孔明け装置
【課題】パンチやダイの個数を従来に比して減少させ、部品点数を削減して装置構造を簡略化し得るように構成した孔明け装置を提供する。
【解決手段】複数のパンチ52a,52b,53,52cを、所定数のパンチ52a,52b,52cからなる第1グループと、該第1グループのいずれかのパンチを含み、かつ前記所定数より数が少ないパンチ52b,53を有する第2グループと、に区分し、カム板35の第1可動範囲又は第2可動範囲での往復移動により、前記第1グループのパンチ又は第2グループのパンチが昇降移動して穿孔状態を現出する。また、第1グループ及び第2グループに共有するパンチ52bに対応するカム84は、他のカム44,94と独立してなり、該カム84に隣接するカム44,94と、カム板35の移動方向に所定量オーバラップして配置される。
【解決手段】複数のパンチ52a,52b,53,52cを、所定数のパンチ52a,52b,52cからなる第1グループと、該第1グループのいずれかのパンチを含み、かつ前記所定数より数が少ないパンチ52b,53を有する第2グループと、に区分し、カム板35の第1可動範囲又は第2可動範囲での往復移動により、前記第1グループのパンチ又は第2グループのパンチが昇降移動して穿孔状態を現出する。また、第1グループ及び第2グループに共有するパンチ52bに対応するカム84は、他のカム44,94と独立してなり、該カム84に隣接するカム44,94と、カム板35の移動方向に所定量オーバラップして配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンチをその対応するダイに接離させて、シート状の被穿孔材に孔を明ける孔明け装置に係り、詳しくは、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機器等の画像形成装置の本体に、或いは印刷機に装備し得る孔明け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の孔明け装置として、2孔用、3孔用、4孔用といった専用タイプのものと、2孔用と3孔用とで、或いは2孔用と4孔用とで共用できるようにした切換えタイプのものとが知られている。該切換えタイプとして、例えばカムのストローク範囲を2段階に区分することにより、或るストローク範囲では2孔を、別のストローク範囲では3孔を穿孔できるようにしたスライドカム方式が存在している(例えば、特開2001−198889号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−198889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなスライドカム方式の孔明け装置では、パンチの個数やダイの個数はそれぞれその合計数が必要になるため、例えば2孔と3孔の切換えタイプにあっては合計5個ずつのパンチ及びダイが必要になり、部品点数が多くなっている。従って、異なる穿孔数の機能を併せ持つものでありながら、パンチやダイの個数を可及的に削減して、部品点数が少なく装置構造が簡素な孔明け装置の実現が切望される。
【0005】
そこで、本発明は、パンチやダイの個数を従来に比して減少させ、部品点数を削減して装置構造を簡略化し得るように構成し、もって上述課題を解決した孔明け装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、シート状の被穿孔材に孔を明ける複数のパンチ(52a,52b,53,52c又は89a,89b,89c,89d)及びダイ(54又は29)と、該パンチの移動方向と直交する方向に往復移動可能なカム板(35又は75)と、該カム板と前記複数のパンチとの間にて、前記カム板の往復移動動作を前記パンチの非穿孔位置、穿孔位置への昇降移動動作に変換する複数のカム(44,84,94又は11,12,13,14)及び該カムに係合するフォロワー(62又は25)と、を備えてなる孔明け装置(30又は60)において、
前記複数のパンチは、所定数のパンチ(52a,52b,52c又は89a,89b,89c,89d)を有する第1グループと、該第1グループのいずれかの前記パンチ(52b又は89b,89c)を含み、かつ前記第1のグループの前記所定数より数が少ないパンチ(52b,53又は89b,89c)を有する第2グループと、に区分され、
前記第1グループに対応する前記カム及び前記フォロワーは、前記カム板の第1可動範囲での往復移動により前記第1グループの前記パンチを昇降移動させることによって前記所定数の穿孔状態を現出するように構成され、
前記第2グループに対応する前記カム及び前記フォロワーは、前記カム板の第2可動範囲での往復移動により前記第2グループの前記パンチを昇降移動させることによって、前記所定数より少数の穿孔状態を現出するように構成され、
前記カムは、それぞれ往復移動方向に延びる前記カム板(35又は75)に貫通して形成され、前記パンチを前記非穿孔位置から前記穿孔位置に移動しそして再び前記非穿孔位置に移動する、第1のグループ及び第2のグループによるそれぞれの穿孔数の合計数のV字状部(45,85,86,95,96又は15,16,17,18,19,22)と、前記V字状部に連通し各前記パンチを非穿孔位置に保持する直線部(46a、46b、87a、87b、87c、97a、97b、97c又は11a,11b,12a,12b,12c,13a,13b,13c,14a,14b)と、を有し、
前記第1グループ又は第2グループに専用する前記パンチに対応する前記カムは、前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲の前記穿孔状態を現出する側において前記V字状部に前記カムフォロワーを係合し、前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲の前記穿孔状態を現出しない側においてその全域に亘って前記直線部に前記カムフォロワーを係合し続け、
前記第1グループ及び前記第2グループに共用する前記パンチ(52b又は89b,89c)に対応する前記カムは、該パンチ(52b又は89b,89c)専用として他のカム(44,94又は11,14)と分離した独立したカムからなり、前記第1可動範囲において前記カムフォロワーと係合する第1の前記V字状部(86又は17,19)と、前記第2可動範囲において前記カムフォロワーに係合する第2の前記V字状部(85又は16,18)と、前記第1のV字状部(86又は17,19)及び前記第2のV字状部(85又は16,18)との間を連通して前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲において前記カムフォロワーと係合する中間の前記直線部(87b又は12b,13b)と、前記第1のV字状部(86又は17,19)から前記中間の直線部(87b又は12b,13b)と反対側に延びて前記第1可動範囲において前記カムフォロワーに係合する一端側の前記直線部(87c又は12c,13c)と、前記第2のV字状部(85又は16,18)から前記中間の直線部(87b又は12b,13b)と反対側に延びて前記第2可動範囲において前記カムフォロワーに係合する他端側の前記直線部(87a又は12a,13a)と、を有し、前記一端側の直線部(87c又は12c,13c)及び前記他端側の直線部(87a又は12a,13a)の少なくとも一方が、該カムに隣接するカム(44,94又は11,14)の前記直線部(46b,97a又は11b,14a)に対して前記パンチの移動方向に異なる位置にあってかつ前記カム板の移動方向に所定量オーバラップして配置されてなる、
ことを特徴とする孔明け装置にある。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記第1グループの前記パンチは、所定ピッチで配列した3個(52a,52b,52c)からなり、前記第1グループの前記第2グループにて共用し得る共用パンチ(52b)が、前記3個のパンチの中央に位置するパンチであり、かつ
前記第2グループの前記パンチは、前記共用パンチ(52b)と、前記3個のパンチの内の一方の端部側に位置するパンチと前記共用パンチとの間に配置した2孔用専用パンチ(53)との2個からなり、
前記共用パンチ専用の前記カム(84)は、前記一端側の直線部(87c)が前記2孔用専用パンチ用の前記カムの直線部(97a)に対してオーバラップして配置されてなる、
請求項1に記載の孔明け装置にある。
【0008】
請求項3に係る本発明は、前記第1グループの前記パンチは、所定ピッチで配列した4個(89a,89b,89c,89d)からなり、前記第2グループ用パンチは、前記第1グループの両端部のパンチの間の2個の共用パンチ(89b,89c)からなり、
前記2個の共用パンチ用の各前記カム(12,13)は、前記一端側及び他端側の直線部(12c,13c,12a,13a)がそれぞれ隣接するカムの直線部に対してオーバラップして配置されてなる、
請求項1に記載の孔明け装置にある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る本発明によると、第1グループに対応するカム及びフォロワーが、カム板の第1可動範囲での往復移動により第1グループのパンチを昇降移動させて所定数の穿孔状態を現出すると共に、カム板の第2可動範囲での往復移動により第2グループのパンチを昇降移動させて、所定数より少数の穿孔状態を現出し、第2グループのパンチが、第1グループのいずれかのパンチを含みかつ該第1グループのパンチ数より数が少ないので、カム板の移動に応じて第1及び第2グループの各パンチを選択的に作動させて、異なる個数の穿孔工程を実施する2台分の機能を備えながらも、異なる穿孔工程で使用されるパンチ合計数を、第1及び第2グループのパンチ合計数よりも少なくすることができる。これにより、パンチ、及びその対応するダイの各個数を従来に比して減少させることができ、部品点数を削減して装置構造を簡略化し、コストダウンも期待できると共に、複写機等の画像形成装置に搭載した際の多機能化に寄与することができる。
【0010】
また、前記第1グループ及び前記第2グループに共用するパンチに対応するカムは、他のカムと分離した独立したカムからなり、かつ、その一端側の直線部及び他端側の直線部の少なくとも一方が、該カムに隣接するカムの直線部に対してカム板の移動方向に所定量オーバラップしているので、該オーバラップ部分においてカム板は、前記移動方向と直交する方向に、隣接するカムを連結する連結部分を有する。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、第1グループの中央に位置する共用パンチをセンターに位置させた3孔穿孔状態と、該共用パンチと2孔用専用パンチとの中間をセンターとする2孔穿孔状態とが得られるが、互いのセンターをそれぞれの工程に対応させてずらすことにより、3孔用パンチの中央の共用パンチを2孔用として兼用した合計4個のパンチ(及びダイ)のみにて、被穿孔材に対する適正な2孔と3孔の穿孔工程を自在に実施することができる。これにより、被穿孔材に対して或るピッチで3孔を穿孔する工程と、これとは異なるピッチで2孔穿孔する工程とを、容易に切り換えることができる。
【0012】
請求項3に係る本発明によると、第1グループのパンチを4個とし、第2グループ用パンチを、第1グループのパンチのうちの中央の2個としたので、第1グループのパンチの中央部分をセンターとする4孔穿孔状態と、第1グループにおける中央の2個のパンチの中間をセンターとする2孔穿孔状態とを、互いのセンターを各工程に対応させてずらすことなく、被穿孔材に対する4孔と2孔の適正な穿孔工程を、自在に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1の実施形態における孔明け装置の一部破断した正面図。
【図2】その平面図。
【図3】図1中のA−A矢視断面図。
【図4】図1中のB−B矢視断面図。
【図5】本実施形態の孔明け装置の動作を説明するための図であり、(a)は第1グループのパンチで穿孔する3穿孔状態を、(b)は初期状態を、(c)は第2グループのパンチで穿孔する2穿孔状態をそれぞれ示している。
【図6】本発明に係る第2の実施形態における孔明け装置の一部破断した正面図。
【図7】その平面図。
【図8】その底面図。
【図9】図6中のE−E矢視側面図。
【図10】図6中のF−F矢視側面断面図。
【図11】図6における移動範囲検知センサ及びラック等の部分を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に沿って、本発明に係る孔明け装置の第1の実施の形態について説明する。図1は本実施の形態における孔明け装置の一部破断した正面図、図2は図1の平面図、図3は図1中のA−A矢視断面図、図4は図1中のB−B矢視断面図、図5は本実施の形態における孔明け装置の動作説明用の図である。
【0015】
<第1の実施の形態>
本実施形態における孔明け装置30は、図1及び図2に示すように、角筒状の本体フレーム31を有しており、該本体フレーム31上には、ブラケット32を介してモータ33が配設されている。該モータ33は、長尺のカム板35に減速歯車機構34を介して連動し、該カム板35を図1の左右方向に移動させる駆動源として機能する。また、孔明け装置30は、モータ33、後述するパンチ検知センサ92,93やカム板検知センサ55,56等からの検知信号を入力し、モータ33の回転量及び回転方向等を算出して、その対応する駆動信号を出力してモータ33を制御する制御手段20を有している。
【0016】
前記減速歯車機構34は、図1に示すように、ブラケット32を貫通するモータ33の出力軸36に固定された駆動歯車37と、ブラケット32に回転自在に支持された互いに一体の大径の中間歯車38及び小径の中間歯車39と、ブラケット32に回転自在に支持された支軸21に固定されかつ前記中間歯車39よりも大径の従動歯車40と、本体フレーム31の内方にて支軸21先端に固定されたピニオン41と、カム板35にその延設方向に沿うように設けられてピニオン41と噛合するラック42とを有している。なお、図1において、ラック42の紙面手前側に位置するパンチ53,52cは、便宜上、中間より上の部分を図示省略している。
【0017】
前記カム板35は、ピニオン41の回転をラック42を介して受けつつ、本体フレーム31における図1の紙面奥側の内面に沿って同図の左右方向に往復移動し得るように配設されている。また、カム板35の上縁における左端部近傍は、該上縁から下縁に向けて若干量切り欠かれており、上縁における左端部には凸部43が形成されている。該凸部43の存在により、本体フレーム31に対するカム板35の接触面積が減少されて摺動抵抗が低減し、摺動動作が滑らかにされている。
【0018】
また、カム板35上縁の左端部近傍の前記切り欠き部には、所定間隔をあけて3つの切欠66,67,68が形成されており、前記切り欠き部の上方における本体フレーム31内面には、弾性を有する位置決め板65が下方に付勢された状態で設けられている。中央の切欠67は、位置決め板65との係合によりカム板35を中央の初期位置(図5(b)参照)に係止するためのものであり、右側の切欠66は、位置決め板65との係合によりカム板35を左端位置に係止するためのものであり、左側の切欠68は、位置決め板65との係合によりカム板35を右端位置に係止するためのものである。これら位置決め板65及び切欠66,67,68により、カム板位置決め機構99が構成されている。また、減速歯車機構34等は、モータ33の回転力を直線往復移動力に変換してカム板35に伝達し、後述のパンチ52a,52b,53,52cを昇降移動させる駆動手段91を構成している。
【0019】
前記カム板35には、3つのカム44,84,94が図の左側から順に形成されており、該カム44及び94は、カム板35の長手方向と直交する方向において上下方向中央部よりも下側に相互に同じレベルになるように形成されている。また、カム84は、カム板35の長手方向と直交する方向において上下方向中央部よりも上側に位置すると共に、後述する第3直線部87cをカム94の第1直線部97aにオーバラップさせるように形成されている。
【0020】
前記カム44,84,94はそれぞれ、カム板35の長手方向に沿うように該カム板35の表裏を貫通して形成されている。カム44は、カム板35の長手方向と直交する方向における上下方向中央部にて該長手方向に所定幅で延びるように形成された第1直線部46aと、該第1直線部46aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、最も下降した部分(谷底)から所定角度で徐々に上昇するように形成されたV字状部45と、該V字状部45の右端部から前記第1直線部46aと同じレベルで前記長手方向に所定幅で延びるように形成された第2直線部46bと、を有している。
【0021】
