説明

学習システム

【課題】 本発明は効率的な学習が可能となるように配信する問題を学習者に応じて適切な時刻において柔軟かつ適切に選択・配信できる学習システムを提供する。
【解決手段】 問題・解答データベース20には学習対象に関する問題と解答の問題・解答セットを多数蓄積されている。また、学習者アドレス情報記憶手段には学習者携帯端末のアドレス情報が登録されている。選択処理手段50は問題・解答データベース20から指定時刻にk(k≧1)個の問題・解答セットを選択し、問題提示手段60を介して問題(問題データ)のみを学習者携帯端末200に送信する。このように指定時刻にk個の一問一答形式の学習を学習者に施す。学習者からの解答(解答データ)を正誤判断・送信手段により正誤判断し、正誤結果(正誤データ)を送信し、学習履歴を学習履歴データベースに記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は学習システムに関する。特に、学習者が学習対象に関する知識の確認ができるように工夫された学習システムである。例えば、語学や歴史などの教育科目や、資格試験向け対策学習、技能習得、ビジネスマナーや担当商品の知識など会社で要求される知識習得、ワインや料理などのカルチャー学習、脳活性化トレーニングなどに適用可能な学習システムである。
【背景技術】
【0002】
語学や歴史などの教育科目や資格試験向け対策学習などにおいて様々なシステムが開発されている。
近年の通信ネットワークの普及に伴い、スタンドアロン型の学習システムに加え、ネットワーク型の遠隔学習システムも開発されている。通信ネットワークを用いた遠隔学習システムは、高い将来性と可能性とを有している。近年におけるネットワークの高速化に伴い、遠隔学習システムの利用者はますます増加するものと期待される。
インターネット上では登録済み会員に特定の電子メールを一斉に電子メールを送信する、いわゆるメールマガジン(通称メルマガ)が普及し、事前に登録された会員に定期もしくは不定期に電子メールを一斉に送信し情報伝達することが容易になってきた。例えば「まぐまぐ!」(www.mag2.com)というメールマガジンがあり、同メールマガジンではネットワーク型の学習システムが知られている。
【0003】
しかし、メールマガジンのように送信者からの一斉送信では受信者側の都合は考慮されず、そのために受信者である単語学習者としては受信し閲覧するには都合が悪い時間帯に受信することもあり、ついつい受信メールを読む機会を失うこともあり学習が滞る場合も多々あった。
【0004】
そこで、メールマガジンのように送信者からの一方的な一斉送信ではなく、電子メールを用いた送信者からの個別配信により学習時間と学習内容をカスタマイズする工夫をした学習システムが開発されている。
例えば、特開2006−030302号公報には、学習者が指定時刻を登録し、当該時刻に学習内容を含む電子メールを送信する学習システムが開示されている。学習者個々人の学習に都合の良い時刻に電子メールが送信されるので、学習者にとってタイムリー時刻に学習が開始できるシステムとなっている。
【0005】
また、同様に、特開2001−356679号公報には、学習スケジュール情報に基づき学習に係わる文字情報をサーバのアクセス番号とともにメールとして学習対象者の携帯する携帯電話機へ定期的に配信し、学習対象者は、携帯電話機へ配信されたメールに含まれるアクセス番号に基づき上記サーバにアクセスする学習システムが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−030302号公報
【特許文献2】特開2001−356679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のいずれの従来技術においても以下のような問題がある。
第1の問題は、学習内容を学習者に応じて如何に計画的に選択し、配信するかという問題である。
特開2006−030302号公報に開示された技術、特開2001−356679号公報に開示された技術のいずれも、指定日時や指定時刻に定期的に学習内容を携帯電話の電子メールに含めて配信するものであり、このように携帯電話の電子メールなどを用いて定期配信する学習システムの場合、多数の学習内容を一度に配信することは前提とならず、少量の学習内容を定期配信する必要がある。ここで、学習の成果を確実に上げるためには計画的に配信する学習内容を如何に選択するかが極めて重要となる。特開2006−030302号公報に開示された技術、特開2001−356679号公報に開示された技術には、学習内容を如何に計画的に選択し、配信するかについては開示されていない。
【0008】
第2の問題は、学習対象の理解を深め確認するための体系的かつ網羅的な問題を如何に準備するかということが問題となる。多数の学習内容を一度に配信するのではなく少量の学習内容を定期配信するため、一つ一つが短く効率的に知識を確認できる問題形式とする必要があり、さらに、それら短い問題を多数集積することにより学習対象を体系的かつ網羅的にカバーする必要がある。しかし、ただ単純に問題の数を増やす対応を取るとかえって学習効率が落ちることとなる。
上記のように、第2の問題で指摘したように、如何に効率的に体系化された問題を準備できるか、さらに第1の問題で指摘したように、効率的な学習が可能となるように如何に配信する問題を学習者に応じて選択できるかが重要な課題となる。
【0009】
本発明は上述の問題に鑑み、効率的な学習が可能となるように配信する問題を学習者に応じて適切な時刻において柔軟かつ適切に選択・配信できる学習システムを提供することを目的とする。また、学習者が学習対象を効率的に学習できるように適切に体系化された問題を準備した学習システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の学習システムの基本構成は、
学習対象に関する問題と解答の問題・解答セットを多数蓄積した問題・解答データベースと、
学習者の保有する通信機能付きの学習者携帯端末のアドレス情報を登録・記憶する学習者アドレス情報記憶手段と、
前記問題・解答データベースから指定時刻にk(k≧1)個の問題・解答セットを選択する選択処理手段と、
前記選択処理手段の選択にかかる問題・解答セットのうち、問題(問題データ)のみを前記学習者アドレス情報記憶手段に記憶されているアドレス情報に従って前記学習者携帯端末に送信する問題提示手段と、
前記学習者の返信にかかる解答(解答データ)を前記学習者携帯端末から受信する解答受信手段と、
前記学習者から受信した前記解答に対する正誤結果(正誤データ)を送信する正誤判断・送信手段を備え、
前記指定時刻にk個の一問一答形式の学習を前記学習者に施すものである。
