説明

安定性が向上した液晶ポリマーフィルム

【課題】安定性の向上した重合体光学フィルムを製造するための、重合性メソゲン物質の混合物における多重反応性の重合性界面活性剤、および該重合性メソゲン物質の混合物から異方性ポリマーフィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の2個以上の重合性基を含有する重合性界面活性剤および少なくとも1種の反応性メソゲンを含有する重合性液晶物質であって、該重合性界面活性剤は容易に重合して液晶フィルムとなり、保護トップコート層を形成する。また前記重合性界面活性剤を用いることにより、向上した安定性を有する異方性ポリマーフィルムを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明により、重合性メソゲン物質の混合物における多重反応性の重合性界面活性剤の使用が開示される。重合性界面活性剤は容易に重合して液晶フィルムとなり、保護トップコート層を形成する。本発明はまた界面活性剤を用いることにより安定性の向上した重合体光学フィルムの製造方法に関する。セキュリティー用途およびディスプレイを含む種々の用途にこれらのフィルムが供与される。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、重合性液晶物質は単一の配向性を有する異方性ポリマーフィルムの調製用に知られている。これらのフィルムは通常、重合性液晶混合物の薄層を基板上にコーティングし、混合物を単一の配向へ整列させ、混合物を重合することにより調製される。フィルムの配向は平面、即ち液晶分子が実質的に該層に平行に、あるいはホメオトロピック(垂直:該層に対して直角)に、あるいは傾斜して配向可能である。
【0003】
特定の用途については、液晶層内に平面配向を誘導することが求められる。次いで配列をその状態で液晶混合物を重合することにより凍結する。例えば、平面配向を有する重合したネマチック液晶物質の配向されたフィルムまたは層は、A−プレート補償板(compensator)または偏光子として有用である。別の重要な応用は、ねじれた分子構造を有する重合したコレステリック液晶物質の配向されたフィルムまたは層である。コレステリック物質が平面配向を有する場合、これらのフィルムは反射する色が視野角に依存する光の選択的反射を示す。それらは、例えば円偏光子、カラーフィルターに、または装飾もしくはセキュリティー(保安)用途の効果顔料(effect pigment)の調製に使用することができる。
【0004】
平面配向は、例えば液晶物質が被覆される基板上の処理、例えばラビング、配向層の使用により、または例えばコーティングの間もしくは後に液晶物質に剪断力を加えることにより達成することができる。
【0005】
従来技術においては、液晶物質の1つの表面が空気に対して開放されている、単一の基板上の液晶物質の平面配向は、界面活性化合物を液晶物質に加えることにより達成または促進できることが知られている。
【0006】
これに対し、液晶物質の層内の垂直配向は界面活性剤によっては促進されない。したがって、これらの剤は一般に垂直配向層のためのLC混合物には用いられない。平面配向のための界面活性剤の垂直配向層への添加は単一の配向に対し有害でさえあり得る。
【0007】
低表面エネルギーを有する分子はLC/空気界面において容易に蓄積し、例えば米国特許第5344956号において実施例として報告されているように平面配向効果を促進する。実際には、一度重合されたLCフィルムは、複合LCセルの一部であってもよく、その中で他の層、例えば、限定されないが、他の液晶、接着またはバリヤー層がポリマーLCフィルムに付加される必要がある。
【0008】
従来技術において、Fluorad FC171(登録商標)(3M,St.Paul,Minnesotaからの非反応性、フルオロカーボン界面活性剤)およびフルオロカーボンアクリレートFX13(登録商標)(3Mからのモノアクリレート)、Zonyl(登録商標)8857A(DuPont)およびPolyFox(登録商標)PF−3320(Omnova Solutions Inc.)がEP1256617A1およびUS2004/0202799A1に開示された。
【0009】
【化1】