カム84は、カム板35の長手方向と直交する方向における上下方向上側にて該長手方向に所定幅で延びるように形成された第1直線部87aと、該第1直線部87aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇するように形成されたV字状部85と、該V字状部85の右端部から前記第1直線部87aと同じレベルで前記長手方向に所定幅で延びるように形成された第2直線部87bと、該第2直線部87bの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇するように形成されたV字状部86と、該V字状部86の右端部から前記直線部87a,87bと同じレベルで前記長手方向に所定幅で延びるように形成された第3直線部87cと、を有している。
【0022】
カム94は、カム板35の長手方向と直交する方向における上下方向中央部にて該長手方向に所定幅で延びるように形成された第1直線部97aと、該第1直線部97aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇するように形成されたV字状部95と、該V字状部95の右端部から前記第1直線部97aと同じレベルで前記長手方向に所定幅で延びるように形成された第2直線部97bと、該第2直線部97bの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇するように形成されたV字状部96と、該V字状部96の右端部から前記直線部97a,97bと同じレベルで前記長手方向に所定幅で延びるように形成された第3直線部97cと、を有している。
【0023】
孔明け装置30は、本体フレーム31(カム板35)の長手方向に所定の距離D1をあけて該長手方向と直交する方向に昇降移動自在に支持された3孔用のパンチ52a,52b,52cと、該パンチ52bと52cとの間にて該パンチ52bからパンチ52c側に前記距離D1よりも短い距離D2をあけて前記長手方向と直交する方向に昇降移動自在に支持された2孔用のパンチ(2孔用専用パンチ)53と、を有している。上記パンチ52bは、後述するように2孔用パンチとして兼用(共用)されるものである。
【0024】
これらパンチ52a,52b,53,52cと前記カム44,84,94とは、以下に示すような所定の位置関係を有するように構成されている。なお、カム44,84,94にはそれぞれ、パンチ52a,52b,53,52cにそれぞれ支持された後述のピン62が摺動自在に挿通している。
【0025】
即ち、図1及び図5(b)に示すように、カム板35が本体フレーム31の中央部に位置する初期状態にあっては、パンチ52aは第1直線部46aにおけるV字状部45寄りに位置し、パンチ52bは第2直線部87bの中央部に位置し、パンチ53は第2直線部97bにおけるV字状部95寄りに位置し、パンチ52cは第2直線部97bにおけるV字状部96寄りに位置する。
【0026】
また、図5(a)に示す3孔穿孔状態にあっては、3孔用パンチ52a,52b,52cのピン62はそれぞれ、カム44のV字状部45、カム84のV字状部86、カム94のV字状部96に位置し、かつ2孔用専用のパンチ53のピン62は、カム94の第2直線部97bの中央部分に位置する。
【0027】
更に、図5(c)に示す2孔穿孔状態にあっては、2孔用のパンチ52b,53のピン62はそれぞれ、カム84のV字状部85、カム94のV字状部95に位置し、かつ3孔用専用のパンチ52a,52cのピン62はそれぞれ、カム44の第1直線部46aにおける左端側、カム94の第2直線部97bにおける中央部分に位置する。
【0028】
前記初期状態、3孔穿孔状態、及び2孔穿孔状態を実現するために、前記カム44,84,94は、相互に以下のような位置関係を有している。
【0029】
即ち、図1,図2及び図5に示すように、3孔用のパンチ52a,52b,52cのピッチ(D1)と、これらに対応するV字状部45,86,96の各谷底のピッチとが互いに等しくなるように設定されている。また、カム44の第2直線部46b、カム84の第1直線部87a、第2直線部87b及び第3直線部87c、並びにカム94の第1直線部97a及び第3直線部97cが互いに等しい長さに設定されると共に、第1直線部97aと第3直線部87cとがオーバラップするように設定されている。
【0030】
更に、カム94の第2直線部97bは、前記初期状態にあっては隣り合うパンチ53,52cの双方を最上昇位置(非穿孔位置)に保持し、前記3孔穿孔状態にあってはパンチ52cをV字状部96に送り出すと共にパンチ53を最上昇位置に保持し、前記2孔穿孔状態にあってはパンチ53をV字状部95に送り出すと共にパンチ52cを最上昇位置に保持し得るように、これらパンチ53と52cとの間の距離よりも若干長い長さを有するように設定されている。
【0031】
また、カム44の第1直線部46aは、図5(b)の初期状態から図5(c)の2孔穿孔状態を更に越えるまでパンチ52aを最上昇位置に保持し得るような、第2直線部97bと等しい長さに設定されている。
【0032】
一方、図1、図3及び図4に示すように、本体フレーム31の下面31aには、スペーサ50,50を介在して脚51が取り付けられている。該スペーサ50は、本体フレーム31の下面31aと脚51の上面51aとの間にシート(被穿孔材)Pの通過を許容する隙間Sを形成するために設けられている。そして図3において、脚51には、隙間SにシートPを案内する傾斜面51bが形成されている。
【0033】
図1に示すように、本体フレーム31には、該フレーム31の上面と下面とを貫通するように、上下で8個のパンチ支持孔58…が形成されている。これらパンチ支持孔58…にはそれぞれパンチ52a,52b,53,52cが摺動自在に嵌挿されている。脚51の上面51aには、本体フレーム31の下面の各パンチ支持孔58…にそれぞれ対向するように、4個のダイ54…が形成されている。各ダイ54の内径は、それぞれに係合するパンチ52a,52b,53,52cの各外径と略々同じ寸法に設定されている。
【0034】
そして、パンチ52a,52b,52cは、等しいピッチ(D1)で配列されて、シートPに3つの孔を明ける3孔用の第1グループのパンチを構成している。また、パンチ53は、3孔用としても使用される上記パンチ(共用パンチ)52bとともに、該パンチ52bと協働してシートPに2つの孔を明ける2孔用の第2グループのパンチを構成している。
【0035】
そして、図1及び図4に示すように、例えばパンチ52bには、その移動方向(図の上下方向)cと直交する方向に貫通孔63が貫通穿設されており、該貫通孔63には、該孔63及び第2直線状部87bを貫通して本体フレーム31の案内長孔48に向かって突出するように上述のピン(フォロワー)62が支持されている。該案内長孔48は、その長手方向が上下方向を向くように、本体フレーム31の側壁を貫通して形成されている。また、ピン62の両端には、該ピン62がパンチ52bの貫通孔63から抜け落ちないように、着脱可能な止め輪64,64が嵌着されている。
【0036】
更に、パンチ52bには、対応するダイ54側に付勢するばね47が設けられている。該ばね47は、本体フレーム31の上縁部と、パンチ52bに固着された止め輪98との間に介在されている。パンチ52bは、該ばね47によって下方に付勢されているが、ピン62がカム84の第2直線部87bを貫通してこれに受け止められているため、本体フレーム31から抜け落ちることはない。
【0037】
なお、図4中の実線はパンチ52bの最上昇位置の状態、二点鎖線は該パンチ52bの最下降位置(穿孔位置)の状態をそれぞれ示している。ここではパンチ52bの支持構造を中心に述べたが、他のパンチ52a,53,52cの支持構造もこれと同じであるので、その説明は省略する。
【0038】
また、図1に示すように、本体フレーム31内方におけるカム板35の移動範囲の両端には、カム板35の右端到達及び左端到達をそれぞれに検知するカム板検知センサ55,56が設けられている。更に、本体フレーム31上面には、3孔用パンチ52a,52b,52cの内のパンチ52bの上端を検知するパンチ検知センサ92と、2孔用パンチ52b,53の内のパンチ53の上端を検知するパンチ検知センサ93とが設けられている。
【0039】
以上の構成を有する本実施形態における孔明け装置30は、図5(b)の初期状態をホームポジションとするとき、該ホームポジションからカム板35を、図5(a)に示すように左方向に移動させた場合に到達する範囲が第1可動範囲R3であり、上記ホームポジションからカム板35を、図5(c)に示すように右方向に移動させた場合に到達する範囲が第2可動範囲R2である。
【0040】
上記第1可動範囲R3内にてカム板35を往復移動させることに基づき、3孔用パンチ52a,52b,52cを第1グループとして用いた3孔穿孔状態が得られ、また上記第2可動範囲R2内にてカム板35を往復移動させることに基づき、2孔用パンチ52b,53を第2グループとして用いた2孔穿孔状態が得られる。
【0041】
例えば、上記ホームポジションをN2とするとき、該ホームポジションN2を挟む第1可動範囲R3及び第2可動範囲R2にはそれぞれ、ホームポジションN2と反対側に第1ニュートラル位置N1及び第2ニュートラル位置N3がそれぞれ位置していることになる。この状態はつまり、
N1←→3孔穿孔状態(R3)←N2→2孔穿孔状態(R2)←→N3
として表すことができる。
【0042】
(3つの孔を明ける際の動作説明)
本実施形態における孔明け装置30は、モータ33を停止した初期状態において、そのカム板35が、図1(つまり図5(b))に示すように、カム板位置決め機構99の位置決め板65が切欠67に係合し、本体フレーム31内の中央に保持されている。このとき、パンチ52aのピン62はカム44の第1直線状部46aに、パンチ52bのピン62はカム84の第2直線状部87bに、パンチ53及び52cの各ピン62はカム94の第2直線状部97bにそれぞれ位置し、全てのパンチが最上昇位置に保持されている。
【0043】
この初期状態において、本体フレーム31と脚51との間の隙間Sに、不図示のシート搬送手段を介してシートPが送り込まれ、所定の位置に位置決め停止される。この際、不図示のセンサが孔明け装置30にシートPが送り込まれてきたことを検知するため、該検知に基づき、制御手段20が孔明け装置30を作動状態にする。この時点で、穿孔作業を3孔として行う旨の設定が、ユーザによって予めなされている。
【0044】
そして、モータ33が、カム板35を、図5(b)の初期状態から図5(a)の3孔穿孔状態に移行させるように回転駆動する。これにより、カム板35が左方向に移動を開始して、パンチ52aのピン62が第1直線状部46aからV字状部45の谷底に向けて案内され、パンチ52bのピン62が第2直線状部87bからV字状部86の谷底に向けて案内され、パンチ52cのピン62が第2直線状部97bからV字状部96の谷底に向けて案内される。
【0045】
これにより、図5(a)に示すように、3孔用パンチ52a,52b,52cが最下降位置にそれぞれ下降し、シートPに孔を明けてダイ54に係合する。同時に、パンチ検知センサ92が、3孔用パンチの1つであるパンチ52bが最下降位置に位置したことを検知すると、制御手段20が、第1グループのパンチ52a,52b,52cによりシートPに3つの孔が明けられた旨を認識する。これが即ち、ホームポジションN2から移動して第1可動範囲R3の中間位置にある状態である。
【0046】
そして、制御手段20からの信号に応答して、モータ33が回転駆動してカム板35をなおも左方向に移動させるので、カム94の第2直線状部97bにてパンチ53を最上昇位置に保持した状態のまま、カム44,84,94が、それぞれ第2直線状部46b、第3直線状部87c、第3直線状部97cに各ピン62を導き入れて各パンチ52a,52b,52cを上昇させ、最上昇位置に保持する。この際、カム板35が最も左端に移動した状態となり、保持機構99の位置決め板65が切欠66に係合することにより、該カム板35はその位置に保持される。これが即ち、第1可動範囲R3の最終端にある状態である。
【0047】
この時点で、3つの孔を明けられたシートPが隙間S(図3参照)から抜き取られ、これに代えて、新たなシートPが隙間Sに送り込まれる。この状態において、モータ33が所定量逆回転すると、左端に位置しているカム板35が右方向に移動(つまり第1可動範囲R3の最終端から中間位置に移動)することで、3孔用パンチ52a,52b,52cにより新たなシートPに3つの孔が明けられる。該カム板35が更に右方向に移動(つまり第1可動範囲R3の中間位置からホームポジションN2に移動)すると、パンチ52a,52b,52cの各ピン62が第1直線状部46a、第2直線状部87b、第2直線状部97bにそれぞれ導かれ、切欠67に位置決め板65が係合することにより、該カム板35は図5(b)の初期状態に復帰する。
【0048】
このように、カム板35を第1可動範囲R3において往復移動させることにより、パンチ52a,52b,52cによる3孔穿孔作業を繰り返し実行することができる。
【0049】
(2つの孔を明ける際の動作説明)
まず、モータ33を停止した図5(b)の初期状態において、本体フレーム31と脚51との間の隙間SにシートPが送り込まれて所定の位置で停止すると、不図示のセンサの検知に基づき、制御手段20が孔明け装置30を作動状態にする。この時点で、穿孔作業を2孔として行う旨の設定が、ユーザによって予めなされている。
【0050】
そして、モータ33が、カム板35を、図5(b)の初期状態から図5(c)の2孔穿孔状態に移行させるように回転駆動する。これにより、カム板35が右方向に移動を開始し、2孔時には使用されないパンチ52a及び52cの各ピン62は、初期状態に係合していた第1直線状部46a及び第2直線状部97bにそのまま保持されて、最上昇位置に保持される。これに対し、3孔時と同様に使用されるパンチ52bは、そのピン62が第2直線状部87bからV字状部85の谷底に向けて案内される。また、パンチ53は、そのピン62が第2直線状部97bからV字状部95の谷底に向けて案内される。
【0051】
これにより、図5(c)に示すように、2孔用のパンチ52b,53がそれぞれ最下降位置に下降し、シートPに孔を明けてダイ54に係合する。同時に、パンチ検知センサ93が、2孔用パンチの1つであるパンチ53が最下降位置に位置したことを検知すると、制御手段20が、第2グループのパンチ52b,53によりシートPに2つの孔が明けられた旨を認識する。これが即ち、ホームポジションN2から移動して第2可動範囲R2の中間位置にある状態である。
【0052】
そして、制御手段20からの信号に応答して、モータ33が回転駆動してカム板35をなおも右方向に移動させるので、カム44,94の第1直線状部46a及び第2直線状部97bに各ピン62をそれぞれ保持してパンチ52a,52cを最上昇位置に保持した状態のまま、カム84,94が、それぞれ第1直線状部87a、第1直線状部97aに各ピン62を導き入れて各パンチ52b,53を上昇させ、最上昇位置に保持する。この際、カム板35が最も右端に移動した状態となり、保持機構99の位置決め板65が切欠68に係合することにより、該カム板35はその位置に保持される。これが即ち、第2可動範囲R2の最終端にある状態である。
【0053】
この時点で、2つの孔を明けられたシートPが隙間S(図3参照)から抜き取られ、これに代えて、新たなシートPが隙間Sに送り込まれる。この状態において、モータ33が所定量逆回転すると、右端に位置しているカム板35が左方向に移動(つまり第2可動範囲R2の最終端から中間位置に移動)することで、2孔用のパンチ52b,53により新たなシートPに2つの孔が明けられる。該カム板35が更に左方向に移動(つまり第2可動範囲R2の中間位置からホームポジションN2に移動)すると、パンチ52b,53の各ピン62が第2直線状部87b、第2直線状部97bにそれぞれ導かれ、切欠67に位置決め板65が係合することにより、該カム板35は図5(b)の初期状態に復帰する。
【0054】
このように、カム板35を第2可動範囲R2において往復移動させることにより、パンチ52b,53による2孔穿孔作業を繰り返し実行することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態における孔明け装置30によると、カム板35が中間位置より左方向に移動する動作でシートPに3つの孔を明けることができ、中間位置より右方向に移動する動作でシートPに2つの孔を明けることができ、1台の装置にて、シートPの異なる位置に異なる数の孔を明けることができる。
【0056】
この際、3孔を明ける場合には、図5(a)に示すように、パンチ52bに対応するC1の位置がセンターとなり、2孔を明ける場合には、図5(c)に示すように、パンチ52b,53間のC2の位置がセンターとなるので、例えば同じサイズのシートPに2孔、3孔を明ける場合には、次のような手法を採用することが望ましい。
【0057】
例えば、不図示の位置変更手段により、本孔明け装置30全体と、該孔明け装置30を搭載した複写機等の搭載部との相対位置をずらし、センターC2をセンターC1に一致させるように位置変更する。または、本孔明け装置30を搭載した複写機等におけるシート搬送手段(図示せず)による該孔明け装置30に対するシートの搬送位置を、2孔穿孔時と3孔穿孔時とで変更する。これらの手法を適宜採用することにより、2孔と3孔穿孔時のセンターずれを解消しつつ、穿孔工程を円滑に進めることができる。
