安全スイッチ
【課題】アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、複数の接点間において接点信号の不一致が生じないロック付き安全スイッチを提供する。
【解決手段】操作部に進入後退自在なアクチュエータと、アクチュエータの進入後退に応じて回動する駆動カムと、アクチュエータが操作部に進入した場合に駆動カムの回動を規制してアクチュエータをロック状態とするロック手段と、アクチュエータのロック状態及びロック解除状態を検出する複数のロック接点部と、アクチュエータのロック状態を解除するロック解除手段とを備え、ロック解除手段の操作によりロック手段はロック状態を解除し、且つロック接点部の接点状態を切換えるように構成されたロック付き安全スイッチであって、アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、複数のロック接点部間において接点信号の不一致が生じないようにするための接点信号一致手段が設けられている。
【解決手段】操作部に進入後退自在なアクチュエータと、アクチュエータの進入後退に応じて回動する駆動カムと、アクチュエータが操作部に進入した場合に駆動カムの回動を規制してアクチュエータをロック状態とするロック手段と、アクチュエータのロック状態及びロック解除状態を検出する複数のロック接点部と、アクチュエータのロック状態を解除するロック解除手段とを備え、ロック解除手段の操作によりロック手段はロック状態を解除し、且つロック接点部の接点状態を切換えるように構成されたロック付き安全スイッチであって、アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、複数のロック接点部間において接点信号の不一致が生じないようにするための接点信号一致手段が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械が設置される領域の出入口などの壁面及びその出入口の扉付近に装着され、扉が開かれたときには産業機械等への電源供給を停止する安全スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業機械が設置された部屋では、作業者が機械に巻き込まれて負傷するといったトラブルの発生を防止することを目的として、当該部屋の出入口の扉が完全に閉まっていないときには、機械の駆動を許可しないシステムを設けることが要求されており、このような要求に応じるために安全スイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この安全スイッチは、安全スイッチ本体部が部屋の出入口周辺の壁面に装着され、その出入口の扉を閉じたときに扉に固着された専用のアクチュエータが安全スイッチ本体部の挿入口から挿入されると、安全スイッチ本体部内の駆動カムが回転し、その駆動カムの回転に応じて操作ロッドが移動して接点の接続状態が切り替わる構造のスイッチであって、このような接点の切り替わり動作で主回路(産業機械への電源供給回路)が閉じられ部屋内の機械が運転可能な状態となるとともに、ロック部材が駆動カムにロックするロック機構が設けられており、扉を開けられないように機械的にロックするようになっている。一方、産業機械への電源供給を遮断するように操作されたときに、その作動オフ信号により、例えば、ソレノイドが励磁してロック機構によるロックを解除し、扉を開放可能状態にする構成になっている。また、ロック状態及びロック解除状態を検出するために、複数のロック接点部が設けられている。なお、複数のロック接点部を設けているのは、検出の確実性のためである(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−334772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記安全スイッチにおいては、ロック状態時にアクチュエータに引張力が生じている場合がある。例えば、扉を勢いよく閉じた時にその反動で扉が若干開いた状態となる場合、或いは、扉の取り付け等にガタが生じ、そのため扉が完全に閉まった状態が得られずに若干開いた状態となるような場合等に、アクチュエータに引張力が生じる。
【0005】
このようなアクチュエータが引っ張られた状態において、ロック解除操作すると、ロック部材が解除動作を開始するが、アクチュエータの引張力に起因してロック部材に摩擦力が生じロック解除しない場合やロック部材の動きが途中で止まったりすることがある。ロック部材が途中で止まった場合、ロック部材と連動する接点が接触不安定になり、ロック状態にも関わらず接点がOFFとなる状態が生じ作業者がその接点信号に基づき、ロックが掛かっているにも関わらず、扉を開けようとして安全スイッチが破損したり、連動する2つの接点間において接点信号の不一致が生じ、そのため、制御回路がエラーと判断し機械の主電源が遮断され復旧に時間がかかる等の不具合が発生していた。
【0006】
そこで、アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、ロック部材と連動する接点の接触状態の安定化が図られ、且つ、複数の接点間において接点信号の不一致が生じないロック付き安全スイッチが要望されていた。
【0007】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、ロック部材と連動する接点の接触状態の安定化が図られ、且つ、複数の接点間において接点信号の不一致が生じないロック付き安全スイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、スイッチ本体の操作部に進入・後退自在なアクチュエータと、アクチュエータの進入・後退に応じて回動する駆動カムと、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に前記駆動カムの回動を規制してアクチュエータをロック状態とするロック手段と、アクチュエータのロック状態及びロック解除状態を検出する複数のロック接点部と、アクチュエータのロック状態を解除するロック解除手段とを備え、ロック解除手段の操作により前記ロック手段はロック状態を解除し、且つ前記ロック接点部の接点状態を切換えるように構成されたロック付き安全スイッチであって、
アクチュエータ引張り時に、前記ロック解除手段が操作されても、前記複数のロック接点部間において接点信号の不一致が生じないようにする接点信号一致手段が設けられていることを要旨とする。
【0009】
複数の接点部間において接点信号の不一致が生じないことにより、制御回路がエラーと判断し機械の主電源が遮断され復旧に時間がかかる等の不具合の発生を防止できる。
ここで、「接点信号の不一致が生じない」とは、制御回路が判定しうる時間レベル内で接点信号の不一致が生じないという意味である。即ち、厳密なミクロレベルで見れば、接点信号の完全な一致はあり得ず、必ず接点信号の不一致は生じているが、ここでの「接点信号の不一致が生じない」とは上記の意味として用いるものである。
【0010】
本発明は、前記接点信号一致手段は、前記複数のロック接点部の接点状態を共にON状態又はOFF状態のいずれかに保持させて接点信号の不一致の状態が生じないように構成する場合、若しくは、前記接点信号一致手段は、前記複数のロック接点部の接点状態を共に、ロック状態時におけるON状態又はOFF状態のいずれか一方の状態から他方の状態に切り換えさせて接点信号の不一致の状態が生じないように構成する場合もある。