【0011】
なお、前記問題提示手段は、上記した学習者携帯端末に問題(問題データ)そのものの送信に代え、前記選択処理手段の選択にかかる問題・解答セットのうち、問題(問題データ)を表示するウェブページのURLを前記学習者アドレス情報記憶手段に記憶されているアドレス情報に従って前記学習者携帯端末に送信することとしても良い。
この場合、前記解答受信手段は、前記ウェブ上のページを閲覧した学習者の返信にかかる解答(解答データ)を前記学習者携帯端末から受信することとなる。
【0012】
なお、前記問題・解答データベース中の各々の問題(問題データ)が、前記学習対象のカテゴリー別に分類するカテゴリー軸と、前記問題の難易度別に分類する難易度軸の2軸からなる2次元マトリックスのセルのうちどのセルに属するかを決定するセル決定手段を備える構成とすることができる。
【0013】
次に、本発明の第2の学習システムは、上記第1の学習システムの構成に対して、選択処理手段による問題選択に関する工夫(第1の工夫)を施したものである。つまり、学習システムの基本構成においてさらに、
前記学習者に対して過去に選択され送信された各々の問題(問題データ)とその解答の正誤結果(正誤データ)を基に、当該学習者の前記2次元マトリックスのセル別の正解率(セル別正解率)を計算するセル別正解率計算手段と、
学習成果を十分とする目標正解率を設定する目標正解率設定手段を備え、
前記選択処理手段によるk個の問題(問題データ)の選択において、前記カテゴリーを選択し、当該カテゴリーにおいて前記セル別正解率が前記目標正解率を下回るセルのうち、前記難易度軸上最も低いレベルのセル(境界セル)に属する問題(問題データ)が少なくとも1つは含まれるように選択することを特徴とする。
【0014】
なお、問題選択に関して工夫(第1の工夫)を施す構成とした場合、学習過程において境界セルと判断されたセルから選択処理手段によって問題・解答セットが選択されるので、この境界セルと判断される頻度に応じて問題・解答セットを厚く準備しておけば学習システム構築の効率が良くなる。
そこで、前記学習システムにおいて、大規模数の前記問題・解答セットの準備に先立ち、試験的に少規模数の前記問題・解答セットを準備し、
小規模数の前記問題・解答セットを搭載した前記学習システムを用いてサンプル学習者の学習結果において、前記各セルごとに前記境界セルとして選択された回数をカウントし、大規模数の前記問題・解答セットの準備において前記カウントにかかる回数の多さに応じて各セルに準備すべき問題・解答セットの数を決定することが好ましいと言える。
【0015】
次に、本発明の第3の学習システムは、上記第1の学習システムの構成に対して、選択処理手段による問題選択に関する工夫(第2の工夫)を施したものである。つまり、学習システムの基本構成においてさらに、
前記2次元マトリックスの各セルのスコアを管理し、スコアの加減を制御するスコア管理手段を備え、
前記スコア管理手段は、前記選択処理手段により選択され送信された前記問題(問題データ)に対して前記返信にかかる前記解答(解答データ)が正解の場合、前記問題(問題データ)の属するセル及び前記難易度軸上当該セルより下に位置するすべてのセルに対してスコアmを足し(ただしnを超える場合はnとし(m<n))、前記解答(解答データ)が誤りの場合、前記問題(問題データ)の属するセル及び前記難易度軸上当該セルより上に位置するすべてのセルに対してスコアmを引き(ただしマイナスとなる場合は0とし)、
前記選択処理手段は、前記スコアがn/2のセルを中位レベルセルとし、前記難易度軸上前記中位レベルセルより上にあるセルを上位レベルセルとし、下にあるセルを下位レベルセルとし、前記選択処理手段によるk(k≧3とする)個の問題(問題データ)の選択において、前記カテゴリーを選択し、当該カテゴリーにおいて前記上位レベルセル、前記中位レベルセル、前記下位レベルセルそれぞれから少なくとも1つは含まれるように選択することを特徴とする。
【0016】
なお、問題選択に関して工夫(第2の工夫)を施す構成とした場合、学習過程において中位レベルセルと判断されたセルから選択処理手段によって問題・解答セットが選択されるので、この中位レベルセルと判断される頻度に応じて問題・解答セットを厚く準備しておけば学習システム構築の効率が良くなる。
そこで、前記学習システムにおいて、大規模数の前記問題・解答セットの準備に先立ち、試験的に少規模数の前記問題・解答セットを準備し、
小規模数の前記問題・解答セットを搭載した前記学習システムを用いてサンプル学習者の学習結果において、前記各セルごとに前記中位レベルセルとして選択された回数をカウントし、大規模数の前記問題・解答セットの準備において前記カウントにかかる回数の多さに応じて各セルに準備すべき問題・解答セットの数を決定することが好ましいと言える。
【0017】
本発明の学習システムは教育、教養習得、資格勉強、仕事知識習得、脳活性化トレーニングなどに適用することができる。
つまり、前記学習対象が教育科目であり、前記教育科目に関する知識が学習できるように適用することも可能である。
また、前記学習対象が特定の教養であり、前記特定の教養に関する知識が学習できるように適用することも可能である。
また、前記学習対象が資格であり、前記資格に関する知識が学習できるように適用することも可能である。
また、前記学習対象が仕事に関する知識であり、前記仕事に関する知識が学習できるように適用することも可能である。
また、前記学習対象が脳活性化を促す問題であり、前記脳活性化を促すトレーニングができるように適用することも可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の学習システムによれば、効率的な学習が可能となるように配信する問題を学習者に応じて適切な時刻において柔軟かつ適切に選択・配信できる。
また、本発明の学習システムによれば、学習者が学習対象を効率的に学習できるように適切に体系化された問題を準備することができる。つまり、大規模数の問題・解答セットの準備に先立ち、小規模数の問題・解答セットを用いてサンプル学習者に試験的に学習させてその学習結果を利用することにより、あらかじめ各セルに配分すべき問題・解答セットの数を合理的に決めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の学習システムの実施形態を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に示した具体的な形状、個数、角度などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0020】
本発明の第1の学習システムの一例を示す。
