説明

安定な有機フリーラジカルの存在下におけるフリーラジカル開始および関連組成物

本発明は、フリーラジカル反応性ポリマー、有機ペルオキシド、およびグラフト可能で安定な有機フリーラジカルを含む改良されたポリマー組成物を提供する。本発明は、望ましくない分解、または炭素−炭素架橋反応を抑制することを可能にし、前記ポリマーが望ましいグラフト反応を行うことを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ペルオキシドがフリーラジカルを生成させるために使用され、安定な有機フリーラジカルがフリーラジカル反応を仲介する、フリーラジカル反応を行うポリマー系に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのポリマー類がフリーラジカル反応を行うことができる。それらの反応の一部は、一般に、分解、早期炭素−炭素架橋、または炭素−炭素架橋などの弊害をもたらす。安定な有機フリーラジカルは、本願と同時に提出する特許出願に記載されているとおり、これらのフリーラジカル反応を仲介させるのに用いることができる。
【0003】
これらのフリーラジカル反応をさらに制御することにより望ましい反応の効率を上げることが望ましい。フリーラジカル反応のより良い制御を容易にする有機ペルオキシドを選択することが望ましい。安定な有機フリーラジカルがポリマーにグラフトされる際に有機ペルオキシドが有用なものであることが特に望ましい。こうして、種々の官能基(ヒドロキシル、アミン、カルボキシル、ウレタンなど)が、安定な有機フリーラジカルに結合していてもよく、種々のポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリスチレンを官能基化するのに用いられる。
【発明の開示】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、改良されたポリマー組成物であって、フリーラジカル反応性ポリマー、有機ペルオキシド、およびグラフト可能で安定な有機フリーラジカルを含む。本発明は、望ましくない分解または炭素−炭素架橋反応を抑制することを可能にし、前記ポリマーが望ましいグラフト反応を行うことを可能にする。
【0005】
本発明は、ワイヤーケーブル、履物、フィルム(例えば温室フィルム、シュリンクフィルム、および弾性フィルム)、エンジニアリング・サーモプラスチック、高充填物、難燃剤、反応合成、熱可塑性エラストマー、熱可塑性加硫物、自動車、加硫ゴム代替物、建築、自動車、家具、発泡体、湿潤剤、接着剤、彩色適性基板(paintable substrate)、可染性ポリオレフィン、湿分硬化剤、ナノコンポジット、相溶化剤、ワックス、圧延シート、医療、分散、同時押出、セメント/プラスチック補強材、食品パッケージ、不織布、紙改質剤、多層容器、スポーツ用品、延伸構造部材、および表面処理用途に有用である。
【0006】
(発明の説明)
「幾何拘束型触媒(Constrained geometry catalyst)触媒ポリマー」、「CGC触媒ポリマー」またはその類似語は、本明細書では、幾何拘束型触媒の存在下で製造されたあらゆるポリマーを意味する。「幾何拘束型触媒」または「CGC」は、本明細書では、米国特許5272236号および米国特許5278272号で、この用語が定義され、記載されているものと同一の意味である。
【0007】
「長鎖分岐(LCB)」は、本明細書では、例えば、エチレン/α−オレフィンコポリマーで用いられ、α−オレフィン(類)をポリマー骨格に組み込むことにより得られる短鎖分岐よりも長い鎖長を意味する。各長鎖分岐は、ポリマー骨格と同じコモノマー分布を有し、結合対象であるポリマー骨格と同程度の長さを有する。
【0008】
「メタロセン」は、本明細書では、少なくとも一つの置換基を有するか、または非置換のシクロペンタジエニル基が金属に結合した金属含有化合物を意味する。「メタロセン触媒ポリマー」またはその類似語は、メタロセン触媒の存在下で製造されるあらゆるポリマーを意味する。
【0009】
「多分散性(polydisperity)」「分子量分布」およびその類似語は、本明細書では、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)を意味する。
【0010】