【0011】
また、本発明は、前記接点信号一致手段が、前記ロック手段が動かないことによって、前記ON状態又はOFF状態のいずれかの状態を保持するように構成されていてもよい。
【0012】
また、本発明は、前記接点信号一致手段が、前記ロック手段と前記ロック解除手段とは緩やかな連結状態とされており、ロック手段が動かなくても、ロック解除手段を大きく動かせることにより、前記複数のロック接点部の接点状態を共に、ロック状態時におけるON状態又はOFF状態のいずれか一方の状態から他方の状態に切り換えさせるように構成されていてもよい。
【0013】
また、本発明は、スイッチ本体の操作部に進入・後退自在なアクチュエータと、アクチュエータの進入・後退に応じて回動する駆動カムと、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に前記駆動カムの回動を規制してアクチュエータをロック状態とするロック手段と、アクチュエータのロック状態及びロック解除状態を検出する少なくとも1以上のロック接点部と、アクチュエータのロック状態を解除するロック解除手段とを備え、ロック解除手段の操作により前記ロック手段はロック状態を解除し、且つ前記ロック接点部の接点状態を切換えるように構成されたロック付き安全スイッチであって、アクチュエータ引張り時に、前記ロック解除手段が操作されても、前記ロック接点部をロック状態時における接点状態に維持させる手段が設けられていることを設けられていることを要旨とする。
【0014】
上記構成により、ロック手段と連動する接点の接触状態の安定化が図られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の接点部間において接点信号の不一致が生じないようにする接点信号一致手段が設けられていることにより、制御回路がエラーと判断し機械の主電源が遮断され復旧に時間がかかる等の不具合の発生を防止でき、また、ロック接点部をロック状態時における接点状態に維持させる手段を設けることにより、ロック手段と連動する接点の接触状態の安定化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る安全スイッチを、実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
先ず、安全スイッチの概略構造を図1を参照しつつ説明する。
この例の安全スイッチは、部屋に設置される産業機械に電気的に接続されるスイッチで、スイッチ本体101とアクチュエータ102を主として構成されており、そのスイッチ本体101には、操作部111、スイッチ部112、及び、操作部111に設けられた機械的なロック手段(後述)の解除を行うためのソレノイド機構部113が配置されている。
【0017】
スイッチ本体101は部屋の出入口の周縁の壁150に固着され、またアクチュエータ102は扉103に固着される。そのアクチュエータ102の位置はスイッチ本体101の挿入孔101aに対向する位置で、扉103を閉鎖した状態のときにスイッチ本体101の操作部111内に進入する。
そして、アクチュエータ102の進入により、スイッチ部112に内蔵の接点ブロック(図示せず)の接続接点が切り換わり、部屋内の機械が駆動可能な状態となる。一方、扉103の開放によりアクチュエータ102が操作部111から抜けたときには元の状態に復帰して機械への電源供給がオフされる。
【0018】
なお、アクチュエータ102は、操作部111への挿入部が先端部の押圧片121とこれを支持する一対の支持片122,123によって構成されている。その押圧片121には、両端部に位置する凸部押圧面121b,121bと、この間に位置する凹部押圧面121aが形成されている。
また、スイッチ本体101には、先の挿入孔101aに加えて、本体上面側にも挿入孔101bが設けられており、設置場所の状況に応じていずれかの挿入孔101aもしくは101bを選択することができる。
【0019】
次に、この実施の形態のスイッチ本体の機構を、図2〜図5を参照しつつ説明する。
【0020】
まず、操作部111には、アクチュエータ102の進入・後退に応じて回動する駆動カム1と、この駆動カム1のカムシャフトに回動自在に支承された規制板2,3等が設けられている。
【0021】
さて、駆動カム1の外周面にロック段部1dが形成されており、この駆動カム1と規制板2,3の上方位置には、ロックレバー50が配設されている。
【0022】
このロックレバー50は、係止片50aとその両端を支持するアーム50b、及びそれらのアーム端を支持する作動片50cが一体形成された部材で、圧縮コイルばね(図示せず)の弾性力により係止片50aが駆動カム1の外周面に向けて押圧された状態で接触するように構成されている。
【0023】
一方、ソレノイド機構部113(ロック解除手段)は、操作部111のロック手段(ロックレバー50)を解除するロック解除機構60と、その解除力を発生するソレノイド90を備えている。
【0024】
ロック解除機構60は、ソレノイド90のプランジャー90a(図4参照)の先端部に連結される作動ロッド61と、この作動ロッド61の先端部に小ねじ63により固着された操作板62、圧縮バネ64などによって構成されている。操作板62の操作部111側の端部は、ロックレバー50の作動片50cの下端部の前側(図3参照)に接触しており、この操作板62の移動に伴ってロックレバー50が揺動するように構成されている。
【0025】
また、ソレノイド機構部113には、ソレノイド90のプランジャー90aの移動に伴って開閉する2つのロック接点部10が設けられている。このロック接点部10は、図5に示すように、固定接点40aと、可動接点40bと、固定接点40aに連結されるリード部41と、可動接点40bに連結されるリード部42と、リード部42に当接して可動接点40bを固定接点40aから引き離す作動部44と、リード部42に当接して可動接点40bを固定接点40aに接触させる方向に付勢するバネ43等から構成されている。そして、この2つのロック接点部10により、ロック状態が検出されるようになっている。なお、プランジャー90aに連結されている作動ロッド61には、作動部44を押圧してロック接点部10の接点をOFFさせる接点押圧部61a(図4及び図5参照)が一体的に形成されている。
【0026】
以上の構造の安全スイッチ動作について、以下に説明する。なお、以下の説明では、アクチュエータ102には引張りが生じていないものとする。アクチュエータ102に引張りが生じている場合は、本発明の特徴部分であり、後述する。アクチュエータ102が挿入孔101aを通じて操作部111の内部に進入すると、まずは、その先端の凹部押圧面121aと凸部押圧面121b,121bが、それぞれ駆動カム1と規制板2,3に接触する。
【0027】
次いでアクチュエータ102が更に進入して、挿入端まで達した時点でアクチュエータ102の押圧片121が駆動カム1の凹部1aに嵌まり込む。
【0028】
このとき、ロックレバー50の係止片50aが、圧縮コイルばねの押圧力によって駆動カム1のロック段部1dに引っ掛かる位置に変位し、これにより駆動カム1の復帰方向(時計方向)への回動が阻止される。従って、扉103を開けようとしてアクチュエータ102に抜け方向の力が作用しても、回動阻止状態の駆動カム1の凹部1aに押圧片121が引っ掛かって、アクチュエータ102の抜けは阻止される。
【0029】
