説明

孔版原紙係止装置

【課題】クランプ板を開くときに、クランプ板の振動を抑制して確実に開く。
【解決手段】回転自在な円筒状の版胴11の外周面11aの一部に孔版原紙Gの搬送方向の先端部Gaをクランプして、孔版原紙Gを版胴Gの外周面Gaに巻回させるように構成した孔版原紙係止装置10において、版胴11の外周面11aの一部に長手方向を版胴11の軸方向に沿わせて取り付けられた版取付座21と、版取付座21上に長手方向を版胴11の軸方向に沿わせて取り付けられた磁石板22と、磁石板22と対向した長尺なクランプ面30aを有し、版取付座22上に軸支されて開閉可能に取り付けられたクランプ板30と、クランプ板30の長手方向の一端側と他端側とを異なるタイミングで開くクランプ板開閉手段(44L,44R)と、を備えたことを特徴とする孔版原紙係止装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転自在な円筒状の版胴の外周面の一部に孔版原紙をクランプして、孔版原紙を版胴の外周面に巻回させるように構成した孔版原紙係止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、孔版原紙係止装置は、周知の孔版印刷装置内で回転自在な円筒状の版胴に設けられており、版胴の外周面の一部に設けた版取付座上に取り付けられた磁石板と、版取付座上に磁石板と対向して開閉可能に取り付けられたクランプ板との間に製版済みの孔版原紙の搬送方向の先端部をクランプさせて、この孔版原紙を版胴の外周面に沿って巻回させるように構成されている。
【0003】
そして、周知の孔版印刷装置では、給紙部から送られた印刷用紙を版胴の外周面に巻回させた孔版原紙側にプレスローラで押圧しながら版胴内に供給したインクを孔版原紙に形成した穿孔画像部分を通過させて、印刷用紙上にインク画像を印刷するものであり、1版分の孔版原紙により同一のインク画像を多数枚印刷することができるので多用されている。
【0004】
上記した孔版原紙係止装置において、本出願人は、先に、製版部から搬送された製版済みの孔版原紙の先端部を適宜導いて版胴の外周面に一部に係止させる際に、孔版原紙のシワや、孔版原紙の斜め着版を防止できる孔版原紙係止装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に開示された孔版原紙係止装置は、ここでの図示を省略するが、回転自在な円筒状の版胴の外周面の一部に設けられている。
【0006】
上記した孔版原紙係止装置は、版胴の外周面の一部に長手方向を版胴の軸方向に沿わせて取り付けられた版取付座と、版取付座上に長手方向を版胴の軸方向に沿わせて取り付けられた磁石板と、版取付座上に磁石板と対向して長手方向の一端側と他端側とを一対の第1回動軸を介して揺動可能(開閉可能)に取り付けられ且つクラン部先端が櫛歯形状に形成されたクランプ板と、製版済みの孔版原紙を版胴に導く如く板片状とされて版胴側に向く先端がクランプ板のクランプ部先端の櫛歯形状を通す如く櫛歯形状に形成されたガイド板と、使用済みの孔版原紙の先端部をクランプ板から引き出すために版取付座上に長手方向の一端側と他端側とを一対の第2回動軸を介して揺動可能(開閉可能)に取り付けられた跳ね上げ部材と、を備えている。
【0007】
更に、上記した孔版原紙係止装置は、クランプ板の長手方向の一端側及び他端側でクランプ部側とは一対の第1回動軸を介した反対側に設けられた一対の第1接触子と、跳ね上げ部材の長手方向の一端側及び他端側で跳ね上げ部側とは一対の第2回動軸を介した反対側に設けられた第2接触子と、第1接触子及び第2接触子に対して接離する位置に移動可能に設けられて、版胴の回転位置に応じて第1接触子及び第2接触子に当接して押圧し、クランプ板と跳ね上げ部材の各開放角度を設定する各カム溝を有したカム部材と、カム部材を第1接触子及び第2接触子に対して接離する位置に移動させるカム部材駆動手段とを備えている。
【0008】
そして、クランプ板を磁石板から引き剥がす如く開放させて、磁石板との間で製版部からの孔版原紙の先端部を受け取る際、ガイド板の先端の櫛歯形状にクランプ板の揺動端部の櫛歯形状を通してガイド板の先端がクランプ板と磁石板との間に位置するようにクランプ板の開放角度を設定し、且つ、クランプ板との間にガイド板の先端を位置させるように磁石板から引き剥がす如く開放した跳ね上げ部材の開放角度を設定している。
【0009】
これにより、クランプ板と磁石板との間に孔版原紙を適宜導くことにより、孔版原紙の先端部を折るようにして挟み込むことがなく、版胴に着版した孔版原紙にシワが生じたり、孔版原紙が斜めに着版されてしまう不都合を無くして確実な着版を行うことができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−225540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1に開示された孔版原紙係止装置では、製版済みの孔版原紙を磁石板とクランプ板との間でクランプするとき、又は、クランプされた使用済みの孔版原紙を版胴の外周面から取り外すときに、版胴の一端及び他端よりも各外側に設けた一対のカム部材の各カム溝に、クランプ板の長手方向の一端側と他端側とに設けた一対の第1接触子を当接させることで、クランプ板の長手方向の一端側と他端側とを同じタイミングで開いている。
【0012】
ところで、一般的な孔版印刷装置に適用される孔版原紙係止装置において、円筒状の版胴は、図12(a)に示す如く、用紙最大サイズとしてA3サイズ(420mm×297mm)の印刷用紙を印刷するために、A3サイズの印刷用紙の長手方向及びA3サイズ用の孔版原紙の長手方向が版胴の外周面に沿って巻回できるように版胴の直径φDがφ180mm程度に設定されている。
