説明

宅内光配線器

【課題】配線しても宅内美観を良好に保持し、さらに被覆された光配線ケーブルを宅内壁面に正確にかつ光配線ケーブルを損傷することなく布設させることができる宅内光配線器を提供する。
【解決手段】
宅内光配線器の器体はリールテープを回転可能に支持して保持する。器体に回転自在に取り付けられリールテープから引き出されるテープを掛けまわし、さらに光配線ケーブルをテープ幅中間に位置させるようにガイドしかつ光配線ケーブルの直線状配線部に沿うテープの連続直線状引き出しをガイドするように複数のガイドローラが取り付けられている。光配線ケーブルを壁の平面にあてがって光配線ケーブルの外面から配線用テープで壁に貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅内光配線器に係り、特に光通信回線の最終ユーザ建物内での配線作業における宅内光配線器に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、一般ユーザ宅まで光ファイバ伝送路を引き込んで高速デジタル信号送受信を行なうアクセス系光通信網としてのFTTH(fiber to the home)が普及しつつあり、今後も一般家庭の情報化の促進に伴い、その布設の加速が予測される。FTTH用伝送路の布設に際しては、図12に示すように、光回線のドロップ線をユーザ宅の壁の引き込み口150に接続または引き通し、さらに引き込み口から光コンセント152を介して宅内光回線終端装置(ONU:Optical Network Unit)154に光配線ケーブル8が接続される。そして、宅内光回線終端装置は、光信号の多重・分離を基礎とした光・電気信号変換によりパーソナルコンピュータ、テレビ、電話などに接続されて高速光通信を行なうようになっている。ところで、ユーザ宅内での光配線ケーブルの具体的な配線に際しては、1つの宅内配線工事に例えば20メートル長以上の光配線ケーブルが必要であるとされている。これらの配線作業においては図13に示すケーブル保護管路としての合成樹脂製のワイヤプロテクタ156を用いる方法と、光ステップルによる布設方法が知られている。ワイヤプロテクタ156は、長板状の台座158と、台座に嵌合されて長い管路を形成するカバ体160と、で構成され、通常例えば1メートル定尺もので用いられる。ワイヤプロテクタ156は例えば、図14(b)の組付状態の断面大きさが11.2mm幅W×7mm高さHである。ワイヤプロテクタ156を用いる方法では壁面の配線位置に沿って台座158の離型紙を剥がしながら位置合わせ固定し、次に光配線ケーブルを挿入し、その後、カバ体160を装着する作業が必要であり、ワイヤプロテクタの壁面固定とワイヤプロテクタへの光配線ケーブル挿入が別作業となり、作業が煩雑で手間がかかり作業時間も長くなるという問題がある。また、壁面から7ミリメートル程の突出高さでワイヤプロテクタが取り付けられるから、ワイヤプロテクタ配線箇所が壁面から完全に浮き出た出来形となり、宅内の美観を損なう。さらに、1メートル長さ程度の多数のワイヤプロテクタ構成材料を宅内に持ち込んで作業する必要があり、嵩張って運搬上不便であるうえに壁面への取り付け作業時に作業場所近くに仮に置いておく場合に配線作業自体の邪魔となる問題があった。さらに、光ステップルによる場合には、光配線ケーブルの長手方向に数十センチメートル間隔ごとにケーブルの上からまたがるようにして壁面に固定されるものであり、配線後の宅内美観が劣り、工事出来形に難点があるばかりでなく、ステップルにより数十センチメートル間隔ごとに壁面に点状に止めるだけであるから、止められていない部分が室内備品等に引っかかったり、緩んでたるみや曲がりが出たりするおそれがあった。これに対し、光ファイバを粘着テープ等で直に壁面に貼着固定する方法が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平6−59137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1は、長手方向に寸断された多数の接着又は粘着テープをリール軸に沿う方向に多数巻き付け収容したリールを準備し、接着又は粘着テープを繰り出しながら長さが短い多数の寸断テープを光ファイバの長さ方向に直交するように間隔をあけて光ファイバの上から壁面に接着させることにより光ファイバを布設させるものである。しかしながら、この特許文献1の例えば図1、図3の方法では、ファイバの長手方向に直交方向に貼る多数の接着テープを同直交方向となるように間隔をあけてリールに収納したものを準備作成する作業が煩雑で手間がかかり、結局装置全体のコスト高となる。