一方、機械への電源供給を遮断したときの作動オフ信号に応じてソレノイド機構部113が作動すると、ソレノイド90のプランジャー90aが後退し(図2及び図3参照)、ロック解除機構60の操作板62が移動する。この操作板62の移動により、ロックレバー50の係止片50a側が持ち上げられ、係止片50aが駆動カム1のロック段部1dから外れ、これにより駆動カム1の回動阻止つまりアクチュエータ102の機械的なロックが解除されて扉103が開放可能な状態となる。
また、作動オフ信号に応じてソレノイド機構部113が作動した時点で、プランジャー90aの後退に連動して作動ロッド61も後退して、作動ロッド61の接点押圧部61aが作動部44を押圧する。この結果、2つのロック接点部10がOFF状態となる。
【0030】
(本発明の特徴部分)
上記のロック解除操作において、アクチュエータ102に引張りが生じている場合は、従来例において説明したように、ロックレバー50(ロック部材)と駆動カム1との間に摩擦力が発生して、ロック解除操作しても、ロックレバー50が中途半端な位置で止まり、ロック接点部の不一致が生じる。そこで、かかる問題を解決するために、本発明の特徴部分として、以下の構成が設けられている。
【0031】
即ち、本発明の主たる特徴は、図3に示すように、駆動カム1に凹部20が形成されており、この凹部20にロックレバー50(ロック部材)が係合していることである。したがって、アクチュエータ102の引張り時に、ソレノイド90がONしても、駆動カム1とロックレバー50とが係合していることにより、ロックレバー50が動かず、2つのロック接点部10は、図5に示すように、ON状態を維持する。これにより、接点信号の不一致(一方の接点信号がONで、他の接点信号がOFFとなる場合)を制御回路がエラーと判断し機械の主電源が遮断され復旧に時間がかかる等の不具合の発生を防止できる。
【0032】
なお、このような状態において、アクチュエータ102の引張りを解消すべく、作業者は扉を閉じる。そうすると、駆動カム1が矢印M(図3参照)方向に回動し、ロックレバー50と凹部20との係合状態が解除される。これにより、ロックレバー50が一気に揺動し、そのため、2つのロック接点部10は、OFF状態に切り換わる。したがって、接点信号の不一致は生じない。この結果、アクチュエータ102の引張り時にロック解除操作されても、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じことはなく、且つ、アクチュエータ102の引張りが解消された場合でも、接点信号の不一致が生じることはない。
なお、上記の例では、アクチュエータ102の引張りを解消するために作業者が扉を閉じるようにしたけれども、駆動カム1に吸込み方向(図3における矢印M方向)の回転力を持たせると、作業者が扉を閉じなくてもアクチュエータ102の引張力を解消するだけでロックレバー50の係合を解除し、ロック接点部10をOFF状態にする事も可能である。
【0033】
(実施の形態2)
図6はソレノイドがOFF時の実施の形態2に係る安全スイッチの駆動カムの構成を示す断面図、図7はソレノイドがOFF時の操作板62付近の平面図、図8は図7のX2−X2線矢視断面図、図9はソレノイドがON時の操作板62付近の平面図、図10は図9のX3−X3線矢視断面図である。この実施の形態2では駆動カム1に凹部20が形成されておらず、凹部20に代えて、ロックレバー50(より具体的には作動片50c)と操作板62との間の連結部に大きな隙間21を設け、さらに作動ロッド80と作動部44との間に隙間21より小さい間隔の隙間21Aを設けるようしている。即ち、本実施の形態2は、この隙間21,21Aを設けることにより、アクチュエータ102の引張り時にロック解除操作されても、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じないように構成したことを特徴とするものである。
換言すれば、ロック手段(ロックレバー50)と、ロック解除手段(作動ロッド61、操作板62など)とは、隙間21により緩やかな連結状態とされており、ロック手段が動かなくても、ロック解除手段(特に作動ロッド61)を大きく動かせることにより、2つのロック接点部10をOFF状態に切り換えて、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じないように構成したものである。
【0034】
以下にその動作について説明する。即ち、アクチュエータ102の引張り時に、ソレノイド90がOFF状態のときは、操作板62が矢印方向(図6参照)に移動しているので、2つのロック接点部10は共に、図8に示すようにON状態となっている。このような状態で、ソレノイド90がONすると、プランジャー90aに連動して操作板62が矢印方向とは反対方向に移動する。このとき、隙間21を有することによりロックレバー50は動かない。したがって、ロックレバー50は段部1dと係合しているソレノイドがOFF時の状態のままである。一方、プランジャー90aに連動して作動ロッド61は作動部44側に向けて移動する。このとき、隙間21Aが隙間21より間隔が小さいことから、操作板62がロックレバー50に規制される前に、作動ロッド61の接点押圧部61aは作動部44を押圧する。これにより、2つのロック接点部10は共に、図10に示すようにOFF状態となる。このように、本実施の形態2では、アクチュエータ102の引張り時にロック解除操作されても、ロックレバー50を動かさずに、ロック接点部10を共に、OFF状態に切り換えるので、2つのロック接点部10間での接点信号の不一致が生じない。
【0035】
(実施の形態3)
図11は実施の形態3に係る安全スイッチのロック手段及びロック解除手段の簡略化した構成図である。この実施の形態3に係る安全スイッチでは、ロック手段としては、駆動カム1の凹部200に嵌まり込む操作ロッド30と、その操作ロッド30の動きをロックするロック部材31とで構成されている。そして、操作ロッド30に突部30aが形成され、ロック部材31には突部30aに係合する凹部31aが形成されている。なお、本実施の形態3においては、ロック部材31はロック手段とロック解除手段の両方の機能を有している。
【0036】
このような構成により、アクチュエータ102の引張り時に、ソレノイド90がONしても、操作ロッド30とロック部材31が係合していることにより、ロック部材31が中途半端な位置で止まることがなく、そのため、2つのロック接点部10は、ON状態を維持し、接点信号の不一致が生じない。
【0037】
(実施の形態4)
図12及び図13は実施の形態4に係る安全スイッチのロック手段及びロック解除手段の簡略化した構成図である。なお、図12はソレノイドがOFF時の場合、図13はソレノイドがON時の場合を示している。
【0038】
この実施の形態4も、実施の形態3と同様に、ロック手段としては、駆動カム1の凹部200に嵌まり込む操作ロッド30と、その操作ロッド30の動きをロックするロック部材31とで構成されている。この実施の形態4では、ロック部材31は、操作ロッド30を規制する第1リンク部31Aと、ロック接点部10を作動させる第2リンク部31Bとで構成され、且つ、第1リンク部31Aと第2リンク部31Bとの連結部に大きな隙間21を設けるようしている。即ち、本実施の形態4は、この隙間21を設けることにより、アクチュエータ102の引張り時にロック解除操作されても、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じないように構成したことを特徴とするものである。