【0013】
これに伴って、A3サイズの印刷用紙の短手方向の長さ297mmが版胴の軸方向に沿うので、A3サイズ用の孔版原紙の短手方向である幅方向の寸法は版胴の軸方向の長さLと対応している。
【0014】
尚、A3サイズ以下で、B4サイズ(364mm×257mm),A4サイズ(297mm×210mm),B5サイズ(257mm×182mm)など複数種の印刷用紙を印刷する場合でも、インクが版胴の外周面に付着しないように版胴の外周面にはA3サイズ以下の画像情報を製版したA3サイズ用の孔版原紙を巻回させている。
【0015】
一方、最近、A3サイズ(420mm×297mm)の印刷用紙よりも大型サイズで例えばA2サイズ(594mm×420mm)の印刷用紙を印刷できる孔版印刷装置の開発が要望されている。
【0016】
この際、A2サイズの印刷用紙への印刷を可能とする孔版印刷装置に適用される孔版原紙係止装置の開発にあたって、図12(b)に示す如く、版胴の直径を大径化せずに版胴の円周方向の長さをA2サイズの印刷用紙の短手方向の長さ420mmに対応させて版胴の直径φDを上記と同じ値であるφ180mm程度に設定した場合に、A2サイズ用の孔版原紙の幅方向の長さはA2サイズの印刷用紙の長手方向の長さ594mmと対応すると共に、A3サイズ用の版胴に対して2倍の長さに形成されたA2サイズ用の版胴の軸方向の長さ2Lと対応するので、磁石板及びクランプ板並びに跳ね上げ部材の各長さもA3サイズ用に対して2倍になってしまう。
【0017】
これにより、A2サイズに対応できる孔版原紙係止装置を開発する場合に、特許文献1に開示された孔版原紙係止装置の技術的思想を適用して、A2サイズ用の孔版原紙の先端部を版胴の外周面の一部に設けた孔版原紙係止装置によりクランプするときに、A3サイズ用の孔版原紙の場合に対して2倍の長さになったクランプ板と対応して、磁石板の長さもA3サイズ用の場合よりも2倍長くなるために、クランプ板へのクランプ力が倍増してしまう。
【0018】
この状態でクランプ板を開く場合、クランプ板の長手方向の一端側と他端側とを同じタイミングで開くためには、図13に示したように大きな力が必要となるために、カム部材及びこのカム部材を駆動するカム部材駆動手段を強力化しなければならないという問題点が生じてしまう。
【0019】
更に、A2サイズ用のクランプ板の左右側を同時に開いたときに、力の作用点側となる長手方向の一端側(左端側)と他端側(右端側)とが磁石板から先に脱磁されるが、磁性金属板を用いて長尺に形成したクランプ板のクランプ面は厚みが例えば1mm程度と薄いために、図14に示す如く、クランプ板の長手方向の中央部位近傍ほど撓み易く、且つ、中央部位近傍は一端側及び他端側よりも遅れて脱磁されてしまう。
【0020】
これに伴って、クランプ板のクランプ面の中央部位近傍は上下方向に大きく振動し、振動しているクランプ面の中央部位近傍が例えば孔版原紙を排版するために版胴の上部近傍に設置した排版ユニットの搬送ローラなどに干渉したり衝突を起こすなどの問題点も生じてしまう。
【0021】
そこで、A3サイズの印刷用紙よりも大型サイズで例えばA2サイズの印刷用紙を印刷可能とする孔版印刷装置内に適用される孔版原紙係止装置の開発に伴ってあたって、回転自在な円筒状の版胴の直径を大径化せずに、A2サイズ用として版胴の軸方向の長さを長尺に形成した場合、孔版原紙係止装置のクランプ板を開くときに、クランプ面の振動を抑制でき、且つ、クランプ板を確実に開くことができる孔版原紙係止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、回転自在な円筒状の版胴の外周面の一部に孔版原紙の搬送方向の先端部をクランプして、前記孔版原紙を前記版胴の外周面に巻回させるように構成した孔版原紙係止装置において、
前記版胴の外周面の一部に長手方向を該版胴の軸方向に沿わせて取り付けられた版取付座と、
前記版取付座上に長手方向を前記版胴の軸方向に沿わせて取り付けられた磁石板と、
前記磁石板と対向した長尺なクランプ面を有し、前記版取付座上に軸支されて開閉可能に取り付けられたクランプ板と、
前記クランプ板の長手方向の一端側と他端側とを異なるタイミングで開くクランプ板開閉手段と、
を備えたことを特徴とする孔版原紙係止装置である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の孔版原紙係止装置によると、例えば、製版済みの孔版原紙を磁石板とクランプ板のクランプ面との間でクランプするとき、又は、クランプされた使用済みの孔版原紙を版胴の外周面から取り外すときに、クランプ板の長手方向の一端側と他端側とを異なるタイミングで開いているので、クランプ板のクランプ面上で捩れ変形が生じ、この捩れ変形によりクランプ面垂直方向に対する断面二次モーメントが大きくなり、クランプ面の剛性が高まるために、クランプ板の長手方向の他端側(又は一端側)を開く力を小さくすることができる。
【0024】
また、クランプ板の長手方向の一端側と他端側とを異なるタイミングで開いたときに、上記した捩れ変形によりクランプ面垂直方向に対する断面二次モーメントが大きくなっているので、クランプ面に生じる振動の振幅を小さく抑制することができるために、クランプ面が微小に振動しても、クランプ面は例えば孔版原紙を排版するために版胴の上部近傍に設置した排版ユニットのローラなどに干渉したり衝突を起こすなどの問題点も生じないので、孔版原紙係止装置の品質及び信頼性向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a),(b)は本発明に係る孔版原紙係止装置を適用した孔版印刷装置において、版胴が版胴基準位置に至っている状態を示した側面図,A部拡大図である。