「ポリマー」は、本明細書では、同一のまたは異なる種類のモノマーを重合して得られる高分子化合物を意味する。「ポリマー」には、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどが含まれる。用語「インターポリマー」は、少なくとも2種類のモノマーまたはコモノマーを重合することにより製造されるポリマーを意味し、限定されないが、コポリマー(通常2つの異なるタイプのモノマーまたはコモノマーから製造されるポリマーをいうが、しばしば3つ以上の異なるタイプのモノマーまたはコモノマーから製造されるポリマーをいう「インターポリマー」と同義的に使用される。)、ターポリマー(通常3つの異なるタイプのモノマーまたはコモノマーから製造されるポリマーをいう。)、テトラポリマー(通常4つの異なるタイプのモノマーまたはコモノマーから製造されるポリマーをいう。)などを含む。「モノマー」または「コモノマー」は、同義的に使用され、ポリマーを製造するために反応容器に添加される、重合性部位をもつあらゆる化合物をいう。ポリマーが一以上のモノマーを含むように記載されている場合、例えばポリマーがプロピレンおよびエチレンを含むときは、該ポリマーは当然に該モノマーから誘導される単位、例えば−CH2−CH2−を含むのであって、モノマー自体、例えばCH2=CH2を含むのではない。
【0011】
「P/E*コポリマー」およびその類似語は、本明細書では、プロピレン/不飽和コモノマーコポリマーを意味し、次の特性のうち少なくとも一つを有するものとして特徴づけられる:(i)約14.6および約15.7ppmに、レジオエラー(regio-error)に相当する13CNMRピークであって、同程度の強度を有する13CNMRピーク、および(ii)Tmeが本質的に同じ値を示し、Tpeakがコモノマーの量、即ち、コポリマー中のエチレンおよび/または不飽和コモノマーから誘導される単位が増加するにつれて減少する示差走査熱量計(DSC)曲線。「Tme」は、溶融終了温度を意味する。「Tpeak」は、溶融温度のピークを意味する。通常、本実施形態のコポリマーは、これらの特性の両方をもつ。これらの特性のそれぞれ、およびそれらの各測定方法は、2002年5月5日出願の米国特許出願シリアルNo.10/139,786号(WO2003040442)に詳しく記載されており、この文献は参照によって本発明に組み込まれる。
【0012】
これらのコポリマーはまた、約−1.20よりも大きい歪度指数(Skewness index)、Sixを有していることで更に特徴づけられる。この歪度指数は、昇温溶出分別法(TREF)から得られるデータから計算される。このデータは、溶出温度の関数としての重量分率の規格化プロットとして表される。アイソタクチックプロピレン単位のモル量が主として溶出温度を決める。
【0013】
前記曲線の形状の顕著な特徴は、より高い溶出温度では曲線がシャープまたは急勾配であるのに対し、より低い溶出温度ではテーリングであることである。このタイプの非対称性を反映した統計量が歪度である。式1は、この非対称性の指標の一つとしての歪度指数Sixを数学的に表したものである。
【数1】

【0014】
数値Tmaxは、TREF曲線における50℃〜90℃の間の最大重量分率溶出温度として定義される。Tiおよびwiは、それぞれ、TREF分布における任意のith画分の溶出温度および重量分率である。これらの分布は、30℃超で溶出される曲線の全領域について規格化されている(normalized)(wiの合計が100%である)。したがって、前記指数は、結晶化ポリマーの形状のみを反映する。いかなる非結晶化ポリマー(30℃以下でなお溶液状であるポリマー)も式1で表される計算からは除外される。
【0015】
P/E*コポリマーに用いられる不飽和コモノマーには、C4-20α−オレフィン、特にC4-12α−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなど;C4-20のジオレフィン、好ましくは1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)およびジシクロペンタジエン;C8-40ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、o−、m−、およびp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン;ならびにハロゲン置換C8-40ビニル芳香族化合物、例えばクロロスチレンおよびフルオロスチレンが含まれる。エチレンおよび前記C4-12α−オレフィンが好ましいコモノマーであり、エチレンが特に好ましいコモノマーである。
【0016】