【0039】
換言すれば、第1リンク部31Aと第2リンク部31Bは、隙間21により緩やかな連結状態とされており、第1リンク部31Aが動かなくても、第2リンク部31Bを大きく動かせることにより、2つのロック接点部10をOFF状態に切り換えて、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じないように構成したものである。なお、上記構成より明らかなように、本実施の形態4においては、ロック部材31のうち第1リンク部31Aがロック手段の機能を有しており、第2リンク部31Bがロック解除手段の機能を有している。
【0040】
なお、第1リンク部31Aには、フランジ部31bが形成され、このフランジ部31bと安全スイッチ内壁の固定部48との間にコイルバネ49が介在されている。これにより、第1リンク部31Aは図12の上方側に付勢されている。
【0041】
このような構成より、アクチュエータ102の引張り時に、ソレノイド90がOFF状態のときは、2つのロック接点部10は共に、ON状態となっている(図12参照)。このような状態で、ソレノイド90がONすると、プランジャー90aに連動して第2リンク部31Bはプランジャー90a側が上方になる斜めに移動する。このとき、隙間21を有することにより第1リンク部31Aは動かない。したがって、操作ロッド30と第1リンク部31Aとは係合したままである。一方、プランジャー90aに連動した第2リンク部31Bの動きにより、2つのロック接点部10は共に、OFF状態となる(図13参照)。このようにして、本実施の形態4では、アクチュエータ102引張り時にロック解除操作されても、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じない。
【0042】
(その他の事項)
(1)上記実施の形態では、ソレノイドが励磁してロック機構によるロックを解除するように構成されていたけれども、本発明はこれに限定されず、ソレノイドの励磁によりロックされ、ソレノイドを非励磁してロックを解除するタイプの安全スイッチにも適用することができる。
【0043】
(2)また、ロック機構としては、ソレノイドに限らず、空気圧、油圧等を用いることができる。また、上記実施の形態では、ロック接点部は2個設けられたけれども、3個以上設ける構成であってもよい。
【0044】
(3)また、上記実施の形態1,3では、2つのロック接点部を有する場合において、アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、2つのロック接点部間において接点信号の不一致が生じないように構成されていたけれども、実施の形態1,3は、1のロック接点部を有する場合において、アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、その1のロック接点部のロック状態時における接点状態を維持させて接点の不安定な状態を解消するような場合にも適用することができる。また、ロック接点部は複数個あってもかまわず、この場合複数のロック接点部のロック状態時における接点状態を維持させて接点の不安定な状態を解消することができる。
【0045】
(4)また、上記実施の形態では、ソレノイド非励磁でロック接点部ON、ソレノイド励磁でロック接点部OFFするように構成されていたけれども、本発明はこれに限定されず、ソレノイド非励磁でロック接点部OFF、ソレノイド励磁でロック接点部ONするような構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、産業機械が設置される領域の出入口などの壁面及びその出入口の扉付近に装着され、扉が開かれたときには産業機械等への電源供給を停止する安全スイッチに好適に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1の使用状態で示す斜視図。
【図2】実施の形態1の操作部111とソレノイド機構部113付近の平面図。
【図3】駆動カムの構成を示す図2のA1−A1線矢視断面図。
【図4】操作板付近の平面図。
【図5】図4のX1−X1線矢視断面図。
【図6】ソレノイドがOFF時の実施の形態2に係る安全スイッチの駆動カムの構成を示す断面図。
【図7】ソレノイドがOFF時の操作板付近の平面図。
【図8】図7のX2−X2線矢視断面図。
【図9】ソレノイドがON時の操作板付近の平面図。
【図10】図9のX3−X3線矢視断面図。
【図11】実施の形態3に係る安全スイッチのロック手段及びロック解除手段の簡略化した構成図。
【図12】実施の形態4に係る安全スイッチのロック手段及びロック解除手段の簡略化した構成図であり、ソレノイドがOFF時の場合を示している。
【図13】実施の形態4に係る安全スイッチのロック手段及びロック解除手段の簡略化した構成図であり、ソレノイドがON時の場合を示している。
【符号の説明】
【0048】
10:ロック接点部 20:凹部
21:隙間 31A:第1リンク部
31B:第2リンク部 101:スイッチ本体
102:アクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械が設置される領域の出入口などの壁面及びその出入口の扉付近に装着され、扉が開かれたときには産業機械等への電源供給を停止する安全スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業機械が設置された部屋では、作業者が機械に巻き込まれて負傷するといったトラブルの発生を防止することを目的として、当該部屋の出入口の扉が完全に閉まっていないときには、機械の駆動を許可しないシステムを設けることが要求されており、このような要求に応じるために安全スイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この安全スイッチは、安全スイッチ本体部が部屋の出入口周辺の壁面に装着され、その出入口の扉を閉じたときに扉に固着された専用のアクチュエータが安全スイッチ本体部の挿入口から挿入されると、安全スイッチ本体部内の駆動カムが回転し、その駆動カムの回転に応じて操作ロッドが移動して接点の接続状態が切り替わる構造のスイッチであって、このような接点の切り替わり動作で主回路(産業機械への電源供給回路)が閉じられ部屋内の機械が運転可能な状態となるとともに、ロック部材が駆動カムにロックするロック機構が設けられており、扉を開けられないように機械的にロックするようになっている。一方、産業機械への電源供給を遮断するように操作されたときに、その作動オフ信号により、例えば、ソレノイドが励磁してロック機構によるロックを解除し、扉を開放可能状態にする構成になっている。また、ロック状態及びロック解除状態を検出するために、複数のロック接点部が設けられている。なお、複数のロック接点部を設けているのは、検出の確実性のためである(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−334772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記安全スイッチにおいては、ロック状態時にアクチュエータに引張力が生じている場合がある。例えば、扉を勢いよく閉じた時にその反動で扉が若干開いた状態となる場合、或いは、扉の取り付け等にガタが生じ、そのため扉が完全に閉まった状態が得られずに若干開いた状態となるような場合等に、アクチュエータに引張力が生じる。