【図2】図1に示した孔版原紙クランプ部及びカム板駆動部を示した平面図である。
【図3】図1,図2に示したカム板駆動部を示した斜視図である。
【図4】(a),(b)は図3に示した左右の第2カム板を一部拡大して示した正面図である。
【図5】(a),(b)は版胴の外周面の一部に設けた印孔版原紙クランプ部が着版位置に至ってクランプ板を開く状態を示した側面図,B部拡大図である。
【図6】クランプ板の長手方向の左端側と右端側とを異なるタイミング開く状態を示したタイミング図である。
【図7】(a)〜(c)はクランプ板の第1動作であり、クランプ板の長手方向の左右端側が閉じている状態を説明する図である。
【図8】(a)〜(c)はクランプ板の第2動作であり、クランプ板の長手方向の左端側を右端側よりも先に開く状態を説明する図である。
【図9】(a)〜(c)はクランプ板の第3動作であり、クランプ板の長手方向の右端側を左端側よりも後で開く状態を説明する図である。
【図10】(a),(b)は印刷用紙への印刷状態を示した側面図,C部拡大図である。
【図11】(a),(b)は孔版原紙の排版状態を示した側面図,D部拡大図である。
【図12】(a)はA3サイズの印刷用紙を印刷するための版胴を示し、(b)はA2サイズの印刷用紙を印刷するための版胴を示した斜視図である。
【図13】A2サイズ用の版胴を用いた際、クランプ板の長手方向の一端側(左端側)と他端側(右端側)とを同時に開くのに大きな力が必要となる状態を示した縦断面図である。
【図14】A2サイズ用の版胴を用いた際、クランプ板の長手方向の一端側(左端側)と他端側(右端側)とを同時に開いたときに、クランプ板のクランプ面の長手方向の中央部位近傍が上下方向に大きく振動する状態を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明に係る孔版原紙係止装置の最適な一実施例について、図1〜図11を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0027】
図1(a)に示す如く、本発明に係る孔版原紙係止装置10は、孔版印刷装置1の内部中央部位近傍に設けられた回転自在な円筒状の版胴11に適用されている。
【0028】
この孔版原紙係止装置10は、中心軸12と一体に回転する版胴11と、版胴11の外周面11aの一部に設けられたクランプ部20と、版胴11の軸方向の一端及び他端の各外側に設置されたカム板駆動部40とから構成されている。
【0029】
この際、版胴11は、初期時及び待機時に外周面11a上の一部に設けられた孔版原紙クランプ部20が例えば右斜め上方に位置するように設定された版胴基準位置に至って停止している。
【0030】
尚、上記した版胴基準位置は、組立て時及びメイテンナス時に作業者が版胴11を取り付けたり、又は、版胴11を取り外すことができる位置であり、この版胴基準位置は版胴11の中心軸12の一端に固着させた不図示のカム板に形成した検出片と対向して設置した版胴基準位置センサ(図示せず)で検出されている。
【0031】
また、孔版印刷装置1内で版胴11の右側には、孔版原紙Gを製版するための製版ユニット2が設置されており、この製版ユニット2で製版された製版済みの孔版原紙Gは上下一対の搬送ローラ3A,3Bを経て上下のガイド板4A,4B間を通過し、孔版原紙Gの先端部Gaが版胴11の外周面11aの上方部位に向けて搬送されるようになっている。
【0032】
また、孔版印刷装置1内で版胴11の左側には、使用済みの孔版原紙Gを排版するめの排版ユニット5が設置されている。
【0033】
また、孔版印刷装置1内で版胴11の左下方には未印刷の印刷用紙Pを給紙するための給紙ユニット6が設置され、一方、版胴11の右下方には印刷済みの印刷用紙Pを排紙するための排紙ユニット7が設置されている。
【0034】
更に、孔版印刷装置1内の適宜な場所に孔版原紙係止装置10を全体的に制御する制御部8が設置されている。
【0035】
ここで、上記した孔版原紙係止装置10の各構成部材について具体的に説明する。
【0036】
まず、版胴11は、外周面11aが後述するインクIKを浸み出せるように多孔性を有して長尺な円筒状に形成されており、この版胴11が中心軸12に連結されたエンコーダ付き版胴用モータ13によって中心軸12と一体に図示反時計方向に例えば6秒で1回転の速度(10rpm)で回転可能に設けられている。
【0037】
また、版胴11と一体に回転する中心軸12の一端面側には、インク挿入口12aが形成されており、このインク挿入口12aから挿入されたインクIKは、版胴11内に設けたインク溜り14に溜められた後に、インク溜り14を挟んで設けたドクターローラ15とインク塗布ローラ16との間に形成された隙間から製版済みの孔版原紙G側に浸み出すようになっている。
【0038】
また、版胴11の外周面11aの下方には、プレスローラ17が不図示のソレノイドなどの押圧力により版胴11の外周面11aに対して接離自在で且つ押圧可能に設けられている。
【0039】
また、このプレスローラ17は、版胴11の外周面11aの一部に設けた孔版原紙クランプ部20が下方に至って通過するときに、版胴11の中心軸12の一端に固着させた不図示のカム板に形成した突出片に押されて版胴11の外周面11aから離間するようになっている。
【0040】