P/E*コポリマーは、P/Eコポリマーの固有のサブセット(unique subset)である。P/Eコポリマーには、プロピレンと不飽和コモノマーとのあらゆるコポリマーが含まれ、P/E*コポリマーに限定されない。P/E*コポリマー以外のP/Eコポリマーには、メタロセン触媒コポリマー、幾何拘束型触媒触媒ポリマー、およびZ−N−触媒ポリマーが含まれる。本発明の目的のために、P/Eコポリマーは、50重量%以上のプロピレンを含み、EP(エチレン−プロピレン)コポリマーは51重量%以上のプロピレンを含む。本明細書では、「…プロピレンを含む」、「…エチレンを含む」およびそれらの類似語は、前記ポリマーが、化合物自体ではなく、プロピレン、エチレンなどから誘導される単位を含むことを意味する。
【0017】
「プロピレンホモポリマー」およびその類似語は、プロピレンから誘導される単位のみからなるか、本質的にすべてがプロピレンから誘導される単位からなるポリマーを意味する。「ポリプロピレンコポリマー」およびその類似語は、プロピレンおよびエチレンおよび/または一以上の不飽和コモノマーから誘導される単位を含むポリマーを意味する。
【0018】
「チーグラーナッタ触媒ポリマー」、「Z−N−触媒ポリマー」またはそれらの類似語は、チーグラーナッタ触媒の存在下で製造されるあらゆるポリマーを意味する。
【0019】
一実施形態では、本発明は、フリーラジカル反応性ポリマー、少なくとも130℃で測定された半減期がジクミルペルオキシドよりも長い有機ペルオキシド、およびグラフト可能で安定な有機フリーラジカルを含むポリマー組成物である。
【0020】
フリーラジカル反応性ポリマーには、フリーラジカル分解性ポリマーおよびフリーラジカル架橋性ポリマーが含まれる。フリーラジカル反応性ポリマーがフリーラジカル分解性ポリマーの場合、前記ポリマーは、安定な有機フリーラジカルの非存在下で、有機ペルオキシドに誘導されると分解反応を起こす。この分解反応は、鎖の切断または脱ハロゲン化水素であることができる。前記安定な有機フリーラジカルは、この分解反応を実質的に抑制し、前記ポリマーがフリーラジカルを生成した後に前記ポリマーにグラフト可能になる。
【0021】
フリーラジカル反応性ポリマーがフリーラジカル架橋性ポリマーの場合、前記ポリマーは、安定な有機フリーラジカルの非存在下で、有機ペルオキシドに誘導されると炭素−炭素架橋反応を起こす。フリーラジカル捕獲種は、炭素−炭素架橋反応を実質的に抑制し、前記ポリマーがフリーラジカルを生成した後に前記ポリマーにグラフト可能になる。
【0022】
本発明においては、多くのフリーラジカル分解性ポリマーが前記ポリマーとして有用である。フリーラジカル分解性ポリマーは炭化水素ベースであってもよい。好適なフリーラジカル分解性炭化水素ベースポリマーには、ブチルゴム、ポリアクリレートゴム、ポリイソブテン、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、ビニル芳香族モノマーのポリマー、塩化ビニルポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。
【0023】
好ましくは、フリーラジカル分解性炭化水素ベースポリマーは、イソブテン、プロピレン、およびスチレンポリマーからなる群から選択される。
【0024】
好ましくは、本発明のブチルゴムは、イソブチレンとイソプレンとのコポリマーである。イソプレンは、通常、約1.0重量%〜約3.0重量%の量で用いられる。
【0025】
本発明において有用なプロピレンポリマーの例としては、プロピレンホモポリマーおよびP/Eコポリマーが挙げられる。特に、これらのプロピレンポリマーには、ポリプロピレンエラストマーが含まれる。プロピレンポリマーはいかなる方法で製造してもよく、チーグラーナッタ触媒、CGC触媒、メタロセン触媒、および非メタロセン触媒、金属中心触媒、ヘテロアリール配位触媒によって製造してもよい。
【0026】
有用なプロピレンコポリマーには、ランダム、ブロック、およびグラフトコポリマーが含まれる。典型的なプロピレンコポリマーとしては、エクソン−モービル社製のVISTAMAX、三井社製のTAFMER、およびダウケミカルカンパニー社製のVERSIFY(登録商標)などが挙げられる。これらのコポリマーの密度は少なくとも約0.850、好ましくは少なくとも約0.860、より好ましくは少なくとも約0.865g/cm3である。
【0027】
通常、これらのプロピレンコポリマーの最大密度は約0.915、好ましくは約0.900、より好ましくは約0.890g/cm3である。これらのプロピレンコポリマーの重量平均分子量(Mw)は、大きく異なってもよいが、通常、約10,000〜1,000,000である。これらのポリマーの多分散性は、通常、約2〜約4である。
【0028】