【0005】
このようなアクチュエータが引っ張られた状態において、ロック解除操作すると、ロック部材が解除動作を開始するが、アクチュエータの引張力に起因してロック部材に摩擦力が生じロック解除しない場合やロック部材の動きが途中で止まったりすることがある。ロック部材が途中で止まった場合、ロック部材と連動する接点が接触不安定になり、ロック状態にも関わらず接点がOFFとなる状態が生じ作業者がその接点信号に基づき、ロックが掛かっているにも関わらず、扉を開けようとして安全スイッチが破損したり、連動する2つの接点間において接点信号の不一致が生じ、そのため、制御回路がエラーと判断し機械の主電源が遮断され復旧に時間がかかる等の不具合が発生していた。
【0006】
そこで、アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、ロック部材と連動する接点の接触状態の安定化が図られ、且つ、複数の接点間において接点信号の不一致が生じないロック付き安全スイッチが要望されていた。
【0007】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、ロック部材と連動する接点の接触状態の安定化が図られ、且つ、複数の接点間において接点信号の不一致が生じないロック付き安全スイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、スイッチ本体の操作部に進入・後退自在なアクチュエータと、アクチュエータの進入・後退に応じて回動する駆動カムと、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に前記駆動カムの回動を規制してアクチュエータをロック状態とするロック手段と、アクチュエータのロック状態及びロック解除状態を検出する複数のロック接点部と、アクチュエータのロック状態を解除するロック解除手段とを備え、ロック解除手段の操作により前記ロック手段はロック状態を解除し、且つ前記ロック接点部の接点状態を切換えるように構成されたロック付き安全スイッチであって、
アクチュエータ引張り時に、前記ロック解除手段が操作されても、前記複数のロック接点部間において接点信号の不一致が生じないようにする接点信号一致手段が設けられていることを要旨とする。
【0009】
複数の接点部間において接点信号の不一致が生じないことにより、制御回路がエラーと判断し機械の主電源が遮断され復旧に時間がかかる等の不具合の発生を防止できる。
ここで、「接点信号の不一致が生じない」とは、制御回路が判定しうる時間レベル内で接点信号の不一致が生じないという意味である。即ち、厳密なミクロレベルで見れば、接点信号の完全な一致はあり得ず、必ず接点信号の不一致は生じているが、ここでの「接点信号の不一致が生じない」とは上記の意味として用いるものである。
【0010】
本発明は、前記接点信号一致手段は、前記複数のロック接点部の接点状態を共にON状態又はOFF状態のいずれかに保持させて接点信号の不一致の状態が生じないように構成する場合、若しくは、前記接点信号一致手段は、前記複数のロック接点部の接点状態を共に、ロック状態時におけるON状態又はOFF状態のいずれか一方の状態から他方の状態に切り換えさせて接点信号の不一致の状態が生じないように構成する場合もある。
【0011】
また、本発明は、前記接点信号一致手段が、前記ロック手段が動かないことによって、前記ON状態又はOFF状態のいずれかの状態を保持するように構成されていてもよい。
【0012】
また、本発明は、前記接点信号一致手段が、前記ロック手段と前記ロック解除手段とは緩やかな連結状態とされており、ロック手段が動かなくても、ロック解除手段を大きく動かせることにより、前記複数のロック接点部の接点状態を共に、ロック状態時におけるON状態又はOFF状態のいずれか一方の状態から他方の状態に切り換えさせるように構成されていてもよい。
【0013】
また、本発明は、スイッチ本体の操作部に進入・後退自在なアクチュエータと、アクチュエータの進入・後退に応じて回動する駆動カムと、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に前記駆動カムの回動を規制してアクチュエータをロック状態とするロック手段と、アクチュエータのロック状態及びロック解除状態を検出する少なくとも1以上のロック接点部と、アクチュエータのロック状態を解除するロック解除手段とを備え、ロック解除手段の操作により前記ロック手段はロック状態を解除し、且つ前記ロック接点部の接点状態を切換えるように構成されたロック付き安全スイッチであって、アクチュエータ引張り時に、前記ロック解除手段が操作されても、前記ロック接点部をロック状態時における接点状態に維持させる手段が設けられていることを設けられていることを要旨とする。
【0014】
上記構成により、ロック手段と連動する接点の接触状態の安定化が図られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の接点部間において接点信号の不一致が生じないようにする接点信号一致手段が設けられていることにより、制御回路がエラーと判断し機械の主電源が遮断され復旧に時間がかかる等の不具合の発生を防止でき、また、ロック接点部をロック状態時における接点状態に維持させる手段を設けることにより、ロック手段と連動する接点の接触状態の安定化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る安全スイッチを、実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
先ず、安全スイッチの概略構造を図1を参照しつつ説明する。
この例の安全スイッチは、部屋に設置される産業機械に電気的に接続されるスイッチで、スイッチ本体101とアクチュエータ102を主として構成されており、そのスイッチ本体101には、操作部111、スイッチ部112、及び、操作部111に設けられた機械的なロック手段(後述)の解除を行うためのソレノイド機構部113が配置されている。
【0017】
スイッチ本体101は部屋の出入口の周縁の壁150に固着され、またアクチュエータ102は扉103に固着される。そのアクチュエータ102の位置はスイッチ本体101の挿入孔101aに対向する位置で、扉103を閉鎖した状態のときにスイッチ本体101の操作部111内に進入する。
そして、アクチュエータ102の進入により、スイッチ部112に内蔵の接点ブロック(図示せず)の接続接点が切り換わり、部屋内の機械が駆動可能な状態となる。一方、扉103の開放によりアクチュエータ102が操作部111から抜けたときには元の状態に復帰して機械への電源供給がオフされる。
【0018】
なお、アクチュエータ102は、操作部111への挿入部が先端部の押圧片121とこれを支持する一対の支持片122,123によって構成されている。その押圧片121には、両端部に位置する凸部押圧面121b,121bと、この間に位置する凹部押圧面121aが形成されている。
また、スイッチ本体101には、先の挿入孔101aに加えて、本体上面側にも挿入孔101bが設けられており、設置場所の状況に応じていずれかの挿入孔101aもしくは101bを選択することができる。
【0019】
次に、この実施の形態のスイッチ本体の機構を、図2〜図5を参照しつつ説明する。
【0020】