更に、孔版原紙係止装置10は、A3サイズ(420mm×297mm)の印刷用紙よりも大型サイズで不図示の給紙部から搬送される例えばA2サイズ(594mm×420mm)の印刷用紙Pを印刷可能とする孔版印刷装置1に適用されている。
【0041】
上記に伴って、版胴11の直径φDは、A2サイズの印刷用紙Pの短手方向の長さ420mmに対応させてφ180mm程度に設定されており、A2サイズの印刷用紙Pの短手方向の長さ420mmと対応してA2サイズ用の孔版原紙Gの短手方向が版胴11の外周面11aに沿って巻回され、且つ、A2サイズの印刷用紙Pの長手方向の長さ594mmが版胴11の軸方向に沿うので、A2サイズ用の孔版原紙Gの長手方向である幅方向は版胴11の軸方向と対応している。
【0042】
具体的には、図2に示した如く、A2サイズ用の孔版原紙Gの長手方向となる幅寸法Wは、A2サイズの印刷用紙P(図1)の長手方向の長さ594mmよりも長く設定されている。また、A3サイズ用の版胴の長さL{図12(a)}に対して2倍の長さに形成されたA2サイズ用の版胴11の軸方向の長さ2LはA2サイズ用の孔版原紙Gの幅寸法Wよりも長く設定されている。
【0043】
図1(a)に戻り、版胴11の外周面11a上の一部には、A2サイズの印刷用紙Pと対応して製版されたA2サイズ用の孔版原紙Gの先端部Gaを幅方向に沿ってクランプするための孔版原紙クランプ部20が設けられており、この孔版原紙クランプ部20によってクランプされた孔版原紙Gは版胴11の外周面11aに沿って巻き付けられるようになっている。
【0044】
この際、製版された孔版原紙Gは、熱可塑性樹脂フィルムなどを用いて版胴11の右上方部位に設置された製版ユニット2内に設けた不図示のサーマルヘッドにより1版分の画像情報に応じて感熱穿孔された穿孔画像部分が製版画像として形成されているものである。
【0045】
また、図1(b)及び図2に示す如く、上記した孔版原紙クランプ部20は、版胴11の外周面11aの一部に版取付座21が長手方向を版胴11の軸方向に沿わせて取り付けられている。この版取付座21は、非磁性材のアルミ材又は合成樹脂材などを用いて所定の高さで版胴11の円周方向に沿って略台形状に形成され且つ版胴11の軸方向の長さ2Lと略同じ長さで長尺に形成されている。
【0046】
また、版取付座21上には、ゴム製の磁石板22が長手方向を版胴11の軸方向に沿わせて版取付座21の左右両端に向って取り付けられている。
【0047】
また、版取付座21上には、孔版原紙Gの先端部Gaを幅方向に沿ってクランプするためのクランプ板30が磁石板22と対向して開閉可能に取り付けられている。
【0048】
このクランプ板30は、磁性金属材を折り曲げて形成されており、且つ、平坦なクランプ面30aが磁石板22と対向して版胴11の軸方向に沿って長尺に形成されている。
【0049】
この際、クランプ板30は、耐食性が良好で且つ磁性を有するステンレス材(SUS400番台系)を用い、長手方向の左右端間の長さが孔版原紙Gの長手方向となる幅寸法Wよりも長く形成され、且つ、クランプ面30aの幅が20mm程度で板厚が1mm程度に薄く弾性変形可能に形成されているので、クランプ面全体が磁石板22に対して均一な着磁力を得られるようになっている。
【0050】
また、クランプ板30は、版取付座21の長手方向の左右両端部に固定された一対の支持軸部31,31に対して第1回動軸32,32を介して第1ネジリバネ33,33により閉じ方向に付勢されながら回動可能となっている。
【0051】
また、クランプ板30は、長手方向の左端側(一端側)及び右端側(他端側)で、且つ、クランプ面30a側とは第1回動軸32,32を介した反対側に第1カムフォロワー34L,34Rが版胴11の両側部よりも外側に向って突出した状態で取り付けられている。
【0052】
そして、版取付座21上の磁石板22と、クランプ板30のクランプ面30aとの間に孔版原紙Gの先端部Gaを挿入することで磁性力により孔版原紙Gの先端部Gaが版胴11にクランプされようになっている。
【0053】
また、クランプ板30のクランプ面30aの先端部位には、図2に示すように、複数の切欠30bが間隔を隔てて櫛歯形状に形成されており、これと対向して製版ユニット2{図1(a)}側の上ガイド板4Aの版胴11側に向く先端部位に複数の突起4aが間隔を隔てて櫛歯形状に形成されている。そして、上ガイド板4Aに形成した複数の突起4aが、クランプ面30aに形成した複数の切欠30b内に臨んでいる。
【0054】
これにより、背景技術で説明したように、クランプ板30と磁石板22との間に孔版原紙Gを適宜導くことにより、孔版原紙Gの先端部Gaを折るようにして挟み込むことがなく、版胴11に着版した孔版原紙Gにシワが生じたり、孔版原紙Gが斜めに着版されてしまう不都合を無くして確実な着版を行うことができるようになっている。
【0055】
また、版取付座21上には、使用済みの孔版原紙Gをクランプ板30からクランプを解除して跳ね上げるための跳ね上げ部材35が開閉可能に取り付けられている。
【0056】
この跳ね上げ部材35は、金属材を折り曲げて形成され、且つ、クランプ板30と対向して跳ね上げ面35aが版胴11の軸方向に沿って長尺に形成されている。
【0057】
また、跳ね上げ部材35は、版取付座21上でクランプ板30よりも版胴11の回転方向の上流側に取り付けられていると共に、クランプ板30によってクランプされた孔版原紙Gの裏面側に配置されている。
【0058】
また、跳ね上げ部材35も、クランプ板30と同様に、版取付座21の長手方向の左右両端部に固定された一対の支持軸部31,31に対して第2回動軸36,36を介して第2ネジリバネ37,37により閉じ方向に付勢されながら回動可能となっている。