【0010】
スキーム1:Polyfox(登録商標)PF−3320;二反応性 フッ素系界面活性剤

EP1256617A1において、反応性界面活性剤が反応性メソゲン(RM)混合物を修飾するための添加剤として用いられた。この概念はまた、より最近にUS2004/0202799において報告された。すべての場合において、反応性界面活性剤は、混合物中でRMと反応し、所定の位置に固定されるように選択された。このように、界面活性剤はRM層から自由に移動しない。このことは、(EP1256617において強調されているように)積層フィルムを製造するときに要求される。界面活性剤物質の表面張力低下によりどの非重合界面活性剤も次の層に容易に移動することができる。このことは単一反応性界面活性剤、例えばFX13(登録商標)を使用することにより防止することができる。
【0011】
例えば、国際公開99/45082号は、1種または複数種のフルオロカーボン界面活性剤を含有する平面配向を有する重合性液晶物質の層から得られる光学遅延(optical retardation)フィルムを記載する。米国特許5995184号は、平面配向を有する重合性液晶物質の層からの相遅延プレートの作製方法を報告しており、ここで、例えばポリアクリレート、ポリシリコーンまたはオルガノシランのような界面活性物質が、液晶層の液晶/空気界面における傾斜角を低下させるために液晶物質に添加されている。
【0012】
US2002/0111518A1は、コーティング組成物において用いるフッ素化多官能アクリレートを開示している。RM(Reactive Mesogen)フィルムについての参照文献は存在しない。該化合物の合成が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
課題
基板へのRMフィルムの良好な接着が重要である場所に低ジアクリレート含量のRMフィルムがしばしば用いられている。しかし、低ジアクリレート含量RMフィルムの光学遅延は促進された条件下、典型的には乾燥雰囲気中90℃に昇温された温度では顕著に低下する。この効果は、フィルムそれ自体を開放したときよりむしろ、フィルムをPSA(感圧接着剤)に接触させて試験したときに大きく悪化する。したがって、本発明の1つの目的は低ジアクリレートフィルムの安定性を向上させることにある。
【0014】
図1の試験は、フィルムの遅延低下の大部分が実験開始時に起きることを示している。PSA中の添加物のいくつかがRMフィルム中に浸出し、フィルムの表面近くの配向を乱すか、バルクフィルムを膨張させる可能性がある。添加物のRM物質(RMM)フィルム中への移動を防ぐことのできる一般的な方法の1つは、重合したRMM層をハードコート(しばしばトップコートと呼ばれる)で被覆することである。かかる層は通常低分子を含有し、それは被覆後に硬化し、硬いポリマーネットワークを形成する。残念なことに、ハードコート層の使用は余分の処理工程を必要とし(例えば、GB2398077)、それには費用がかかり、したがって望ましくない。
【0015】
したがって、本発明の目的は上記の欠点を有しないポリマーフィルムを調製するための重合性液晶物質を提供することにある。本発明の他の目的は、以下の詳細な説明により当業者において直ちに明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
用語の定義
1個の重合性基を有する重合性化合物は「単一反応性(monoreactive)」化合物とも呼ばれ、2個の重合性基を有する化合物は「二反応性(direactive)」化合物と呼ばれ、2個を超える重合性基を有する化合物は「多重反応性(multireactive)」化合物と呼ばれる。重合性基を有しない化合物は「非反応性(non−reactive)」化合物とも呼ばれる。
【0017】
用語「反応性メソゲン」(RM)は重合性メソゲン化合物または液晶化合物を意味する。反応性メソゲン(RMs)の含有が多くても、少なくても、これを含有する物質は、本明細書においてRM物質(RMM)とも呼ばれる。
【0018】
本願において用いられる用語「フィルム」は、自立フィルム、即ちフリースタンディングフィルムであり、それは支持基板上または2つの基板間のコーティングまたは層と同様に、顕著な機械的安定性および柔軟性を強くしめすものでも、少なく示すものもフィルムという。
【0019】
用語「液晶またはメソゲン物質」あるいは「液晶またはメソゲン化合物」は、1種または複数種の棒状(rod−shaped)、板状(board−shaped)または円盤状(disk−shaped)のメソゲン基、即ち液晶相の性質を誘起する能力を有する基をあるパーセントまで含む物質または化合物を示すべきである。棒状(rod−shaped)または板状(board−shaped)の基を有する液晶化合物は当技術分野において棒状(calamitic)液晶としても知られている。円盤状(disk−shaped)の基を有する液晶化合物は当該技術分野において円盤状(discotic)液晶としても知られている。メソゲン基を含有する化合物または物質は必ずしもそれ自体が液晶相を示さなければならないわけではない。それらが他の化合物との混合物においてのみ液晶相の性質を示すことも可能であり、あるいはメソゲン化合物もしくは物質、またはそれらの混合物が重合されているときに液晶相の性質を示すことも可能である。
【0020】
簡単にするために、用語「液晶物質」または「LC物質」は以降、液晶物質およびメソゲン物質の両方として用い、用語「メソゲン」は物質のメソゲン基として用いる。
【0021】
ディレクター(director)は、液晶物質においてメソゲンの長分子軸(棒状化合物の場合)または短分子軸(円盤状化合物の場合)の好ましい配向方向を意味する。
【0022】
用語「平面構造」または「平面配向」は、ディレクターがフィルムまたは層の平面に対して実質的に平行である液晶物質の層またはフィルムに関する。
【0023】
用語「垂直構造」または「垂直配向」は、光学軸がフィルムの平面に対して実質的に垂直であるフィルムに関する。
【0024】
用語「コレステリック構造」または「らせん状にねじれた(helical twisted)構造」は、ディレクターがフィルムの平面に対して平行であり、かつフィルムの平面に対して垂直な軸の周りにらせん状にねじれているLC分子を含有するフィルムに関する。
【0025】
簡単にするために、ねじれ、平面または垂直の配向または構造を有する光学フィルムは以後、それぞれ「ねじれフィルム」、「平面フィルム」または「垂直フィルム」と呼ぶ。
【0026】
用語「Aプレート」は、層の平面に対して平行に配向した異常軸(extraordinary axis)を有する、単一軸の複屈折物質の層を利用する光学遅延に関する。
【0027】
用語「Cプレート」は、層の平面に対して垂直な異常軸を有する、単一軸の複屈折物質の層を利用する光学遅延素子(optical retarder)に関する。
【0028】
用語「ハードコート」または「トップコート」は、下の別の層に特別の物理的または化学的特性を提供する追加の層をいう。ハードコートまたはトップコートは、製造プロセスに関して下部層の全体部であることができる。本発明によれば、ハードコートまたはトップコートおよび基礎をなす層は好ましくは単一(同一)の組成からなる。したがって、形成された堆積層の特性は段階的にのみ変えることが可能である。この場合、ハードコートと下部層の間に明確な境界線が存在しなくともよい。このことは下部層のバルク特性に対してもハードコートの表面特性に対しても不利益とはならない。
【0029】
図1は、時間(1000時間)に対する光学遅延を保存する能力により測定した、PSAを接触するLCフィルムの耐熱性を示す。フィルムは普通の非重合性フッ素系界面活性剤により調製した。使用した材料を比較例4に記載する。PSAを用いてガラス基板に積層したLCポリマーフィルムから調製したフィルム積層体を90℃で1000時間加熱した。グラフは、長時間(1000時間以上)におけるフィルムの遅延の顕著な損失を示す。
発明の概要
本発明は、少なくとも1種の重合性界面活性化合物(界面活性剤)を含有する重合性液晶物質に関し、界面活性化合物が2個以上の重合性基を含有することを特徴とする。本発明は、4個以上の重合性基を有する新規な界面活性化合物に関する。
【0030】
本発明はさらに異方性フィルム、および本発明による重合性液晶物質を適用することによる、トップコート層を有する異方性ポリマーフィルムの製造方法に関する。重合性界面活性剤はこれらのフィルムに対して表面硬化剤として用いることができる。
【0031】
本発明によれば、組成された物質および製造されたポリマーフィルムは、光学デバイスまたは装飾もしくはセキュリティー用途、偏光子、補償板(compensator)、ビームスプリッター、配向層、反射フィルム、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンピングホイル、カラー映像、装飾またはセキュリティー用マークに用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の発明者らは、耐久性の向上した液晶フィルムの製造が、複数の重合性基を有する1種または複数種の重合性界面活性化合物を含有する重合性液晶混合物を提供することにより達成され得ることを見出した。本発明により、重合性メソゲン物質の混合物におけるかかる多重反応性の重合性界面活性剤の使用が開示される。重合性界面活性剤は液晶フィルム中およびその上で容易に重合する。それらはハードトップコートを形成するか、さもなければLCフィルムの例えばその化学的安定性のような非機械的特性の堅牢性、ならびに経時の、および化学的または熱的ストレス下での、光学特性の保存性を向上させる。本発明はさらにこれらのフィルム上に被覆される隣接した層とともに低ジアクリレート液晶ポリマーを、液晶フィルムの光学特性に影響を及ぼすことなく使用することが可能であることを示す。
【0033】
混合製剤の理解および界面活性剤の化学構造に基づく効果から、界面活性剤が平面および垂直RMMの両方に使用できることを見出した。平面配向混合物の場合、界面活性剤がRMMの配列を助ける。垂直混合物の場合、界面活性剤はRMMの整列に影響を与えないことは注目に値する。これらの界面活性剤は、それらが多重反応性である、即ち複数の反応性(例えばアクリレート)基を含有する、かかる使用においてこれまでに報告された界面活性剤とは異なる。好ましくはそれらは2個を超える反応性基、例えば3、4、5または6個の基、より好ましくは4個の基を含有する。本発明の1つの実施形態において、かかる界面活性剤はRMMにおいて添加物として使用され、PSAと接触する重合したRMMフィルムの熱安定性の向上を達成する。好ましくは、多重反応性界面活性剤はフッ素系界面活性剤である。
【0034】
本発明において使用できる二官能または、より高い多官能の重合性アクリレートモノマーは、好ましくは、5から30のC−、O−またはN−原子を有する分枝スペーサーによりそれぞれの末端に1個、2個または3個の重合性基が結合している、6から12個の原子を有する長さのポリフッ素化された直鎖を含む2個を超える重合性基を有する重合性フッ素系界面活性剤である。好ましくは、炭素原子数6から12、好ましくは8から10の過フッ素化アルキレン鎖を含有する。フッ素系界面活性剤は3から6個、好ましくは4個以上の重合性基を有する。重合性界面活性化合物は好ましくはアクリル基、メタクリル基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、スチレン基およびプロペニルエーテル基から選択された重合性基を含有する。好ましくは、多官能性界面活性剤は次式の化合物を含む。
【0035】
【化2】

