説明

孔質性ポリアミド酸微粒子および孔質性ポリイミド微粒子の製造方法

【課題】 サイズ制御された、高品質な孔質性ポリイミド微粒子およびその原料となる孔質性ポリアミド酸微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 有機溶媒に、ポリアミド酸と、前記ポリアミド酸に対して0.5〜100質量%の、前記ポリアミド酸と相溶性かつ前記有機溶媒に可溶性であるポリマーとを溶解させた、ポリアミド酸/ポリマー混合溶液を、前記有機溶媒と相溶性である前記ポリアミド酸の貧溶媒に注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒径や孔径が制御された、孔質性ポリアミド酸微粒子および孔質性ポリイミド微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、耐熱性、耐溶剤性、電気絶縁性等、様々な優れた特性を有することから、多く分野で利用されている。例えば、金属、セラミックス代替材料として利用される他、過酷な条件下で用いられる電気電子産業分野や航空宇宙産業分野において、フイルム、ワニス、接着剤、バルク状成型材料などとしても利用されている。
【0003】
このようなポリイミドを微粒化した材料は、ポリイミドの自体の特性とその微細な構造との組み合わせによる相乗効果により、様々な用途が期待されている。例えば、画像形成用の粉末トナーの添加剤、スクリーン印刷用の添加剤等が提案されているが、中でも、ポリイミド系微粒子表面に細孔を持たせた孔質性ポリイミド微粒子は、低誘電材料や、種々のナノデバイスの鋳型として非常に有用である。
【0004】
従来、孔質性のポリマー微粒子は、ポリマー溶液を噴霧して瞬間的に乾燥させるスプレードライ法で作成するのが一般的であった。しかし、スプレードライ法は製造条件の制御、溶媒選択などが難しいという問題点があった。
【0005】
これに対し、本発明者らは、以前、スプレードライ法とは異なる全く新しい孔質性ポリイミド微粒子の作製方法を開発した。これは、ポリアミド酸溶液を貧溶媒に注入することによって、粒径が制御されたポリアミド酸微粒子を作製する再沈法(特許文献1)において、注入するポリアミド酸溶液にアルカリ金属のハロゲン化物塩を添加することで、多孔性ポリアミド酸微粒子を形成し、次いでイミド化処理を施すものである(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−252990号広報
【特許文献2】特開2004−196869号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の製造方法によれば、簡易に、かつ再現性よく孔質性ポリイミド微粒子を製造することができる。しかしながら、より粒径や孔径が小さく、かつ孔率の高い微粒子を製造できる方法が求められていた。すなわち、用途に応じて自由にポリイミド微粒子の粒径、孔径、孔率を変化させることができ、かつ、より粒径、孔径、孔率の分布が狭くて均質なポリイミド微粒子を製造することができる方法が求められていた。
【0007】
そこで本発明は、サイズ制御された、高品質な孔質性ポリイミド微粒子およびその原料となる孔質性ポリアミド酸微粒子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、再沈法において、良溶媒中にポリアミド酸と共に特定のポリマーを溶解させることで、そのポリマーがポリアミド酸微粒子の空孔源となり、高品質な孔質性ポリアミド酸微粒子を再現性よく作製できることを見出した。また、これをイミド化することで、孔質性ポリアミド酸微粒子の粒径や空孔の形状的な性質を保ったまま、孔質性ポリイミド微粒子に変換できることも見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、有機溶媒に、ポリアミド酸と、前記ポリアミド酸に対して0.5〜100質量%の、前記ポリアミド酸と相溶性かつ前記有機溶媒に可溶性であるポリマーとを溶解させた、ポリアミド酸/ポリマー混合溶液を、前記有機溶媒と相溶性である前記ポリアミド酸の貧溶媒に注入することを特徴とする、孔質性ポリアミド酸微粒子の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
【0010】
この発明において、前記有機溶媒は、極性アミド系溶媒であることが好ましく、また、前記ポリマーは、前記ポリマーの繰り返し単位が、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、ヒドロキシル基から選択される置換基を有するものであることが好ましい。
【0011】
この発明によれば、孔質性ポリアミド酸微粒子の粒径、孔径、孔率が制御された、高品質な孔質性ポリアミド酸微粒子の製造方法を提供することができる。ここで、孔率とは、微粒子の表面積に対する空孔の総面積の割合(パーセント)のことをいう。
【0012】