【0059】
また、跳ね上げ部材35は、長手方向の左端側(一端側)及び右端側(他端側)で、跳ね上げ先端側とは第2回動軸36,36を介した反対側に第2カムフォロワー38L,38Rが版胴11の両側部よりも外側で且つ前記した第1カムフォロワー34L,34Rよりも更に外側に向って突出した状態で取り付けられている。
【0060】
更に、図1(a)及び図2に示す如く、版胴11の上方部位には、クランプ板30及び跳ね上げ部材35を開閉するためのカム板駆動部40が版胴11の左右の端部の外側にそれぞれ設置されている。
【0061】
上記したカム板駆動部40は、図2及び図3に示したように、版胴11の右端部の外側に減速ギア部41aをモータ軸に取り付けたカム板用モータ41が正逆転可能に固定設置されており、減速ギア部41aの最終段軸41bに略90度に亘って円弧状に形成された第1カム板42が固着されている。
【0062】
また、版胴11の上方でこの版胴11の左右の端部の外側間に亘って長尺な連結用シャフト43が横設されている。
【0063】
そして、連結用シャフト43の左端側(一端側)及び右端側(他端側)に、外形形状が略左右対称に形成された左右の第2カム板44L,44Rが版胴11を挟んで互いに対向し、且つ、連結用シャフト43を両カム板44L,44Rに貫通して形成した軸孔44a,44aに嵌め込んで、連結用シャフト43に両カム板44L,44Rが止めネジ又は圧入より固着されている。そして、第2カム板44L,44Rと一体に連結用シャフト43が、この両端側に設けた左右一対の軸受け45L,45Rに回転自在に軸支されている。
【0064】
一方、カム板用モータ41によって正逆転する第1カム板42は、右側の第2カム板44Rの上方部位に略矩形状に貫通して形成した第1カム板添接孔44b(図3)内に添接可能に進入しており、この第1カム板42の正逆転に伴って右側の第2カム板44Rが連結用シャフト43と一体に正逆転するようになっている。これに伴って、左側の第2カム板44Lが連結用シャフト43を介して右側の第2カム板44Rと同期して正逆転するようになっているので、左右の第2カム板44L,44Rはカム板用モータ41を共用して回転駆動されている。
【0065】
尚、この実施例では、カム板用モータ41を版胴11の右側に設置しているが、これに限ることなく、カム板用モータ41を版胴11の左右のどちらに設置するかは設計時に設定すれば良いものである。
【0066】
ここで、左右の第2カム板44L,44Rは、図3及び図4(a),(b)に示す如く、後述する複数のカム面を除いて外形形状が略左右対称に形成されており、版胴11の回転方向の上流側と対向する側面の上方部位に上部側面44c,44cが板厚の幅で形成されている。
【0067】
そして、これらの上部側面44c,44cの下端部位近傍にクランプ板30の長手方向の左右端側に設けた第1カムフォロワー34L,34R(図1,図2)と、跳ね上げ部材35の長手方向の左右端側に設けた第2カムフォロワー38L,38R(図1,図2)とが接するようになっている。
【0068】
また、左右の第2カム板44L,44Rの上部側面44c,44cの下方に連接してクランプ板30の長手方向の左端側と右端側とを時間差を持って開く第1カム面44d1,44d2が板厚の略半分の幅で互いに内側に異なる形状で形成されている。
【0069】
そして、左側の第1カム面44d1に左側の第1カムフォロワー34Lが接し、且つ、右側の第1カム面44d2に右側の第1カムフォロワー34Rが接するようになっている。
【0070】
また、左右の第2カム板44L,44Rの上部側面44c,44cの下方に連接して跳ね上げ部材35の長手方向の左端側と右端側とを同時に開く第2カム面44e1,44e2が板厚の略半分の幅で互いに外側に同じ形状で形成されている。
【0071】
そして、左側の第2カム面44e1に左側の第2カムフォロワー38Lが接し、且つ、右側の第2カム面44e2に右側の第2カムフォロワー38Rが接するようになっている。
【0072】
更に、左右の第2カム板44L,44Rに形成した第1カム面44d1,44d2及び第2カム面44e1,44e2よりも下方に下部側面44f,44fが板厚の幅で形成されているが、これらの下部側面44f,44fには第1カムフォロワー34L,34R及び第2カムフォロワー38L,38Rが接しないようになっている。
【0073】
ここで、図4(a)に一部拡大して示した左側の第2カム板44Lでは、左側の第1カムフォロワー34Lが接離する左側の第1カム面44d1が、点線で示したように上部側面44cの下端延長位置に連接して所定の角度傾斜して直線形状に形成されており、この左側の第1カム面44d1の形状は後述するようにクランプ板30の左端側を右端側よりも先に開くようになっているが、二点鎖線で示した右側の第1カム面44d2は形成されていない。
【0074】
一方、図4(b)に一部拡大して示した右側の第2カム板44Rでは、右側の第1カムフォロワー34Rが接離する右側の第1カム面44d2が、点線で示したように左側の第1カム面44d1よりも連結用シャフト43側に偏った上部側面44cの下端位置から凹形状にえぐれて形成されている。そして、右側の第1カム面44d2の凹形状は、上部側面44cの下端位置から内側に向かって略水平とされた後に左側の第1カム面44d1よりも傾斜角度が大きく傾斜して最終的に左側の第1カム面44d1の下端と一致するように形成されているので、この右側の第1カム面44d2の形状は後述するようにクランプ板30の右端側を左端側よりも時間差を持って後で開くようになっているが、二点鎖線で示した左側の第1カム面44d1は形成されていない。