【0036】
式中、
3、Z4は独立して−(CO)O、−O(CO)−、−O(CO)O、−NH(CO)O、−O(CO)NH−、−O−または単結合であり、
nは3から12であり、
m、o、pおよびqは独立して0、1または2である。
【0037】
本発明は、複数の反応性基を有する重合性界面活性剤と組み合わせて重合性LC物質を用いる。この本発明において、要求は界面活性剤の移動を阻止するだけでなく、ポリマーフィルムの上側の部分にハード層(しばしばトップコート層またはハードコートと呼ばれる)を形成することである。要約すると、本発明において反応性界面活性剤は特別の機能性を提供する。光学配向添加物として作用するとともに、(所望であれば)多重反応性界面活性剤も、別の層を被覆する必要なく、RMMの表面(特に空気との界面)にハードコート層を形成する。ハードコート層は、基礎をなすポリマーフィルムの形態によりその場で形成する。このように、別個のハードコート層を被覆する必要がないため、フィルム製造過程において顕著な節約ができる。得られる二層フィルムは、表面硬度および耐熱性が向上している。実際に、フィルムの表面はコアフィルムに比べ相対的により多く架橋されている。その表面は高度に架橋され、したがって、膨張する傾向が小さく、または拡散により不純物が混入する傾向が小さい。移動した不純物の少なさおよび高い重合度はフィルムの熱的安定性、特に光学特性の安定性を増す。したがって、重合性界面活性剤はポリマーフィルム、特に光学ポリマーフィルム、好ましくは液晶フィルムにおいて表面硬化剤として作用してもよい。
【0038】
同時にフィルムは、重合後に基板に対する良好な接着を示すように、メソゲンまたは従来のジアクリレート等の低含量の架橋剤を有していてもよい。ジアクリレートの量は好ましくは20%より少なく、最も好ましくは10%より少ない。
【0039】
フィルムは、空気と接触していても表面において良好に重合する。本発明によるポリマーフィルムの製造方法は大気中で行うのによく適合している。そのために不活性雰囲気、例えば窒素ガス等の中において行う必要は特にない。
【0040】
本発明はまた、向上した特性または少ない製造工程数を有する片側または両側にトップコート層を有するフィルムからなる多層フィルムを含む、異方性フィルムを製造する方法に関する。該方法はすべての種類の配列、即ち、平面および垂直フィルムに用いることができる。注目すべきことに、垂直層の構造は均一に保存される。
【0041】
さらに本発明は、本発明によるフィルムおよび重合性物質の、光学デバイスまたは装飾もしくはセキュリティー用途、偏光子、補償板、ビームスプリッター、配向層、反射フィルム、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンピングホイル、カラー映像(color image)、装飾またはセキュリティー用マークのための使用、および装飾またはセキュリティー用途の液晶顔料の製造のための使用に関する。
【0042】
本発明による重合性LC物質は、好ましくは2個以上の重合性基を有する0.01から10重量%の重合性界面活性化合物を含有する。好ましい実施形態において、重合性界面活性剤化合物は少なくとも4個の重合性基を有する。より好ましくは重合性界面活性化合物は次式:
【0043】
【化3】

【0044】
[式中、
3、Z4は独立して−(CO)O、−O(CO)−、−O(CO)O、NH(CO)O、−O(CO)NH−、−O−または単結合であり、
nは3から12であり、
m、o、pおよびqは独立して0、1または2であり、
Bは−CP3、−CRP2、−NP2または
【0045】
【化4】

【0046】
の基であり、
PはスペーサーSpにより結合された重合性基P0であり、
0は、複数生じる場合、互いに独立して重合性基、好ましくはアクリル基、メタクリル基、オキセタン基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、プロペニルエーテル基またはスチレン基であり、
Spは炭素原子数1から12の直鎖または分枝状アルキレン基であり、1個または複数の非隣接CH2基が、それぞれ互いに独立して−O−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−または−C≡C−により、ヘテロ原子(O、N)が相互に直接結合しないように置き換えられていてもよく、
RはH、CN、NO2、ハロゲン、または炭素原子数25までの直鎖もしくは分枝状アルキル基であって、非置換であるか、ハロゲンまたはCNにより一置換または多置換されていてもよく、1個または複数の非隣接CH2基が、それぞれの場合において相互に独立して−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−、−O(CO)−O−、−S(CO)−、−(CO)S−、または−C≡C−により、酸素原子が相互に直接結合しないように置き換えられていてもよい]で表される化合物から選択される。
【0047】
PSAを用いてガラスに貼り付けられた普通のRMMフィルム(比較例4による非重合性フッ素系界面活性剤FC171を有する混合物から製造される)の遅延の低下を図1に示す。LCポリマーフィルムの遅延は、本明細書ではフィルムの品質の指標として用いる。フィルム積層体を90℃で1000時間加熱し、この時間を通して定期的に遅延を測定した。遅延の顕著な減少が、本発明による界面活性剤を使用しない普通のフィルムについて観察される。
【0048】
典型的には、本発明において詳細に記載されているシステム等の空気中の硬化システムの硬化の程度は、光開始剤ラジカルの酸素による阻害のために一般に空気表面において低い。この現象は、硬表面のポリマー層が所望される場合に不利となる。これを克服するためには、特定の光開始剤とともに反応性界面活性剤を使用し、その状態でRMMフィルムにハードコート層を設けるのが有利である。本発明の好ましい実施形態において、重合性LC物質は重合するために少なくとも3%の開始剤、特に光開始剤を含有する。開始剤の含量は特に好ましくは少なくとも5重量%であって、10重量%以下である。これらの量は酸素を含む大気中で用いるための量である。無酸素中で重合するときは、通常、ファクター6で開始剤の量を実質的に減らすことが可能である。不活性ガスを用いて実施する追加的な努力は通常要求されない。
【0049】
多くの開始剤が商業的に入手可能であり、当業者に知られている。ケトン基のα位にN−、O−またはP−ヘテロ原子による置換を有する芳香族ケトンが重合性アクリレートとして主に用いられ、それらはアセトフェノン誘導体(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7th Edition,Wiley−VCH,2005)とも呼ばれる。
【0050】
驚くべきことに、これらの開始剤のいくつかは本発明による重合性混合物において使用するのに特に適していることを見出した。したがって、本発明の好ましい実施形態において、α−ヒドロキシケトン誘導体は重合開始剤として用いられる。α−ヒドロキシケトン誘導体は芳香族ケトン、特に式P1:
【0051】
【化5】