また、1つの固定ローラー(16)を光ファイバ(11)に押し当てながら移動するだけであるから、光ファイバの布設線が定まりにくく最終的に光ファイバが曲げられたり、捻じられた状態で配線されるおそれがあり、放射損失等の伝送損失を生じるおそれがある。また、特許文献1の装置では、寸断テープをリールに収納し保持した状態で固定ローラ(16)を移動しながら寸断テープを壁に貼るようになっているが、収納リール14から引き出されて固定ローラに移動する際に微細なテープがはがれたり、位置ずれを起こしやすく、その後のローラ間の移動時に粘着面がこれらに付着してローラの転動を阻害し、使用困難となり使用時の動作が不安定である。また、図3の方法では光ファイバリール(23)と接着テープリール(24)を同期回転しながら同時に繰り出すようにしているが、外力に弱い光ファイバをこのような方法で繰り出すことはファイバの損傷、切断等を起こしやすい。また、接着テープリール(24)、台紙巻き取りリール(28)のほかに押さえローラ(25)、押え用スタンパ(27)を別途に配置させて機能させるようにしており、これでは光ファイバ(23)の繰り出し装置構成を考慮すると、装置が大型化、重量化する問題がある。さらには、図4の方法でも光ファイバと接着テープとの同期繰り出し装置を含め、装置の具体的な構成は示されておらず、また、送り出しローラ37の均一な円筒面で光ファイバを下面に敷いた状態で寸断テープの上からじかに押しつけるから光ファイバを損傷しやすい上に、光ファイバの布設線も一定しにくく、伝送損失を生じやすい問題がある。
【0004】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、配線しても宅内美観を良好に保持し、さらに被覆された光配線ケーブルを宅内壁面に布設線に沿って安定して正確にかつ光配線ケーブルを損傷することなく布設させることができる宅内光配線器を提供することにある。また、本発明の他の目的は、短時間で正確に布設線に沿って光配線ケーブルを布設させることができる宅内光配線器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、光配線ケーブルを壁の平面にあてがって光配線ケーブルの外面から配線用テープで壁に貼り付けるための宅内光配線装置であり、リールテープ40を回転可能に支持する器体12と、器体12に回転自在に取り付けられリールテープ40から引き出されるテープ405を掛けまわし、さらに光配線ケーブル8をテープ幅中間に位置させるようにガイドしかつ光配線ケーブル8に沿うテープ405の連続直線状引き出しをガイドするよう取り付けられた複数のガイドローラ14(142、144、146)と、を備えた宅内光配線器10から構成される。リールテープ40は1本の帯状テープを多重巻きに巻回して芯孔付きのリール状に形成したものであり、連続する帯状テープとして引き出しながら光配線ケーブルの例えば全長にわたってテープを被覆した状態で帯状に壁に貼着固定させる。ガイドローラは2個のみでもよいし3個以上設けても良い。
【0006】
ガイドローラは、テープを壁に直接押し付ける押し付け部であって中間に溝状凹部を配して対向配置される2つの押し付け部と、両押し付け部の中間位置に配置され光配線ケーブルの断面外形に対応した凹部と、を連続形成するようにローラ面形状を形成しており、少なくとも2つの押し付け部が共通軸62で軸支されてそれぞれ単独で軸周り回転するように支持された複数の分割ローラ体(3、3)からなるとよい。
【0007】
また、第1、第2の押し付け部5,5と1つの凹部6を形成する部位が共通軸62で軸支されてそれぞれ単独で軸周り回転するように支持された3つの分割ローラ体(3、4)を含むとよい。
【0008】
また、器体12は、リールテープ40を支持しつつ器体12を直線状に引き動かして複数のガイドローラ142,144,146でテープ405を押えながらケーブル外面から平面壁Wに貼付させる押さえ把持部16を有するとよい。
【0009】
また、器体12は、平面状台部24と、中間にリール軸100を横方向とするようにリールテープ40を配置して平面状台部24との間にリールテープ40を着脱可能に挟持する突設カバー44と、を含むとよい。
【0010】
また、ガイドローラ14は、リールテープ40から引き出されるテープを掛けまわし光配線ケーブル8の長手方向に沿うように変向させる変向ガイドローラ142と、変向ローラ142と協働してテープを直線状かつテープ幅中央に光配線ケーブル8が配置されるようにテープ405を位置決めした状態で押え貼付させる押さえガイドローラ144と、を含むとなおよい。
【0011】
また、ガイドローラ14は、変向ガイドローラ142を中間に配し、その一方側に押さえガイドローラ144を配置するとともに、対向する他方側にローラ面の凹部6に光配線ケーブル8を嵌めながら転動ガイドする先導ガイドローラ146を取り付けるとよい。