図1は本発明の第1の学習システム100の構成例を示す図面である。
制御部10は学習システム100全体の処理の流れを制御する部分である。
制御部10はスケジューラ11を含んでいる。スケジューラ11には、各学習者に関して、学習者ID情報とともに各学習者が問題送信を希望した時刻である指定時刻情報が記憶されている。
問題・解答データベース20は、学習対象に関する問題と解答のセットである問題・解答セットを多数蓄積したデータベースである。問題・解答データベース20に蓄積されている各問題・解答セットは後述するように選択処理手段50により効率的に選択されるように、学習対象のカテゴリーにより分類・整理されたデータ構造、難易度別に分類・整理されたデータ構造を持つことが好ましい。なお、問題・解答セットとして問題データと解答データに加え解説文を持たせても良い。学習者が後述する正誤結果を見る場合に適切な解説文を併せて見ることにより学習効果が上がるからである。
【0021】
学習者アドレス情報記憶手段30は、各学習者の保有する学習者携帯端末200のアドレス情報を登録・記憶している部分である。なお、図1に記載した構成は学習者アドレス情報記憶手段30はスケジューラから独立した構成となっているがスケジューラ11の中に当該学習者アドレス情報記憶手段30を含める構成も可能である。
学習履歴データベース40は、後述するように、各学習者が本学習システム100を用いて学習した学習内容、学習結果などの学習履歴情報を登録・格納したデータベースである。各学習者の学習状況が把握できる各種情報、例えば、学習者ID情報、学習日時、学習回数、送信された問題、受信した解答、正誤の別、正解率(誤答率)などの情報が登録・格納されている。
【0022】
選択処理手段50は、問題・解答データベース20から各学習者に対して、スケジューラ11に記憶されている指定時刻にk(k≧1)個の問題・解答セットを選択する部分である。指定時刻は例えば、朝9時00分や、夜20時30分など任意に学習者が指定した時刻でも良いし、午前中や午後など一定範囲の時間帯の指定でも良い。選択個数k個は1以上の数であり、例えば、1個や3個など一定数の指定でも良いし、1個から5個までの間など一定範囲の不定数の指定でも良い。
選択処理手段50による問題・解答データベース20からの問題・解答セットの選択ルールには様々なものが採用され得る。例えば、発生した乱数によりランダムに選択するルール(ランダム選択ルール)がある。また、問題の難易度順に簡単な問題から順にシーケンシャルに選択して行くルール(シーケンシャル選択ルール)などがある。
【0023】
問題提示手段60は、選択処理手段50の選択にかかる問題・解答セットを受け取り、そのうち、問題(問題データ)のみを学習者アドレス情報記憶手段30に記憶されているアドレス情報に従って、学習者携帯端末200に対して送信する部分である。
なお、問題提示手段60は、上記した問題(問題データ)そのものを学習者携帯端末200への送信に代え、問題(問題データ)を表示するウェブページのURLを学習者携帯端末200に送信することとしても良い。
【0024】
解答受信手段70は、学習者の返信にかかる解答(解答データ)を学習者携帯端末200から受信する部分である。
正誤判断・送信手段80は、学習者携帯端末200から受信した解答に対する正誤結果(正誤データ)を送信する部分である。正誤データを送信することにより、学習者は自分の解答が正しかったのか誤っていたのかが分かり、また、誤っていた場合に正しい答えは何であったのかをその場で確認することができ、学習の成果が上がることが期待できる。
【0025】
本発明の第1の学習システム100によれば、指定時刻にk個の一問一答形式の学習を学習者に施すことができ、効率的な学習が可能となるように配信する問題を学習者に応じて適切な時刻において柔軟かつ適切に選択・配信できる。
【0026】
以下、具体例を挙げつつ、図1に示した本発明の第1の学習システム100による学習の流れを図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
ここでは既に、スケジューラ11において、各学習者に関する諸情報(学習者ID情報、各学習者の指定時刻の登録など必要な情報はすべて取り揃えられているものとする。一例として、学習者A氏に関し、学習者ID情報“0001”、指定時刻21時00分が登録されているとする。
また、選択処理手段50が採用する選択処理ルールは問題の難易度順に簡単な問題から順にシーケンシャルに選択して行くルール(シーケンシャル選択ルール)とする。また学習者A氏が保有する携帯端末は携帯電話であったとする。
【0027】
(1)スケジューラ11による起動(図1(1)、図2ステップS1:Y)
スケジューラ11は常に時刻を管理しており、指定時刻である21時00分になると、学習者A氏のID情報“0001”を選択処理手段50に送信する(図2ステップS1)。
【0028】
(2)選択処理手段50による問題・解答セットの選択処理(図1(2)、図2ステップS2)
選択処理手段50はスケジューラ11から受け取った学習者ID情報“0001”に基づいて、問題・解答データベース20に対してアクセスし、問題・解答データベース20から適切な問題・解答セットを選択する。ここで、選択にあたって学習者の学習履歴情報が必要な場合は学習履歴データベース40にアクセスし、現在までの学習履歴情報を照会する。
この例では、選択処理手段50が採用する選択処理ルールは“シーケンシャル抽出ルール”であるので、学習履歴データベース40にアクセスし、現在までの学習履歴情報を照会し、学習済みの問題・解答セットを特定する。
また、この例では選択処理手段が選択する問題・解答セットの数kは1とする。
【0029】
図3はシーケンシャル選択ルールを模式的に説明する図である。
図3(a)は問題・解答セットがカテゴリー別に分類されず、すべての問題を例えば難易度順に一次元マトリックス状に並べた様子を模式的に示している。問題・解答セットの選択は難易度順に低度のものから高位のものへ順々に選択されて行く。学習者ID情報別に過去に選択した問題・解答セットを記憶しておけば、問題・解答セットの次に位置する問題・解答セットを選択すれば良い。
図3(b)は問題・解答セットカテゴリー別に分類されたもので、カテゴリーと難易度による2次元マトリックス状に並べられた様子を模式的に示している。選択処理手段50はカテゴリー選択を行い、さらに、難易度を選択する。学習者ID情報別に過去に選択した問題・解答セットを記憶しておけば、カテゴリー別に過去の選択にかかる問題・解答セットの次に位置する問題・解答セットを選択すれば良い。