【0058】
また、パンチ52a,52b,53,52cには、それぞれ該パンチ52a,52b,53,52cをその対応するダイ54に接近させる方向に付勢するばね47が設けられているが、このばね47は、各パンチがシートPに孔を明けるときの負荷を軽減すると共に、カム板35が各パンチをその対応するダイ54から離間させるときの負荷となる。これにより、カム板35の移動時のモータ33への負荷をほぼ均一にし、シートPに連続して穿孔する工程を円滑に行い得るようにしている。
【0059】
また、本実施形態の孔明け装置30では、パンチ52a,52b,53,52c側にピン62を設け、カム板35側にカム44,84,94を設けたが、この関係を逆にして、パンチ52a,52b,53,52c側にカムを設け、カム板35側にピンを設ける構成とすることも可能である。
【0060】
以上説明した本実施形態における孔明け装置30によると、第1グループに対応するカム44,84,94及びピン(フォロワー)62が、カム板35の第1可動範囲R3での往復移動により第1グループのパンチ52a,52b,52cを昇降移動させて3孔穿孔状態を現出すると共に、カム板35の第2可動範囲R2での往復移動により第2グループのパンチ52b,53を昇降移動させて、第1グループのパンチ数より少数の2穿孔状態を現出することができる。また、第2グループのパンチが、第1グループのパンチ53を含みかつ該第1グループのパンチ数より少ないので、カム板35の移動に応じて第1及び第2グループの各パンチを選択的に作動させて、異なる個数の穿孔工程を実施する2台分の機能を備えながらも、異なる穿孔工程で使用されるパンチ合計数(4個)を、第1及び第2グループのパンチ合計数(5個)よりも少なくすることができる。これにより、パンチ、及びその対応するダイの各個数を従来に比して減少させることができ、部品点数を削減して装置構造を簡略化し、コストダウンも期待できると共に、複写機等の画像形成装置に搭載した際の多機能化に寄与することができる。
【0061】
また、ホームポジションN2から左方向に又は右方向にカム板35を移動させるだけで、第1可動範囲R3又は第2可動範囲R2に容易にかつ確実に到達させることができ、従って、制御を簡略化することができる。更に、カム板35を第1及び第2可動範囲R3,R2のそれぞれにて往復移動させるだけで、パンチ52a,52b,53,52cを第1グループとして又は第2グループとして確実に昇降移動させ得る構造が実現している。
【0062】
また、第1グループの中央に位置する共用パンチ52bをセンターに位置させた3孔穿孔状態と、該共用パンチ52bと2孔用専用パンチ53との中間をセンターとする2孔穿孔状態とが得られるが、互いのセンターをそれぞれの工程に対応させてずらすことにより、3孔用パンチの中央の共用パンチ52bを2孔用として兼用した合計4個のパンチ(及びダイ)のみにて、シート(被穿孔材)Pに対する適正な2孔と3孔の穿孔工程を自在に実施することができる。これにより、シートPに対して或るピッチで3孔を穿孔する工程と、これとは異なるピッチで2孔穿孔する工程とを、容易に切り換えることができる。
【0063】
更に、共用パンチ52bに対応するカム94が、該共用パンチ52bを、カム板35の左方向への移動時に移動させ得る第1V字状部86と、左方向への移動時に移動させ得る第2V字状部85とを直線状部87bを介して連続するように備えるので、簡単な構成からなるものでありながら、共用パンチ52bを第1グループとして、また第2グループとして自在に移動させ得る装置構造が実現している。
【0064】
<第2の実施の形態>
次に、図6乃至図11に沿って、本発明に係る孔明け装置の第2の実施形態について説明する。図6は本実施の形態における孔明け装置の一部破断した正面図、図7は図6の平面図、図8は図6の底面図、図9は図6中のE−E矢視側面図、図10は図6中のF−F矢視側面断面図、図11は第6図における移動範囲検知センサ及びラック等の部分を拡大して示す正面図である。
【0065】
本実施形態における孔明け装置60では、図6乃至図11に示すように、本体フレーム70上に、ブラケット71を介してモータ73が配設されている。該モータ73は、長尺のカム板75に減速歯車機構74を介して連動し、該カム板75を左右方向に移動させる駆動源として機能する。孔明け装置60は、モータ73、後述する移動範囲検知センサ76,77,78からの検知信号を入力することに基づいてモータ73を制御する制御手段80を有している。なお、図6における符号2は、モータ73の回転数等を検出するためのエンコーダを示す。
【0066】
減速歯車機構74は、図6に示すように、ブラケット71を貫通するモータ73の出力軸に固定された駆動歯車79と、ブラケット71に回転自在に支持された一体状の大径歯車81及び小径歯車82と、カム板75の同図左端部に該カム板75の長手方向に延設された形で連結されて小径歯車82と噛合するラック83とを有している。
【0067】
カム板75は、小径歯車82の回転をラック83を介して受けつつ、本体フレーム70における図6の紙面奥側の内面に沿って同図の左右方向に往復移動し得るように配設されている。また減速歯車機構74等は、モータ73の回転力を直線往復移動力に変換してカム板75に伝達し、後述のパンチ89a,89b,89c,89dを昇降移動させる駆動手段90を構成する。
【0068】
カム板75には、4つのカム11,12,13,14が図の左側から順に形成されており、カム12,14は、カム板75の長手方向と直交する方向において上下方向中央部よりも下側に相互に同じレベルになるように形成されている。またカム11,13は、カム板75の長手方向と直交する方向において上下方向中央部よりも上側に位置している。
【0069】
カム11〜14はそれぞれ、カム板75の長手方向に沿うように該カム板75の表裏を貫通している。カム11は、カム板75の長手方向と直交する方向における上下方向中央部にて該長手方向に所定幅で延びる第1直線部11aと、該第1直線部11aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、最も下降した部分(谷底)から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部15と、該V字状部15の右端部から第1直線部11aと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第2直線部11bと、を有する。
【0070】
カム12は、カム板75の長手方向と直交する方向における上下方向下側にて該長手方向に所定幅で延びるように形成され、かつ第2直線部11bに所定量オーバラップした第1直線部12aと、該第1直線部12aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部16と、該V字状部16の右端部から第1直線部12aと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第2直線部12bと、該第2直線部12bの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部17と、該V字状部17の右端部から直線部12a,12bと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第3直線部12cと、を有する。
【0071】
カム13は、カム板75の長手方向と直交する方向における上下方向上側にて該長手方向に所定幅で延びるように形成され、かつ第3直線部12cに所定量オーバラップした第1直線部13aと、該第1直線部13aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部18と、該V字状部18の右端部から第1直線部13aと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第2直線部13bと、該第2直線部13bの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部19と、該V字状部19の右端部から直線部13a,13bと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第3直線部13cと、を有する。
【0072】
カム14は、カム板75の長手方向と直交する方向における上下方向下側にて該長手方向に所定幅で延びるように形成され、かつ第3直線部13cに所定量オーバラップした第1直線部14aと、該第1直線部14aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部22と、該V字状部22の右端部から第1直線部14aと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第2直線部14bと、を有する。
【0073】
更に孔明け装置60は、本体フレーム70の長手方向に所定のピッチで(所定の距離D3をあけて)該長手方向と直交する方向に昇降移動自在に支持された形で順次配置されたパンチ89a〜89dを有している。なお、図示はしないが、本実施形態においても、先の第1の実施形態におけるカム板位置決め機構99と同様に、カム板75を所定位置にて係止し得るカム板位置決め機構が設けられている。
【0074】
図6及び図11に示すように、前記移動範囲検知センサ76は、投光素子からなるもので、これに対応する受光素子は図示省略している。移動範囲検知センサ76は、カム板75の本体フレーム70に対する同図左右方向の移動に伴って遮光部材5,6,7にて順次遮光され、その際の検知結果を制御手段80に送信する。
【0075】
該制御手段80は、移動範囲検知センサ76が遮光部材5,6,7のいずれかで遮光された旨の検知結果に基づき、カム板75の本体フレーム70に対する移動位置を検出して、パンチ89a〜89dが最上昇位置(非穿孔位置)にあることを検出する。また制御手段80は、移動範囲検知センサ76が遮光部材5,6,7で遮光されずに通光している旨の検知結果に基づき、パンチ89a〜89dが最下降位置(穿孔位置)にあること(つまり、孔を明ける動作中であること)を検出する。
【0076】
また、前記移動範囲検知センサ77は、投光素子77aと、該投光素子77aから所定間隔をあけて対向配置された受光素子77bとからなり、移動範囲検知センサ78は、投光素子78aと、該投光素子78aから所定間隔をあけて対向配置された受光素子78bとからなる。
【0077】
移動範囲検知センサ77は、カム板75の本体フレーム70に対する同図左右方向の移動に伴って、投光素子77aと受光素子77bの間を移動する遮光板9により遮光又は通光され、その際の検知結果を制御手段80に送信する。該制御手段80は、移動範囲検知センサ77の検知結果に基づき、カム板75(つまり、パンチ89a〜89d)が移動範囲検知センサ76以外の位置で停止した後に再起動する場合、遮光部材5,6,7のいずれに移動させるべきかを決定する。
【0078】
移動範囲検知センサ78は、カム板75の本体フレーム70に対する同図左右方向の移動に伴って、投光素子78aと受光素子78bの間を移動する遮光板9により遮光又は通光され、その際の検知結果を制御手段80に送信する。該制御手段80は、移動範囲検知センサ78の検知結果に基づき、カム板75(つまり、パンチ89a〜89d)が第1可動範囲R4、第2可動範囲R2のいずれにあるのかを判定する。当該移動範囲検知センサ78は、第1可動範囲R4の第1グループと第2可動範囲R2の第2グループのいずれかを使用して4孔用又は2孔用の孔明け装置60として使用している場合に、仮に停電等のシステムダウンに起因する制御上の異状が発生したとしても、その際使用していない側のグループの可動範囲にカム板75が移動することを回避するためのものである。
【0079】
ここで、上述のパンチ89a〜89dとカム11〜14とは、以下に示すような所定の位置関係を有して構成される。なお、カム11〜14にはそれぞれ、パンチ89a〜89dにそれぞれ支持された後述のピン(フォロワー)25が摺動自在に係合している。
【0080】
即ち、カム板75が本体フレーム70の左端部にある図6に示す初期状態にあって、パンチ89aのピン25は第2直線部11bにおける右端部に位置し、パンチ89bのピン25は第3直線部12cの右端部に位置し、パンチ89cのピン25は第3直線部13cにおける右端部に位置し、パンチ89dのピン25は第2直線部14bにおける右端部に位置し、これによりパンチ89a〜89dの全てが最上昇位置(非穿孔位置)にある。この状態では、移動範囲検知センサ76,77の双方によるカム板75の検知に基づき、制御手段80がカム板75の初期状態を認識している。
【0081】
そして、4孔穿孔状態にあっては、パンチ89aのピン25はV字状部15に位置し、パンチ89bのピン25はV字状部17に位置し、パンチ89cのピン25はV字状部19に位置し、パンチ89dのピン25はV字状部22に位置する。即ち、4孔穿孔状態では、カム板75が第1可動範囲R4に移行して、カム11のV字状部15でパンチ89aを、V字状部17でパンチ89bを、V字状部19でパンチ89cを、V字状部22でパンチ89dをそれぞれに最下降位置(穿孔位置)に下降させる。この状態では、移動範囲検知センサ76,77の検知に基づき、制御手段80が4孔穿孔状態を認識している。
【0082】
また2孔穿孔状態にあっては、パンチ89aのピン25は第1直線部11aに位置し、パンチ89bのピン25はV字状部16に位置し、パンチ89cのピン25はV字状部18に位置し、パンチ89dのピン25は第1直線部14aに位置する。即ち、2孔穿孔状態では、カム板75が第2可動範囲R2に移行して、カム11の第1直線部11aでパンチ89aを、第1直線部14aでパンチ89dを最上昇位置にそれぞれ保持しつつ、カム12のV字状部16でパンチ89bを、V字状部18でパンチ89cをそれぞれ最下降位置に下降させる。この状態では、移動範囲検知センサ76,77の検知に基づき、制御手段80が2孔穿孔状態を認識している。
【0083】
前記初期状態、4孔穿孔状態、及び2孔穿孔状態を実現するために、前記カム11〜14は、相互に以下のような位置関係を有している。即ち、図6に示すように、4孔用のパンチ89a,89b,89c,89dのピッチ(D3)と、これらに対応するV字状部15,17,19,22の各谷底のピッチとが互いに略々等しくなるように設定されている。
【0084】
また、カム11の第2直線部11b、カム12の第3直線部12c、カム13の第3直線部13c及びカム14の第2直線部14bは、この順に僅かずつ長くなるように形成されている。更に、カム12の第2直線部12b及びカム13の第2直線部13bは、この順に僅かずつ長くなるように形成されている。これは、第1グループのパンチ89a〜89dを、或いは第2グループのパンチ89b,89cを最下降位置に移動させて穿孔する際、カム板75の移動時に各グループのパンチの下降タイミングを僅かずつずらすことで、モータ73に加わる負荷を軽減するための構成である。
【0085】
そして、カム11の第2直線部11bとカム12の第1直線部12aとが互いにオーバラップするように設定され、カム12の第3直線部12cとカム13の第1直線部13aとが互いにオーバラップするように設定され、カム13の第3直線部13cとカム14の第1直線部14aとが互いにオーバラップするように設定されている。
【0086】
また、図6乃至図10に示すように、本体フレーム70の下面にはスペーサ(図示せず)を介して脚27が取り付けられており、該スペーサは、本体フレーム70の下面と脚27の上面27aとの間にシートPの通過を許容する隙間S1を形成している。
【0087】
図10に示すように、本体フレーム70には、該フレーム70の上面と下面とを貫通するように、上下で8個のパンチ支持孔28…が形成されており、パンチ支持孔28…にはそれぞれパンチ89a〜89dが摺動自在に嵌挿されている。上面27aには、本体フレーム70の下面の各パンチ支持孔28…にそれぞれ対向するように、4個のダイ29…が形成されている。パンチ89a〜89dは、等しいピッチ(D3)で配列されて、シートPに4つの孔を明ける4孔用の第1グループのパンチと、2つの孔を明ける2孔用の第2グループのパンチとを構成する。
【0088】
そして、例えばパンチ89dには、その移動方向(図の上下方向)と直交する方向に貫通孔10が貫通穿設されており、該貫通孔10には、該孔10及び第2直線部14bを貫通して本体フレーム70の上下方向の案内長孔26に向かって突出するように、ピン25が支持されている。案内長孔26は、その長手方向が上下方向を向くように、本体フレーム70の側壁を貫通して形成されている。ピン25の両端には、着脱可能な止め輪(図示せず)が嵌着される。
【0089】