これらのプロピレンコポリマーの溶融流量(MFR)は、通常、少なくとも約0.01、好ましくは少なくとも約0.05、より好ましくは少なくとも約0.1である。最大MFRは、通常、約2000を超えないが、好ましくは約1000以下、より好ましくは約500以下、さらに好ましくは約80以下、最も好ましくは約50以下である。プロピレンおよびエチレンおよび/または一以上のC4−C20α−オレフィンコポリマーのMFRは、ASTMD−1238により条件L(2.16kg、230℃)で測定される。
【0029】
本発明に有用なスチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーは、分相系である。スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーもまた、本発明に有用である。
ビニル芳香族モノマーのポリマーは、本発明において有用である。好適なビニル芳香族モノマーには、限定されないが、重合プロセスで用いられるものとして知られたビニル芳香族モノマーが含まれ、例えば米国特許4,666,987号、米国特許4,572,819号、米国特許4,585,825号に記載されたものが挙げられる。
【0030】
好ましくは、下記式のモノマー:
【化1】

【0031】
式中、R’は、水素原子または炭素数3以下のアルキルラジカルであり、Arは、アルキル、ハロ、またはハロアルキルで置換された、または非置換の1〜3の芳香環を有する芳香環構造である。ここで、アルキル基は1〜6の炭素原子を含み、ハロアルキルはハロ置換アルキル基をいう。好ましくは、Arは、フェニルまたはアルキルフェニルであり、アルキルフェニルはアルキル置換フェニル基をいうが、最も好ましくはフェニルである。使用可能な典型的なビニル芳香族モノマーには、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、特にパラビニルトルエンの全異性体;エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの全異性体、およびそれらの混合物が含まれる。
【0032】
ビニル芳香族モノマーは、他の共重合可能なモノマーと結合していてもよい。そのようなモノマーの例としては、限定されないが、アクリル系モノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メチルメタクリレート、アクリル酸、およびメチルアクリレート;マレイミド、フェニルマレイミド、および無水マレイン酸が挙げられる。また、重合は、予め溶解したエラストマーの存在下で行い、耐衝撃性改質、すなわちグラフトゴム含有製品を製造することもでき、その例が米国特許3,123,655号、米国特許3,346,520号、米国特許3,639,522号、および米国特許4,409,369号に記載されている。
【0033】
本発明はまた、ゴム改質モノビニリデン芳香族ポリマー組成物の硬質、マトリクス、または連続相ポリマーに適用することができる。
【0034】
本発明においては、種々のフリーラジカル炭素−炭素架橋ポリマーが前記ポリマーとして有用である。前記ポリマーは、炭化水素ベースであってもよい。好適なフリーラジカル炭素−炭素架橋性炭化水素ベースポリマーには、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレン/α−オレフィンコポリマー、エチレン/ジエンコポリマー、エチレンホモポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/スチレンインターポリマー、エチレン/不飽和エステルコポリマー、フルオロポリマー、ハロゲン化ポリエチレン、水素化ニトリルブタジエンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。
【0035】
本発明において、クロロプレンゴムは、通常、2−クロロ−1,3−ブタジエンのポリマーである。好ましくは、前記ゴムは、乳化重合により製造される。また、硫黄の存在下で重合して、ポリマーを架橋してもよい。
【0036】
好ましくは、フリーラジカル炭素−炭素架橋性炭化水素ベースポリマーは、エチレンポリマーである。
【0037】
好適なエチレンポリマーは、通常、次の4つに分類される:(1)高度に分岐したもの、(2)不均一線状のもの、(3)均一に分岐した線状のもの、(4)均一に分岐した実質的に線状のもの。これらのポリマーは、チーグラーナッタ触媒、メタロセンもしくはバナジウムベースのシングルサイト触媒、または、幾何拘束型触媒を用いて製造される。
【0038】