【0075】
また、図4(a),(b)に一部拡大して示した左右の第2カム板44L,44Rでは、左右の第2カムフォロワー38L,38Rが接離する左右の第2カム面44e1,44e2が、実線で示したように、左右の第1カム面44d1,44d2よりも下方で上部側面44c,44cの下端延長位置に連接して第1カム面44d1,44d2よりもゆるい角度で傾斜して直線形状に形成されており、これらの第2カム面44e1,44e2の直線形状は後述する排版時に跳ね上げ部材35がクランプ板30よりも後で開くようになっている。
【0076】
従って、上記した第1カム面44d1,44d2及び第2カム面44e1,44e2の各形状により、クランプ板30の左端側と、クランプ板30の右端側と、跳ね上げ部材35の両端側とがそれぞれ独立して開閉可能に回動することになっている。
【0077】
尚、この実施例では、クランプ板30の長手方向の左端側を右端側よりも先に開いているが、これに限ることなく、クランプ板30の左右端のどちらを先に開くかは設計時に設定すれば良いものである。
【0078】
ここで、上記構成による孔版原紙係止装置10の動作について説明する。
【0079】
まず、図1(a),(b)に示す如く、孔版原紙係止装置10内で版胴11が版胴基準位置に至っているときには、版胴11が回転を停止しており、且つ、版胴11の外周面11aの一部に設けた孔版原紙クランプ部20のクランプ板30及び跳ね上げ部材35は共に閉じている。
【0080】
この状態から製版済みの孔版原紙Gを版胴11に着版させる場合には、制御部8の指令によりエンコーダ付き版胴用モータ13を始動させて、版胴11の版胴基準位置を基準としてエンコーダパルス数の計数を開始して、版胴11を反時計方向に回転させる。
【0081】
この後、図5(a),(b)に示す如く、版胴11の反時計方向の回転に伴って、版胴11の外周面11aの一部に設けた孔版原紙クランプ部20が上方に設定した着版位置に至ったことをエンコーダ付き版胴用モータ13からのエンコーダパルス数により制御部8が検知したら、制御部8の指令によりカム板駆動部40を作動させる。
【0082】
ここで、カム板駆動部40は、先に図3を用いて説明したように、カム板用モータ41の減速ギア部41aの最終段軸41bに固着させた第1カム板42に係合する右側の第2カム板44を回転させることで、連結用シャフト43を介して左右の第2カム板44L,44Rを同時に回転させる。
【0083】
そして、上記した着版位置では、左右の第2カム板44L,44Rの回転に伴って、先に図4(a),(b)で説明した左右の第2カム板44L,44Rに形成した左右の第1カム面44d1,44d2の形状により、図6(a),(b)に示すように、クランプ板30の長手方向の左端側を右端側よりも先に開いている。
【0084】
これを言い換えると、後述する版胴11の回転位置(着版位置,排版位置)に応じてクランプ板30の長手方向の一端側(左端側)と他端側(右端側)とを異なるタイミングで開いていることになる。
【0085】
ここで、クランプ板30の長手方向の左端側を開くときには、図5(b)に示したように、クランプ板30の長手方向の左側に取り付けた第1カムフォロワー34Lを左側の第2カム板44Lの第1カム面44d1(図3,図4)で上方から下方に向って押し付けるので、クランプ板30が第1ネジリバネ33に抗して第1回動軸32を中心に反時計方向に例えば最大で30度程度回動して開放状態とされる。
【0086】
尚、クランプ板30の長手方向の右端側を開くときにも、左端側と略同様な動作になる。
【0087】
このとき、クランプ板30の長手方向の左端側と右端側とをタイミングを持って開くときの時間差は、版胴11の回転角度で2度程度の差になるように左右の第1カム面44d1,44d2の形状が設定されており、版胴11が前述したように6秒で1回転するので時間差は1/30秒程度となる。
【0088】
一方、クランプ板30を閉じるときには、左右の第1カム面44d1,44d2(図3,図4)の形状により、図6(a),(b)に示した如く、クランプ板30の長手方向の左端側と右端側とを略同時に閉じている。
【0089】
また、図5(b)に示すように、着版位置では、跳ね上げ部材35は閉じたままである。
【0090】
ここで、クランプ板30の長手方向の左右端側をタイミングをずらして開く理由について、図7〜図9を用いて順に説明する。
【0091】
図7〜図9において、クランプ板30を開く動作は、製版ユニット2(図1)で製版された製版済みの孔版原紙Gをクランプするときと、印刷用紙P(図10)への印刷が全て終了した後に版胴11に巻き付けられた使用済みの孔版原紙Gを排版ユニット5(図1)に排版するときの二通りある。尚、図7〜図9は磁石板22とクランプ板30との間に孔版原紙Gがない前者の場合を図示しているが、磁石板22とクランプ板30との間に孔版原紙Gがある後者の場合でも前者と同じ動作となる。
【0092】
尚、図7〜図9中では、説明を分かり易くするために、左右の第2カム板44L,44Rは、クランプ板30の長手方向の左右端側を開く第1カム面44d1,44d2だけを図示している。
【0093】
まず、図7(a)〜(c)に示したクランプ板30の第1動作図は、クランプ板30が閉じている状態を示している。
【0094】
この第1動作図において、第1カム板42が右側の第2カム板44Lの第1カム板添接孔44b内で停止しており、この第1カム板42と連結用シャフト43を介して連動する左右の第2カム板44L,44Rも停止している。
【0095】