更にパンチ89dには、対応するダイ29側に付勢するように、本体フレーム70の上縁部と、パンチ89dに固着された止め輪との間にばね(図示せず)が介在される。パンチ89dは、該ばねによって下方に付勢されるが、ピン25がカム14の第2直線部14bを貫通してこれに受け止められているため、本体フレーム70から抜け落ちることはない。なお、ここではパンチ89dの支持構造を中心に述べたが、他のパンチ89a〜89cの支持構造もこれと同じなので、その説明は省略する。
【0090】
また、カム板75における図6の左端部には、ラック83が連結されている。図11を併せて参照すると、該ラック83の背面(同図の紙面奥側)には、カム板75の長手方向(同図左右方向)に沿って延設された前記遮光板9が連結されている。本体フレーム70の同図左端部には連結板8が固定ネジ3で連結され、かつ該連結板8には、上述した移動範囲検知センサ76、移動範囲検知センサ77、及び移動範囲検知センサ78が、所定のピッチで順次配置されている。当該移動範囲検知センサ78は、本実施の形態において後述のストッパ23を配置することにより、その搭載を省略され得る。
【0091】
本体フレーム70の図の左方向への延設部分70aには、ラック83の移動時のガタつきを抑えるためのスライドガイド4が連結されている。スライドガイド4は、例えば合成樹脂材料からなるもので、そのスライド溝(図示せず)の適宜の位置に、上記ストッパ(移動規制手段)23を設けることができる。
【0092】
このストッパ23は、スライドガイド4の作製時に、同じ合成樹脂材料によって同時にかつ一体に形成することができるもので、例えば、カム板75を第2可動範囲R2になるまで図6右方向に移動させた状態での、ラック83の同図左端部に対面する位置に設けることができる。
【0093】
この際、カム板75は、図の左側をストッパ23にて移動規制された状態で第2可動範囲R2内での往復動作は行い得るが、仮に、停電時等のシステムダウンでエンコーダ2によるモータ回転位置が判別困難となってカム板75が図の左方向の第1可動範囲R4に移動されようとしても、上記ストッパ23がその移動を確実に阻止するので、第2可動範囲R2での稼動時に第1可動範囲R4に切り換わることはない。つまり、このようなストッパ23を用いた簡単な構成により、上述した移動範囲検知センサ78の設置を省略することができる。
【0094】
図11に示すように、カム板75におけるラック83の近傍位置には、該カム板75の移動に伴って上記検知センサ76に順次対向し得るように、前述の遮光部材5,6,7が連結されている。なお、移動範囲検知センサ76及び遮光部材5,6,7は、紙面手前−奥方向での位置が、移動範囲検知センサ77,78及び遮光板9とは異なっている。
【0095】
以上の本孔明け装置60は、図6の初期状態をホームポジションとするとき、該ホームポジションからカム板75を同図右方向に一段階移動させる際に到達する範囲が第1可動範囲R4であり、該第1可動範囲R4の左端にあるニュートラル位置(即ち、第2直線部12bや第2直線部13bなどによる中立な位置)からカム板75を同図右方向に更に一段階移動させる際に到達する範囲が第2可動範囲R2である。該第2可動範囲R2の左端にも、ニュートラル位置(即ち、第1直線部12aや第1直線部13aなどによる中立な位置)がある。
【0096】
上記第1可動範囲R4内にてカム板75を往復移動させることに基づき、4孔用パンチ89a,89b,89c,89dを第1グループとして用いた4孔穿孔状態が得られ、また上記第2可動範囲R2内にてカム板75を往復移動させることに基づき、2孔用パンチ89b,89cを第2グループとして用いた2孔穿孔状態が得られる。
【0097】
例えば、上記ホームポジションをN2とするとき、該ホームポジションN2から図6右方向に順次設けられた第1可動範囲R4及び第2可動範囲R2には、該第1可動範囲R4におけるホームポジションN2と反対側に第1ニュートラル位置N1が位置し、かつ第2可動範囲R2におけるホームポジションN2と反対側には第2ニュートラル位置N3が位置していることになる。この状態はつまり、
N1←→4孔穿孔状態(R4)←N2→2孔穿孔状態(R2)←→N3
として表すことができる。
【0098】
(4つの孔を明ける際の動作説明)
本孔明け装置60は、モータ73を停止した図6の初期状態(初期位置)において、パンチ89aのピン25がカム11の第2直線部11bに、パンチ89bのピン25がカム12の第3直線部12cに、パンチ89cのピン25がカム13の第3直線部13cに、パンチ89dのピン25がカム14の第2直線部14bにそれぞれ位置し、全てのパンチが最上昇位置に保持されている。
【0099】
この初期状態において隙間S1にシートPが送り込まれて、所定の位置に位置決め停止され、先の孔明け装置30の場合と同様に、制御手段80が孔明け装置60を作動状態にする。この時点で、穿孔作業を4孔として行う旨の設定が予めなされている。
【0100】
そしてモータ73が、カム板75を、初期状態から4孔穿孔状態に移行させるように回転駆動すると、カム板75が図6右方向に移動を開始して、パンチ89a〜89dの各ピン25を、それぞれ対応するカム11〜14のV字状部15,17,19,22の各谷底に向けて案内する。これにより、第1グループとしての全パンチ89a〜89dが最下降位置にそれぞれ下降し、シートPに孔を明けてダイ29(図10)に係合する。同時に、移動範囲検知センサ76,77の検知結果に基づき、制御手段80が、第1グループのパンチ89a〜89dによりシートPに4つの孔が明けられた旨を認識する。
【0101】
その後、モータ73が同方向に回転駆動し、第1可動範囲R4内においてカム板75を更に右方向に移動させるので、全パンチ89a〜89dはそれぞれ、カム11〜14の各対応する第1直線部11a、第2直線部12b、第2直線部13b及び第1直線部14aにより最上昇位置に上昇させられて保持される。この時点で、4つの孔を明けられたシートPが隙間S1から抜き取られて、新たなシートPが隙間S1に送り込まれる。
【0102】
この状態でモータ73が所定量逆回転すると、カム板75が同図左方向に移動することで、4孔用パンチ89a〜89dにより新たなシートPに4つの孔が明けられる。該カム75が更に左方向に移動すると、パンチ89a〜89dの各ピン25が第2直線部11b、第3直線部12c、第3直線部13c及び第2直線部14bにそれぞれ導かれ、該カム板75は初期状態に復帰する。
【0103】
(2つの孔を明ける際の動作説明)
まず、パンチ89a〜89dがそれぞれ、カム11〜14の各対応する第1直線部11a、第2直線部12b、第2直線部13b及び第1直線部14aに位置して最上昇位置に保持され、かつモータ73が停止した状態において、隙間S1にシートPが送り込まれて所定の位置で停止すると、制御手段80が孔明け装置60を作動状態にする。この時点で、穿孔作業を2孔として行う旨の設定が予めなされている。
【0104】
そしてモータ73が、カム板75を、上述の状態から2孔穿孔状態に移行させるように回転駆動すると、カム板75が図6右方向に移動を開始し、2孔穿孔時には使用されないパンチ89a及び89dの各ピン25が、第1直線部11a及び第1直線部14aにそのまま保持されて、最上昇位置に維持される。これに対し、4孔穿孔時と同様に使用されるパンチ89b,89cは、各ピン25が、第2直線部12bからV字状部16の谷底へ、第2直線部13bからV字状部18の谷底へ向けてそれぞれ案内される。これにより、2孔穿孔用のパンチ89b,89cがそれぞれ最下降位置(穿孔位置)に下降し、シートPに孔を明けてダイ29に係合する。この際、移動範囲検知センサ77の検知に基づき、制御手段80が、第2グループのパンチ89b,89cによりシートPに2つの孔が明けられた旨を認識する。
【0105】
その後、制御手段80からの信号に応答してモータ73が同方向に回転駆動し、第2可動範囲R2内においてカム板75を更に右方向に移動させるので、全パンチ89a〜89dはそれぞれ、カム11〜14の各対応する第1直線部11a、第1直線部12a、第1直線部13a、及び第1直線部14aにより最上昇位置に保持される。この時点で、2つの孔を明けられたシートPが隙間S1から抜き取られて新たなシートPが隙間S1に送り込まれる。そして、この状態にてモータ73が所定量逆回転すると、カム板75が同図左方向に移動することで、2孔用パンチ89b,89cにより新たなシートPに2つの孔が明けられる。
【0106】
以上のように、本実施形態における孔明け装置60によると、第1の実施形態と略々同様の作用効果が得られると共に、以下のような効果を奏することができる。
【0107】
すなわち、本孔明け装置60では、カム板75をホームポジションN2からカム板75を一方向に一段階進め、又は第1可動範囲R4から同じ方向に更に一段階進めるだけで、第1可動範囲R4又は第2可動範囲R2に容易にかつ確実に到達させることができ、制御を簡略化することができる。また、第1及び第2可動範囲R4,R2のそれぞれにてカム板75を往復移動させるだけで、パンチ89a,89b,89c,89dを第1グループとして又は第2グループとして確実に昇降移動させることができる。
【0108】
更に、第1グループのパンチを4個の偶数とし、第2グループ用パンチを、第1グループのパンチ89a〜89dのうちの中央の2個(89b,89c)としたので、第1グループの4個のパンチ89a〜89dの中央部分(つまりパンチ89b,89cの中間部分)をセンターとする4孔穿孔状態と、第1グループにおける中央の2個のパンチ89b,89cの中間部分をセンターとする2孔穿孔状態とを、互いのセンターを各工程に対応させてずらすことなく、シートPに対する4孔(4個以上の偶数でも勿論可能)と2孔の適正な穿孔工程を自在に実施することができる。
【0109】
そして、ストッパ23を設ける場合には、該ストッパ23でカム板75の反対側の可動範囲への移動を単に規制するだけの極めて簡単な構成により、カム板75の移動検出のための移動範囲検知センサ78を削減することができる。つまり、孔明け装置60を複写機等に装備する際、反対側のグループへの移動を移動範囲検知センサ78で検知することに基づき、実際に多用する側のグループのみを使用できるように制御することが行われる。例えば、停電等でシステムダウンした状態から電力供給が再開されて制御がし直される場合、通常は、停電前に使用されていたグループ側にカム板75を移行させる制御を、移動範囲検知センサ78の検知結果に基づいて行う。従って、当該センサ78の存在は必須であるが、本実施の形態では、ストッパ23を設置して該センサ78を省略する場合、カム板75の反対側への移動そのものをストッパ23で規制することができるようになる。その場合、比較的高価な上記センサ78の削減により、製品価格を低下させることが可能になる。つまり、可動範囲検知センサ78自身のコストに加え、制御手段80における制御基板(図示せず)に要するコストも削減でき、例えば数万セットの生産数の場合には大幅なコストダウンが見込め、センサや制御に起因するトラブルを減少させ、省メンテナンスにも貢献できるようになる。
【0110】
そして、合成樹脂製のスライドガイド4のスライド溝における適宜の位置を合成樹脂材料で閉塞して上記ストッパ23とすることにより、ラック83の図6左方向への移動を或る位置で確実に規制するように構成できる。或いはこれに代えて、本体フレーム70におけるカム板75の同図右端部に対応する適宜の位置に、適宜の材料からなる部材(例えば金属製のビス)をストッパ23として固定することにより、ラック83の同図右方向への或る位置からの移動を規制するように構成でき、その場合、上記と同様の効果を得ることができる。
【0111】
また、ストッパ23をスライドガイド4のスライド溝に形成する場合には、スライドガイド4の金型に対する修正コストのみを考慮すれば良く、従ってコストアップを招くことなく極めて廉価に対処することができる。
【0112】
なお、上記ストッパ23を設けることで可動範囲検知センサ78を削減するような構成は、前述した第1の実施形態においても同様に適用可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上のように、本発明に係る孔明け装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機器等の画像形成装置の本体に、或いは印刷機に装備するものとして有用であり、特に部品点数の削減による装置簡略化が要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0114】
30,60 孔明け装置
35,75 カム板
44,84,94,11,12,13,14 カム
45,85,86,95,96,15,16,17,18,19,22 V字状部
46a、46b、87a、87b、87c、97a、97b、97c又は11a,11b,12a,12b,12c,13a,13b,13c,14a,14b 直線部
52a,52c,89a,89d パンチ
52b,89b,89c パンチ(共用パンチ)
53 パンチ(2孔専用パンチ)
54,29 ダイ
62,25 ピン(フォロワー)
85,16,18 V字状部(第2のV字状部)
86,17,19 V字状部(第1のV字状部)
87a,12a,13a 第1直線部(他端側の直線部)
87b,12b,13b 第2直線部(中間の直線部)
87c,12c,13c 第3直線部(一端側の直線部)
P シート(シート状の被穿孔材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンチをその対応するダイに接離させて、シート状の被穿孔材に孔を明ける孔明け装置に係り、詳しくは、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機器等の画像形成装置の本体に、或いは印刷機に装備し得る孔明け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の孔明け装置として、2孔用、3孔用、4孔用といった専用タイプのものと、2孔用と3孔用とで、或いは2孔用と4孔用とで共用できるようにした切換えタイプのものとが知られている。該切換えタイプとして、例えばカムのストローク範囲を2段階に区分することにより、或るストローク範囲では2孔を、別のストローク範囲では3孔を穿孔できるようにしたスライドカム方式が存在している(例えば、特開2001−198889号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−198889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなスライドカム方式の孔明け装置では、パンチの個数やダイの個数はそれぞれその合計数が必要になるため、例えば2孔と3孔の切換えタイプにあっては合計5個ずつのパンチ及びダイが必要になり、部品点数が多くなっている。従って、異なる穿孔数の機能を併せ持つものでありながら、パンチやダイの個数を可及的に削減して、部品点数が少なく装置構造が簡素な孔明け装置の実現が切望される。
【0005】
そこで、本発明は、パンチやダイの個数を従来に比して減少させ、部品点数を削減して装置構造を簡略化し得るように構成し、もって上述課題を解決した孔明け装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、シート状の被穿孔材に孔を明ける複数のパンチ(52a,52b,53,52c又は89a,89b,89c,89d)及びダイ(54又は29)と、該パンチの移動方向と直交する方向に往復移動可能なカム板(35又は75)と、該カム板と前記複数のパンチとの間にて、前記カム板の往復移動動作を前記パンチの非穿孔位置、穿孔位置への昇降移動動作に変換する複数のカム(44,84,94又は11,12,13,14)及び該カムに係合するフォロワー(62又は25)と、を備えてなる孔明け装置(30又は60)において、
前記複数のパンチは、所定数のパンチ(52a,52b,52c又は89a,89b,89c,89d)を有する第1グループと、該第1グループのいずれかの前記パンチ(52b又は89b,89c)を含み、かつ前記第1のグループの前記所定数より数が少ないパンチ(52b,53又は89b,89c)を有する第2グループと、に区分され、
前記第1グループに対応する前記カム及び前記フォロワーは、前記カム板の第1可動範囲での往復移動により前記第1グループの前記パンチを昇降移動させることによって前記所定数の穿孔状態を現出するように構成され、
前記第2グループに対応する前記カム及び前記フォロワーは、前記カム板の第2可動範囲での往復移動により前記第2グループの前記パンチを昇降移動させることによって、前記所定数より少数の穿孔状態を現出するように構成され、
前記カムは、それぞれ往復移動方向に延びる前記カム板(35又は75)に貫通して形成され、前記パンチを前記非穿孔位置から前記穿孔位置に移動しそして再び前記非穿孔位置に移動する、第1のグループ及び第2のグループによるそれぞれの穿孔数の合計数のV字状部(45,85,86,95,96又は15,16,17,18,19,22)と、前記V字状部に連通し各前記パンチを非穿孔位置に保持する直線部(46a、46b、87a、87b、87c、97a、97b、97c又は11a,11b,12a,12b,12c,13a,13b,13c,14a,14b)と、を有し、
