説明

安全確保システム及びその制御方法

【課題】地域ごとに設置されている防災無線を有効活用し、その拡声器から、児童等による防犯ベルの操作を近隣に報知することにより、防犯ベルの警報音量や専用サービスのコストに関係なく、児童等に係る防犯や迅速な救援の効果を期待可能とする。
【解決手段】児童等警報受信部23(受信手段)は、防犯ベル1からの前記無線警報情報を受信し(受信処理)、警報識別報知部24(報知手段)は、児童等警報受信部23が前記無線警報情報を受信した場合にそのことを、少なくとも拡声器3により近隣に報知する(報知処理)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、児童等の安全を確保する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、諸要因からの治安悪化とともに、児童に代表される弱者(本出願において「児童等」と呼ぶ)に対する誘拐、殺人、その他の犯罪が、未遂を含めて後を絶たず、児童等の安全確保が社会の大きな課題となっている。
【0003】
この分野での安全対策の現状としては、学校などを通じて自治体が防犯ベルを貸与、配布したりするものが主となっている。また、PHSや携帯電話等の公衆網とGPSを利用した子供の位置検索、それに付随した警備会社との連係といったサービスや、学校単位で取り組むICタグを利用した登下校管理システムなど(これらを「専用サービス」と総称する)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−40196
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、防犯ベルについては、その警報音は、静かな地域で近くでは極端にけたたましい一方、構造や機種によっては音量や届く範囲に限度があり、騒々しかったり音が届きにくい地域もあるうえ、世相や各種機器の氾濫で警報音に無関心な昨今の地域事情から、高い効果を期待することは困難である。
【0005】
また、携帯電話網やICタグなどによる上記のような専用サービスの場合は、子供を持つ家庭が個々に加入しなければならないうえ、初期投資の多きさやランニングコストを要する等の費用面の困難性もあり、大きく普及するには至っていない。
【0006】
一方、地域の情報網として、ほとんどの自治体で設置されている防災無線を見ると、あくまで緊急災害時の備えの性格で、自治体ごとや案件ごとの判断により、定刻の時報、迷子や徘徊老人の捜索情報などを流す程度であり、有効活用が不十分のケースが多い。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するもので、その実現しようとする目的は、地域ごとに設置されている防災無線を有効活用し、その拡声器から、児童等による防犯ベルの操作を近隣に報知することにより、防犯ベルの警報音量や専用サービスのコストに関係なく、児童等に係る防犯や迅速な救援の効果を期待可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様は(請求項1、5)、携行用の防犯ベルと、防災無線装置と、を備える安全確保システム(その制御方法)であって、前記防犯ベルは、所定の操作を受けてその操作がされた旨を表す無線警報情報を外部へ無線発信する無線発信手段(処理)を備え、前記防災無線装置は、所定の放送元から伝送される防災無線放送を受信し拡声器から放送する通常放送手段(処理)と、前記防犯ベルからの前記無線警報情報を受信する受信手段(処理)と、前記無線警報情報を受信した場合にそのことを、少なくとも前記拡声器により近隣に報知する報知手段(処理)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このように、地域ごとに設置されている防災無線を有効活用し、その拡声器から、児童等による防犯ベルの操作を近隣に報知することにより、防犯ベルの警報音量や専用サービスのコストに関係なく、児童等に係る防犯や迅速な救援の効果が期待可能となる。
【0010】
本発明の他の態様は(請求項2、6)、上記態様において、前記通常放送手段(処理)は、前記防災無線放送にあたりその放送元を認証することを特徴とする。
【0011】