また、上記のようにして得られた孔質性ポリアミド酸微粒子をイミド化処理することにより、作製した孔質性ポリアミド酸微粒子の粒径や孔径、孔率等の形状的な性質を保ったまま孔質性ポリイミド微粒子に変換することができるので、容易に高品質な孔質性ポリイミド微粒子を作製することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリマー微粒子を製造する技術として確立された再沈法を利用することにより、容易に孔質性ポリイミド粒子およびその前駆体となる孔質性ポリアミド酸を製造することができる。また、ポリアミドと一緒に溶解させるポリマーの種類や濃度などの製造条件を変化させることにより、ポリイミド微粒子の粒径、孔径、孔率を変化させることができるので、粒径、孔径、孔率の分布が狭くて均質なポリイミド微粒子を再現性よく製造することができる。
【0014】
本発明のこのような作用および利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、再沈法によるポリアミド酸の微粒子の製造方法において、空孔を持たせるために、空孔形成源としてポリマーを利用するものである。以下本発明について詳細に説明するが、再沈法による基本的なポリアミド微粒子の製造方法は、上述した特許文献1に開示されており、それを参考にすることができる。
【0016】
本発明で微粒子化されるポリアミド酸(ポリアミック酸ともいう)は、下記一般式(1)に示される構造を有する化合物である。
【0017】
【化1】

【0018】
Xは4価の置換基、Yは2価の置換基である。X、Yは特に限定はされず、用途によって適宜置換基を選択することができるが、通常は芳香族系の置換基が用いられる。ポリアミド酸の分子量も、基本的には使用用途との関連で適宜選択できるが、所望の粒径の微粒子を安定的に製造するためには、重量平均分子量が8000〜220000の範囲にあることが好ましい。
【0019】
本発明においては、まず、ポリアミド酸が、後述するポリマーと共に有機溶媒に溶解され、ポリアミド酸/ポリマー混合溶液がつくられるが、ポリアミド酸を溶解する有機溶媒としては、ポリアミド酸を溶解することのできる有機溶媒ならば使用できる。通常、極性の有機溶媒が用いられ、これらのものとして、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の極性アミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;フェノール、o−,m−,またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒などを例示することができる。これらを単独であるいは混合して用いることができるが、溶解性の点からは、極性アミド系溶媒が好ましく、中でもN,N−ジメチルアセトアミドやN−メチルピロリドンが特に好ましい。
【0020】
ポリアミド酸の有機溶媒への溶解濃度は、生成するポリアミド酸微粒子の粒径に影響を与える大きな要因であるため、その濃度は所望の粒径に応じて適宜変更される。特にポリアミド酸の分子量が大きいほど溶液濃度の影響が大きい。溶液濃度は、通常0.1〜15質量%程度で調整されるが、分子量が大きい場合は、0.5質量%前後の溶液が好ましくは調整される。
【0021】
ポリアミド酸と共に溶解されるポリマーは、微粒子となるポリアミド酸の表面に空孔を形成する役割を有するものである。ポリアミド酸と相溶性であり、かつ前述の有機溶媒に溶解するポリマーであれば使用でき、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリエチレンなど一般的なポリマーを例示でき、これらはホモポリマーでもコポリマーでもよい。中でも、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、ヒドロキシル基から選択される置換基を有するポリマーが好ましく、特にはポリアクリル酸、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコールが好ましい。その添加量は、所望の孔径、孔率によるが、ポリアミド酸に対し、ポリアミド酸基準で、0.5〜100質量%、好ましく0.5〜80質量%である。
【0022】
上記ポリアミド酸/ポリマー混合溶液は、ポリアミド酸の貧溶媒に注入されることによって、貧溶媒に分散した状態のポリアミド酸微粒子が形成される。貧溶媒とは、上記ポリアミド酸/ポリマー混合溶液を添加した際にポリアミド酸が析出し得る溶媒である。貧溶媒としては、へキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素;デカリン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;二硫化炭素、又はこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられるが、中でも脂環式炭化水素およびこれと二硫化炭素との混合溶媒が好ましい。