【0052】
[式中、
1はアルキル、F、Cl、NO2、OH等、または基−CH2−1,4−フェニル−(CO)−C(OH)R12であり、
2、R3は炭素原子数1から5のアルキルまたは一緒に炭素原子数5から6のシクロアルキル環を形成している]の芳香族ケトンである。
【0053】
α−ヒドロキシケトンの例は知られていて商業的に入手可能であり、(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルメタノン(Irgacure(登録商標)184)および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン(Darocur(登録商標)1173)を含む。光開始剤として特に好ましくは2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−エチル−プロパン−1−オンであり、2つのα−ヒドロキシケトン基を有する開始剤である。これらの開始剤はα−ヒドロキシベンゾフェノン誘導体とも呼ばれる。該誘導体はさらにフェニル環において置換されているか、α−炭素原子において置換されていてもよい、α−ヒドロキシアセトフェノンを含む。
【0054】
好ましい芳香族α−ヒドロキシケトン開始剤は単独または他の開始剤との組み合わせにより用いられる。好ましくはそれらは1種または複数種の他の光開始剤とともに用いられる。芳香族α−ヒドロキシケトンの量は好ましくは少なくとも0.5重量%であり、より好ましくは少なくとも3重量%であるが、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは6重量%以下である。
【0055】
本発明の別の好ましい実施形態においては、熱開始剤を重合に用いる。熱開始剤は好ましくは一般の光開始剤に加えて用いる。組み合わせの例としては、熱開始剤として過酸化物(例えば、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド)および光開始剤としてよく知られているアセトフェノン誘導体である。熱開始剤の使用は、特にフィルムの空気との界面において重合をある程度増大させ、かつそれらを分解に対してさらに安定にする。好ましくは0.5から10重量%、より好ましくは1から5重量%の1種または複数種の熱開始剤を用いる。
【0056】
より好ましくは1種または複数種の光開始剤の組み合わせおよび1種または複数種の熱開始剤の組み合わせをLC物質に対する重合開始剤として用いる。
【0057】
重合性LC物質は好ましくは2種以上の化合物の混合物であり、その少なくとも1種は重合性または架橋性の化合物である。1つの重合性基を有する重合性化合物は、本明細書において以下「単一反応性」とも呼ぶ。架橋性化合物、即ち2個以上の重合性基を有する化合物は、本明細書において「二反応性または多重反応性」とも呼ぶ。
【0058】
重合性LC物質は、好ましくは少なくとも1つの単一反応性化合物および少なくとも1つの二反応性または多重反応性化合物を含有する。
【0059】
重合性メソゲンまたはLC化合物は、好ましくはモノマー、非常に好ましくは棒状(calamitic)モノマーである。これらの物質は典型的には減少した色度等の良好な光学特性を有し、容易にかつ迅速に所望の配向に配列することができ、それらはポリマーフィルムの大規模な工業的生産に特に重要である。重合性物質が1種または複数種の円盤状モノマーを含有することも可能である。
【0060】
重合性物質を含有する組成物は、以上に、あるいは以下に、記載するように本発明の別の態様である。
【0061】
別段の記載がなければ、以上に、あるいは以下に、示される重合性混合物の成分のパーセントは、混合物中の固体(即ち溶媒を含まない)の全量に対するものである。
【0062】
組成物は、通常40から98%の単一反応性のメソゲンおよび0から40%の二反応性または多重反応性のメソゲンを含有する。他の重合性化合物が存在しない場合、組成物は好ましくは50%以上から96%以下、最も好ましくは60%以上から93%以下の単一反応性メソゲンを含有する。さらに、組成物は好ましくは0%以上から30%以下、より好ましくは0%以上から20%以下、最も好ましくは0%以上から10%以下の二反応性または多重反応性のメソゲンを含有する。いくつかのいわゆる「低アクリレート」フィルムの場合、ジアクリレートメソゲンの含量は6%以下に低下し得る。これらの場合において、本発明の1つの利点はこれらの比較的柔軟なフィルムの安定化である。
【0063】
該組成物は好ましくは60%以上から93%以下の単一反応性メソゲンと4%以上から20%以下の二反応性または多重反応性メソゲンとを一緒に含有する。少量(4%を超え、好ましくは20%より低い)の二反応性メソゲンは、ネマチック混合物中のスメクチック相の形成を阻止するのに有益である。あるいは、二反応性メソゲンの量はより低減することができる。他方、普通の二反応性モノマーの存在下、二反応性または多重反応性のメソゲンが少ないか存在しないことがこの目的のために必要である。
【0064】
本発明に適合する重合性メソゲンの単一反応性、二反応性および多重反応性の化合物は、それ自体知られており、例えば、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,Thieme−Verlag,Stuttgart等の有機化学の標準的に著作物に記載されている方法によって調製することができる。
【0065】
重合性LC混合物中のモノマーまたはコモノマーとして用いるための、適当な重合性メソゲンまたはLC化合物は、例えば国際公開第93/22397号、EP0261712、DE19504224、国際公開第95/22586号、国際公開第97/00600号、米国特許第5518652号、米国特許第5750051号、米国特許第5770107号および米国特許第6514578号に開示されている。
【0066】
液晶物質の重合性メソゲン化合物は好ましくは式Iの化合物から選択される。
P−(Sp−X)a−MG−R I
式中、
Pは重合性基であり、
Spは炭素原子数1から25のスペーサー基であり、
Xは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH2CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−、または単結合であり、
aは0または1であり、
MGはメソゲン基であり、
RはH、CN、NO2、ハロゲン、あるいは炭素原子数25までの直鎖または分枝状アルキル基であって、非置換であるか、ハロゲンまたはCNにより一置換または多置換されていてもよく、1個または複数の非隣接CH2基が、それぞれの場合において相互に独立して−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、または−C≡C−により、酸素原子が相互に直接結合しないように置き換えられていてもよく、あるいはRはP−(Sp−X)n−を示す。
【0067】
式I中のMGは好ましくは式IIから選択される。
−A1−Z1−(A2−Z2b−A3− II
式中、
1およびZ2はそれぞれ独立して−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−、または単結合であり、
1、A2およびA3はそれぞれ独立してその1個または複数のCH基がさらにNにより置き換えられていてもよい1,4−フェニレン、1個または2個の隣接しないCH2基がさらにOおよび/またはSにより置き換えられていてもよい1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、または1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2,6−ジイルであり、これらのすべての基は非置換であってもよく、F、Cl、OH、CN、NO2あるいは1個もしくは複数のH原子がFもしくはClにより置換されていてもよい炭素原子数1から7のアルキル、アルコキシ基またはアルカノイル基により一置換または多置換されていてもよく、
bは0、1または2である。
【0068】
式IIの好ましいメソゲン基のより小さい基を以下に列挙する。簡単にするために、これらの基におけるPheは1,4−フェニレンであり、PheLは、LがF、Cl、CN、OH、NO2または場合によってフッ素化もしくは塩素化された炭素原子数1から7のアルキル、アルコキシまたはアルカノイル基である、1個から4個の基Lにより置換されている1,4−フェニレン基であり、およびCycは1,4−シクロヘキシレンである。以下の好ましいメソゲン基のリストは補助式II−IからII−25をそれらの鏡像体とともに含む。
−Phe−Z−Phe− II−1
−Phe−Z−Cyc− II−2
−Cyc−Z−Cyc− II−3
−PheL−Z−Phe− II−4
−PheL−Z−Cyc− II−5
−PheL−Z−PheL− II−6
−Phe−Z−Phe−Z−Phe− II−7
−Phe−Z−Phe−Z−Cyc− II−8
−Phe−Z−Cyc−Z−Phe− II−9
−Cyc−Z−Phe−Z−Cyc− II−10
−Phe−Z−Cyc−Z−Cyc− II−11
−Cyc−Z−Cyc−Z−Cyc− II−12
−Phe−Z−Phe−Z−PheL− II−13
−Phe−Z−PheL−Z−Phe− II−14
−PheL−Z−Phe−Z−Phe− II−15
−PheL−Z−Phe−Z−PheL− II−16
−PheL−Z−PheL−Z−Phe− II−17
−PheL−Z−PheL−Z−PheL− II−18
−Phe−Z−PheL−Z−Cyc− II−19
−Phe−Z−Cyc−Z−PheL− II−20
−Cyc−Z−Phe−Z−PheL− II−21
−PheL−Z−Cyc−Z−PheL− II−22
−PheL−Z−PheL−Z−Cyc− II−23
−PheL−Z−Cyc−Z−Cyc− II−24
−Cyc−Z−PheL−Z−Cyc− II−25
特に好ましくは従属式II−1、II−2、II−4、II−6、II−7、II−8、II−11、II−13、II−14、II−15およびII−16である。
【0069】
これらの好ましい基の中で、Zはそれぞれの場合において独立して上記式II中に示されるZ1の定義の1つを有する。好ましくはZはそれぞれ−(CO)O−、−O(CO)−、−CH2CH2−、−C≡C−または単結合である。
【0070】
適切なおよび好ましい重合性メソゲンまたはLC化合物(反応性メソゲン)の例を以下の例に示す。
【0071】
【化6】