高度に分岐したエチレンポリマーには、低密度ポリエチレン(LDPE)が含まれる。それらのポリマーは、フリーラジカル開始剤を用いて高温かつ高圧で製造することができる。あるいは、それらは配位触媒を用いて高温かつ比較的低圧で製造することもできる。これらのポリマーの密度は、ASTMD−792で測定して、約0.910g/cm3〜約0.940g/cm3である。
【0039】
不均一線状エチレンポリマーには、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が含まれる。ASTM1238により条件Iで測定した、線状低密度エチレンポリマーの密度は、約0.850g/cm3〜約0.940g/cm3であり、メルトインデックスは、約0.01g/10min〜100g/10minである。好ましくは、メルトインデックスは、約0.1g/10min〜約50g/10minである。また、好ましくは、LLDPEは、エチレンと、少なくとも一つの炭素数3〜18、より好ましくは3〜8の他のα−オレフィンとのインターポリマーである。好ましいコモノマーには、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンが含まれる。
【0040】
超超低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンは、同義的なものとして知られている。これらのポリマーの密度は、約0.870g/cm3〜0.910g/cm3である。高密度エチレンポリマーは、通常、約0.941g/cm3〜約0.965g/cm3の密度をもつホモポリマーである。
【0041】
均一に分岐した実質的に線状のエチレンポリマーには、均一なLLDPEが含まれる。均一に分岐した/均一なポリマーとは、コモノマーが、所定のインターポリマー分子内でランダム分散しており、インターポリマー分子が、インターポリマー中で類似したエチレン/コモノマー比を有するようなポリマーである。
【0042】
均一に分岐した実質的に線状のエチレンポリマーには、(a)C2-20オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、および4−メチル−1−ペンテンなどのホモポリマー、(b)エチレンと、少なくとも一つのC3−C20α−オレフィン、C2−C20アセチレン系不飽和モノマー、C4−C18ジオレフィン、または前記モノマーの組み合わせとのインターポリマー、(c)エチレンと、少なくとも一つのC3−C20α−オレフィン、ジオレフィン、または他の不飽和モノマーの組み合わせたアセチレン系不飽和モノマーとのインターポリマーが含まれる。これらのポリマーは、通常、約0.850g/cm3〜約0.970g/cm3の密度を有し、好ましくは、この密度は約0.85g/cm3〜約0.955g/cm3であり、より好ましくは約0.850g/cm3〜約0.920g/cm3である。
【0043】
エチレン/スチレンインターポリマーは、本発明において有用であり、オレフィンモノマー(即ち、エチレン、プロピレン、またはα−オレフィンモノマー)と、ビニリデン芳香族モノマー、ヒンダード脂肪族ビニリデンモノマー、または脂環式ビニリデンモノマーとを重合することにより製造される実質的にランダムなインターポリマーを含む。好適なオレフィンモノマーは、2〜20、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜8の炭素原子を含む。それらのモノマーのうち好ましいものには、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンが含まれる。任意に、エチレン/スチレンインターポリマー重合成分は、エチレン系不飽和モノマー、例えば歪み環オレフィン(strained ring olefin)を含むことができる。歪み環オレフィンの例には、ノルボルネン、およびC1-10アルキル−、またはC6-10アリール−置換ノルボルネンが含まれる。
【0044】
本発明で有用なエチレン/不飽和エステルコポリマーは、通常の高圧技術によって製造される。不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはビニルカルボキシレートとすることができる。前記アルキル基は、1〜8の炭素原子を有していることができ、好ましくは1〜4の炭素原子を有している。前記カルボキシレート基は2〜8の炭素原子を有していることができ、好ましくは2〜5の炭素原子を有している。エステルコモノマーに帰属されるコポリマー部分は、コポリマー重量に対し、約5〜約50重量%の範囲であることができ、好ましくは約15〜約40重量%の範囲である。アクリレートおよびメタクリレートの例としては、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートがある。ビニルカルボキシレートの例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびビニルブタノエートがある。エチレン/不飽和エステルコポリマーのメルトインデックスは、約0.5〜50g/10minの範囲とすることができる。