まず、操作部111には、アクチュエータ102の進入・後退に応じて回動する駆動カム1と、この駆動カム1のカムシャフトに回動自在に支承された規制板2,3等が設けられている。
【0021】
さて、駆動カム1の外周面にロック段部1dが形成されており、この駆動カム1と規制板2,3の上方位置には、ロックレバー50が配設されている。
【0022】
このロックレバー50は、係止片50aとその両端を支持するアーム50b、及びそれらのアーム端を支持する作動片50cが一体形成された部材で、圧縮コイルばね(図示せず)の弾性力により係止片50aが駆動カム1の外周面に向けて押圧された状態で接触するように構成されている。
【0023】
一方、ソレノイド機構部113(ロック解除手段)は、操作部111のロック手段(ロックレバー50)を解除するロック解除機構60と、その解除力を発生するソレノイド90を備えている。
【0024】
ロック解除機構60は、ソレノイド90のプランジャー90a(図4参照)の先端部に連結される作動ロッド61と、この作動ロッド61の先端部に小ねじ63により固着された操作板62、圧縮バネ64などによって構成されている。操作板62の操作部111側の端部は、ロックレバー50の作動片50cの下端部の前側(図3参照)に接触しており、この操作板62の移動に伴ってロックレバー50が揺動するように構成されている。
【0025】
また、ソレノイド機構部113には、ソレノイド90のプランジャー90aの移動に伴って開閉する2つのロック接点部10が設けられている。このロック接点部10は、図5に示すように、固定接点40aと、可動接点40bと、固定接点40aに連結されるリード部41と、可動接点40bに連結されるリード部42と、リード部42に当接して可動接点40bを固定接点40aから引き離す作動部44と、リード部42に当接して可動接点40bを固定接点40aに接触させる方向に付勢するバネ43等から構成されている。そして、この2つのロック接点部10により、ロック状態が検出されるようになっている。なお、プランジャー90aに連結されている作動ロッド61には、作動部44を押圧してロック接点部10の接点をOFFさせる接点押圧部61a(図4及び図5参照)が一体的に形成されている。
【0026】
以上の構造の安全スイッチ動作について、以下に説明する。なお、以下の説明では、アクチュエータ102には引張りが生じていないものとする。アクチュエータ102に引張りが生じている場合は、本発明の特徴部分であり、後述する。アクチュエータ102が挿入孔101aを通じて操作部111の内部に進入すると、まずは、その先端の凹部押圧面121aと凸部押圧面121b,121bが、それぞれ駆動カム1と規制板2,3に接触する。
【0027】
次いでアクチュエータ102が更に進入して、挿入端まで達した時点でアクチュエータ102の押圧片121が駆動カム1の凹部1aに嵌まり込む。
【0028】
このとき、ロックレバー50の係止片50aが、圧縮コイルばねの押圧力によって駆動カム1のロック段部1dに引っ掛かる位置に変位し、これにより駆動カム1の復帰方向(時計方向)への回動が阻止される。従って、扉103を開けようとしてアクチュエータ102に抜け方向の力が作用しても、回動阻止状態の駆動カム1の凹部1aに押圧片121が引っ掛かって、アクチュエータ102の抜けは阻止される。
【0029】
一方、機械への電源供給を遮断したときの作動オフ信号に応じてソレノイド機構部113が作動すると、ソレノイド90のプランジャー90aが後退し(図2及び図3参照)、ロック解除機構60の操作板62が移動する。この操作板62の移動により、ロックレバー50の係止片50a側が持ち上げられ、係止片50aが駆動カム1のロック段部1dから外れ、これにより駆動カム1の回動阻止つまりアクチュエータ102の機械的なロックが解除されて扉103が開放可能な状態となる。
また、作動オフ信号に応じてソレノイド機構部113が作動した時点で、プランジャー90aの後退に連動して作動ロッド61も後退して、作動ロッド61の接点押圧部61aが作動部44を押圧する。この結果、2つのロック接点部10がOFF状態となる。
【0030】
(本発明の特徴部分)
上記のロック解除操作において、アクチュエータ102に引張りが生じている場合は、従来例において説明したように、ロックレバー50(ロック部材)と駆動カム1との間に摩擦力が発生して、ロック解除操作しても、ロックレバー50が中途半端な位置で止まり、ロック接点部の不一致が生じる。そこで、かかる問題を解決するために、本発明の特徴部分として、以下の構成が設けられている。
【0031】
即ち、本発明の主たる特徴は、図3に示すように、駆動カム1に凹部20が形成されており、この凹部20にロックレバー50(ロック部材)が係合していることである。したがって、アクチュエータ102の引張り時に、ソレノイド90がONしても、駆動カム1とロックレバー50とが係合していることにより、ロックレバー50が動かず、2つのロック接点部10は、図5に示すように、ON状態を維持する。これにより、接点信号の不一致(一方の接点信号がONで、他の接点信号がOFFとなる場合)を制御回路がエラーと判断し機械の主電源が遮断され復旧に時間がかかる等の不具合の発生を防止できる。
【0032】
なお、このような状態において、アクチュエータ102の引張りを解消すべく、作業者は扉を閉じる。そうすると、駆動カム1が矢印M(図3参照)方向に回動し、ロックレバー50と凹部20との係合状態が解除される。これにより、ロックレバー50が一気に揺動し、そのため、2つのロック接点部10は、OFF状態に切り換わる。したがって、接点信号の不一致は生じない。この結果、アクチュエータ102の引張り時にロック解除操作されても、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じことはなく、且つ、アクチュエータ102の引張りが解消された場合でも、接点信号の不一致が生じることはない。
なお、上記の例では、アクチュエータ102の引張りを解消するために作業者が扉を閉じるようにしたけれども、駆動カム1に吸込み方向(図3における矢印M方向)の回転力を持たせると、作業者が扉を閉じなくてもアクチュエータ102の引張力を解消するだけでロックレバー50の係合を解除し、ロック接点部10をOFF状態にする事も可能である。
【0033】
(実施の形態2)
図6はソレノイドがOFF時の実施の形態2に係る安全スイッチの駆動カムの構成を示す断面図、図7はソレノイドがOFF時の操作板62付近の平面図、図8は図7のX2−X2線矢視断面図、図9はソレノイドがON時の操作板62付近の平面図、図10は図9のX3−X3線矢視断面図である。この実施の形態2では駆動カム1に凹部20が形成されておらず、凹部20に代えて、ロックレバー50(より具体的には作動片50c)と操作板62との間の連結部に大きな隙間21を設け、さらに作動ロッド80と作動部44との間に隙間21より小さい間隔の隙間21Aを設けるようしている。即ち、本実施の形態2は、この隙間21,21Aを設けることにより、アクチュエータ102の引張り時にロック解除操作されても、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じないように構成したことを特徴とするものである。