【0072】
【化7】

【0073】
【化8】

【0074】
【化9】

【0075】
【化10】

【0076】
式中、
0は、複数生じる場合、互いに独立して重合性基であり、好ましくはアクリル基、メタクリル基、オキセタン基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、プロペニルエーテル基またはスチレン基であり、
rは0、1、2、3または4であり、
xおよびyは互いに独立して0または1から12の同一もしくは異なる整数であり、
zは0または1であって、隣接するxまたはyが0のときzは0であり、
0は複数生じる場合、互いに独立して、1個、2個、3個もしくは4個の基Lにより場合によって置換されている1,4−フェニレン、またはトランス−1,4−シクロヘキシレンであり、
uおよびvは互いに独立して0または1であり、
0は複数生じる場合、互いに独立して、−(CO)O−、−O(CO)−、−CH2CH2−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=CH−(CO)O−、−O(CO)−CH=CH−または単結合であり、
0は、炭素原子数1または複数、好ましくは1から15であり、場合によってフッ素化されているアルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであるか、あるいはY0またはP0−(CH2y−(O)z−であり、
0はF、Cl、CN、NO2、OCH3、OCN、SCN、SF5、場合によってフッ素化された炭素原子数1から4のアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、または炭素原子数1から4のモノ、オリゴ、もしくはポリフッ素化されたアルキルもしくはアルコキシであり、
01,02は、互いに独立してH、R0またはY0であり、
R*は、炭素原子数4以上、好ましくは4から12のキラルなアルキルまたはアルコキシ基、例えば2−メチルブチル、2−メチルオクチル、2−メチルブトキシまたは2−メチルオクトキシであり、
Chはコレステリル、エストラジオール、またはメンチル、もしくはシトロネリル等のテルペノイド基から選択されたキラルな基であり、
Lは、複数生じる場合、互いに独立してH、F、Cl、CNまたは場合によってハロゲン化された炭素原子数1から5のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、および
ここで、該ベンゼン環はさらに1個または複数の同一または異なる基Lによって置換されていてもよい。
【0077】
適切な非重合性キラル化合物は、例えば、R−もしくはS−811、R−もしくはS−1011、R−もしくはS−2011、R−もしくはS−3011、R−もしくはS−4011、R−もしくはS−5011、またはCB15(すべてMerk KGaA,Darmstadt,Germanyから入手可)等の標準的なキラルドーパントである。
【0078】
適切な重合性キラル化合物は、例えば上で挙げた(R33)から(R38)、または重合性キラル物質Paliocolor(登録商標)LC756(BASF AG,Ludwigshafen,Germany)である。
【0079】
非常に好ましくはらせんねじれ力(HTP:helical twisting power)を有するキラル化合物であり、特に、例えば国際公開第98/00428号に記載されているソルビトール基を含有する化合物、例えばGB2328207に記載されているヒドロベンゾイン基を含有する化合物、例えば国際公開第02/94805号に記載されているキラルビナフチル誘導体、例えば国際公開第02/34739号に記載されているキラルビナフトールアセタール誘導体、例えば国際公開第02/06265号に記載されているキラルTADDOL誘導体、および例えば国際公開第02/06196号または国際公開第02/06195号に記載されている少なくとも1つのフッ素化された連結基および1つの末端または中心キラル基を有するキラル化合物である。
フィルムの調製
別段の記載がなければ、本発明によるポリマーLCフィルムの一般的な調製は、文献から知られている標準的な方法により行うことができる。典型的には重合性LC物質を基板上に被覆するか、さもなければ塗布し、一定の配向に配列し、その状態でLC相において選択された温度で、例えば熱線または化学線に曝すことにより、好ましくは光重合により、非常に好ましくはUV−光重合により重合し、LC分子の配列を固定する。必要であれば、一定の配列は、LC物質の剪断またはアニーリング、基板の表面処理、またはLC物質への界面活性剤の添加等の追加の手段により促進することができる。重合性物質は、スピンコーティング、バーまたはブレードコーティング等の従来の被覆技術により基板上に塗布することができる。
【0080】
重合性物質を適当な溶媒に溶解することも可能である。次にこの溶液を基板上に、例えばスピンコーティングまたは他の知られた技術により被覆または印刷し、溶媒を重合前に蒸発させる。多くの場合において、溶媒の蒸発を促進するために混合物を加熱するのが適している。溶媒としては例えば標準的な有機溶媒を用いることができる。溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、またはシクロヘキサノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチルもしくは酢酸ブチル、またはアセト酢酸メチル等のエステル;メタノール、エタノール、またはイソプロピルアルコール等のアルコール;トルエン、またはキシレン等の芳香族溶媒;ジ−またはトリクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;PGMEA(プロピルグリコールモノメチルエーテルアセテート)、γ−ブチロラクトン等のグリコールまたはそれらのエステルから選択することができる。上記の溶媒を二成分、三成分またはそれ以上の混合物として使用することも可能である。
【0081】
重合性LC物質の初期の配向(例えば平面配向)は、例えば基板のラビング処理により、被覆中または被覆後の物質の剪断により、重合前の物質のアニーリングにより、配向層の適用により、被覆された物質に対し磁場または電場を適用することにより、あるいは物質への界面活性化合物の添加により達成することができる。配向技術の総説は、例えばI.Sageによる“Termotropic Liquid Crystals”,G.W.Gray,John Wiley&Sons編,1987,75〜77頁、およびT.Uchida and H.Sekiによる“Liquid Crystals−Applications and Uses Vol.3”,B.Bahadur編,World Scientific Publishing,Singapore 1992,1〜63頁により与えられる。配向物質および技術の総説は、J.Cognard,Mol.Cryst.Liq.Cryst.78,Supplement 1(1981),1〜77頁により与えられる。
【0082】
配向層を基板上に塗布し、この配向層上に重合性物質を供給することも可能である。適切な配向層としては、当技術分野において、例えばラビングされたポリイミドまたは米国特許第5602661号、米国特許第5389698号または米国特許第6717644号に記載されている光配向により調製された配向層が知られている。