前記第1グループ又は第2グループに専用する前記パンチに対応する前記カムは、前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲の前記穿孔状態を現出する側において前記V字状部に前記カムフォロワーを係合し、前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲の前記穿孔状態を現出しない側においてその全域に亘って前記直線部に前記カムフォロワーを係合し続け、
前記第1グループ及び前記第2グループに共用する前記パンチ(52b又は89b,89c)に対応する前記カムは、該パンチ(52b又は89b,89c)専用として他のカム(44,94又は11,14)と分離した独立したカムからなり、前記第1可動範囲において前記カムフォロワーと係合する第1の前記V字状部(86又は17,19)と、前記第2可動範囲において前記カムフォロワーに係合する第2の前記V字状部(85又は16,18)と、前記第1のV字状部(86又は17,19)及び前記第2のV字状部(85又は16,18)との間を連通して前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲において前記カムフォロワーと係合する中間の前記直線部(87b又は12b,13b)と、前記第1のV字状部(86又は17,19)から前記中間の直線部(87b又は12b,13b)と反対側に延びて前記第1可動範囲において前記カムフォロワーに係合する一端側の前記直線部(87c又は12c,13c)と、前記第2のV字状部(85又は16,18)から前記中間の直線部(87b又は12b,13b)と反対側に延びて前記第2可動範囲において前記カムフォロワーに係合する他端側の前記直線部(87a又は12a,13a)と、を有し、前記一端側の直線部(87c又は12c,13c)及び前記他端側の直線部(87a又は12a,13a)の少なくとも一方が、該カムに隣接するカム(44,94又は11,14)の前記直線部(46b,97a又は11b,14a)に対して前記パンチの移動方向に異なる位置にあってかつ前記カム板の移動方向に所定量オーバラップして配置されてなる、
ことを特徴とする孔明け装置にある。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記第1グループの前記パンチは、所定ピッチで配列した3個(52a,52b,52c)からなり、前記第1グループの前記第2グループにて共用し得る共用パンチ(52b)が、前記3個のパンチの中央に位置するパンチであり、かつ
前記第2グループの前記パンチは、前記共用パンチ(52b)と、前記3個のパンチの内の一方の端部側に位置するパンチと前記共用パンチとの間に配置した2孔用専用パンチ(53)との2個からなり、
前記共用パンチ専用の前記カム(84)は、前記一端側の直線部(87c)が前記2孔用専用パンチ用の前記カムの直線部(97a)に対してオーバラップして配置されてなる、
請求項1に記載の孔明け装置にある。
【0008】
請求項3に係る本発明は、前記第1グループの前記パンチは、所定ピッチで配列した4個(89a,89b,89c,89d)からなり、前記第2グループ用パンチは、前記第1グループの両端部のパンチの間の2個の共用パンチ(89b,89c)からなり、
前記2個の共用パンチ用の各前記カム(12,13)は、前記一端側及び他端側の直線部(12c,13c,12a,13a)がそれぞれ隣接するカムの直線部に対してオーバラップして配置されてなる、
請求項1に記載の孔明け装置にある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る本発明によると、第1グループに対応するカム及びフォロワーが、カム板の第1可動範囲での往復移動により第1グループのパンチを昇降移動させて所定数の穿孔状態を現出すると共に、カム板の第2可動範囲での往復移動により第2グループのパンチを昇降移動させて、所定数より少数の穿孔状態を現出し、第2グループのパンチが、第1グループのいずれかのパンチを含みかつ該第1グループのパンチ数より数が少ないので、カム板の移動に応じて第1及び第2グループの各パンチを選択的に作動させて、異なる個数の穿孔工程を実施する2台分の機能を備えながらも、異なる穿孔工程で使用されるパンチ合計数を、第1及び第2グループのパンチ合計数よりも少なくすることができる。これにより、パンチ、及びその対応するダイの各個数を従来に比して減少させることができ、部品点数を削減して装置構造を簡略化し、コストダウンも期待できると共に、複写機等の画像形成装置に搭載した際の多機能化に寄与することができる。
【0010】
また、前記第1グループ及び前記第2グループに共用するパンチに対応するカムは、他のカムと分離した独立したカムからなり、かつ、その一端側の直線部及び他端側の直線部の少なくとも一方が、該カムに隣接するカムの直線部に対してカム板の移動方向に所定量オーバラップしているので、該オーバラップ部分においてカム板は、前記移動方向と直交する方向に、隣接するカムを連結する連結部分を有する。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、第1グループの中央に位置する共用パンチをセンターに位置させた3孔穿孔状態と、該共用パンチと2孔用専用パンチとの中間をセンターとする2孔穿孔状態とが得られるが、互いのセンターをそれぞれの工程に対応させてずらすことにより、3孔用パンチの中央の共用パンチを2孔用として兼用した合計4個のパンチ(及びダイ)のみにて、被穿孔材に対する適正な2孔と3孔の穿孔工程を自在に実施することができる。これにより、被穿孔材に対して或るピッチで3孔を穿孔する工程と、これとは異なるピッチで2孔穿孔する工程とを、容易に切り換えることができる。
【0012】
請求項3に係る本発明によると、第1グループのパンチを4個とし、第2グループ用パンチを、第1グループのパンチのうちの中央の2個としたので、第1グループのパンチの中央部分をセンターとする4孔穿孔状態と、第1グループにおける中央の2個のパンチの中間をセンターとする2孔穿孔状態とを、互いのセンターを各工程に対応させてずらすことなく、被穿孔材に対する4孔と2孔の適正な穿孔工程を、自在に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1の実施形態における孔明け装置の一部破断した正面図。
【図2】その平面図。
【図3】図1中のA−A矢視断面図。
【図4】図1中のB−B矢視断面図。
【図5】本実施形態の孔明け装置の動作を説明するための図であり、(a)は第1グループのパンチで穿孔する3穿孔状態を、(b)は初期状態を、(c)は第2グループのパンチで穿孔する2穿孔状態をそれぞれ示している。
【図6】本発明に係る第2の実施形態における孔明け装置の一部破断した正面図。
【図7】その平面図。
【図8】その底面図。
【図9】図6中のE−E矢視側面図。
【図10】図6中のF−F矢視側面断面図。
【図11】図6における移動範囲検知センサ及びラック等の部分を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に沿って、本発明に係る孔明け装置の第1の実施の形態について説明する。図1は本実施の形態における孔明け装置の一部破断した正面図、図2は図1の平面図、図3は図1中のA−A矢視断面図、図4は図1中のB−B矢視断面図、図5は本実施の形態における孔明け装置の動作説明用の図である。
【0015】
<第1の実施の形態>
本実施形態における孔明け装置30は、図1及び図2に示すように、角筒状の本体フレーム31を有しており、該本体フレーム31上には、ブラケット32を介してモータ33が配設されている。該モータ33は、長尺のカム板35に減速歯車機構34を介して連動し、該カム板35を図1の左右方向に移動させる駆動源として機能する。また、孔明け装置30は、モータ33、後述するパンチ検知センサ92,93やカム板検知センサ55,56等からの検知信号を入力し、モータ33の回転量及び回転方向等を算出して、その対応する駆動信号を出力してモータ33を制御する制御手段20を有している。
【0016】
前記減速歯車機構34は、図1に示すように、ブラケット32を貫通するモータ33の出力軸36に固定された駆動歯車37と、ブラケット32に回転自在に支持された互いに一体の大径の中間歯車38及び小径の中間歯車39と、ブラケット32に回転自在に支持された支軸21に固定されかつ前記中間歯車39よりも大径の従動歯車40と、本体フレーム31の内方にて支軸21先端に固定されたピニオン41と、カム板35にその延設方向に沿うように設けられてピニオン41と噛合するラック42とを有している。なお、図1において、ラック42の紙面手前側に位置するパンチ53,52cは、便宜上、中間より上の部分を図示省略している。
【0017】
前記カム板35は、ピニオン41の回転をラック42を介して受けつつ、本体フレーム31における図1の紙面奥側の内面に沿って同図の左右方向に往復移動し得るように配設されている。また、カム板35の上縁における左端部近傍は、該上縁から下縁に向けて若干量切り欠かれており、上縁における左端部には凸部43が形成されている。該凸部43の存在により、本体フレーム31に対するカム板35の接触面積が減少されて摺動抵抗が低減し、摺動動作が滑らかにされている。
【0018】
また、カム板35上縁の左端部近傍の前記切り欠き部には、所定間隔をあけて3つの切欠66,67,68が形成されており、前記切り欠き部の上方における本体フレーム31内面には、弾性を有する位置決め板65が下方に付勢された状態で設けられている。中央の切欠67は、位置決め板65との係合によりカム板35を中央の初期位置(図5(b)参照)に係止するためのものであり、右側の切欠66は、位置決め板65との係合によりカム板35を左端位置に係止するためのものであり、左側の切欠68は、位置決め板65との係合によりカム板35を右端位置に係止するためのものである。これら位置決め板65及び切欠66,67,68により、カム板位置決め機構99が構成されている。また、減速歯車機構34等は、モータ33の回転力を直線往復移動力に変換してカム板35に伝達し、後述のパンチ52a,52b,53,52cを昇降移動させる駆動手段91を構成している。
【0019】
前記カム板35には、3つのカム44,84,94が図の左側から順に形成されており、該カム44及び94は、カム板35の長手方向と直交する方向において上下方向中央部よりも下側に相互に同じレベルになるように形成されている。また、カム84は、カム板35の長手方向と直交する方向において上下方向中央部よりも上側に位置すると共に、後述する第3直線部87cをカム94の第1直線部97aにオーバラップさせるように形成されている。
【0020】
前記カム44,84,94はそれぞれ、カム板35の長手方向に沿うように該カム板35の表裏を貫通して形成されている。カム44は、カム板35の長手方向と直交する方向における上下方向中央部にて該長手方向に所定幅で延びるように形成された第1直線部46aと、該第1直線部46aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、最も下降した部分(谷底)から所定角度で徐々に上昇するように形成されたV字状部45と、該V字状部45の右端部から前記第1直線部46aと同じレベルで前記長手方向に所定幅で延びるように形成された第2直線部46bと、を有している。
【0021】
カム84は、カム板35の長手方向と直交する方向における上下方向上側にて該長手方向に所定幅で延びるように形成された第1直線部87aと、該第1直線部87aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇するように形成されたV字状部85と、該V字状部85の右端部から前記第1直線部87aと同じレベルで前記長手方向に所定幅で延びるように形成された第2直線部87bと、該第2直線部87bの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇するように形成されたV字状部86と、該V字状部86の右端部から前記直線部87a,87bと同じレベルで前記長手方向に所定幅で延びるように形成された第3直線部87cと、を有している。
【0022】
カム94は、カム板35の長手方向と直交する方向における上下方向中央部にて該長手方向に所定幅で延びるように形成された第1直線部97aと、該第1直線部97aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇するように形成されたV字状部95と、該V字状部95の右端部から前記第1直線部97aと同じレベルで前記長手方向に所定幅で延びるように形成された第2直線部97bと、該第2直線部97bの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇するように形成されたV字状部96と、該V字状部96の右端部から前記直線部97a,97bと同じレベルで前記長手方向に所定幅で延びるように形成された第3直線部97cと、を有している。
【0023】
孔明け装置30は、本体フレーム31(カム板35)の長手方向に所定の距離D1をあけて該長手方向と直交する方向に昇降移動自在に支持された3孔用のパンチ52a,52b,52cと、該パンチ52bと52cとの間にて該パンチ52bからパンチ52c側に前記距離D1よりも短い距離D2をあけて前記長手方向と直交する方向に昇降移動自在に支持された2孔用のパンチ(2孔用専用パンチ)53と、を有している。上記パンチ52bは、後述するように2孔用パンチとして兼用(共用)されるものである。
【0024】
これらパンチ52a,52b,53,52cと前記カム44,84,94とは、以下に示すような所定の位置関係を有するように構成されている。なお、カム44,84,94にはそれぞれ、パンチ52a,52b,53,52cにそれぞれ支持された後述のピン62が摺動自在に挿通している。
【0025】
即ち、図1及び図5(b)に示すように、カム板35が本体フレーム31の中央部に位置する初期状態にあっては、パンチ52aは第1直線部46aにおけるV字状部45寄りに位置し、パンチ52bは第2直線部87bの中央部に位置し、パンチ53は第2直線部97bにおけるV字状部95寄りに位置し、パンチ52cは第2直線部97bにおけるV字状部96寄りに位置する。
【0026】
また、図5(a)に示す3孔穿孔状態にあっては、3孔用パンチ52a,52b,52cのピン62はそれぞれ、カム44のV字状部45、カム84のV字状部86、カム94のV字状部96に位置し、かつ2孔用専用のパンチ53のピン62は、カム94の第2直線部97bの中央部分に位置する。
【0027】
更に、図5(c)に示す2孔穿孔状態にあっては、2孔用のパンチ52b,53のピン62はそれぞれ、カム84のV字状部85、カム94のV字状部95に位置し、かつ3孔用専用のパンチ52a,52cのピン62はそれぞれ、カム44の第1直線部46aにおける左端側、カム94の第2直線部97bにおける中央部分に位置する。
【0028】
前記初期状態、3孔穿孔状態、及び2孔穿孔状態を実現するために、前記カム44,84,94は、相互に以下のような位置関係を有している。
【0029】
即ち、図1,図2及び図5に示すように、3孔用のパンチ52a,52b,52cのピッチ(D1)と、これらに対応するV字状部45,86,96の各谷底のピッチとが互いに等しくなるように設定されている。また、カム44の第2直線部46b、カム84の第1直線部87a、第2直線部87b及び第3直線部87c、並びにカム94の第1直線部97a及び第3直線部97cが互いに等しい長さに設定されると共に、第1直線部97aと第3直線部87cとがオーバラップするように設定されている。
【0030】
更に、カム94の第2直線部97bは、前記初期状態にあっては隣り合うパンチ53,52cの双方を最上昇位置(非穿孔位置)に保持し、前記3孔穿孔状態にあってはパンチ52cをV字状部96に送り出すと共にパンチ53を最上昇位置に保持し、前記2孔穿孔状態にあってはパンチ53をV字状部95に送り出すと共にパンチ52cを最上昇位置に保持し得るように、これらパンチ53と52cとの間の距離よりも若干長い長さを有するように設定されている。
【0031】
また、カム44の第1直線部46aは、図5(b)の初期状態から図5(c)の2孔穿孔状態を更に越えるまでパンチ52aを最上昇位置に保持し得るような、第2直線部97bと等しい長さに設定されている。
【0032】
一方、図1、図3及び図4に示すように、本体フレーム31の下面31aには、スペーサ50,50を介在して脚51が取り付けられている。該スペーサ50は、本体フレーム31の下面31aと脚51の上面51aとの間にシート(被穿孔材)Pの通過を許容する隙間Sを形成するために設けられている。そして図3において、脚51には、隙間SにシートPを案内する傾斜面51bが形成されている。
【0033】