【0023】
貧溶媒には、孔質性ポリアミド酸微粒子の分散安定性を向上させるために界面活性剤を入れておくこともできる。界面活性剤としては、通常、中性の界面活性剤が用いられるが、中でも、ポリアクリル酸エステル系の中の高分子界面活性剤が好ましい。例えば、アクリディック(大日本インキ化学工業社製、ポリアクリル酸エステル系の顔料表面処理剤。「アクリディック」は大日本インキ化学工業社製の登録商標(以下同様))等が、市販品として入手できる。界面活性剤を使用する場合、その量に特に制限はないが、あまり多すぎると空孔形成に悪影響を及ぼすため、通常0.1質量%程度使用される。
【0024】
ポリアミド酸/ポリマー混合溶液が注入される貧溶媒の量は、通常、ポリアミド酸/ポリマー混合溶液の体積基準で、10倍以上である。上限は特にないが、微粒子回収の作業性や経済性の点からは、多すぎない方が好ましい。微粒子の析出性や作業性の観点から、100倍程度用いるのが一般的である。
【0025】
注入時、貧溶媒は、生成する孔質性ポリアミド酸微粒子を均一化するために、攪拌しておくことが好ましい。攪拌速度は特に制限はないが、好ましくは100〜3000rpmである。
【0026】
注入時の貧溶媒の温度は、溶媒が液体状態を保っている限り特に制限はないが、貧溶媒の温度を変化させると粒径も変化するので、貧溶媒の温度を一定に保つことで、得られる孔質性ポリアミド酸微粒子の粒径を制御することができる。例えば、30℃より低い温度の貧溶媒を用いると、孔質性ポリアミド酸微粒子の粒径が大きくなる傾向がある。通常、−20℃〜60℃の範囲で、所望の粒径に応じて温度が制御される。
【0027】
注入は、粒子の形質のばらつきを防ぐため、一気に短時間に行うことが好ましい。実験室的には、通常シリンジが用いられる。
【0028】
こうして得られた孔質性ポリアミド酸微粒子は、貧溶媒の温度や、ポリアミド酸と共に溶解させるポリマーの種類、添加量等を制御することにより、通常、粒径が50〜10000nmであり、孔径10〜500nm、0.1〜30%の孔率を有する孔質性のポリアミド酸微粒子となる。
【0029】
上記のように作製された孔質性ポリアミド酸微粒子は、イミド化処理することによって、孔質性ポリイミド微粒子となる。イミド化は、公知のいかなる方法によっても行うことができる。イミド化は、一般的には、その方法として熱的に脱水する熱イミド化と、脱水剤を用いる化学イミド化の二種類があり、いずれの方法を用いてもよく、熱イミド化と化学イミド化とを併用してもよい。例えば、定量的にポリアミド酸をポリイミドに変換するために、化学イミド化を行った後熱イミド化を行うことも好ましい。熱イミド化は通常80℃〜300℃程度に加熱することによって行われる。加熱する時間は加熱温度にもよるが、通常は数分〜数十時間程度である。化学イミド化は、通常常温から150℃程度の温度範囲で、反応溶液に、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物などの脱水剤や、ピリジン、ピコリン、イミダゾール、イソキノリン、トリエチルアミンなどの化学イミド化を促進する効果を有する化合物を添加して行われるが、中でも無水酢酸/ピリジン混合溶媒、あるいは無水酢酸/トリエチルアミン混合溶媒を用いて行うことが好ましい。イミド化は、貧溶媒中に分散された状態のまま行っても、孔質性ポリアミド酸微粒子を単離してから行ってもよいが、作業の簡易性から、通常は貧溶媒中に分散された状態のまま行われる。
【0030】
このように、再沈法によって得られた孔質性ポリアミド酸微粒子をイミド化すると、ポリアミド酸微粒子の粒径やその分散、あるいは孔径、孔率等の、ポリアミド酸微粒子の形状的な性質を保持したままポリイミド微粒子へと変換されるので、高品質なポリイミド微粒子を製造することができる。
【実施例】
【0031】
以下実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
2,2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの重合により得られたポリアミド酸(分子量:68650)を、N−メチルピロリドンに1.5質量%の濃度で溶解した。これに、ポリビニルアルコール(分子量:500)を、ポリアミド酸に対し、それぞれ配合量が(a)20質量%、(b)50質量%および(c)70質量%となるように添加して3種の溶液を調整した。これらの溶液各0.1mlを、室温下、1500rpmの撹拌条件下で、マイクロシリンジを用いて、中性高分子界面活性剤(アクリディック、大日本インキ化学工業社製)を0.1質量%含有する10mlのシクロヘキサンに注入した。すると、各粒子表面に空孔が形成されたポリアミド酸微粒子の分散液を得ることができた。
こうして得られた各孔質性ポリアミド酸微粒子分散液に、ピリジン/無水酢酸のモル比が1/1の混合溶液0.1mlを撹拌下加えて、約2時間保持することによって化学イミド化を完了させ、孔質性ポリアミド酸微粒子の孔質性を保った孔質性ポリイミド微粒子を得た。