【0083】
重合性LC物質を昇温、好ましくはその重合温度で、重合に先立ってアニーリングすることにより配向を誘導または向上させることが可能である。
【0084】
重合は、例えば重合性物質を熱(線)または化学線に曝すことにより行うことができる。化学線は、光、例えばUV光、IR光または可視光による照射、X線もしくはガンマ線による照射、またはイオンもしくは電子等の高エネルギー粒子による照射を意味する。好ましくは重合はUV照射により行う。化学線源としては、例えば単一のUVランプまたはセットのUVランプを用いることができる。高いランプ出力を用いると、硬化時間を短くすることができる。
【0085】
重合は、好ましくは化学線の波長において吸収する開始剤の存在下で行う。例えば、UV光を用いて重合するとき、光開始剤は、UV照射下で分解し、重合反応を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を用いることができる。アクリレートまたはメタクリレート基を重合するには、好ましくはラジカル光開始剤を用いる。ビニル、エポキシドまたはオキセタン基を重合するには、好ましくはカチオン性光開始剤を用いる。加熱したときに分解し、重合反応を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する、熱重合開始剤を用いることもできる。典型的なラジカル開始剤は、例えば商業的に入手できるIrgacure(登録商標)またはDarocure(登録商標)(Ciba Geigy AG,Basel,Switzland)である。典型的なカチオン性光開始剤は、例えばUVI 6974(Union Carbide)である。
【0086】
重合性物質は、1種または複数種の安定剤または自然発生する望ましくない重合を防止するための阻止剤、例えば商業的に入手可能なIrganox(登録商標)(Ciba Speciality Chemicals,Basel,Switzerland)も含有してよい。
【0087】
とりわけ、硬化時間は重合性物質の反応性、被覆された層の厚さ、重合開始剤の型およびUVランプの出力に依存している。硬化時間は好ましくは≦5分、非常に好ましくは≦3分、最も好ましくは≦1分である。大量生産のためには、≦30秒の短時間の硬化時間が好ましい。
【0088】
重合性物質は、重合に用いられる放射線の波長に最も適合した吸収を有する1種または複数種の染料、特に4,4”−アゾキシアニソールまたはTinuvin(登録商標)染料(Ciba Speciality Chemicalsから)を含有してもよい。
【0089】
別の好ましい実施形態において、重合性物質は1種または複数種の単一反応性重合性非メソゲン化合物を、好ましくは0から50重量%、非常に好ましくは0から20重量%含有してもよい。典型的な例はアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートである。
【0090】
別の好ましい実施形態においては、重合性物質は1種または複数種の二反応性または多重反応性の非メソゲン化合物(別種として分けて考えられる、重合性界面活性剤を除く)を、好ましくは0から80%、非常に好ましくは0から50%、最も好ましくは5から20%の量により、二反応性または多重反応性メソゲン化合物の代わりにまたはそれに加えて含有する。二反応性の非メソゲン化合物の典型的な例は、炭素原子数1〜20のアルキル基を有するアルキルジアクリレートまたはアルキルジメタクリレートである。多重反応性非メソゲン化合物の典型例は、トリメチルプロパントリメタクリレートまたはペンタエリトリトールテトラアクリレートである。このクラスの化合物を用いると、二反応性または多重反応性の重合性メソゲンはそれほど必要ではなく、より多くの単一反応性メソゲンが組成物に添加される。本願の更なる文脈において与えられるすべての範囲は、非メソゲン重合性化合物が添加されない場合にも適合する(本発明による重合性界面活性剤を少量用いる場合を除く)。
【0091】
ポリマーフィルムの物理的性質を修飾するために1種または複数種の連鎖移動剤を重合性物質に添加することも可能である。特に好ましくはチオール化合物、例えばドデカンチオール等の単一官能性チオール、またはトリメチルプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)等の多官能性チオールである。非常に好ましくは、例えば国際公開第96/12209号、国際公開第96/25470号または米国特許第6420001号に開示されているメソゲンチオールまたはLCチオールである。連鎖移動剤を使用することにより、フリーポリマー鎖の長さおよび/またはポリマーフィルム中の2つの架橋間のポリマー鎖の長さは制御可能である。連鎖移動剤の量を増加するとき、ポリマーフィルム中のポリマー鎖の長さは短くなる。
【0092】
重合性物質は、1種または複数種のさらなる成分、例えば触媒、増感剤、安定剤、阻害剤、連鎖移動剤、共反応モノマー、界面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、接着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、補助剤、着色剤、ナノ粒子およびナノチューブ、染料または顔料、特に湿潤剤、流動調整剤(rheology modifier)ならびに界面活性剤を、特徴付けられた項目に応じてさらに含有してもよい。
【0093】
本発明によるポリマーフィルムの厚さは、好ましくは0.3から5ミクロン、非常に好ましくは0.5から3ミクロン、最も好ましくは0.7から2.0ミクロンである。配向層として使用するためには0.05から1、好ましくは0.1から0.4ミクロンの厚さを有する薄膜が好ましい。
【0094】
本発明によるポリマーフィルムの軸上の遅延(即ち、0°の視野角における)は、平面配向フィルムに対して好ましくは0から400nm、特に好ましくは100nmから250nm、および垂直配向フィルムに対して0から5nmである。
【0095】
例えば、得られるポリマーフィルムの光学特性に適合させるために、20重量%までの量の非重合性液晶化合物を加えることも可能である。
【0096】
本発明のポリマーフィルムは、LC物質用の配向層として用いることも可能である。例えば、LCディスプレイにおいて切り替え可能なLC媒体の配向を誘導または向上させるために、あるいはその上に被覆された重合性LC物質からなる後続層を配向させるために使用することができる。このようにして、重合されたLCフィルムの積層体を調製することができる。以上の、および以下の、記載において、すべての温度は摂氏温度で与えられ、すべてのパーセントは、別段の記載がなければ重量で与えられる。
【0097】
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明はそれらに限定されない。1つの例に使用される基板の特性および利点は他の基板にも適用することができ、それらは積極的に述べられていないが、特許請求の範囲に包含されている。当業者は、明細書において積極的に述べられていない本発明の実際的な詳細を認識すること、当技術分野の一般的な知識によりそれらの詳細を一般化すること、および本発明の技術的事項との関連において特別の問題または課題の解決にそれらを適用することができる。
【0098】
以下に定義する下記の化合物は実施例に用いられる:
【0099】
【化11】