図1に示すように、本体フレーム31には、該フレーム31の上面と下面とを貫通するように、上下で8個のパンチ支持孔58…が形成されている。これらパンチ支持孔58…にはそれぞれパンチ52a,52b,53,52cが摺動自在に嵌挿されている。脚51の上面51aには、本体フレーム31の下面の各パンチ支持孔58…にそれぞれ対向するように、4個のダイ54…が形成されている。各ダイ54の内径は、それぞれに係合するパンチ52a,52b,53,52cの各外径と略々同じ寸法に設定されている。
【0034】
そして、パンチ52a,52b,52cは、等しいピッチ(D1)で配列されて、シートPに3つの孔を明ける3孔用の第1グループのパンチを構成している。また、パンチ53は、3孔用としても使用される上記パンチ(共用パンチ)52bとともに、該パンチ52bと協働してシートPに2つの孔を明ける2孔用の第2グループのパンチを構成している。
【0035】
そして、図1及び図4に示すように、例えばパンチ52bには、その移動方向(図の上下方向)cと直交する方向に貫通孔63が貫通穿設されており、該貫通孔63には、該孔63及び第2直線状部87bを貫通して本体フレーム31の案内長孔48に向かって突出するように上述のピン(フォロワー)62が支持されている。該案内長孔48は、その長手方向が上下方向を向くように、本体フレーム31の側壁を貫通して形成されている。また、ピン62の両端には、該ピン62がパンチ52bの貫通孔63から抜け落ちないように、着脱可能な止め輪64,64が嵌着されている。
【0036】
更に、パンチ52bには、対応するダイ54側に付勢するばね47が設けられている。該ばね47は、本体フレーム31の上縁部と、パンチ52bに固着された止め輪98との間に介在されている。パンチ52bは、該ばね47によって下方に付勢されているが、ピン62がカム84の第2直線部87bを貫通してこれに受け止められているため、本体フレーム31から抜け落ちることはない。
【0037】
なお、図4中の実線はパンチ52bの最上昇位置の状態、二点鎖線は該パンチ52bの最下降位置(穿孔位置)の状態をそれぞれ示している。ここではパンチ52bの支持構造を中心に述べたが、他のパンチ52a,53,52cの支持構造もこれと同じであるので、その説明は省略する。
【0038】
また、図1に示すように、本体フレーム31内方におけるカム板35の移動範囲の両端には、カム板35の右端到達及び左端到達をそれぞれに検知するカム板検知センサ55,56が設けられている。更に、本体フレーム31上面には、3孔用パンチ52a,52b,52cの内のパンチ52bの上端を検知するパンチ検知センサ92と、2孔用パンチ52b,53の内のパンチ53の上端を検知するパンチ検知センサ93とが設けられている。
【0039】
以上の構成を有する本実施形態における孔明け装置30は、図5(b)の初期状態をホームポジションとするとき、該ホームポジションからカム板35を、図5(a)に示すように左方向に移動させた場合に到達する範囲が第1可動範囲R3であり、上記ホームポジションからカム板35を、図5(c)に示すように右方向に移動させた場合に到達する範囲が第2可動範囲R2である。
【0040】
上記第1可動範囲R3内にてカム板35を往復移動させることに基づき、3孔用パンチ52a,52b,52cを第1グループとして用いた3孔穿孔状態が得られ、また上記第2可動範囲R2内にてカム板35を往復移動させることに基づき、2孔用パンチ52b,53を第2グループとして用いた2孔穿孔状態が得られる。
【0041】
例えば、上記ホームポジションをN2とするとき、該ホームポジションN2を挟む第1可動範囲R3及び第2可動範囲R2にはそれぞれ、ホームポジションN2と反対側に第1ニュートラル位置N1及び第2ニュートラル位置N3がそれぞれ位置していることになる。この状態はつまり、
N1←→3孔穿孔状態(R3)←N2→2孔穿孔状態(R2)←→N3
として表すことができる。
【0042】
(3つの孔を明ける際の動作説明)
本実施形態における孔明け装置30は、モータ33を停止した初期状態において、そのカム板35が、図1(つまり図5(b))に示すように、カム板位置決め機構99の位置決め板65が切欠67に係合し、本体フレーム31内の中央に保持されている。このとき、パンチ52aのピン62はカム44の第1直線状部46aに、パンチ52bのピン62はカム84の第2直線状部87bに、パンチ53及び52cの各ピン62はカム94の第2直線状部97bにそれぞれ位置し、全てのパンチが最上昇位置に保持されている。
【0043】
この初期状態において、本体フレーム31と脚51との間の隙間Sに、不図示のシート搬送手段を介してシートPが送り込まれ、所定の位置に位置決め停止される。この際、不図示のセンサが孔明け装置30にシートPが送り込まれてきたことを検知するため、該検知に基づき、制御手段20が孔明け装置30を作動状態にする。この時点で、穿孔作業を3孔として行う旨の設定が、ユーザによって予めなされている。
【0044】
そして、モータ33が、カム板35を、図5(b)の初期状態から図5(a)の3孔穿孔状態に移行させるように回転駆動する。これにより、カム板35が左方向に移動を開始して、パンチ52aのピン62が第1直線状部46aからV字状部45の谷底に向けて案内され、パンチ52bのピン62が第2直線状部87bからV字状部86の谷底に向けて案内され、パンチ52cのピン62が第2直線状部97bからV字状部96の谷底に向けて案内される。
【0045】
これにより、図5(a)に示すように、3孔用パンチ52a,52b,52cが最下降位置にそれぞれ下降し、シートPに孔を明けてダイ54に係合する。同時に、パンチ検知センサ92が、3孔用パンチの1つであるパンチ52bが最下降位置に位置したことを検知すると、制御手段20が、第1グループのパンチ52a,52b,52cによりシートPに3つの孔が明けられた旨を認識する。これが即ち、ホームポジションN2から移動して第1可動範囲R3の中間位置にある状態である。
【0046】
そして、制御手段20からの信号に応答して、モータ33が回転駆動してカム板35をなおも左方向に移動させるので、カム94の第2直線状部97bにてパンチ53を最上昇位置に保持した状態のまま、カム44,84,94が、それぞれ第2直線状部46b、第3直線状部87c、第3直線状部97cに各ピン62を導き入れて各パンチ52a,52b,52cを上昇させ、最上昇位置に保持する。この際、カム板35が最も左端に移動した状態となり、保持機構99の位置決め板65が切欠66に係合することにより、該カム板35はその位置に保持される。これが即ち、第1可動範囲R3の最終端にある状態である。
【0047】
この時点で、3つの孔を明けられたシートPが隙間S(図3参照)から抜き取られ、これに代えて、新たなシートPが隙間Sに送り込まれる。この状態において、モータ33が所定量逆回転すると、左端に位置しているカム板35が右方向に移動(つまり第1可動範囲R3の最終端から中間位置に移動)することで、3孔用パンチ52a,52b,52cにより新たなシートPに3つの孔が明けられる。該カム板35が更に右方向に移動(つまり第1可動範囲R3の中間位置からホームポジションN2に移動)すると、パンチ52a,52b,52cの各ピン62が第1直線状部46a、第2直線状部87b、第2直線状部97bにそれぞれ導かれ、切欠67に位置決め板65が係合することにより、該カム板35は図5(b)の初期状態に復帰する。
【0048】
このように、カム板35を第1可動範囲R3において往復移動させることにより、パンチ52a,52b,52cによる3孔穿孔作業を繰り返し実行することができる。
【0049】
(2つの孔を明ける際の動作説明)
まず、モータ33を停止した図5(b)の初期状態において、本体フレーム31と脚51との間の隙間SにシートPが送り込まれて所定の位置で停止すると、不図示のセンサの検知に基づき、制御手段20が孔明け装置30を作動状態にする。この時点で、穿孔作業を2孔として行う旨の設定が、ユーザによって予めなされている。
【0050】
そして、モータ33が、カム板35を、図5(b)の初期状態から図5(c)の2孔穿孔状態に移行させるように回転駆動する。これにより、カム板35が右方向に移動を開始し、2孔時には使用されないパンチ52a及び52cの各ピン62は、初期状態に係合していた第1直線状部46a及び第2直線状部97bにそのまま保持されて、最上昇位置に保持される。これに対し、3孔時と同様に使用されるパンチ52bは、そのピン62が第2直線状部87bからV字状部85の谷底に向けて案内される。また、パンチ53は、そのピン62が第2直線状部97bからV字状部95の谷底に向けて案内される。
【0051】
これにより、図5(c)に示すように、2孔用のパンチ52b,53がそれぞれ最下降位置に下降し、シートPに孔を明けてダイ54に係合する。同時に、パンチ検知センサ93が、2孔用パンチの1つであるパンチ53が最下降位置に位置したことを検知すると、制御手段20が、第2グループのパンチ52b,53によりシートPに2つの孔が明けられた旨を認識する。これが即ち、ホームポジションN2から移動して第2可動範囲R2の中間位置にある状態である。
【0052】
そして、制御手段20からの信号に応答して、モータ33が回転駆動してカム板35をなおも右方向に移動させるので、カム44,94の第1直線状部46a及び第2直線状部97bに各ピン62をそれぞれ保持してパンチ52a,52cを最上昇位置に保持した状態のまま、カム84,94が、それぞれ第1直線状部87a、第1直線状部97aに各ピン62を導き入れて各パンチ52b,53を上昇させ、最上昇位置に保持する。この際、カム板35が最も右端に移動した状態となり、保持機構99の位置決め板65が切欠68に係合することにより、該カム板35はその位置に保持される。これが即ち、第2可動範囲R2の最終端にある状態である。
【0053】
この時点で、2つの孔を明けられたシートPが隙間S(図3参照)から抜き取られ、これに代えて、新たなシートPが隙間Sに送り込まれる。この状態において、モータ33が所定量逆回転すると、右端に位置しているカム板35が左方向に移動(つまり第2可動範囲R2の最終端から中間位置に移動)することで、2孔用のパンチ52b,53により新たなシートPに2つの孔が明けられる。該カム板35が更に左方向に移動(つまり第2可動範囲R2の中間位置からホームポジションN2に移動)すると、パンチ52b,53の各ピン62が第2直線状部87b、第2直線状部97bにそれぞれ導かれ、切欠67に位置決め板65が係合することにより、該カム板35は図5(b)の初期状態に復帰する。
【0054】
このように、カム板35を第2可動範囲R2において往復移動させることにより、パンチ52b,53による2孔穿孔作業を繰り返し実行することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態における孔明け装置30によると、カム板35が中間位置より左方向に移動する動作でシートPに3つの孔を明けることができ、中間位置より右方向に移動する動作でシートPに2つの孔を明けることができ、1台の装置にて、シートPの異なる位置に異なる数の孔を明けることができる。
【0056】
この際、3孔を明ける場合には、図5(a)に示すように、パンチ52bに対応するC1の位置がセンターとなり、2孔を明ける場合には、図5(c)に示すように、パンチ52b,53間のC2の位置がセンターとなるので、例えば同じサイズのシートPに2孔、3孔を明ける場合には、次のような手法を採用することが望ましい。
【0057】
例えば、不図示の位置変更手段により、本孔明け装置30全体と、該孔明け装置30を搭載した複写機等の搭載部との相対位置をずらし、センターC2をセンターC1に一致させるように位置変更する。または、本孔明け装置30を搭載した複写機等におけるシート搬送手段(図示せず)による該孔明け装置30に対するシートの搬送位置を、2孔穿孔時と3孔穿孔時とで変更する。これらの手法を適宜採用することにより、2孔と3孔穿孔時のセンターずれを解消しつつ、穿孔工程を円滑に進めることができる。
【0058】
また、パンチ52a,52b,53,52cには、それぞれ該パンチ52a,52b,53,52cをその対応するダイ54に接近させる方向に付勢するばね47が設けられているが、このばね47は、各パンチがシートPに孔を明けるときの負荷を軽減すると共に、カム板35が各パンチをその対応するダイ54から離間させるときの負荷となる。これにより、カム板35の移動時のモータ33への負荷をほぼ均一にし、シートPに連続して穿孔する工程を円滑に行い得るようにしている。
【0059】
また、本実施形態の孔明け装置30では、パンチ52a,52b,53,52c側にピン62を設け、カム板35側にカム44,84,94を設けたが、この関係を逆にして、パンチ52a,52b,53,52c側にカムを設け、カム板35側にピンを設ける構成とすることも可能である。
【0060】
以上説明した本実施形態における孔明け装置30によると、第1グループに対応するカム44,84,94及びピン(フォロワー)62が、カム板35の第1可動範囲R3での往復移動により第1グループのパンチ52a,52b,52cを昇降移動させて3孔穿孔状態を現出すると共に、カム板35の第2可動範囲R2での往復移動により第2グループのパンチ52b,53を昇降移動させて、第1グループのパンチ数より少数の2穿孔状態を現出することができる。また、第2グループのパンチが、第1グループのパンチ53を含みかつ該第1グループのパンチ数より少ないので、カム板35の移動に応じて第1及び第2グループの各パンチを選択的に作動させて、異なる個数の穿孔工程を実施する2台分の機能を備えながらも、異なる穿孔工程で使用されるパンチ合計数(4個)を、第1及び第2グループのパンチ合計数(5個)よりも少なくすることができる。これにより、パンチ、及びその対応するダイの各個数を従来に比して減少させることができ、部品点数を削減して装置構造を簡略化し、コストダウンも期待できると共に、複写機等の画像形成装置に搭載した際の多機能化に寄与することができる。
【0061】
また、ホームポジションN2から左方向に又は右方向にカム板35を移動させるだけで、第1可動範囲R3又は第2可動範囲R2に容易にかつ確実に到達させることができ、従って、制御を簡略化することができる。更に、カム板35を第1及び第2可動範囲R3,R2のそれぞれにて往復移動させるだけで、パンチ52a,52b,53,52cを第1グループとして又は第2グループとして確実に昇降移動させ得る構造が実現している。
【0062】
また、第1グループの中央に位置する共用パンチ52bをセンターに位置させた3孔穿孔状態と、該共用パンチ52bと2孔用専用パンチ53との中間をセンターとする2孔穿孔状態とが得られるが、互いのセンターをそれぞれの工程に対応させてずらすことにより、3孔用パンチの中央の共用パンチ52bを2孔用として兼用した合計4個のパンチ(及びダイ)のみにて、シート(被穿孔材)Pに対する適正な2孔と3孔の穿孔工程を自在に実施することができる。これにより、シートPに対して或るピッチで3孔を穿孔する工程と、これとは異なるピッチで2孔穿孔する工程とを、容易に切り換えることができる。
【0063】
更に、共用パンチ52bに対応するカム94が、該共用パンチ52bを、カム板35の左方向への移動時に移動させ得る第1V字状部86と、左方向への移動時に移動させ得る第2V字状部85とを直線状部87bを介して連続するように備えるので、簡単な構成からなるものでありながら、共用パンチ52bを第1グループとして、また第2グループとして自在に移動させ得る装置構造が実現している。
【0064】
<第2の実施の形態>
次に、図6乃至図11に沿って、本発明に係る孔明け装置の第2の実施形態について説明する。図6は本実施の形態における孔明け装置の一部破断した正面図、図7は図6の平面図、図8は図6の底面図、図9は図6中のE−E矢視側面図、図10は図6中のF−F矢視側面断面図、図11は第6図における移動範囲検知センサ及びラック等の部分を拡大して示す正面図である。
【0065】
本実施形態における孔明け装置60では、図6乃至図11に示すように、本体フレーム70上に、ブラケット71を介してモータ73が配設されている。該モータ73は、長尺のカム板75に減速歯車機構74を介して連動し、該カム板75を左右方向に移動させる駆動源として機能する。孔明け装置60は、モータ73、後述する移動範囲検知センサ76,77,78からの検知信号を入力することに基づいてモータ73を制御する制御手段80を有している。なお、図6における符号2は、モータ73の回転数等を検出するためのエンコーダを示す。
【0066】
減速歯車機構74は、図6に示すように、ブラケット71を貫通するモータ73の出力軸に固定された駆動歯車79と、ブラケット71に回転自在に支持された一体状の大径歯車81及び小径歯車82と、カム板75の同図左端部に該カム板75の長手方向に延設された形で連結されて小径歯車82と噛合するラック83とを有している。
【0067】
カム板75は、小径歯車82の回転をラック83を介して受けつつ、本体フレーム70における図6の紙面奥側の内面に沿って同図の左右方向に往復移動し得るように配設されている。また減速歯車機構74等は、モータ73の回転力を直線往復移動力に変換してカム板75に伝達し、後述のパンチ89a,89b,89c,89dを昇降移動させる駆動手段90を構成する。