このように、各種暗号方式や暗証、信号パターンなどにより、防災無線放送の放送元を認証することにより、電波ジャックや、電離層反射による誤放送などの防止により防災無線の信頼性が維持され、ひいては児童等に係る防犯や迅速な救援の効果も補強される。
【0012】
本発明の他の態様は(請求項3、7)、上記各態様において、所定の中継アンテナ装置により、前記防犯ベルからの前記無線警報情報を前記防災無線装置又は他の中継アンテナ装置に対して中継伝達することを特徴とする。
【0013】
このように、スピーカーのある防災無線装置が近くに無い場合でも、例えば電柱上などに250m間隔といった具合に設置した中継アンテナ装置により、防犯ベルからの無線警報情報を防災無線装置に直接又はバケツリレー式に中継伝達することにより、児童等に係る防犯や迅速な救援などの効果が確実に実現される。
【0014】
本発明の他の態様では(請求項4)、上記態様において、前記防災無線装置を管理する所定の親局基地を備え、前記防災無線装置は、前記無線警報情報を受信した場合にそのことを表す情報を前記親基地局に伝達する伝達手段を実現し、その親局基地は、その情報を集約するとともに所定の伝達先にも伝達する集約伝達手段を備えることを特徴とする。
【0015】
このように、防犯ベルが操作された場合はそのことを、拡声器から地域へ報知するだけでなく、地区の学校や警察などの公的機関へも伝達することにより、現場急行、情報伝達、広域的な警戒や手配など本格的かつ迅速な初動が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、地域ごとに設置されている防災無線を有効活用し、その拡声器から、児童等による防犯ベルの操作を近隣に報知することにより、防犯ベルの警報音量や専用サービスのコストに関係なく、児童等に係る防犯や迅速な救援の効果を期待可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態は、比較的安価な防犯対策グッズである防犯ベルと、有効活用の手段がまだ埋もれている自治体の防災無線を組み合わせることにより、地域で子供を守るという昔ながらの仕組みにIT(情報技術)を利用し、児童、生徒などの通学時等の安全確保の仕組みを提供する、防犯ベルと防災無線を利用した安全確保システムである。
【0018】
具体的には、子供が防犯ベルを操作した旨の情報が、防災無線の拡声器を通じて近隣に伝えられることで、不審者に対する警告、威嚇になるだけでなく、近隣住民に異常が発生していることを通報することができ、被害にあっている子供の安全をより早く確保することができる。なお、本実施形態において、背景技術や課題での説明と共通の前提事項は繰り返さない。
【0019】
〔1.基本的な構成及び作用〕
本システムは、図1(システム構成図)に示すように、子供が持つ携行用の防犯ベル1と、市町村などの地域に設置された防災無線装置(以下単に「防災無線」と呼ぶ)2と、を備える安全確保システムである。このうち、防犯ベル1は児童等に、例えば、学校などを介して自治体より貸与したり、家庭等で購入したりして所持させる。
【0020】
防災無線2は、地域ごとに適宜、電柱などに拡声器3を伴って設置する。また、防犯ベルからの無線警報情報を中継伝達する中継アンテナ装置Aを、例えば電柱上などに250m間隔といった具合に設置しておくことが望ましい。
【0021】
そして、防犯ベル1が電子回路やプログラムなどの電子的手段により実現する無線発信部11(無線発信手段)は、所定の操作(例えば、防犯ベル1本体に挿入されたピンを抜く、ボタンを押す、本体を折り曲げるなど)を受けて、その操作がされた旨を表す無線警報情報を外部へ無線発信する(無線発信処理)。
【0022】
一方、防災無線2は、電子回路やプログラムなどの電子的手段により、図1に示す以下のような各部を実現する。すなわち、無線回路である通常受信部21と、その制御を含む情報処理を行う通常放送認証制御部22とが、所定の放送元(例えば20)を認証のうえその放送元から伝送される防災無線放送を受信し拡声器3から放送する通常放送手段(通常放送処理)を実現する。この通常放送手段(通常放送処理)は、防災無線放送にあたりその放送元を、各種暗号方式や暗証、信号パターンなどにより認証する。
【0023】
また、児童等警報受信部23(受信手段)は、防犯ベル1からの前記無線警報情報を受信し(受信処理)、警報識別報知部24(報知手段)は、児童等警報受信部23が受信した前記無線警報情報を、信号パタンなどにより識別するとともに、その受信したことを少なくとも拡声器3により近隣に報知する(報知処理)。このような防犯ベル1からの無線警報情報については認証は不要である。
