔性膜。
【請求項9】
前記結晶性ポリマーがポリオレフィンポリマーである、請求項8に記載の膜。
【請求項10】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレン又はそのコポリマーからなる群から選択される、請求項9に記載の膜。
【請求項11】
前記第1の濃度が前記第2の濃度未満であり、前記第1の平均孔径が前記第2の平均孔径を超える、請求項8に記載の膜。
【請求項12】
前記第1の核剤が前記第2の核剤と同じである、請求項8に記載の膜。
【請求項13】
前記第1の核剤が前記第2の核剤と異なる、請求項8に記載の膜。
【請求項14】
前記第1の核剤の前記第1の濃度、及び前記第2の核剤の前記第2の濃度が、前記膜の総重量を基準として約0.1重量%〜約5.0重量%である、請求項8に記載の膜。
【請求項15】
多孔性膜の製造方法であって、
第1の結晶性ポリマーと、第1の核剤と、希釈剤とを含み、前記第1の核剤の第1の濃度を有する、第1の組成物を、第1の比エネルギー入力で操作される第1の押出成形機の中で形成することと、
第2の結晶性ポリマーと希釈剤とを含む第2の組成物を、第2の比エネルギー入力で操作される第2の押出成形機の中で形成することと、
前記第1の組成物及び前記第2の組成物を共押し出しして、多層物品を形成することと、
前記結晶性ポリマーから希釈剤を相分離させて多孔性膜を形成するために、前記多層物品を冷却することと、
を含み、
前記第1の比エネルギー入力が前記第2の比エネルギー入力と同じではない、方法。
【請求項16】
前記スクリュー速度を変更すること、前記押出成形機の温度を変更すること、前記押出成形機の処理量を変更すること、スクリュー設計の能動性を変更すること、前記押出成形機の長さ/直径(L/D)比を変更すること、及び前記押出成形機の圧力を変更することである、前記第1及び第2の押出成形機の操作パラメータの1つ以上を変化させることによって、前記第1の比エネルギー入力及び前記第2の比エネルギー入力を異ならせる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び第2の押出成形機の前記スクリュー速度を変化させることによって、前記第1の比エネルギー入力及び前記第2の比エネルギー入力を異ならせる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の組成物が、前記第2の組成物内に第2の濃度で存在する第2の核剤を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の核剤の前記第1の濃度が、前記第2の核剤の前記第2の濃度と異なる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の組成物及び第2の組成物が、多層フィードブロックを通して押し出される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の組成物及び第2の組成物が、マルチマニホールドダイを通して押し出される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記多孔性膜から前記希釈剤を少なくとも部分的に除去することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記多孔性膜を延伸することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
多孔性膜の製造方法であって、
第1の結晶性ポリオレフィンポリマーと、第1の核剤と、希釈剤とを含み、前記第1の核剤の第1の濃度を有する、第1の組成物を、第1の押出成形機の中で形成することと、
第2の結晶性ポリオレフィンポリマーと、第2の核剤と、希釈剤とを含み、前記第2の核剤の第2の濃度を有する、第2の組成物を、第2の押出成形機の中で形成することと、
前記第1の組成物及び前記第2の組成物を共押し出しして、多層物品を形成することと、
前記結晶性ポリマーから希釈剤を相分離させて多孔性膜を形成するために、前記多層物品を冷却することと、
を含み、
前記第1の領域及び第2の領域内の前記結晶性ポリマーが同じであり、
前記第1の核剤及び前記第2の核剤が同じであるか又は異なり、
前記第1の濃度及び前記第2の濃度の剤が同じであるか又は異なり、
ただし、前記1の核剤及び前記第1の濃度が、前記第2の核剤及び前記第2の濃度と同じではない、方法。
【請求項25】
前記第1の押出成形機が比エネルギー入力で操作され、前記第2の押出成形機が第2の比エネルギー入力で操作され、該第1の比エネルギー入力が該第2の比エネルギー入力と同じではない、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記スクリュー速度を変更すること、前記押出成形機の温度を変更すること、前記押出成形機の処理量を変更すること、スクリュー設計の能動性を変更すること、前記押出成形機の長さ/直径(L/D)比を変更すること、及び前記押出成形機の圧力を変更することである、前記第1及び第2の押出成形機の操作パラメータの1つ以上を変化させることによって、前記第1の比エネルギー入力及び前記第2の比エネルギー入力を異ならせる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1及び第2の押出成形機の前記スクリュー速度を変化させることによって、前記第1の比エネルギー入力及び前記第2の比エネルギー入力を異ならせる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の組成物及び前記第2の組成物が、多層フィードブロックを通して押し出される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の組成物及び前記第2の組成物が、マルチマニホールドダイを通して押し出される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記多孔性膜から前記希釈剤を少なくとも部分的に除去することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記多孔性膜を延伸することを更に含む、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−513898(P2012−513898A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544553(P2011−544553)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/069565
【国際公開番号】WO2010/078234
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】