ここでは例えば、カテゴリー別に分類されていない図3(a)の例とし、難易度順のソートで85位の問題・解答セットまで学習済みだったとする。選択処理手段50は問題・解答データベース20から次の順番の問題・解答セットを選択する。上記例では難易度順のソートで84位の問題・解答セットを選択する。
【0030】
(3)問題提示手段60への問題データの受け渡し、正誤判断・送信手段80への解答データの受け渡し(図1(3)、図2ステップS3)
選択処理手段50は選択した問題・解答セットのうち問題データのみを問題提示手段60に渡す。また、選択処理手段50は選択した問題・解答セットのうち解答データを正誤判断・送信手段80に渡す。例えば難易度順で84位の解答が“解答c”であったとする。なお、解答データとともに解説文を渡しても良い。
【0031】
(4)学習者アドレス情報の取得(図1(4)、図2ステップS4)
問題提示手段60は問題データを学習者A氏に送信するため、学習者アドレス情報記憶手段30に対して学習者ID情報を基に紹介し、学習者携帯端末200のアドレス情報を取得する。例えば、学習者ID情報“0001”に対してアドレス情報“○○○○.・・・”が登録されていたとする。
【0032】
(5)問題データの提示(図1(5)、図2ステップS5)
問題提示手段60は学習者携帯端末200に対して問題データを提示する。
問題の提示には少なくとも2通りの手段がある。
第1の手段は、問題提示手段60がアドレス情報“○○○○.・・・”宛てに問題データを送信する手段である。学習者A氏が保有する学習者携帯端末200に対して問題データが送信され、学習者A氏は保有する学習者携帯端末200により問題データを受信する。例えば、ディスプレイ付きの携帯電話の場合、携帯電話のディスプレイに問題が表示される。
第2の手段は、問題提示手段60が問題データを表示するウェブページのURLを学習者携帯端末200に送信する手段である。この場合、学習者は学習者携帯端末200に送信されたURLに従って当該URLに対してアクセスし、問題文を閲覧することとなる。
【0033】
(6)学習者による解答データの返信、解答受信手段70による解答データの受信(図1(6)、図2ステップS6)
学習者Aは任意の時間に当該問題を解き、得られた解答を学習者携帯端末200の入力機能を用いて入力し、通信機能を用いて返信する。ここでは、難易度順84位の問題の解答が選択形式となっており、学習者Aは“解答b”を選択したとする。なお、解答データは学習者ID情報とセットで送信される。
【0034】
(7)解答データの正誤判断、正誤結果の送信(図1(7)、図2ステップS7)
解答受信手段70は受信した解答データを正誤判断・送信手段80に渡す。
まず、正誤判断・送信手段80は学習者ID情報“0001”から学習者Aを特定する。次に、解答の正誤を判断する。正誤判断・送信手段80には選択処理手段50からすでに解答データが与えられているので、正誤判断・送信手段80は学習者Aから返信された解答データと選択処理手段50から渡されている解答データを比較し、正誤判断を行なう。例えば、難易度順で84位の問題について、学習者Aから返信された解答データが“解答b”であり、選択処理手段50から渡されている解答データが“解答c”であるので誤りと判断される。
【0035】
(8)正誤結果の送信(図1(8)、図2ステップS8)
正誤判断・送信手段80は正誤判断結果を学習者A氏に送信するため、学習者アドレス情報記憶手段30に対して学習者ID情報を基に紹介し、学習者携帯端末200のアドレス情報を取得する。ここでは、学習者ID情報“0001”に対してアドレス情報“○○○○.・・・”が取得される。
正誤判断・送信手段80は正誤判断結果を学習者携帯端末200に送信する。
ここでは、誤りである旨とともに正しい解答データ“解答c”が送信される。なお、解説文を与えられている場合、解説文を添えて送っても良い。
【0036】
(9)学習履歴の更新(図1(9)、図2ステップS9)
正誤判断・送信手段80は正誤判断結果を学習履歴情報データベース40に対して通知し、学習履歴情報データベース40は学習者Aの学習履歴情報を更新する。学習履歴情報データベース40に対して、学習者ID情報、問題・解答セットの情報、正誤判断結果情報などを通知する。ここでは学習者ID情報“0001”、問題・解答セットの情報(難易度順84位の問題・解答セットを特定する情報)、正誤判断結果情報(誤りであった旨の情報)が通知され、学習履歴情報データベース40は学習履歴情報を更新する。
【0037】
学習履歴情報データベース40の学習履歴情報の更新が終了すると、一連のプロセスを終了する。スケジューラ11により次の指定時刻における起動があるまで学習システム100は新しいプロセスの起動待ち状態となる(ステップS1に戻る)。
【実施例2】
【0038】
実施例2として、問題・解答データベース中の問題・解答セットがカテゴリーと問題難易度により形成される2次元マトリックスのどのセルに属するかを決めておき、選択処理手段50によって、まず、セル単位で選択され、次にそのセルに属する問題・解答セットから所定個の問題・解答セットを抽出・選択する工夫を述べる。
【0039】
図4は実施例2にかかる学習システム100aの構成を示す図である。
問題・解答データベース20aはセル決定手段21aを備えている。もちろん、図4のようにセル決定手段21aが問題・解答データベース20aに含まれている構成も可能であるし、問題・解答データベース20aと連携可能な形で問題・解答データベース20aからは独立した構成要素とする構成も可能である。
セル決定手段21aは、学習対象のカテゴリー別に分類するカテゴリー軸と、問題の難易度別に分類する難易度軸の2軸からなる2次元マトリックスを想定し、問題・解答データベース20a中の各々の問題(問題データ)が2次元マトリックスのセルのうちどのセルに属するかを決定する。
【0040】
図5は、セル決定手段21aによって形成される2次元マトリックスと、選択されたあるセルに属している問題・解答セット群と、問題・解答セットの選択の様子を模式的に示した図である。
学習対象のカテゴリー別に分類するカテゴリー軸と、問題の難易度別に分類する難易度軸の2軸からなる2次元マトリックスが形成され、各セルが定義される。つまり、各セルは問題カテゴリー○○、問題難易度△△の交点として定義付けられる。
【0041】
新作の問題・解答セットが作成されると問題・解答データベース20a中に適宜格納されて行く。ここで、新作の問題・解答セットにはカテゴリーと問題難易度の属性が与えられているものとする。セル決定手段21aは問題・解答セットの属性であるカテゴリーと問題難易度をチェックし、該当するセルに配分し、問題・解答データベース20a中に整理・格納する。