【0024】
すなわち、子供が不審者を発見するなどして防犯ベル1を操作した場合、防犯ベル1自体から警告音とともに無線警報情報が発せられ、これを防災無線2が受信するとその防災無線2の設置場所に応じて「ただいま、○○地区で防犯ベルが使用されました」などといった警告メッセージを自動的に拡声器3から発する。
【0025】
また、中継アンテナ装置Aは、防犯ベルAからの無線警報情報を防災無線2に対して直接、又は、他の中継アンテナ装置に対して中継伝達の繰り返しによりバケツリレー式に中継伝達する。
【0026】
〔2.オプションの構成及び作用〕
また、次のような構成及び作用を加えてもよい。すなわち、(1)防災無線2を管理する所定の親局基地5を設ける。(2)防災無線2が上記のような電子的手段で実現する伝達部25(伝達手段)が、防犯ベル1から前記無線警報情報を受信した場合にそのことを表す情報を親基地局5に伝達する(伝達処理)。(3)この親局基地5が上記のような電子的手段により実現する集約伝達部55(集約伝達手段)は、上記のように防災無線2から伝達された情報を集約するとともに所定の伝達先(例えば、地区の学校や警察などの公的機関4)に伝達する(集約伝達処理)。
【0027】
このように伝達される情報は例えば、上記無線警報情報を受信した防災無線2のIDや、防犯ベル1のIDを含み、受信した公的機関等ではそれらIDとあらかじめ用意したデータベースとの照合により、直ちに該当地域や該当児童等のプロフィールなどの情報を表示するようにしてもよい。
【0028】
伝達先の公的機関4としては、受信した防災無線2に該当する場所が通学路となっている学校や、警察の他、通常防災無線の管理を行っている自治体の役所(例えば放送元20)なども考えられる。また、親局基地5と放送元20は、互いに異なる場所に設けて通信で接続することは必須ではなく、親局基地5を放送元20の施設内に設けるなど互いに同じ場所に設けてもよく、さらに、放送元20に対し親局基地5は単一でもよいし地域ごとなど複数でもよい。
【0029】
〔3.効果〕
以上のように、本実施形態によれば、地域ごとに設置されている防災無線を有効活用し、その拡声器から、児童等による防犯ベルの操作を近隣に報知することにより、防犯ベルの警報音量や専用サービスのコストに関係なく、児童等に係る防犯や迅速な救援の効果が期待可能となる。
【0030】
すなわち、本実施形態では、防犯ベル自体の警告音が聞こえ難い地域や大きな警告音を発することが構造上難しい様な防犯ベルでも、防災無線の拡声器を用いて近隣に異常状況を知らせることができ、比較的迅速に異常事態に対処することができる。また、学校や警察にも通報することが可能になるため、逃走した不審者の発見などにもつながり、子供を対象とした犯罪の根本的な解決、低減に効果をあげることができる。
【0031】
しかも、自治体として取り組まなければならない子供の安全確保に、これも設置が必須となっている防災無線を使用することで、公共設備をより効率的に使用することができる。さらに、防犯ベルを無償貸与する場合に保証金を徴収したり、小額の購入費を使用者に負担してもらうことにより、防災無線を使ったシステム構築の費用を捻出したり、逼迫する地方自治体の財政事情への改善効果を得るようにしてもよい。
【0032】
さらに、子供を持つ家庭としては、個々に防犯システムに加入して費用を要することなく、小額の負担などで地域ぐるみで子供を守る仕組みを構築、活用することができる効果がある。
【0033】
また、上記のように、本実施形態では、防犯ベルが操作された場合はそのことを、拡声器から地域へ報知するだけでなく、地区の学校や警察などの公的機関へも伝達することにより、現場急行、情報伝達、広域的な警戒や手配など本格的かつ迅速な初動が可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、防災無線放送の放送元を認証することにより、電波ジャックや、電離層反射による誤放送などの防止により防災無線の信頼性が維持され、ひいては児童等に係る防犯や迅速な救援の効果も補強される。
【0035】