【0045】
本発明で有用なハロゲン化エチレンポリマーには、フッ素化、塩素化、および臭素化オレフィンポリマーが含まれる。ベースのオレフィンポリマーは、2〜18の炭素原子を有するオレフィンのホモポリマーまたはインターポリマーであってもよい。好ましくは、オレフィンポリマーは、エチレンと、プロピレンまたは4〜8の炭素原子を有するα−オレフィンモノマーとのインターポリマーであってもよい。好ましいα−オレフィンコモノマーには、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンが含まれる。好ましくは、ハロゲン化オレフィンポリマーは、塩素化ポリエチレンである。
【0046】
本発明で好適な天然ゴムには、イソプレンの高分子量ポリマーが含まれる。好ましくは、天然ゴムは約5000の数平均重合度と広い分子量分布を有する。
【0047】
好ましくは、本発明の天然ゴムは、ブタジエンとアクリロニトリルとのランダムコポリマーである。
【0048】
本発明で有用なポリブタジエンゴムは、好ましくは1,4−ブタジエンのホモポリマーである。
【0049】
有用なスチレン/ブタジエンゴムには、スチレンとブタジエンとのランダムコポリマーが含まれる。典型的に、これらのゴムはフリーラジカル重合により製造される。本発明のスチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーは相分離系(phase-separated system)である。スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーもまた、本発明において有用である。
【0050】
本発明で有用な有機ペルオキシドの例には、ジアルキルペルオキシドが含まれる。好ましくは、有機ペルオキシドは、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンおよび2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンからなる群から選択されたジアルキルペルオキシドである。より好ましくは、有機ペルオキシドは2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンである。
【0051】
有機ペルオキシドは、直接注入により添加することができる。フリーラジカル誘導種は、好ましくは約0.005重量%〜約20.0重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約10.0重量%、最も好ましくは約0.03重量%〜約5.0重量%の量で存在する。
【0052】
本発明で用いられる有用で安定な有機フリーラジカルには、ヒンダードアミンから誘導された安定な有機フリーラジカルが含まれる。安定な有機フリーラジカルが、ヒンダードアミンから誘導された安定な有機フリーラジカルである場合、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ(TEMPO)のヒドロキシ誘導体であることが好ましい。より好ましくは、フリーラジカル捕獲種は、4−ヒドロキシ−TEMPOまたはビス−TEMPOである。ビス−TEMPOの例としては、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートがある。また、安定な有機フリーラジカルは、オキソ−TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPOのエステル、ポリマーが結合したTEMPO、PROXYL、DOXYL、ジ−tert−ブチル−N−オキシル、ジメチルジフェニルピロリジン−1−オキシル、または4−ホスホノキシTEMPOから誘導される少なくとも2つのニトロキシル基を有する多官能性分子であってもよい。安定な有機フリーラジカルには、種々の官能基(例えば、ヒドロキシル、アミン、カルボキシル、ウレタンなど)が結合していてもよく、それにより、通常のフリーラジカル化学反応を用いて種々のポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンを官能化するのに用いられる。この官能性は、望ましい性能、例えば(限定されないが)塗布性、染色性、架橋性などの利点を付与するのに用いられる。