【0068】
カム板75には、4つのカム11,12,13,14が図の左側から順に形成されており、カム12,14は、カム板75の長手方向と直交する方向において上下方向中央部よりも下側に相互に同じレベルになるように形成されている。またカム11,13は、カム板75の長手方向と直交する方向において上下方向中央部よりも上側に位置している。
【0069】
カム11〜14はそれぞれ、カム板75の長手方向に沿うように該カム板75の表裏を貫通している。カム11は、カム板75の長手方向と直交する方向における上下方向中央部にて該長手方向に所定幅で延びる第1直線部11aと、該第1直線部11aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、最も下降した部分(谷底)から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部15と、該V字状部15の右端部から第1直線部11aと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第2直線部11bと、を有する。
【0070】
カム12は、カム板75の長手方向と直交する方向における上下方向下側にて該長手方向に所定幅で延びるように形成され、かつ第2直線部11bに所定量オーバラップした第1直線部12aと、該第1直線部12aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部16と、該V字状部16の右端部から第1直線部12aと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第2直線部12bと、該第2直線部12bの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部17と、該V字状部17の右端部から直線部12a,12bと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第3直線部12cと、を有する。
【0071】
カム13は、カム板75の長手方向と直交する方向における上下方向上側にて該長手方向に所定幅で延びるように形成され、かつ第3直線部12cに所定量オーバラップした第1直線部13aと、該第1直線部13aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部18と、該V字状部18の右端部から第1直線部13aと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第2直線部13bと、該第2直線部13bの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部19と、該V字状部19の右端部から直線部13a,13bと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第3直線部13cと、を有する。
【0072】
カム14は、カム板75の長手方向と直交する方向における上下方向下側にて該長手方向に所定幅で延びるように形成され、かつ第3直線部13cに所定量オーバラップした第1直線部14aと、該第1直線部14aの右端部から所定角度で徐々に下降した後、谷底から所定角度で徐々に上昇する形状のV字状部22と、該V字状部22の右端部から第1直線部14aと同じレベルで長手方向に所定幅で延びる第2直線部14bと、を有する。
【0073】
更に孔明け装置60は、本体フレーム70の長手方向に所定のピッチで(所定の距離D3をあけて)該長手方向と直交する方向に昇降移動自在に支持された形で順次配置されたパンチ89a〜89dを有している。なお、図示はしないが、本実施形態においても、先の第1の実施形態におけるカム板位置決め機構99と同様に、カム板75を所定位置にて係止し得るカム板位置決め機構が設けられている。
【0074】
図6及び図11に示すように、前記移動範囲検知センサ76は、投光素子からなるもので、これに対応する受光素子は図示省略している。移動範囲検知センサ76は、カム板75の本体フレーム70に対する同図左右方向の移動に伴って遮光部材5,6,7にて順次遮光され、その際の検知結果を制御手段80に送信する。
【0075】
該制御手段80は、移動範囲検知センサ76が遮光部材5,6,7のいずれかで遮光された旨の検知結果に基づき、カム板75の本体フレーム70に対する移動位置を検出して、パンチ89a〜89dが最上昇位置(非穿孔位置)にあることを検出する。また制御手段80は、移動範囲検知センサ76が遮光部材5,6,7で遮光されずに通光している旨の検知結果に基づき、パンチ89a〜89dが最下降位置(穿孔位置)にあること(つまり、孔を明ける動作中であること)を検出する。
【0076】
また、前記移動範囲検知センサ77は、投光素子77aと、該投光素子77aから所定間隔をあけて対向配置された受光素子77bとからなり、移動範囲検知センサ78は、投光素子78aと、該投光素子78aから所定間隔をあけて対向配置された受光素子78bとからなる。
【0077】
移動範囲検知センサ77は、カム板75の本体フレーム70に対する同図左右方向の移動に伴って、投光素子77aと受光素子77bの間を移動する遮光板9により遮光又は通光され、その際の検知結果を制御手段80に送信する。該制御手段80は、移動範囲検知センサ77の検知結果に基づき、カム板75(つまり、パンチ89a〜89d)が移動範囲検知センサ76以外の位置で停止した後に再起動する場合、遮光部材5,6,7のいずれに移動させるべきかを決定する。
【0078】
移動範囲検知センサ78は、カム板75の本体フレーム70に対する同図左右方向の移動に伴って、投光素子78aと受光素子78bの間を移動する遮光板9により遮光又は通光され、その際の検知結果を制御手段80に送信する。該制御手段80は、移動範囲検知センサ78の検知結果に基づき、カム板75(つまり、パンチ89a〜89d)が第1可動範囲R4、第2可動範囲R2のいずれにあるのかを判定する。当該移動範囲検知センサ78は、第1可動範囲R4の第1グループと第2可動範囲R2の第2グループのいずれかを使用して4孔用又は2孔用の孔明け装置60として使用している場合に、仮に停電等のシステムダウンに起因する制御上の異状が発生したとしても、その際使用していない側のグループの可動範囲にカム板75が移動することを回避するためのものである。
【0079】
ここで、上述のパンチ89a〜89dとカム11〜14とは、以下に示すような所定の位置関係を有して構成される。なお、カム11〜14にはそれぞれ、パンチ89a〜89dにそれぞれ支持された後述のピン(フォロワー)25が摺動自在に係合している。
【0080】
即ち、カム板75が本体フレーム70の左端部にある図6に示す初期状態にあって、パンチ89aのピン25は第2直線部11bにおける右端部に位置し、パンチ89bのピン25は第3直線部12cの右端部に位置し、パンチ89cのピン25は第3直線部13cにおける右端部に位置し、パンチ89dのピン25は第2直線部14bにおける右端部に位置し、これによりパンチ89a〜89dの全てが最上昇位置(非穿孔位置)にある。この状態では、移動範囲検知センサ76,77の双方によるカム板75の検知に基づき、制御手段80がカム板75の初期状態を認識している。
【0081】
そして、4孔穿孔状態にあっては、パンチ89aのピン25はV字状部15に位置し、パンチ89bのピン25はV字状部17に位置し、パンチ89cのピン25はV字状部19に位置し、パンチ89dのピン25はV字状部22に位置する。即ち、4孔穿孔状態では、カム板75が第1可動範囲R4に移行して、カム11のV字状部15でパンチ89aを、V字状部17でパンチ89bを、V字状部19でパンチ89cを、V字状部22でパンチ89dをそれぞれに最下降位置(穿孔位置)に下降させる。この状態では、移動範囲検知センサ76,77の検知に基づき、制御手段80が4孔穿孔状態を認識している。
【0082】
また2孔穿孔状態にあっては、パンチ89aのピン25は第1直線部11aに位置し、パンチ89bのピン25はV字状部16に位置し、パンチ89cのピン25はV字状部18に位置し、パンチ89dのピン25は第1直線部14aに位置する。即ち、2孔穿孔状態では、カム板75が第2可動範囲R2に移行して、カム11の第1直線部11aでパンチ89aを、第1直線部14aでパンチ89dを最上昇位置にそれぞれ保持しつつ、カム12のV字状部16でパンチ89bを、V字状部18でパンチ89cをそれぞれ最下降位置に下降させる。この状態では、移動範囲検知センサ76,77の検知に基づき、制御手段80が2孔穿孔状態を認識している。
【0083】
前記初期状態、4孔穿孔状態、及び2孔穿孔状態を実現するために、前記カム11〜14は、相互に以下のような位置関係を有している。即ち、図6に示すように、4孔用のパンチ89a,89b,89c,89dのピッチ(D3)と、これらに対応するV字状部15,17,19,22の各谷底のピッチとが互いに略々等しくなるように設定されている。
【0084】
また、カム11の第2直線部11b、カム12の第3直線部12c、カム13の第3直線部13c及びカム14の第2直線部14bは、この順に僅かずつ長くなるように形成されている。更に、カム12の第2直線部12b及びカム13の第2直線部13bは、この順に僅かずつ長くなるように形成されている。これは、第1グループのパンチ89a〜89dを、或いは第2グループのパンチ89b,89cを最下降位置に移動させて穿孔する際、カム板75の移動時に各グループのパンチの下降タイミングを僅かずつずらすことで、モータ73に加わる負荷を軽減するための構成である。
【0085】
そして、カム11の第2直線部11bとカム12の第1直線部12aとが互いにオーバラップするように設定され、カム12の第3直線部12cとカム13の第1直線部13aとが互いにオーバラップするように設定され、カム13の第3直線部13cとカム14の第1直線部14aとが互いにオーバラップするように設定されている。
【0086】
また、図6乃至図10に示すように、本体フレーム70の下面にはスペーサ(図示せず)を介して脚27が取り付けられており、該スペーサは、本体フレーム70の下面と脚27の上面27aとの間にシートPの通過を許容する隙間S1を形成している。
【0087】
図10に示すように、本体フレーム70には、該フレーム70の上面と下面とを貫通するように、上下で8個のパンチ支持孔28…が形成されており、パンチ支持孔28…にはそれぞれパンチ89a〜89dが摺動自在に嵌挿されている。上面27aには、本体フレーム70の下面の各パンチ支持孔28…にそれぞれ対向するように、4個のダイ29…が形成されている。パンチ89a〜89dは、等しいピッチ(D3)で配列されて、シートPに4つの孔を明ける4孔用の第1グループのパンチと、2つの孔を明ける2孔用の第2グループのパンチとを構成する。
【0088】
そして、例えばパンチ89dには、その移動方向(図の上下方向)と直交する方向に貫通孔10が貫通穿設されており、該貫通孔10には、該孔10及び第2直線部14bを貫通して本体フレーム70の上下方向の案内長孔26に向かって突出するように、ピン25が支持されている。案内長孔26は、その長手方向が上下方向を向くように、本体フレーム70の側壁を貫通して形成されている。ピン25の両端には、着脱可能な止め輪(図示せず)が嵌着される。
【0089】
更にパンチ89dには、対応するダイ29側に付勢するように、本体フレーム70の上縁部と、パンチ89dに固着された止め輪との間にばね(図示せず)が介在される。パンチ89dは、該ばねによって下方に付勢されるが、ピン25がカム14の第2直線部14bを貫通してこれに受け止められているため、本体フレーム70から抜け落ちることはない。なお、ここではパンチ89dの支持構造を中心に述べたが、他のパンチ89a〜89cの支持構造もこれと同じなので、その説明は省略する。
【0090】
また、カム板75における図6の左端部には、ラック83が連結されている。図11を併せて参照すると、該ラック83の背面(同図の紙面奥側)には、カム板75の長手方向(同図左右方向)に沿って延設された前記遮光板9が連結されている。本体フレーム70の同図左端部には連結板8が固定ネジ3で連結され、かつ該連結板8には、上述した移動範囲検知センサ76、移動範囲検知センサ77、及び移動範囲検知センサ78が、所定のピッチで順次配置されている。当該移動範囲検知センサ78は、本実施の形態において後述のストッパ23を配置することにより、その搭載を省略され得る。
【0091】
本体フレーム70の図の左方向への延設部分70aには、ラック83の移動時のガタつきを抑えるためのスライドガイド4が連結されている。スライドガイド4は、例えば合成樹脂材料からなるもので、そのスライド溝(図示せず)の適宜の位置に、上記ストッパ(移動規制手段)23を設けることができる。
【0092】
このストッパ23は、スライドガイド4の作製時に、同じ合成樹脂材料によって同時にかつ一体に形成することができるもので、例えば、カム板75を第2可動範囲R2になるまで図6右方向に移動させた状態での、ラック83の同図左端部に対面する位置に設けることができる。
【0093】
この際、カム板75は、図の左側をストッパ23にて移動規制された状態で第2可動範囲R2内での往復動作は行い得るが、仮に、停電時等のシステムダウンでエンコーダ2によるモータ回転位置が判別困難となってカム板75が図の左方向の第1可動範囲R4に移動されようとしても、上記ストッパ23がその移動を確実に阻止するので、第2可動範囲R2での稼動時に第1可動範囲R4に切り換わることはない。つまり、このようなストッパ23を用いた簡単な構成により、上述した移動範囲検知センサ78の設置を省略することができる。
【0094】
図11に示すように、カム板75におけるラック83の近傍位置には、該カム板75の移動に伴って上記検知センサ76に順次対向し得るように、前述の遮光部材5,6,7が連結されている。なお、移動範囲検知センサ76及び遮光部材5,6,7は、紙面手前−奥方向での位置が、移動範囲検知センサ77,78及び遮光板9とは異なっている。
【0095】
以上の本孔明け装置60は、図6の初期状態をホームポジションとするとき、該ホームポジションからカム板75を同図右方向に一段階移動させる際に到達する範囲が第1可動範囲R4であり、該第1可動範囲R4の左端にあるニュートラル位置(即ち、第2直線部12bや第2直線部13bなどによる中立な位置)からカム板75を同図右方向に更に一段階移動させる際に到達する範囲が第2可動範囲R2である。該第2可動範囲R2の左端にも、ニュートラル位置(即ち、第1直線部12aや第1直線部13aなどによる中立な位置)がある。
【0096】
上記第1可動範囲R4内にてカム板75を往復移動させることに基づき、4孔用パンチ89a,89b,89c,89dを第1グループとして用いた4孔穿孔状態が得られ、また上記第2可動範囲R2内にてカム板75を往復移動させることに基づき、2孔用パンチ89b,89cを第2グループとして用いた2孔穿孔状態が得られる。
【0097】
例えば、上記ホームポジションをN2とするとき、該ホームポジションN2から図6右方向に順次設けられた第1可動範囲R4及び第2可動範囲R2には、該第1可動範囲R4におけるホームポジションN2と反対側に第1ニュートラル位置N1が位置し、かつ第2可動範囲R2におけるホームポジションN2と反対側には第2ニュートラル位置N3が位置していることになる。この状態はつまり、
N1←→4孔穿孔状態(R4)←N2→2孔穿孔状態(R2)←→N3
として表すことができる。
【0098】
(4つの孔を明ける際の動作説明)
本孔明け装置60は、モータ73を停止した図6の初期状態(初期位置)において、パンチ89aのピン25がカム11の第2直線部11bに、パンチ89bのピン25がカム12の第3直線部12cに、パンチ89cのピン25がカム13の第3直線部13cに、パンチ89dのピン25がカム14の第2直線部14bにそれぞれ位置し、全てのパンチが最上昇位置に保持されている。
【0099】
この初期状態において隙間S1にシートPが送り込まれて、所定の位置に位置決め停止され、先の孔明け装置30の場合と同様に、制御手段80が孔明け装置60を作動状態にする。この時点で、穿孔作業を4孔として行う旨の設定が予めなされている。
【0100】
そしてモータ73が、カム板75を、初期状態から4孔穿孔状態に移行させるように回転駆動すると、カム板75が図6右方向に移動を開始して、パンチ89a〜89dの各ピン25を、それぞれ対応するカム11〜14のV字状部15,17,19,22の各谷底に向けて案内する。これにより、第1グループとしての全パンチ89a〜89dが最下降位置にそれぞれ下降し、シートPに孔を明けてダイ29(図10)に係合する。同時に、移動範囲検知センサ76,77の検知結果に基づき、制御手段80が、第1グループのパンチ89a〜89dによりシートPに4つの孔が明けられた旨を認識する。
【0101】