各セルには上記のように配分された問題・解答セットが属している。図5の右側にはある一つのセルに属している問題・解答セット群を模式的に示している。この例ではu個の問題・解答セットが属している。
【0042】
選択処理手段50は選択において、まずセルを選択する。このセルを選択するルールは様々あり得る。発生した乱数によりランダムにセルを選択するルール(ランダム選択ルール)がある。また、問題の難易度順に難易度の低いセルから順にシーケンシャルに選択して行くルール(シーケンシャル選択ルール)がある。また、後述する実施例3で説明する境界セル重点抽出ルールや、後述する実施例4で説明する学習到達レベル適応抽出ルールなどがある。これらは各実施例において詳述する。
【0043】
選択処理手段50は次に、選択されたセルに属する問題・解答セット群の中から問題・解答セットを選択する。図5の右側の例では問題・解答セットbが選択されている。
この問題・解答セット群の中から問題・解答セットを選択するルールも様々あり得る。例えば、発生した乱数によりランダムに問題・解答セットを選択するルール(ランダム選択ルール)がある。また、過去に当該セルが選択されたときに選択された問題・解答セットの次に難易度の高い問題・解答セットを選択するルール(シーケンシャル選択ルール)がある。
【0044】
実施例2にかかる学習システム100aの処理の流れは図2のフローチャートと同様で良いが、問題・解答セットの2次元マトリックスの各セルへの配分処理が先立って行なわれて完了していることとなる。また、選択処理手段50による選択処理(ステップS2)が2段階の選択、つまり、セルの選択処理と、セル中に属する問題・解答セットの選択処理が行なわれることとなる。
【実施例3】
【0045】
本発明の第2の学習システムの一例を示す。
本発明の第2の学習システムは実施例2の構成を前提とするもので、本発明の第2の学習システムでは選択処理手段50が採用する選択ルールが“境界セル重点抽出ルール”である。
【0046】
図6は本発明の第2の学習システム100bの構成例を示す図である。
同じ付番を付した構成要素は実施例1の図1の基本構成で示した構成要素、図4の構成要素と同様で良く、ここでは詳しい説明は省略し、図1の構成要素、図4の構成要素と異なる部分について重点的に説明する。
本発明の第2の学習システム100bの学習履歴データベース40bは、セル別正解率計算手段41bを備えている。
【0047】
セル別正解率計算手段41bは、学習者に対して過去に選択され送信された各々の問題(問題データ)とその解答の正誤結果(正誤データ)を基に、当該学習者の2次元マトリックスのセル別の正解率(セル別正解率)を計算する。
正解率は学習者の学習達成度合いを示す指標としては重要な指標であるところ、本発明の第2の学習システム100bは実施例2に示した、カテゴリーと問題難易度により形成される2次元マトリックスのセルという概念を導入しており、正解率をセル単位で計算することにより、学習者ごとに、どのカテゴリーのどの問題難易度において正解率がどのぐらいかを把握することができ、客観的な弱点や学習達成度合いを把握することができる。
【0048】
もし、単純にカテゴリー単位で正解率を出すものであれば、カテゴリー別の得手不得手は漠然と把握できても真の学習達成度は分からない。なぜなら、本来は不得手なカテゴリーであるが故に問題難易度が低い問題が数多く送信されれば正解率が見た目は上がってしまうし、本来は得手のカテゴリーであっても問題難易度が高い問題が数多く送信されれば正解率が見た目は下がってしまうからである。また、現在の学習者の学習達成状況において、カテゴリーごとにどの程度の難易度の問題を送信するのが適切なのか判断は難しい。
本発明のようにセル単位で正解率を計算しておけば、カテゴリーごとの問題難易度ごとに正解率の変動が細かく分かり、カテゴリーごとに学習者の学習達成度合いが把握でき、現在の学習者の学習達成状況において、セル単位で適切な出題範囲を選定することができる。
【0049】
次に、実施例3の構成において、目標正解率設定手段90bが設けられている。目標正解率設定手段90bは、学習成果を十分とする目標正解率を設定する部分である。この例では目標正解率設定手段90bは外部入力手段を持ち、外部から値が設定できる仕組みとなっている。例えば、目標が正解率60%とすると、目標正解率の設定値として60%と入力する。
【0050】
次に、本発明の第2の学習システム100の選択処理手段50bは、選択ルールとして“境界セル重点抽出ルール”を採用している。
境界セル重点抽出ルールとは、セル別正解率が目標正解率を下回るセルのうち、難易度軸上最も低いレベルのセル(境界セル)に属する問題(問題データ)が少なくとも1つは含まれるように選択するルールである。選択処理手段50による選択個数が一つよりも複数個であれば、少なくとも一つは境界セルに属する問題・解答セットが選択されるが、残りの選択においては境界セル以外の選択を許しても良い。この残りのものに関する選択ルールは様々なものが適用可能である。
【0051】
図7は“境界セル重点抽出ルール”に基づくセル選択の様子を模式的に示した図である。図7は簡単に4つのカテゴリーしか設けていない。横軸がカテゴリー、縦軸が問題難易度の2次元マトリックスが形成され各セルが定義されている。ここで、セル別正解率計算手段41bは過去の学習履歴情報を基づいて各セルの正解率を計算されている。また、目標正解率設定手段90bによって目標正解率が与えられる。
【0052】
選択処理手段50bはまず境界セルを特定する。セル別正解率が目標正解率を下回るセルのうち、難易度軸上最も低いレベルのセルが境界セルとして特定する。図7では斜線でハッチングしたセルが境界セルを表わしている。
次に、選択処理手段50bはセルの選択において境界セルが少なくとも1つは含まれるように選択する。つまり、kが3がすると少なくとも一つは境界セルが含まれるようにセルを選択する。図7の例では一つのカテゴリから2つ、他のカテゴリから1つのセルを選択しているが、境界セルが2つ、境界セル以外のセルが1つ含まれるように選択されている。
【0053】
境界セルは正解率が目標正解率に未達成な問題難易度のうちもっとも低いレベルであり、現状の学習者には問題難易度がもっとも適するものであり学習効果がもっとも効果的に得られるものと言える。k個の選択のうち少なくとも一つは境界セルが含まれるようにセルを選択すれば良い。なお、k個の選択のすべてが境界セルとする必要もなく、中にはチャレンジとして問題難易度が高いセルに属する問題・解答セットや知識の確実化を狙って問題難易度が低いセルに属する問題・解答セットを選択する工夫も盛り込むことができる。
【0054】
次に、この境界セルの概念を用いる実施例3の構成において、学習システム100bを本格的に構築するために、いかに効率的に問題・解答データベース20bを構築するかという工夫について述べる。