換言すれば、ロック手段(ロックレバー50)と、ロック解除手段(作動ロッド61、操作板62など)とは、隙間21により緩やかな連結状態とされており、ロック手段が動かなくても、ロック解除手段(特に作動ロッド61)を大きく動かせることにより、2つのロック接点部10をOFF状態に切り換えて、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じないように構成したものである。
【0034】
以下にその動作について説明する。即ち、アクチュエータ102の引張り時に、ソレノイド90がOFF状態のときは、操作板62が矢印方向(図6参照)に移動しているので、2つのロック接点部10は共に、図8に示すようにON状態となっている。このような状態で、ソレノイド90がONすると、プランジャー90aに連動して操作板62が矢印方向とは反対方向に移動する。このとき、隙間21を有することによりロックレバー50は動かない。したがって、ロックレバー50は段部1dと係合しているソレノイドがOFF時の状態のままである。一方、プランジャー90aに連動して作動ロッド61は作動部44側に向けて移動する。このとき、隙間21Aが隙間21より間隔が小さいことから、操作板62がロックレバー50に規制される前に、作動ロッド61の接点押圧部61aは作動部44を押圧する。これにより、2つのロック接点部10は共に、図10に示すようにOFF状態となる。このように、本実施の形態2では、アクチュエータ102の引張り時にロック解除操作されても、ロックレバー50を動かさずに、ロック接点部10を共に、OFF状態に切り換えるので、2つのロック接点部10間での接点信号の不一致が生じない。
【0035】
(実施の形態3)
図11は実施の形態3に係る安全スイッチのロック手段及びロック解除手段の簡略化した構成図である。この実施の形態3に係る安全スイッチでは、ロック手段としては、駆動カム1の凹部200に嵌まり込む操作ロッド30と、その操作ロッド30の動きをロックするロック部材31とで構成されている。そして、操作ロッド30に突部30aが形成され、ロック部材31には突部30aに係合する凹部31aが形成されている。なお、本実施の形態3においては、ロック部材31はロック手段とロック解除手段の両方の機能を有している。
【0036】
このような構成により、アクチュエータ102の引張り時に、ソレノイド90がONしても、操作ロッド30とロック部材31が係合していることにより、ロック部材31が中途半端な位置で止まることがなく、そのため、2つのロック接点部10は、ON状態を維持し、接点信号の不一致が生じない。
【0037】
(実施の形態4)
図12及び図13は実施の形態4に係る安全スイッチのロック手段及びロック解除手段の簡略化した構成図である。なお、図12はソレノイドがOFF時の場合、図13はソレノイドがON時の場合を示している。
【0038】
この実施の形態4も、実施の形態3と同様に、ロック手段としては、駆動カム1の凹部200に嵌まり込む操作ロッド30と、その操作ロッド30の動きをロックするロック部材31とで構成されている。この実施の形態4では、ロック部材31は、操作ロッド30を規制する第1リンク部31Aと、ロック接点部10を作動させる第2リンク部31Bとで構成され、且つ、第1リンク部31Aと第2リンク部31Bとの連結部に大きな隙間21を設けるようしている。即ち、本実施の形態4は、この隙間21を設けることにより、アクチュエータ102の引張り時にロック解除操作されても、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じないように構成したことを特徴とするものである。
【0039】
換言すれば、第1リンク部31Aと第2リンク部31Bは、隙間21により緩やかな連結状態とされており、第1リンク部31Aが動かなくても、第2リンク部31Bを大きく動かせることにより、2つのロック接点部10をOFF状態に切り換えて、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じないように構成したものである。なお、上記構成より明らかなように、本実施の形態4においては、ロック部材31のうち第1リンク部31Aがロック手段の機能を有しており、第2リンク部31Bがロック解除手段の機能を有している。
【0040】
なお、第1リンク部31Aには、フランジ部31bが形成され、このフランジ部31bと安全スイッチ内壁の固定部48との間にコイルバネ49が介在されている。これにより、第1リンク部31Aは図12の上方側に付勢されている。
【0041】
このような構成より、アクチュエータ102の引張り時に、ソレノイド90がOFF状態のときは、2つのロック接点部10は共に、ON状態となっている(図12参照)。このような状態で、ソレノイド90がONすると、プランジャー90aに連動して第2リンク部31Bはプランジャー90a側が上方になる斜めに移動する。このとき、隙間21を有することにより第1リンク部31Aは動かない。したがって、操作ロッド30と第1リンク部31Aとは係合したままである。一方、プランジャー90aに連動した第2リンク部31Bの動きにより、2つのロック接点部10は共に、OFF状態となる(図13参照)。このようにして、本実施の形態4では、アクチュエータ102引張り時にロック解除操作されても、2つのロック接点部10間で接点信号の不一致が生じない。
【0042】
(その他の事項)
(1)上記実施の形態では、ソレノイドが励磁してロック機構によるロックを解除するように構成されていたけれども、本発明はこれに限定されず、ソレノイドの励磁によりロックされ、ソレノイドを非励磁してロックを解除するタイプの安全スイッチにも適用することができる。
【0043】
(2)また、ロック機構としては、ソレノイドに限らず、空気圧、油圧等を用いることができる。また、上記実施の形態では、ロック接点部は2個設けられたけれども、3個以上設ける構成であってもよい。
【0044】
(3)また、上記実施の形態1,3では、2つのロック接点部を有する場合において、アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、2つのロック接点部間において接点信号の不一致が生じないように構成されていたけれども、実施の形態1,3は、1のロック接点部を有する場合において、アクチュエータ引張り時にロック解除手段が操作されても、その1のロック接点部のロック状態時における接点状態を維持させて接点の不安定な状態を解消するような場合にも適用することができる。また、ロック接点部は複数個あってもかまわず、この場合複数のロック接点部のロック状態時における接点状態を維持させて接点の不安定な状態を解消することができる。
【0045】
(4)また、上記実施の形態では、ソレノイド非励磁でロック接点部ON、ソレノイド励磁でロック接点部OFFするように構成されていたけれども、本発明はこれに限定されず、ソレノイド非励磁でロック接点部OFF、ソレノイド励磁でロック接点部ONするような構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、産業機械が設置される領域の出入口などの壁面及びその出入口の扉付近に装着され、扉が開かれたときには産業機械等への電源供給を停止する安全スイッチに好適に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1の使用状態で示す斜視図。
【図2】実施の形態1の操作部111とソレノイド機構部113付近の平面図。
【図3】駆動カムの構成を示す図2のA1−A1線矢視断面図。
【図4】操作板付近の平面図。
【図5】図4のX1−X1線矢視断面図。