【0012】
さらに、片手で平面状台部24と突設カバー44とを握る態様で器体12が構成され、突設カバー44がリールテープ40を挟持する状態で器体12に着脱可能に取り付けられるとともに、リールテープ40の芯孔42の側方に離隔して隣接する位置に配置された庇状握り部416を有するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の宅内光配線器によれば、光配線ケーブルを壁の平面にあてがって光配線ケーブルの外面から配線用テープで壁に貼り付けるための宅内光配線装置であり、リールテープを回転可能に支持する器体と、器体に回転自在に取り付けられリールテープから引き出されるテープを掛けまわし、さらに光配線ケーブルをテープ幅中間に位置させるようにガイドしかつ光配線ケーブルに沿うテープの連続直線状引き出しをガイドするよう取り付けられた複数のガイドローラと、を備えた構成であるから、1本の帯テープを多重巻きしたリールテープを帯テープとして引き出しながら宅内壁面の布設線に沿って安定して正確にかつ光配線ケーブルを損傷することなく布設させることができる。また、光配線ケーブルの長手方向に連続した帯テープで壁面に貼着固定させるから出来形が良好で室内意匠観を良好に保持し得る。さらに、装置が簡単でかつ小型軽量であり、さらに、器体を片手で把持しながら一人の作業者により短時間でケーブル布設作業をおこなうことができる。
【0014】
また、ガイドローラは、テープを壁に直接押し付ける押し付け部であって中間に溝状凹部を配して対向配置される2つの押し付け部と、両押し付け部の中間位置に配置され光配線ケーブルの断面外形に対応した凹部と、を連続形成するようにローラ面形状を形成しており、少なくとも2つの押し付け部が共通軸62で軸支されてそれぞれ単独で軸周り回転するように支持された複数の分割ローラ体からなる構成であるから、ローラ面で帯テープを中間に挟んで凹部に光配線ケーブルを嵌めた状態で器体を移動させる際に光配線ケーブルの曲り部分などがある場合に内回り側と外周り側とで周回半径が異なる場合にも内外の曲がり部分が単独回転するから器体の移動をスムーズに行なうことができ、光配線ケーブルの損傷等を生じさせることを防止し得る。
【0015】
また、第1、第2の押し付け部と1つの凹部を形成する部位が共通軸で軸支されてそれぞれ単独で軸周り回転するように支持された3つの分割ローラ体を含む構成であるから、帯テープの上からの両押し付け部に加えて中間の凹部側のローラ体も単独回転し、さらに円滑に光配線ケーブルに沿った移動による光配線ケーブルの壁面へのテープ貼着を行なえる。
【0016】
また、器体は、リールテープを支持しつつ器体を直線状に引き動かして複数のガイドローラでテープを押えながらケーブル外面から平面壁に貼付させる押さえ把持部を有する構成であるから、1つのリールテープを用いて片手操作で円滑に光配線ケーブルに沿った移動による光配線ケーブルの壁面へのテープ貼着を行なえる。
【0017】
また、器体は、平面状台部と、中間にリール軸を横方向とするようにリールテープを配置して平面状台部との間にリールテープを着脱可能に挟持する突設カバーと、を含む構成であるから、1本の連続帯状テープの多重巻きのリールテープを保持し、該テープを繰り出しながら光配線ケーブルの長手方向に連続する帯状テープによる壁への貼着固定を具体的に実現し得る。
【0018】
また、ガイドローラは、リールテープから引き出されるテープを掛けまわし光配線ケーブルの長手方向に沿うように変向させる変向ガイドローラと、変向ガイドローラと協働してテープを直線状かつテープ幅中央に光配線ケーブルが配置されるようにテープを位置決めした状態で押え貼付させる押さえガイドローラと、を含む構成であるから、1本の連続帯状テープの多重巻きのリールテープから引き出しながら布設すべき光配線ケーブルにガイドさせつつ光配線ケーブルの長手方向に連続する帯状テープによる壁への貼着固定を行なえる。また、帯状テープの光配線ケーブルへの位置合わせ作業が簡単で短時間で行え、また布設作業も簡単に行なえるから全体の作業時間短縮、作業工程の簡略化、作業効率の向上に資する。
【0019】
また、ガイドローラは、変向ガイドローラを中間に配し、その一方側に押さえガイドローラを配置するとともに、対向する他方側にローラ面の凹部に光配線ケーブルを嵌めながら転動ガイドする先導ガイドローラを取り付けた構成であるから、光配線ケーブルへの器体の位置合わせを光配線ケーブル自体への装着で実現し、さらに安定して仕上がりの良好な光配線ケーブルの長手方向に連続する帯状テープによる壁へのケーブル布設を行なえる。
【0020】