【0100】
重合性メソゲン化合物(A)、(B)および(C)は、D.J.Broer等、Makromol.Chem.190,3201〜3215(1989)に記載されている方法により、またはそれに基づいて調製することができる。以下はα−ヒドロキシベンゾフェノン光開始剤である:
Irgacure(登録商標)127は、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンであり、次式のビニルおよびアクリル−ベースのコーティング製剤(Ciba(登録商標)Specialty Chemicals)のラジカル光重合の開始に用いる商業的に入手可能なα−ヒドロキシケトン型UV硬化触媒である。
【0101】
【化12】

【0102】
Irgacure(登録商標)184は、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンであり、次式の商業的に入手可能なフリーラジカル光開始剤(Ciba(登録商標)Specialty Chemicals)である。
【0103】
【化13】

【0104】
Irgacure(登録商標)2959は、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンであり、次式の商業的に入手可能なUV硬化用ラジカル光開始剤(Ciba(登録商標)Specialty Chemicals)である。
【0105】
【化14】

【0106】
Darocur(登録商標)1173は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンであり、次式の商業的に入手可能な液体光開始剤(Ciba(登録商標)Specialty Chemicals)である。
【0107】
【化15】

【0108】
さらなる光開始剤および他の添加物は以下のとおりである:
Irgacure(登録商標)651は、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンであり、次式の商業的に入手可能な固体、フリーラジカル光開始剤(Ciba(登録商標)Specialty Chemicals)である。
【0109】
【化16】

【0110】
Irgacure(登録商標)754は、オキソフェニル酢酸1−メチル−2−[2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシ)−プロポキシ]−エチルエステルであり、商業的に入手可能な液体光開始剤(Ciba(登録商標)Specialty Chemicals)である。
【0111】
Irgacure(登録商標)907は、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンであり、商業的に入手可能な光開始剤(Ciba(登録商標)Specialty Chemicals)である。
【0112】
Irgacure(登録商標)1076は、(オクタデシル3,5)−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートであり、商業的に入手可能な安定剤(Ciba(登録商標)Specialty Chemicals)である。
界面活性剤:
界面活性剤Fluorad FC171(登録商標)は、3M、St.Paul,Minnesota,USAから商業的に入手可能である。
【0113】
【化17】