問題・解答データベース20bにおける大規模数の問題・解答セットの準備に先立ち、試験的に問題・解答データベース20bにおいて少規模数の問題・解答セットを準備しておき、小規模数の問題・解答セットを搭載した学習システムを用いてサンプル学習者の学習結果を利用する。
【0055】
サンプル学習者の学習結果は学習履歴データベース40bに記憶される。ここで、学習履歴データベース40bの学習履歴を調べ、各セルごとに境界セルとして選択された回数をカウントすれば、学習者が学習していく過程において境界セルとして選択される頻度を推定することができる。この推定結果を利用し、大規模数の問題・解答セットの準備においてカウントにかかる回数の多さに応じて各セルに準備すべき問題・解答セットの数を決定すれば効率良く問題・解答データベース20bを構築することができる。
【0056】
なお、もし、学習者が全員、問題難易度が最も高いセルまで目指す場合を想定すれば、問題難易度が高いセルになるほど正解率が目標正解率を上まわるのが困難となり、境界セルとしてカウントされる回数が増えることが予想されるところである。しかし、実際の学習者の目標は常に最難度の知識まで求めるものではなく、ある程度のレベルにまで達すれば自らの判断で目標が達成されたと判断する場合も多いと想定される。例えば英語学習で言えば、日常会話ができれば良いと考える人は多く想定されるが、通訳者やネイティブスピーカーレベルまで英語を極めたいと考える人はそれほど多くないと想定される。この場合、おのずと多くの学習者があるレベルの問題難易度のセルまでで学習を終了することとなり、かならずしも、問題の難易度が高いセルほど境界セルとしてカウントされる回数が多いとは言えない。大雑把に言えば、英語学習や教養取得などでは下位レベルから中位レベルの問題難易度のセルが境界セルとしてカウントされることが多くなると考えられる。一方、資格試験などでは資格試験のボーダーレベルの少し下から少し上までのレベルの問題難易度のセルが境界セルとしてカウントされることが考えられる。
【実施例4】
【0057】
本発明の第3の学習システムの一例を示す。
本発明の第3の学習システムは実施例2の構成、2次元マトリックスのセルの概念を前提とし、本発明の第3の学習システムの選択処理手段が採用する選択ルールが“学習到達レベル適応抽出ルール”である。
図8は本発明の第3の学習システム100cの構成例を示す図である。
同じ付番を付した構成要素は実施例1の図1の基本構成で示した構成要素、図4の構成要素と同様で良く、ここでは詳しい説明は省略し、図1の構成要素、図4の構成要素と異なる部分について重点的に説明する。
【0058】
本発明の第3の学習システム100cの学習履歴データベース40cは、スコア管理手段42cを備えている。スコア管理手段42cは2次元マトリックスの各セルのスコアを管理し、スコアの加減を制御する要素である。
ここで、本発明の第3の学習システム100cに言うスコアとは各セルについて付ける点数であり、以下のように計算される新しい概念のものである。なお、以下においてnは学習達成の目標として設定するスコア、mはスコアの増減の単位である。例えばmは1で良い。
【0059】
スコア管理手段42cは、選択処理手段50cにより選択され送信された問題(問題データ)に対して返信にかかる解答(解答データ)が正解の場合、問題(問題データ)の属するセル及び難易度軸上当該セルより下に位置するすべてのセルに対してスコアmを足し(ただしnを超える場合はnとし(m<n))、解答(解答データ)が誤りの場合、問題(問題データ)の属するセル及び難易度軸上当該セルより上に位置するすべてのセルに対してスコアmを引き(ただしマイナスとなる場合は0とし)、点数を計算して行くものである。
【0060】
実施例3に示した“境界セル重点抽出ルール”は、正解率をベースにするもので、過去の正誤の結果は静的なものであり、動的に後から変更しない。つまり、学習者の日々成長して行く知識レベルには即応するものではなく、過去の誤答は現時点においても誤答扱いのままとする。
一方、本実施例4に示す“学習到達レベル適応抽出ルール”は、現時点における正誤の結果を過去のデータに次々と反映して行く手法であり、ある問題難易度レベルの問題について正解すると、その問題難易度レベルのセルまでの学習は一定程度達成されたと推測し、現時点では当該問題難易度レベル以下のレベルのセルの学習についても進んでいるはずとしてスコアを増やすという取扱いをする。逆に、ある問題難易度レベルの問題について誤答するとその問題難易度レベルまで学習は十分に達成されていないと推測し、当該問題難易度レベル以上のレベルのセルにおいて得ていたスコアも現時点では与えられないものと扱ってスコアを減らすという取扱いをする。
【0061】
選択処理手段50cは、スコアがn/2のセルを中位レベルセルとし、難易度軸上中位レベルセルより上にあるセルを上位レベルセルとし、下にあるセルを下位レベルセルとし、選択処理手段50cによるk(k≧3とする)個の問題(問題データ)の選択において、上位レベルセル、中位レベルセル、下位レベルセルそれぞれから少なくとも1つは含まれるように選択する。
【0062】
図9は、“学習到達レベル適応抽出ルール”に基づくスコア付けの様子と、セル選択の様子を模式的に示した図である。図9は説明を簡単にするため、各セルには与えられているスコアしか表示していない。また、1つのカテゴリーしか図示せず、他のカテゴリーは図示を省略している。つまり2次元マトリックスの一つのカラムのみ取り出して描いている。
なお、スコアの上限値nは20とし、スコア増減単位mは1としている。一回の選択処理で選択されるセルの数kは3とする。
【0063】
図9(a)の状態において、各セルには前回までのスコアが与えられている。最上位の問題難易度レベルからスコアが“1”、“2”、“2”、・・・、“9”、“10”、“12”、・・・、“17”、“17”、“20”、・・・となっている。
ここで、選択処理手段50cは、n/2つまり10のスコアが与えられているセルを中位レベルセルとして選択する。ここでは太枠で示されたスコア10のセルが中位レベルセルとして選択される。選択処理手段50cは、さらに上位レベルセルとして例えば、太枠で示された上から3つめのセルを選択し、下位レベルセルとして太枠で示されたスコアが17のセルを選択したとする。
【0064】
選択された各セルからそれぞれ問題・解答セットが選択され、実施例1で示した処理の流れにより学習者携帯端末200に問題データが送信され、学習者から解答が返信される。ここで、返信された解答において、上位レベルセルの問題は誤答、中位レベルセルの問題は正解、下位レベルセルの問題は正解であったとする。