【0053】
好ましくは、安定な有機フリーラジカルは、約0.005重量%〜約20.0重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約10.0重量%、最も好ましくは、約0.03重量%〜約5.0重量%の量で存在する。
【0054】
好ましくは、有機ペルオキシドの安定な有機フリーラジカルに対する割合、および安定な有機フリーラジカルの濃度が、望ましいグラフト反応を促進する。より好ましくは、有機ペルオキシドは、安定な有機フリーラジカルに対し、約1より大きい比で存在し、さらに好ましくは約20:1〜約1:1の比で存在する。
【0055】
有機ペルオキシドおよび安定な有機フリーラジカルは、直接混合、直接浸漬、および直接注入を含む種々の方法により、ポリマーに混合させることもできる。
【0056】
他の実施形態において、本発明は、フリーラジカル反応性ポリマー、フリーラジカル反応温度においてジクミルペルオキシドよりも少量のメチルラジカルを生成させる有機ペルオキシド、およびグラフト可能で安定な有機フリーラジカルを含むポリマー組成物である。
【0057】
本発明で有用な有機ペルオキシドの例には、ジアルキルペルオキシドが含まれる。好ましくは、有機ペルオキシドは、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンおよび2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンからなる群から選択されたジアルキルペルオキシドである。より好ましくは、有機ペルオキシドは2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンである。
【0058】
有機ペルオキシドは、直接注入により添加することができる。好ましくは、フリーラジカル誘導種は、約0.005重量%〜約20.0重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約10.0重量%、最も好ましくは、約0.03重量%〜約5.0重量%の量で存在する。
【0059】
好ましい実施形態において、本発明は、前記ポリマー組成物から得られる製品である。あらゆる製法によりこの製品を製造することができる。特に有用な製法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、回転成形、加熱成形、ブロー成形、粉体塗装、バンバリーバッチミキサー(Banbury batch mixers)、ファイバースピニング、およびカレンダリングが含まれる。
【0060】
好適な製品としては、ワイヤーケーブル用インシュレーション(wire-and-cable insulations)、ワイヤーケーブル用半導体物品、ワイヤーケーブル用コーティングおよびジャケット、ケーブルアクセサリ、靴底、多成分(multicomponent)靴底(異なる密度および種類のポリマーを含む)、気密用充填材、ガスケット、プロファイル、耐久消費財、リジッドウルトラドローンテープ(rigid ultradrawn tape)、パンクタイヤ充填物、建築用パネル、コンポジット(例えば木材コンポジット)、パイプ、フォーム、ブロン・フィルム、およびファイバー(バインダーファイバーおよび弾性ファイバーを含む)が含まれる。
【実施例】
【0061】
次の限定されない実施例によって本発明を説明する。
【0062】
比較例1および実施例
メルトインデックスが2.4g/10minであり、I21/I2が52であり、密度が0.9200g/cm3であり、多分散性(Mw/Mn)が3.54であり、融点110.2℃である低密度ポリエチレンを用いて、比較例および本発明の一実施例を調製した。最終的に2.0重量%の4−ヒドロキシ−TEMPOでグラフトされたLDPEを製造した。
【0063】
混合前に、ポリエチレンを真空乾燥し、残存湿分を取り除いた。表1に示された各処方は、ペルオキシドを除き、ブラベンダーミキサーで125℃、3分間調製し、40gのサンプルを得た。続いてペルオキシドを添加した。この組成物をさらに4分間混合した。ミキシングボールは窒素でパージした。
【0064】