このときに、クランプ板30の長手方向の左右端側に設けた第1カムフォロワー34L,34Rが左右の第2カム板44L,44Rに形成した上部側面44c,44cの下端部位近傍に添接しているので、クランプ板30のクランプ面30aの長手方向の左右端側は共に閉じられている。
【0096】
そして、クランプ板30のクランプ面30aが閉じられているときに、このクランプ面30aは前述したように厚みが1mm程度と薄く、且つ、長手方向の長さがA2サイズの孔版原紙Gの長手方向となる幅寸法W(図2)よりも長く形成されて弾性変形し易くなっているので、クランプ面30aは版取付座21上に設けた磁石板22に密着して着磁されている。
【0097】
次に、図8(a)〜(c)に示したクランプ板30の第2動作図は、クランプ板30の長手方向の左端側を右端側よりも先に開く状態を示している。
【0098】
この第2動作図において、クランプ板30のクランプ面30aが長いと、先に背景技術で述べたようにクランプ板30の長手方向の左右端側を同時に磁石板22から剥がすときに、大きな力が必要となると共に、クランプ板30の中央部位近傍で上下方向に大きく振動してしまう。
【0099】
そこで、この実施例では、クランプ板30の長手方向の左右端側を同時に開かずに、例えばクランプ板30の長手方向の左端側を右端側よりも先に開いている。
【0100】
即ち、右側の第2カム板44Lの第1カム板添接孔44b内で第1カム板42を矢印方向に回転させると、連結用シャフト43と一体に左右の第2カム板44L,44Rがそれぞれ矢印方向に回転する。
【0101】
このときに、左側の第2カム板44Lに所定の角度傾斜して直線状に形成した第1カム面44d1に、クランプ板30の長手方向の左端側に設けた第1カムフォロワー34Lが添接して、この第1カムフォロワー34Lが第1カム面44d1によって下方に押されて第1回動軸32を中心にして回動するので、クランプ板30の長手方向の左端側が右端側よりも先に開く。
【0102】
一方、クランプ板30の長手方向の右端側に設けた第1カムフォロワー34Rは、右側の第2カム板44Rに形成した第1カム面44d2のうちで水平部位に至っているが下方に押されないので、クランプ板30の長手方向の右端側は閉じたままである。
【0103】
そして、クランプ板30の長手方向の左端側を右端側よりも先に開くと、長尺なクランプ面30aは厚みが薄く弾性変形可能であるので、クランプ板30の左端側の力が右端側に伝わらず、クランプ面30aの右端側は磁石板22に着磁されたままの着磁領域が残る。
【0104】
また、クランプ板30の長手方向の左端側を右端側よりも先に開くと、クランプ板30のクランプ面30a上で例えばクランプ面中心近傍で捩れ変形が生じ、この捩れ変形によってクランプ面垂直方向に対する断面二次モーメントが大きくなり、クランプ面30aの剛性が高まるために、クランプ板30の長手方向の右端側を開く力を小さくすることができる。
【0105】
また、クランプ板30の長手方向の左端側と右端側とを異なるタイミングで開いたときに、上記した捩れ変形によってクランプ面垂直方向に対する断面二次モーメントが大きくなっているので、先に図14を用いて説明したような従来例のクランプ板に比べて、クランプ面30aに生じる振動の振幅を小さく抑制することができる。
【0106】
尚、上記とは異なって、クランプ板30の長手方向の右端側を左端側よりも先に開いても同じ結果が得られるものである。
【0107】
次に、図9(a)〜(c)に示したクランプ板30の第3動作図は、クランプ板30の長手方向の右端側を左端側よりも後で開く状態を示している。
【0108】
即ち、右側の第2カム板44Lの第1カム板添接孔44b内で第1カム板42を矢印方向に更に回転させると、連結用シャフト43と一体に左右の第2カム板44L,44Rがそれぞれ矢印方向に更に回転する。
【0109】
このとき、クランプ板30の長手方向の左端側に設けた第1カムフォロワー34Lは、左側の第2カム板44Lに形成した第1カム面44d1の下方部位に添接しているが、クランプ面30aの長手方向の左端側は開いたままの状態を維持している。
【0110】
一方、クランプ板30の長手方向の右端側に設けた第1カムフォロワー34Rは、右側の第2カム板44Rに形成した第1カム面44d2のうちで水平部位に連接した傾斜部位に添接して、クランプ板30の長手方向の右端側を左端側に対してタイミングをずらして後で開いている。
【0111】
この際、クランプ板30の長手方向の左端側は既に開いているので、クランプ面30aの振動発生箇所は中心部位近傍ではなく、クランプ面30aの中心部位と右端側との間で弾性変形による撓みの少ない領域に発生して微小に振動する。
【0112】
上記から、クランプ板30は、捩れ変形による剛性UPと、磁石板22への着磁領域が小さいことによる着磁力低下とにより、振動の振幅が小さくなる。
【0113】
従って、クランプ板30を完全に開いたときに、クランプ面30aが微小に振動しても、クランプ面30aは例えば孔版原紙Gを排版するために版胴11の上部近傍に設置した排版ユニット5(図1)の搬送ローラなどに干渉したり衝突を起こすなどの問題点も生じないので、孔版原紙係止装置10の品質及び信頼性向上に寄与できる。
【0114】
そして、クランプ板30の長手方向の左端側と右端側を開いた後に、先に図1を用いて説明したように、製版ユニット2で製版した製版済みの孔版原紙Gを磁石板22とクランプ板30との間に挿入し、この後、版胴11を着版位置から反時計方向に回転させると共に、カム板駆動部40のカム板用モータ41を介して第1カム板42及び第2カム板44L,44Rを上記に対して逆転させれば、第2カム板44L,44Rに形成した上部側面44c,44cの下端部位近傍に左右の第1カムフォロワー34L,34Rが添接して、クランプ板30の長手方向の両端側が略同時に閉じられるので、製版済みの孔版原紙Gを磁石板22とクランプ板30との間にクランプすることができる。