【0065】
まず、スコア管理手段42cは、各セルのスコアを更新する。誤答した上位レベルセルおよびそれより高いレベルにあるセルのスコアを“1”減じる。次に、正解した中位レベルセルおよびそれより低いレベルにあるセルのスコアを“1”増加する。さらに、正解した下位レベルセルおよびそれより低いレベルにあるセルのスコアを“1”増加する。
その結果、図9(b)に示されたスコアとなる。つまり、“0”、“1”、“1”、・・・、“9”、“11”、“13”、・・・、“19”、“19”、“20”、・・・となる。なお、このスコア“20”のセルは本来スコアが2点増加して“22”になるはずであるが、上限値nが20という想定なので20より大きくなることはない。
【0066】
次に、選択処理手段50cは、n/2つまり10のスコアが与えられているセルを探す。ここではないので、太枠で示されたスコア9のものが中位レベルセルとして選択されたとする。選択処理手段50cは、さらに上位レベルセルとして例えば、太枠で示された上から2つめのセルを選択し、下位レベルセルとして太枠で示されたスコアが19のセルを選択したとする。
選択された各セルからそれぞれ問題・解答セットが選択され、実施例1で示した処理の流れにより学習者携帯端末200に問題データが送信され、学習者から解答が返信される。ここで、返信された解答において、上位レベルセルの問題も中位レベルセルの問題も下位レベルセルの問題もすべて正解であったとする。
【0067】
スコア管理手段42cは、各セルのスコアを更新する。上位レベルセルおよびそれより低いレベルにあるセルのスコアを“1”増加し、さらに、正解した中位レベルセルおよびそれより低いレベルにあるセルのスコアを“1”増加し、さらに、正解した下位レベルセルおよびそれより低いレベルにあるセルのスコアを“1”増加する。
その結果、図9(c)に示されたスコアとなる。つまり、“0”、“2”、“2”、・・・、“11”、“13”、“15”、・・・、“20”、“20”、“20”、・・・となる。
なお、中位レベルはスコア10またはその近辺のものが選択すれば良いが、上位レベルセル、下位レベルセルについては、そのうちどのセルを選択するかについては別途選択ルールを定めておかなければならないが、その選択ルールは様々なものがあり得る。ランダム選択ルールでも可能である。
【0068】
次に、この学習到達レベル適応抽出ルールの概念を用いる実施例4の構成において、学習システム100cを本格的に構築するために、いかに効率的に問題・解答データベース20cを構築するかという工夫について述べる。
問題・解答データベース20cにおける大規模数の問題・解答セットの準備に先立ち、試験的に問題・解答データベース20cにおいて少規模数の問題・解答セットを準備しておき、小規模数の問題・解答セットを搭載した学習システムを用いてサンプル学習者の学習結果を利用する。
【0069】
サンプル学習者の学習結果は学習履歴データベース40cに記憶される。ここで、学習履歴データベース40cの学習履歴を調べ、各セルごとに中位レベルセルとして選択された回数をカウントすれば、学習者が学習していく過程において中位レベルセルとして選択される頻度を推定することができる。この推定結果を利用し、大規模数の問題・解答セットの準備においてカウントにかかる回数の多さに応じて各セルに準備すべき問題・解答セットの数を決定すれば効率良く問題・解答データベース20cを構築することができる。
【実施例5】
【0070】
上記実施例1から実施例4に示した本発明にかかる学習システムは以下の分野に利用することができる。
例えば、学校教育などの教育科目の学習システムに適用することができる。つまり、学習対象が教育科目であり、教育科目に関する問題・解答セットを準備すれば、教育科目に関する知識が学習できるように適用できる。例えば、語学、歴史、科学など多様な対象が想定できる。
また、例えば、ワイン講座や料理講座など特定の教養習得向けの学習システムとして適用することができる。つまり、学習対象が教養であり、当該教養に関する問題・解答セットを準備すれば、特定の教養に関する知識が学習できるように適用することができる。
また、例えば、資格試験向けの学習システムとして適用することができる。つまり、学習対象が資格取得に必要とされる知識であり、当該知識に関する問題・解答セットを準備すれば、特定の資格に必要とされる知識が学習できるように適用することができる。
また、例えば、仕事の知識習得の学習システムとして適用することができる。つまり、学習対象が仕事上必要とされる知識であり、当該知識に関する問題・解答セットを準備すれば、特定の仕事に必要とされる知識が学習できるように適用することができる。例えば、商品知識、開発技術、ビジネスマナーなど多様な対象が想定できる。
また、例えば、脳活性化トレーニングの学習システムとして適用することができる。つまり、学習対象が脳活性化を促す問題であり、当該問題・解答セットを準備すれば、脳活性化を促す問題を通じてトレーニングできるように適用することができる。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。従って本発明の技術的範囲は添付された特許請求の範囲の記載によってのみ限定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の学習システムは、多様な目的、例えば、教育科目学習、教養習得、資格試験勉強、仕事知識習得、脳活性化トレーニングなどに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の学習システム100の構成例を示す図
【図2】本発明の第1の学習システム100による学習の流れを示すフローチャート
【図3】シーケンシャル選択ルールを模式的に説明する図
【図4】本発明の実施例2にかかる学習システム100aの構成を示す図
【図5】セル決定手段21aによって形成される2次元マトリックスと、選択されたあるセルに属している問題・解答セット群と、問題・解答セットの選択の様子を模式的に示した図
【図6】実施例3にかかる本発明の第2の学習システム100bの構成例を示す図
【図7】境界セル重点抽出ルールに基づくセル選択の様子を模式的に示した図
【図8】実施例4にかかる本発明の第3の学習システム100cの構成例を示す図
【図9】学習到達レベル適応抽出ルールに基づくスコア付けの様子と、セル選択の様子を模式的に示した図
【符号の説明】
【0074】
10 制御部
20 質問・解答データベース
21 セル決定手段
30 学習者アドレス情報記憶手段
40 学習履歴データベース
41 セル別正解率計算手段
42 スコア管理手段
50 選択処理手段
60 質問送信手段
70 解答受信手段