【0114】
nは約1〜2である。
【0115】
【化18】

【実施例】
【0116】
実験
ワイヤを巻いた棒を用いてラビングされたTAC基板上に、トルエン中に規定の混合物の30%固体溶液によりフィルムをバーコートし(厚さ4μmの湿潤状態のフィルム)、60℃で30秒間アニールし、次いでUV光を用いて重合する。フィルムの硬化は、別段の記載がなければ10m/分のベルト速度により、500mV/cm2UV−A照射で、または熱により達成する。効果的な照射時間は約1〜2秒である。感圧接着剤(PSA)を用いてガラスに貼られたこれらのフィルム(TAC/RMMフィルムとして指定)について、耐久性を測定する。TAC/RMM/PSA/ガラス積層体のそれぞれの完全な積層の良好な接着性を確実にするために、ラミネート加工機を用いて一緒に圧縮する。RMMフィルムの熱安定性を試験するために、積層体を90℃の乾燥器中に置く。所定時間後の遅延安定性を種々の異なる混合物の組成について以下に示す。500および1000時間において観察された遅延は、規則正しく同様の値を有し(最後の500時間に対し+1%)、500時間の乾燥時間およびそれ以上において平坦な遅延曲線に一致する(図1)。
【0117】
(実施例1)
以下の重合性液晶混合物を調製し、フィルム形成に用いる:
化合物(A) 40.00%
化合物(B) 5.92%
化合物(D) 20.00%
化合物(F) 27.00%
Irganox(登録商標)1076 0.08%
Irgacure(登録商標)907 5.00%
Irgacure(登録商標)2959 1.00%
界面活性剤4 1.00%
重合(数平均)の程度は、アクリル吸収帯のFT−IRピークの解析により83%と決定される。500時間後10%の遅延低下が、1000時間後11%の遅延低下が観察される。
【0118】
(実施例2)
以下の重合性液晶混合物を調製し、フィルム形成に用いる:
化合物(A) 40.00%
化合物(B) 5.92%
化合物(D) 20.00%
化合物(F) 27.00%
Irganox(登録商標)1076 0.08%
Irgacure(登録商標)907 5.00%
ラウロイルパーオキシド 1.00%
界面活性剤4 1.00%
フィルムを上記のようにUVにより硬化する。重合の程度(数平均)は、アクリル吸収帯のFT−IRピークの解析により81%と決定される。15%の遅延低下(1000時間)が観察される。
【0119】
(実施例3)
実施例2において新たに調製された硬化したフィルムは、さらに150℃で1分間熱硬化する。重合の程度(数平均)は95%と決定される。10%の遅延低下(1000時間)が観察される。
【0120】
(実施例4)
以下の重合性液晶混合物を調製し、フィルム形成に用いる:
化合物(A) 40.00%
化合物(B) 5.92%
化合物(D) 20.00%
化合物(F) 27.00%
Irganox(登録商標)1076 0.08%
Irgacure(登録商標)907 3.00%
Irgacure(登録商標)127 3.00%
界面活性剤4 1.00%
3%の遅延低下(500時間)が観察される。
【0121】
(実施例5)
以下の重合性液晶混合物を調製し、フィルム形成に用いる:
化合物(A) 40.23%
化合物(B) 5.95%
化合物(D) 20.10%
化合物(F) 27.64%
Irganox(登録商標)1076 0.08%
Irgacure(登録商標)907 5.03%
界面活性剤2 1.00%
フィルムを静的硬化(static cure)により90mW/cm2で5秒間硬化する。21%の遅延低下(500時間)が観察される。
【0122】
(実施例6)
以下の重合性液晶混合物を調製し、フィルム形成に用いる:
化合物(A) 40.23%
化合物(B) 5.95%
化合物(D) 20.10%
化合物(F) 27.64%
Irganox(登録商標)1076 0.08%
Irgacure(登録商標)907 5.03%
界面活性剤3 1.00%
フィルムを静的硬化(static cure)により90mW/cm2で5秒間硬化する。21%の遅延低下(500時間)が観察される。
【0123】
(実施例7)
以下の重合性液晶混合物を調製し、フィルム形成に用いる:
化合物(A) 40.00%
化合物(B) 5.92%
化合物(D) 20.00%
化合物(F) 27.00%
Irganox(登録商標)1076 0.08%
Irgacure(登録商標)907 5.00%
Irgacure(登録商標)1173 1.00%
界面活性剤4 1.00%
18%の遅延低下(1000時間)が観察される。
【0124】
比較例1
以下の重合性液晶混合物を調製し、フィルム形成に用いる:
化合物(A) 40.00%
化合物(B) 5.92%
化合物(D) 20.00%
化合物(F) 27.50%
Irganox(登録商標)1076 0.08%
Irgacure(登録商標)907 5.00%
Darocure(登録商標)2959 1.00%
界面活性剤なし
20%の遅延低下(500時間)が観察される。
【0125】
比較例2
以下の重合性液晶混合物を調製し、フィルム形成に用いる:
化合物(A) 40.30%
化合物(B) 6.04%
化合物(D) 20.19%
化合物(F) 27.74%
Irganox(登録商標)1076 0.10%
Irgacure(登録商標)907 5.07%
Irgacure(登録商標)127 3.00%
界面活性剤FX13 0.55%
25%の遅延低下(1000時間)が観察される。
【0126】
比較例3
以下の重合性液晶混合物を調製し、フィルム形成に用いる:
化合物(A) 40.00%
化合物(B) 5.92%
化合物(D) 20.00%
化合物(C) 27.50%
Irganox(登録商標)1076 0.08%
Irgacure(登録商標)907 3.00%
Irgacure(登録商標)127 3.00%
界面活性剤FC171 0.50%
10%の遅延低下(500時間)が観察される。
【0127】
比較例4
以下の重合性液晶混合物を調製し、フィルム形成に用いる:
化合物(A) 40.41%
化合物(B) 5.98%
化合物(D) 20.20%
化合物(F) 27.78%
Irganox(登録商標)1076 0.08%
Irgacure(登録商標)907 5.05%
界面活性剤FC171 0.50%
フィルムを静的硬化(static cure)により90mW/cm2で5秒間硬化する。24%の遅延低下(500時間)が観察される。
本発明の実施形態および変形のさらなる組み合わせが特許請求の範囲より生じる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】時間(1000時間)に対して光学遅延を保存する能力により測定した、PSAに接触するLCフィルムの耐熱性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の重合性界面活性化合物および少なくとも1種の反応性メソゲンを含有する重合性液晶物質であって、該界面活性化合物が2個以上の重合性基を含有することを特徴とする重合性液晶物質。
【請求項2】
反応性メソゲンが、式I
P−(Sp−X)a−MG−R I
[式中、
Pは重合性基であり、
Spは炭素原子数1から25のスペーサー基であり、
Xは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH2CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−CH=CH−、−CH=CH−(CO)O−、−O(CO)−CH=CH−、−C≡C−、または単結合であり、
aは0または1であり、
MGはメソゲン基であり、
RはH、CN、NO2、ハロゲン、あるいは炭素原子数25までの直鎖または分枝状アルキル基であって、非置換であるか、ハロゲンまたはCNにより一置換または多置換されていてもよく、1個または複数の非隣接CH2基がそれぞれ相互に独立して−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−、−O(CO)−O−、−S(CO)−、−(CO)S−、または−C≡C−により、酸素原子が相互に直接結合しないように置き換えられていてもよく、あるいはRはP−(Sp−X)a−を示す]を有することを特徴とする、請求項1に記載の重合性液晶物質。
【請求項3】
重合性界面活性化合物が、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、ビニル基、ビニロキシ基、スチレン基およびプロペニルエーテル基から選択された重合性基を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の重合性液晶物質。
【請求項4】
α−ヒドロキシアセトフェノン誘導体を含有する1種または複数種の光開始剤を0.5から10重量%含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の重合性液晶物質。
【請求項5】
2個以上の重合性基を有する1種または複数種の重合性界面活性化合物を0.01から10重量%含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の重合性液晶物質。
【請求項6】
少なくとも1種の重合性界面活性化合物が2個を超える重合性基を含有することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の重合性液晶物質。
【請求項7】
少なくとも1種の重合性界面活性化合物が4個以上の重合性基を含有することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の重合性液晶物質。
【請求項8】
少なくとも1種の光開始剤および1から5重量%の熱重合開始剤を含有することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の重合性液晶物質。
【請求項9】
重合性界面活性化合物がフルオロカーボン界面活性剤であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の重合性液晶物質。
【請求項10】
重合性界面活性化合物が式
【化1】

[式中、
3、Z4は独立して−(CO)O、−O(CO)−、−O(CO)O、NH(CO)O、−O(CO)NH−、−O−または単結合であり、
nは3から12であり、
m、o、pおよびqは独立して0、1または2であり、
Bは−CP3、−CRP2、−NP2または
【化2】

の基であり、
PはスペーサーSpにより結合された重合性基であり、
Spは炭素原子数1から12の直鎖または分枝状アルキレン基であり、1個または複数の非隣接CH2基が、それぞれ互いに独立して−O−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−または−C≡C−により、ヘテロ原子(O、N)が相互に直接結合しないように置き換えられていてもよく、
RはH、CN、NO2、ハロゲン、あるいは炭素原子数25までの直鎖または分枝状アルキル基であって、非置換であるか、ハロゲンまたはCNにより一置換または多置換されていてもよく、1個または複数の非隣接CH2基がそれぞれ相互に独立して−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−、−O(CO)−O−、−S(CO)−、−(CO)S−、または−C≡C−により、酸素原子が相互に直接結合しないように置き換えられていてもよい]の化合物から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の重合性液晶物質。
【請求項11】
a)極性末端基を有する5種までの単一反応性メソゲン化合物50から96重量%、
b)4種までの二反応性重合性メソゲン化合物0から30重量%、
c)重合開始剤0.5から10重量%、
d)1種または複数種の重合性界面活性化合物0.01から10重量%、
から本質的になることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の重合性液晶物質。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の1種の重合性液晶物質から調製された、異方性ポリマーフィルムおよびハードコート層を有する二層フィルム。
【請求項13】
コアフィルムに比べ相対的により多く架橋された表面を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の重合性液晶物質から調製された異方性ポリマーフィルム。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の重合性液晶物質を基板上に塗布し、該物質を重合することにより、ハードコート層を有する、またはコアフィルムに比べ相対的により多く架橋された表面を有する異方性ポリマーフィルムを製造する方法。
【請求項15】
偏光子、補償板、ビームスプリッター、配向層、反射フィルム、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンピングホイル、カラー映像、装飾またはセキュリティー用マークにおける、光学デバイスまたは装飾もしくはセキュリティー用途への請求項1から11のいずれかに記載の重合性液晶物質の使用または請求項12もしくは13に記載のフィルムの使用。
【請求項16】
ポリマーフィルムにおける表面硬化剤として、5から30個のC、OまたはN原子を有する分枝スペーサーにより2個または3個の重合性基をそれぞれの末端において結合した、原子数6から12の長さのポリフッ素化直鎖を含有する、2個を超える重合性基を有する1種または複数種の重合性フッ素系界面活性剤の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2007−177241(P2007−177241A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333597(P2006−333597)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】