【図6】ソレノイドがOFF時の実施の形態2に係る安全スイッチの駆動カムの構成を示す断面図。
【図7】ソレノイドがOFF時の操作板付近の平面図。
【図8】図7のX2−X2線矢視断面図。
【図9】ソレノイドがON時の操作板付近の平面図。
【図10】図9のX3−X3線矢視断面図。
【図11】実施の形態3に係る安全スイッチのロック手段及びロック解除手段の簡略化した構成図。
【図12】実施の形態4に係る安全スイッチのロック手段及びロック解除手段の簡略化した構成図であり、ソレノイドがOFF時の場合を示している。
【図13】実施の形態4に係る安全スイッチのロック手段及びロック解除手段の簡略化した構成図であり、ソレノイドがON時の場合を示している。
【符号の説明】
【0048】
10:ロック接点部 20:凹部
21:隙間 31A:第1リンク部
31B:第2リンク部 101:スイッチ本体
102:アクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ本体の操作部に進入・後退自在なアクチュエータと、アクチュエータの進入・後退に応じて回動する駆動カムと、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に前記駆動カムの回動を規制してアクチュエータをロック状態とするロック手段と、アクチュエータのロック状態及びロック解除状態を検出する複数のロック接点部と、アクチュエータのロック状態を解除するロック解除手段とを備え、ロック解除手段の操作により前記ロック手段はロック状態を解除し、且つ前記ロック接点部の接点状態を切換えるように構成されたロック付き安全スイッチであって、
アクチュエータ引張り時に、前記ロック解除手段が操作されても、前記複数のロック接点部間において接点信号の不一致が生じないようにする接点信号一致手段が設けられていることを特徴とするロック付き安全スイッチ。
【請求項2】
前記接点信号一致手段は、前記複数のロック接点部の接点状態を共にON状態又はOFF状態のいずれかに保持させて接点信号の不一致の状態が生じないようにしたことを特徴とする請求項1記載のロック付き安全スイッチ。
【請求項3】
前記接点信号一致手段は、前記複数のロック接点部の接点状態を共に、ロック状態時におけるON状態又はOFF状態のいずれか一方の状態から他方の状態に切り換えさせて接点信号の不一致の状態が生じないようにしたことを特徴とする請求項1記載のロック付き安全スイッチ。
【請求項4】
前記接点信号一致手段は、前記ロック手段が動かないことによって、前記ON状態又はOFF状態のいずれかの状態を保持することを特徴とする請求項2記載のロック付き安全スイッチ。
【請求項5】
前記接点信号一致手段は、前記ロック手段と前記ロック解除手段とは緩やかな連結状態とされており、ロック手段が動かなくても、ロック解除手段を大きく動かせることにより、前記複数のロック接点部の接点状態を共に、ロック状態時におけるON状態又はOFF状態のいずれか一方の状態から他方の状態に切り換えさせることを特徴とする請求項3記載のロック付き安全スイッチ。
【請求項6】
スイッチ本体の操作部に進入・後退自在なアクチュエータと、アクチュエータの進入・後退に応じて回動する駆動カムと、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に前記駆動カムの回動を規制してアクチュエータをロック状態とするロック手段と、アクチュエータのロック状態及びロック解除状態を検出する少なくとも1以上のロック接点部と、アクチュエータのロック状態を解除するロック解除手段とを備え、ロック解除手段の操作により前記ロック手段はロック状態を解除し、且つ前記ロック接点部の接点状態を切換えるように構成されたロック付き安全スイッチであって、
アクチュエータ引張り時に、前記ロック解除手段が操作されても、前記ロック接点部をロック状態時における接点状態に維持させる手段が設けられていることを特徴とするロック付き安全スイッチ。
【請求項1】
スイッチ本体の操作部に進入・後退自在なアクチュエータと、アクチュエータの進入・後退に応じて回動する駆動カムと、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に前記駆動カムの回動を規制してアクチュエータをロック状態とするロック手段と、アクチュエータのロック状態及びロック解除状態を検出する複数のロック接点部と、アクチュエータのロック状態を解除するロック解除手段とを備え、ロック解除手段の操作により前記ロック手段はロック状態を解除し、且つ前記ロック接点部の接点状態を切換えるように構成されたロック付き安全スイッチであって、
アクチュエータ引張り時に、前記ロック解除手段が操作されても、前記複数のロック接点部間において接点信号の不一致が生じないようにする接点信号一致手段が設けられていることを特徴とするロック付き安全スイッチ。
【請求項2】
前記接点信号一致手段は、前記複数のロック接点部の接点状態を共にON状態又はOFF状態のいずれかに保持させて接点信号の不一致の状態が生じないようにしたことを特徴とする請求項1記載のロック付き安全スイッチ。
【請求項3】
前記接点信号一致手段は、前記複数のロック接点部の接点状態を共に、ロック状態時におけるON状態又はOFF状態のいずれか一方の状態から他方の状態に切り換えさせて接点信号の不一致の状態が生じないようにしたことを特徴とする請求項1記載のロック付き安全スイッチ。
【請求項4】
前記接点信号一致手段は、前記ロック手段が動かないことによって、前記ON状態又はOFF状態のいずれかの状態を保持することを特徴とする請求項2記載のロック付き安全スイッチ。
【請求項5】
前記接点信号一致手段は、前記ロック手段と前記ロック解除手段とは緩やかな連結状態とされており、ロック手段が動かなくても、ロック解除手段を大きく動かせることにより、前記複数のロック接点部の接点状態を共に、ロック状態時におけるON状態又はOFF状態のいずれか一方の状態から他方の状態に切り換えさせることを特徴とする請求項3記載のロック付き安全スイッチ。
【請求項6】
スイッチ本体の操作部に進入・後退自在なアクチュエータと、アクチュエータの進入・後退に応じて回動する駆動カムと、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に前記駆動カムの回動を規制してアクチュエータをロック状態とするロック手段と、アクチュエータのロック状態及びロック解除状態を検出する少なくとも1以上のロック接点部と、アクチュエータのロック状態を解除するロック解除手段とを備え、ロック解除手段の操作により前記ロック手段はロック状態を解除し、且つ前記ロック接点部の接点状態を切換えるように構成されたロック付き安全スイッチであって、
アクチュエータ引張り時に、前記ロック解除手段が操作されても、前記ロック接点部をロック状態時における接点状態に維持させる手段が設けられていることを特徴とするロック付き安全スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−16214(P2009−16214A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177747(P2007−177747)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】
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