80 正誤判断。送信手段
90 目標正解率設定手段
100 学習システム
200 学習者携帯端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習対象に関する問題と解答の問題・解答セットを多数蓄積した問題・解答データベースと、
学習者の保有する通信機能付きの学習者携帯端末のアドレス情報を登録・記憶する学習者アドレス情報記憶手段と、
前記問題・解答データベースから指定時刻にk(k≧1)個の問題・解答セットを選択する選択処理手段と、
前記選択処理手段の選択にかかる問題・解答セットのうち、問題(問題データ)のみを前記学習者アドレス情報記憶手段に記憶されているアドレス情報に従って前記学習者携帯端末に送信する問題提示手段と、
前記学習者の返信にかかる解答(解答データ)を前記学習者携帯端末から受信する解答受信手段と、
前記学習者から受信した前記解答に対する正誤結果(正誤データ)を送信する正誤判断・送信手段を備え、
前記指定時刻にk個の一問一答形式の学習を前記学習者に施す学習システム。
【請求項2】
学習対象に関する問題と解答の問題・解答セットを多数蓄積した問題・解答データベースと、
学習者の保有する通信機能付きの学習者携帯端末のアドレス情報を登録・記憶する学習者アドレス情報記憶手段と、
前記問題・解答データベースから指定時刻にk(k≧1)個の問題・解答セットを選択する選択処理手段と、
前記選択処理手段の選択にかかる問題・解答セットのうち、問題(問題データ)を表示するウェブページのURLを前記学習者アドレス情報記憶手段に記憶されているアドレス情報に従って前記学習者携帯端末に送信する問題提示手段と、
前記ウェブ上のページを閲覧した学習者の返信にかかる解答(解答データ)を前記学習者携帯端末から受信する解答受信手段と、
前記学習者から受信した前記解答に対する正誤結果(正誤データ)を送信する正誤判断・送信手段を備え、
前記指定時刻にk個の一問一答形式の学習を前記学習者に施す学習システム。
【請求項3】
前記問題・解答データベース中の各々の問題(問題データ)が、前記学習対象のカテゴリー別に分類するカテゴリー軸と、前記問題の難易度別に分類する難易度軸の2軸からなる2次元マトリックスのセルのうちどのセルに属するかを決定するセル決定手段を備えた請求項1または2に記載の学習システム。
【請求項4】
前記学習者に対して過去に選択され送信された各々の問題(問題データ)とその解答の正誤結果(正誤データ)を基に、当該学習者の前記2次元マトリックスのセル別の正解率(セル別正解率)を計算するセル別正解率計算手段と、
学習成果を十分とする目標正解率を設定する目標正解率設定手段を備え、
前記選択処理手段によるk個の問題(問題データ)の選択において、前記カテゴリーを選択し、当該カテゴリーにおいて前記セル別正解率が前記目標正解率を下回るセルのうち、前記難易度軸上最も低いレベルのセル(境界セル)に属する問題(問題データ)が少なくとも1つは含まれるように選択することを特徴とする請求項3に記載の学習システム。
【請求項5】
大規模数の前記問題・解答セットの準備に先立ち、試験的に少規模数の前記問題・解答セットを準備し、
小規模数の前記問題・解答セットを搭載した前記学習システムを用いてサンプル学習者の学習結果において、前記各セルごとに前記境界セルとして選択された回数をカウントし、大規模数の前記問題・解答セットの準備において前記カウントにかかる回数の多さに応じて各セルに準備すべき問題・解答セットの数を決定することを特徴とする請求項4に記載の学習システム。
【請求項6】
前記2次元マトリックスの各セルのスコアを管理し、スコアの加減を制御するスコア管理手段を備え、
前記スコア管理手段は、前記選択処理手段により選択され送信された前記問題(問題データ)に対して前記返信にかかる前記解答(解答データ)が正解の場合、前記問題(問題データ)の属するセル及び前記難易度軸上当該セルより下に位置するすべてのセルに対してスコアmを足し(ただしnを超える場合はnとし(m<n))、前記解答(解答データ)が誤りの場合、前記問題(問題データ)の属するセル及び前記難易度軸上当該セルより上に位置するすべてのセルに対してスコアmを引き(ただしマイナスとなる場合は0とし)、
前記選択処理手段は、前記スコアがn/2のセルを中位レベルセルとし、前記難易度軸上前記中位レベルセルより上にあるセルを上位レベルセルとし、下にあるセルを下位レベルセルとし、前記選択処理手段によるk(k≧3とする)個の問題(問題データ)の選択において、前記カテゴリーを選択し、当該カテゴリーにおいて前記上位レベルセル、前記中位レベルセル、前記下位レベルセルそれぞれから少なくとも1つは含まれるように選択することを特徴とする請求項3に記載の学習システム。
【請求項7】
大規模数の前記問題・解答セットの準備に先立ち、試験的に少規模数の前記問題・解答セットを準備し、
小規模数の前記問題・解答セットを搭載した前記学習システムを用いてサンプル学習者の学習結果において、前記各セルごとに前記中位レベルセルとして選択された回数をカウントし、大規模数の前記問題・解答セットの準備において前記カウントにかかる回数の多さに応じて各セルに準備すべき問題・解答セットの数を決定することを特徴とする請求項6に記載の学習システム。
【請求項8】
前記学習対象が教育科目であり、
前記教育科目に関する知識が学習できるように適用された、請求項1から7のいずれかに記載の学習システム。
【請求項9】
前記学習対象が特定の教養であり、
前記特定の教養に関する知識が学習できるように適用された、請求項1から7のいずれかに記載の学習システム。
【請求項10】
前記学習対象が資格であり、
前記資格に関する知識が学習できるように適用された、請求項1から7のいずれかに記載の学習システム。
【請求項11】
前記学習対象が仕事に関する知識であり、
前記仕事に関する知識が学習できるように適用された、請求項1から7のいずれかに記載の学習システム。
【請求項12】
前記学習対象が脳活性化を促す問題であり、
前記脳活性化を促すトレーニングができるように適用された、請求項1から7のいずれかに記載の学習システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−40198(P2008−40198A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215277(P2006−215277)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(506268854)株式会社フロンティア (1)
【出願人】(506271407)株式会社バードコンピューター (1)
【Fターム(参考)】