また、片手で平面状台部と突設カバーとを握る態様で器体が構成され、突設カバーがリールテープを挟持する状態で器体に着脱可能に取り付けられるとともに、リールテープの芯孔の側方に離隔して隣接する位置に配置された庇状握り部を有する構成であるから、1本の連続帯状テープの多重巻きのリールテープを用いながら、これを器体に無理なく装着し、さらに壁へのケーブルさらにはテープの貼着布設時に単に握り部を把持した状態による楽な操作で簡単にテープを繰り出しながら光配線ケーブルの長手方向に連続する帯状テープによる壁への貼着固定作業を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、添付図面を参照して本発明に係る宅内光配線器の実施の形態を詳細に説明する。本実施形態に係る宅内光配線器は、連続する帯状テープを多層巻きに巻回したリールを保持しつつリールから繰り出しながら作業者の片手操作で光配線ケーブルを壁面に短時間で良好な出来形でテープ貼着させる装置である。
【0022】
図1ないし図9は、実施形態の宅内光配線器10を示しており、図1において、宅内光配線器10は、器体12と、複数のガイドローラ14と、を備えている。器体12は、その一部である押さえ把持部16を介して作業者の片手で把持し得る程度の大きさで形成され、複数の合成樹脂成型品を組み合わせて全体重量が軽量に構成されている。そして、器体を作業者が片手で把持してそのまま直線状に引き動かすだけで光配線ケーブルを布設線に沿って宅内壁面に確実にテープ貼着させることができる。
【0023】
図1,2,5に示すように、宅内光配線器10の器体12は、本体板18の片面側に複数の突出部を形成させた全体として小型で薄形の(図3、図4参照)支持体からなり、図に示すように本体板18の上部にリールテープの保持部を有するとともに、下部には3個のガイドローラ14をそれぞれ走行面が同じとなるように直線状に離隔配置して転動自在に支持する3個のローラ支持部20を備えている。図2正面図に示すように、本体板18は、上向き凸の円弧状部182と、直線状に離隔配置され脚状に下方に伸びる3個のローラ支持部20と、を1つのプラスチック成型体により一体として有する形状であり、円弧状部の内側には例えば全高の2分の1弱程度の直径の円形打抜き孔22が形成されている。
【0024】
図1、図3において、器体12の本体板18の一面側D1(図2の裏面側)は平面が形成された平面状台部24を形成している。そして、本体板18の他面側D2にはテープ保持部26と、3個のローラ支持部20と、が形成されている。器体12のテープ保持部26は、リール受け28と、リール押え30と、を含む。リール受け28は本体板18のうち抜き孔22の孔縁において本体板18から直角状に突設する短円筒部からなり、この短円筒部にその芯孔を介してリールテープが着脱自在に外嵌される。リール受け28の短円筒部の内壁側には略180度対向位置において位置決め用のピン受け部32と、ビス突設部34とが内側に向けて突設形成されている。ピン受け部32にはピン受け穴36がD2側に開口して設けられている。また、ビス突設部34には、螺子軸38がD2側に一部を突出するように埋込固定されている。
【0025】
リールテープ40は、図5,9,10に示すように、例えば数十メートル巻きの10mm幅程度の芯孔42を有する1本の帯状テープのリール巻き体のテープが適用される。このリールテープ40は、例えば、汎用される塩化ビニル系の壁紙、その他の内装壁に対して強固な粘着力で壁面に貼着される内壁固定用の専用合成樹脂製テープからなる。リールテープ40は、本体板18から横方向に突設した本体板18の短円筒部の外周側に側方から装着離脱自在に外嵌される。外嵌された状態では短円筒部を軸にしてフリーに回転するのではなく、摩擦を伴いながら回転するようにある程度テープの先端を引き出す方向に力を加えないと回転しない程度の嵌め合いスキマで回転するようになっている。このリールテープ40は、図5に示すように、リール軸100を横方向とするようにリールを立てた状態で側面側から短円筒部に挿脱自在に装着される。
【0026】
リール押え30は、リールテープ40がリール受け28の短円筒部から離脱しないように保持させるテープリールの側部押さえ手段であり、実施形態において、図5に示すように、リール受け28の短円筒部にリールテープ40を外嵌させた状態で、さらにその外側面から被嵌して本体板18側に連結する突設カバー44から形成されている。
【0027】