また、本実施形態では、スピーカーのある防災無線装置が近くに無い場合でも、中継アンテナ装置により、防犯ベルからの無線警報情報を防災無線装置に中継伝達することにより、児童等に係る防犯や迅速な救援などの効果が確実に実現される。
【0036】
〔4.他の実施形態〕
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するもの及びそれ以外の他の実施形態も含むものである。例えば、防犯ベル1が操作された旨の情報を、伝達部25を設けて公的機関4へ伝達することや、その情報を親局基地5(集約伝達部55)を設けて集約させることは、省略可能である。また、防災無線2が比較的密集して設置されている都市部などでは、隣接する受信器にも無線警報情報が届くようにし、複数の拡声器から異常事態発生を報知するようにしてもよい。また、異常事態発生の報知や公共機関等への情報伝達は、該当地域の保護者や役所担当者等の電子メールアドレスなどに対して行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【符号の説明】
【0038】
1…防犯ベル
11…無線発信部
2…地域防災無線装置
21…通常受信部
22…通常放送認証制御部
23…児童等警報受信部
24…警報識別報知部
25…伝達部
3…拡声器
4…公的機関
5…親局基地
55…集約伝達部
20…通常放送元

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行用の防犯ベルと、防災無線装置と、を備える安全確保システムであって、
前記防犯ベルは、所定の操作を受けてその操作がされた旨を表す無線警報情報を外部へ無線発信する無線発信手段を備え、
前記防災無線装置は、
所定の放送元から伝送される防災無線放送を受信し拡声器から放送する通常放送手段と、
前記防犯ベルからの前記無線警報情報を受信する受信手段と、
前記無線警報情報を受信した場合にそのことを、少なくとも前記拡声器により近隣に報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする安全確保システム。
【請求項2】
前記通常放送手段は、前記防災無線放送にあたりその放送元を認証することを特徴とする請求項1記載の安全確保システム。
【請求項3】
前記防犯ベルからの前記無線警報情報を前記防災無線装置又は他の中継アンテナ装置に対して中継伝達する中継アンテナ装置を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の安全確保システム。
【請求項4】
前記防災無線装置を管理する所定の親局基地を備え、
前記防災無線装置は、前記無線警報情報を受信した場合にそのことを表す情報を前記親基地局に伝達する伝達手段を備え、
その親局基地は、その情報を集約するとともに所定の伝達先にも伝達する集約伝達手段を備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の安全確保システム。
【請求項5】
携行用の防犯ベルと、防災無線装置と、を備える安全確保システムの制御方法であって、
前記防犯ベルは、所定の操作を受けてその操作がされた旨を表す無線警報情報を外部へ無線発信する無線発信処理を行い、
前記防災無線装置は、
所定の放送元から伝送される防災無線放送を受信し拡声器から放送する通常放送処理と、
前記防犯ベルからの前記無線警報情報を受信する受信処理と、
前記無線警報情報を受信した場合にそのことを、少なくとも前記拡声器により近隣に報知する報知処理と、
を実行することを特徴とする安全確保システムの制御方法。
【請求項6】
前記通常放送処理は、前記防災無線放送にあたりその放送元を認証することを特徴とする請求項5記載の安全確保システムの制御方法。
【請求項7】
所定の中継アンテナ装置により、前記防犯ベルからの前記無線警報情報を前記防災無線装置又は他の中継アンテナ装置に対して中継伝達することを特徴とする請求項5又は6記載の安全確保システムの制御方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−350478(P2006−350478A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172981(P2005−172981)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】