その後、モータ73が同方向に回転駆動し、第1可動範囲R4内においてカム板75を更に右方向に移動させるので、全パンチ89a〜89dはそれぞれ、カム11〜14の各対応する第1直線部11a、第2直線部12b、第2直線部13b及び第1直線部14aにより最上昇位置に上昇させられて保持される。この時点で、4つの孔を明けられたシートPが隙間S1から抜き取られて、新たなシートPが隙間S1に送り込まれる。
【0102】
この状態でモータ73が所定量逆回転すると、カム板75が同図左方向に移動することで、4孔用パンチ89a〜89dにより新たなシートPに4つの孔が明けられる。該カム75が更に左方向に移動すると、パンチ89a〜89dの各ピン25が第2直線部11b、第3直線部12c、第3直線部13c及び第2直線部14bにそれぞれ導かれ、該カム板75は初期状態に復帰する。
【0103】
(2つの孔を明ける際の動作説明)
まず、パンチ89a〜89dがそれぞれ、カム11〜14の各対応する第1直線部11a、第2直線部12b、第2直線部13b及び第1直線部14aに位置して最上昇位置に保持され、かつモータ73が停止した状態において、隙間S1にシートPが送り込まれて所定の位置で停止すると、制御手段80が孔明け装置60を作動状態にする。この時点で、穿孔作業を2孔として行う旨の設定が予めなされている。
【0104】
そしてモータ73が、カム板75を、上述の状態から2孔穿孔状態に移行させるように回転駆動すると、カム板75が図6右方向に移動を開始し、2孔穿孔時には使用されないパンチ89a及び89dの各ピン25が、第1直線部11a及び第1直線部14aにそのまま保持されて、最上昇位置に維持される。これに対し、4孔穿孔時と同様に使用されるパンチ89b,89cは、各ピン25が、第2直線部12bからV字状部16の谷底へ、第2直線部13bからV字状部18の谷底へ向けてそれぞれ案内される。これにより、2孔穿孔用のパンチ89b,89cがそれぞれ最下降位置(穿孔位置)に下降し、シートPに孔を明けてダイ29に係合する。この際、移動範囲検知センサ77の検知に基づき、制御手段80が、第2グループのパンチ89b,89cによりシートPに2つの孔が明けられた旨を認識する。
【0105】
その後、制御手段80からの信号に応答してモータ73が同方向に回転駆動し、第2可動範囲R2内においてカム板75を更に右方向に移動させるので、全パンチ89a〜89dはそれぞれ、カム11〜14の各対応する第1直線部11a、第1直線部12a、第1直線部13a、及び第1直線部14aにより最上昇位置に保持される。この時点で、2つの孔を明けられたシートPが隙間S1から抜き取られて新たなシートPが隙間S1に送り込まれる。そして、この状態にてモータ73が所定量逆回転すると、カム板75が同図左方向に移動することで、2孔用パンチ89b,89cにより新たなシートPに2つの孔が明けられる。
【0106】
以上のように、本実施形態における孔明け装置60によると、第1の実施形態と略々同様の作用効果が得られると共に、以下のような効果を奏することができる。
【0107】
すなわち、本孔明け装置60では、カム板75をホームポジションN2からカム板75を一方向に一段階進め、又は第1可動範囲R4から同じ方向に更に一段階進めるだけで、第1可動範囲R4又は第2可動範囲R2に容易にかつ確実に到達させることができ、制御を簡略化することができる。また、第1及び第2可動範囲R4,R2のそれぞれにてカム板75を往復移動させるだけで、パンチ89a,89b,89c,89dを第1グループとして又は第2グループとして確実に昇降移動させることができる。
【0108】
更に、第1グループのパンチを4個の偶数とし、第2グループ用パンチを、第1グループのパンチ89a〜89dのうちの中央の2個(89b,89c)としたので、第1グループの4個のパンチ89a〜89dの中央部分(つまりパンチ89b,89cの中間部分)をセンターとする4孔穿孔状態と、第1グループにおける中央の2個のパンチ89b,89cの中間部分をセンターとする2孔穿孔状態とを、互いのセンターを各工程に対応させてずらすことなく、シートPに対する4孔(4個以上の偶数でも勿論可能)と2孔の適正な穿孔工程を自在に実施することができる。
【0109】
そして、ストッパ23を設ける場合には、該ストッパ23でカム板75の反対側の可動範囲への移動を単に規制するだけの極めて簡単な構成により、カム板75の移動検出のための移動範囲検知センサ78を削減することができる。つまり、孔明け装置60を複写機等に装備する際、反対側のグループへの移動を移動範囲検知センサ78で検知することに基づき、実際に多用する側のグループのみを使用できるように制御することが行われる。例えば、停電等でシステムダウンした状態から電力供給が再開されて制御がし直される場合、通常は、停電前に使用されていたグループ側にカム板75を移行させる制御を、移動範囲検知センサ78の検知結果に基づいて行う。従って、当該センサ78の存在は必須であるが、本実施の形態では、ストッパ23を設置して該センサ78を省略する場合、カム板75の反対側への移動そのものをストッパ23で規制することができるようになる。その場合、比較的高価な上記センサ78の削減により、製品価格を低下させることが可能になる。つまり、可動範囲検知センサ78自身のコストに加え、制御手段80における制御基板(図示せず)に要するコストも削減でき、例えば数万セットの生産数の場合には大幅なコストダウンが見込め、センサや制御に起因するトラブルを減少させ、省メンテナンスにも貢献できるようになる。
【0110】
そして、合成樹脂製のスライドガイド4のスライド溝における適宜の位置を合成樹脂材料で閉塞して上記ストッパ23とすることにより、ラック83の図6左方向への移動を或る位置で確実に規制するように構成できる。或いはこれに代えて、本体フレーム70におけるカム板75の同図右端部に対応する適宜の位置に、適宜の材料からなる部材(例えば金属製のビス)をストッパ23として固定することにより、ラック83の同図右方向への或る位置からの移動を規制するように構成でき、その場合、上記と同様の効果を得ることができる。
【0111】
また、ストッパ23をスライドガイド4のスライド溝に形成する場合には、スライドガイド4の金型に対する修正コストのみを考慮すれば良く、従ってコストアップを招くことなく極めて廉価に対処することができる。
【0112】
なお、上記ストッパ23を設けることで可動範囲検知センサ78を削減するような構成は、前述した第1の実施形態においても同様に適用可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上のように、本発明に係る孔明け装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機器等の画像形成装置の本体に、或いは印刷機に装備するものとして有用であり、特に部品点数の削減による装置簡略化が要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0114】
30,60 孔明け装置
35,75 カム板
44,84,94,11,12,13,14 カム
45,85,86,95,96,15,16,17,18,19,22 V字状部
46a、46b、87a、87b、87c、97a、97b、97c又は11a,11b,12a,12b,12c,13a,13b,13c,14a,14b 直線部
52a,52c,89a,89d パンチ
52b,89b,89c パンチ(共用パンチ)
53 パンチ(2孔専用パンチ)
54,29 ダイ
62,25 ピン(フォロワー)
85,16,18 V字状部(第2のV字状部)
86,17,19 V字状部(第1のV字状部)
87a,12a,13a 第1直線部(他端側の直線部)
87b,12b,13b 第2直線部(中間の直線部)
87c,12c,13c 第3直線部(一端側の直線部)
P シート(シート状の被穿孔材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被穿孔材に孔を明ける複数のパンチ及びダイと、該パンチの移動方向と直交する方向に往復移動可能なカム板と、該カム板と前記複数のパンチとの間にて、前記カム板の往復移動動作を前記パンチの非穿孔位置、穿孔位置への昇降移動動作に変換する複数のカム及び該カムに係合するフォロワーと、を備えてなる孔明け装置において、
前記複数のパンチは、所定数のパンチを有する第1グループと、該第1グループのいずれかの前記パンチを含み、かつ前記第1のグループの前記所定数より数が少ないパンチを有する第2グループと、に区分され、
前記第1グループに対応する前記カム及び前記フォロワーは、前記カム板の第1可動範囲での往復移動により前記第1グループの前記パンチを昇降移動させることによって前記所定数の穿孔状態を現出するように構成され、
前記第2グループに対応する前記カム及び前記フォロワーは、前記カム板の第2可動範囲での往復移動により前記第2グループの前記パンチを昇降移動させることによって、前記所定数より少数の穿孔状態を現出するように構成され、
前記カムは、それぞれ往復移動方向に延びる前記カム板に貫通して形成され、前記パンチを前記非穿孔位置から前記穿孔位置に移動しそして再び前記非穿孔位置に移動する、第1のグループ及び第2のグループによるそれぞれの穿孔数の合計数のV字状部と、前記V字状部に連通し各前記パンチを非穿孔位置に保持する直線部と、を有し、
前記第1グループ又は第2グループに専用する前記パンチに対応する前記カムは、前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲の前記穿孔状態を現出する側において前記V字状部に前記カムフォロワーを係合し、前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲の前記穿孔状態を現出しない側においてその全域に亘って前記直線部に前記カムフォロワーを係合し続け、
前記第1グループ及び前記第2グループに共用する前記パンチに対応する前記カムは、該パンチ専用として他のカムと分離した独立したカムからなり、前記第1可動範囲において前記カムフォロワーと係合する第1の前記V字状部と、前記第2可動範囲において前記カムフォロワーに係合する第2の前記V字状部と、前記第1のV字状部及び前記第2のV字状部との間を連通して前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲において前記カムフォロワーと係合する中間の前記直線部と、前記第1のV字状部から前記中間の直線部と反対側に延びて前記第1可動範囲において前記カムフォロワーに係合する一端側の前記直線部と、前記第2のV字状部から前記中間の直線部と反対側に延びて前記第2可動範囲において前記カムフォロワーに係合する他端側の前記直線部と、を有し、前記一端側の直線部及び前記他端側の直線部の少なくとも一方が、該カムに隣接するカムの前記直線部に対して前記パンチの移動方向に異なる位置にあってかつ前記カム板の移動方向に所定量オーバラップして配置されてなる、
ことを特徴とする孔明け装置。
【請求項2】
前記第1グループの前記パンチは、所定ピッチで配列した3個からなり、前記第1グループの前記第2グループにて共用し得る共用パンチが、前記3個のパンチの中央に位置するパンチであり、かつ
前記第2グループの前記パンチは、前記共用パンチと、前記3個のパンチの内の一方の端部側に位置するパンチと前記共用パンチとの間に配置した2孔用専用パンチとの2個からなり、
前記共用パンチ専用の前記カムは、前記一端側の直線部が前記2孔用専用パンチ用の前記カムの直線部に対してオーバラップして配置されてなる、
請求項1に記載の孔明け装置。
【請求項3】
前記第1グループの前記パンチは、所定ピッチで配列した4個からなり、前記第2グループ用パンチは、前記第1グループの両端部のパンチの間の2個の共用パンチからなり、
前記2個の共用パンチ用の各前記カムは、前記一端側及び他端側の直線部がそれぞれ隣接するカムの直線部に対してオーバラップして配置されてなる、
請求項1に記載の孔明け装置。
【請求項1】
シート状の被穿孔材に孔を明ける複数のパンチ及びダイと、該パンチの移動方向と直交する方向に往復移動可能なカム板と、該カム板と前記複数のパンチとの間にて、前記カム板の往復移動動作を前記パンチの非穿孔位置、穿孔位置への昇降移動動作に変換する複数のカム及び該カムに係合するフォロワーと、を備えてなる孔明け装置において、
前記複数のパンチは、所定数のパンチを有する第1グループと、該第1グループのいずれかの前記パンチを含み、かつ前記第1のグループの前記所定数より数が少ないパンチを有する第2グループと、に区分され、
前記第1グループに対応する前記カム及び前記フォロワーは、前記カム板の第1可動範囲での往復移動により前記第1グループの前記パンチを昇降移動させることによって前記所定数の穿孔状態を現出するように構成され、
前記第2グループに対応する前記カム及び前記フォロワーは、前記カム板の第2可動範囲での往復移動により前記第2グループの前記パンチを昇降移動させることによって、前記所定数より少数の穿孔状態を現出するように構成され、
前記カムは、それぞれ往復移動方向に延びる前記カム板に貫通して形成され、前記パンチを前記非穿孔位置から前記穿孔位置に移動しそして再び前記非穿孔位置に移動する、第1のグループ及び第2のグループによるそれぞれの穿孔数の合計数のV字状部と、前記V字状部に連通し各前記パンチを非穿孔位置に保持する直線部と、を有し、
前記第1グループ又は第2グループに専用する前記パンチに対応する前記カムは、前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲の前記穿孔状態を現出する側において前記V字状部に前記カムフォロワーを係合し、前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲の前記穿孔状態を現出しない側においてその全域に亘って前記直線部に前記カムフォロワーを係合し続け、
前記第1グループ及び前記第2グループに共用する前記パンチに対応する前記カムは、該パンチ専用として他のカムと分離した独立したカムからなり、前記第1可動範囲において前記カムフォロワーと係合する第1の前記V字状部と、前記第2可動範囲において前記カムフォロワーに係合する第2の前記V字状部と、前記第1のV字状部及び前記第2のV字状部との間を連通して前記第1可動範囲及び前記第2可動範囲において前記カムフォロワーと係合する中間の前記直線部と、前記第1のV字状部から前記中間の直線部と反対側に延びて前記第1可動範囲において前記カムフォロワーに係合する一端側の前記直線部と、前記第2のV字状部から前記中間の直線部と反対側に延びて前記第2可動範囲において前記カムフォロワーに係合する他端側の前記直線部と、を有し、前記一端側の直線部及び前記他端側の直線部の少なくとも一方が、該カムに隣接するカムの前記直線部に対して前記パンチの移動方向に異なる位置にあってかつ前記カム板の移動方向に所定量オーバラップして配置されてなる、
ことを特徴とする孔明け装置。
【請求項2】
前記第1グループの前記パンチは、所定ピッチで配列した3個からなり、前記第1グループの前記第2グループにて共用し得る共用パンチが、前記3個のパンチの中央に位置するパンチであり、かつ
前記第2グループの前記パンチは、前記共用パンチと、前記3個のパンチの内の一方の端部側に位置するパンチと前記共用パンチとの間に配置した2孔用専用パンチとの2個からなり、
前記共用パンチ専用の前記カムは、前記一端側の直線部が前記2孔用専用パンチ用の前記カムの直線部に対してオーバラップして配置されてなる、
請求項1に記載の孔明け装置。
【請求項3】
前記第1グループの前記パンチは、所定ピッチで配列した4個からなり、前記第2グループ用パンチは、前記第1グループの両端部のパンチの間の2個の共用パンチからなり、
前記2個の共用パンチ用の各前記カムは、前記一端側及び他端側の直線部がそれぞれ隣接するカムの直線部に対してオーバラップして配置されてなる、
請求項1に記載の孔明け装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−152895(P2012−152895A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87299(P2012−87299)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2004−544997(P2004−544997)の分割
【原出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【出願人】(000207425)大同工業株式会社 (45)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2004−544997(P2004−544997)の分割
【原出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【出願人】(000207425)大同工業株式会社 (45)
【Fターム(参考)】
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