孔質性ポリイミド微粒子の孔質性(孔径、粒径、孔率)は、走査電子顕微鏡(SEM)観察した。結果を図1に示す。
【0032】
(実施例2)
2,2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの重合により得られたポリアミド酸(分子量:68650)を、N−メチルピロリドンに1.5質量%の濃度で溶解した。これに、ポリアクリル酸(分子量:2000)を、ポリアミド酸に対し、それぞれ配合量が(a)20質量%、(b)40質量%および(c)60質量%となるように添加して3種の溶液を調整した。これらの溶液各0.1mlを、室温下、1000rpmの撹拌条件下で、マイクロシリンジを用いて、中性高分子界面活性剤(アクリディック、大日本インキ化学工業社製)を0.1質量%含有する10mlのシクロヘキサンにそれぞれ注入した。すると、各粒子表面に空孔が形成されたポリアミド酸微粒子の分散液を得ることができた。
こうして得られた各孔質性ポリアミド酸微粒子分散液に、ピリジン/無水酢酸のモル比が1/1の混合溶液0.1mlを撹拌下加えて、約2時間保持することによって化学イミド化をした後、270℃で3時間保持することにより熱イミド化を行って、イミド化を定量的に進行させた。これにより、孔質性ポリアミド酸微粒子の孔質性を保った孔質性ポリイミド微粒子を得ることができた。
得られた孔質性ポリイミド微粒子の孔質性(孔径、粒径、孔率)は、走査電子顕微鏡(SEM)観察した。結果を図2に示す。
【0033】
(実施例3)
1,4−bis(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物とテトラフルオロ−m−フェニレンジアミンとの重合により得られたポリアミド酸(分子量:40000)を、中性高分子界面活性剤(アクリディック、大日本インキ化学工業社製)を0.1質量%含有するN,N−ジメチルアセトアミドに1.5質量%の濃度で溶解した。これに、ポリアクリル酸(分子量:2000)を、ポリアミド酸に対し、それぞれ配合量が(a)20質量%、(b)40質量%および(c)60質量%となるように添加して3種の溶液を調整した。これらの溶液各0.1mlを、室温下、1500rpmの撹拌条件下で、マイクロシリンジを用いて10mlのシクロヘキサンに注入した。すると、各粒子表面に空孔が形成されたポリアミド酸微粒子の分散液を得ることができた。
こうして得られた各孔質性ポリアミド酸微粒子分散液に、ピリジン/無水酢酸のモル比が1/1の混合溶液0.1mlを撹拌下加えて、約2時間保持することによって化学イミド化を完了させ、孔質性ポリアミド酸微粒子の孔質性を保った孔質性ポリイミド微粒子を得た。
孔質性ポリイミド微粒子の孔質性(孔径、粒径、孔率)は、走査電子顕微鏡(SEM)観察した。結果を図3に示す。
【0034】
(実施例4)
3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンの重合により得られたポリアミド酸(分子量:90000)を、N−メチルピロリドンに1.5質量%の濃度で溶解した。これに、ポリアクリル酸(分子量:450000)を、ポリアミド酸に対し、それぞれ配合量が(a)10質量%、(b)20質量%および(c)30質量%となるように添加して3種の溶液を調整した。これらの溶液各0.1mlを、室温下、1500rpmの撹拌条件下で、マイクロシリンジを用いて、中性高分子界面活性剤(アクリディック、大日本インキ化学工業社製)を0.1質量%含有する10mlのシクロヘキサンに注入した。すると、各粒子表面に空孔が形成されたポリアミド酸微粒子の分散液を得ることができた。
こうして得られた各孔質性ポリアミド酸微粒子分散液に、ピリジン/無水酢酸のモル比が1/1の混合溶液0.1mlを撹拌下加えて、約2時間保持することによって化学イミド化を完了させ、孔質性ポリアミド酸微粒子の孔質性を保った孔質性ポリイミド微粒子を得た。
孔質性ポリイミド微粒子の孔質性(孔径、粒径、孔率)は、走査電子顕微鏡(SEM)観察した。結果を図4に示す。
【0035】
(実施例5)
2,2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの重合により得られたポリアミド酸(分子量:68650)を、N−メチルピロリドンに1.5質量%の濃度で溶解し、さらに、ポリアミド酸に対して40質量%のポリアクリル酸(分子量:2000)を添加した。この溶液0.1mlを、室温下、1000rpmの撹拌条件下で、マイクロシリンジを用いて、10mlのシクロヘキサンに(a)10容積%、(b)20容積%のCSを加えた、2種のシクロヘキサン/CS混合液にそれぞれ注入した。すると、各粒子表面に空孔が形成されたポリアミド酸微粒子の分散液を得ることができた。
こうして得られた各孔質性ポリアミド酸微粒子分散液に、ピリジン/無水酢酸のモル比が1/1の混合溶液0.1mlを撹拌下加えて、約2時間保持することによって化学イミド化をした後、270℃で3時間保持することにより熱イミド化を行って、イミド化を定量的に進行させた。これにより、孔質性ポリアミド酸微粒子の孔質性を保った孔質性ポリイミド微粒子を得ることができた。