【0115】
次に、図10(a),(b)に示す如く、孔版原紙Gを孔版原紙クランプ部20の磁石板22とクランプ板30との間でクランプした後、版胴11を反時計方向に更に回転させると、版胴11の外周面11aの一部に設けた孔版原紙クランプ部20が下方に至る。
【0116】
このとき、版胴11の下方ではプレスローラ17が版胴11の中心軸12の一端に固着させた不図示のカム板に形成した突出片に押されて下方に退避するので、退避したプレスローラ17を孔版原紙クランプ部20が通過したことを制御部8はエンコーダ付き版胴用モータ13からのエンコーダパルス数により検知する。
【0117】
この後、制御部8は、ソレノイドなどによる不図示のプレスローラ押圧駆動部を介してプレスローラ17を不図示の給紙ユニットから搬送された印刷用紙Pと、版胴11の外周面11aに巻回した製版済みの孔版原紙Gとに押し当てて、印刷用紙Pを下流側に向って搬送しながら版胴11内に供給されたインクIKを製版済みの孔版原紙Gを通して印刷用紙P上に孔版原紙Gの製版画像に応じたインク画像を印刷している。
【0118】
そして、印刷用紙Pへの印刷を複数回繰り返して複数枚全て印刷が終了した段階で、版胴11に巻き付けられた孔版原紙Gは使用済みとなるので、版胴11と一体に孔版原紙クランプ部20を図11(a),(b)に示した孔版原紙Gの排版位置まで回転させている。
【0119】
次に、図11(a),(b)に示す如く、版胴11の外周面11aに設けた孔版原紙クランプ部20が排版位置に至る寸前に孔版原紙クランプ部20(図2,図3)のカム板用モータ41を作動させて、第1カム板42及び左右の第2カム板44L,44Rを回転して、左右の第2カム板44L,44Rの第1カム面44d1,44d2によりまず先にクランプ板30の左右端側を時間差を持って開いて、磁石板22とクランプ板30とで挟持されていた使用済みの孔版原紙Gの先端部Gaへのクランプを解除する。
【0120】
そして、使用済みの孔版原紙Gに対してクランプを解除した後、更に版胴11を反時計方向に回転させて、左右の第2カム板44L,44Rの第2カム面44e1,44e2により跳ね上げ部材35の両端側を同時に開くと、クランプを解除された使用済みの孔版原紙Gの先端部Gaが跳ね上げ部材35の揺動端部にて持ち上げられて、排版ユニット5側に搬送される。
【0121】
以上詳述した実施例の孔版原紙係止装置10では、クランプ板30の長手方向の一端側(左端側)と他端側(右端側)とを異なるタイミングで開くクランプ板開閉手段として、版胴11の左右端の各外側に左右の第2カム板44L,44Rを正逆転可能に設置しているが、これに限ることなく、例えば特許文献1で開示されたような上下動可能なカム部材を版胴の左右端の各外側に設けても良い。
【0122】
更に、上記したクランプ板開閉手段として、周知のソレノイドなどを版胴の左右端の各外側に設けて、左右のソレノイドを時間差を持って作動させて、各ソレノイドによる電磁力でクランプ板30の長手方向の一端側と他端側とを異なるタイミングで開いても良い。
【符号の説明】
【0123】
10…孔版印刷装置、2…製版ユニット、5…排版ユニット、6…給紙ユニット、
7…排紙ユニット、8…制御部、
10…孔版原紙係止装置、
11…版胴、11a…外周面、12…中心軸、13…エンコーダ付き版胴用モータ、
14…インク溜り、15…ドクターローラ、16…インク塗布ローラ、
17…プレスローラ、
20…孔版原紙クランプ部、
21…版取付座、22…磁石板、
30…クランプ板、30a…クランプ面、
31…支持軸部、32…第1回動軸、33…第1ネジリバネ、
34L,34R…左右の第1カムフォロワー、35…跳ね上げ部材、36…第2回動軸、
37…第2ネジリバネ、38L,38R…左右の第2カムフォロワー、
40…カム板駆動部、41…カム板用モータ、41a…減速ギア部、41b…最終段軸、
42…第1カム板、43…連結用シャフト、
44L,44R…左右の第2カム板、44a…軸孔、44b…第1カム板添接孔、
44c…上部側面、44d1,44d2…左右の第1カム面、
44e1,44e2…左右の第2カム面、44f…下部側面、
G…孔版原紙、Ga…先端部、IK…インク、P…印刷用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な円筒状の版胴の外周面の一部に孔版原紙の搬送方向の先端部をクランプして、前記孔版原紙を前記版胴の外周面に巻回させるように構成した孔版原紙係止装置において、
前記版胴の外周面の一部に長手方向を該版胴の軸方向に沿わせて取り付けられた版取付座と、
前記版取付座上に長手方向を前記版胴の軸方向に沿わせて取り付けられた磁石板と、
前記磁石板と対向した長尺なクランプ面を有し、前記版取付座上に軸支されて開閉可能に取り付けられたクランプ板と、
前記クランプ板の長手方向の一端側と他端側とを異なるタイミングで開くクランプ板開閉手段と、
を備えたことを特徴とする孔版原紙係止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−107260(P2013−107260A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253642(P2011−253642)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】