実施形態において、突設カバー44は、リール受け28を介してリールテープ40を保持させた器体12の円弧状部の上半部程度を覆うように被嵌される容器状の薄肉合成樹脂成形体からなる。すなわち、突設カバー44は、リール受け28にリールテープ40を装着した状態でリールテープ40の回転移動に干渉しないように円弧状部から打抜き孔22の上半部程度を覆うカバー部410と、カバー部410に一体接続されてリール受け28の短円筒部の端部に当接する半円弧リブ部412と、を有する。半円弧リブ部412には、固定部材52による外部固定時のピン38挿通用の挿通孔50を形成する受け片414が円弧の内側に突設されている。突設カバー44は、リールテープ40を挟持する状態で本体板18側に着脱可能に取り付けられる。そして、リールテープ40の芯孔42から側方に離隔した隣接位置に庇状握り部416を形成している。すなわち、実施形態においてカバー部410は、本体板18から側方に突出する部分とそれに一体接続して本体板18に平行な平面を形成する部分を有して庇状に突設しており、その平行平面部分の端部が庇状握り部416とされ、この部分が指掛け部とされる。該突設カバー44の被覆内側には支持台46を介して対向する本体板18側に突設し、ピン受け部32のピン受け穴36内に挿嵌される位置決め用ピン48と、ビス突設部34の螺子軸38にその一部が突出するように挿通され半円弧リブ部412に形成された挿通孔50と、が設けられている。図4のように、これらを嵌合させた状態で、さらに外部から蝶ナットなどの固定部材52で固定することにより、テープ保持部26において、リールテープ40を離脱しないように保持させる。また、テープの交換装着時には、固定部材52を取り外して簡単に交換させることができる。
【0028】
さらに、器体12は、押さえ把持部16を備えている。押さえ把持部16は、リールテープ40を支持しつつ器体12を直線状に引き動かして後述する複数のガイドローラ14でテープを押えながらケーブル外面から平面壁に貼付させる押さえ把持手段であり、本実施形態では、突設カバー44が押え把持部16を兼用している。すなわち、押え把持部16は、例えば親指、その他の指で器体の一部を掴んだ状態で器体をある程度の力で壁面方向に押えながら同時に器体を壁面と平行な一方向に引き動かすことのできる部位であり、例えば器体の平面状台部24(D1側)に親指を掛け、指股部を突設カバー44の上から渡して他の指をテープ保持部26側の突設カバー44の庇状握り部416に掛けて確実に器体12全体を操作可能に把持させる。さらに、このとき、突設カバー44の庇状握り部416は、リール受け28の円筒状部の打抜き穴22の対向し側面側に離隔した位置に存在するから親指あるいは親指以外の他の指による器体の握り状態において、器体側と干渉するものがなく、押え把持、器体の引き移動操作を簡単、円滑に行うことができる。なお、本実施形態において、本体板18、突設カバー44、ガイドローラ14は合成樹脂成型品を組み付けて構成しているが、軽金属、軽量な金属、木製、竹製、紙製、それらの組合せによっても構成し得る。
【0029】
図1ないし図6、図9、図10において、器体12の下部側に複数のガイドローラ14が取り付けられている。ガイドローラ14は、回転可能に支持したリールテープ40からテープを繰り出し案内し、さらに、テープの繰り出し軌道、光配線ケーブル8の幅方向中央位置、を決めながら直接にテープを壁面に押し付けて貼着させる。すなわち、複数のガイドローラは、器体に回転自在に取り付けられたリールテープから引き出されるテープを掛けまわし、さらに光配線ケーブルをテープ幅中間に位置させるようにガイドしかつ光配線ケーブルの直線状配線部に沿うテープの連続直線状引き出しをガイドするテープの案内手段である。
【0030】
実施形態において、変向ガイドローラ142と、押さえガイドローラ144と、先導ガイドローラ146の3個のガイドローラがそれぞれローラ支持部20、20、20において転動自在に支持されている。3個のガイドローラは直線状に離隔配置されており、中央が変向ガイドローラ142、器体の走行後方側が押さえガイドローラ144、器体の走行前方側が先導ガイドローラ146とされる。
【0031】
変向ガイドローラ142は、リールテープ40から引き出される帯テープ405を掛けまわし光配線ケーブル8の長手方向に沿うように変向させる変向案内手段であり、図1,2,9,10において、リール軸を横方向とするように立てて配置された円形のリールテープの最下部の真下位置に配置され、上方位置から引き出される帯テープ405を掛けまわして鋭角状に周回させ壁面Wfに沿う方向に引き出し案内する。
【0032】
また、押さえガイドローラ144は、変向ローラ142と協働して帯テープ405を直線状かつテープ幅中央に光配線ケーブル8を配置させるようにテープを位置決めした状態で押さえ貼付させるテープのケーブルに対する位置決め、押さえ貼付手段であり、宅内光配線器において、変向ガイドローラ142とともに、該押さえガイドローラ144は少なくとも必要なガイドローラである。押さえガイドローラ144は、器体の走行後方側に変向ローラと離隔位置に配置され、これらの両転動ローラ面は同じ平面に等しい面圧で当接するように回転軸及び回転、走行軌道を一致させて位置合わせ配置されている。