得られた孔質性ポリイミド微粒子の孔質性(孔径、粒径、孔率)は、走査電子顕微鏡(SEM)観察した。結果を図5に示す。
【0036】
(実施例6)
2,2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの重合により得られたポリアミド酸(分子量:68650)を、N−メチルピロリドンに1.5質量%の濃度で溶解し、さらに、ポリアミド酸に対して20質量%のポリプロピレングリコール−2,4−ジイソシアン酸トリレン(分子量:4000)を添加した。この溶液0.1mlを、室温下、1000rpmの撹拌条件下で、マイクロシリンジを用いて、中性高分子界面活性剤(アクリディック、大日本インキ化学工業社製)を0.1質量%含有する10mlのシクロヘキサンに注入した。すると、粒子表面に空孔が形成されたポリアミド酸微粒子の分散液を得ることができた。
こうして得られた孔質性ポリアミド酸微粒子分散液に、ピリジン/無水酢酸のモル比が1/1の混合溶液0.1mlを撹拌下加えて、約2時間保持することによって化学イミド化をした後、270℃で3時間保持することにより熱イミド化を行って、イミド化を定量的に進行させた。これにより、孔質性ポリアミド酸微粒子の孔質性を保った孔質性ポリイミド微粒子を得ることができた。
得られた孔質性ポリイミド微粒子の孔質性(孔径、粒径、孔率)は、走査電子顕微鏡(SEM)観察した。結果を図6に示す。
【0037】
(結果)
実施例1〜6の走査電子顕微鏡の写真より、実験条件によってサイズは異なるが、各約50nm〜1000nm程度の粒径の、粒径、孔径、孔率の分布が狭くて均質な孔質性ポリイミド微粒子が得られていることが分かる。ポリアミド酸とともに添加するポリマーの量を変化させた実施例1〜4では、形成される孔質性ポリアミド酸微粒子の孔率や孔径は、ポリマーの配合量の増大に伴って大きくなっていった。さらに、貧溶媒の配合を変化させた実施例5では、形成される孔質性ポリアミド酸微粒子の粒径や孔率は、CSの配合が多い方が小さい結果となった。これらのことから、貧溶媒やポリマーの種類、ポリマーの配合量を変更することにより、様々な粒径、孔径、孔率の孔質性ポリイミド酸微粒子が作成できることが分かる。
【0038】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1で得られた孔質性ポリイミド微粒子のSEM写真である。
【図2】実施例2で得られた孔質性ポリイミド微粒子のSEM写真である。
【図3】実施例3で得られた孔質性ポリイミド微粒子のSEM写真である。
【図4】実施例4で得られた孔質性ポリイミド微粒子のSEM写真である。
【図5】実施例5で得られた孔質性ポリイミド微粒子のSEM写真である。
【図6】実施例6で得られた孔質性ポリイミド微粒子のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒に、ポリアミド酸と、前記ポリアミド酸に対して0.5〜100質量%の、前記ポリアミド酸と相溶性かつ前記有機溶媒に可溶性であるポリマーとを溶解させた、ポリアミド酸/ポリマー混合溶液を、前記有機溶媒と相溶性である前記ポリアミド酸の貧溶媒に注入することを特徴とする、孔質性ポリアミド酸微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒が、極性アミド系溶媒であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の孔質性ポリアミド酸微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ポリマーは、前記ポリマーの繰り返し単位が、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、ヒドロキシル基から選択される置換基を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の孔質性ポリアミド酸微粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により作成された孔質性ポリアミド酸微粒子を、さらにイミド化処理することを特徴とする孔質性ポリイミド微粒子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−233023(P2006−233023A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49910(P2005−49910)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第65回応用物理学会学術講演会,社団法人 応用物理学会主催,2004年9月1日開催
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】