DXM−446低密度ポリエチレンは、ザ ダウ ケミカルカンパニーから市販されていた。4−ヒドロキシTEMPOは、A.H.マークス(A. H. Marks)から市販されていた。ルペロックス(Luperox)(商標)130の2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン有機ペルオキシドは、アトフィナ(Atofina)から市販されていた。ジカップ R(Dicup R)(商標)のジクミルペルオキシドはジオ スペシャルティ ケミカルズ(Geo Specialty Chemicals)から市販されていた。
【0065】
試験片は、サンプルをムービングダイレオメーター(MDR)を用いて、200℃、周波数100サイクル/分、およびアーク0.5°で15分間処理して架橋した。
【表1】

【0066】
図1は、種々の量のルペロックス130有機ペルオキシドおよびジクミルペルオキシドを含む組成物のMDRトルクデータを示す。図2は、グラフトした4−ヒドロキシ−TEMPOの割合に関するNMRデータを示す。図3はメチル化量に関するNMRデータを示す。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】種々の量のルペロックス130有機ペルオキシドおよびジクミルペルオキシドを含む4−ヒドロキシ−TEMPO−グラフトポリマー組成物のMDRトルクデータを示した図である。
【図2】4−ヒドロキシ−TEMPO−グラフトポリマー組成物のNMRデータによって特定されるグラフトした4−ヒドロキシ−TEMPOの割合を示した図である。
【図3】4−ヒドロキシ−TEMPO−グラフトポリマー組成物のNMRデータによって特定されるメチル化量を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フリーラジカル反応性ポリマー、
(b)少なくとも130℃で測定された半減期がジクミルペルオキシドよりも長い有機ペルオキシド、および
(c)グラフト可能で安定な有機フリーラジカル
を含むポリマー組成物であって、
前記安定な有機フリーラジカルは、(i)フリーラジカル誘導種の存在下における前記ポリマーの分解を実質的に抑制し、(ii)前記ポリマーがフリーラジカルを生成した後に前記ポリマーにグラフト可能である、ポリマー組成物。
【請求項2】
(a)フリーラジカル反応性ポリマー、
(b)少なくとも130℃で測定された半減期がジクミルペルオキシドよりも長い有機ペルオキシド、および
(c)グラフト可能で安定な有機フリーラジカル
を含むポリマー組成物であって、
前記安定な有機フリーラジカルは、(i)フリーラジカル誘導種の存在下における前記ポリマーの炭素−炭素架橋を実質的に抑制し、(ii)前記ポリマーがフリーラジカルを生成した後に前記ポリマーにグラフト可能である、ポリマー組成物。
【請求項3】
(a)フリーラジカル反応性ポリマー、
(b)フリーラジカル反応温度でジクミルペルオキシドよりも少量のメチルラジカルを生成させる有機ペルオキシド、および
(c)グラフト可能で安定な有機フリーラジカル
を含むポリマー組成物であって、
前記安定な有機フリーラジカルは、(i)フリーラジカル誘導種の存在下における前記ポリマーの分解を実質的に抑制し、(ii)ポリマーがフリーラジカルを生成した後にポリマーにグラフト可能である、ポリマー組成物。
【請求項4】
(a)フリーラジカル反応性ポリマー、
(b)フリーラジカル反応温度でジクミルペルオキシドよりも少量のメチルラジカルを生成させる有機ペルオキシド、および
(c)グラフト可能で安定な有機フリーラジカル
を含むポリマー組成物であって、
前記安定な有機フリーラジカルは、(i)フリーラジカル誘導種の存在下における前記ポリマーの炭素−炭素架橋を実質的に抑制し、(ii)前記ポリマーがフリーラジカルを生成した後に前記ポリマーにグラフト可能である、ポリマー組成物。
【請求項5】
前記グラフト可能で安定な有機フリーラジカルが官能基を有している、請求項1〜4のいずれか記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記官能基は、ヒドロキシル基、アミノ基類、カルボキシル基類、およびウレタン基類からなる群から選択される、請求項5記載のポリマー組成物。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−517120(P2007−517120A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547380(P2006−547380)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/043354
【国際公開番号】WO2005/066281
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】