【0033】
さらに、本実施形態において、変向ガイドローラ142に対して器体の走行前方側に離隔配置され、光配線ケーブル8の布設線に沿って器体12の走行を先導案内する先導ガイドローラ146が設けられている。先導ガイドローラ146は、変向ガイドローラ142と同様に、そのローラ面は同じ平面に等しい面圧で当接するように回転軸及び回転、走行軌道を一致させて位置合わせ配置されている。すなわち、3つのガイドローラは、同じ方向に回転軸を配置し、さらに同じ回転軌道を走行するようにローラ面が設置されている。先導ガイドローラ146は、他の2つのガイドローラと同じ構造のローラ及びローラ面形状を有しており、後述するようにローラ面の凹部に光配線ケーブルを嵌めながら転動ガイドする。
【0034】
器体12の下部であって、本体板18に離隔直線状に配置された3つのローラ支持部20にそれぞれのガイドローラ142、144、146が転動自在に取り付けられている。ローラ支持部20は、本体板18の3つの脚部56のそれぞれの下部に設置された支持ユニットであり、実施形態において、本体板18側から側方に突設された支持ピン58と、支持ピンの突設端側で固定されて本体板18と面が平行となるように固定された支持板60と、支持板60と平行板18とに両端を固定されたローラ軸62と、を含む。なお、変向ガイドローラ142についての支持板60の一部はリールテープから帯テープ405としてテープ先端側を引き出して変向する際の幅決め機能を有する。
【0035】
ローラ面は、同じ平面に等しい面圧で当接するように回転軸及び回転、走行軌道を一致させて位置合わせ離隔直線状、かつ同一横方向を転動軸として配置された3つのガイドローラ142、144、146は、本実施形態において同一の構成であり、例えばその詳細を変向ガイドローラ142を例として説明する。
【0036】
図4,6において、変向ガイドローラ142は、幅方向に3分割された3個の分割ローラ体を組み付けて構成されている。詳しくは、変向ガイドローラ142は、ローラ支持部20のローラ軸62に挿嵌されて回転自在に支持された筒体からなるカラー2と、カラー2に軸孔を挿通させて遊転自在に支持された分割ローラ体としての2つの第1狭幅ローラ3,3と、両狭幅ローラ3,3間に挟装されてカラー2に遊転自在に支持された分割ローラ体としての第2狭幅ローラ4と、を含む。3つのローラ体は断面が円形でそれぞれのローラ幅は1つのガイドローラの全幅よりも小さい幅で形成されている。中央の第2狭幅ローラ4は、第1狭幅ローラ3に比べてローラ径が小さく設定されている。したがって、3個の狭幅ローラを組み付けた状態では、図6に示すように、そのローラ面は両側が高い平坦部を有するとともに中央に凹部を形成し中央部に矩形の溝を形成した構成となっている。溝の両側の平坦面を有する第1狭幅ローラ3は、テープを壁に直接押し付ける押し付け部であって中間に溝状凹部を配して対向配置される2つの押し付け部5を形成するとともに、第2狭幅ローラ4が両押し付け部5の中間に配置され光配線ケーブル8の断面外形に対応した凹部6を形成する。そして、3つの狭幅ローラ3,4は、共通軸で軸支されて相互に単独で軸周り回転しつつ相互に密着状に組みつけられてローラ面を連続形成するように取り付けられている。これによって、変向ガイドローラ142は、帯テープ405を引き出し変向させ、押さえガイドローラ144側に延長し引き出した帯テープ405の幅中央に光配線ケーブル8が位置するように決めながらケーブルを壁面にテープ貼着する。ガイドローラの凹部形状は、布設する光配線ケーブルの外形形状に対応した凹部形状とするように、ローラ構成を設定するとよい。この際、ローラ軸を螺子軸などから構成すれば、取り外して第1、第2狭幅ローラのローラ幅や径を異ならしめた分割ローラと交換することにより、簡単にケーブル側の形状に応じたローラ構成とすることができる。ガイドローラは、中間に凹部6を形成する態様で、その凹部を挟んでその両側に配置される2つの押し付け部5,5を有する第1狭幅ローラ3、3を共通軸62で軸支してそれぞれ単独で軸周り回転するように支持した構成とすることもできる。この場合、中間の凹部は軸側に固定して自由回転しないようにしてもよい。
【0037】
次に、実施形態の宅内光配線器10の作用について図10ないし図14も参照しつつ説明する。例えば図12の本線から分岐したドロップ線110を加入者宅の引き込み口150に設けた図示しない接続装置(TMC)を介して宅内に引き込み、宅内では光配線ケーブル8を指示された布設線に沿って配置しながら、例えば光コンセント152まで延長させて壁面にテープ貼着させていく。ここで、光配線ケーブルとしては単芯あるいは複数芯の芯構成の光ファイバをテンションメンバなどの鋼線や繊維強化プラスチック(FRP)とともに難燃ポリオレフィン等の被覆材で被覆したケーブルが知られている。例えば実施形態の光配線ケーブル8は、図14(b)のように、断面での幅Wが3mm、高さHが2mm程度の略矩形状のケーブル外形であり、この上に直接にテープを貼着しても壁面から4mm〜5mm程度の突出高でしかもテープで連続直線の帯の出来形となるから、極めてスッキリしたシンプルで良好な美観が得られる。なお、図14(a)、(b)は図上、実寸で示している。
【0038】
図5ないし図8のような部品構成で組み付けてテープの軸を横方向として、テープを立てた状態でテープ保持部26に保持させる。作業に際しては光配線ケーブル8の布設先側を布設線に沿って引いてやや張った状態に保持し、その状態で他の片手Gにより押さえ把持部16の円弧状部182と突設カバー部分を握る(図9)。この状態で、先端をリールテープ40から引き出して帯テープ405とし、変向ガイドローラ142を掛けまわして係合し、さらに押さえガイドローラ144のローラ下面に当るように先端を若干引き出す。帯テープ405の上面を変向ガイドローラ142及び押さえガイドローラ144の下面に同時にあてがうようにした状態で壁面に係止した光配線ケーブル8にガイドローラ142,144,146の凹部6を当てて壁面側に押し付ける。このとき、図7(a)、(b)のように、帯テープ405の幅方向中央部が光配線ケーブル8の凸型とガイドローラの溝としての凹部6の凹型とにより成型されるように両押し付け部5の中央部を矩形に突設させるように変形する。これによって、帯テープ405は光配線ケーブル8の底面を除く天面と両側面に粘着部が付いて3面で貼着し、さらにその帯テープ405の幅方向両側の延長側が押し付け部5により壁面に押し付けられて、貼着される。この状態で、図10のように先導ガイドローラ146の凹部6に光配線ケーブル8を嵌める状態を維持しながらケーブルの布設延長方向に向けて壁面に平行に器体12を引き動かすと、ガイドローラ142,144、さらにガイドローラ146により、光配線ケーブル8に沿って確実に移動するように器体12全体を維持しつつ案内する。しかも、離隔直線状に配置されたガイドローラの凹部に光配線ケーブルが嵌め合う状態で器体を移動させるから、常に光配線ケーブルを例えば真直ぐな直線状の布設線に沿った延長状態に保持しながら器体を移動させることとなり、ケーブル自体の直線状の布設も正確に行なうことができる。
【0039】
各ガイドローラ142,144,146は、それぞれ3つの回転部材としての第1、第2狭幅ローラ3,3,4を単独で回転自在として組みつけているから、光配線ケーブルの曲り部分やわずかな角度変化がある場合でも円滑に転動することができ、一体形ローラに比較してローラ面が摩擦で転動しない状態で外力に弱い光配線ケーブルを損傷、折損、捩りなどで傷つけることを防止し得る。具体的には、例えば光配線ケーブルに曲り部分がある場合には、曲がりの中心側と外側とではローラ面での摩擦力の大きさが異なり、しかもテープは高い粘着性のため、いったん壁面に貼着すると修正は困難となる。上記のような分割ローラ構成とすることでローラ面の内外並びに光配線ケーブルの嵌合凹部部分がそれぞれ単独で回転し、ローラの円滑な回転を確保する。
【0040】
本発明の宅内配線器は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の本質を逸脱しない範囲において任意の変更を加えても本発明に含まれる。例えば、ガイドローラの数を増減させてもよい。また、器体の具体的な外形形状は任意に構成できる。また、ガイドローラの凹部形状は、施工すべき光配線ケーブルの規格に対応した外形形状に対応した凹部形状とするように、ローラ構成を設定するだけでよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の宅内光配線器は、加入者宅内での光配線ケーブルの布設が主な利用用途であるが、テープの粘着性や壁面側との関係が改善されて宅外で施工される場合にも有効に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る宅内配線器の全体斜視図である。
【図2】図1の宅内配線器の正面図である。
【図3】図2の宅内配線器の側面図である。
【図4】図3の宅内配線器の縦断面図である。
【図5】図1の宅内配線器の分解斜視図である。
【図6】図1の宅内配線器のガイドローラ及びその支持部分の一部省略拡大断面図である。
【図7】(a)、(b)は、リールテープとガイドローラ面と光配線ケーブルとの押し当て作用説明図である。
【図8】図6のガイドローラ及びその支持構造の分解斜視説明図である。
【図9】図2の宅内配線器の作用説明図である。
【図10】図9の宅内配線器の作用説明図である。
【図11】器体の引き動かし時の光配線ケーブルと帯テープの貼着状態を示す作用説明図である。
【図12】宅内ケーブル配線概略構成図である。
【図13】従来の宅内光配線ケーブルの布設状態の一部省略斜視説明図である。
【図14】(a)は、実施形態で適用される単芯形光配線ケーブルの断面図、(b)は、従来のワイヤプロテクタ内に挿入した光配線ケーブルの断面説明図である。
【符号の説明】
【0043】
3 第1狭幅ローラ
4 第2狭幅ローラ
5 押し付け部
6 凹部
8 光配線ケーブル
10 宅内配線器
12 器体
14 ガイドローラ
16 押え把持部
18 本体板
20 ローラ支持部
26 テープ保持部
40 リールテープ
44 突設カバー
62 ローラ軸
100 リール軸
142 変向ガイドローラ
144 押えガイドローラ
146 先導ガイドローラ
405 帯テープ
410 カバー部
416 庇状握り部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光配線ケーブルを壁の平面にあてがって光配線ケーブルの外面から配線用テープで壁に貼り付けるための宅内光配線装置であり、
リールテープを回転可能に支持する器体と、
器体に回転自在に取り付けられリールテープから引き出されるテープを掛けまわし、さらに光配線ケーブルをテープ幅中間に位置させるようにガイドしかつ光配線ケーブルに沿うテープの連続直線状引き出しをガイドするよう取り付けられた複数のガイドローラと、を備えたことを特徴とする宅内光配線器。
【請求項2】
ガイドローラは、テープを壁に直接押し付ける押し付け部であって中間に溝状凹部を配して対向配置される2つの押し付け部と、両押し付け部の中間位置に配置され光配線ケーブルの断面外形に対応した凹部と、を連続形成するようにローラ面形状を形成しており、
少なくとも2つの押し付け部が共通軸62で軸支されてそれぞれ単独で軸周り回転するように支持された複数の分割ローラ体からなることを特徴とする請求項1記載の宅内光配線器。
【請求項3】
第1、第2の押し付け部と1つの凹部を形成する部位が共通軸で軸支されてそれぞれ単独で軸周り回転するように支持された3つの分割ローラ体を含むことを特徴とする請求項2記載の宅内光配線器。
【請求項4】
器体は、リールテープを支持しつつ器体を直線状に引き動かして複数のガイドローラでテープを押えながらケーブル外面から平面壁に貼付させる押さえ把持部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の宅内光配線器。
【請求項5】
器体は、平面状台部と、中間にリール軸を横方向とするようにリールテープを配置して平面状台部との間にリールテープを着脱可能に挟持する突設カバーと、を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の宅内光配線器。
【請求項6】
ガイドローラは、リールテープから引き出されるテープを掛けまわし光配線ケーブルの長手方向に沿うように変向させる変向ガイドローラと、
変向ガイドローラと協働してテープを直線状かつテープ幅中央に光配線ケーブルが配置されるようにテープを位置決めした状態で押え貼付させる押さえガイドローラと、を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の宅内光配線器。
【請求項7】
ガイドローラは、変向ガイドローラを中間に配し、その一方側に押さえガイドローラを配置するとともに、対向する他方側にローラ面の凹部に光配線ケーブルを嵌めながら転動ガイドする先導ガイドローラを取り付けたことを特徴とする請求項6記載の宅内光配線器。
【請求項8】
片手で平面状台部と突設カバーとを握る態様で器体が構成され、
突設カバーがリールテープを挟持する状態で器体に着脱可能に取り付けられるとともに、リールテープの芯孔の側方に離隔して隣接する位置に配置された庇状握り部を有することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の宅内光配線器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−60955(P2010−60955A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227810(P2008−227810)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000196716)西部電気工業株式会社 (6)
【出願人】(390025335)マサル工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】